説明

コークス乾式消火設備

【課題】コークス乾式消火設備において、例えばコークスによる摩耗や損耗などによって支持部材が破断し、ブラストヘッドが脱落してしまうのを防止する。
【解決手段】プレチャンバーと、プレチャンバーの下部に続くクーリングチャンバーと、クーリングチャンバー内に冷却ガスを供給する冷却ガス供給手段と、プレチャンバーの周囲に複数に分割された小煙道を有するコークス乾式消火設備において、クーリングチャンバーの下部に配置されるブラストヘッド支持部材71と、この支持部材71の上部に載置される主ブラストヘッドと、支持部材71の下部に吊具を介して1段以上懸架配置される小ブラストヘッド73と、を備え、吊具は、支持部材71と小ブラストヘッド73とを連結する外筒吊具76と、外筒吊具76が破断したときに小ブラストヘッド73を受け止める受座78を有する内筒吊具77と、による多重構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温のコークスを冷却するコークス乾式消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所等に設置されるコークス乾式消火設備(Coke Dry Quenching equipment:CDQ)は、コークス炉で乾留された高温のコークスを不活性ガス等の冷却ガスで消火する設備であり、高温のコークスを徐冷することによって品質を向上させ、これにより製鉄用高炉の操業安定化を図っている。コークス乾式消火設備は、系内で冷却ガスを循環させることによって、コークス粉塵の飛散を防ぐことができ、さらに省エネのために廃熱ボイラー等の熱回収装置でコークスの顕熱を回収するといった特長を有する。
【0003】
コークス乾式消火設備としては、特許文献1に開示されているような設備が知られている。すなわち、従来のコークス乾式消火設備1は、図12に示すように、コークス装入口10が上部に形成されたプレチャンバー2と、下部にコークス排出装置11が設けられたクーリングチャンバー3が上下に連結された構成である。さらに、クーリングチャンバー3内に吹き込んだ冷却ガスを排出する複数に分割された小煙道4が、プレチャンバー2の胴部に周方向に形成されている。クーリングチャンバー3の下部にはブラストヘッド5が配置され、このブラストヘッド5から冷却ガスをチャンバー内に吹き込んでいる。
【0004】
ブラストヘッド5としては、特許文献2に開示されているような2段構造のガス分配器が知られている。すなわち、図13に示すように、クーリングチャンバー3のロート状に形成された部分に、第1ガス分配器51と第2ガス分配器52が上下に配置され、冷却ガスを供給するガス導入管53によって各々支持されている。
【0005】
しかしながら、特許文献2の冷却ガス分配器51,52は、降下するコークスと接触することによる摩耗・損耗の対策が何ら講じられていない支持構造である。コークスは、表面に凹凸があり、支持部材を摩耗・損耗させ易い。しかも、クーリングチャンバー3の下部でも数百℃の温度になっているため、温度による影響で支持部材の摩耗・損耗が促進され易い。特許文献2のような支持構造にすると、コークスとの摩耗・損耗によってガス導入管53が破断し、ガス分配器51,52が脱落する場合がある。この場合、脱落したガス分配器51,52がコークスの排出を妨げてしまい、操業を停止する事態になりかねない。
【0006】
【特許文献1】国際公開WO2007/122827号公報
【特許文献2】実公昭59−17883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的の一つは、コークス乾式消火設備において、例えばコークスによる摩耗や損耗などによって支持部材が破断し、ブラストヘッドが脱落してしまうのを防止することのできるコークス乾式消火設備を提供することにある。
【0008】
さらに本発明の他の目的は、ブラストヘッドが脱落して装置を緊急停止しなくてはならない事態を回避し、操業に及ぼす影響を小さくすることのできるコークス乾式消火設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に従うコークス乾式消火設備は、プレチャンバーと、プレチャンバーの下部に続くクーリングチャンバーと、クーリングチャンバー内に冷却ガスを供給する冷却ガス供給手段と、前記プレチャンバーの周囲に複数に分割された小煙道を有するコークス乾式消火設備において、前記クーリングチャンバーの下部に配置されるブラストヘッド支持部材と、この支持部材の上部に載置される主ブラストヘッドと、前記支持部材の下部に吊具を介して1段以上懸架配置される小ブラストヘッドと、を備え、前記吊具は、支持部材と小ブラストヘッドとを連結する外筒吊具と、外筒吊具が破断したときに小ブラストヘッドを受け止める受座を有する内筒吊具と、による多重構造であることを特徴とする。
【0010】
前記内筒吊具は、小ブラストヘッドの上部中央に形成された開口部を貫通し、且つ、この開口部よりも最大径が大きい受座がその下端部に配置された構造にすることができる。この場合、前記受座は、前記小ブラストヘッドが外筒吊具に懸架された正常懸架状態において、当該小ブラストヘッドの内部空間内に収まる位置に配置されていることが好ましい。さらに、前記内筒吊具は、より内側の吊具になるにつれて下方に長く延びると共に、より内側の吊具になるにつれて下方位置に受座が配置された複数の吊具によって更に多重構造にすることができる。
【0011】
前記外筒吊具の外周には、外筒吊具から独立して交換可能なプロテクタが装着されていてもよい。また、前記小ブラストヘッドを複数に分割可能な構造とし、前記外筒吊具から独立して脱着可能なように固定手段によって外筒吊具に連結した構造であってもよい。高温条件下による摩耗・損耗の進行を抑制するために、前記多重構造の最も中心側に位置する吊具に、コークスおよび吊具そのものを冷却するための冷却ガスの流路を形成するようにしてもよい。
【0012】
さらに、外筒吊具が破断して小ブラストヘッドが内筒吊具の受座に着座した補助懸架状態となったことを判別するセンサーを設けることが好ましい。この場合、センサーは、小ブラストヘッドの内部空間内に配置することが好ましい。
【0013】
前記センサーとしては、例えば内筒吊具の受座に着座した小ブラストヘッドを検知するセンサーが一例として挙げられる。或いは、小ブラストヘッドが外筒吊具に懸架された正常懸架状態において接続線が小ブラストヘッドと内筒吊具との間に跨るように配置されると共に、小ブラストヘッドが内筒吊具の受座に着座した補助懸架状態になると前記接続線が切断されるように配置した器具であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小ブラストヘッドを懸架する吊具を、支持部材と小ブラストヘッドを連結する外筒吊具と、外筒吊具が破断したときに小ブラストヘッドを受け止める受座を有する内筒吊具と、による多重構造にしたことにより、例えばコークスによる摩耗や損耗などによって外筒吊具が破断しても、内筒吊具がバックアップ吊具として機能し、小ブラストヘッドの脱落を防止することができる。
【0015】
しかも、小ブラストヘッドが外筒吊具に懸架された正常懸架状態においては、内筒吊具は外筒吊具の内側で保護された状態であり、コークスとの接触が回避されている。従って、内筒吊具は、外筒吊具が破断するまでに摩耗・損耗されることが少ないので、外筒吊具のバックアップとして確実に機能を発揮することができ、またバックアップしてからの耐久性も良い。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態のコークス乾式消火設備を示す概略図である。
【図2】上記コークス乾式消火設備の横断面図である。
【図3】上記コークス乾式消火設備の小ブラストヘッドの吊具を示す図である。
【図4】上記小ブラストヘッドの吊具の作用を示す図である。
【図5】上記小ブラストヘッド周囲のコークスの流れを模式的に示した図である。
【図6】第2実施形態に従うブラストヘッドを示す図である。
【図7】第3実施形態に従うブラストヘッドを示す図である。
【図8】第4実施形態に従うブラストヘッドを示す図である。
【図9】第5実施形態に従うブラストヘッドを示す図である。
【図10】第6実施形態に従うブラストヘッドを示す図である。
【図11】第7実施形態に従うブラストヘッドを示す図である。
【図12】従来のコークス乾式消火設備を示す概略図である。
【図13】従来のコークス乾式消火設備の冷却ガス分配器を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明によるコークス乾式消火設備の好ましい実施形態について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は、以下に説明する実施形態によって何ら限定解釈されることはない。
【0018】
(第1実施形態)
本実施形態のコークス乾式消火設備1は、図1に示すように、上部にコークス装入口10を有するプレチャンバー2と、底部にコークス排出口12を有するクーリングチャンバー3が上下に連結された構成である。プレチャンバー2及びクーリングチャンバー3は、一例として煉瓦等の耐火性材料で形成することができる。そして、例えばコークス炉で生成された高温のコークスが、図示しないバケットなどのコークス搬送装置によってコークス装入口10から装入される。プレチャンバー2内に装入されたコークスは、徐々に降下してクーリングチャンバー3内に供給され、クーリングチャンバー3内を徐々に降下しながら冷却ガス6によって冷却される。
【0019】
クーリングチャンバー3は、下部がコーン形状(例えば、逆円錐形状或いは逆円錐台形状)に形成されており、このコーン部の中央(例えば、中心軸上)に、不活性ガス等の冷却ガスを吹き込む冷却ガス供給手段であると共に、コークスの降下を均一化するためのブラストヘッド7が設けられている。ブラストヘッド7は、図2に示すように、コーン部の側壁を貫通させて設置した略十字形状の支持部材71の上部に、主ブラストヘッド72を載置し、この主ブラストヘッド72の下方に、主ブラストヘッド72よりも外径が小さい小ブラストヘッド73を懸架配置した構造である。懸架する小ブラストヘッド73は1個に限られず、2段以上懸架配置してもよい。
【0020】
主ブラストヘッド72は、特に形状が限定されることはないが、一例として図1に示すように、概ね円錐状に形成された笠部材を有し、この笠部材に形成されたガス噴射口(不図示)から冷却ガス6を周方向に噴射する構造である。小ブラストヘッド73も、特に形状が限定されることはなく、一例として図1に示すように、概ね円錐状に形成された笠部材を有し、鉛直方向に延びる吊具74を介して支持部材71に懸架されている。
【0021】
さらに、冷却ガス6の一部は、例えばクーリングチャンバー3のコーン部の傾斜面に円周上に形成されている冷却ガス供給口75からも供給される。なお、図1に一例として示した主ブラストヘッド72と冷却ガス供給口75の両方から冷却ガス6を供給する構成に限定されることはなく、冷却ガス6は、主ブラストヘッド72のみから供給するようにしてもよく、或いは冷却ガス供給口75のみから供給するようにしてもよい。
【0022】
また、プレチャンバー2の円筒直胴部を周方向に囲むように、冷却ガス6を排出する複数に分割された小煙道4が形成されている。小煙道4には、煙道41が接続されており、除塵器42を介して廃熱ボイラー等の熱回収設備43に接続されている。そして熱回収設備43で冷却されたガスは、ブロワー等の送風手段44によって、再び冷却ガス6としてクーリングチャンバー3内に供給される。
【0023】
続いて、図3を参照しながら、小ブラストヘッド73を懸架する吊具74について説明する。吊具74は、小ブラストヘッド73に掛る荷重を受け持つ重要な部分である。本実施形態のように、支持部材71の上部に主ブラストヘッド72を載置し、その下方に吊具74を介して小ブラストヘッド73を懸架配置する構成においては、この吊具74が最も耐久性が弱い部分である。
【0024】
図3に示すように、小ブラストヘッド73は、縦断面が概ね台形状を有し、その下面が開口する笠部材によって構成されている。但し、小ブラストヘッド73の下面は、閉塞されていてもよく、また後述する冷却ガスの噴射口が形成されていてもよい。吊具74は、小ブラストヘッド73の上部と支持部材74の下部とを連結する外筒吊具76と、この外筒吊具76の内側空間内に配置した内筒吊具77と、によって二重構造になっている。外筒吊具76は、例えば円筒状の部材で形成することができる。内筒吊具77は、例えば円柱状の部材で形成することができる。外筒吊具76、内筒吊具77および小ブラストヘッド73の各々の中心軸は、例えばチャンバーの中心軸上に整列されている。
【0025】
小ブラストヘッド73は、図3に示すように、初期状態では外筒吊具76のみによって懸架されている。内筒吊具77は、外筒吊具76が破断した場合のバックアップ吊具として機能する。従って、説明の便宜上、外筒吊具76によって小ブラストヘッド73が懸架されている状態を「正常懸架状態」と称し、内筒吊具77がバックアップ吊具として小ブラストヘッド73を懸架した状態を「補助懸架状態」と称する。
【0026】
内筒吊具77は、外筒吊具76と干渉しないように隙間を介して、外筒吊具76の内側空間内に配置されている。内筒吊具77の上端側は、支持部材71の下部に接続されている。一方、内筒吊具77の下端側は、小ブラストヘッド73の上部中央に形成されている開口部を貫通し、小ブラストヘッド73の内部空間内にまで延びている。そして、その下端部に小ブラストヘッド73を受け止めるための受座78が配置されている。受座78は、少なくとも前記開口部よりも最大径が大きい部材で構成されている。従って、外筒吊具76が破断する事態が生じたときには、図4に模式的に示すように、小ブラストヘッド73を受座78で受け止め、内筒吊具77による懸架状態となる。
【0027】
受座78は、その上面で小ブラストヘッド73の内側上面を支持する。このとき、受座78の上面と小ブラストヘッド73の内側上面とが面接触する構造であることが好ましい。図3及び図4では、一例として円盤状の板で受座78を構成し、受座78の上面と対向する小ブラストヘッド73の内側上面も水平面に形成している。このような構成とすることにより、正常懸架状態に比べると小ブラストヘッド73の位置が下がるものの、小ブラストヘッド73の姿勢を変えないで懸架状態を確保することが可能である。さらに、受座78の上面と小ブラストヘッド73の内側上面とが面接触する構造にしたことによって、降下するコークスによって小ブラストヘッド73が横揺れするのを抑制することができる。
【0028】
内筒吊具77の下端部および受座78は、必ずしも図3に示されるように小ブラストヘッド73の内側空間内に収まっていなくともよく、小ブラストヘッド73の下面よりも下方に露出されていてもよい。但し、内筒吊具77の下端部および受座78を小ブラストヘッド73の下面よりも下方に露出させる場合にも、小ブラストヘッド73の下方にコークスの安息角によって形成される空間内に収めることが好ましい。このように、正常懸架状態(換言すると、内筒吊具77が待機している状態)において、内筒吊具77がコークスと接触するのを極力避けた方が、その後に補助懸架状態となったときの内筒吊具77の耐久性が良い。
【0029】
なお、外筒吊具76,内筒吊具77,小ブラストヘッド73および支持部材71の材質は、例えば鋼材などを用いることができる。これら部材同士の接続は、溶接等の固着,ボルト等による固定などによって行う。但し、接続方法が限定されることはない。
【0030】
上述のコークス乾式消火設備1においては、コークスは、クーリングチャンバー3内を徐々に降下しながら冷却ガス6によって冷却され、コークス排出装置11によってコークス排出口12から排出される。チャンバー下部でのコークスの流れを見ると、図5に模式的に示すように、コークスは主ブラストヘッド72によって周方向外側に向かう流れに変えられ、炉壁側にあるコークスの流動を促進させる。そして主ブラストヘッド72の下方で安息角により中央に向かう流れを形成する。
【0031】
安息角により中央に向かう流れを形成したコークスは、さらに小ブラストヘッド73によって周方向外側に向かう流れに変えられ、炉壁側にあるコークスの流動を促進させる。そして、小ブラストヘッド73の下方で安息角により中央に向かう流れを形成しながらコークス排出口12より排出される。このようなコークスの整流が行われることによって、チャンバー内のコークスの降下が均一となる。しかも本実施形態のように、小ブラストヘッド73を主ブラストヘッド72の下方位置で懸架配置すれば、吊具74にコークスが接触することが比較的避けられているので、摩耗・損耗が進行し難い。
【0032】
しかし、操業を継続することにより、次第に外筒吊具76が摩耗・損傷し、ついには破断してしまう可能性がある。特に、図4に模式的に示したように、小ブラストヘッド73寄りの位置で破断し易い。外筒吊具76が破断すると、内筒吊具77がいわばガイドとなって作用して、小ブラストヘッド73が概ねその姿勢を維持した状態で落下する。そして内筒吊具77の受座78に受け止められ、これにより図4に示したような内筒吊具77による懸架状態となる。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、クーリングチャンバー3の下部に配置される支持部材71の上部に主ブラストヘッド72を載置し、その下部に吊具74を介して小ブラストヘッド73を懸架配置したコークス乾式消火設備1において、小ブラストヘッド73を懸架する吊具74を、支持部材71と小ブラストヘッド73とを連結する外筒吊具76と、外筒吊具76の内側に配置されると共に外筒吊具76が破断したときに小ブラストヘッド73を受け止める受座78を有する内筒吊具77と、による多重構造にしたことにより、例えばコークスによる摩耗や損耗などによって外筒吊具76が破断しても、内筒吊具77がバックアップ吊具として機能し、小ブラストヘッド73の脱落を防ぐことができる。
【0034】
さらに、本実施形態によれば、バックアップ吊具として機能する内筒吊具77を、外筒吊具76の内側領域内に配置したことにより、小ブラストヘッド73が外筒吊具76に懸架された正常懸架状態においては、内筒吊具77が外筒吊具76によって保護され、コークスとの接触が回避される。従って、内筒吊具77は、外筒吊具76が破断するまでの間に摩耗・損耗することが少ないので、外筒吊具76のバックアップとして確実に機能を発揮することができ、またバックアップしてからの耐久性も良い。受座78を、小ブラストヘッド73の内部空間内に収まる位置に配置すれば、その効果が大きくなる。
【0035】
このように、本実施形態のコークス乾式消火設備1は、小ブラストヘッド73の脱落を抑制可能な構造であり、従って設備を緊急停止する事態が発生するのを防止することができる。
【0036】
また、外筒吊具76及び内筒吊具77は、必ずしも断面が円筒状である必要はなく、矩形状であってもよい。例えば、三角形、四角形、或いはそれ以上の多角形状であってもよい。
【0037】
(第2実施形態)
本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、図6に示すように内筒吊具77をさらに多重構造にしたことを除けば、第1実施形態と同様の構成である。従って、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付すことによって説明を省略する。
【0038】
すなわち、第1実施形態は、外筒吊具76と内筒吊具77による二重構造としたが、補助懸架状態が長く続くと内筒吊具77も破断してしまう場合がある。従って、本実施形態では、図6に示すように、複数の吊具(77A,77B)によって内筒吊具77を多重構造にしている。このとき、より内側の吊具(77A→77B)になるにつれて下方に長く延びると共に、より内側の吊具(77A→77B)になるにつれて下方位置に受座78A,78Bが配置された構成とする。この場合にも、各内筒吊具77A,77Bの下端部と受座78A,78Bが、小ブラストヘッド73の内部領域内、或いは、小ブラストヘッド73の下方にコークスの安息角によって形成される空間内に収まるようにすることが好ましい。
【0039】
本実施形態のように内筒吊具77を多重構造にすれば、外筒吊具76が破断した場合には、先ず外側にある内筒吊具77Aが小ブラストヘッド73を受け止める。そして、この懸架状態が長く続いて内筒吊具77Aが破断しても、さらに内側にある内筒吊具77Bが小ブラストヘッド73を受け止め、小ブラストヘッド73の懸架状態が維持される。
【0040】
上記のような構成であっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態のように内筒吊具77も多重構造とすることによって、より確実にブラストヘッド73の脱落を防止することができる。なお、図6には、内筒吊具77を二重構造にした例を示しているが、それ以上の多重構造にしてもよい。
【0041】
(第3実施形態)
本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、図7に示すように外筒吊具76の外周にプロテクタ8を装着したことを除けば、第1実施形態と同様の構成である。従って、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付すことによって説明を省略する。
【0042】
プロテクタ8は、外筒吊具76とは独立した筒状の部材である。プロテクタ8の材質としては、例えば鋳鋼やステンレス材などを用いる。このとき、溶接などによって外筒吊具76に固着することは行わず、例えば小ブラストヘッド73の外周面上にプロテクタを載せ掛けるようにして支持する。さらに、プロテクタ8は、例えば半分又はそれ以上の数に縦割りした分割構造とし、これらを現場で組み立てることによって外筒吊具76の外周に装着する。分割した部材同士の接続方法は、特に限定されることはない。一例として、例えば溶接等の固着方法、例えばボルト等による固定方法などを採用することが可能である。
【0043】
上記のような構成であっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態のようにプロテクタ8を装着すると、当該プロテクタ8によって外筒吊具76が保護されるので、外筒吊具76が破断する事態の発生を抑制することができる。また、本実施形態は、プロテクタ8が摩耗・損耗した場合にも、吊具74を分解することなくプロテクタ8を単独で取り外すことができ、また新しいプロテクタ8を装着することができる。従って、例えば設備のメンテナンス時に定期的にプロテクタ8を交換するようにすれば、外筒吊具76が破断する事態が発生する確率を、より一層小さくすることが可能である。
【0044】
(第4実施形態)
本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、図8に示すように取り外し可能な固定手段によって吊具74を組み立てたことを除けば、第1実施形態と同様の構成である。従って、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付すことによって説明を省略する。
【0045】
本実施形態では、図8に示すように、小ブラストヘッド73を半分又はそれ以上の数に縦割りした分割構造とし、これらを現場で組み立てることによって外筒吊具76に接続する構成である。小ブラストヘッド73の分割した部材同士の接続、および小ブラストヘッド73と外筒吊具76との接続には、例えばボルト等による取り外し可能な固定手段81を用いる。これにより、小ブラストヘッド73を単独で交換可能にする。
【0046】
すなわち、操業を継続すれば小ブラストヘッド73自体も摩耗・損耗し、交換が必要な事態が発生する。しかし、劣化した小ブラストヘッド73を切断し、新たな小ブラストヘッドを溶接等で取り付けるようにすると、接合箇所に熱履歴が繰り返されるため好ましくない。従って、本実施形態のように、例えばボルト等による取り外し可能な固定手段81を用いて小ブラストヘッド73を単独で交換可能にする。
【0047】
さらに、本実施形態では、外筒吊具76と支持部材71との接続も、例えばボルト等による取り外し可能な固定手段82を用いる。これにより、小ブラストヘッド73と同様に、外筒吊具76も単独で交換可能にする。
【0048】
上記のような構成であっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態のように、溶接等によって固着することは行わず、取り外し可能な固定手段81,82によって各部材同士を接続する構成としたことにより、吊具74の全体を交換するといった大掛かりな作業をすることなく、劣化した部材だけを単独で容易に交換することができる。小ブラストヘッド73,外筒吊具76,内筒吊具77および受座78のすべてが単独で交換可能な構造としてもよく、或いはこれらの一部だけが単独で交換可能な構造であってもよい。
【0049】
(第5実施形態)
本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、図9に示すように内筒吊具77に冷却ガスの流路83を形成したことを除けば、第1実施形態と同様の構成である。従って、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0050】
具体的には、図9に示すように、内筒吊具77の中央を上下に貫通する流路83を形成し、その一端を支持部材71の内部に形成されている冷却ガスの流路84と連通させ、他端を小ブラストヘッド73の内部空間内で開放させた構造とする。すなわち、吊具74を通じて冷却ガスを小ブラストヘッド73に供給し、その下面から周方向に冷却ガス6を噴射する構成である。
【0051】
上記のような構成であっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態のように、吊具74の内部に冷却ガスを流すことによって、吊具74自体が冷やされるので、高温の雰囲気下に置かれることによる劣化を抑制することが可能である。すなわち、小ブラストヘッド73が配置されるチャンバー下部は約200〜300℃程度の温度域となっているが、時には部分的に高温のコークスが降下してくる温度条件の厳しい部位である。そこで、本実施形態のように吊具74を冷やす構造とすることにより、温度による吊具74の劣化を抑制し、外筒吊具76が破断する事態の発生を抑制することができる。
【0052】
なお、内筒吊具77も多重構造とする場合には、多重構造の最も中心側に位置する吊具に、冷却ガスの流路84を形成するようにする。
【0053】
(第6実施形態)
本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、図10に示すように小ブラストヘッド73が補助懸架状態となったことを検知するセンサー9を有することを除けば、第1実施形態と同様の構成である。従って、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0054】
具体的には、図10に示すように、内筒吊具77の下端部(例えば受座78)にセンサー9を配置して、受座78に着座した小ブラストヘッド73をセンサー9が検知する構成とする。センサー9の種類としては、例えば近接センサーなどを採用することができる。この場合、受座78に小ブラストヘッド73が着座したときにセンサー9と対峙する位置にストライカーやマグネットなどのセンサー検知部材91を配置して、この部材91をセンサー9が検知する構成にできる。
【0055】
なお、近接センサー以外にも、レバー式のセンサー、歪ゲージなどの圧力式のセンサーを使用することもできる。レバー式のセンサーの場合、受座78上に着座する小ブラストヘッド73の内壁面によってレバーが倒されることによってセンサー9がオン状態になるように配置する。また、歪ゲージなどの圧力式のセンサーの場合、受座78上に着座する小ブラストヘッド73の荷重を受けてセンサー9がオン状態になるように配置する。
【0056】
但し、小ブラストヘッド73が外筒吊具76に懸架された正常懸架状態と、外筒吊具76が破断して小ブラストヘッド73が内筒吊具77の受座78に着座した補助懸架状態とを判別することができればよく、特にセンサー9の種類が限定されることはない。
【0057】
上記のような構成であっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態のように小ブラストヘッド73が補助懸架状態となったことを検知するセンサー9を配置したことにより、外筒吊具76が破断したことをオペレータが知ることが可能となる。小ブラストヘッド73は内筒吊具77で受け止めるので直ちに設備を停止する必要はない。しかし、外筒吊具76が破断したことを速やかに把握することにより、交換部品の準備を行うと共に、設備を停止して補修するスケジュールを計画することができる。その結果、操業に及ぼす影響を最小限に止めることが可能となる。
【0058】
(第7実施形態)
本実施形態は、第1実施形態の変形例であり、図11に示すように小ブラストヘッド73が補助懸架状態となったことを検知するセンサー92を有することを除けば、第1実施形態と同様の構成である。従って、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0059】
具体的には、図11に示すように、小ブラストヘッド73の内周面にセンサー支持用の部材93を設け、この部材93にセンサー92を配置する。そして、センサー92の接続線(例えば、信号線や電力線など)94の少なくとも一部を、内筒吊具に固定する。この固定点からセンサー92までの接続線94の長さは、たるみを持たせず、小ブラストヘッド73が受座78に着座すると切断する長さにしておく。センサー92の種類は、特に限定されることはないが、一例として接触式又は非接触式の温度計を用いて、小ブラストヘッド73の温度を検出する構成とすることができる。検出した温度は、設備の制御盤などに表示する。
【0060】
この場合、正常懸架状態のときには小ブラストヘッド73の温度が検出されるが、補助懸架状態になると接続線94が切断されて温度が検出されなくなる。オペレータは、温度が検出されなくなったことによって、外筒吊具76が破断したことを知ることができる。
【0061】
上記のような構成であっても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。加えて、本実施形態のように小ブラストヘッド73が補助懸架状態となったことを検知するセンサー92を配置したことにより、第6実施形態と同様の効果を得ることができる。なお、センサー92は、温度計に限定されることはない。
【0062】
なお、第1〜第7実施形態に記載した構造は、別々に実施される必要はなく、これら第1〜第7実施形態に記載した構造いずれかを抽出して組み合わせるようにしてもよい。
【0063】
以上、本発明の一実施形態および実施例について例示をしたが、本発明の精神及び範囲を逸脱しない範囲で多くの修正および変形が可能であることは当業者にとって明らかであり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 コークス乾式消火設備
2 プレチャンバー
3 クーリングチャンバー
4 小煙道
6 冷却ガス
7 ブラストヘッド
71 ブラストヘッド支持部材
72 主ブラストヘッド
73 小ブラストヘッド
74 吊具
8 プロテクタ
9 センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレチャンバーと、プレチャンバーの下部に続くクーリングチャンバーと、クーリングチャンバー内に冷却ガスを供給する冷却ガス供給手段と、前記プレチャンバーの周囲に複数に分割された小煙道を有するコークス乾式消火設備において、
前記クーリングチャンバーの下部に配置されるブラストヘッド支持部材と、この支持部材の上部に載置される主ブラストヘッドと、前記支持部材の下部に吊具を介して1段以上懸架配置される小ブラストヘッドと、を備え、
前記吊具は、支持部材と小ブラストヘッドとを連結する外筒吊具と、外筒吊具が破断したときに小ブラストヘッドを受け止める受座を有する内筒吊具と、による多重構造であることを特徴とするコークス乾式消火設備。
【請求項2】
前記内筒吊具は、小ブラストヘッドの上部中央に形成された開口部を貫通し、且つ、この開口部よりも最大径が大きい受座がその下端部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のコークス乾式消火設備。
【請求項3】
前記内筒吊具は、より内側の吊具になるにつれて下方に長く延びると共に、より内側の吊具になるにつれて下方位置に受座が配置された複数の吊具によって更に多重構造となっていることを特徴とする請求項1又は2に記載のコークス乾式消火設備。
【請求項4】
前記外筒吊具の外周に、外筒吊具から独立して交換可能なプロテクタを装着したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコークス乾式消火設備。
【請求項5】
前記小ブラストヘッドを複数に分割可能な構造とし、前記外筒吊具から独立して脱着可能なように固定手段によって外筒吊具に連結したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコークス乾式消火設備。
【請求項6】
前記多重構造の最も中心側に位置する吊具の内部に、冷却ガスの流路が形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のコークス乾式消火設備。
【請求項7】
小ブラストヘッドが外筒吊具に懸架された正常懸架状態と、外筒吊具が破断して小ブラストヘッドが内筒吊具の受座に着座した補助懸架状態とを判別するセンサーを、前記小ブラストヘッドの内部空間内に配置したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のコークス乾式消火設備。
【請求項8】
前記センサーは、内筒吊具の受座に着座した小ブラストヘッドを検知するセンサーであることを特徴とする請求項7に記載のコークス乾式消火設備。
【請求項9】
前記センサーは、小ブラストヘッドが外筒吊具に懸架された正常懸架状態において接続線が小ブラストヘッドと内筒吊具との間に跨るように配置されると共に、小ブラストヘッドが内筒吊具の受座に着座した補助懸架状態になると前記接続線が切断されるように配置した器具であることを特徴とする請求項7に記載のコークス乾式消火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−122040(P2011−122040A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280079(P2009−280079)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】