説明

コークス炉室のフレームのための洗浄装置

本発明は、工具担持体(1)を備えたコークス炉室(3)のフレームのための洗浄装置であって、前記工具担持体がコークス炉室(3)の支持スタンド(2)の間に位置決め可能であり、かつコークス炉室(3)のフレーム(5)のための洗浄機器(4)を備えており、工具担持体(1)にはプレート状に構成された封隙部(6)が設けられている洗浄装置に関する。本発明によれば、封隙部材(6)はコークス炉室(3)とは反対を向いた工具担持体(1)の裏側に固定されている。封隙部材(6)は垂直に整向されており、裏側の高さを完全に覆っている。封隙部材(6)は工具担持体(1)に不動に固定された少なくとも一つの中間部分(7)ならびに側方扉(8)から成り、その際、側方扉(8)は垂直軸線(9)上で中間部分(7)と回転運動可能に接続している。側方扉(8)は支持スタンド(2)の端面(10)に対する、コークス炉室(3)の方向への調節運動により可動である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具担持体を備えたコークス炉室のフレームのための洗浄装置であって、前記工具担持体がコークス炉室の支持スタンドの間に位置決め可能であり、かつコークス炉室のフレームのための洗浄機器を備えており、工具担持体にはプレート状に構成された封隙部が設けられている洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現代のコークス製造工場において、コークス炉室の気密な隔離を保証するためには、完成したコークスがコークス炉から排出された後、普通一般に、コークス炉室のフレームが洗浄装置により洗浄される。この場合、洗浄装置はコークス炉制御装置の上に設けられている。コークス炉室のフレームを洗浄する際に、コークス炉バッテリの操作者にとっての汚染であり、そのため吸引される排出物質が生じる。しかしながら、メイン通路に沿って流れる水平方向の空気流あるいは開放したコークス炉室を貫流する空気流は、コークス炉が稼動しているときには避けられないので、排出物質は水平方向の空気流により渦流される。従って排出物質の大部分は完全に吸引できない。
【0003】
従来技術から、メイン通路に沿って流れる横風に対して、コークス炉の上流の領域を遮蔽することが知られている。特許文献1には、コークス炉のフレームのための洗浄装置を備えたコークス炉制御装置が記載されている。コークス炉制御装置には、メイン通路に対して横方向に配置された二つの防風壁が設けられている。二つの防風壁の間には、水平方向の空気流に対する遮蔽領域がメイン通路に沿って形成されている。この場合、防風壁はコークス炉室の上流側の大きな領域を遮蔽し、かつコークス炉制御装置の前面からメイン通路を経由して、コークス炉の支持スタンド、あるいはコークス炉室の前面まで延在している。しかしながら、防風壁はメイン通路までならびに支持スタンドもしくはコークス炉室の前面まで特定の間隔を有しており、従って遮蔽される領域はメイン通路に沿って流れる空気流から完全には保護されていない。さらに防風壁は、開放したコークス炉室を貫流する空気流が、生じる排出物質を完全に捕捉し、かつ吸引するのには不利であることを考慮していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際特許出願第2007/025638号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この工業技術上の背景から見て本発明の課題は、コークス炉室フレームの洗浄時に生じる十分な排出物質を完全に捕捉しかつ吸引することを保証する、コークス炉室のフレームのための洗浄装置を。提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、封隙部材がコークス炉室とは反対を向いた工具担持体の裏側に固定されており、その際、封隙部材が垂直に整向されており、裏側の高さが完全に覆われていること、
封隙部材が工具担持体に不動に固定された少なくとも一つの中間部分ならびに側方扉から成り、その際、側方扉が垂直軸線上で中間部分と回転運動可能に接続していること、および
側方扉がコークス炉室の方向への調節運動により支持スタンドの端面に対して可動であることにより解決される。
【0007】
調節運動により、側方扉でもって支持スタンドの端面に当接する封隙部材は、水平方向の空気の動きに対して遮蔽されたコークス炉室の前室(Vorraum)を形成している。なぜなら封隙部材は一方ではコークス炉室の支持スタンドをメイン通路に沿った空気の運動に対する保護部として利用し、他方では、工具担持体の高さを完全に覆っている。コークス炉室の前室のこのような完全な封隙により、コークス炉室のフレームを洗浄する際に生じる排出物質が検出され、かつコークス炉室の領域から導出される。コークス炉室の前室、従って洗浄排出物質(Reinigungsemission)が生じる領域だけが遮蔽されている。というのもコークス炉室を備えたフレームのための洗浄機器を備えた工具担持体は遮蔽された領域の内側にあるからである。さらに、封隙部材はメイン通路の領域内では延在しておらず、従って他の働きあるいは作動ステップを実行するためには、この領域は操作員のために自由にしたままである。
【0008】
本発明の好ましい実施形態において、側方扉は、支持スタンドの端面に対する工具担持体の調節運動により可動である。工具担持体がコークス炉室の前の作動位置にあるとすぐに、コークス炉室の前室は封隙されている。
【0009】
本発明の他の好ましい実施形態において、支持スタンドの端面に対する、垂直軸線を中心にした工具担持体の調節運動により側方扉を運動させるために、側方扉に調節装置が割当てられている。このようにして、工具担持体がすでにその作動位置にあると、側方扉は支持スタンドの端面に遅れて動く。結果として、一方において基本的な“封隙姿勢”は、作り易く、そのため側方扉は支持スタンドの端面に当接する。他方において、側方扉が支持スタンドの端面に当接していないか、あるいは不完全に当接しいるだけだと、整向していない“封隙姿勢”は遅れて修正することができる。
【0010】
両側方扉が各々、支持スタンドの端面の方向に湾曲した端部を備えており、この端部により側方扉が端面に当接していると合理的である。これにより生じる支持スタンドと側方扉の間の小さい接触面により、高い接触圧力を伝達することができ、したがって封隙が改善される。さらに、湾曲した端部の小さい接触面は、例えば平坦な封隙プレートの広い接触面に比べて良好に当接するので、例えばコークス堆積物あるいは塵埃堆積物は、端面に発生した凹凸により埋め合わせができる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、両側方扉には押圧装置が割当てられており、この押圧装置の作用により、両側方扉が端面に当接している。調節あるいは押圧装置は、前記とは異なる封隙力を形成しており、したがって改善された封隙作用が側方扉と支持スタンドの端面の間にある。調節あるいは押圧装置は弾性バネもしくは液圧シリンダであるのが好ましい。バネのバネ定数もしくは液圧シリンダの力を介して、改善された封隙作用は正確に調節された、特有の封隙力により達成可能である。
【0012】
本発明の特に好ましい実施形態の範囲において、中間部分はU字状に形成されており、その際中間部分はコークス炉に対して平行に整向された中間ウェブ、ならびにこの中間ウェブに接続している脚部15を備えている。側方扉は脚部端部に回転可能に支承されている。この回転可能な支承により、側方扉は独立した調節運動に必要な旋回領域を覆っている。U字状の中間部分は、工具担持体がコークス炉室フレームを洗浄するための作業位置に先行していると、支持スタンドの間の領域内にある。このようにして、洗浄排出物質が生じる、封隙される領域は減少している。コークス炉室の前室は、完全でかつ最適な
洗浄排出物質の捕捉に関してできるだけ良好に覆われている。
【0013】
工具担持体は、コークス炉室のフレームの堆積物を機械的に洗浄するための少なくとも一つの機器、好ましくはスクレーパを備えていてもよい。例えば高圧水噴射ノズルのような他の洗浄機器が設けられていてもよいことは自明である。これらの洗浄機器は基本的に、従来技術から当業者に知られている。
【0014】
工具担持体の上方には吸引装置が設けられていてもよい。この吸引装置は封隙される領域、すなわちコークス炉の出入り口前方の、支持スタンド間のコークス炉室の前室を覆っており、かつその吸引出力により、この領域内で生じる洗浄排出物質の量に適合するように調節されている。本発明による装置により、生じる洗浄排出物質は十分捕捉可能であるので、場合によっては必要以上に大きい吸引出力の導入は回避することができる。その他に、本発明による装置はコークス炉バッテリの両側で、コークス排出機の側にも、コークス搬送機の側にも配置されているのは自明である。
【0015】
以下に本発明を単に一実施例を示した図だけを基にして説明する。唯一の図は、本発明によるコークス炉のフレームのための洗浄装置の水平断面図を概略的に示している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるコークス炉室のフレーム用の洗浄装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0017】
図示した装置の基本的な構造には、工具担持体(Werkzeugtraeger)1が所属しており、この工具担持体はコークス炉室3の支持スタンド(Ankerstaender)2の間に位置しており、かつコークス炉室3のフレーム5のための洗浄機器4を備えており、ならびに工具担持体1に設けられている、プレート状に形成された封隙部6を備えている。図から、封隙部6がコークス炉室3とは反対を向いた工具担持体1の裏側に固定されていることがわかる。封隙部6は垂直方向に整向されており、かつ工具担持体1の裏側をその高さにわたって覆っている。さらに図において、封隙部6は工具担持体1に可動に固定された少なくとも1つの中間部分7ならびに側方扉8から成る。側方扉8は垂直な軸9において中間部分7と回転運動可能に接続している。側方扉8は調節運動(Stellbewegung)によりコークス炉室3の方向へ支持スタンド2の端面10に対して可動である。調節運動部により、封隙部材6は、その側方扉8と当接している支持スタンド2の端面10と協働して、水平方向の噴射空気から保護されたコークス炉室の前室を形成している。一方において、本発明による装置は、コークス炉室3の空気の動きに逆らう支持部としての支持スタンド2を利用する。他方において、工具担持体1の裏側に固定された封隙部材6は、開放されたコークス炉室3により生じる空気の動きを阻む。図から、唯一コークス炉室と同時にただ洗浄排出物質が発生する領域だけが保護されていることがわかる。その際、フレーム5のための洗浄機器4を備えた工具担持体1はこの保護された領域内にある。
【0018】
側方扉8は、工具担持体1の調節運動により支持スタンド2の端面10に対して可動である。なぜなら本発明による洗浄装置は、通常コークス炉バッテリーの前面で動かされるコークス炉操作機械上に設けられているからである。工具担持体1がコークス炉室フレーム5を洗浄するための工具担持体の作業位置に着くと同時に、コークス炉室の前空域は、
側方扉8が支持スタンド2の端面10に当接しているので封隙されている。
【0019】
さらに図には、側方扉8に調節装置11が割当てられていることが示してある。側方扉8は、独立した調節動作を備えた調節装置11の作動により、支持スタンド2の端面10に対して垂直軸線9を中心にして可動である。このようにして、側方扉8は工具担持体1がすでにその作業位置にある際に、さらに支持スタンド2に対して遅れて可動となっている。一方においては、基本的な“封隙姿勢”は調節可能であり、従って側方扉8は支持スタンド2の端面10に当接する。他方においては、この独立した調節動作により、不十分な“封隙姿勢”は、側方扉8が支持スタンド2の端面10に当接しない場合に、もしくは側方扉8が支持スタンド2の端面10に不完全にしか当接しない場合に修正することができる。
【0020】
側方扉8は各々、支持スタンド2の端面10の方向に湾曲した、図から見て取れるような端部12を備えている。湾曲した端部12により、側方扉は端面10に当接する。このようにして、支持スタンド2と側方扉8の間の接触面は生じないことがわかる。調節動作により引き起こされる封隙力は、この小さい接触面を介して側方扉8から支持スタンド2の端面10へと伝達する。端面10における堆積物により生じた凹凸は、側方扉8のこのような形態により可能な範囲で最良に均一化することができる。
【0021】
同様に図示したように、側方扉8には押圧装置13が割当てられており、この押圧装置の作用により、側方扉8は端面10に当接する。押圧装置13は前記封隙力とは異なる封隙力を加える。このように向上した封隙作用により、横風に逆らう最適シールドと
コークス炉室フレームの洗浄時に生じる十分な排出物質の捕捉が可能になる。図示した実施例において、押圧装置13は液圧シリンダとして構成されている。液圧シリンダの助力により、正確に調節された特有の封隙力が側方扉8に加わり、従って最適な封隙作用が達せられる。
【0022】
図において、側方扉8が調節運動により、支持スタンド2の端面10に対して平行に整向可能であることが同様に示してある。このようにして、側方扉8は斜めでもなくあるいは垂直にでもなく端面10に当接しており、したがって横風による乱流に対する最適な保護は可能であることが保証されている。さらに、保護された領域からの排出物質の意図的ではない流出は阻止される。
【0023】
図から中間部分7はU字形状であることがわかる。中間部分7はコークス炉室3に対して平行に整向された中間ウェブ14ならびにこの中間ウェブと接続している脚部15を備えている。この脚部15の端部には側方扉8が回転可能に支承されている。この構造上の形態により、工具担持体1がコークス炉室フレーム5を洗浄するための作業位置にあると、中間部分7は支持スタンド2の間の領域内に配置されている。この形態により、封隙すべき領域を減らすことができる。支点の垂直軸線9を介して、独立した調節運動のための側方扉8の旋回性は保障されている。
【0024】
図示した実施例において、工具担持体1はコークス炉室フレームの堆積物を機械的に洗浄するための唯一の装置を備えている。図示した洗浄機器4の他に、別の洗浄機器4が設けられていてもよいことがわかる。この洗浄機器4は従来技術から公知であり、かつ例えば高圧水噴射ノズルであってもよい。
【0025】
工具担持体1の上方には、図示していない吸引装置が設けられている。この吸引装置は
支持スタンド2、コークス炉室の正面ならびに工具担持体1の前面の間のコークス炉室の前室の封隙された領域を完全に覆っており、かつ従来技術から知られた吸引フードとして形成されていてもよい。正確に区画されたコークス炉室の前室の領域により、必要以上に大きい吸引出力の導入は回避することができる。本発明による洗浄装置は、コークス炉一式の両側では、コークス押込み機械の側にも、コークス搬送機械の側に配置されていてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具担持体(1)を備えたコークス炉室(3)のフレームのための洗浄装置であって、前記工具担持体がコークス炉室(3)の支持スタンド(2)の間に位置決め可能であり、かつコークス炉室(3)のフレーム(5)のための洗浄機器(4)を備えており、工具担持体(1)にはプレート状に構成された封隙部(6)が設けられている洗浄装置において、
封隙部材(6)がコークス炉室(3)とは反対を向いた工具担持体(1)の裏側に固定されており、その際、封隙部材(6)が垂直に整向されており、裏側の高さを完全に覆っていること、
封隙部材(6)が工具担持体(1)に不動に固定された少なくとも一つの中間部分(7)ならびに側方扉(8)から成り、その際、側方扉(8)が垂直軸線(9)上で中間部分(7)と回転運動可能に接続していること、および
側方扉(8)が支持スタンド(2)の端面(10)に対する、コークス炉室(3)の方向への調節運動により可動であることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
側方扉(8)が、支持スタンド(2)の端面(10)に対する工具担持体(1)の調節運動により可動であることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
支持スタンド(2)の端面(10)に対する、垂直軸線(9)を中心にした工具担持体(1)の調節運動により側方扉(8)を運動させるために、側方扉(8)に調節装置(11)が割当てられていることを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項4】
両側方扉(8)が各々、支持スタンド(2)の端面(10)の方向に湾曲した端部を備えており、この端部により側方扉が端面(10)に当接していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の洗浄装置。
【請求項5】
両側方扉(8)には押圧装置(13)が割当てられており、この押圧装置の作用により、両側方扉(8)が端面(10)に当接していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の洗浄装置。
【請求項6】
押圧装置(13)がバネもしくは液圧シリンダであることを特徴とする請求項5記載の洗浄装置。
【請求項7】
中間部分(7)がU字状に形成されており、その際中間部分(7)がコークス炉(3)に対して平行に整向された中間ウェブ(14)、ならびにこの中間ウェブに接続している脚部(15)を備えていること、および側方扉(8)が脚部(15)の端部に回転可能に支承されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一つに記載の洗浄装置。
【請求項8】
工具担持体(1)が、コークス炉室のフレーム(5)の堆積物を機械的に洗浄するための少なくとも一つの機器、好ましくはスクレーパを備えていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の洗浄装置。
【請求項9】
工具担持体(1)の上方に吸引装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一つに記載の洗浄装置。

【図1】
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【公表番号】特表2010−540702(P2010−540702A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−526179(P2010−526179)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007268
【国際公開番号】WO2009/043422
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(390035460)ウーデ・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング (21)
【Fターム(参考)】