説明

コード読取装置

【課題】読取対象であるコードの視認性を向上することにより、コードの読取作業を容易かつ迅速に行うことができるコード読取装置を提供する。
【解決手段】読取対象物表面にマーキングされたコードを読み取るコード読取装置において、読取開口部を有する筐体と、筐体の側面の一部に視認窓と、読取開口部を介して読取対象物の表面に視認用の照準照明光を照射する照準照明手段と、読取開口部を介してコードを読み取るためのコード照明光をコードを含む2次元エリアに照射するコード照明手段と、コード照明光が2次元エリアで反射したコード照明反射光を受光する撮像手段と、撮像手段によって生成された画像データに基づいてコードに対応する所定データを再生するデコーダ手段とを備え、照準照明光とコード照明光が異なる波長成分を有する発光色であり、かつ視認窓が照準照明光の波長成分のみを透過する光学フィルタである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の表面に形成された2次元コードなどを光学的に読み取るコード読取装置に関し、より詳細には、読取対象に対して容易に位置合わせすることができるように改良したコード読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製品や部品の管理情報を短時間で認識するために、製品や部品の番号、品名、価格などの情報を白黒等の縞模様で記号化した1次元または2次元コードが広く用いられている。これらのコードの模様は、異なる反射率を有するマークで表されており、例えば、1次元コードにおいては、線の幅の比の組み合わせで一連の数字や文字を表し、製品や部品の番号、名称、価格などの各種情報が上記数字や文字に置き換えられている。
【0003】
例えば、バーコードで表されたコードは、バーコードリーダと呼ばれる読取装置によって読み取られる。このバーコードリーダは、光をバーコードに当て、反射率の異なる白と黒の縞模様から返ってくる光を受けて、その反射光の強弱のパターンに基づいて元の数字に解読する装置である。この種のコード読取装置には、操作者が装置を手に持って利用する手持ち式のタイプと、読取窓の上をバーコードのついた製品等を通過させる定置式のタプがある。一般的に、前者のタイプには、光源として発光ダイオードが用いられ、後者のタイプにはレーザービームが光源として用いられている。
【0004】
このうち、手持ち式(ハンディタイプ)のコード読取装置は、POS(販売時点情報管理)システムとして、スーパーマーケット、デパート、コンビニエンスストア等で多用されている。図3は、一般的なハンディタイプのバーコードリーダの一例を示す斜視図である。同図において、バーコードリーダ100の本体101は、横断面がL字状である略直方体形状をなしている。本体101の一端の先端部には、コードの読取部102が設けられ、本体101の他端の上面部には、読み取ったコードのデータの登録、抹消、表示、ガイダンス等の指令を入力するためのテンキー103、および所定事項を表示するための液晶パネル等からなる表示部104が設けられている。
【0005】
このコード読取装置100を使用する際、使用者は、本体101の他端を片手で把持して読取部102を読取対象であるコードに押し当て、本体101の側面部に設けられているトリガーボタン105を押す。すると、読取部102を介してコードが読み取られるので、使用者は、所定のテンキー103を押してそのコードのデータの登録、表示等の指令を入力する。
【0006】
この種のハンディタイプのコード読取装置では、従来、白黒等の模様で符号化された1次元コードや2次元コードが対象とされていた。ところが、近年、自動車、航空機、電気機器等の工業製品などを扱う分野では、金属やセラミックス、高分子化合物などの物体表面にコード(2次元または1次元コード)を直接マーキングするダイレクトパーツマーキング(DPMI : Direct Part Marking Identification)と呼ばれる手法が普及している。
【0007】
現在、このダイレクトパーツマーキングの手法には、ドットピーン(刻印)とレーザマーカとが存在している。このうちドットピーンは、製品表面を凹ませることによりマーキングするので、耐久性に優れ、消えない印字が形成されることが特徴であり、例えばエンジンブロック等の製品管理などに利用されている。
【0008】
【特許文献1】特開2000−298698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来より、金属等の光沢面にダイレクトドットマーキング手法によって形成されたコードを読み取る場合には、取扱いが容易で汎用性に優れているハンディタイプの接触型コード読取装置が使用されている。しかしながら、図3に示されるような従来のコード読取装置100では、本体(筐体)101が不透明な部材で構成されているため、読取対象であるコードと読取部102との位置関係を確認しにくく、コードを読取可能なエリア内に捕捉できていることを確認することができないため、コードを読み取る際の位置合わせが困難であった。特に、外部が暗い環境下でコードの読取作業を行う場合には、その困難性は極めて高かった。その結果、従来のコード読取装置100では、位置ずれによる読み取りエラーなどが発生して無駄な時間を要してしまう、という問題があった。
【0010】
要するに、従来のコード読取装置100では、コードを確実に読取部102の読取可能エリア内に位置させる作業に手間と時間を要してしまうため、ハンディタイプの接触型コード読取装置の利点、すなわち汎用性および簡便性が十分に発揮されていない、というのが現状であった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、読取対象であるコードの視認性を向上することにより、コードの読取作業を容易かつ迅速に行うことができるコード読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、読取対象物の表面にマーキングされたコードを光学的に読み取るコード読取装置において、読取開口部を有する筐体と、該筐体の側面の一部に、前記読取開口部の所定領域内に捉えられた前記コードを前記筐体の外部から視認できるように形成された視認窓と、前記読取開口部を介して前記読取対象物の表面に視認用の照準照明光を照射する照準照明手段と、前記読取開口部を介して前記コードを読み取るためのコード照明光を前記コードを含む2次元エリアに照射するコード照明手段と、前記コード照明光が前記2次元エリアで反射したコード照明反射光を受光する撮像手段と、該撮像手段によって生成された画像データに基づいて前記コードに対応する所定データを再生するデコーダ手段とを備え、前記照準照明光と前記コード照明光とが異なる波長成分を有する発光色であり、かつ、前記視認窓が前記照準照明光の波長成分のみを透過する光学フィルタで形成されていることにより、達成される。
【0013】
また、上記目的は、前記照準照明光の発光色が3原色のうちの1色であり、かつ、前記撮像手段が前記照準照明光の発光色が輝度信号に寄与しないように設定されたカラーカメラであることにより、効果的に達成される。
【0014】
さらに、上記目的は、前記撮像手段が該撮像手段の視野の位置情報を前記読取対象物の表面上に示すためのポインタ光を照射するポインタ発光手段を有することにより、効果的に達成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るコード読取装置によれば、コードを読み取るための位置決めをする際に、視認用の照準照明光による照明補助を受けて、読取開口部内に捉えられるコードを視認窓を介して目視で確認することができる。これにより、コードの位置合わせを容易かつ迅速に実行することができるとともに、外部が暗い環境下でも良好に視認することができるので、読取可能領域からコードがはみ出すことにより生じるエラー等が確実に防止され、正確な読み取りを行うことができる。さらに、本発明に係るコード読取装置では、視認窓として照準照明光の波長成分のみを透過する光学フィルタを用いているので、視認窓を介して装置内部に入射する外乱光を大幅に低減することができ、外乱光による画像の劣化を防止することができる。
【0016】
また、本発明に係るコード読取装置によれば、照準照明光の発光色を3原色のうちの1色とし、かつ、該照準照明光の発光色が輝度信号に寄与しないように設定されたカラーカメラを撮像手段として用いることにより、複雑な信号処理などを要することなく、視認窓を通過する光の色成分への感度を無くすように撮像手段を設定することができる。この結果、画像劣化の要因となり得る外乱光の影響を、より効果的に防止することができる。
【0017】
また、本発明に係るコード読取装置によれば、撮像手段にポインタ発光部を配設し、該ポインタ発光部から照射されるポインタ光によって撮像手段の視野の位置情報(中心位置や外縁など)を読取対象物の表面上に示すようにしたことにより、読取位置をより容易かつ確実に視認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照にしながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下に述べる実施形態は、金属等からなる読取対象物の表面上にダイレクトパーツマーキング手法(DPMI : Direct Part Marking Identification)によって設けられたドット状のコードを読み取る、ハンディタイプのコード読取装置に本発明を適用したものである。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る本発明の実施形態に係るコード読取装置の外観を示す断面図である。同図において、コード読取装置1は、使用者が片手で把持して操作可能な断面L字形状に形成された筐体2を備えている。この筐体2は、頭部底面(図1左下)に形成された読取開口部2aと、屈曲部に配設された画像キャプチャー用のトリガーボタン3を有している。このコード読取装置1では、トリガーボタン3による撮像操作に応じて、読取対象物(金属板等)4の表面上にマーキングされたコード5を読取開口部2aを通して光学的に読み取るように構成されている。また、読取開口部2aが形成されている筐体2の頭部の側面には、後述する光学フィルタからなる視認窓6が形成され、該視認窓6を介して、読取開口部2aの所定領域内に捉えられたコード5を筐体2の外部から視認できるようになっている。
【0020】
図2は、図1のコード読取装置の基本構成を概略的に示す要部断面図である。同図において、コード読取装置1は、筐体2の内部に、読取開口部2aを介して読取対象物4の表面に視認用の照準照明光7Lを照射する照準照明源7と、読取開口部2aを介してコード5を含む2次元エリアに斜方向からコード5を読み取るためのコード照明光8Lを照射するコード照明源8と、コード照明光8Lが上記2次元エリアで反射したコード照明反射光を受光する撮像部9と、該撮像部9によって生成された画像データに基づいてコード5に対応する所定データを再生するデコーダ手段を有する制御部10とを備えている。
【0021】
撮像部9は、CCD型やMOS型などのカラーカメラであり、読取開口部2aの略中央部の上方に配されている。また、この撮像部9は、カラーカメラに撮像画像の焦点を合わせるレンズ9aと、この撮像部9の視野の位置情報(中央位置)を読取対象物4の表面上に示すためのポインタ光11Lを照射するポインタ発光源(レーザービーム等)11とを備えている。なお、撮像部9から下方に延びている2本の長点線は、撮像部9の視野9Vの外縁を示すものであり、この視野9Vは、読取開口部2aより僅かに小さくなるように設定されている。
【0022】
照準照明源7およびコード照明源8は、高輝度LEDアレイなどで構成され、照準照明光7Lとコード照明光8Lとが異なる波長成分を有する発光色に設定されている。特に、これらの照明光7L,8Lに用いる色は、光の3原色(赤色、緑色、青色)のいずれかであることが好ましい。また、視認窓6を構成する光学フィルタは、照準照明源7から発光される照準照明光7Lの波長成分のみを透過する素材(例えば透明なガラス板材等に所定の着色染料を塗布して形成されたカラーフィルタなど)で構成されている。
【0023】
本実施形態では、照準照明源7に緑色光を発光するLEDを用いるとともに、コード照明源8に赤色光を発光するLEDを用い、かつ、視認窓6の光学フィルタとして照準照明源7が発光する緑色光以外の可視光を遮断する緑色カラーフィルタを用いている。これにより、照準照明光7Lと一致する波長成分を有する光以外の外乱光が、視認窓6を介して筐体2の内部に進入することができないようになっている。
【0024】
また、コード5を含む読取対象物4の表面上の2次元エリアを撮像する撮像部9には、照準照明光7L、すなわち緑色光が輝度信号に寄与しないように設定されたカラーカメラが用いられている。一般に、カラーカメラで撮像されたカラー画像からモノクロ画像を得る際には、NTSC(National Television System Committee)の規格による下記の変換式に基づいて、輝度信号Yが生成される。
【0025】
Y=0.299R+0.587G+0.1144B
本実施形態の撮像部9で用いられる輝度信号変換式は、上記変換式における照準照明光7Lの発光色(G:緑色光)に対応する係数がゼロに設定され、照準照明光7Lの発光色が輝度信号Yに寄与しないようになっている(例えば、Y=R+B,Y=R,Y=Bなど)。この設定により、撮像部9は、仮に照準照明光7Lと一致する波長成分を有する外乱光が視認窓6を介して筐体2の内部に進入したとしても、この外乱光による影響を受けずにコード5を含む2次元エリアの画像を撮像することができる。
【0026】
このような構成を有するコード読取装置1では、コード5がマーキングされた読取対象物4の表面に対して筐体2の読取開口部2aを略平行に近接させた状態で、照準照明源7から照射される照準照明光7L、および照準照明光7Lと同色のポインタ発光源11から照射されるポインタ光11Lによる照明補助を受け、視認窓6を介して目視されながら、コード5の位置合わせが実行される。コード5が撮像部9の読取可能領域内に捉えられ、トリガーボタン3が引かれると、照準照明源7およびポインタ発光源がオフになり、その後コード照明源8がオンになってコード5を含む2次元エリアの画像が撮像部9により撮像される。そして、この撮像部9で生成された画像データに基づいて、コード5に対応する所定のデータが制御部10のデコード手段によって再生される。
【0027】
以上のように、本実施形態に係るコード読取装置1では、照準照明光7Lおよびポインタ光11Lによる照明補助を受けて、読取開口部2a内に捉えられるコード5を視認窓6を介して目視で確認しつつ、コード5を読み取るための位置決めを実行できるようになっている。これにより、コード5の位置合わせを容易かつ迅速に行うことができるとともに、外部が暗い環境下でも良好に視認することができるので、撮像部9の読取可能領域(視野9V)からコード5がはみ出すことにより生じるエラー等が確実に防止され、正確な読み取りを行うことができる。
【0028】
また、本実施形態に係るコード読取装置1では、視認窓6を構成する光学フィルタとして、照準照明光7Lの波長成分のみを透過し、それ以外の可視光を遮断する着色カラーフィルタを用いている。これにより、視認窓6を介して筐体2内に進入する外乱光を大幅に低減することができるので、外乱光による画像の劣化を効果的に防止することができる。
【0029】
また、本実施形態に係るコード読取装置1では、照準照明光7Lの発光色を3原色のうちの1色とし、かつ、該照準照明光7Lの発光色が輝度信号に寄与しないように設定されたカラーカメラを撮像部9として用いている。これにより、複雑な信号処理などを要することなく、視認窓6を通過する光の色成分をカットする機能を撮像部9に設定することができ、画像劣化の要因となり得る外乱光の影響をより効果的に防止することができる。
【0030】
なお、本実施形態では、筐体2の頭部側面の一部に視認窓6が配設されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、筐体2に複数の視認窓6が配設されていてもよく、また、照準照明源7および斜方照明源8の種類および配置は、本実施形態と異なるものであってもよい。
【0031】
また、照準照明源7,コード照明源8から投光される照準照明光7L,コード照明光8L、ならびに視認窓6を構成する光学フィルタの色についても、本実施形態で用いた色に限定されるものではなく、照準照明光7Lとコード照明光8Lとが異なる発光色であり、かつ、視認窓6に用いる光学フィルタが照準照明光7Lの発光色以外の色の可視光を遮断するものであれば、これらに採用する色は何色でもよいが、光の3原色である赤色、青色、緑色がカラー画像データ形式で用いられるフィルタであることから、この3原色のうちのいずれかの色を用いることにより、最良の結果を得ることができる。
【0032】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係るコード読取装置の外観を示す側面図である。
【図2】図1のコード読取装置の基本構成を概略的に示す要部断面図である。
【図3】一般的なハンディタイプのコード読取装置の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
1 コード読取装置
2 筐体
2a 読取開口部
4 読取対象物
5 コード
6 視認窓(光学フィルタ)
7 照準照明源
7L 照準照明光(緑色光)
8 コード照明源
8L コード照明光(赤色光)
9 撮像部(カラーカメラ)
10 制御部(デコーダ手段)
11 ポインタ発光源
11L ポインタ光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読取対象物の表面にマーキングされたコードを光学的に読み取るコード読取装置であって、
読取開口部を有する筐体と、
該筐体の側面の一部に、前記読取開口部の所定領域内に捉えられた前記コードを前記筐体の外部から視認できるように形成された視認窓と、
前記読取開口部を介して前記読取対象物の表面に視認用の照準照明光を照射する照準照明手段と、
前記読取開口部を介して前記コードを読み取るためのコード照明光を前記コードを含む2次元エリアに照射するコード照明手段と、
前記コード照明光が前記2次元エリアで反射したコード照明反射光を受光する撮像手段と、
該撮像手段によって生成された画像データに基づいて前記コードに対応する所定データを再生するデコーダ手段とを備え、
前記照準照明光と前記コード照明光とは、異なる波長成分を有する発光色であり、かつ、
前記視認窓は、前記照準照明光の波長成分のみを透過する光学フィルタで形成されていることを特徴とするコード読取装置。
【請求項2】
前記照準照明光の発光色は、3原色のうちの1色であり、かつ、
前記撮像手段は、前記照準照明光の発光色が輝度信号に寄与しないように設定されたカラーカメラである請求項1に記載のコード読取装置。
【請求項3】
前記撮像手段は、該撮像手段の視野の位置情報を前記読取対象物の表面上に示すためのポインタ光を照射するポインタ発光手段を有する請求項1または2に記載のコード読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−205229(P2009−205229A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44086(P2008−44086)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000151601)株式会社東研 (18)
【Fターム(参考)】