説明

コートキャリア再生方法、再生コートキャリア、二成分現像剤、現像カートリッジ、および画像形成装置

【課題】処理時間やコストを抑えて容易にコート樹脂層の膜厚が均一なコートキャリアを再生できるコートキャリア再生方法を提供する。
【解決手段】前記使用済みコートキャリアにおけるコート樹脂磨耗量を決定するコート樹脂磨耗量決定ステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置に使用されるコートキャリアの再生方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電電子写真方式を利用した画像形成装置は、一般に帯電、露光、現像、転写、剥離、クリーニング、および定着の各工程からなり、紙などの転写材上に画像を形成する。具体的には、帯電装置によって回転駆動される感光体ドラムの表面を均一に帯電し(帯電工程)、露光装置によって帯電した感光体ドラム表面にレーザ光を照射することで静電潜像が形成される(露光工程)。続いて、現像装置によって感光体ドラム上の静電潜像が現像され、感光体ドラム表面上にトナー像が形成される(現像工程)。そして、転写装置によって感光体ドラム上のトナー像は転写材上に転写され(転写工程)、その後、定着装置によって加熱されることで、トナー像は転写材上に固定される(定着工程)。
【0003】
感光体ドラム上の静電潜像を現像する現像剤としては、トナーのみからなる一成分現像剤またはトナーとキャリアとからなる二成分現像剤が用いられる。一成分現像剤は、トナーとキャリアを混合するための撹拌機構を必要としないため、現像装置がシンプルになる反面、トナーの帯電量が安定しにくい等の問題がある。一方、二成分現像剤は、トナーとキャリアを混合するための撹拌機構を必要とするが、トナーの帯電量が安定しやすく、高画質の画像が得られる。
【0004】
ところが、二成分現像剤を長期間使用すると、キャリアの表面が磨耗し、電気抵抗や帯電性が変化することによって、画質が劣化する問題がある。この問題に対しては、キャリアの表面をコート樹脂で被覆することによって、耐摩耗性を高めているものの、未だ画像形成装置の寿命と比べても短い。そのため、二成分現像剤の寿命に達すると、古い二成分現像剤(キャリア)は廃棄して、新しい二成分現像剤(キャリア)に交換することによって画質の劣化を防止している。
【0005】
また、環境問題の観点から使用済みキャリアの廃棄を少なくするために、古いキャリアを再利用することが提案されている。例えば、特許文献1では、使用済みキャリアのコート樹脂を加水分解させて除去した後、得られるコア粒子をコート樹脂で被覆するキャリアの再生方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−300676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、コート樹脂を完全に除去するには相当の時間を要し、キャリアを再生するのに要するコストが高くなるため実用性が低いといった問題がある。また、コート樹脂の剥離時間を短縮するあるいは剥離せずにコート樹脂を追加被覆すると、コート樹脂の一部がコア粒子表面に残るため、再生したキャリアのコート樹脂層の膜厚が、キャリアの再生回数が多くなるにつれて厚くなり、均一にならないといった問題がある。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、処理時間やコストを抑えて、容易に、再生の回数が増えてもコート樹脂層の膜厚が均一なコートキャリアを再生できるコートキャリア再生方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコートキャリア再生方法は、上記課題を解決するために、表面がコート樹脂層で被覆された使用済みのコートキャリアの表面に、コート樹脂を追加被覆することでコートキャリアを再生するコートキャリア再生方法において、前記使用済みコートキャリアにおけるコート樹脂磨耗量を決定するコート樹脂磨耗量決定ステップを含むことを特徴としている。
【0010】
上記方法によると、使用済みコートキャリアにコート樹脂を追加被覆してコートキャリアを再生する際、コート樹脂磨耗量を決定する。よって、このコート樹脂磨耗量から磨耗したコート樹脂層を補う量つまり追加被覆するコート樹脂量を求め、使用済みコートキャリアを追加被覆することができる。そのため、使用済みコートキャリアのコート樹脂を完全に剥がさなくても、コート樹脂の膜厚が均一な、つまり使用前の膜厚のコート樹脂層を有するコートキャリアを再生することができる。
【0011】
ここで、従来は、コート樹脂を剥してから被膜する場合には、磨耗量を求める必要がなかった。あるいは、コート樹脂を剥さず追加被膜する場合でも、磨耗量は求めず被膜していた。このようにコート樹脂の磨耗量を求めることがなかったので、コート樹脂を追加被覆すると、コート樹脂の一部がコア粒子表面に残っていると、再生したキャリアのコート樹脂層の膜厚が、キャリアの再生回数が多くなるにつれて厚くなり、均一にならなかった。
【0012】
しかし、本発明の上記方法によると、コート樹脂磨耗量を決定するため、コート樹脂を剥してから再生するのに要する時間およびコストをかけずに、容易に、再生の回数が増えてもコート樹脂層の膜厚が均一なコートキャリアを再生することができる。
【0013】
また、本発明のキャリア再生方法では、前記磨耗量決定ステップで、前記コート樹脂磨耗量を、前記使用済みコートキャリアが使用された二成分現像剤の累積攪拌時間から算出して決定してもよい。
【0014】
上記方法によると、コート樹脂磨耗量を、使用済みコートキャリアが使用された二成分現像剤の累積攪拌時間から算出することができる。これは、現像剤累積攪拌時間が長くなるにつれて、コート樹脂磨耗量が増加するからである。よって、使用済みコートキャリアのコート樹脂磨耗量の実測(例えば、透過型電子顕微鏡を用いた測定)が不要となる。そのため、簡易にコート樹脂磨耗量を求めることができ、再生コートキャリアの生産効率が高くなる。
【0015】
また、本発明のキャリア再生方法では、前記コート樹脂は、熱硬化性シリコーン樹脂であり、前記追加被覆ステップの前に、前記使用済みコートキャリアを該使用済みコートキャリアが使用された二成分現像剤のトナーに含まれる樹脂を溶解し、かつ、前記コート樹脂を溶解しない溶剤で洗浄する洗浄ステップを含んでもよい。
【0016】
上記方法によると、コート樹脂は、熱硬化性シリコーン樹脂であるため、トナーに含まれる樹脂に対する耐汚染性(耐フィルミング性)や耐磨耗性が優れている。さらに、使用済みコートキャリアを該使用済みコートキャリアが使用された二成分現像剤のトナーに含まれる樹脂を溶解し、かつ、前記コート樹脂を溶解しない溶剤で洗浄するため、コート樹脂を追加被覆する前に使用済みコートキャリアに付着したトナーに含まれる樹脂を溶剤で取り除くことができる。よって、コート樹脂中にトナーに含まれる樹脂が混入することを防止できる。
【0017】
また、本発明のキャリア再生方法は、前記コートキャリアの再生回数をカウントする再生回数カウントステップを含み、所定の再生回数に達するまで前記磨耗量決定ステップを含む再生を繰り返し行うのが好ましい。
【0018】
上記方法によると、コートキャリア再生回数が限定されるので、再生を多数回繰り返すことにより発生するコートキャリアのコア粒子のひび割れ等に起因するキャリア割れを防止することができる。
【0019】
本発明の再生コートキャリアは、上記課題を解決するために、上記いずれか1つに記載のコートキャリア再生方法により再生されたことを特徴としている。
【0020】
上記構成によると、本発明に係るコートキャリア再生方法により再生されるために、コート樹脂の膜厚が均一な再生コートキャリアを提供できる。
【0021】
よって、このコート樹脂の膜厚が均一な再生コートキャリアとトナーとからなる二成分現像剤を使用して画像形成する画像形成装置は、高画質画像を安定的に形成できる。
【0022】
また本発明の現像容器は二成分現像剤が収容される。よって、現像容器が画像形成装置から取り外し可能になっていると、現像容器だけを取り外して、例えば再生工場にて、コートキャリアを再生することができる。
【0023】
また、本発明の現像容器は、上記構成に加え、二成分現像剤の累積攪拌時間を記憶する情報記憶部を備えていてもよい。この構成によると、二成分現像剤の累積攪拌時間からコート樹脂磨耗量を算出する際に、累積攪拌時間を現像容器の情報記憶部から、例えば再生工場にて、容易に読み出すことができる。
【0024】
また、本発明の現像容器では、上記構成に加え、前記情報記憶部は、さらに、前記二成分現像剤に含まれるコートキャリアの再生回数を記憶していてもよい。このようにコートキャリアの再生回数を記憶することで、キャリア再生回数を限定する場合に、コートキャリアの再生回数を上記記憶部から読み出して利用することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のコートキャリア再生方法は、以上のように、前記使用済みコートキャリアにおけるコート樹脂磨耗量を決定するコート樹脂磨耗量決定ステップを含んでいる。
【0026】
上記方法によると、使用済みコートキャリアにコート樹脂を追加被覆してコートキャリアを再生する際、コート樹脂磨耗量を決定する。よって、このコート樹脂磨耗量から磨耗したコート樹脂層を補う量つまり追加被覆するコート樹脂量を求め、使用済みコートキャリアを追加被覆することができる。そのため、使用済みコートキャリアのコート樹脂を完全に剥がさなくても、コート樹脂の膜厚が均一な、つまり使用前の膜厚のコート樹脂層を有するコートキャリアを再生することができる。
【0027】
本発明の上記方法によると、コート樹脂磨耗量を決定するため、コート樹脂層を剥してから再生するのに要する時間およびコストをかけずに、容易に、再生の回数が増えてもコート樹脂層の膜厚が均一なコートキャリアを再生することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略を示す構成図である。
【図2】前記画像形成装置に設置される現像カートリッジの構成を示す断面図である。
【図3】コートキャリアの断面図である。
【図4】長期間攪拌後のコートキャリアの断面図である。
【図5】さらに長期間攪拌後のコートキャリアの断面図である。
【図6】前記現像カートリッジに備えられた情報記憶部と画像形成装置が有する情報処理部との接続状態を示す説明図である。
【図7】前記画像形成装置の情報処理部と現像カートリッジの情報記憶部とに記憶された情報内容を示す説明図である。
【図8】前記現像カートリッジにおける累積現像剤攪拌時間を記録する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施の一形態について図に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本発明のコートキャリア再生方法は、追加被覆するコート樹脂の使用量を、使用済みコートキャリアにおけるコート樹脂が磨耗された厚みであるコート樹脂磨耗量に基づいて決定する方法であるが、まず初めに、コートキャリアおよび再生コートキャリアが使用される画像形成装置の一実施形態について説明し、コートキャリア再生方法は後述する。
【0030】
[画像形成装置]
図1は本発明に係るコートキャリアが使用される本発明に係る画像形成装置の構成を示す説明図である。図2は、図1の画像形成装置20における現像カートリッジ1の構成を示す拡大図である。まず、画像形成装置20の全体構成について説明する。
【0031】
図1に示すように、画像形成装置20は、表面に静電潜像が形成される感光体ドラム21と、感光体ドラム21の表面を帯電させる帯電装置22と、感光体ドラム21の表面に静電潜像を形成する露光装置23、感光体ドラム21の表面にトナーを供給して静電潜像をトナー像として顕像化(現像)する現像カートリッジ1、感光体ドラム21の表面を清掃するクリーニング装置250、感光体ドラム21表面のトナー像を記録媒体(紙)に転写する転写装置24、記録媒体上のトナー像を定着する定着装置25、記録媒体を収容する給紙カセット26、定着後の記録媒体を貯めておく排紙トレイ29、現像カートリッジ1の情報記憶部11に記憶される情報を読み取り及び書き込みを行う情報処理部30、原稿読み取り装置(スキャナ)またはパーソナルコンピュータなどの外部装置から入力される画像情報を電気信号に変換し、露光装置23に出力する画像処理装置31を備える。なお、現像カートリッジ1は、情報記憶部11と二成分現像剤とを含み、画像形成装置20に着脱可能に構成されている。
【0032】
感光体ドラム21は、図示しない駆動手段によって軸線回りに回転駆動可能に支持され、その表面に静電潜像ひいてはトナー像が形成されるローラ状部材で構成されている。感光体ドラム21には、例えば、図示しない導電性基体と該導電性基体表面に形成される図示しない感光体材料を含むローラ状部材を使用できる。導電性基体には、円筒状、円柱状、シート状などの導電性基体を使用でき、その中でも円筒状導電性基体が好ましい。感光体ドラム21としては、有機感光体ドラム、無機感光体ドラムなどが挙げられる。
【0033】
帯電装置22は、放電を行って感光体ドラム21を帯電させるものである。例えば、鋸歯型帯電器を採用してもよい。帯電装置22として、鋸歯型帯電器以外に、チャージャー型帯電器、帯電ブラシ型帯電器、ローラ状帯電器、磁気ブラシなどの接触方式の帯電器などが使用できる。
【0034】
また、帯電装置22には図示しない電源が接続され、帯電装置22に電圧を印加する。すなわち、帯電装置22は、電源から電圧の印加を受けて、感光体ドラム21表面を所定の極性および電位に帯電させるようにされている。
【0035】
露光装置23は、外部機器からの画像データが入力され、画像情報に応じた信号光を帯電状態にある感光体ドラム21表面に照射する。これによって、感光体ドラム21表面に、画像情報に応じた静電潜像が形成される。この露光装置23として、光源を含むレーザスキャニング装置が用いられる。
【0036】
転写装置24は、ローラ状部材で構成され、図示しない支持部材によって回転自在に支持されかつ図示しない駆動手段によって回転可能に設けられ、かつ感光体ドラム21に圧接するように設けられている。
【0037】
感光体ドラム21と転写装置24との圧接部(転写ニップ部)に、感光体ドラム21の回転によってトナー像が搬送されるのに同期して、給紙カセット26から給紙ローラ127を介して記録媒体が1枚ずつ供給される。
【0038】
記録媒体が感光体ドラム21と転写装置24との転写ニップ部を通過することによって、感光体ドラム21表面のトナー像が記録媒体に転写される。
【0039】
転写装置24には図示しない電源が接続され、トナー像を記録媒体に転写する際に、トナー像を構成するトナーの帯電極性とは逆極性の電圧を転写装置24に印加する。これによって、トナー像が記録媒体に円滑に転写される。
【0040】
クリーニング装置250は、図示しないクリーニングブレードと、図示しないトナー貯留槽とを備えている。クリーニングブレードにより、感光体ドラム21表面に残留するトナー、紙粉などを取り除く。トナー貯留槽は、内部空間を有する容器状部材で構成され、クリーニングブレードによって除去されたトナーを一時的に貯留する。
【0041】
定着装置25は、加熱ローラ25aと加圧ローラ25bとを備えている。加熱ローラ25aは、ローラ状部材で構成され、図示しない支持部材によって回転自在に支持され、かつ図示しない駆動手段によって軸線回りに回転可能に設けられている。この加熱ローラ25aは、その内部に図示しない加熱部材を有し、転写ニップ部から搬送される記録媒体に担持される未定着トナー像を構成するトナーを加熱し、溶融させて記録媒体に定着させる。
【0042】
加圧ローラ25bは、ローラ状部材で構成され、回転自在に支持されかつ図示しない加圧部材によって加熱ローラ25aに対して圧接するように設けられている。この加圧ローラ25bは、加熱ローラ25aの回転に従動回転するようにされている。加熱ローラ25aと加圧ローラ25bとの圧接部が定着ニップ部である。加圧ローラ25bは、加熱ローラ25aによるトナー像の記録媒体への加熱定着に際し、溶融状態にあるトナーを記録媒体に対して押圧することによって、トナー像の記録媒体への定着を促進する。加圧ローラ25bとして、加熱ローラ25aと同じ構成のローラ状部材を使用できる。また、加圧ローラ25bの内部にも加熱部材を設けてもよい。この加熱部材として加熱ローラ25a内部の加熱部材と同様のものを使用できる。
【0043】
定着装置25においては、トナー像が転写された記録媒体が定着ニップ部を通過する際、トナー像を構成するトナーを溶融させるとともに記録媒体に押圧され、トナー像が記録媒体に定着する。画像が印刷された記録媒体は、排紙ローラ28を介して、排紙トレイ29に排出される。
【0044】
給紙カセット26は、普通紙、コート紙、カラーコピー用紙、OHPフィルムなどの記録媒体を収容するトレイである。図示しないピックアップローラと、搬送ローラとによって、感光体ドラム21表面のトナー像が転写ニップ部に搬送されるのに同期して、記録媒体が1枚ずつ送給される。
【0045】
情報処理部30は、後述のようにCPUを備え、現像カートリッジ1の情報記憶部11に記憶される情報を読み取り及び書き込みを行う。
【0046】
画像処理装置31は、原稿読み取り装置(スキャナ)またはパーソナルコンピュータなどの外部装置から入力される画像情報を電気信号に変換し、露光装置23に出力する。
【0047】
[現像カートリッジ]
図2に示すように、現像カートリッジ1は、二成分現像剤を収容する現像容器2からなり、二成分現像剤を収容する現像剤収容部3と、補給トナーを収容するトナー収容部4とを有する。現像カートリッジは画像形成装置20から取り外し可能に設置されている。現像容器2は、現像剤収容部3内部に、現像ローラ5、撹拌ローラ6、規制部材7及びトナー濃度検知センサ8を備え、トナー収容部4内部に、トナー撹拌部材10、トナー排出部材9、現像剤収容部3とトナー収容部4と連通するトナー排出口9a、及び情報記憶部11を備えている。
【0048】
[現像剤収容部]
現像ローラ5は、ローラ状部材で構成され、二成分現像剤を感光体ドラム21へと搬送するものであり、図示しない駆動手段によって軸心回りに回転駆動される。また、現像ローラ5は、現像容器2の開口部2aを介して感光体ドラム21に対向し、感光体ドラム21に対して所定の間隙を有して離隔するように設けられる。
【0049】
現像ローラ5で搬送される二成分現像剤は、現像ローラ5の最も近接した部分で感光体ドラム21と接触する。この接触領域が現像ニップ部であり、この現像ニップ部では、現像ローラ5に接続される図示しない電源から現像ローラ5に対して現像バイアス電圧が印加され、現像ローラ5表面の現像剤から感光体ドラム21表面の静電潜像へトナーが供給される。
【0050】
撹拌ローラ6は、図示しない駆動手段によって回転駆動し、現像容器2内に収容される二成分現像剤を撹拌するものである。
【0051】
規制部材7は、現像ローラ5の軸線方向に沿って平行に延びる板状部材で構成され、現像ローラ5の鉛直方向上方において、その短手方向の一端が現像容器2によって支持され、かつ他端が現像ローラ5表面に対して間隙を有して離隔するように設けられる。この規制部材7の材料としては、ステンレス鋼が使用できるが、アルミニウムや合成樹脂なども使用できる。
【0052】
トナー濃度検知センサ8は、撹拌ローラ6の鉛直方向下方の現像容器2底面に装着され、センサ面(上面)が現像容器2の内部に露出するように設けられる。トナー濃度検知センサ8は、図示しない制御手段に電気的に接続される。この制御手段は、トナー濃度検知センサ8による検知結果に応じて、トナー排出部材9を回転駆動させ、トナー排出口9aを介して現像容器2内部にトナーを供給するように制御する。例えば、制御手段は、トナー濃度検知センサ8による検知結果がトナー濃度設定値よりも低いと判定されると、トナー排出部材9を回転駆動させる駆動手段に制御信号を送り、トナー排出部材9を回転駆動させる。
【0053】
トナー濃度検知センサ8には一般的な検知センサを使用できる。例えば、透過光検知センサ、反射光検知センサ、透磁率検知センサなどが挙げられる。これらの中でも、透磁率検知センサが好ましい。
【0054】
透磁率検知センサは、制御電圧の印加を受けてトナー濃度の検知結果を出力電圧値として出力する型式のセンサであり、基本的に出力電圧の中央値近傍の感度がよいため、その付近の出力電圧が得られるような制御電圧を印加して用いられる。このような型式の透磁率検知センサは市販されており、たとえば、TS−L、TS−A、TS−K(いずれも商品名、TDK(株)社製)などが挙げられる。
【0055】
透磁率検知センサを用いたトナー濃度検知センサ8には、図示しない電源が接続される。電源は、トナー濃度検知センサ8を駆動させるための駆動電圧およびトナー濃度の検知結果を制御手段に出力するための制御電圧をトナー濃度検知センサ8に印加する。電源によるトナー濃度検知センサ8への電圧の印加は、制御手段によって制御される。
【0056】
[トナー収容部]
トナー撹拌部材10は、回転軸10aと、回転軸周りに回転する長方形の撹拌板10bと、撹拌板10bに固定されるトナー汲み上げブレード10cからなり、回転軸10aを中心に回転することにより、トナー収容部4内に収容される補給トナーを撹拌しながらトナー排出部材9にトナーを供給する。トナー汲み上げブレード10cは、可撓性を有する0.5〜2mm程度の厚さのポリエチレンテレフタレート(PET)シートからなり、トナー収容部4内のトナーを汲み上げてトナー排出部材9へ搬送するために、トナー撹拌部材10の両端に取付けられる。
【0057】
トナー排出部材9は、トナー排出口9aを塞ぐ位置に設けられ、トナー汲み上げブレード10cによって搬送されたトナーをトナー排出口9aから現像剤収容部3に供給するものである。
【0058】
トナー撹拌部材10及びトナー排出部材9は、図示しない歯車伝達機構及び駆動モータからの駆動力により回転するように構成されている。現像カートリッジ1により現像カートリッジ1にトナーを補給する場合は、トナー撹拌部材10を矢印E方向に回転してトナー収容部4内のトナーを撹拌し、トナー汲み上げブレード10cによってトナーをトナー排出部材9の方へ汲み上げる。この時、トナー汲み上げブレード10cは、ブレードを構成する素材の有する可撓性によってトナー収容部4の内壁に摺接しながら変形しつつ回転し、回転方向下流側のトナーをトナー排出部材9側に供給する。
【0059】
トナー排出部材9側に供給されたトナーは、トナー排出部材9の回転によってトナー排出口9aへと導くように搬送され、トナー排出口9aを通って現像剤収容部3に供給される。
【0060】
[二成分現像剤]
現像カートリッジ1に収容される二成分現像剤は、トナーとコートキャリアとを含んでいる。この二成分現像剤は、ナウターミキサのような混合機でトナーとコートキャリアとを混合することによって作製することができる。コートキャリアとトナーとの混合割合は、たとえばコートキャリア100重量部に対してトナー3〜15重量部の割合である。
【0061】
[トナー]
現像カートリッジ1の現像剤収容部3に収容される二成分現像剤に含まれるトナー、あるいは、現像カートリッジ1のトナー収容部4に収容されるトナーとしては、特に限定されず、公知のトナーを使用できる。また、トナーは、着色樹脂粒子(トナー粒子)と、必要に応じて着色樹脂粒子の表面に付着している外添剤とを含む。外添剤は、トナーの凝集を防ぐことで、感光体ドラム21から記録媒体へ転写する際の転写効率が低下を防ぐ観点から、トナーに含まれることが好ましい。
【0062】
着色樹脂粒子は、バインダ樹脂、着色剤ならびに必要に応じて離型剤および帯電制御剤を含む。
【0063】
(バインダ樹脂)
バインダ樹脂としては、公知の各種スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂等が使用できる。
【0064】
これらの中でも特に線形または非線形のポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂は、機械的強度、定着性および耐ホットオフセット性を同時に充足できる点で優れる。これによって、微粉が発生し難く、トナー像が定着後に紙から剥離し難い。
【0065】
ポリエステル樹脂は、2価以上の多価アルコールと多塩基酸とからなるモノマー組成物を重合することによって得られる。
【0066】
ポリエステル樹脂の重合に用いられる2価のアルコールとしては、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノールAアルキレンオキシド付加物、その他を挙げることができる。
【0067】
2価の多塩基酸としては、たとえばマレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、これらの酸の無水物や低級アルキルエステル、又はn−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸等のアルケニルコハク酸類又はアルキルコハク酸類を挙げることができる。
【0068】
必要に応じて、モノマー組成物中に3価以上の多価アルコールまたは3価以上の多塩基酸の少なくともいずれかを添加してもよい。3価以上の多価アルコールとしては、たとえばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、蔗糖、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン、その他を挙げることができる。
【0069】
3価以上の多塩基酸としては、たとえば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、およびこれらの無水物などを挙げることができる。
【0070】
(着色剤)
着色剤としては、トナーに一般に用いられている公知の顔料および染料を使用できる。
【0071】
具体的には、黒トナー用には、カーボンブラックやマグネタイトなどを例示できる。
【0072】
イエロートナー用には、C.I.ピグメント・イエロー1、C.I.ピグメント・イエロー3、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・イエロー97およびC.I.ピグメント・イエロー98等のアセト酢酸アリールアミド系モノアゾ黄色顔料、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー13、C.I.ピグメント・イエロー14およびC.I.ピグメント・イエロー17等のアセト酢酸アリールアミド系ジスアゾ黄色顔料、C.I.ピグメント・イエロー93およびC.I.ピグメント・イエロー155等の縮合モノアゾ系黄色顔料、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー150およびC.I.ピグメント・イエロー185等のその他黄色顔料、ならびにC.I.ソルベント・イエロー19、C.I.ソルベント・イエロー77、C.I.ソルベント・イエロー79およびC.I.ディスパース・イエロー164等の黄色染料等が例示できる。
【0073】
マゼンタトナー用には、C.I.ピグメント・レッド48、C.I.ピグメント・レッド49:1、C.I.ピグメント・レッド53:1、C.I.ピグメント・レッド57、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド81、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド5、C.I.ピグメント・レッド146、C.I.ピグメント・レッド184、C.I.ピグメント・レッド238およびC.I.ピグメント・バイオレット19等の赤色又は紅色顔料、ならびにC.I.ソルベント・レッド49、C.I.ソルベント・レッド52、C.I.ソルベント・レッド58およびC.I.ソルベント・レッド8等の赤色系染料等が例示できる。
【0074】
シアントナー用には、C.I.ピグメント・ブルー15:3およびC.I.ピグメント・ブルー15:4等の銅フタロシアニンならびにその誘導体の青色系染顔料、C.I.ピグメント・グリーン7およびC.I.ピグメント・グリーン36(フタロシアニン・グリーン)等の緑色顔料等が例示できる。
【0075】
着色剤の含有量としては、バインダ樹脂100重量部に対して1〜15重量部程度であることが好ましく、より好適には2〜10重量部の範囲である。
【0076】
(帯電制御剤)
トナーに使用できる帯電制御剤としては、公知の帯電制御剤が使用できる。
【0077】
トナーに負帯電性を付与する帯電制御剤である負帯電性制御剤として、クロムアゾ錯体染料、鉄アゾ錯体染料、コバルトアゾ錯体染料、サリチル酸およびその誘導体のクロム、亜鉛、アルミニウム、ホウ素錯体または塩化合物、ナフトール酸およびその誘導体のクロム、亜鉛、アルミニウムまたはホウ素との錯体または塩化合物、ベンジル酸およびその誘導体のクロム、亜鉛、アルミニウムまたはホウ素との錯体または塩化合物、長鎖アルキルカルボン酸塩、長鎖アルキルスルフォン酸塩等を挙げることができる。
【0078】
正帯電性を付与する帯電制御剤である帯電制御剤としては、ニグロシン染料およびその誘導体、トリフェニルメタン誘導体、四級アンモニウム塩、四級ホスフォニウム塩、四級ピリジニウム塩、グアニジン塩、アミジン塩等の誘導体等を挙げることができる。
【0079】
帯電制御剤の含有量としては、バインダ樹脂100重量部に対して0.1重量部〜20重量部の範囲内がより好ましく、0.5重量部〜10重量部の範囲内がさらに好ましい。
【0080】
(離型剤)
着色樹脂粒子に含有する離型剤としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等の合成ワックスやパラフィンワックスおよびその誘導体、マイクロクリスタリンワックスおよびその誘導体等の石油系ワックスおよびその変成ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系ワックス等を挙げることができる。これらの離型剤を着色樹脂粒子中に含有させることによって、定着ローラまたは定着ベルトに対するトナーの離型性を高めることができるので、定着時の高温オフセットおよび低温オフセットを防止できる。離型剤の添加量は特に制限されないが、バインダ樹脂100重量部に対して1重量部以上5重量部以下であることが好ましい。
【0081】
着色樹脂粒子は、混練粉砕法または重合法などの公知の方法によって作製できる。具体的には、混練粉砕法を採用した場合、バインダ樹脂、着色剤、帯電制御剤、離型剤およびその他の添加剤を、ヘンシェルミキサ、スーパーミキサ、メカノミルまたはQ型ミキサなどの混合機によって混合する。得られた原料混合物を、2軸混練機、1軸混練機などの混練機によって、100〜180℃程度の温度で溶融混練する。得られた混練物を冷却固化し、固化物をジェットミルのようなエア式粉砕機によって粉砕する。得られた粉砕物を、必要に応じて分級等の粒度調整を行うことによって着色樹脂粒子を作製できる。
【0082】
着色樹脂粒子の体積平均粒子径は、4〜7μmの範囲内のものが好ましい。この範囲内であれば、ドット再現性に優れ、かぶりやトナー飛散の少ない、高画質画像が得られる。体積平均粒子径の定義は下記する。
【0083】
(外添剤)
着色樹脂粒子に外添させる外添剤としては、個数平均粒子径が7nm以上100nm以下のシリカ、酸化チタン、アルミナ等からなる無機粒子が使用できる。また、無機粒子をシランカップリング剤、チタンカップリング剤、シリコーンオイルにより表面処理することによって疎水性を付与してもよい。疎水性を付与した無機粒子は、高湿下において電気抵抗および帯電量の低下が少なくなるので好ましい。特に、シランカップリング剤としてヘキサメチルジシラザン(以下、HMDSと呼ぶこともある)を用いて、表面にトリメチルシリル基を導入したシリカ粒子は、疎水性や絶縁性に優れている。このシリカ粒子を外添したトナーは、高湿環境下においても、優れた帯電性を提供できる。個数平均粒子径の定義は以下に記載する。
【0084】
具体的な外添剤には、日本アエロジル株式会社製のアエロジル50(個数平均粒子径:約30nm)、アエロジル90(個数平均粒子径:約30nm)、アエロジル130(個数平均粒子径:約16nm)、アエロジル200(個数平均粒子径:約12nm)、アエロジル300(個数平均粒子径:約7nm)、アエロジル380(個数平均粒子径:約7nm)(以上、いずれもシリカ)、デグサ社(ドイツ)製のアルミナムオキサイドC(アルミナ;個数平均粒子径:約13nm)、デグサ社(ドイツ)製のチタニウムオキサイドP−25(酸化チタン;個数平均粒子径:約21nm)、MOX170(シリカ・アルミナ混合物;個数平均粒子径:約15nm)、石原産業株式会社製TTO−51(酸化チタン、個数平均粒子径:約20nm)、TTO−55(酸化チタン、個数平均粒子径:約40nm)等がある。
【0085】
外添剤は、着色樹脂粒子とたとえばヘンシェルミキサのような気流混合機を用いて混合することによって、着色樹脂粒子に外添される。
【0086】
外添剤の添加量は、0.2〜3重量%が好ましい。0.2重量%未満では、トナーに十分や流動性を与えられないことがある。逆に3重量%を超えると、トナーの定着性が低下することがある。
【0087】
[コートキャリア]
現像カートリッジ1の現像剤収容部3に収容される二成分現像剤のコートキャリアとしては、通常の製造方法にて作成されたコートキャリアや、本発明により再生されたコートキャリアが使用できるが、まず、通常のコートキャリアの実施形態について説明する。なお、コートキャリアの構成は、通常の製造方法にて作成されたコートキャリアでも、本発明により再生されたコートキャリアでも同じである。
【0088】
図3は、コートキャリア40の構成を模式的に示す断面図である。コートキャリア40は、コア粒子41と、コア粒子41表面のコート樹脂からなるシェル層(コート樹脂層)42とからなる。
【0089】
コア粒子41には公知の磁性粒子が使用できるが、フェライト成分を含む粒子(フェライト系粒子)が好ましい。コア粒子41がフェライト成分を含むことによって、キャリアの密度を小さくすることができるので、現像剤収容部3内での搬送部材などのトルクが軽くなり、コア粒子41がフェライト成分を含まないキャリアに比べて、搬送部材で搬送するときのキャリアに加わる力を小さくすることができ、コート樹脂層を摩耗しにくくすることができる。またフェライト成分を含むコア粒子41は、飽和磁化が高いので、現像ローラ5に付着する力が強く、感光体ドラム21へのキャリア付着が起こりにくい。このようなフェライト成分を含むコア粒子41を用いることによって、キャリアが感光体ドラム21に付着することによる画像の白抜けを防ぐことができる。
【0090】
したがって、フェライト成分を含むコア粒子41を用いると、初期からライフまでのトナー帯電量の変化をより一層抑制することができ、かつ画像の白抜けを防ぐことができる。よって、一定の画像濃度を有する画像をより一層安定して形成することができる。
【0091】
フェライト成分を含むコア粒子41であるフェライト系粒子としては公知のものを使用できる。例えば、亜鉛系フェライト、ニッケル系フェライト、銅系フェライト、ニッケル−亜鉛系フェライト、マンガン−マグネシウム系フェライト、銅−マグネシウム系フェライト、マンガン−亜鉛系フェライト、あるいはマンガン−銅−亜鉛系フェライト等を含む粒子が使用できる。そして、体積平均粒子径が20〜100μmの粒子が使用できる。
【0092】
フェライト系粒子は、公知の方法で作製できる。たとえば、FeやMg(OH)等のフェライト原料を混合し、この混合粉を加熱炉で加熱して仮焼する。得られた仮焼品を冷却後、振動ミルでほぼ1μm程度の粒子となるように粉砕し、粉砕粉に分散剤と水を加えてスラリーを作製する。このスラリーを湿式ボールミルで湿式粉砕し、得られる懸濁液をスプレードライヤーで造粒乾燥することによって、フェライト系粒子が得られる。
【0093】
コア粒子41の表面に被覆されるシェル層42の材料としては、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂が使用できるが、特に、トナー用バインダ樹脂に対する耐汚染性(耐フィルミング性)や耐磨耗性が優れている点で、熱硬化性シリコーン樹脂が好ましい。
【0094】
熱硬化性シリコーン樹脂は、下記化学反応式に示すように、Si原子に結合する水酸基同士が加熱脱水反応によって架橋し硬化するシリコーン樹脂である。
【0095】
【化1】

【0096】
(式中、複数のRは同一または異なる1価の有機基を示す。)
熱硬化性シリコーン樹脂の中でも、Rで示される1価の有機基がメチル基であるジメチルシリコーン樹脂が好ましい。Rがメチル基であるジメチルシリコーン樹脂は架橋構造が緻密であることから、ジメチルシリコーン樹脂を用いてキャリアのシェル層を形成すると、その表面にバインダ樹脂などのトナー成分が付着し難く、撥水性、耐湿性などの良好なコートキャリアが得られる。したがって、ジメチルシリコーン樹脂を用いたコートキャリアを用いると、長期間にわたって、かぶりがなく一定の画像濃度を有する画像をより一層安定して形成することができる。ただし、架橋構造が緻密になりすぎると、シェル層が脆くなる傾向があるので、シリコーン樹脂の分子量の選択が重要である。
【0097】
シリコーン樹脂中の珪素と炭素との重量比(Si/C)は、0.3以上2.2以下であることが好ましい。Si/Cが0.3未満では、シェル層の硬度が低下し、キャリア寿命などが低下するおそれがある。Si/Cが2.2を超えると、キャリアのトナーに対する電荷付与性が温度変化による影響を受け易くなり、シェル層が脆化するおそれがある。
【0098】
熱硬化性シリコーン樹脂としては、たとえば、シリコーンワニス(東芝株式会社製:TSR115、TSR114、TSR102、TSR103、YR3061、TSR110、TSR116、TSR117、TSR108、TSR109、TSR180、TSR181、TSR187、TSR144、TSR165、信越化学工業株式会社製:KR271、KR272、KR275、KR280、KR282、KR267、KR269、KR211、KR212)が挙げられる。
【0099】
熱硬化性シリコーン樹脂を架橋させるには、該樹脂を150〜250℃程度に加熱処理することが必要である。ここで、熱硬化性シリコーン樹脂の硬化温度を低くするために、熱硬化性シリコーン樹脂に硬化触媒を添加してもよい。硬化触媒としては、例えば、オクチル酸、テトラメチルアンモニウムアセテート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ラウレート、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン等がある。
【0100】
シェル層の形成方法には、公知の方法が採用できる。たとえば、シェル層の原料を溶媒、たとえばトルエン、アセトン等の有機溶媒に溶解し、得られた溶液中にコア粒子を浸漬させた後、有機溶剤を蒸発させる浸漬法によって作製できる。
【0101】
シェル層には、さらに導電剤を添加することができる。導電剤を添加するによって、トナーの帯電量の上昇を抑えることができ、長期間にわたって画像濃度を安定化できる。導電剤としては、キャリアの体積抵抗率を制御できるものであれば特に制限はない。例えば、酸化ケイ素、アルミナ、カーボンブラック、グラファイト、酸化亜鉛、チタンブラック、酸化鉄、酸化チタン、酸化スズ、チタン酸カリウム、チタン酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の導電剤が挙げられる。導電剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
上記の導電剤の中でも、作製安定性、コスト、電気抵抗の低さという観点からカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの種類は特に限定されない。ただし、DBP(ジブチルフタレート)吸油量が90〜170ml/100gの範囲にあるものが、作製安定性に優れる点で好ましい。また、一次粒子径として50nm以下のものが分散性に優れるため特に好ましい。導電剤の含有率としては、樹脂層を構成する樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましい。0.1重量部未満では導電性を得られないことがあり、20重量部を超えると導電性がありすぎてチャージリークしてしまうことがあるからである。
【0103】
ここで、図4および5に、使用済みのコートキャリア、つまり、再生前の磨耗したコートキャリアを示す。図4は、画像形成装置20の現像カートリッジ1内で、コートキャリア40を含む二成分現像剤を、長期間攪拌した後のシェル層が磨耗した状態のコートキャリア140を模式的に示す断面図である。コートキャリア140においては、コア粒子41の表面をコート樹脂からなる磨耗して薄くなったシェル層142が覆っている。
【0104】
また、図5は、画像形成装置20の現像カートリッジ1内で、コートキャリア140を含む二成分現像剤を、さらに長期間攪拌した後の、シェル層がさらに磨耗した状態のコートキャリア240を模式的に示す断面図である。使用済みコートキャリア240においては、コア粒子41の表面はコート樹脂からなる磨耗したごく薄いシェル層242が覆っている。
【0105】
[情報記憶部]
次に、本実施形態に係る画像形成装置20における情報処理部30のCPU61と、現像カートリッジ1における情報記憶部11のICチップ51とについて詳細に説明する。上記したように、現像カートリッジ1の外周面には、図2に示すように、情報記憶部11が備えられている。
【0106】
図6は本実施形態に係る現像カートリッジ1に備えられた情報記憶部11と画像形成装置の情報処理部30との接続状態を示す説明図である。図6に示すように、情報記憶部11はICチップ51を備え、現像カートリッジ1における各種情報、例えば、現像剤累積攪拌時間(二成分現像剤の累積攪拌時間)や、現像カートリッジ1に収納されるトナー残量などの情報を記憶する。
【0107】
現像カートリッジ1が画像形成装置20に装着されると、図6に示すように、画像形成装置20の情報処理部30と電気的に接続されたコネクター52と、現像カートリッジ1の情報記憶部11とが連結された状態になる。本実施形態では、情報記憶部11とコネクター52との連結は、情報記憶部11とコネクター52とを当接させて連結する直接的な連結方法を採用しているが、無線での接続であってもよい。
【0108】
コネクター52は、画像形成装置20本体側の情報処理部30に電気的に接続されている。情報処理部30はCPU61を備え、予め決められたタイミングで、情報記憶部11に記憶された現像剤累積攪拌時間を読み取りや書き換えを行う。また、情報処理部30は、例えば、補給トナーの残量がゼロになったときや、現像カートリッジ1の現像剤累積攪拌時間の値が所定の閾値を超えたときに、画像形成装置20の操作パネル(図示せず)のディスプレイ63に現像カートリッジ1の交換を促すメッセージを表示するようになっている。
【0109】
現像カートリッジ1が画像形成装置20に装着されると、現像カートリッジ1においてICチップ51が実装された情報記憶部11と、画像形成装置の情報処理部30を構成するCPU61とがコネクター52を介して電気的及び機械的に相互に接続され、信号の出力及び入力が行われる。これによって、ICチップ51は、図6に示すように、電源ライン(VCCライン)53を介して画像形成装置20の情報処理部30から電源VCCの供給を受けて、GNDライン57を介して接地されて動作可能な状態となる。また、ICチップ51は、クロックライン54、データライン56及び装着ライン55を介してCPU61と接続された状態となる。
【0110】
情報処理部30と情報記憶部11とが接続されることにより、CPU61からICチップ51に対してクロックライン54を介してクロックパルスが供給され、データライン56を介してデータの送受信が可能にされる。さらに、CPU61からICチップ51に対して装着ライン55を介してICチップ51とCPU61との電気的な接続状態をチェックするための情報が供給される。
【0111】
なお、情報処理部30には、図6に示すように、ディスプレイに対して後述するCPU61の判別結果に応じた表示データを供給するコントローラ62が実装されている。
【0112】
ここで、本実施形態に係る画像形成装置20における情報処理部30のCPU61と現像カートリッジ1における情報記憶部11のICチップ51とについて詳細に説明する。図7は本実施形態に係る画像形成装置20における情報処理部30と、現像カートリッジ1における情報記憶部11とに記憶された情報内容を示す説明図である。
【0113】
現像カートリッジ1の情報記憶部11のICチップ51は、図7に示すように、メモリ51aを備えている。メモリ51aには、各アドレスに対応させて現像カートリッジ1に関する情報が記憶されている。例えば、装置名、トナーのロットナンバー、トナー残量、指定乱数、リサイクル回数、現像カートリッジのイニシャル、使用済み情報、キャリア再生回数、現像剤累積攪拌時間などが、それぞれのアドレスに記憶される。
【0114】
ICチップ51のメモリ51aの各アドレスに格納される情報の具体例を図7に示す。図7では、アドレス0001には、現像カートリッジ1が使用可能なデジタル複写機の機種名や型番が格納されている。アドレス0002には、現像カートリッジ1に収納されているトナーのロット番号が格納されている。アドレス0003には、現像カートリッジ1におけるトナーの収納量(トナー残量)が格納されている。アドレス0004には、現像カートリッジ1が以前装着したものと同一であるか否かを確認するためにCPU61において発生した乱数が格納されている。アドレス0005には、現像カートリッジ1の容器のリサイクル回数が格納されている。アドレス0006には、現像カートリッジ1が初期使用状態であるか否かを表す情報(イニシャル情報)が格納されている。アドレス0007には、現像カートリッジ1が使用済みであるか否かを表す情報が格納されている。アドレス0008には、現像カートリッジ1に収容される二成分現像剤のキャリアの再生回数を表す情報が格納されている。さらにアドレス0011には、メモリ51aに記憶される現像カートリッジ1の現像剤累積攪拌時間が格納されている。もちろんこれらは単なる例である。
【0115】
現像カートリッジ1の現像剤累積攪拌時間が記憶されたICチップ51を実装した情報記憶部11は、現像カートリッジ1に装着された状態で画像形成装置20内の所定位置にセットされると、その一部が画像形成装置20内に設けられているコネクター52に接続する。
【0116】
他方、画像形成装置20における情報処理部30のCPU61はメモリ(情報記憶部)61aを備えている。このメモリ61aには、各アドレスに対応させてICチップ51から読み取った情報、及び、画像形成装置20に関する情報が格納されている。
【0117】
CPU61のメモリ61aの各アドレスに格納される情報の具体例を図7に示す。図7では、アドレス0001には、画像形成装置の名称や型番が格納されている。アドレス0002には、ICチップ51から読み取った現像カートリッジ1に収納されているトナーのロット番号が格納されている。アドレス0003には、ICチップ51から読み取ったトナーの収納量が格納されている。アドレス0004には、現像カートリッジ1が以前装着したものと同一であるか否かを確認するためにCPU61が発生した乱数が格納されている。アドレス0005には、ICチップ51から読み取った現像カートリッジ1の容器のリサイクル回数が格納されている。アドレス0006には、現像カートリッジ1が初期使用状態であるか否かの判別結果を表す情報(イニシャル情報)が格納されている。アドレス0007には、現像カートリッジ1が使用済みであるか否かの判別結果を表す情報が格納されている。アドレス0008には、現像カートリッジ1に収容される二成分現像剤のキャリアの再生回数を表す情報が格納されている。さらにアドレス0011には、メモリ51aに記憶される現像カートリッジ1の現像剤累積攪拌時間が格納されている。また、さらに、メモリ61aにおいて、アドレスXXXX及びアドレスYYYYのそれぞれには、通信エラー情報及び未装着エラー情報のそれぞれが格納される。
【0118】
CPU61が、画像形成処理時にICチップ51の記憶内容を読み取るのは、図7に示すように、メモリ51aにおけるアドレス0011において、現像カートリッジ1のトナー撹拌部材10の累積回転数、すなわち現像剤累積撹拌時間が規定時間(例えば30時間)を越えていないかどうか、などを判断するためである。
【0119】
また、CPU61が、ICチップ51に情報を書き込むのは、現像カートリッジ1の現像剤累積攪拌時間を更新するためである。具体的には、本実施形態では、予め決められたタイミング(例えば、画像形成後)で、CPU61がICチップ51に記憶されたトナー残量や現像剤累積攪拌時間の読み込み及び書き換えを行う。そして、CPUは、例えば、現像カートリッジ1における、トナー残量がゼロになった場合や、規定の現像剤累積撹拌時間(例えば、30時間)を超えた場合には、現像カートリッジ1の交換を促すメッセージをディスプレイ63に表示する。
【0120】
図8は、画像形成装置20における現像カートリッジ1のICチップ51への読み込み及び書き換え動作の手順を示すフローチャートである。
【0121】
画像形成装置20に現像カートリッジ1が装着され、電源が投入されると、ステップS1において、現像カートリッジ1のICチップ51に記憶された現像カートリッジ1の使用済み情報が、情報処理部30に読み込まれる。次に、ステップS2において、現像カートリッジ1が使用済みであるか否かが情報処理部30によって判断される。
【0122】
ステップS2において、現像カートリッジ1が使用済みと判断された場合は(ステップS2においてYES)、ステップS11に進む。他方、ステップS2において、現像カートリッジ1が使用済みであると判断されなかった場合は(ステップS2においてNO)、ステップS3に進む。
【0123】
ステップS3において、ICチップ51に記憶されたトナー残量情報が、情報処理部30に読み込まれる。そして、ステップS4において、トナーが残っているか(残量がゼロでないか)否かが情報処理部30によって判断される。ステップS4において、トナーが残っていると判断されなかった場合は(ステップS4においてNO)、ステップS10に進む。一方、ステップS4において、トナーが残っていると判断された場合は(ステップS4においてYES)、ステップS5に進む。
【0124】
ステップS5において、ICチップ51に記憶された現像剤攪拌時間情報が、情報処理部30に読み込まれ、ステップS6において、現像剤攪拌時間が規定時間に達したか否かが情報処理部30によって判断される。
【0125】
ステップS6において、現像剤攪拌時間が規定時間に達したと判断されなかった場合は(ステップS6においてNO)、ステップS7に進む。ステップS7では、通常の画像形成動作が実行される。そして、ステップS8において、現像カートリッジ1のトナー収容部4内に収容される補給トナーが、ステップS6の画像形成動作に伴って消費されたトナー量を算出し、算出したトナー消費量を基にICチップ51のトナー残量情報を更新する。なお、消費されたトナー量は、例えば、露光装置23から感光体ドラム21表面に照射された光量(ドットカウント)やトナー排出部材9の回転数などの情報をもとに算出することができる。ステップS9において、ステップS6の画像形成動作に伴って回転した現像カートリッジ1の撹拌ローラ6の現像剤攪拌時間をカウントし、カウントした現像剤攪拌時間を基にICチップ51の現像剤攪拌時間情報を更新し、ステップS1に戻る。
【0126】
一方、ステップS6において、現像剤攪拌時間が規定時間に達したと判断された場合は(ステップS6においてYES)、ステップS10に進み、ICチップ51の使用済み情報を使用済みに書き換え、ステップS11に進む。ステップS11において、現像カートリッジ1が使用済みであることを示すメッセージと、現像カートリッジ1の交換を促すメッセージとをディスプレイ63に表示する。
【0127】
[コートキャリア再生方法]
本発明のコートキャリア再生方法の実施形態の一例について説明する。現像カートリッジ1においてトナー残量がゼロになった場合や、規定の現像剤累積撹拌時間を超えた場合に、画像形成装置20から現像カートリッジ1が回収され、現像カートリッジ1内の使用済みコートキャリアが再生される。
【0128】
まず、使用済みコートキャリアにおけるコート樹脂磨耗量を決定する(コート樹脂磨耗量決定ステップ)。決定の仕方としては、実際にコートキャリア粒子を薄くスライスし、透過型電子顕微鏡で観察して測定する方法や、回収した現像カートリッジ1の情報記憶部11に記憶されている現像剤累積攪拌時間を基に算出する方法がある。ただし、透過型電子顕微鏡で観察して測定する方法では、測定に相当な時間と手間がかかるので、現像剤累積攪拌時間を基に決定する方が好ましい。この場合、予め使用するコートキャリアと現像カートリッジとを用いて、現像剤累積攪拌時間とコート樹脂磨耗量との関係を調べておき、この関係データを参照して、再生するコートキャリアのコート樹脂磨耗量を算出すればよい。
【0129】
ここでは、現像剤累積攪拌時間を、回収した現像カートリッジ1の情報記憶部11のICチップ51から読み出し、再生するコートキャリアのコート樹脂磨耗量を算出して決定する。
【0130】
また、使用済みキャリアを再生する際のコート樹脂の添加量(使用量)は、次のように求める。予めコート樹脂の添加量とコート樹脂層の膜厚との関係を求めておき、該関係から、コート樹脂磨耗量を補う(元の膜厚に戻す)添加量を算出する。
【0131】
現像カートリッジ1から回収された使用済みコートキャリアは、最初に、トナーに含まれるバインダ樹脂を溶解する溶剤で洗浄する(洗浄ステップ)。洗浄は、例えば、コートキャリアに対して重量比で10〜20倍のトルエンやTHFの有機溶剤で、2〜4回行えばよい。これにより、コートキャリア表面に付着するトナーに含まれるバインダ樹脂を取り除くことができる。
【0132】
トナーに含まれるバインダ樹脂を溶解する上記溶剤は、コート樹脂を溶解しないものである必要がある。しかし、コート樹脂が硬化性樹脂でない場合には、コート樹脂を溶かさず、かつトナーに含まれるバインダ樹脂を溶かさない溶剤が見つからない場合があるので、その場合は洗浄ステップを省略する。
【0133】
次に、コート樹脂磨耗量に応じて算出された添加量のコート樹脂と導電剤などの添加物とを溶媒(たとえばトルエン、アセトン等の有機溶媒)に溶解/分散し、上記洗浄したコートキャリアを浸漬させて、使用済みコートキャリアにコート樹脂を追加被覆する。その後、溶剤を蒸発させることによって、再生コートキャリアが得られる。
【0134】
以上のコートキャリア再生方法によると、使用済みコートキャリアにコート樹脂を追加被覆してコートキャリアを再生する際、前記使用済みコートキャリアにおけるコート樹脂磨耗量を決定する。よって、このコート樹脂磨耗量から磨耗したシェル層(コート樹脂層)を補う量つまり追加被覆するコート樹脂量を求め、使用済みコートキャリアを追加被覆する。そのため、使用済みコートキャリアのコート樹脂を完全に剥がさなくても、コート樹脂の膜厚が均一な、つまり使用前の膜厚のコート樹脂を有する、コートキャリアを再生することができる。
【0135】
ここで、従来は、コート樹脂を剥してから被膜する場合には、磨耗量を求める必要がなかった。あるいは、コート樹脂を剥さず追加被膜する場合でも、磨耗量は求めず被膜していた。このように磨耗量を求めることがなかったので、コート樹脂を追加被覆すると、コート樹脂の一部がコア粒子表面に残っていると、再生したキャリアのコート樹脂層の膜厚が、キャリアの再生回数が多くなるにつれて厚くなり、均一にならなかった。
【0136】
しかし、本発明の上記方法によると、コート樹脂磨耗量を決定するため、コート樹脂層を剥してから再生するのに要する時間およびコストをかけずに、容易に、再生の回数が増えてもコート樹脂層の膜厚が均一なコートキャリアを再生することができる。
【0137】
なお、コートキャリアの再生には、浸漬法塗工装置など、キャリアへのコート樹脂の被覆に使用される公知の装置が利用できる。
【0138】
再生後には、コートキャリアの再生回数をカウントして(再生回数カウントステップ)、現像カートリッジ1の情報記憶部11のICチップ51の書き換えを行う。なお、再生前に、ICチップ51からコートキャリアの再生回数を読み出し、再生回数が所定の回数に達している場合には、コートキャリアの再生は行わず、使用済みコートキャリアを廃棄する。これにより、コートキャリア再生回数が限定されるので、再生を多数回繰り返すことにより発生するコートキャリアのコア粒子のひび割れ等に起因するキャリア割れを防止することができる。また、再生回数が所定の回数に達していない場合には、所定の再生回数に達するまで上記再生を繰り返し行う。
【0139】
[実施例]
<コートキャリアの作製>
フェライト原料として、酸化鉄(KDK社製)50mol%、酸化マンガン(KDK社製)35mol%、酸化マグネシウム(KDK社製)14.5mol%、および酸化ストロンチウム(KDK社製)0.5mol%を含み、媒体を水とするスラリーをボールミルで4時間粉砕した。このスラリーをスプレードライヤーにて乾燥させ、得られた真球状の粒子をロータリーキルンにて930℃で2時間仮焼した。この仮焼粉を、水に分散させ、湿式粉砕機(粉砕媒体としてスチールボール使用)によって平均粒子径2μm以下にまで微粉砕した。このスラリーにPVAを2重量%添加し、スプレードライヤーによって造粒、乾燥させ、電気炉にて、温度1100℃、酸素濃度0体積%で4時間、本焼成を行った。その後、解砕および分級を行うことによって、体積平均粒子径が44μmであり、体積抵抗率が1×10Ω・cmであるフェライト成分からなるコア粒子Fを得た。
【0140】
他方、ジメチルシリコーン樹脂(東芝シリコン社製)100重量部、カーボンブラック(三菱化学社製MA−100)5重量部、硬化剤としてオクチル酸5重量部をトルエン890重量部に溶解/分散して被覆用塗液Hを調製した。
【0141】
浸漬法塗工装置(商品名:万能混合攪拌機NDMV型、ダルトン社製)において、被覆用塗液H40重量部中に、コア粒子F100重量部を浸漬させることによって、コア粒子Fを被覆した。その後、トルエンを完全に蒸発除去した後、オーブン中で60分間150℃で加熱して熱硬化処理を行うことで、熱硬化性シリコーン樹脂の被覆率が100%であるコートキャリアCを作製した。コートキャリアCは、体積平均粒子径が45μmであり、体積抵抗率が2.1×1012Ω・cm、飽和磁化が65emu/gであり、シェル層の膜厚は1.12μm(30点平均膜厚)であった。
【0142】
<測定方法>
ここで、各物性は以下の方法により測定した。本実施例において、コア粒子FおよびコートキャリアCの体積平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置HELOS(SYMPATEC社製)に乾式分散装置RODOS(SYMPATEC社製)を用いて、分散圧3.0barの条件下で測定した値を意味する。測定法としては前記電解液水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を、0.1〜5ml加え、さらに測定試料として着色樹脂粒子を2〜20mg加えた。測定試料を懸濁した電解液は超音波分散機で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置によって、アパチャーとして100μmアパチャーを用い、着色樹脂粒子の体積および個数を測定して、着色樹脂粒子の体積粒度分布および個数粒度分布を算出した。着色樹脂粒子の体積粒度分布より、着色樹脂粒子の体積平均粒子径を求めた。
【0143】
また、本実施例において、コートキャリアCの飽和磁化は、東英工業株式会社製のVSMP−1によって測定された値をいう。
【0144】
また、本実施例において、コア粒子FおよびコートキャリアCの体積抵抗率は、下記の手順で測定された値を意味する。まず、気温20℃、湿度65%の環境条件下において、6.5mmの間隙を設けて設置される幅30mm、高さ10mmの2枚の銅板電極間に0.2gのコア粒子Fを充填した。次いで、N極とS極とが対向するように各銅板電極の外側領域に配置される2つの磁石(100mT)の磁力線によって、コア粒子によるブリッジを形成した。この状態において、500Vの電圧印加の15秒後に測定した値をコア粒子Fの体積抵抗率とした。コートキャリアの体積抵抗率も同様にして測定した。
【0145】
本本実施例において、コア粒子F表面におけるシェル層の被覆率は、次の方法で算出された値を意味する。コートキャリアC表面に金などの導電剤を蒸着しないまま、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、加速電圧2.0eVの電子線で観察した。このとき、コートキャリアC中、シェル層はチャージアップにより白く観察される。コートキャリアC全面積に対する白色領域面積の割合を算出した。この算出をコートキャリアCの40個について行ない、得られた値の平均値をコア粒子表面におけるシェル層の被覆率とした。
【0146】
<トナーの作製>
トナー材料として、次のものを用いた。
【0147】
・ポリエステル樹脂(EP−208:三洋化成社製)100重量部
・カーボンブラック(商品名:MA−100、三菱化学社製)5重量部
・帯電制御剤(ホウ素化合物、商品名:LR−147、日本カーリット社製)2重量部
・ポリプロピレンワックス(550P、三洋化成社製)2重量部
上記トナー材料をヘンシェルミキサにて10分間混合した後、混練分散処理装置(商品名:ニーディックスMOS140−800、三井鉱山社製)で溶融混練して、バインダ樹脂以外のトナー材料をバインダ樹脂中に分散させた混練物を得た。この混練物をカッティングミルで粗粉砕した後、ジェット式粉砕機(商品名:IDS−2型、日本ニューマチック工業社製)によって微粉砕した。微粉砕物を、風力分級機(商品名:MP−250型、日本ニューマチック工業社製)を用いて分級することによって、体積平均粒径が6.5μmの着色樹脂粒子を得た。
【0148】
得られた着色樹脂粒子100重量部に、外添剤として、個数平均粒径が14nmのヘキサメチルジシラザンで表面を処理したシリカ粒子(商品名:R976S、日本アエロジル社製)1重量部と、個数平均粒径が300nmのマグネタイト(商品名:BL−220、チタン工業社製)0.5重量部とを加えて、攪拌羽根の先端速度を15m/秒に設定した気流混合機(ヘンシェルミキサ、三井鉱山社製)で2分間攪拌することによって負帯電性のトナーTを作製した。
【0149】
なお、本実施例において、着色樹脂粒子の体積平均粒子径は、コールターマルチサイザーII(ベックマン・コールター社製)で100μmのアパチャーを用いて測定した値を意味する。なお、測定装置として、コールターカウンターTA−II型を用いてもよい。電解液としては、1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を用いる。約1%のNaCl水溶液としては、たとえば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。
【0150】
<二成分現像剤の作製>
上記作製したトナーTを6重量部と上記作製したコートキャリアCを94重量部とをナウターミキサ(商品名:VL−0、ホソカワミクロン社製)に投入し、20分間攪拌混合して二成分現像剤Dを作製した。
【0151】
<磨耗キャリアサンプルの作製>
二成分現像剤DとトナーTとを、図1に示す構成のデジタル複写機(シャープ社製:AR−267)改造機にセットし、カバレージが5%、10%、15%のA4原稿を用いて、2枚間欠で5K〜20K枚のコピー(エージングテスト)を行った。コピー後、回収した二成分現像剤を400メッシュのフィルターを用いて、トナーのみを吸引除去することにより、使用済みコートキャリアのサンプルである磨耗キャリアサンプルS1〜S6を作製した。作製した磨耗キャリアサンプルS1〜S6の作製条件を表1に示す。
【0152】
なお、実使用上は、現像カートリッジ1のトナー収容部4内のトナーがなくなった時点で、二成分現像剤の寿命に達していなくても現像カートリッジ1は使用できなくなり、回収されることとなる。しかし、本実施例の磨耗キャリアサンプルの作製においては、現像カートリッジ1のトナーがなくならないように、トナー収容部4に随時トナーTを補充した。
【0153】
【表1】

【0154】
<現像剤累積攪拌時間とコート樹脂磨耗量>
上記磨耗キャリアサンプルの作製におけるエージングテストとは別に、二成分現像剤Dとデジタル複写機(シャープ社製:AR−267)改造機を用いて、現像剤累積攪拌時間とコートキャリアのコート樹脂磨耗量との関係を求めた。コート樹脂磨耗量は、サンプリングしたコートキャリア粒子を薄くスライスし、透過型電子顕微鏡で観察し、磨耗前のコート樹脂の膜厚(1ミクロン)を100%として、磨耗量をパーセンテージ(%)で求めた。この結果を表2に示す。また、この結果を基に現像剤累積攪拌時間からコート樹脂磨耗量を求める換算近似式は以下の通りである。
【0155】
【表2】

【0156】
(換算近似式) コート樹脂磨耗量(%)=現像剤累積攪拌時間(分)×0.024
上記換算近似式を用いて、上記作製した磨耗キャリアサンプルS1〜S6のコート樹脂磨耗量をそれぞれ算出した。その結果を表3に示す。
【0157】
【表3】

【0158】
<コートキャリアの再生>
再生するコートキャリアは、最初に、トナーのバインダ樹脂を溶かす溶剤で洗浄する。洗浄回数としては、2回〜4回、コートキャリアに対して重量比で10〜20倍のトルエンやTHFで洗う。これにより、コートキャリア表面に付着するトナーのバインダ樹脂を取り除くことができる。
【0159】
上記磨耗キャリアサンプルS1〜S6それぞれについて、トナーに含まれるバインダ樹脂(ポリエステル樹脂)を溶かす溶剤であるTHFを用いて、2回洗浄した。
【0160】
他方で、コート樹脂磨耗量から、追加被覆するコート樹脂の使用量を算出した。ここでは、追加被覆するコート樹脂の使用量として、コート樹脂が含まれる被覆用塗液Hの量を算出した。つまり、被覆用塗液Hには上記した割合でコート樹脂が含まれ、被覆には被覆用塗液Hが使用されるため、被覆用塗液Hの量を算出すれば、おのずとコート樹脂の使用量は算出される。本実施例では、キャリアのコート樹脂層の100%が、上記のように、コア粒子Fを100重量部と被覆用塗液Hを40重量部とを混合することにより得られたので、再生時の被覆用塗液Hの添加量は、40重量部×コート樹脂磨耗量(%)から算出した。
【0161】
その結果を表4に示す。なお、表4の被覆用塗液H(重量部)は、キャリア100重量部に対する量である。
【0162】
【表4】

【0163】
次に、浸漬法塗工装置(商品名:万能混合攪拌機NDMV型、ダルトン社製)において、表4に示す量の被覆用塗液Hそれぞれの中に、洗浄した磨耗キャリアサンプルS1〜S6を100重量部浸漬させることによって、被覆用塗液Hで磨耗キャリアサンプルを被覆した。その後、トルエンを完全に蒸発除去した後、オーブン中で60分間150℃加熱して熱硬化処理を行うことで、熱硬化性シリコーン樹脂の被覆率が100%である実施例1〜6の再生コートキャリアC1〜C6を作製(再生)した。
【0164】
<評価>
再生コートキャリアC1〜C6について、体積平均粒子径、体積抵抗率、飽和磁化、およびコート樹脂層(シェル層)の膜厚(30点平均膜厚)の測定を行った。その結果を表5に示す。表5に示すように、再生キャリアC1〜C6は、体積平均粒子径、体積抵抗率、飽和磁化、およびコート樹脂層の膜厚ともに、初期(使用前)のコートキャリアにおける値(1.12μm)とほぼ同じ値であった。
【0165】
以上から、コート樹脂磨耗量を算出すことで、容易にコート樹脂層の膜厚が均一な再生コートキャリアを得られることがわかる。
【0166】
【表5】

【0167】
本発明は上述した各実施形態および各実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明のコートキャリア再生方法を用いることで、処理時間やコストを抑えて容易にコート樹脂の膜厚が均一なコートキャリアを再生できる。よって、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に使用されるコートキャリアの再生に、好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0169】
1 現像カートリッジ
2 現像容器
3 現像剤収容部
4 トナー収容部
11 情報記憶部
20 画像形成装置
30 情報処理部
40 コートキャリア
41 コア粒子
42 シェル層(コート樹脂層)
51 ICチップ(情報記憶部)
61 CPU
140,240 コートキャリア(使用済みコートキャリア)
142,242 シェル層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面がコート樹脂層で被覆された使用済みのコートキャリアの表面に、コート樹脂を追加被覆することでコートキャリアを再生するコートキャリア再生方法において、
前記使用済みコートキャリアにおけるコート樹脂磨耗量を決定するコート樹脂磨耗量決定ステップを含むことを特徴とするコートキャリア再生方法。
【請求項2】
前記磨耗量決定ステップでは、前記コート樹脂磨耗量を、前記使用済みコートキャリアが使用された二成分現像剤の累積攪拌時間から算出して決定することを特徴とする請求項1に記載のコートキャリア再生方法。
【請求項3】
前記コート樹脂は、熱硬化性シリコーン樹脂であり、
前記使用済みコートキャリアを該使用済みコートキャリアが使用された二成分現像剤のトナーに含まれる樹脂を溶解し、かつ、前記コート樹脂を溶解しない溶剤で洗浄する洗浄ステップを含むことを特徴とする請求項1または2に記載のコートキャリア再生方法。
【請求項4】
前記コートキャリアの再生回数をカウントする再生回数カウントステップを含み、
所定の再生回数に達するまで前記磨耗量決定ステップを含む再生を繰り返し行うことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のコートキャリア再生方法。
【請求項5】
請求項1から4に記載のコートキャリア再生方法により再生されたことを特徴とする再生コートキャリア。
【請求項6】
請求項5に記載の再生コートキャリアとトナーとからなることを特徴とする二成分現像剤。
【請求項7】
請求項6に記載の二成分現像剤が収容されることを特徴とする現像カートリッジ。
【請求項8】
二成分現像剤の累積攪拌時間を記憶する情報記憶部を備えたことを特徴とする請求項7に記載の現像カートリッジ。
【請求項9】
前記情報記憶部は、さらに、前記二成分現像剤に含まれるコートキャリアの再生回数を記憶することを特徴とする請求項8に記載の現像カートリッジ。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の現像カートリッジが取り外し可能に設置されることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−7903(P2011−7903A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149471(P2009−149471)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】