説明

コンベアの搬送ローラの洗浄方法及び磁気記録ディスクの製造方法

【課題】コンベアの搬送ローラに付着したパーティクル等の異物の洗浄を作業者の手によらず短時間で行えるコンベアの搬送ローラの洗浄方法を提供する。
【解決手段】パーティクル等の異物を吸着等により除去する異物除去手段3を備えた洗浄用部材10をコンベアの搬送ローラ4上を走行させ、前記搬送ローラに付着したパーティクル等の異物を前記搬送ローラと当接する前記異物除去手段により除去する。搬送ローラに付着した異物は例えば金属粉である。そして、上記異物除去手段は例えばスポンジなどの吸水性多孔質部材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベアの搬送ローラに付着したパーティクル等の異物を除去するコンベアの搬送ローラの洗浄方法、及び磁気記録ディスクの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディスク状のガラス基板上に磁性層を成膜した磁気記録ディスクの製造工程では、ガラス基板の研磨工程の後の洗浄処理工程、スパッタ成膜後の磁気記録ディスクの洗浄処理工程が実施される。洗浄処理工程では、多数枚のガラスディスクあるいは磁気記録ディスクを専用のディスク搬送用カセットに収納し、カセットごと洗浄槽の中に浸漬させて洗浄を行うが、洗浄処理の前後においても搬送用カセットごと搬送される。磁気記録ディスク等を収容した搬送カセットの搬送方法としては、コンベアによる搬送が一般的である。
【0003】
なお、特許文献1には、半導体チップ等の電子部品を搭載したパレットを搬送する、主としてクリーンルーム内で用いるコンベアによる搬送方法が開示され、特許文献2には、ワーク等をリニアモータを用いて搬送する方法が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−118710号公報
【特許文献2】特開2000−191140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の検討によると、磁気記録ディスク等を収容した搬送カセットをコンベア搬送する場合、コンベアの搬送ローラとディスク搬送用カセットの側板はいずれも金属製(一般にはステンレス製)であることから、搬送中に両者が接触することで常にパーティクル(金属粉)が発生し、そこで発生したパーティクルは搬送ローラと搬送用カセットに付着するという問題が生じることを突き止めた。
【0006】
図4は、磁気記録ディスク6を多数枚収納した状態のディスク搬送用カセット5の(a)側面図及び(b)正面図を示したものである。各ディスク6は、その両側端面と下端面とをそれぞれ保持する保持部51,52によって垂直方向に立てた状態で保持され、各保持部51,52の軸方向には溝が多数形成されており、この溝によって各ディスク6は互いに接触しないように所定の間隔を保ってカセット5内に収納できるように構成されている。
【0007】
また、図5は、上記磁気記録ディスク6を収納した搬送用カセット5をコンベアの搬送ローラ4上を搬送させている状態の(a)側面図及び(b)正面図を示したものである。この場合、搬送中にカセット5の側板の下端と搬送ローラ4とが接触する図中のAで示す部分においてパーティクルが発生する。
【0008】
搬送ローラ4に付着したパーティクルはローラが回転することで周囲に飛散し、搬送用カセット5やカセットに収納されている磁気記録ディスクあるいはその基板に再付着して、磁気記録ディスクの製造工程に悪影響を及ぼす。とくに、成膜前のディスク基板表面にパーティクルが付着すると成膜時の欠陥となってしまう。一方、搬送用カセット5に付着したパーティクルは、このカセットがそのまま洗浄工程に搬送され、カセットごと洗浄槽に浸漬されたときに、洗浄液中に浮遊し、洗浄中の磁気記録ディスク等に再付着するおそれがある。また、洗浄液(純水)に金属粉のパーティクルがイオン溶解して磁気記録ディスクの磁性膜に悪影響を及ぼす可能性もある。
【0009】
したがって、このような問題を解決するためには、定期的にコンベアの搬送ローラと、ディスク搬送用カセットの洗浄が不可欠である。ただし、搬送用カセットに付着したパーティクルの問題は、例えば自動洗浄装置等を使用してカセットの洗浄を行うことにより解決することが可能であるが、搬送ローラに付着したパーティクルについては、現状では作業者が手作業で洗浄を行わなければならないため、この洗浄作業に長時間と労力を要してしまうという問題がある。
【0010】
なお、このようなパーティクルの発生を抑制できる搬送方法として、上記特許文献2に開示されたリニアモータ搬送による方法があるが、この方法は、前記カセットの下端と搬送ローラとは非接触であるためパーティクルは発生しない。しかし、搬送部に永久磁石や電磁石を用いているために、磁気記録ディスクの搬送を行うと磁性膜等に悪影響を及ぼすことが考えられるので、磁気記録ディスクの搬送方法としては結局コンベアによる搬送が好適であるが、コンベアによる搬送ではパーティクルの発生が問題となるわけである。
【0011】
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、コンベアの搬送ローラに付着したパーティクル等の異物の洗浄を作業者の手によらず短時間で行えるコンベアの搬送ローラの洗浄方法、該洗浄方法による工程を含む磁気記録ディスクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の構成を有する発明である。
(発明の構成1)
パーティクル等の異物を吸着等により除去する異物除去手段を備えた洗浄用部材をコンベアの搬送ローラ上を走行させ、前記搬送ローラに付着したパーティクル等の異物を前記搬送ローラと当接する前記異物除去手段により除去することを特徴とするコンベアの搬送ローラの洗浄方法である。
【0013】
(発明の構成2)
前記搬送ローラに付着した異物が金属粉であることを特徴とする構成1に記載のコンベアの搬送ローラの洗浄方法である。
【0014】
(発明の構成3)
前記異物除去手段が、吸水性多孔質部材であることを特徴とする構成1又は2に記載のコンベアの搬送ローラの洗浄方法である。
(発明の構成4)
【0015】
前記異物除去手段が、磁石であることを特徴とする構成2に記載のコンベアの搬送ローラの洗浄方法である。
【0016】
(発明の構成5)
磁気記録ディスク用基板または磁気記録ディスクを多数枚収容したディスク搬送用カセットをコンベアの搬送ローラ上を搬送させる際、前記ディスク搬送用カセットと前記搬送ローラとの接触により発生して搬送ローラに付着したパーティクル等の異物を除去することを特徴とする構成1乃至4のいずれか一に記載のコンベアの搬送ローラの洗浄方法である。
(発明の構成6)
構成1乃至5のいずれか一に記載の洗浄方法による工程が含まれることを特徴とする磁気記録ディスクの製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コンベアの搬送ローラに付着したパーティクル等の異物の洗浄を作業者の手によらず短時間で行えるコンベアの搬送ローラの洗浄方法を提供することができる。
【0018】
そして、本発明によれば、コンベアの搬送ローラの洗浄を短時間で簡便に行えるため、搬送ローラを常に清浄な状態に保つことができ、搬送ローラに付着したパーティクルに起因する磁気記録ディスク等への悪影響の問題を有効に解決することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳述する。
図1は、本発明に使用する洗浄用カセットの組立部品図である。また、図2は、洗浄用カセットの(a)組立側面図および(b)組立正面図である。
図1中、1は貯水タンク、2は洗浄用カセットベース、3は洗浄用吸水性多孔質部材であり、これらの部品を組み立てることにより本発明に使用する洗浄用部材である洗浄用カセットが出来上がる。
【0020】
上記貯水タンク1は、洗浄用の吸水性多孔質部材3が乾くことの無いように適宜水分を補給するための水を貯水する。また、貯水タンク1から少量の水分が洗浄用の吸水性多孔質部材3に補給されるように、貯水タンク1の底面には小さな孔を開けた水分補給部11が設けられている。
【0021】
上記洗浄用吸水性多孔質部材3は、搬送ローラに付着したパーティクル等の異物を吸着等により除去するためのものであり、例えば具体的にはスポンジなどを好ましく用いることができる。また、この洗浄用吸水性多孔質部材3は、側面方向には複数の搬送ローラ上を安定して走行できるように所定の長さを有している。また、正面からみると、その中央から下方左右に向かう傾斜形状に形成され、つまり使用状態において貯水タンク1の水分補給部11から搬送ローラとの接触部までは傾斜を設けることにより、洗浄用吸水性多孔質部材3に補給された水分が搬送ローラとの接触部に好適に補給されるように構成している。洗浄用吸水性多孔質部材3を正面からみたときの横幅は、ディスク搬送用カセットを搬送する搬送ローラ4,4間の横幅とほぼ一致させることが望ましい。
【0022】
また、上記洗浄用カセットベース2は、所定の横幅を有し、左右に洗浄用吸水性多孔質部材3を係止する係止部21,21と、該係止部に洗浄用吸水性多孔質部材3を固定するためのネジ状の止め具22,22と、上記貯水タンク1を設置する設置台23と、洗浄用吸水性多孔質部材3の中央部分を貯水タンク1の水分補給部11と接触させた状態に保持するための保持部24を有している。
【0023】
そして、以上の構成にかかる、貯水タンク1、洗浄用カセットベース2、洗浄用吸水性多孔質部材3を組み立てることにより図2に示すような洗浄用カセット10が出来上がる。すなわち、洗浄用カセットベース2の設置台23上に貯水タンク1を設置し、洗浄用吸水性多孔質部材3の中央部分を洗浄用カセットベース2の保持部24に通して貯水タンク1の水分補給部11と接触させるとともに、洗浄用吸水性多孔質部材3の左右の折り曲げ部分を洗浄用カセットベース2の係止部21,21に嵌め込んで上から止め具22,22によって固定する。
【0024】
図3は、以上のようにして組み立てた洗浄用カセット10をコンベアの搬送ローラ4,4、・・・上を搬送させて洗浄を行っている状態の(a)側面図及び(b)正面図である。
【0025】
洗浄用カセット10をコンベアの搬送ローラ4,4、・・・上を搬送させ、パーティクル等の異物が発生した部分の上を洗浄用カセット10の洗浄用吸水性多孔質部材3が通過することで、搬送ローラに付着したパーティクル等の異物は吸水性多孔質部材3に吸着されて除去される。すなわち、本発明によれば、本実施の形態のような洗浄用カセット10をコンベアの搬送ローラ4,4、・・・上を搬送させるだけで(つまり洗浄用カセット10の自動搬送が可能)、搬送ローラの洗浄が行われるので、コンベアの搬送ローラに付着したパーティクル等の異物の洗浄を作業者の手によらず短時間で行えるという優れた効果を奏する。
【0026】
本実施の形態では、コンベアの搬送ローラと直接接触するのはスポンジ等の吸水性多孔質部材3であるが、パーティクル等の異物を吸着等により除去できる異物除去手段であれば、吸水性多孔質部材3には限定されない。
【0027】
本発明の搬送ローラの洗浄方法は、磁気記録ディスク用基板または磁気記録ディスクを多数枚収容したディスク搬送用カセットをコンベアの搬送ローラ上を搬送させる際、前記ディスク搬送用カセットと前記搬送ローラとの接触により発生して搬送ローラに付着したパーティクル等の異物を除去するのに特に好適であるが、この場合に発生するパーティクルは通常ほとんどが金属粉(鉄粉)であるため、パーティクル等の異物除去手段として例えば磁石を用いることも可能である。
【0028】
また、本発明によれば、コンベアの搬送ローラの洗浄を短時間で簡便に行えるため、搬送ローラを常に清浄な状態に保つことができるので、搬送ローラに付着したパーティクルに起因する磁気記録ディスク等への悪影響の問題を有効に解決することが可能になる。
したがって、本発明によるコンベアの搬送ローラの洗浄工程が含まれる磁気記録ディスクの製造方法は好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】洗浄用カセットの組立部品図である。
【図2】洗浄用カセットの(a)組立側面図および(b)組立正面図である。
【図3】洗浄用カセットをコンベアの搬送ローラ上を搬送させて洗浄を行っている状態の(a)側面図及び(b)正面図である。
【図4】磁気記録ディスクを多数枚収納したディスク搬送用カセットの(a)側面図及び(b)正面図である。
【図5】磁気記録ディスクを収納した搬送用カセットをコンベアの搬送ローラ上を搬送させている状態の(a)側面図及び(b)正面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 貯水タンク
2 洗浄用カセットベース
3 洗浄用吸水性多孔質部材
4 搬送ローラ
5 ディスク搬送用カセット
6 磁気記録ディスク
10 洗浄用カセット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーティクル等の異物を吸着等により除去する異物除去手段を備えた洗浄用部材をコンベアの搬送ローラ上を走行させ、前記搬送ローラに付着したパーティクル等の異物を前記搬送ローラと当接する前記異物除去手段により除去することを特徴とするコンベアの搬送ローラの洗浄方法。
【請求項2】
前記搬送ローラに付着した異物が金属粉であることを特徴とする請求項1に記載のコンベアの搬送ローラの洗浄方法。
【請求項3】
前記異物除去手段が、吸水性多孔質部材であることを特徴とする請求項1又は2に記載のコンベアの搬送ローラの洗浄方法。
【請求項4】
前記異物除去手段が、磁石であることを特徴とする請求項2に記載のコンベアの搬送ローラの洗浄方法。
【請求項5】
磁気記録ディスク用基板または磁気記録ディスクを多数枚収容したディスク搬送用カセットをコンベアの搬送ローラ上を搬送させる際、前記ディスク搬送用カセットと前記搬送ローラとの接触により発生して搬送ローラに付着したパーティクル等の異物を除去することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一に記載のコンベアの搬送ローラの洗浄方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一に記載の洗浄方法による工程が含まれることを特徴とする磁気記録ディスクの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−254831(P2008−254831A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95854(P2007−95854)
【出願日】平成19年3月31日(2007.3.31)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)