説明

コークス炉バケット車運転方法

【課題】赤熱コークス受骸からCDQに向けての移動までのサイクルタイムを短縮することが可能なコークス炉バケット車運転方法を提供する。
【解決手段】バケット車4上のバケット3を旋回させてコークス炉1からの赤熱コークスを受骸した後、バケット3の旋回を減速し、バケット3の旋回速度がバケット車4の走行に支障のない所定旋回速度以下になったらバケット車4をCDQ2に向けて移動する。また、バケット車4をCDQ2に向けて移動し始めた後も、バケット吊り手位置決め用所定旋回速度でバケット3を旋回し、バケット3が吊り手位置になったらバケット3の旋回を停止することにより、バケット車4がCDQ2に到着したときにはバケット吊り手位置決めが完了しており、効率がよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コークス炉から窯出しされた赤熱コークスをコークス乾式消火設備に搬送するバケット車の運転方法に関し、特にバケット車上のバケットを旋回させながら赤熱コークスを受骸するバケット車に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
コークス炉で乾留された赤熱コークスはバケット車上のバケットに受骸され、コークス乾式消火設備(以下、CDQとも記す)に搬送される。CDQでは、赤熱コークス受け入れ部から冷却塔内に赤熱コークスを投入し、当該冷却塔内に貯留されているコークスに冷媒となる循環ガスを供給し、その循環ガスとの熱交換によりコークスを消火する。
バケット車上のバケットで赤熱コークスを受骸する際、例えば下記特許文献1に記載されるように、バケットを旋回させながら受骸すると、赤熱コークスをバケット内に均一に積載することができる。ちなみに、下記特許文献1では、バケットの両側に位置する吊りフレーム機構の外枠部をバケット下部の下すぼまりの部分に収めることで、狭い受骸スペースでも使用可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開公報WO07/105513号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バケットを旋回させながら赤熱コークスを受骸するバケット車では、赤熱コークスの受骸が完了した後、バケットの旋回を減速し、バケットの旋回が完全に停止してからCDQに向けて移動するようにしている。バケットを旋回させながら赤熱コークスを受骸する場合、バケットをCDQの受け入れ部で吊り下げるための吊り下げ位置決めを行うために、赤熱コークスの受骸完了後、バケットを低速の位置決め用所定旋回速度で旋回させている。つまり、従来は、赤熱コークスの受骸が完了した後も、バケットを位置決め用所定旋回速度で旋回して吊り下げ位置決めを行い、然る後、バケットの旋回を停止し、バケットの旋回が完全に停止してからバケット車をCDQに向けて移動する。このため、赤熱コークス受骸からCDQ到着までのバケット車のサイクルタイムが長く、操業効率がよくないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、赤熱コークス受骸からCDQ到着までのサイクルタイムを短縮することが可能なコークス炉バケット車運転方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のコークス炉バケット車運転方法は、コークス炉から窯出しされた赤熱コークスをコークス乾式消火設備に搬送するバケット車の運転方法であって、バケット車上のバケットを旋回させてコークス炉からの赤熱コークスを受骸した後、バケットの旋回を減速し、バケットの旋回速度がバケット車の走行に支障のない所定旋回速度以下になったらバケット車をコークス乾式消火設備に向けて移動することを特徴とするものである。
【0007】
また、前記バケットの旋回速度がバケット車の走行に支障のない所定旋回速度以下になってバケット車をコークス乾式消火設備に向けて移動し始めた後も、バケット吊り手位置決め用所定旋回速度でバケットを旋回することを特徴とするものである。
また、前記バケットの旋回速度がバケット車の走行に支障のない所定旋回速度以下になってバケット車をコークス乾式消火設備に向けて移動し始めた後、バケット吊り手位置決め用所定旋回速度でバケットを旋回し、バケットが吊り手位置になったらバケットの旋回を停止することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
而して、本発明のコークス炉バケット車運転方法によれば、バケット車上のバケットを旋回させてコークス炉からの赤熱コークスを受骸した後、バケットの旋回を減速し、バケットの旋回速度がバケット車の走行に支障のない所定旋回速度以下になったらバケット車をコークス乾式消火設備に向けて移動することとしたため、赤熱コークス受骸からCDQに向けての移動までのサイクルタイムを短縮することができる。
【0009】
また、バケットの旋回速度がバケット車の走行に支障のない所定旋回速度以下になってバケット車をコークス乾式消火設備に向けて移動し始めた後も、バケット吊り手位置決め用所定旋回速度でバケットを旋回することとしたため、バケット車がCDQに向けて移動しているときにバケット吊り手位置決めを行うことができ、効率がよい。
また、バケットの旋回速度がバケット車の走行に支障のない所定旋回速度以下になってバケット車をコークス乾式消火設備に向けて移動し始めた後、バケット吊り手位置決め用所定旋回速度でバケットを旋回し、バケットが吊り手位置になったらバケットの旋回を停止することとしたため、バケット車がCDQに到着したときにはバケット吊り手位置決めが完了しており、効率がよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のコークス炉バケット車運転方法の一実施形態を示すコークス炉及びCDQの概略平面図である。
【図2】図1のコークス炉及びCDQ間に配設されたバケット台車及びバケットの一例を示す概略構成図である。
【図3】図1のコークス炉バケット車運転方法のフローチャートである。
【図4】図3のコークス炉バケット車運転方法の作用を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明のコークス炉バケット車運転方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のコークス炉バケット車運転方法が適用されたコークス炉及びCDQの概略平面図である。図中に示す符号1はコークス炉であり、炉幅方向に多数併設されている。コークス炉1は、周知のように、石炭を貯留する炭化室と燃焼バーナーを燃焼する燃焼室とを交互に備え、炭化室の炉頂部に設けられた装入口から石炭を装入し、燃焼室の顕熱で炭化室内の石炭を乾留してコークスを生成する。コークスは、窯口の炉蓋を外した状態で、押出機により炉外に押出される。
【0012】
図1の符号2はCDQ(コークス乾式消火設備)である。CDQ2は、赤熱コークスを投入して冷却する冷却塔を備え、冷却塔内は、例えば上部の保持槽と、下部の冷却槽を備える。赤熱コークスは、バケット3によって冷却塔上部の保持槽に投入され、冷却されたコークスが冷却槽の下部から切り出しゲート、ベルトコンベヤを経て排出される。冷却槽では、下部から循環ガスが吹き込まれ、その循環ガスは冷却槽内のコークスの隙間を通過して上部から排出される。この間に、循環ガスとコークスとの熱交換が行われ、コークスが冷却される。
【0013】
コークス炉1から押し出された(窯出しされた)赤熱コークスは、図示しないコークガイドを経てバケット3に受骸される。バケット3は、バケット車4に牽引されるバケット台車5上に搭載されている。図2にバケット台車5及びバケット3の一例を示す。バケット3は、底部に排出ゲートと、前記排出ゲートを開閉する機能を有する吊りフレーム機構6とを備える。バケット台車5は、赤熱コークスを受骸したバケット3を吊り上げ搭載すると共にバケット3を旋回させる旋回機構7とを備える。
【0014】
吊りフレーム機構6は、図示しないクレーンの吊りフックが係止される係止ピン8、係止ピン8の下方に延設された吊り金物9、吊り金物9に取付けられたフック10を備えて構成される。また、バケット3の外周面には排出ゲート開閉機構11が取付けられ、この排出ゲート開閉機構11にキャッチングブロック12が連設されている。クレーンの吊りフックを係止ピン8に係止して吊り金物9を吊り上げると、フック10がキャッチングブロック12に係合してバケット3を吊り上げることができる。バケット3をCDQ2の冷却塔上方に吊り上げたら、排出ゲート開閉機構11で排出ゲートを開き、受骸された赤熱コークスをCDQ2の冷却塔に投入する。
【0015】
旋回機構7は、バケット3をキャッチングブロック12や排出ゲート開閉機構11ごと旋回させる旋回部13と、旋回部13の回転軸を回転させるモータ14とを備えて構成される。
図3には、赤熱コークス受骸開始からCDQ到着までのバケット車運転方法のフローを示す。このフローでは、まずステップS1で、バケット3の旋回を開始する。
【0016】
次にステップS2に移行して、コークス受骸速度でバケット3を旋回する。本実施形態のコークス受骸速度は9rpmとした。
次にステップS3に移行して、赤熱コークスの受骸が完了したか否かを判定し、赤熱コークスの受骸が完了した場合にはステップS4に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS4では、バケット3の旋回減速を開始する。
【0017】
次にステップS5に移行して、バケット3の旋回速度が、バケット車4の走行に支障のない所定旋回速度以下になったか否かを判定し、バケット3の旋回速度が、バケット車4の走行に支障のない所定旋回速度以下になった場合にはステップS6に移行し、そうでない場合には待機する。本実施形態のバケット車4の走行に支障のない所定旋回速度は0.3rpmとした。ちなみに、このバケット車4の走行に支障のない所定旋回速度については、バケット3が旋回した状態でバケット車4が走行しても、炉やバケット、バケット台車が干渉等により設備破損しない速度を設定すればよい。
ステップS6では、バケット車4をCDQ2に移動させる。
【0018】
次にステップS7に移行して、バケット3を位置決め用所定旋回速度で旋回する。位置決め用所定旋回速度とは、前記旋回機構7でバケット3ごと旋回されたキャッチングブロック12及び排出ゲート開閉機構11がフック10及び吊り金物9に対向するバケット吊り手位置までバケット3を旋回する速度であり、本実施形態の吊り手位置決め用所定旋回速度は0.3rpmとした。ちなみに、この吊り手位置決め用所定旋回速度については、バケット旋回がバケット吊り手位置を検出して、バケット吊り手位置に停止できる速度を設定すればよい。
【0019】
次にステップS8に移行して、バケット3がバケット吊り手位置か否かを判定し、バケット3がバケット吊り手位置である場合にはステップS9に移行し、そうでない場合にはステップS7に移行する。
ステップS9では、バケット3の旋回を停止する。
次にステップS10に移行して、バケット3がCDQ2の赤熱コークス受け入れ部に到着したか否かを判定し、バケット3がCDQ2の赤熱コークス受け入れ部に到着した場合にはステップS11に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS11では、バケット車4を停止して復帰する。
【0020】
図4には、図3のフローによるバケット3の旋回速度及びバケット車4の移動速度の経時変化を示す。このフローでは、バケット3の旋回開始からバケット3の旋回速度が増速し、コークス受骸速度である9rpmに到達した時点から当該コークス受骸速度で定速旋回し、その状態で赤熱コークスを受骸する。赤熱コークスの受骸が完了したらバケット3の旋回速度を減速し始め、バケット3の旋回速度がバケット車走行に支障のない所定旋回速度であり且つ位置決め用所定旋回速度でもある0.3rpmになったら、位置決め用所定旋回速度、即ち0.3rpmで定速旋回し始め、それと同時にバケット車4をCDQ2に向けて移動し始める。バケット3が吊り手位置になったらバケット3の旋回を停止する。また、バケット車4がCDQ2の赤熱コークス受け入れ部に到着したらバケット車4を停止する。
【0021】
従来は、赤熱コークスの受骸完了後、更に位置決め用所定旋回速度でバケット3を旋回し、バケット3が吊り手位置になってバケット3の旋回が完全に停止してから、図に二点鎖線で示すようにバケット車4の移動を開始していた。そのため、赤熱コークス受骸からCDQ2到着までのサイクルタイムが長く、操業効率がよくないという問題がある。これに対し、本実施形態のコークス炉バケット車運転方法では、バケット車4上のバケット3を旋回させてコークス炉1からの赤熱コークスを受骸した後、バケット3の旋回を減速し、バケット3の旋回速度がバケット車4の走行に支障のない所定旋回速度以下になったらバケット車4をCDQ2に向けて移動することとしたため、赤熱コークス受骸からCDQ2到着までのサイクルタイムを短縮することができる。
【0022】
また、バケット3の旋回速度がバケット車4の走行に支障のない所定旋回速度以下になってバケット車4をCDQ2に向けて移動し始めた後も、バケット吊り手位置決め用所定旋回速度でバケット3を旋回することとしたため、バケット車4がCDQ2に向けて移動しているときにバケット吊り手位置決めを行うことができ、効率がよい。
また、バケット3の旋回速度がバケット車4の走行に支障のない所定旋回速度以下になってバケット車4をCDQ2に向けて移動し始めた後、バケット吊り手位置決め用所定旋回速度でバケット3を旋回し、バケット3が吊り手位置になったらバケット3の旋回を停止することとしたため、バケット車4がCDQ2に到着したときにはバケット吊り手位置決めが完了しており、効率がよい。
【0023】
なお、前記実施形態では、バケット車の走行に支障のない所定旋回速度やバケット吊り手位置決め用所定旋回速度を0.3rpmとしたが、これらは設備や操業の実態に合わせて適宜に設定すべきものであって、当然ながら前記実施形態の数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0024】
1はコークス炉、2はCDQ(コークス乾式消火設備)、3はバケット、4はバケット車、5はバケット台車、6は吊りフレーム機構、7は旋回機構、8は係止ピン、9は吊り金物、10はフック、11は排出ゲート開閉機構、12はキャッチングブロック、13は旋回部、14はモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コークス炉から窯出しされた赤熱コークスをコークス乾式消火設備に搬送するバケット車の運転方法であって、バケット車上のバケットを旋回させてコークス炉からの赤熱コークスを受骸した後、バケットの旋回を減速し、バケットの旋回速度がバケット車の走行に支障のない所定旋回速度以下になったらバケット車をコークス乾式消火設備に向けて移動することを特徴とするコークス炉バケット車運転方法。
【請求項2】
前記バケットの旋回速度がバケット車の走行に支障のない所定旋回速度以下になってバケット車をコークス乾式消火設備に向けて移動し始めた後も、バケット吊り手位置決め用所定旋回速度でバケットを旋回することを特徴とする請求項1に記載のコークス炉バケット車運転方法。
【請求項3】
前記バケットの旋回速度がバケット車の走行に支障のない所定旋回速度以下になってバケット車をコークス乾式消火設備に向けて移動し始めた後、バケット吊り手位置決め用所定旋回速度でバケットを旋回し、バケットが吊り手位置になったらバケットの旋回を停止することを特徴とする請求項2に記載のコークス炉バケット車運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−87271(P2012−87271A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237662(P2010−237662)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】