説明

コークス炉消火車

【課題】落骸防止装置を有するコークス炉消火車において、コークスが洩れることを的確に防止することができる落骸防止装置を有するコークス炉消火車を提供する。
【解決手段】落骸防止装置10は、アーム12を介して落骸防止板13がボルト14を回転軸にして上下方向に回転可能になっており、開閉扉1が赤熱コークスで熱変形して、落骸防止板13と底板2の間に隙間が生じそうになっても、落骸防止板13が自重で回転・降下して底板2に接触し、生じそうになった隙間を埋めて、コークスが洩れることを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落骸防止装置を有するコークス炉消火車に関する。
【背景技術】
【0002】
コークス炉消火車に設置される落骸防止装置は、コークス炉消火車の開閉扉と底板の隙間からコークスが洩れるのを防ぐために、開閉扉の下部に設置される装置である。
【0003】
従来の落骸防止装置は、特許文献1や特許文献2に記載されるように、落骸防止用金属ブラシや、鋼板と組み合わせた弾性板(ゴム板等)からなる落骸防止板を開閉扉に固定した構造であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭58−061439号公報
【特許文献2】実公昭53−025008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の従来技術(特許文献1、2)では、落骸防止板等を固定している開閉扉が高温の赤熱コークスにより熱変形すると、落骸防止板等と底板の間に隙間が生じ、その隙間からコークスが洩れてしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、落骸防止装置を有するコークス炉消火車において、コークスが洩れることを的確に防止することができる落骸防止装置を有するコークス炉消火車を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0008】
[1]開閉扉と底板の隙間からコークスが落下することを防止するための落骸防止装置を有するコークス炉消火車において、前記落骸防止装置は、開閉扉に固定された軸を中心に上下方向に回転して底板に接触する落骸防止板を備えていることを特徴とするコークス炉消火車。
【0009】
[2]前記落骸防止板は、水を溜めることができるようになっていることを特徴とする前記[1]に記載のコークス炉消火車。
【0010】
[3]前記落骸防止板は、その側断面に沿った長さが800〜1000mmであることを特徴とする前記[1]または[2]に記載のコークス炉消火車。
【0011】
[4]前記落骸防止板は、先端部の断面形状が円弧であることを特徴とする前記[1]〜[3]のいずれかに記載のコークス炉消火車。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコークス炉消火車は、設置されている落骸防止装置によりコークスの洩れを的確に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】コークス炉消火車の正面図である。
【図2】コークス炉消火車の側面図である。
【図3】本発明の一実施形態における落骸防止装置を示す側面図である。
【図4】本発明の一実施形態における落骸防止装置を示す平面図である。
【図5】本発明の一実施形態における落骸防止装置を示す平面図である。
【図6】本発明の一実施形態における落骸防止装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1、図2に、本発明の一実施形態におけるコークス炉消火車を示す。図1は正面図であり、図2は側面図である。ここで、図1、図2において、1が開閉扉、2が底板、10が落骸防止装置である。
【0016】
そして、図3、図4に、本発明の一実施形態における落骸防止装置を示す。図3は側面図であり、図4は平面図である。
【0017】
図3、図4に示すように、この実施形態における落骸防止装置10は、ベース11と、アーム12と、落骸防止板(落骸防止材)13を備えている。そして、ベース11は開閉扉1に固定され、アーム12はベース11にボルト14で連結され、落骸防止板13はアーム12に固定されている。なお、ベース11、アーム12、落骸防止板13は全て鋼製である。
【0018】
ここで、アーム12は、図4に示したように、落骸防止板13の中央部1箇所に設置してもよいし、例えば図5、図6に示すように、落骸防止板13の複数箇所(図5では2箇所、図6では3箇所)に設置してもよい。
【0019】
これにより、アーム12を介して落骸防止板13がボルト14を回転軸にして上下方向に回転可能になっている。
【0020】
このような構成とすることによって、この実施形態においては、開閉扉1が赤熱コークスで熱変形して、落骸防止板13と底板2の間に隙間が生じそうになっても、落骸防止板13が自重で回転・降下し、底板2に接触する。これにより、落骸防止板13と底板2の間に生じそうになった隙間を埋めて、コークスの洩れを的確に防止することができる。
【0021】
また、特許文献1、2に記載されているような従来の落骸防止用金属ブラシやゴム板製の落骸防止板では耐久性(耐熱性)が不充分で、維持コストが掛かるという問題があるが、本発明の一実施形態においては、落骸防止板13に耐熱性が低い金属ブラシやゴム板を有していないので、落骸防止板13は良好な耐久性が得られ、維持コストが安価になる。
【0022】
なお、ここでは、落骸防止板13の先端部13aは、その側断面が上方に開口部を有する円弧状の断面になっている。このように、落骸防止板13の先端部13aの側断面を円弧状とすることによって、底板2と滑らかに接触しながら隙間を埋めることが可能になる。
【0023】
そして、落骸防止板13の長さ(落骸防止板13の側断面に沿った長さ)は800〜1000mmとするのが好ましい。落骸防止板13の長さが800mmより短くなると、コークスの重さに押されて、落骸防止板13が上方に開いてしまう可能性があり、落骸防止板13の長さが1000mmより長くなると、開閉扉1が熱変形した際に、その影響を受けてアーム12が回転せずに、落骸防止板13が降下できなくなる可能性があるからである。
【0024】
なお、コークスの消火は、消火塔において大量の冷却水をかけて行なうので、その冷却水を落骸防止板13の先端部13aに設けた開口部から導入して、落骸防止板13の先端部13aに水を溜めれば、落骸防止板13の自重を増加させることができ、落骸防止板13の長さが短い場合でも、コークスの重さに対抗することが可能になる。
【0025】
また、前述したように、特許文献1、2に記載されているような従来の金属ブラシや弾性板(ゴム板)等からなる落骸防止板では耐久性(耐熱性)が不充分で、維持コストが掛かるという問題があったが、ここでは、落骸防止板13の先端部13aに溜めた水の冷却効果によって、落骸防止板13の熱変形を防止することができる。これにより、落骸防止板13は一層良好な耐久性(耐熱性)が得られ、維持コストがさらに安価になる。
【0026】
ちなみに、消火塔において散水された冷却水が自動的に落骸防止板13の先端部13aに補給されるので、別途に水を補給する必要は無く、効果的である。
【0027】
このようにして、この実施形態においては、設置されている落骸防止装置10がコークスの洩れを的確に防止することができるとともに、落骸防止装置10は耐久性が良好であり、維持コストが安価である。
【実施例1】
【0028】
本発明の実施例を述べる。
【0029】
上記の本発明の一実施形態における落骸防止装置10(可動式の落骸防止板13)を備えている場合を本発明例とし、落骸防止板13の先端部13aに水を溜める場合を本発明例1、落骸防止板13の先端部13aに水を溜めない場合を本発明例2とした。
【0030】
一方、前記の特許文献2に記載されるような、鋼板と組み合わせたゴム板からなる固定式の落骸防止板を有する落骸防止装置を備えている場合を従来例1とし、前記の特許文献1に記載されるような、固定式の落骸防止用金属ブラシを有する落骸防止装置を備えている場合を従来例2とした。
【0031】
そして、それぞれの場合について、コークス洩れ防止効果と半年間使用した耐久性について評価した。その結果を表1に示す。なお、コークス洩れ防止効果と耐久性のそれぞれについて、非常に良好(◎)、良好(○)、やや不良(△)、不良(×)の4段階で評価した。
【0032】
【表1】

【0033】
その結果、表1に示すように、本発明例1では、コークス洩れを充分に防止できて、コークス洩れ防止効果は非常に良好であるとともに、落骸防止板の熱変形も防止でき、耐久性も非常に良好であった。また、本発明例2では、コークス洩れ防止効果と耐久性がともに良好であった。
【0034】
これに対して、従来例1および従来例2では、落骸防止板や落骸防止用金属ブラシが熱変形して、コークス洩れ防止効果が小さく、耐久性にも劣っていた。
【符号の説明】
【0035】
1 開閉扉
2 底板
10 落骸防止装置
11 ベース
12 アーム
13 落骸防止板(落骸防止材)
13a 落骸防止板の先端部
14 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉扉と底板の隙間からコークスが落下することを防止するための落骸防止装置を有するコークス炉消火車において、前記落骸防止装置は、開閉扉に固定された軸を中心に上下方向に回転して底板に接触する落骸防止板を備えていることを特徴とするコークス炉消火車。
【請求項2】
前記落骸防止板は、水を溜めることができるようになっていることを特徴とする請求項1に記載のコークス炉消火車。
【請求項3】
前記落骸防止板は、その側断面に沿った長さが800〜1000mmであることを特徴とする請求項1または2に記載のコークス炉消火車。
【請求項4】
前記落骸防止板は、先端部の断面形状が円弧であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のコークス炉消火車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−77287(P2012−77287A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164893(P2011−164893)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)