説明

コークス乾式消火設備

【課題】クーリングチャンバー内におけるコークスの降下を均一化して、コークスの冷却効率を向上させることのできるブラストヘッドを備えたコークス乾式消火設備を提供する。
【解決手段】コークスを排出するコークス乾式消火設備1において、クーリングチャンバー3の下部に、チャンバーの水平断面における中央に位置するように配置された主ブラストヘッド4と、クーリングチャンバー3の傾斜面における周方向の互いに異なる位置からチャンバーの径方向に延びる複数本の部材によって主ブラストヘッド4を支持する第1の支持部材41と、主ブラストヘッド4の下方に配置され、主ブラストヘッド4よりも小さい直径の小ブラストヘッド43と、前記クーリングチャンバー3の傾斜面における周方向の互いに異なる位置からチャンバーの径方向に延びる複数本の部材によって小ブラストヘッド43を支持する第2の支持部材44と、を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークスの冷却を行うコークス乾式消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所等に設置されるコークス乾式消火設備(Coke Dry Quenching equipment:CDQ)は、コークス炉で乾留された高温のコークスを不活性ガス等の冷却ガスで消火する設備であり、高温のコークスを徐冷ことによってコークスの品質を向上させ、これにより製鉄用高炉の操業安定化を図っている。コークス乾式消火設備は、系内で冷却ガスを循環させることによって、コークス粉塵の飛散を防ぐことができ、さらに省エネのために廃熱ボイラー等の熱回収装置でコークスの顕熱を回収するといった特長を有する。
【0003】
コークス乾式消火設備としては、特許文献1及び2に開示されているような設備が知られている。従来のコークス乾式消火設備1は、図8に示すように、コークス装入口10が上部に形成されたプレチャンバー2と、下部にコークス排出装置11が設けられたクーリングチャンバー3が上下に連結された構成である。クーリングチャンバー3内の底部側中央には、不活性ガス等の冷却ガスを噴射する冷却ガス供給手段であると共に、コークスの降下流れを均一化するためのブラストヘッド4が設けられている。また、冷却ガスの一部は、クーリングチャンバー3の下部にあたる傾斜部に円周上に配置された冷却ガス供給手段(例えば、供給口45)からもクーリングチャンバー3内に供給される。さらに、プレチャンバー2の胴部を周方向に囲むように、冷却ガスを排出する複数に分割された小煙道5が形成されている。
【0004】
上記構成において、コークス装入口10を介して高温のコークス6をチャンバー内に装入し、コークス排出装置11によってチャンバー底部から連続的にコークスを排出する。このとき、チャンバー内を降下するコークス6は、ブラストヘッド4を含むチャンバー下部からの冷却ガスと熱交換して冷却される。一方、熱交換によって高温となった冷却ガスは、小煙道5を通じてチャンバーから排出される。そして、図示は省略するが、排出されたガスは、除塵器を通過した後、廃ガスボイラー等の熱回収装置に供給されて熱回収され、再び冷却ガスとしてチャンバー内に供給される。
【0005】
しかしながら、前述した従来のコークス消火設備では、チャンバーの中央部に比べて、周縁部のコークスの流動が悪く、チャンバー全体としての冷却効率が低いという問題があった。さらに周縁部においても、特に小煙道5の入口近辺におけるコークスの鉛直下向きの流れが悪いと、熱交換後のガスが小煙道5を通過する際に、しばしばコークス塊がガス流れに載って流入し、小煙道5内にコークスが堆積し、或いは小煙道5を閉塞して操業を停止しなければならないという問題が起きていた。さらに、このような問題があることによって冷却ガスの風量が制限されてしまい、増風を行うことできず、結果として設備のコンパクト化を実現するのが困難であった。
【0006】
特許文献5には、バンカ本体内に第1及び第2のガス分配器を配置して、チャンバー下部のロート状の部分におけるコークスの流動を改善することが記載されている。しかしながら、特許文献5は、チャンバー下部のコークスの流動改善を主題とするものであり、小煙道内にコークスが流入するのを抑制できる構造にはなっていない。しかも、特許文献5のようにガス分配器を支持した場合、コークスとの摩耗によってガス分配器が脱落してしまう問題がある。特に、第2のガス分配器の支持部材は、径が小さく、脱落する可能性が高い。
【0007】
【特許文献1】特開2002−265950号公報
【特許文献2】特開2003−183662号公報
【特許文献3】特開昭54−32505号公報
【特許文献4】実開昭62−153352号公報
【特許文献5】実公昭59−17883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、クーリングチャンバー内におけるコークスの降下を均一化して、コークスの冷却効率を向上させることのできるブラストヘッドを備えたコークス乾式消火設備を提供することにある。
【0009】
さらに本発明の他の目的は、コークスとの摩耗等でブラストヘッド(特に、小ブラストヘッド)が脱落してしまうのを抑えることにある。
【0010】
さらに本発明の他の目的は、コークスが小煙道内に流入するのを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のコークス乾式消火設備は、プレチャンバーと、該プレチャンバーの下部に続くクーリングチャンバーと、該クーリングチャンバー内に冷却ガスを供給する冷却ガス供給手段と、前記プレチャンバーの周囲に前記冷却ガスを排出する複数に分割された小煙道を有し、前記プレチャンバーの上部から高温のコークスを投入し、前記冷却ガスにてコークスを冷却し、前記クーリングチャンバーの下部に設けた排出口から冷却されたコークスを排出するコークス乾式消火設備において、クーリングチャンバーの下部に、チャンバーの水平断面における中央に位置するように配置された主ブラストヘッドと、クーリングチャンバーの傾斜面における周方向の互いに異なる位置からチャンバーの径方向に延びる複数本の部材によって主ブラストヘッドを支持する第1の支持部材と、主ブラストヘッドの下方に配置され、主ブラストヘッドよりも小さい直径の小ブラストヘッドと、前記クーリングチャンバーの傾斜面における周方向の互いに異なる位置からチャンバーの径方向に延びる複数本の部材によって小ブラストヘッドを支持する第2の支持部材と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記小ブラストヘッドを支持する部材は、例えば前記主ブラストヘッドを支持する部材と同数であるか又は少ない本数とすることができる。この場合、上からみて前記主ブラストヘッドを支持する部材と重なる位置に配置してもよく、或いは主ブラストヘッドを支持する部材とは重ならない位置に配置してもよい。
【0013】
前記主ブラストヘッドと小ブラストヘッドは、各々の外周端とコークス排出口の中心を結ぶ直線(T1,T2)と、水平軸線とのなす角(θ1,θ2)が65度〜85度の範囲内になるように配置することができる。
【0014】
前記小ブラストヘッドは、該小ブラストヘッドの下方に形成されるコークスの安息角下面からコークス排出口までの距離をHとしたとき、距離Hが前記コークス排出口の口径Dhの1〜5倍の範囲内となる位置に配置することができる。
【0015】
また、主ブラストヘッドと小ブラストヘッドの両方に、冷却ガスを吹き込むガス供給口を設けると共に、各ヘッドを支持する部材の内部に冷却ガスの供給路を設けることができる。
【0016】
さらに、前記プレチャンバーの周囲に設けられる小煙道の下端部の位置を、前記クーリングチャンバーの側壁面より炉芯側であって、且つ、前記主ブラストヘッドの外周先端部までの間に位置させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、クーリングチャンバーの下部に主ブラストヘッドを配置し、この主ブラストヘッドの下方に小ブラストヘッドを配置した構成とし、さらに各ブラストヘッドの支持構造として、クーリングチャンバーの傾斜面における周方向の互いに異なる位置からチャンバーの径方向に延びる複数本の部材で主ブラストヘッドを支持し、同様にクーリングチャンバーの傾斜面における周方向の互いに異なる位置からチャンバーの径方向に延びる複数本の部材で小ブラストヘッドを支持したことにより、チャンバー内におけるコークスの降下のバラツキが改善され、これによりコークスの降下が均一化される。その結果、チャンバー内におけるコークスと冷却ガスの熱交換が均一化され、これによりコークスの冷却効率が向上できる。
【0018】
さらに本発明によれば、上記した支持構造としたことにより、コークスとの摩耗等でブラストヘッド(特に、小ブラストヘッド)が脱落してしまうのを抑えることができる。特に、小ブラストヘッドを支持する部材が、上からみて主ブラストヘッドを支持する部材と重なる位置に配置することによって、より確実に脱落を抑えることができる。
【0019】
さらに本発明によれば、主ブラストヘッドの下方に小ブラストヘッドを配置すると共に、前記プレチャンバーの周囲に設けられる小煙道の下端部の位置を、前記クーリングチャンバーの側壁面より炉芯側であって、且つ、前記主ブラストヘッドの外周先端部までの間に位置させたことにより、小煙道の入口近辺におけるコークスの鉛直下向きの流れが促進される。その結果、コークスが小煙道内に流入するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に従う実施形態のコークス乾式消火設備を示す概略図である。
【図2】上記コークス乾式消火設備の水平断面図である。
【図3】上記コークス乾式消火設備の変形例を示す図である
【図4】上記コークス乾式消火設備のブラストヘッドを示す図である。
【図5】上記ブラストヘッドの作用を説明するための図である。
【図6】上記ブラストヘッドによる効果を説明するための図である。
【図7】上記ブラストヘッドの作用を説明するための図である。
【図8】上記ブラストヘッドの作用を説明するための図である。
【図9】従来のコークス乾式消火設備の概略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明によるコークス乾式消火設備の好ましい実施形態について、添付図面を参照しながら詳しく説明する。但し、本発明の技術的範囲は、以下に説明する実施形態によって何ら限定解釈されることはない。
【0022】
(第1実施形態)
本実施形態のコークス乾式消火設備1は、図1に示すように、上部にコークス装入口10を有するプレチャンバー2と、底部にコークス排出口12を有するクーリングチャンバー3が上下に連結された構成である。プレチャンバー2及びクーリングチャンバー3は、一例として煉瓦等の耐火性材料で形成することができる。そして、例えばコークス炉で生成された高温のコークス6は、図示しないバケットなどのコークス搬送装置によって、コークス装入口10からプレチャンバー2内に装入される。プレチャンバー2内に装入されたコークス6は、徐々に降下してクーリングチャンバー3内に進入する。さらに、クーリングチャンバー3内に進入したコークス6は、徐々に降下しながら冷却ガス7によって冷却され、コークス排出口12に設けられたコークス排出装置11により連続的に排出される。一般的には、コークス排出装置11によりコークス6を連続的に排出し、バッチ方式でコークス6を補充するような操業が行われる。但し、これに限定されるものではない。
【0023】
クーリングチャンバー3は、下部がコーン形状(例えば、逆円錐形状或いは逆円錐台形状)に形成されており、このコーン部の中央(例えば、中心軸上)に、不活性ガス等の冷却ガスを吹き込む冷却ガス供給手段であると共に、コークス6の降下流れを均一化するための主ブラストヘッド4が設けられている。主ブラストヘッド4は、図2に示すように、コーン部の側壁を貫通させて設置した略十字形状の支持部材(第1の支持部材)41によって支持されている。換言すると、第1の支持部材41は、クーリングチャンバー3の側壁から径方向に延びる4本の部材が90°間隔に配置され、これらの4本の部材がチャンバーの水平面内の中央部で連結された構成である。そして、その連結部分の上に主ブラストヘッド4が載置されている。前記4本の部材は、例えば内部に冷却ガスの供給路を有する円筒部材である。断面形状は、特に限定されることはないが、例えば丸形又は矩形とすることができる。
【0024】
なお、図2には、クーリングチャンバー3の周方向に90°間隔で配置した4本の部材によって第1の支持部材41を構成した例を示しているが、径方向に延びる複数本の部材で構成されていればよく、部材の本数と配置位置が限定されることはない。例えば、3本の部材を120°間隔に配置したり、6本の部材を60°間隔に配置したりすることが一例として挙げられる。
【0025】
さらにクーリングチャンバー3のコーン部の外周を囲むようにガス供給室42が形成されており、コーン部の側壁を貫通する第1の支持部材41の端部は、ガス供給室42内にまで延びている。そして、前述したように第1の支持部材41の内部には冷却ガス用のガス流路(不図示)が形成されており、このガス流路を介してガス供給室42に供給される冷却ガスを主ブラストヘッド4に導き、主ブラストヘッド4を通じてチャンバー内に冷却ガスを吹き込むように構成されている。
【0026】
主ブラストヘッド4の下方には、図1及び図2に示すように、主ブラストヘッド4よりも外径が小さい小ブラストヘッド43が設けられている。小ブラストヘッド43は、コーン部の側壁を貫通させて設置した略十字形状の支持部材(第2の支持部材)44によって支持されている。より詳しくは、第2の支持部材44は、クーリングチャンバー3の側壁から径方向に延びる4本の部材が90°間隔に配置され、これらの部材の端部を小ブラストヘッド43の側面に接続することによって小ブラストヘッド43を支持している。
【0027】
小ブラストヘッド43を支持する部材は、図2に示されるように、上からみて主ブラストヘッド4を支持する部材と重なる位置に配置されている。但し、必ずしも重なっていなくともよく、例えば図3に示すように、主ブラストヘッド4を支持する部材と小ブラストヘッド43を支持する部材を互いに位相をずらして配置することもできる。小ブラストヘッド43を支持する部材は、主ブラストヘッド4を支持する部材と太さが同じか、或いは細い部材を用いる。小ブラストヘッド43を支持する部材も、主ブラストヘッド4を支持する部材と同様に、内部に冷却ガスの供給路を有する円筒部材とすることができる。断面形状も、特に限定されることはないが、例えば丸形又は矩形とすることができる。
【0028】
なお、図2及び図3には、クーリングチャンバー3の周方向に90°間隔で配置した4本の部材によって第2の支持部材44を構成した例を示しているが、径方向に延びる複数本の部材で構成されていればよく、部材の本数と配置位置が限定されることはない。例えば、3本の部材を120°間隔に配置したり、6本の部材を60°間隔に配置したりすることが一例として挙げられる。
【0029】
さらに、小ブラストヘッド43は1個に限られず、複数の小ブラストヘッド43を上下方向に配置してもよい。この場合にも、図2及び図3に示した第2の支持部材44を、小ブラストヘッド43ごとに設けて支持するようにする。
【0030】
主ブラストヘッド4は、特に形状が限定されることはないが、一例として図1に示すように、概ね円錐状に形成された笠部材を有し、この笠部材に形成されたガス噴射口(不図示)から冷却ガスを周方向に噴射する構造である。小ブラストヘッド43も、特に形状が限定されることはなく、一例として図1に示すように、概ね円錐状に形成された笠部材を有し、その下面側に形成されたガス噴射口(不図示)から冷却ガスを周方向に噴射する構造である。
【0031】
上記したように、小ブラストヘッド43は、主ブラストヘッド4の直径(口径)Dよりも小さい直径(口径)dにする。好ましくは、図4(a)に示すように、小ブラストヘッド43と主ブラストヘッド4は、各ヘッドの外周端(本例の場合は笠部材の外周端)とコークス排出口12の中心を結ぶ直線(T1,T2)と、水平軸線とのなす角(θ1,θ2)が65度〜85度の範囲内になるように配置する(条件(I))。この条件(I)における「コークス排出口」とは、一例として図4(a)にも示されるように、コーン部の傾斜が終わる位置(すなわち、コーン部の下端面)を意味するものと定義される。なお、なす角(θ1,θ2)の両方が65度〜85度の範囲内であることが好ましいが、少なくとも小ブラストヘッド43のなす角θ1が前記範囲内であれば、主ブラストヘッド4のなす角θ2については前記範囲外とすることもできる。また、図4(a)には、一例として角度θ1,θ2が異なる配置を示しているが、角度θ1とθ2が同じ角度になるように配置してもよい。
【0032】
さらに好ましくは、図4(a)に示すように、小ブラストヘッド43及び主ブラストヘッド4の外周端とコークス排出口12の中心を結ぶ直線(T1,T2)と、水平軸線とのなす角(θ1,θ2)のいずれか小さい角度の方をθ4としたとき、前記コーン部の傾斜角θ3が、θ4〜θ4−25度の範囲内になるようにする(条件(II))。
【0033】
さらに好ましくは、図4(a)に示されるコークス排出口12の口径Dhを、小ブラストヘッド43の直径dの1/2以上(Dh≧0.5d)とする(条件(III))。
【0034】
また、好ましくは、図4(b)に示すように、小ブラストヘッド43は、その下方に形成されるコークス6の安息角で形成される空間の下面(h1)からコークス排出口12までの距離をHとしたとき、距離Hがコークス排出口12の口径Dhの1〜5倍、さらに好ましくは1〜3倍となる位置に配置する(条件(IV))。この条件における「コークス排出口」も、上記した条件(I)と同様に定義される。なお、下面(h1)の高さ位置については、一般的にコークスの安息角は34〜35度であるので、この値を用いて計算又は演算によって算出することができる。但し、これに限らず、コークスのサンプルを用いて安息角を測定するなど、公知の手法によって安息角を求めるようにしてもよい。
【0035】
なお、本実施形態においては、前述の条件(I)及び(IV)いずれか一方を満たすことが好ましいが、より確実にコークスの降下を均一化させるためには条件(I)及び(IV)の両方の条件を満たすことが好ましい。さらに、条件(I)に条件(II)及び/又は(III)を組み合わせることが好ましい。
【0036】
さらに冷却ガスの一部は、クーリングチャンバー3のコーン部の傾斜面に円周上に形成された冷却ガス供給手段(例えば、冷却ガス供給口45)からもクーリングチャンバー3内に供給される。冷却ガス供給口45は、好ましくは図1及び図2に示すように、第1の支持部材41の上面近傍に配置するか、或いは第1の支持部材41と同じ高さに配置することができる。但し、ブラストヘッド4,43と冷却ガス供給口45の両方から冷却ガスを供給する構成に限定されることはなく、ブラストヘッド4,43又は冷却ガス供給口45のいずれか一方から冷却ガスを供給するようにしてもよい。
【0037】
説明を図1に戻すと、プレチャンバー2の円筒直胴部を周方向に囲むように、冷却ガスを排出する複数に分割された小煙道5が形成されている。このとき、図1に示すように、チャンバーの半径方向において小煙道5の下端部55がクーリングチャンバー3の側壁面(炉内面)31より炉芯側(中心軸側)に位置させることが好ましい。すなわち、一例として図1に示すように、クーリングチャンバー3の上方側の側壁を炉芯側に向かって傾斜させ、その上端部に小煙道5の下端部55が連結されている。但し、必ずしも小煙道5を炉芯側に位置させなくともよく、従来構造のようにクーリングチャンバー3の側壁と同じ位置に配置してもよい。小煙道5は、煙道51が接続されており、第1除塵機としてのダストキャッチャ52を介して廃熱ボイラー等の熱回収設備53に接続されている。そして熱回収設備53で冷却されたガスは、第2除塵機54を通過した後、ブロワー等の送風手段55によって、予熱器56に送風され、そして再び冷却ガスとしてクーリングチャンバー3に供給される。これらの構成については公知であるため、詳しい説明については省略する。
【0038】
上述のコークス乾式消火設備1において、コークス装入口10からプレチャンバー2内に装入されたコークス6は、クーリングチャンバー3の底部からの連続的な排出に伴い、徐々に降下してクーリングチャンバー3内に進入する。そして、クーリングチャンバー3内で主ブラストヘッド41及び小ブラストヘッド45並びに供給口44から吹き込まれた冷却ガス7と熱交換することによって冷却され、コークス排出装置11によって排出される。なお、主ブラストヘッド41及び小ブラストヘッド45の単位時間あたりの風量比率は、一例として8:2とするのが好ましい。
【0039】
このように降下のバラツキを改善できる理由について、本発明者らは次のように考えている。すなわち、図5に模式的に示すように、クーリングチャンバー3のコーン部においては、チャンバー中央部を降下するコークスは、主ブラストヘッド4によって周方向外側に流れの向きを変え、降下が遅い壁側のコークスの流動を促進させる。そして主ブラストヘッド4の下方で安息角により中央に向かう流れを形成する。次いで小ブラストヘッド43によって周方向外側に流れの向きを変えてさらに壁側のコークスの流動を促進させ、小ブラストヘッド43の下方で安息角により中央に向かう流れを形成し、コークス排出口12より排出される。コーン部においてこのような流動状態に整流することにより、チャンバー中央部のコークスが主ブラストヘッド4を通過した後に、選択的にコークス排出口12に向けて降下するのが抑制され、壁側のコークスと均一に降下することとなり、その結果、クーリングチャンバー3内の降下のバラツキが改善されるのである。
【0040】
さらに、上述の条件(I)を満たすようにすれば、コークスの内部摩擦角による流動性が低い領域に対して、より効果的に、主ブラストヘッド4及び小ブラストヘッド43によって形成される周方向外側に向かう流れの作用を及ぼすことができ、その結果、より確実に降下のバラツキを改善することが可能となる。すなわち、コークスの内部摩擦角が75度前後にあることに着目し、主ブラストヘッド41及び小ブラストヘッド45の外周端を65度〜85度に設定することによって、内部摩擦角による流動性が低い領域に対する前記周方向外側に向かう流れの作用を、より効果的にしたのである。条件(I)による作用・効果は、さらに条件(II)及び/又は(III)を組み合わせることによって、より効果的となる。
【0041】
さらに、上述の条件(IV)は、小ブラストヘッド43の高さ方向の位置を好適化するものであり、この条件(IV)を満たすようにすれば、より確実に降下のバラツキを改善することが可能となる。すなわち、図6に模式的に示すように、距離Hが口径Dhよりも小さい場合、及び、距離Hが口径Dhの5倍よりも大きい場合に比べて、Dh≦距離H≦5Dhの条件を満たす場合の降下のバラツキは小さくなっている。距離Hが口径Dhの5倍よりも大きい場合(図6(b))、小ブラストヘッド43からコークス排出口12までの距離が長すぎ、小ブラストヘッド43を通過した後のコークスが選択的に中央部を通って降下するからと推察する。反対に距離Hが口径Dhよりも小さい場合(図6(a))、小ブラストヘッド43からコークス排出口12までの距離が短すぎ、小ブラストヘッド43の下方において、周方向外側に向きを変えてさらに安息角により中央に向かう流れが形成される前に排出されてしまうからと推察する。また、図6(a)の場合は、小ブラストヘッド43とチャンバー壁面との間のコークスが通過する空間が狭くなってしまうことも一因と考えられる。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、クーリングチャンバー3の下部に主ブラストヘッド4を配置し、この主ブラストヘッド4の下方に小ブラストヘッド43を配置した構成とし、さらに各ブラストヘッド4,43の支持構造として、クーリングチャンバー3の傾斜面における周方向の互いに異なる位置からチャンバー3の径方向に延びる複数本の部材で主ブラストヘッド4を支持し、同様にクーリングチャンバー3の傾斜面における周方向の互いに異なる位置からチャンバー3の径方向に延びる複数本の部材で小ブラストヘッド43を支持したことにより、チャンバー3内におけるコークスの降下のバラツキが改善され、これによりコークスの降下が均一化される。その結果、チャンバー3内におけるコークスと冷却ガスの熱交換が均一化され、これによりコークスの冷却効率が向上できる。
【0043】
さらに上述の実施形態によれば、各ブラストヘッド4,43の支持構造を、クーリングチャンバー3の傾斜面における周方向の互いに異なる位置からチャンバー3の径方向に延びる複数本の部材で構成したことにより、コークスとの摩耗等でブラストヘッド4,43(特に、小ブラストヘッド43)が脱落してしまうのを抑えることができる。特に、小ブラストヘッド43を支持する部材が、上からみて主ブラストヘッド4を支持する部材と重なる位置に配置することによって、より確実に脱落を抑えることができる。
【0044】
さらに上述の実施形態によれば、主ブラストヘッド4の下方に小ブラストヘッド43を配置すると共に、プレチャンバー3の周囲に設けられる小煙道5の下端部55の位置を、クーリングチャンバー3の側壁面より炉芯側であって、且つ、主ブラストヘッド4の外周先端部までの間に位置させたことにより、小煙道5の入口近辺におけるコークス6の鉛直下向きの流れが促進される。その結果、コークス6が小煙道5内に流入するのを抑制することができる。
【0045】
小煙道5内とその近辺における鉛直下向きの流動を促進させることができる理由として、本発明者らは次のように考えている。すなわち、小煙道5の下端部55の位置をクーリングチャンバー3の側壁面31よりもL1の範囲内で炉芯側に配置すれば、小煙道5の入口近辺のコークス6の流れが、下方向に位置するクーリングチャンバー3の側壁面31により影響されることが無くなるので、流速が低下するのを格段に抑えることができる。これによっても小煙道5内とその近辺におけるコークス6の鉛直下向きの流動が促進されるが、さらにチャンバー3の下部に主及び小ブラストヘッド4,43を配置したことによる炉壁側の流動促進と相俟って、小煙道5内とその近辺におけるコークス6の鉛直下向きの流動がより確実に促進される。その結果、ガス流に載ってコークス6が小煙道5内に流入するのを格段に抑制することが可能となるのである。さらに本実施形態のように構成すれば、たとえ小煙道5内にコークス6が一時的に堆積しても、小煙道5内からの排出(すなわちクーリングチャンバー3内への降下)が促されるので、小煙道5が閉塞されるのを防止することができる。
【0046】
前述のように、小煙道5内とその近辺におけるコークス6の鉛直下向きの流動が確実に促進されることから、本実施形態においては全体としてチャンバー2,3内のコークス6が均一に降下するようになる。実際に設備を稼動させてチャンバー内の降下均一性及び温度分布を測定したところ、チャンバー内のコークスの降下均一性及び温度分布が改善されたことを確認している。換言すると、小煙道5の下端部55の位置をクーリングチャンバー3の側壁面31より炉芯側に位置させると共に、主ブラストヘッド43の下方に小ブラストヘッド44を懸架配置することで、小煙道5内とその近辺におけるコークス6の鉛直下向きの流動が促進されたと理解できる。そして、小煙道5内とその近辺におけるコークス6の鉛直下向きの流動が促進されれば、前述したように、コークス6が小煙道5内に流入するのを格段に抑制することが可能となる。
【0047】
なお、上述の実施形態では、第2の支持部材44で小ブラストヘッド43を直接支持した構成を示したが、これに限定されることはない。図7に示すように、主ブラストヘッド4のように、支持部材44の上に載置するようにしてもよい。或いは、図8に示すように、支持部材44の下に懸架載置するようにしてもよい
【0048】
以上、本発明を具体的な実施形態に則して詳細に説明したが、形式や細部についての種々の置換、変形、変更等が、特許請求の範囲の記載により規定されるような本発明の精神及び範囲から逸脱することなく行われることが可能であることは、当該技術分野における通常の知識を有する者には明らかである。従って、本発明の範囲は、前述の実施形態及び添付図面に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載及びこれと均等なものに基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0049】
1 コークス乾式消火設備
2 プレチャンバー
3 クーリングチャンバー
4 主ブラストヘッド
41 第1の支持部材
43 小ブラストヘッド
44 第2の支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレチャンバーと、該プレチャンバーの下部に続くクーリングチャンバーと、該クーリングチャンバー内に冷却ガスを供給する冷却ガス供給手段と、前記プレチャンバーの周囲に前記冷却ガスを排出する複数に分割された小煙道を有し、前記プレチャンバーの上部から高温のコークスを投入し、前記冷却ガスにてコークスを冷却し、前記クーリングチャンバーの下部に設けた排出口から冷却されたコークスを排出するコークス乾式消火設備において、
クーリングチャンバーの下部に、チャンバーの水平断面における中央に位置するように配置された主ブラストヘッドと、
クーリングチャンバーの傾斜面における周方向の互いに異なる位置からチャンバーの径方向に延びる複数本の部材によって主ブラストヘッドを支持する第1の支持部材と、
主ブラストヘッドの下方に配置され、主ブラストヘッドよりも小さい直径の小ブラストヘッドと、
前記クーリングチャンバーの傾斜面における周方向の互いに異なる位置からチャンバーの径方向に延びる複数本の部材によって小ブラストヘッドを支持する第2の支持部材と、を備えたことを特徴とするコークス乾式消火設備。
【請求項2】
前記小ブラストヘッドを支持する部材は、前記主ブラストヘッドを支持する部材と同数であるか又は少ない本数であって、上からみて前記主ブラストヘッドを支持する部材と重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のコークス乾式消火設備。
【請求項3】
前記小ブラストヘッドを支持する部材は、前記主ブラストヘッドを支持する部材と同数であるか又は少ない本数であって、上からみて前記主ブラストヘッドを支持する部材とは重ならない位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のコークス乾式消火設備。
【請求項4】
前記主ブラストヘッドと小ブラストヘッドは、各々の外周端とコークス排出口の中心を結ぶ直線(T1,T2)と、水平軸線とのなす角(θ1,θ2)が65度〜85度の範囲内になるように配置したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のコークス乾式消火設備。
【請求項5】
前記小ブラストヘッドは、該小ブラストヘッドの下方に形成されるコークスの安息角下面からコークス排出口までの距離をHとしたとき、距離Hが前記コークス排出口の口径Dhの1〜5倍の範囲内となる位置に配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のコークス乾式消火設備。
【請求項6】
前記主ブラストヘッドと小ブラストヘッドの両方に、冷却ガスを吹き込むガス供給口を設けると共に、各ヘッドを支持する部材の内部に冷却ガスの供給路を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のコークス乾式消火設備。
【請求項7】
前記小煙道の下端部の位置を、前記クーリングチャンバーの側壁面より炉芯側であって、且つ、前記主ブラストヘッドの外周先端部までの間に位置させたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のコークス乾式消火設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−207919(P2011−207919A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−73954(P2010−73954)
【出願日】平成22年3月28日(2010.3.28)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】