説明

コートされたプラスチック基材

本発明は、a)表面を有するプラスチック基材、b)実質的に酸素の無い状態で、その基材の表面上に蒸着させた第1のプラズマ重合された有機ケイ素化合物である定着剤層、およびc)SiO1.8-2.40.3-1.00.7-4.0のケイ素ポリマーを生ずるのに十分に化学量論的に過剰の酸素の存在下で、106 J/kg〜108 J/kgの出力密度において、その定着剤層の表面上に蒸着させた第2のプラズマ重合された有機ケイ素化合物である保護コーティング層、を含んでいるラミネートである。そのコーティング層は、耐摩耗性および耐溶剤性を、その基材に与え、その定着剤は、そのコーティング層がその基材から剥がれ落ちるのを防ぐ。そのコートされた基材は、ガラス代替品のとして液晶ディスプレイ装置に使用することができる。

【発明の詳細な説明】
コートされたプラスチック基材 本発明はコートされたプラスチック基材であり、その1つの態様は液晶ディスプレイ装置において有用なものとすることができる。そのコーティングはその基材を摩耗および溶媒劣化から保護する。
現在、改良された堅牢性を有する、薄く、軽い液晶ディスプレイに対する要求がある。この要求は、高価な携帯用装置が10セントのガラスの破損から破滅的な故障を被るという事実により明示されている。そのうえ、すべての実際の故障の過半数が、このような破損に起因している装置もある。それらの優れた可撓性および耐衝撃性のために、プラスチック基材は液晶ディスプレイ装置(LCD)における基材として使用するためのガラスの代替品を提供する。プラスチック基材は、製造過程における改良された収率により、ガラス基材を超える経済的な利点をも提供する。
しかしながら、改良された堅牢性のために、ガラス基材に固有の利点を犠牲にすることはできない。プラスチックが、えり抜きの基材となるためには、それらは、a)光学的透明性、b)そのディスプレイを加工するのに必要とされる温度、概して少なくとも160℃における安定性、c)低い複屈折、d)ディスプレイの生産において使用される化学薬品に対する耐性、e)光安定性、f)耐引掻性、g)硬度、およびh)電気抵抗、を包含する一定の物理的性質を有するように設計されているのが望ましい。
従って、ガラス基材の上述の欠点を克服する、LCDおよび他の用途のためのガラスの代替品を発見するのが望ましいであろう。
図1は、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンおよびビスフェノールAの共重合カーボネートの応力光係数(stress optical coefficient)(SOC)およびガラス転移温度(Tg)のグラフである。
第1の特徴において、本発明は、 a)表面を有するプラスチック基材、 b)実質的に酸素の無い状態で、接着のための界面の化学反応を起こすのに十分な出力レベルにおいて、その基材の表面上に蒸着させた第1のプラズマ重合された有機ケイ素化合物である定着剤層、および c)工程b)におけるよりも高いレベルの酸素の存在下で、106 J/kg〜108 J/kgの出力密度において、その定着剤層の表面上に蒸着させた第2のプラズマ重合された有機ケイ素化合物である保護コーティング層、を含んでいるラミネートである。
第2の特徴において、本発明は、 a)表面および0.1mm〜10mmの厚みを有するプラスチック基材、 b)実質的に酸素の無い状態で、その基材の表面上に蒸着させたプラズマ重合されたテトラメチルジシロキサンであって、定着剤が1000Å〜2000Åの厚みを有する定着剤層、 c)閉じ込められた水および以下の官能基 −Si−O−Si−、−Si−CH2−、−Si−H、または−Si−OHの少なくとも1つを含む式SiO1.8-2.40.3-1.00.7-4.0を有する有機ケイ素化合物を生ずるのに十分に化学量論的に過剰の酸素の存在下で、106 J/kg〜108 J/kgの出力密度において、その定着剤層の表面上に蒸着させたプラズマ重合されたテトラメチルジシロキサンであって、その厚みが0.1ミクロン以上、2ミクロン以下である保護コーティング層、および d)化学量論的に過剰の酸素の存在下で、その保護コーティング層を形成させるのに使用される出力密度の少なくとも4倍の出力密度において、その保護コーティング層の表面上に蒸着させたプラズマ重合されたテトラメチルジシロキサンの層であって、0.1ミクロン以上、1ミクロン以下の厚みを有するSiOx層、を含んでいるラミネートである。
本発明のラミネートは、層状のコーティングの存在のおかげで、摩耗および溶媒に対して耐性である。なおそのうえ、それらのコーティングは、上記定着剤層の存在のおかげで、剥離に対して耐性である。
本発明のラミネートに使用される基材は、熱可塑性または熱硬化性の材料であってもよい。好適な熱可塑性材料の例には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリメタクリレートエステル、ポリアクリル酸、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリアクリロニロリル、ポリアミド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、フッ素含有樹脂、およびポリスルホンが包含されている。熱硬化性材料の例としては、エポキシおよび尿素メラミンがある。
上記基材の厚みは用途次第であるけれども、好ましくは0.1mm以上、より好ましくは0.3mm以上、もっとも好ましくは0.5mm以上であり、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、もっとも好ましくは2mm以下である。
上記基材の表面を、まず、その基材の表面上に蒸着させた有機ケイ素化合物のプラズマ重合から生ずる定着剤層でコートする。その定着剤層を生ずる有機ケイ素化合物のプラズマ重合は、接着のための界面の化学反応を起こすのに十分な出力レベル、好ましくは5×107 J/kg〜5×109 J/kgの出力レベルにおいて行う。その定着剤層は、キャリヤーガス、例えば酸素の無いまたは実質的に無い状態で調製する。「酸素の実質的に無い状態」
とは、本明細書中では、そのプラズマ重合過程に存在する酸素の量が、その有機ケイ素化合物中のすべてのケイ素および炭素を酸化するのには不十分であるということを意味している。同様に、「化学量論的に過剰の酸素」とは、本明細書中では、存在する酸素の全モル数が、その有機ケイ素化合物中のケイ素および炭素の全モル数よりも多いということを意味している。
上記定着剤層の厚みは用途次第であり、好ましくは50Å以上、より好ましくは500Å以上、もっとも好ましくは1000Å以上であり、好ましくは10000Å以下、より好ましくは5000Å以下、もっとも好ましくは2000Å以下である。
上記定着剤層を、次に、その定着剤層を形成させるのに使用されるよりも高いレベルの酸素の存在下で、106 J/kg〜108 J/kgの出力密度において、その定着剤層の表面上に蒸着させたプラズマ重合された有機ケイ素化合物である保護コーティング層でコートする。好ましくは、その保護コーティング層は、化学量論的に過剰の酸素の存在下で形成させる。
上記基材のための保護コーティング層の厚みは、主として、そのコーティングおよびその基材の性質に依存するけれども、一般に、その基材に耐溶剤性を付与するのに十分厚い。そのコーティングの厚みは、好ましくは0.1ミクロン以上、より好ましくは0.4ミクロン以上、もっとも好ましくは0.8ミクロン以上であり、好ましくは10ミクロン以下、より好ましくは5ミクロン以下、もっとも好ましくは2ミクロン以下である。
上記ラミネートは、化学量論的に過剰の酸素の存在下で、上記保護コーティング層を形成させるのに使用される出力密度の少なくとも2倍、より好ましくは少なくとも4倍、もっとも好ましくは少なくとも6倍の出力密度において、その保護コーティング層の表面上に蒸着させたプラズマ重合された有機ケイ素化合物であるSiOx層を任意に含んでいてもよい。便宜上、この層をSiOx層と呼ぶけれども、そのSiOx層は水素および炭素の原子を含んでいてもよい。そのSiOx層の厚みは、一般に、その保護コーティング層の厚みよりも薄く、好ましくは0.01ミクロン以上、より好ましくは0.02ミクロン以上、もっとも好ましくは0.05ミクロン以上であり、好ましくは5ミクロン以下、より好ましくは2ミクロン以下、もっとも好ましくは1ミクロン以下である。
上記定着剤層を、上記保護コーティング層と上記SiOx層との交互の層でコートするのも望ましい。その保護コーティング層とそのSiOx層との厚みの比は、好ましくは1:1以上、より好ましくは2:1以上であり、好ましくは10:1以下、より好ましくは5:1以下である。
上記有機ケイ素ポリマーコーティングは、有機ケイ素化合物、例えばシラン、シロキサン、またはシラザンから調製する。シランの例には、ジメトキシジメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、メチルトリエトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、テトラエトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)ビニルシラン、フェニルトリエトキシシラン、およびジメトキシジフェニルシランが包含されている。シロキサンの例には、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)およびヘキサメチルジシロキサンが包含されている。シラザンの例には、ヘキサメチルシラザン、およびテトラメチルシラザンが包含されている。
上記有機ケイ素ポリマーコーティングは、米国特許第5,298,587号において開示されているように、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)技法によりつけられているのが好ましい。
本発明の1つの特徴においては、上記ラミネートは光学的に透明であり、-2000〜+2500ブリュースターの範囲の応力光係数(SOC)および好ましくは160℃〜270℃の範囲のTg(示差走査熱分析により測定する)を有する基材を含んでいる。
その基材のSOCは、好ましくは-1000ブリュースター以上、より好ましくは-500ブリュースター以上、もっとも好ましくは-100ブリュースター以上であり、好ましくは1000ブリュースター以下、より好ましくは500ブリュースター以下、もっとも好ましくは100ブリュースター以下である。その基材のTgは、好ましくは180℃以上、より好ましくは190℃以上、もっとも好ましくは200℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは240℃以下、もっとも好ましくは230℃以下である。本明細書中で使用されている「光学的に透明」という用語は、その基材が、ASTMのD-1003に準じて測定した場合に、少なくとも80パーセント、好ましくは少なくとも85パーセントの全光透過率値を有するということを意味している。
液晶ディスプレイ用途のためには、上記基材はカーボネートポリマーを含んでいるのが好ましく、そのカーボネートポリマーは希望するSOCおよびTgを有するホモポリマーまたはコポリマーまたはブレンドであってもよい。その基材は、好ましくは芳香族ポリオール、より好ましくは芳香族ジオールと、カーボネート先駆物質との反応生成物であるカーボネートポリマーを含んでいる。芳香族ジオールの典型的な例には、レソルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン、ジヒドロキシフェナントレン、ジヒドロキシビフェニル、およびビス(ヒドロキシフェニル)プロパンが包含されている。好ましいとされる芳香族ジオールには、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンおよびビスフェノールAが包含されている。
これらのカーボネートポリマーの調製に使用するのに好適なカーボネート先駆物質は当該分野においてよく知られており、炭酸誘導体、ホスゲン、ハロホルメート、または炭酸エステル、例えば炭酸ジメチルもしくは炭酸ジフェニルを包含している。それらのカーボネートポリマーは、界面法、溶液法、または溶融法(それらのすべてが当該分野においてよく知られている)を包含するさまざまな重合方法により調製することができる。
上記基材は、好ましくはジヒドロキシアリールフルオレンモノマーの繰り返し単位とビスフェノールモノマーの繰り返し単位とを、より好ましくは9,9’-ジヒドロキシアリールフルオレンの繰り返し単位とビスフェノールAの繰り返し単位とを含むカーボネートポリマーを含んでいる。9,9’-ジヒドロキシアリールフルオレン単位とビスフェノールA単位との比は、好ましくは30:70以上、より好ましくは40:60以上であり、好ましくは90:10以下、より好ましくは70:30以下である。
図1は、9,9-ビスヒドロキシフェニルフルオレン(BHPF)およびビスフェノールA(BPA)の多数の共重合カーボネートのSOCおよびTgの変化のグラフによる描写である。そのグラフは、BHPF/BPAが30:70〜90:10モルパーセントの範囲にある共重合カーボネートは液晶ディスプレイ装置用途にとりわけ好適なSOCおよびTgを有するということを示唆している。最適なSOC(SOCが0に等しい)は70:30のBHPF/BPA比において得られるのに対して、最適なTgは、やや低い比において得られる。幸いにも、例えばそのカーボネートポリマー中にエステル単位を組み込んでカーボネート/エステル・コポリマーをつくることにより、あるいはそのカーボネートポリマーとポリエステルおよび/またはカーボネート/エステル・コポリマーとをブレンドすることにより、そのSOCを実質的に変化させることなく、Tgを調整することができる。そのカーボネートポリマー中に組み込むエステル単位のこの濃度、あるいはそのカーボネートポリマーとブレンドするポリエステルおよび/またはカーボネート/エステル・コポリマーの量は、他の物理的性質を実質的に損なうことなく、希望するTgを達成するのに十分なものである。
好ましくは、上記エステル単位は、脂肪族または芳香族の二酸または二酸塩化物の反応生成物である。その脂肪族の二酸または二酸塩化物は、好ましくはC3〜C12二酸または二酸塩化物、より好ましくはC4〜C8二酸または二酸塩化物、もっとも好ましくはアジピン酸、塩化アジポイル、コハク酸、または塩化スクシニルである。その芳香族二酸は、テレフタル酸、塩化テレフタロイル、イソフタル酸、塩化イソフタロイル、2,6-ナフタレンジカルボン酸、または2,6-ナフタレン二酸塩化物であるのが好ましい。上記基材中のエステル単位の濃度は、カーボネート単位およびエステル単位の全モル数に対して、10〜50モルパーセントの範囲にあるのが好ましい。
以下の実施例は例示目的だけのためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。特に言及しない限り、すべての百分率は重量:重量である。
実施例1 SiOxyzでコートされたカーボネートポリマーの調製A.60:40のモル比のBHPF/BPA共重合カーボネートの調製 60モルパーセントの9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(BHPF)および40モルパーセントのビスフェノールA(BPA)の共重合カーボネートを以下の如く調製した。栓を有する100mlの高圧反応器にBPA(0.913g、4.0mmole)、BHPF(2.102g、6.0mmole)、t-ブチルフェノール(0.045g、0.30mmole)50パーセントNaOH水溶液(2.0g、25.0mmole)、および水(16.14g)を添加した。その反応器を窒素でパージした。10分間にわたって、その反応器の空隙に窒素ガスを吹き通し、次に、その栓を締めた。その封止した反応器を水浴(69℃〜71℃)中に入れ、その溶液を攪拌した。そのモノマーが溶解した後に、25mlの気密シリンジを使用して、その攪拌した混合物に、ホスゲンの塩化メチレン溶液(20.08gの6.68パーセント溶液、13mmole)を添加した。そのシリンジを取り外し、その反応混合物を30秒間にわたって振盪した。その隔膜を通して、シリンジにより、第2の50パーセントのNaOH(2.0g、25mmole)を添加した。
上記混合物を1分間にわたって振盪し、その後、シリンジにより追加の塩化メチレン(11.17g)を添加し、次いで、4-ジメチルアミノピリジン(0.6mlの1パーセント水溶液)を添加した。この混合物を1分間にわたって振盪し、その後、その反応器を氷浴中でかき混ぜた。その反応器を開き、その水性相をピペットで除いた。その有機相を1NのHClで1回、水で2回洗い、次に、蒸発によって取り出した。得られた共重合カーボネートは230℃(PC-230)のTgを有していた。この一般的な手順を使用して、追加の共重合カーボネートを調製し、射出成形して127mm×127mm×1.6mmのプラックとした。
B.BHPF/BPA共重合カーボネートブレンドの調製 A部において説明した手法で調製した共重合カーボネート(56重量部)とビスフェノールAポリカーボネート(44重量部)とをドライブレンドすることにより、190℃(PC-190)のTgを有するBHPF/BPA共重合カーボネートブレンドを調製した。得られた混合物を、供給ゾーンを200℃に、4つの滞留ゾーンを310℃に設定した30mmのWerner-Pfleiderer押出機を使用して、押出配合し、ペレット化した。
C.上記カーボネートポリマー基材上へのPECVDコーティングの蒸着 米国特許第5,320,875号における図1、2、および3に示されているようなシャワーヘッド平面磁電管陰極を備えたPECVDステンレス鋼箱中で、(一般に、式SiOxyzの)高度に架橋している有機ケイ素コーティング蒸着を行った。
AまたはB部のプラック(それぞれPC-230またはPC-190)を、その陰極の中心あたりに、その陰極の3.2cm上に置いた。そのプラックを、まず、プラズマ重合されたTMDSOの1000Å〜1500Å厚の定着剤層でコートした。TMDSO(4sccm)を、そのシャワーヘッド陰極を通して、そのチャンバー中に供給した。そのシャワーヘッドのガス注入口を、その磁電管陰極のプラズマリング上に均等に配置した。このガス注入口の構造が、もっとも強いプラズマ領域にテトラメチルジシロキサンの分子を流れさせ、それらの分解可能性を最大にした。そのTMDSO蒸気流はMKS Inc.の1152型蒸気流制御装置により制御し、そのプラズマ出力はENI電源(PlasmaLoc 2型)により供給した。その定着剤の蒸着の間に、そのプラズマにかけた電力は40kHzで500ワット(W)であり、6.3×108 J/kgの出力密度に相当した。そのチャンバーのベース圧力は1mTorr未満であった。その処理圧力は、およそ27mTorrであった。
40sccmのO2(流量はMKSの1160型ガス流制御装置により制御した)と4sccmのTMDSOとの混合物を上記チャンバー中に供給することにより、上記高度に架橋している有機ケイ素コーティングを上記定着剤層上に蒸着した。蒸着の間に、そのプラズマにかけた電力は40kHzで40Wであり、2.9×107 J/kgの出力密度に相当した。
上記コートされたプラックのN-メチルピロリジノン(NMP)に対する耐性は、そのコートされた表面に1滴のNMPを添加し、その液滴を5分間にわたって放置し、その後、それを水ですすぎ落とすことにより測定した。曇りの無いことが目視できれば、NMPに対する耐性を有していることを示している。PC-230については、1.0ミクロン厚、1.2ミクロン厚、1.4ミクロン厚、および1.6ミクロン厚のコーティングにより耐溶剤性が付与された。PC-190については、1.2ミクロン厚、1.4ミクロン厚、および1.6ミクロン厚のコーティングにより耐溶剤性が付与された。
実施例2 SiOxyz/SiOxでコートされたカーボネートポリマーの調製 実施例1で調製した定着剤の層を有する(PC-190またはPC-230のいずれかの)
プラックを、SiOxおよび有機ケイ素コーティングで交互にコートした。それらのSiOxコーティングは、各々が0.072ミクロンの厚みを有し、それらの高度に架橋している有機ケイ素コーティングは、各々が0.262ミクロンの厚みを有していた。40sccmのO2(流量はMKSの1160型ガス流制御装置により制御した)と4sccmのTMDSOとの混合物を上記チャンバー中に供給することにより、その第1のSiOxコーティングを、そのプラックにつけた。蒸着の間に、そのプラズマにかけた電力は40kHzで250Wであり、1.8×108 J/kgの出力密度に相当した。次に、実施例1において説明されている条件を使用して、第1の有機ケイ素コーティングをつけた。第2のSiOxコーティングをつけ、次いで第2の有機ケイ素コーティング、次に第3のSiOxコーティング、最後に第3の有機ケイ素コーティングをつけた。それらのコーティングの全厚は1.0ミクロンであった。PC-190およびPC-230は、両方共、この交互コーティング技法により、NMPに対する耐性を有していた。

【特許請求の範囲】
1.a)表面を有するプラスチック基材、 b)実質的に酸素の無い状態で、接着のための界面の化学反応を起こすのに十分な出力レベルにおいて、その基材の表面上に蒸着させた第1のプラズマ重合された有機ケイ素化合物である定着剤層、および c)工程b)において使用されるよりも高いレベルの酸素の存在下で、106 J/kg〜108 J/kgの出力密度において、その定着剤層の表面上に蒸着させた第2のプラズマ重合された有機ケイ素化合物である保護コーティング層、を含んでいるラミネート。
2.化学量論的に過剰の酸素の存在下で、上記保護コーティング層を形成させるのに使用される出力密度の少なくとも2倍の出力密度において、その保護コーティング層の表面上に蒸着させた第3のプラズマ重合された有機ケイ素化合物であるSiOx層をさらに含んでいる、請求項1に記載のラミネート。
3.上記保護コーティング層と上記SiOx、層との交互の層をさらに含んでいる、請求項2に記載のラミネート。
4.プラズマ重合されている上記有機ケイ素ポリマーが、ジメトキシジメチルシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジエトキシジメチルシラン、メチルトリエトキシシラン、トリエトキシビニルシラン、テトラエトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、フェニルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)ビニルシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシラザン、およびテトラメチルシラザンからなる群より各々独立に選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のラミネート。
5.プラズマ重合されている上記有機ケイ素ポリマーが、各々テトラメチルジシロキサンである、請求項1〜4のいずれか1項に記載のラミネート。
6.上記基材が、カーボネート先駆物質と芳香族ジオールとの反応生成物の繰り返し単位を含んでいるカーボネートポリマーである、請求項1〜5のいずれか1項に記載のラミネート。
7.上記芳香族ジオールが、レソルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシアントラセン、ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン、ジヒドロキシフェナントレン、ジヒドロキシビフェニル、またはビス(ヒドロキシフェニル)プロパンを含んでいる、請求項6に記載のラミネート。
8.9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンの繰り返し単位とビスフェノールAの繰り返し単位との比が40:60〜70:30である、請求項7に記載のラミネート。
9.上記基材のTgが180℃以上、240℃以下であり、上記ラミネートのSOCが-1000ブリュースター以上、1000ブリュースター以下であり、ラミネートが光学的に透明である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のラミネート。
10.a)表面および0.1mm以上、10mm以下の厚みを有するプラスチック基材、 b)実質的に酸素の無い状態で、その基材の表面上に蒸着させたプラズマ重合されたテトラメチルジシロキサンであって、定着剤が1000Å以上、2000Å以下の厚みを有する定着剤層、 c)閉じ込められた水および以下の官能基 −Si−O−Si−、−Si−CH2−、−Si−H、または−Si−OHの少なくとも1つを含む式SiO1.8-2.40.3-1.00.7-4.0を有する有機ケイ素化合物を生ずるのに十分にテトラメチルジシロキサンに対して化学量論的に過剰の酸素の存在下で、106 J/g〜108 J/kgの出力密度において、その定着剤層の表面上に蒸着させたプラズマ重合されたテトラメチルジシロキサンであって、その厚みが0.1ミクロン以上、2ミクロン以下である保護コーティング層、および d)化学量論的に過剰の酸素の存在下で、その保護コーティング層を形成させるのに使用される出力密度の少なくとも4倍の出力密度において、その保護コーティング層の表面上に蒸着させたプラズマ重合されたテトラメチルジシロキサンの層であって、0.1ミクロン以上、1ミクロン以下の厚みを有するSiOx層、を含んでいるラミネート。

【図1】
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【公表番号】特表平11−513713
【公表日】平成11年(1999)11月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−515176
【出願日】平成8年(1996)10月11日
【国際出願番号】PCT/US96/16203
【国際公開番号】WO97/13802
【国際公開日】平成9年(1997)4月17日
【出願人】
【氏名又は名称】ザ ダウ ケミカル カンパニー