説明

コードロック

【課題】コードロックにおける紐に対する留め付け位置の変更を、その構造の複雑化を招くことなく、片手でも容易に行えるようにする。
【解決手段】雄具Mとこの雄具Mを付勢手段Sの付勢に抗する向きへの移動操作可能に納める雌具Fとを有すると共に、この雄具M及び雌具Fの側部にそれぞれ紐Wの通し孔1、5を備えてなる。雌具Fには、コードロックの装備対象物に対する取り付け部6が備えられている。雄具Mの通し孔1における前記付勢により紐Wを挟持する挟持箇所が、この通し孔1の一方の孔口1a側よりも他方の孔口1b側において、前記付勢先側Sbに位置されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、紐の任意の位置に留め付け可能であり、また、この留め付け状態を雄具を付勢に抗する向きへ移動操作することで解くように構成されたコードロックの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
側部に紐の通し孔を備えた本体と、付勢に抗した所定の押し込み位置でこの本体の通し孔に整合する紐の通し孔を備えたボタン体とからなるコードロックがある。(特許文献1の図3参照)しかるに、かかるコードロックにあっては、紐に対する留め付け位置を変えるためには、基本的には前記ボタン体を押し込みながら紐を引っ張る必要があり、この操作を片手でも容易に行えるようにすることが課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−70014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、この種のコードロックにおける紐に対する留め付け位置の変更を、その構造の複雑化を招くことなく、片手でも容易に行えるようにする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、コードロックを、雄具とこの雄具を付勢手段の付勢に抗する向きへの移動操作可能に納める雌具とを有すると共に、この雄具及び雌具の側部にそれぞれ紐の通し孔を備えてなるコードロックであって、
前記雌具には、コードロックの装備対象物に対する取り付け部が備えられていると共に、
少なくとも、前記雄具の通し孔における前記付勢により紐を挟持する挟持箇所が、この通し孔の一方の孔口側よりも他方の孔口側において、前記付勢先側に位置されるようになっているものとした。
【0006】
コードロックを構成する雌具は装備対象物に取り付け部をもって取り付けられる。かかる雌具の挟持箇所と雄具の挟持箇所とによって挟持された紐を、前記雄具の通し孔における他方の孔口から外方に引き出される向きに引っ張ると、前記のように形成される通し孔は前記付勢先側に位置される他方の孔口側の挟持箇所を紐に突き立て難くすることから、この向きには所望の位置まで片手で紐を比較的抵抗少なく引き出すことができる。この紐の引っ張り操作を止めると付勢手段の付勢により雌具の挟持箇所と雄具の挟持箇所とによって再び紐の挟持がなされる。一方、前記雄具の通し孔における一方の孔口から外方に引き出される向きへの紐が移動される場合には、前記他方の孔口側の挟持箇所が紐に突き立つことから、この向きへは紐を引き出し難くすることができる。
【0007】
前記雄具の通し孔の他方の孔口側の挟持箇所は、この雄具の側部と通し孔の孔内壁とが90度以内の角度をもって接し合う縁部により構成されるようにすることが、好ましい態様の一つとされる。
【0008】
また、前記紐の挟持状態において、少なくとも、雄具の通し孔の他方の孔口側の挟持箇所が、雌具の通し孔における紐を挟持する挟持箇所に対向する箇所よりも、付勢手段の付勢先側に位置されるようにしておくことが、好ましい態様の一つとされる。
【0009】
前記雌具の取り付け部を、雌具の側部から張り出し縫着可能な薄肉板状をなすように構成させておけば、この取り付け部を装備対象物に縫着することで、コードロックをかかる装備対象物の所望の位置に取り付けることができる。
【0010】
前記雄具を脚部と通し孔を備えた頭部とを有するようにすると共に、雌具を前記頭部の突き出される一方筒口と前記脚部の端部の突き出される他方筒口とを備えた筒状をなすように構成させておけば、筒状主体の筒他端の外側に突き出される雄具の脚部の端部を引っ張ることでも前記付勢に抗する向きに雄具を移動させて紐に対するコードロックの留め付け状態を解除することができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、コードロックの構造の複雑化を招くことなく、紐に対するその留め付け位置の変更を、片手でも容易に行えるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は実施の形態にかかるコードロックの正面図である。
【図2】図2は実施の形態にかかるコードロックの背面図である。
【図3】図3は実施の形態にかかるコードロックの平面図である。
【図4】図4は実施の形態にかかるコードロックの右側面図である。
【図5】図5は図1におけるA−A線断面図である。
【図6】図6は実施の形態にかかるコードロックを紐に留め付けた状態を示した断面図である。
【図7】図7は雌具の正面図である。
【図8】図8は雌具の平面図である。
【図9】図9は図7におけるB−B線断面図である。
【図10】図10は雌具の右側面図である。
【図11】図11は図7におけるC−C線断面図である。
【図12】図12は雄具の正面図である。
【図13】図13は雄具の平面図である。
【図14】図14は雄具の底面図である。
【図15】図15は雄具の右側面図である。
【図16】図11は図12におけるD−D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図16に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかるコードロックは、紐Wの任意の位置に留め付け可能であり、また、この留め付け状態をコードロックを構成する雄具Mを付勢に抗する向きに移動操作することで解くように構成されたものである。かかる紐Wは、このようにコードロックの留め付けが可能なものであれば、その形状(丸紐、平紐など)、材質や構造(編み紐、ゴム紐、合成樹脂製の紐など)は問われない。かかるコードロックは、典型的には、こうした紐Wにより絞られたり、引き締められたりする箇所を備えた各種のコードロックの装備対象物におけるこの箇所を巡る紐Wに留め付けられて、その留め付け位置を変えることでこのような箇所を絞ったり、緩めたりするように用いられる。
【0014】
この実施の形態にかかるコードロックは、雄具Mと、付勢手段Sと、この雄具Mをかかる付勢手段Sの付勢に抗する向きへの移動操作可能に納める雌具Fとを有する。かかる雄具Mの側部4及び雌具Fの側部にはそれぞれ紐Wの通し孔1、5が形成されており、前記付勢に抗して雄具Mを所定位置まで移動させた状態において、この雄具Mの通し孔1と雌具Fの通し孔5とがこれらの通し孔1、5に抵抗少なくあるいは抵抗なく紐Wを通せるように整合し合うようになっている。これらの通し孔1、5に紐Wを通した状態から雄具Mの前記移動操作を止めると、前記付勢により雄具Mは操作前の位置向けて移動され前記通し孔1、5の整合状態が解かれることから、雄具Mの通し孔1の挟持箇所1cと雌具Fの通し孔5の挟持箇所5aとの間で紐Wが挟み付けられる。これにより、紐Wの任意の位置にコードロックが留め付けられる。
【0015】
前記雌具Fには、コードロックの装備対象物に対する取り付け部6が備えられている。図示の例では、雌具Fは、扁平な筒状主体7の左右にそれぞれ、薄肉板状をなす取り付け部6を形成させてなる。
【0016】
筒状主体7は、前後二箇所の幅広の側板部7a、7aと、左右の幅狭の側板部7b、7bとを有し、筒一端7cを雌具Fの一方筒口として開放させている。筒状主体7の筒他端7dには、筒状主体7の左右方向に亘るスロット7fにより前後に区分された底板部7eが形成されており、かかるスロット7fにより雌具Fは他方筒口を有している。
【0017】
雌具Fの通し孔5は、筒状主体7の前記筒一端7cと、筒状主体7の筒軸方向中程の位置との間となる位置において、前記幅広の側板部7aにそれぞれ形成されている。各通し孔5は前記筒軸方向において狭く、前記左右方向に広くなっている。各通し孔5の大きさ及び孔形状は略同一であるが、両通し孔5の中心を結ぶ仮想の直線は、前記筒軸に対し、斜めに交叉するようになっている。
【0018】
左側の前記取り付け部6は筒状主体7の一方の幅広の側板部7aと左側の幅狭の側板部7bとが接し合う箇所から側方に突き出すように形成され、また、右側の前記取り付け部6は筒状主体7の一方の幅広の側板部7aと右側の幅狭の側板部7bとが接し合う箇所から側方に突き出すように形成されている。左右の取り付け部6の一面と筒状主体7の一方の幅広の側板部7aの外面とは同面をなすように形成されている。この実施の形態にあっては、かかる左右の取り付け部6の双方又はいずれか一方を、装備対象物となる衣服の生地に縫着することで、コードロックをかかる衣服の所望の位置に取り付けることができるようになっている。すなわち、この実施の形態にあっては、雌具Fの取り付け部6は、雌具Fの側部から張り出し縫着可能な薄肉板状をなすように構成されている。
【0019】
また、図示の例では、筒状主体7の前記筒一端7cと筒状主体7の筒軸方向中程の位置との間となる位置において、前記左右の幅狭の側板部7b、7bにそれぞれ、前記筒軸方向に長い長孔状をなす貫通孔7gが形成されている。
【0020】
一方、前記雄具Mは、脚部2と前記通し孔1を備えた頭部3とを有している。
【0021】
頭部3は、前記雌具Fの前後の幅広の側板部7a、7aの内面間に隙間少なく納まる厚さと、この雌具Fの左右の幅狭の側板部7b、7bの内面間に隙間少なく納まる幅とを備えている。
【0022】
脚部2は、前記頭部3と等しい幅を有するが、厚さを頭部3よりも小さくさせてなる。脚部2の端部には前後方向に脚部2を貫通する左右方向に長い横スロット2aが形成されている。また、脚部2における頭部3との連接箇所と前記横スロット2aとの間には、前後方向に脚部2を貫通する上下方向に長い縦スロット2bが形成されている。
【0023】
雄具Mの頭部3から脚部2までの長さは、雌具Fの筒軸方向の寸法よりも大きくなっている。雄具Mは、雌具Fの筒状主体7の筒一端7cから、脚部2を先にして、この筒状主体7内、つまり、雌具F内に上下動可能に納められるようになっている。雄具Mの頭部3と脚部2との連接箇所であって、この頭部3の厚さ側の側部にはそれぞれ、係合突起3aが形成されている。この実施の形態にあっては、雌具Fの前記スロット7fを通じて雄具Mの脚部2の端部における横スロット2aの形成箇所が筒状主体7の筒他端7dの外側に突き出される位置まで雌具F内に雄具Mを前記のように納め入れる過程において、前記係合突起3aの当接により筒状主体7の幅狭の側板部7bにおける前記筒一端7cと貫通孔7gとの間に位置される箇所が主として弾性変形してかかる納め入れを許容すると共に、係合突起3aが貫通孔7gに入り込む位置までかかる納め入れがなされたときに前記変形箇所が弾性復帰して、かかる貫通孔7gに係合突起3aが係合して雄具Mと雌具Fとが組み合わされるようになっている。雌具Fをプラスチックの成形品とすることでかかる弾性変形特性を雌具Fに容易に具備させることができる。この実施の形態にあっては、前記のように筒状主体7の筒他端7dの外側に突き出される雄具Mの脚部2の端部を引っ張ることでも前記付勢に抗する向きに雄具Mを移動させて紐Wに対するコードロックの留め付け状態を解除できるようになっている。図示の例では、前記横スロット2aを利用して脚部2の端部に帯状のストラップを備えさせることができるようになっている。
【0024】
また、この実施の形態にあっては、前記付勢手段Sを、前記雄具Mの縦スロット2b内に納められちた圧縮コイルバネにより構成させている。かかる圧縮コイルバネはバネ一端を頭部3に接しさせ、かつ、バネ他端を筒状主体7の底板部7eに接しさせて、雄具Mを雌具Fの一方筒口から外方に押し出させる向きに常時付勢するようになっている。この付勢により、雄具Mは、前記貫通孔7gにおける雌具Fの筒一端7c側にある孔口に係合突起3aを接しさせ、この筒一端7cから外方に頭部3の一部を突き出させるようになっている。(図1)この図1の状態において、雄具Mの頭部3に形成された通し孔1と雌具Fの通し孔5とは整合されない。
【0025】
図1の状態から、前記付勢手段Sの付勢に抗して雄具Mの頭部3を利用して雄具Mを雌具F内に、前記両通し孔1、5が略整合する位置まで押し込むことで、両通し孔1、5への紐Wの挿通が可能となる。
【0026】
前記付勢手段Sの付勢により、雄具Mは紐Wを、以下の箇所を挟持箇所1cとして挟み付ける。
(1)通し孔1の一方の孔口1aにおける前記付勢の付勢手前側Saにある縁部
(2)通し孔1の他方の孔口1bにおける前記付勢の付勢手前側Saにある縁部
【0027】
また、前記付勢手段Sの付勢により、雌具Fは紐Wを、前後二箇所の通し孔5、5における前記付勢の付勢先側Sbにある縁部を挟持箇所5aとして挟み付ける。
【0028】
そして、この実施の形態にあっては、前記雄具Mの通し孔1における前記挟持箇所1cが、この通し孔1cの一方の孔口1a側よりも他方の孔口1b側において、前記付勢先側Sbに位置されるようになっている。すなわち、この実施の形態にあっては、前記付勢手段Sによる付勢方向に沿った仮想の直線xに対して、雄具Mの二箇所の挟持箇所1c、1cを通る仮想の直線yが、斜めに交叉するようになっている。(図6)
【0029】
コードロックを構成する雌具Fは装備対象物に取り付け部6をもって取り付けられる。かかる雌具Fの挟持箇所5aと雄具Mの挟持箇所1cとによって挟持された紐Wを、前記雄具Mの通し孔1における他方の孔口1bから外方に引き出される向き(図6において矢印Pで示す向き)に引っ張ると、前記のように形成される通し孔1は前記付勢先側Sbに位置される他方の孔口1b側の挟持箇所を紐Wに突き立て難くすることから、この向きには所望の位置まで片手で紐Wを比較的抵抗少なく引き出すことができる。この紐Wの引っ張り操作を止めると付勢手段Sの付勢により雌具Fの挟持箇所5aと雄具Mの挟持箇所1cとによって再び紐Wの挟持がなされる。一方、前記雄具Mの通し孔1における一方の孔口1aから外方に引き出される向きへの紐Wが移動される場合には、前記他方の孔口1b側の挟持箇所が紐Wに突き立つことから、この向きへは紐Wを引き出し難くすることができる。具体的には、この実施の形態にあっては、雄具Mの通し孔1の前記他方の孔口1b側の挟持箇所1cは、この雄具Mの側部4と通し孔1の孔内壁1dとが90度以内の角度をもって接し合う縁部により構成されている。かかる孔内壁1dは前記雄具Mの二箇所の挟持箇所1c、1cを通る仮想の直線yに沿っている。また、前記紐Wの挟持状態においては、雄具Mの通し孔1の二箇所の挟持箇所1c、1cはいずれも、雌具Fの通し孔5における紐Wを挟持する挟持箇所5aに対向する箇所5bよりも、付勢手段Sの付勢先側Sbに位置されるようになっている。(図6)
【符号の説明】
【0030】
M 雄具
F 雌具
S 付勢手段
Sb 付勢先側
1 通し孔
1a 一方の孔口
1b 他方の孔口
5 通し孔
6 取り付け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄具とこの雄具を付勢手段の付勢に抗する向きへの移動操作可能に納める雌具とを有すると共に、この雄具及び雌具の側部にそれぞれ紐の通し孔を備えてなるコードロックであって、
前記雌具には、コードロックの装備対象物に対する取り付け部が備えられていると共に、
少なくとも、前記雄具の通し孔における前記付勢により紐を挟持する挟持箇所が、この通し孔の一方の孔口側よりも他方の孔口側において、前記付勢先側に位置されるようになっていることを特徴とするコードロック。
【請求項2】
雄具の通し孔の他方の孔口側の挟持箇所は、この雄具の側部と通し孔の孔内壁とが90度以内の角度をもって接し合う縁部により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のコードロック。
【請求項3】
紐の挟持状態において、少なくとも、雄具の通し孔の他方の孔口側の挟持箇所が、雌具の通し孔における紐を挟持する挟持箇所に対向する箇所よりも、付勢手段の付勢先側に位置されるようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のコードロック。
【請求項4】
雌具の取り付け部が、雌具の側部から張り出し縫着可能な薄肉板状をなすように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のコードロック。
【請求項5】
雄具は脚部と通し孔を備えた頭部とを有すると共に、
雌具は前記頭部の突き出される一方筒口と、前記脚部の端部の突き出される他方筒口とを備えた筒状をなすように構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のコードロック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−223392(P2012−223392A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−94041(P2011−94041)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)