説明

コークス乾式消火設備のコークス装入方法

【課題】分配装入用ベルによる分配機能を十分に満足させるとともに、一釜容量が大きな炉からくる大型のバケットに対しても装入装置の大型化や高価な耐熱対策などのコスト増を伴うことなく、CDQの熱損傷防止とCDQとしての熱交換能力を十分に発揮できるCDQのコークス装入方法を提供する。
【解決手段】コークスバケット6からその底部に設けられた開閉ゲート10を開いて赤熱コークスをシュートホッパー3とその下部に分配装入用ベル5を設けた装入装置を経てチャンバー1内に装入するCDQのコークス装入方法において、コークスバケット6底部の開閉ゲート10の開度を中間停止して赤熱コークスをシュートホッパー3に投入し、一定時間経過後に前記中間停止の開度より更に大きな開度にて残りの赤熱コークスを全量投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉にて製造された赤熱コークスを冷却するコークス乾式消火設備のコークス装入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス乾式消火設備(CDQ)では、コークス炉から押出された1000℃以上の赤熱コークスが、チャンバー内に投入され、不活性ガスと熱交換されて冷却される。コークス炉から押し出された赤熱コークスは、底部に開閉ゲートを有するコークスバケットで受骸し、そのコークスバケットをクレーンにてチャンバー上方部まで搬送する。その後、コークスバケットの開閉ゲートを開いて赤熱コークスを自重によりチャンバー上部に設けられたシュートホッパーに投入し、チャンバー内へ装入される仕組みである。
【0003】
また、シュートホッパー下部にはコークス分配装入用ベルを設けており、シュートホッパーとこのベルを介すことでチャンバー内に装入されるコークス粒度分布が均一改善される。
【0004】
従来、赤熱コークスをCDQに投入する際、コークスバケットの開閉ゲートの開度を全開に向かう途中において、コークスバケットからの落下投入量とホッパーからチャンバー内に落下する量とが等しくなるように段階的に装入する方法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭61−55188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1の手法は、ホッパー上部に位置するバケットからのコークス供給量と下部に位置するチャンバーへの投入量の量バランスを保つという一般手法概念のみを考慮したものであり、近年の高度化された装入技術においては装入装置に期待される均一分配機能や、それに伴うチャンバーでの冷却性能の向上など設備全体としての重要な性能や機能を十分に満足できるものではなかった。また、具体的に量バランスを取るための手段がなく実際の機構として機能を満足できるものでもなかった。
【0007】
一方で、近年のコークス均一分配機能を持たせた装入装置、具体的には分配装入用ベル付き装入装置においてはコークス投入におけるコークスのベルによる反発力を十分に確保することが重要な技術要素となっている。
【0008】
したがって、当該技術ではバケットの開閉ゲートの開口やシュートホッパーの形状と分配装入用ベル形状との関係において、最適な反発力とコークス分配機能を満足させ、チャンバーでの冷却能力を向上させるものである。
【0009】
特に近年、環境改善の目的からコークス炉は、炉蓋の開閉回数を極力少なくするため一窯容量が大きな炉が建設される傾向にあり、コークスを運ぶバケットも大型化となっている。その結果、そして装入装置の大型化の必要性があることからコストアップ要因となっている。従来の装入方法を採用した場合には、シュートホッパーの中間開口部などが小さすぎて分配装入用ベルによる十分な反発を得られなくなることに加え、シュートホッパーの内にコークスが溜り過ぎてシュートホッパーが赤熱し熱歪などの損傷を起こす場合もある。
【0010】
そこで、本発明は、分配装入用ベルによる分配機能を十分に満足させるとともに、一釜容量が大きな炉からくる大型のバケットに対しても装入装置の大型化や高価な耐熱対策などのコスト増を伴うことなく、CDQの熱損傷防止とCDQとしての熱交換能力を十分に発揮できるCDQのコークス装入方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、コークスバケットからその底部に設けられた開閉ゲートを開いて赤熱コークスをシュートホッパーとその下部に分配装入用ベルを設けた装入装置を経てチャンバー内に装入するCDQのコークス装入方法において、コークスバケット底部の開閉ゲートの開度を中間停止して赤熱コークスをシュートホッパーに投入し、一定時間経過後に前記中間停止の開度より更に大きな開度にて残りの赤熱コークスを全量投入することを特徴とする。
【0012】
前記中間停止の開閉ゲートの開度は、開閉ゲートの開口面積(S1)とシュートホッパーの中間絞り部開口面積(S2)との比が0.65≦S2/S1≦1.3となるようにする。
【0013】
前記一定時間(t)は、W≧Qr−S2×V2×t(ただし、S2:シュートホッパーの中間絞り開口での中間絞り部開口面積、V2:コークス落下速度(V2)、Q:バケット内初期コークス量、W:シュートホッパー容量)となる時間(t)とする。
【0014】
または、前記中間停止での投入の際に、バケット内コークス重量を測定し、バケット内残存コークス量(Qr)がシュートホッパー容量(W)以下になるまで投入し、Qr<Wとなった時点より、バケット底部の開閉ゲートの開度を大きくしてコークスを装入する。
【0015】
前記中間停止の開度より更に大きな開度が、ゲート角(θ)をθ≧35度とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、赤熱コークスがコークスバケットよりシュートホッパーを介して投入される際に、適切な分配装入用ベルからの反発力を得て十分な分配機能を発揮することが可能であり、チャンバー内へのコークス堆積の粒度分布が向上するため、冷却効率を上げることが可能となる。
【0017】
また、大型、大容量のバケットに装入装置を大型化することなく熱交換能力を向上させて冷却効率を上げることが可能となる。また、必要以上の耐熱仕様にする必要がないので、コスト削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の装入方法を適用するコークスバケット及びコークス装入装置を示す概略図である。
【図2】分配装入用ベルの概略断面図である。
【図3】(a)は開閉ゲートの断面積(S1)、(b)はシュートホッパーの中間絞り部の断面積(S2)を示す図である。
【図4】シュートホッパーの容量(W)を示す図である。
【図5】本発明の装入方法における開閉ゲートの開度の変化を示し、(a)は中間停止状態の開度の図、(b)中間停止後の開度の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0020】
図1において、CDQのチャンバー1のコークス装入口2の上部にシュートホッパー3が配置されている。シュートホッパー3の下部には落下する赤熱コークスをチャンバー1内に均等に分配するための分配装入用ベル5が配置されている。シュートホッパー3には投入された赤熱コークスを確実にそして的確に分配装入用ベルに落下させるために中間絞り部4が形成されている。
【0021】
分配装入用ベル5は、図2に示すように、傾斜角度(Φ0)を40度≦Φ≦60度の範囲とし、且つ分配装入用ベル5の径(D0)とシュートホッパー3の中間絞り部4の開口の最小長さ(L2)(丸型、角型問わず)の比が0.6≦D0/L2≦0.75になるようにする。さらに、分配装入用ベル5の径(D0)とチャンバー口径(D3)との比を2.2≦D3/D0≦2.6とすることが効果を発揮するには望ましい。
【0022】
コークスバケット6は、コークス炉から押し出された赤熱コークスを受骸した後、クレーン7にてチャンバー1の上方まで搬送され、シュートホッパー3に赤熱コークスを投入する。コークスバケット6はトラニオンブロック8に支持されており、トラニオンブロック8にクレーン7のフック9を掛けてコークスバケット6をシュートホッパー3の上に搬送し、シュートホッパー3の上部に別体に配置されたバケット受け台(図示せず)に載置する。トラニオンブロック8には下向きに開閉ゲート10を開閉するための一対の開閉アーム11の一端が回転自在に連結され、他端が開閉ゲート10に回転自在に連結されている。開閉ゲート10は開閉アーム11の上下動により開閉する。
【0023】
トラニオンブロック8がクレーン7で吊られた状態でコークスバケット6をバケット受け台に載置しても、トラニオンブロック8が吊られているため開閉アーム11が下方に動かないので、開閉ゲート10は開かない。さらにクレーン7が巻き下げられるとトラニオンブロック8が下降し、開閉アーム11が下方に動いて開閉ゲート10を開く。開閉ゲート10が開いた状態からトラニオンブロック8を吊り上げると、開閉アーム11が上方に動いて開閉ゲート10が閉じられる。
【0024】
本発明は、図5に示すように、コークスバケット6の開閉ゲート10を開き、シュートホッパー3を経てチャンバー内に赤熱コークスCを投入する際に、図5(a)に示すように、まず、赤熱コークスCの投入開始時から開閉ゲート10の開度を一定の開度にて中間停止させて赤熱コークスを落下させ、一定時間経過後、図5(b)に示すように、更に大きな開度にて残りの赤熱コークスCを全量投入する。
【0025】
中間停止して赤熱コークスを投入する際の開閉ゲート10の開度を、図3に示す、開閉ゲートの開口面積(S1)とシュートホッパー3の中間絞り部4の開口面積(S2)との比が0.65≦S2/S1≦1.3となるようにする。S2/S1の比が前記の範囲外の場合、次の問題が起きる。
【0026】
(1)S2/S1<0.65の場合、中間絞り部が小さ過ぎることを意味し、シュートホッパー内に赤熱コークスが貯まり過ぎ、シュートを滑り落ちる速度とコークス反発のための十分な空間が制限される。結果としてベルでの適切な反発力を得る事が出来なくなり、チャンバー内の粒度分布が悪化する。これは特に「従来技術」の所で記載した近年のコークス炉一窯容量が大きな場合には顕著に現れ、コークス乾式消火設備の能力を十分に発揮することが出来ない。
【0027】
(2)S2/S1>1.3の場合、中間絞り部が大きすぎることを意味し、シュートホッパー内を滑り落ちたコークスが適切に分配装入用ベルに当たらず、場合によっては分配装入用ベルに当たらず直接チャンバー内に落下、前記(1)と同じくチャンバー内の粒度分布が悪化する。
【0028】
以上の問題を回避する適切な開口比が0.65≦S2/S1≦1.3である。
【0029】
加えて上記のS2/S1の比に固執すると、場合によってはバケット底部の開閉ゲートの中にコークスが残ったままとなりゲートを閉じる際に噛みこみ、トラブルを起こす可能性がある。それを回避するためには、開閉ゲート10を35度以上まで広げ、確実にコークスを落とす必要がある。
【0030】
これら上記を組み合わせて投入時には開閉ゲート10の中間停止による装入と、一定時間経過後に最終的な開度での装入との2段に分けて赤熱コークスを投入するに当たり、その一定時間(t)は、W≧Q−S2×V2×t(ただし、S2:シュートホッパーの中間絞り開口での中間絞り部開口面積、V2:コークス落下速度(V2)、Q:バケット内初期コークス量、W:シュートホッパー容量)となる時間(t)とする。
【0031】
また、前記中間停止での投入の際に、バケット内コークスの重量を測定し、コークスバケット内残存コークス量(Qr)がシュートホッパー容量(W)以下になるまで投入し、Qr<Wとなった時点より、バケット底部の開閉ゲートの開度を大きくしてコークスを装入する。
【符号の説明】
【0032】
1:チャンバー 2:コークス装入口
3:シュートホッパー 4:中間絞り部
5:分配装入用ベル 6:コークスバケット
7:クレーン 8:トラニオンブロック
9:フック 10:開閉ゲート
11:開閉アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークスバケットからその底部に設けられた開閉ゲートを開いて赤熱コークスをシュートホッパーとその下部に分配装入用ベルを設けた装入装置を経てチャンバー内に装入するCDQのコークス装入方法において、
コークスバケット底部の開閉ゲートの開度を中間停止して赤熱コークスをシュートホッパーに投入し、一定時間経過後に前記中間停止の開度より更に大きな開度にて残りの赤熱コークスを全量投入することを特徴とするコークス乾式消火設備のコークス装入方法。
【請求項2】
前記中間停止の開閉ゲートの開度は、開閉ゲートの開口面積(S1)とシュートホッパーの中間絞り部開口面積(S2)との比が0.65≦S2/S1≦1.3となるようにすることを特徴とする請求項1記載のコークス乾式消火設備のコークス装入方法。
【請求項3】
前記一定時間(t)は、W≧Q−S2×V2×t(ただし、S2:シュートホッパーの中間絞り開口での中間絞り部開口面積、V2:コークス落下速度(V2)、Q:バケット内初期コークス量、W:シュートホッパー容量)となる時間(t)とすることを特徴とする請求項1又は2記載のコークス乾式消火設備のコークス装入方法。
【請求項4】
前記中間停止での投入の際に、バケット内コークス重量を測定し、バケット内残存コークス量(Qr)がシュートホッパー容量(W)以下になるまで投入し、Qr<Wとなった時点より、バケット底部の開閉ゲートの開度を大きくしてコークスを装入することを特徴とする請求項1又は2記載のコークス乾式消火設備のコークス装入方法。
【請求項5】
前記中間停止の開度より更に大きな開度が、ゲート角(θ)をθ≧35度とすることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のコークス乾式消火設備のコークス装入方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−79992(P2011−79992A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234349(P2009−234349)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】