説明

コークス排出速度の均一化方法及びこの方法を実施するコークス乾式消火設備

【課題】チャンバー内の中心部の排出速度分布を判定し、中心部の排出速度分布の不均衡を是正することが可能なコークス排出速度の均一化方法及びCDQ設備を提供するものである。
【解決手段】赤熱コークスが装入されるプレチャンバーの下部に冷却室3を備え、冷却室3の底にコークス排出装置8が配置され、その下部に排出コンベヤ9が配置され、冷却室3の下部の周辺部に周辺部の温度を測定する温度計T1〜Tnを配置し、冷却室3のファンネル部10に、周辺の各温度計の下の位置にファンネル部内への差し込み量が調整されるニードルバーNB1〜8が配置され、排出コンベヤ9の上部には、コークス排出温度を測定する温度計が配置されているCDQ消火設備において、周辺部の温度とコークス排出温度から冷却室3の周辺部と中心部の排出速度分布を判定する制御装置を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス乾式消火設備(以下「CDQ設備」という。)のチャンバー内周辺部と中心部におけるコークスの排出速度分布を均一化して、コークス冷却の最適化を図るCDQ設備に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉から取り出された赤熱コークスの冷却にCDQ設備が利用されている。CDQ設備は、図3に示すように、消火塔1の上部の装入装置2から赤熱コークスが投入されるプレチャンバー3と、その下部に配置され、降下する赤熱コークスを冷却する冷却室4とから構成されている。プレチャンバー3と冷却室4との間には熱交換されて高温となった冷却用ガスを抜き出す環状のスローピングフリュー5が設けられ、スローピングフリュー5は煙道6に接続されている。
【0003】
冷却室4の下部のファンネル部には、窒素等の不活性ガスからなる冷却用ガスを吹き込む冷却用ガス吹込装置7、コークスを排出するコークス排出装置8が設けられている。
【0004】
コークス炉から搬送されてきた赤熱コークスは、装入装置2からプレチャンバー3に投入され、冷却室4を降下する間に、冷却用ガス吹込装置7から吹き出す冷却用ガスに接触して冷却され、コークス排出装置8から排出される。
【0005】
CDQ設備において、コークスの排出温度の平均化を図るため、特許文献1には、冷却塔下部の外周方向に取り付けられた複数の温度計によって、周方向の温度分布を検出し、ブラストヘッド部又はファンネル部を駆動して、温度の高い部分では、コークス通路の幅を狭めてコークス降下速度を遅くし、逆に温度が低い部分では、コークス通路の幅を広くして、コークス降下速度を速くする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−110592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1の方法では、チャンバー内周辺部のコークス排出温度不均衡を検出して、周辺部のコークス冷却効率の改善を実施しているが、チャンバー中心部のコークス排出温度については適正な温度となっているかの判定ができない。このため、周辺部や中心部を含めたコークスの排出温度分布の均一化による、チャンバー内コークスの最適冷却ができない。
【0008】
そこで、本発明は、CDQ設備のチャンバー内の周辺部と中心部を含めた排出温度を均一化にしてコークスの最適冷却を達成するために、チャンバー内の中心部の排出速度分布を判定し、中心部の排出速度分布の不均衡を是正することが可能なコークス排出速度の均一化方法及びこの方法を実施するコークス乾式消火設備を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、赤熱コークスが装入されるプレチャンバーの下部に冷却室を備え、冷却室の底にコークス排出装置が配置され、コークス排出装置の下部に排出コンベヤが配置され、冷却室の下部の周辺部に周辺部の温度を測定する温度計を複数配置し、冷却室のファンネル部に、周辺の各温度計の下の位置にファンネル部内へ駆動装置により差し込み量が調整されるニードルバーが配置され、排出コンベヤの上部には、コークス排出温度を測定する温度計が配置されているコークス乾式消火設備のコークス排出速度の均一化方法において、次のステップ(S1〜S5)からなることを特徴とするコークス乾式消火設備のコークス排出速度の均一化方法である。S1:冷却室の下部の周辺部に配置された複数の温度計で周辺部温度(T1〜Tn)が測定されるとともに、冷却室から排出されるコークスを搬送する排出コンベヤの上部に配置された温度計でコークス排出温度(Tb)を測定する。S2:周辺部温度(T1〜Tn)から、(T1+T2+・・・・・・・Tn)/n=Taによりチャンバー周辺部平均温度(Ta)を計算する。S3:各周辺部温度と平均温度の差を(|T1−Ta|・・・|Tn−Ta|≦K1)から計算し、設定した判定範囲(K1)と比較し、周辺部温度均一又は周辺部温度不均一を判定する。S4:S3で周辺部温度不均一と判定されると、判定範囲以上の温度(Tn−Ta>K1)を示す箇所があれば、その箇所のコークス排出速度が速いと判定し、判定範囲以下の温度(Tn−Ta<−K1)を示す箇所があれば、その箇所のコークス排出速度が遅いと判定する。S5:S3で周辺部温度均一と判定されると、コークス排出温度(Tb)と周辺部平均温度(Ta)の差(Tb−Ta)を計算し、設定した判定範囲(K2)と比較し、温度の差が、判定範囲内(|Tb−Ta|≦K2)であれば、中心部排出速度は正常と判定し、判定範囲以上の温度(Tb−Ta>K2)を示す箇所があれば、中心部のコークス排出速度が速いと判定し、判定範囲以下の温度(Tb−Ta<−K2)を示す箇所があれば、中心部のコークス排出速度が遅いと判定する。
【0010】
請求項2の発明は、前記S4でチャンバー周辺部の何れかのコークス排出速度が速いと判定した場合は、当該個所のニードルバーの差込み量を多く、遅い場合は差込み量を少なくし、前記S5でチャンバー中心部のコークス排出速度が速いと判定した場合は、全てのニードルバーの差込み量を多く、遅い場合は差込み量を少なくすることを特徴とする請求項1記載のコークス排出速度の均一冷却方法である。
【0011】
請求項3の発明は、赤熱コークスが装入されるプレチャンバーの下部に冷却室を備え、冷却室の底にコークス排出装置が配置され、コークス排出装置の下部に排出コンベヤが配置され、冷却室の下部の周辺部に周辺部の温度を測定する温度計を複数配置し、冷却室のファンネル部に、周辺の各温度計の下の位置にファンネル部内へ駆動装置により差し込み量が調整されるニードルバーが配置され、排出コンベヤの上部には、コークス排出温度を測定する温度計が配置されているコークス乾式消火設備において、前記周辺部の温度と前記コークス排出温度から冷却室の周辺部と中心部の排出速度分布を判定する制御装置を備えることを特徴とするコークス乾式消火設備である。
【0012】
請求項4の発明は、制御装置がチャンバー周辺部の何れかのコークス排出速度が速い場合は、当該個所のニードルバーの差込み量を多く、遅い場合は差込み量を少なく、チャンバー中心部のコークス排出速度が速い場合は、全てのニードルバーの差込み量を多く、遅い場合は差込み量を少なくするニードルバー生後回路を備えることを特徴とする請求項3記載のコークス乾式消火設備である。
【0013】
請求項5の発明は、ニードルバーの差込み量増減後は、一定時間沈静タイマーにて制御状態を保持することを特徴とする請求項4記載のコークス乾式消火設備である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、CDQ設備のチャンバーの周辺部に対する中心部のコークス排出速度分布の不均衡が検出可能となり、その検出結果を用いて中心部や周辺部のコークス排出速度を改善することが可能となる。その結果、コークス冷却効率アップによる回収蒸気量のアップが可能となりまた、排出コークス温度の異常高を抑制できるので輸送用コンベヤベルト焼損防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による方法を実施するためのCDQ設備の模式図で、(a)は縦断面図、(b)は横断面図である。
【図2】本発明による方法のフローを示す図である。
【図3】CDQ設備の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0017】
図1において、CDQ設備は、図3に示すCDQ設備と同じく、プレチャンバー3と冷却室4、環状のスローピングフリュー5を備え、冷却室の底にはコークス排出装置8が配置され、コークス排出装置8の下部に排出コンベヤ9が配置されている。
【0018】
冷却室4の下部の周辺部に複数の温度計T1〜Tnを配置し、周辺部温度を検出する。温度計Tnの数が図1では8個であるが、これに限定されるものではなく、冷却室の規模に応じて、周辺部の温度分布が精確に把握できる数であれば8個以下あるいはそれ以上であってもよい。ファンネル部10の中央には、冷却用ガスが吹き出すブラストヘッド11が配置されている。
【0019】
また、ファンネル部10には、周辺の各温度計T1〜Tnに対応してその下方にニードルバーNB1〜NB8が配置される。ニードルバーNB1〜NB8は駆動装置によりファンネル部内への差し込み量が調整される。ニードルバーのファンネル部内への差し込み量を変えることによりコークスの降下速度を調整してコークスの排出速度を制御する。すなわち、ニードルバーの差し込み量が大きくなるにつれてコークスの降下が妨げられて排出速度が遅くなり、逆に、ニードルバーの差し込み量が小さくなるにつれてコークスの降下が増して排出速度が遅くなる。
【0020】
排出コンベヤ9の上部には、コークス排出温度を測定する温度計10が配置されている。
【0021】
CDQ設備は制御装置11を備える。制御装置11は、各温度計T1〜Tnの測定値が入力されて速度分布判定を演算するコークス排出速度分布判定回路12、速度分布判定結果が入力されてニードルバーの差込み量増減指令を出力するコークス排出速度均一制御回路13、差込み量増減指令により差込み量増減信号を出力するニードルバー駆動回路14を備える。
【0022】
制御装置は図2に示すフローにしたがってCDQ設備を制御する。
【0023】
図2にしたがって、制御のステップについて説明する。
【0024】
1−1):チャンバー下部の周辺部の排出速度分布の判定
S1:周辺部温度(T1〜Tn)、コークス排出温度(Tb)を測定する。
S2:周辺部温度(T1〜Tn)から、
(T1+T2+・・・・・・・Tn)/n=Ta
によりチャンバー周辺部平均温度(Ta)を計算する。
S3:各周辺部温度と平均温度の差を計算し、設定した判定範囲(K1)と比較する。
(|T1−Ta|・・・|Tn−Ta|≦K1)
K1は、20〜30℃に設定する。全ての周辺部温度の差が、判定範囲内であれば、コークス排出速度は均一と判定する。
S4:判定範囲以上の温度(Tn−Ta>K1)を示す箇所があれば、その箇所のコークス排出速度が速いと判定する。
判定範囲以下の温度(Tn−Ta<−K1)を示す箇所があれば、その箇所のコークス排出速度が遅いと判定する。
1−2):チャンバー下部の中心部の排出速度分布の判定
S5:コークス排出温度(Tb)と周辺部平均温度(Ta)の差(Tb−Ta)を計算し、設定した判定範囲(K2)と比較する。K2は、10〜20℃に設定する。
2)温度の差が、判定範囲内(|Tb−Ta|≦K2)であれば、中心部排出速度は正常と判定する。
3)判定範囲以上の温度(Tb−Ta>K2)を示す箇所があれば、中心部のコークス排出速度が速いと判定する。
4)判定範囲以下の温度(Tb−Ta<−K2)を示す箇所があれば、中心部のコークス排出速度が遅いと判定する。
【0025】
2:排出速度分布の均一化制御
1)チャンバー周辺部の何れかのコークス排出速度が速い場合は、当該個所のニードルバーの差込み量を多く、遅い場合は差込み量を少なく制御して、排出速度を均一に制御する。
2)チャンバー中心部のコークス排出速度が速い場合は、全てのニードルバーの差込み量を多く、遅い場合は差込み量を少なく制御して、周辺部と中心部の排出速度の均一化を図る。
3)差込み量増減後は、周辺部や中心部の温度の変化を待つため、沈静タイマーにて制御状態を保持する。10〜15分の降下時間の間の温度変化を監視する。
4)沈静タイマー経過後は、再度上述制御をサイクリックに行う。
【符号の説明】
【0026】
1:消火塔
2:装入装置
3:プレチャンバー
4:冷却室
5:スローピングフリュー
6:煙道
7:冷却用ガス吹込装置
8:コークス排出装置
9:排出コンベヤ
10:ファンネル部
11:制御装置
12:コークス排出速度分布判定回路
13:コークス排出速度均一制御回路
14:ニードルバー駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤熱コークスが装入されるプレチャンバーの下部に冷却室を備え、冷却室の底にコークス排出装置が配置され、コークス排出装置の下部に排出コンベヤが配置され、冷却室の下部の周辺部に周辺部の温度を測定する温度計を複数配置し、冷却室のファンネル部に、周辺の各温度計の下の位置にファンネル部内へ駆動装置により差し込み量が調整されるニードルバーが配置され、排出コンベヤの上部には、コークス排出温度を測定する温度計が配置されているコークス乾式消火設備のコークス排出速度の均一化方法において、次のステップ(S1〜S5)からなることを特徴とするコークス乾式消火設備のコークス排出速度の均一化方法。
S1:冷却室の下部の周辺部に配置された複数の温度計で周辺部温度(T1〜Tn)が測定されるとともに、冷却室から排出されるコークスを搬送する排出コンベヤの上部に配置された 温度計でコークス排出温度(Tb)を測定する。
S2:周辺部温度(T1〜Tn)から、
(T1+T2+・・・・・・・Tn)/n=Ta
によりチャンバー周辺部平均温度(Ta)を計算する。
S3:各周辺部温度と平均温度の差を
(|T1−Ta|・・・|Tn−Ta|≦K1)
から計算し、設定した判定範囲(K1)と比較し、周辺部温度均一又は周辺部温度不均一を判定する。
S4:S3で周辺部温度不均一と判定されると、判定範囲以上の温度(Tn−Ta>K1)を示す箇所があれば、その箇所のコークス排出速度が速いと判定し、判定範囲以下の温度(Tn−Ta<−K1)を示す箇所があれば、その箇所のコークス排出速度が遅いと判定する。
S5:S3で周辺部温度均一と判定されると、コークス排出温度(Tb)と周辺部平均温度(Ta)の差(Tb−Ta)を計算し、設定した判定範囲(K2)と比較し、温度の差が、判定範囲内(|Tb−Ta|≦K2)であれば、中心部排出速度は正常と判定し、判定範囲以上の温度(Tb−Ta>K2)を示す箇所があれば、中心部のコークス排出速度が速いと判定し、判定範囲以下の温度(Tb−Ta<−K2)を示す箇所があれば、中心部のコークス排出速度が遅いと判定する。
【請求項2】
前記S4でチャンバー周辺部の何れかのコークス排出速度が速いと判定した場合は、当該個所のニードルバーの差込み量を多く、遅い場合は差込み量を少なくし、前記S5でチャンバー中心部のコークス排出速度が速いと判定した場合は、全てのニードルバーの差込み量を多く、遅い場合は差込み量を少なくすることを特徴とする請求項1記載のコークス排出速度の均一冷却方法。
【請求項3】
赤熱コークスが装入されるプレチャンバーの下部に冷却室を備え、冷却室の底にコークス排出装置が配置され、コークス排出装置の下部に排出コンベヤが配置され、冷却室の下部の周辺部に周辺部の温度を測定する温度計を複数配置し、冷却室のファンネル部に、周辺の各温度計の下の位置にファンネル部内へ駆動装置により差し込み量が調整されるニードルバーが配置され、排出コンベヤの上部には、コークス排出温度を測定する温度計が配置されているコークス乾式消火設備において、
前記周辺部の温度と前記コークス排出温度から冷却室の周辺部と中心部の排出速度分布を判定する制御装置を備えることを特徴とするコークス乾式消火設備。
【請求項4】
制御装置がチャンバー周辺部の何れかのコークス排出速度が速い場合は、当該個所のニードルバーの差込み量を多く、遅い場合は差込み量を少なく、チャンバー中心部のコークス排出速度が速い場合は、全てのニードルバーの差込み量を多く、遅い場合は差込み量を少なくするニードルバー生後回路を備えることを特徴とする請求項3記載のコークス乾式消火設備。
【請求項5】
ニードルバーの差込み量増減後は、一定時間沈静タイマーにて制御状態を保持することを特徴とする請求項4記載のコークス乾式消火設備。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−219638(P2011−219638A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90819(P2010−90819)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)
【Fターム(参考)】