説明

コールベッドメタンハイドレート製造装置及びコールベッドメタンハイドレート製造方法

【課題】CBMと同時に取り出されるCBM随伴水を利用したCBMハイドレート製造装置及び方法を提供する。
【解決手段】CBMハイドレート製造装置1は、石炭層G1から取り出されるCBMを用いてCBMハイドレートを製造するものであり、石炭層G1からCBMに随伴して取り出されるCBM随伴水とCBMとを含む混合物からCBMハイドレートを合成する合成手段2と、合成手段2により合成されたCBMハイドレートと残留水とを分離する分離手段3と、分離手段3によって分離された残留水を混合物に混入させて合成手段2から分離手段3に循環させる循環手段4を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下の石炭層から取り出されるコールベッドメタンを用いてコールベッドメタンハイドレートを製造するコールベッドメタンハイドレート製造装置及びコールベッドメタンハイドレート製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非在来型天然ガスの資源開発技術に関する技術開発が活発に進められている。非在来型天然ガスとは、従来から資源開発が行われている天然ガス(在来型天然ガス)に対して、従来技術での開発が難しい種類の天然ガスを指す。その為、非在来型天然ガスの資源開発を実現するためには、新技術の開発が大きなウェートを占める。
【0003】
殊に最近、非在来型天然ガス資源の一つとして、石炭層に存在する天然ガスのうち、メタンを主成分とするガス(コールベッドメタン、以下CBM)資源の技術開発が進められており、北米(サンファン田、ブラックワーリア田等)では既に商業化されている(非特許文献1、2)。
【0004】
CBMは、国内の地下の石炭層にも相当量賦存すると試算されており、非在来型資源のなかでも有力な開発対象候補の一つとされつつある。
【0005】
CBMの生産は、通常、石炭層に存在する地層水を汲み上げて、それに随伴するメタンを主成分とする天然ガスを取り出すことにより行われる(非特許文献3)。
【0006】
図4は、従来のCBMの生産方法を説明する概要図である。CBMの生産は、図4に示すように、生産井101にて、地下Gの石炭層G1から地層水を汲み上げて、その汲み上げた地層水と、それに随伴して取り出されたCBMとを気液分離装置102に供給する。
【0007】
そして、気液分離装置102で気液分離して、CBMは、パイプライン等を介してコンプレッションステーション103やLNG製造設備104に移送され、地層水は、例えば水注入井105から地下Gに戻され、あるいは河川106に流される。
【0008】
このように、CBMの生産時には、天然ガスと同時に大量の地層水(以下、CBM随伴水という)を地上に取り出すことが必須となる。このCBM随伴水には、重金属の塩類等が含まれており、環境及び経済的な観点から、安全で安価な処理方法が求められている。また、CBMの商業化には天然ガスの効率的な輸送方法の開発が重要となる。
【0009】
上記した二つの要件は、CBM資源開発を在来型天然ガスに競合する選択肢として商業的に成立させる為に解決しなければならない重要な問題である。
【0010】
ところで、北米等のようにCBMのパイプライン網が発達している国においては、その陸上輸送が容易である。例えば、図4に示されるように、生産井101で石炭層G1に存在する地層水を汲み上げて、気液分離装置102でCBMとCBM随伴水に気液分離し、CBMをパイプライン107により需要地に直接移送することが行われている。
【0011】
しかし、このようなパイプライン107の敷設が困難な国や地域では、その輸送手段やコストが問題となる。特に、日本のように国土が小さく、また、パイプライン網が未発達な国・地域では、CBMの効率的な輸送方法が開発の鍵となっている。
【0012】
一方、在来型天然ガスの輸送方法として、天然ガスを高密度なガスハイドレート(メタンなどのガスと水を低温・高圧で反応させることにより得られ、結晶内部に大量のガスを取り込むことが出来る氷状の物質)として輸送する技術(特許文献1)や、在来型天然ガスと海水を原料としたハイドレート化技術等が提案されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2001−10985号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】W. D. Gunter, T. Gentzis, B. A. Rotteenfusser and R. J. H. Richardson, Energy Conversion Management (1997) Vol. 38, p. S217
【非特許文献2】C. M. Boyer II and B. Qingzhao, Coal Geology (1998) Vol. 35, p. 349
【非特許文献3】藤田和男, 石油開発時報, No.129「超石油資源講座」5. 非在来型天然ガスの概観
【非特許文献4】de Roo, J.L., Peters, C.J., Lichtenthaler, R.N., Dipen, G.A.M., "Occurrence of methane hydrate in saturated and unsaturated solutions of sodium chloride and water in dependence of temperature and pressure", AlChe Journal, 29, 651(1983)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1のガスハイドレート法は、在来型の天然ガスに係るものであり、また、それぞれ別々に取り出された天然ガスと水を結晶化させることによりガスハイドレートとするものであって、CBMと同時に取り出されたCBM随伴水に関しては何ら触れられていない。
【0016】
また、非特許文献4の方法は、海水中に含まれる塩分によりガスハイドレートの生成速度の低下や、生成されたガスハイドレートの分解速度の上昇が指摘されており、上記した特許文献1の方法と同様に、ガスハイドレートをそれぞれ別々に取り出された天然ガスと水を結晶化させることにより形成するものであって、天然ガスと同時に取り出される水の処理方法を示唆するものでなかった。
【0017】
このように、在来型天然ガスの輸送方法等として、天然ガスを高密度なガスハイドレート化して輸送する方法などが知られているものの、非在来型天然ガスであるCBM資源開発において、石炭層から取り出されたCBMの効率的な輸送と、このCBMと同時に取り出されるCBM随伴水の処理を同時に可能とする方法は残念ながら未だ提案されていないのが現状である。
【0018】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、非在来型天然ガスであるCBM資源開発に極めて有効であり、石炭層から取り出されたCBMを効率的に輸送できると共に、このCBMと同時に取り出されるCBM随伴水を環境及び経済的な観点から、安全で安価に処理できる、CBM随伴水を利用した、工業的に有用なCBMハイドレート製造装置及びCBMハイドレート製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者等は、非在来型の天然ガスであるCBMの資源開発に有効な輸送問題と水処理問題を簡便に同時に解決するために、鋭意検討した結果、石炭層から取り出されるCBMと、これと同時に取り出されるCBM随伴水を原料として、ガスハイドレート化技術を適用すると、意外にも、上記輸送問題と水処理問題が同時に解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、この出願は、以下の発明を提供するものである。
【0020】
上記課題を解決する本発明のCBMハイドレート製造装置は、石炭層から取り出されるCBMを用いてCBMハイドレートを製造するコールベッドメタンハイドレート製造装置において、石炭層からCBMに随伴して取り出される随伴水と、CBMとを含む混合物からCBMハイドレートを合成する合成手段と、合成手段により合成されたCBMハイドレートと残留水とを分離する分離手段と、分離手段によって分離された残留水を混合物に混入させて合成手段から分離手段に循環させる循環手段を有することを特徴としている。
【0021】
本発明によれば、石炭層から取り出されるCBMと、CBMに随伴して石炭層から取り出されるCBM随伴水とを含む混合物を原料として、CBMハイドレートを合成するので、石炭層から取り出されたCBM随伴水を有効利用することができる。
【0022】
そして、分離手段によって分離された残留水を混合物に混入させて、再び合成手段から分離手段へと循環させるので、残留水に含まれているCBMハイドレートの合成に関与しない不純物の濃度を高めることができる。
【0023】
残留水と混合物の比率や、循環の回数は任意に決定され、それにより不純物濃度を適宜調整することができる。不純物濃度は、CBM随伴水の初期組成や排水基準、及びシステム効率等により任意に調整される。
【0024】
本発明のCBMハイドレート製造装置は、分離手段によって分離された残留水からCBMハイドレートの合成に関与しない不純物を回収する不純物回収手段を有することを特徴としている。そして、不純物回収手段は、残留水に含まれている重金属塩類を不純物として回収することが好ましい。
【0025】
本発明によれば、残留水から不純物を回収できるので、例えば不純物として塩化物イオンやクロム、マンガン、亜鉛、モリブデン等の重金属塩類を回収して、天然資源として有効利用することができる。
【0026】
本発明のCBMハイドレート製造装置は、合成手段が、混合物を予め設定された結晶化温度及び結晶化圧力に調整して、結晶化反応によりCBMハイドレートを合成することを特徴としている。そして、結晶化温度は0℃から30℃の範囲の温度に調整され、結晶化圧力は0MPaから70MPaの範囲の圧力に調整されることが好ましい。
【0027】
本発明のCBMハイドレート製造方法は、CBMを用いてCBMハイドレートを製造するCBMハイドレート製造方法であって、石炭層に存在するCBM随伴水を汲み上げて、石炭層からCBMを取り出す取り出し工程と、その取り出し工程によって石炭層から取り出されたCBMと、CBMに随伴して石炭層より取り出されたCBM随伴水とを含む混合物からCBMハイドレートを合成する合成工程と、合成工程によって合成したCBMハイドレートと残留水とを分離する分離工程と、その分離工程によって分離された残留水を混合水に混入させる循環工程とを含むことを特徴としている。
【0028】
そして、分離工程で分離された残留水からCBMハイドレートの合成に関与しない不純物を回収する回収工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、CBMとCBM随伴水とを含む混合物を原料とし、これを単にハイドレート化するといった、簡便な構成により、石炭層から取り出されたCBMを効率的に輸送できると共に、このCBMと同時に取り出されたCBM随伴水を有効利用することができ、しかも残留水に含まれる不純物の濃度を高濃度化できるという多大なメリットを有する。
【0030】
例えば、ガスハイドレートは、メタンなどのガスを水と低温・高圧で反応させてできる氷状の物質であり、LNGよりも安価で、圧縮ガスよりも高密度にガスを貯蔵できる物質として注目されているが、これをCBMに応用することで輸送問題が解決される。
【0031】
また、ハイドレート化する際に必要な水として、CBMとともに石炭層から取り出されるCBM随伴水を利用することにより、効率よくコールベッドメタンハイドレートを製造することができ、同時に、結晶化の際の排除効果を利用して、残留水における含有成分の高濃度化と、CBMの高純度化を実現することができる。
【0032】
すなわち、CBMとCBM随伴水とを含む混合物を原料にハイドレート化することで、CBM随伴水の有効利用、CBM随伴水に含まれる塩類や重金属累の分離、除去、回収、CBMの効率的輸送が実現される。
【0033】
CBMは、非在来型天然ガスとして注目されており、その開発は我国のエネルギーセキュリティ上重要である。その開発技術で重要となる輸送技術と環境負荷低減対策とを同時に達成できる技術として、ガスハイドレート化技術の導入を検討する意義は大きい。
【0034】
また、ガスハイドレート化技術についても、これまで海底下に賦存する天然ガスハイドレートの資源開発技術や、LNGに代わる在来型天然ガスのハイドレート化技術などが学術的・技術的な面から検討されてきているが、これらの知見を本研究に活かすことで、両者の研究開発が促進されると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施の形態におけるCBMハイドレート製造装置が適用されるCBM生産設備の一例を示す概要図。
【図2】CBMの生成条件を測定する実験装置の構成図。
【図3】CBM随伴水のメタンハイドレート平衡条件を示すグラフ。
【図4】従来技術を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明の実施の形態について図面に基づいて以下に説明する。
本実施の形態におけるCBMハイドレート製造装置は、石炭層から取り出されるCBMを用いてCBMハイドレートを製造する装置であって、(i)石炭層からCBMに随伴して取り出されるCBM随伴水と、CBMとを含む混合物からCBMハイドレートを合成する合成手段と、(ii)合成手段により合成されたCBMハイドレートと残留水とを分離する分離手段と、(iii)分離手段によって分離された残留水を混合物に混入させて、再び合成手段から分離手段へと循環させる循環手段を有している。
【0037】
すなわち、本発明のCBMハイドレート製造手法は、CBMとCBM随伴水との混合物を原料とし、これを単にハイドレート化するといった、簡便な装置構成により、石炭層から取り出されたCBMの効率的輸送と、このCBMと同時に取り出されるCBM随伴水の有効利用と、CBM随伴水に含まれる不純物の高純度化と、CBMハイドレートに含まれる水分の純水化と、残留水からの重金属類などの回収を実現するものである。
【0038】
図1は、本実施の形態におけるCBMハイドレート製造装置1が適用されるCBM生産設備の一例を示す概要図である。なお、従来と同様の構成要素には、同一の符号を付することでその詳細な説明を省略する。
【0039】
CBMハイドレート製造装置1は、合成手段を構成する結晶化反応槽2と、分離手段を構成する固−液分離装置3と、循環手段を構成する液送ポンプ4と、不純物回収手段を構成する回収装置5を有している。
【0040】
結晶化反応槽2は、CBMとCBM随伴水を含む混合物を槽内に導入して、槽内を予め設定された結晶化温度及び結晶化圧力に調整することにより、混合物に結晶化反応を生じさせ、CBMハイドレートを合成する。
【0041】
結晶化反応では、CBMとCBM随伴水中の純水の一部が結晶化に用いられ、結晶化反応槽2内には、CBM随伴水の残りの純水と不純物とが混在した未反応のCBM随伴水が残る。この未反応のCBM随伴水は、残留水として、CBMハイドレートと混在した状態で固−液分離装置3に送られる。
【0042】
固−液分離装置3は、CBMハイドレートと残留水とを分離する処理を行う。そして、液送ポンプ4は、固−液分離装置3によって分離された残留水を、結晶化反応槽2に液送して、槽内で混合物に混入させる。
【0043】
図1において、石炭層G1中に存在するCBMは、一般に地層水を生産井101のポンプなどで汲み上げることにより、石炭層G1の圧力を減圧し回収する。生産井101によって回収されたCBMとCBM随伴水との混合物は、結晶化反応槽2へ送られ、ハイドレート化される。
【0044】
結晶化反応槽2で生成されたCBMハイドレートと残留水は、固‐液分離装置3に送られて、固−液分離装置3で固体であるCBMハイドレートと液体である残留水とに分離される。
【0045】
そして、CBMハイドレートは、必要に応じ需要地へ輸送され、残留水は、好ましくは液送ポンプ4によって結晶化反応槽2に送られて、再びCBMハイドレートの反応に使用される。
【0046】
また、結晶化反応などに供された高濃度の重金属塩類を含む残留水は、必要により回収装置5に供給され、不純物の回収・除去・淡水化の処理がなされる。そして、排水基準を満たす残留水は、必要に応じ、水注入井105により地層に戻され、あるいは河川106に流される。
【0047】
以下、各手段・装置について詳細に説明する。
生産井101によって取り出されたCBMとCBM随伴水とを含む混合物は、たとえば図1の結晶化反応槽2へ送られて結晶化される。結晶化の条件は、CBMの組成やCBM随伴水の組成などにより適宜定められるが、より低温・高圧条件が好ましい。
【0048】
一般的には、結晶化温度は、0〜30℃の範囲内、好ましくは0〜16℃の範囲内に調整し、結晶化圧力は、1〜70MPaの範囲内、好ましくは1〜15MPaの範囲内程度に調整することにより結晶化される。
【0049】
結晶化反応では、結晶化反応槽2内で撹拌羽2a等により混合物を撹拌し、結晶化したCBMハイドレートの成長を促進させることが好ましい。この結晶化反応には、CBM随伴水の中の不純物は、実質的に関与しないので、生成するCBMハイドレート中には、CBM随伴水の中の不純物は混入しないか、混入しても極めて微量となる。したがって、結晶成長に伴い、CBMハイドレート中の水は純水化される。
【0050】
また、上記したように、混合物のCBM随伴水に含まれる不純物は、結晶成長反応に実質的に関与しないので、CBMハイドレートの結晶成長に伴い、残留水の中の不純物濃度が増加し、濃縮化される。
【0051】
不純物の成分は、生産井101によって異なるが、通常は、塩化物イオンやクロム、マンガン、亜鉛、モリブテンなどの重金属類などが含まれる。これらの重金属類は、後述する回収装置5によって必要に応じ回収される。
【0052】
上記で得られた、結晶化したCBMハイドレートと残留水との混合物は、固‐液分離装置3へ送られ、CBMハイドレートと残留水に分離される。この場合、固‐液分離装置3それ自体は、従来公知のもの、たとえば、回転ロータにより液体の圧搾と固体(ハイドレート)の成型を同時に行う装置や、ラバルセパレータなどの比重差と遠心力により固−液分離する装置などがそのまま適用される。
【0053】
このCBMハイドレートには、体積比で約160倍の高密度でCBMが濃縮されており、これらを必要とする需要地等へ適宜輸送される。輸送方法としては、従来公知の方法、たとえばハイドレートの分解速度が特異的に遅くなる温度域(−20℃前後)を保持しつつ、大気圧条件下でトラックや船などで、陸・海上輸送する方法などが適用される。
【0054】
また、CBMハイドレート製造装置1では、結晶化反応槽2の結晶化により濃縮された残留水を、CBMハイドレートから分離し、必要に応じ、液送ポンプ4などにより結晶化反応槽2へ液送して循環させることが好ましい。この循環使用により、より高濃度のCBM随伴水を得ることができ、また、CBMハイドレート中の水の高純度化が促進される。結晶化反応槽2内におけるCBM随伴水の不純物濃度は、残留水の循環の回数や循環に使用する水量等により適宜調整される。
【0055】
更に、CBMハイドレート製造装置1では、濃縮されたCBM随伴水に高濃度の重金属塩類等が含まれるため、天然資源の有効利用の観点からも、これらの重金属塩類を回収する回収装置5を付設しておくことが好ましい。また、このような回収装置5の設置は、河川106への放流や地下Gへの再注入(図4を参照)が規制される場合の排水対策としても有効である。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明する。
[実施例1]
ガスハイドレートの生成条件は、温度・圧力に大きく依存し、また原料溶液の組成によっても大きく変化する。本実施例では、北海道の夕張地区に位置する実際のCBMフィールドより回収されたCBM随伴水とCBMを用いて、ガスハイドレートの生成(平衡)条件を求めた。
【0057】
本実施例に用いた実験装置10を図2に示す。高圧反応容器11は、内容積約200ml、耐圧20MPaで温度調整用の恒温槽12内に設置され、−15〜40℃の範囲で温度調整が可能である。
【0058】
高圧反応容器11には、ガス出入口11aと、液回収口11bが設けられており、また、撹拌機13と、温度センサ14と、圧力センサ15が取り付けられている。
【0059】
温度センサ14は、株式会社チノー製の4線式白金測温抵抗体であり、精度±0.04℃で測定可能である。圧力センサは横河電機社製FP201で、精度±0.04MPaで測定可能である。
【0060】
上記したCBMフィールドより回収されたCBM随伴水を、高圧反応容器11に約100ml注入し、気相をメタンガスで置換した。そして、任意の温度で安定させた後、その温度における平衡圧力よりも若干低い圧力で、メタンガスを加圧した。
【0061】
それから、温度を10〜20℃程度低下させて、ハイドレートが生成する温度・圧力に設定した。ハイドレートの生成が確認された後、温度を0.1〜1℃きざみで上昇させて、ハイドレートを徐々に分解させ、ハイドレートが完全に消失した温度・圧力を平衡温度・圧力として測定した。
【0062】
得られたCBM随伴水中のメタンハイドレート平衡条件の測定結果を、図3に示す。また、比較の為、純水中、及びNaCl3%水溶液(海水に相当)中のメタンハイドレート平衡条件を実線、及び点線で図3に示す。実験により、CBM随伴水からもメタンハイドレートが合成可能であることが明らかとなり、その温度・圧力条件は、純水の場合に比べて若干低温・高圧側にシフトすることが分かった。
【0063】
シフト量は比較的低温域では小さく、高温になるにしたがって大きくなる傾向が見られ、NaCl3%水溶液(海水に相当)に比較すると約1/3程度のシフト量であった。
【0064】
[実施例2]
実施例1と同様のCBM随伴水とメタンガスを原料としてメタンハイドレートを合成し、未反応の残留水の成分分析を実施した。陰イオンの測定には、イオンクロマトグラフィー(日本ダイオネックス製ICS-1000)を用いた。カラムは同社製IonPac AS15を使用し、38mmol/Lの水酸化ナトリウム溶離液を流速1.2ml/minで供給した。
【0065】
サプレッサーについては、同社製のASRSを100mAとして分析を行った。なお、試料中の塩化物イオン濃度が大きいため、試料を100倍希釈して測定した。重金属イオンの分析は試料を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したろ液をICP発光質量分析装置(島津製ICP-M8500)により分析した。
【0066】
初期のCBM随伴水と、合成後の残留水の成分分析結果を表1に示す。陰イオンの分析結果では、CBM初期水中の塩化物イオン濃度が1273mg/Lであったのに対し、合成後の塩化物イオンは1405mg/Lと約10%程度濃度が大きくなることが確認された。
【0067】
また、重金属濃度についてもクロムやマンガン、亜鉛、モリブテンなどが10%〜50%程度反応前よりも大きくなっていることが確認され、ハイドレート化による残留水の成分濃縮効果が明らかになった。反対に、ハイドレート中においては、上述の各種成分が希釈される為、随伴水の純水化と考えることもできる。
【0068】
以上により、CBM随伴水を用いるとメタンハイドレートが合成でき、また、その際に随伴水に含まれる各成分の濃縮効果が明らかとなった。
【0069】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭層から取り出されるコールベッドメタンを用いてコールベッドメタンハイドレートを製造するコールベッドメタンハイドレート製造装置において、
前記石炭層から前記コールベッドメタンに随伴して取り出される随伴水と、前記コールベッドメタンとを含む混合物からコールベッドメタンハイドレートを合成する合成手段と、
該合成手段により合成されたコールベッドメタンハイドレートと残留水とを分離する分離手段と、
該分離手段によって分離された残留水を前記混合物に混入させて前記合成手段から前記分離手段に循環させる循環手段と、
を有することを特徴とする請求項1に記載のコールベッドメタンハイドレート製造装置。
【請求項2】
前記分離手段によって分離された残留水から前記コールベッドメタンハイドレートの合成に関与しない不純物を回収する不純物回収手段を有することを特徴とする請求項1に記載のコールベッドメタンハイドレート製造装置。
【請求項3】
前記不純物回収手段は、前記残留水に含まれている重金属塩類を前記不純物として回収することを特徴とする請求項2に記載のコールベッドメタンハイドレート製造装置。
【請求項4】
前記合成手段は、前記混合物を予め設定された結晶化温度及び結晶化圧力に調整して、結晶化反応により前記コールベッドメタンハイドレートを合成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコールベッドメタンハイドレート製造装置。
【請求項5】
前記結晶化温度は0℃から30℃の範囲の温度に調整され、前記結晶化圧力は0MPaから70MPaの範囲の圧力に調整されることを特徴とする請求項4に記載のコールベッドメタンハイドレート製造装置。
【請求項6】
石炭層から取り出されるコールベッドメタンを用いてコールベッドメタンハイドレートを製造するコールベッドメタンハイドレート製造方法であって、
前記石炭層に存在する地層水を汲み上げて、前記石炭層からコールベッドメタンを取り出す取り出し工程と、
該取り出し工程によって前記石炭層より取り出されたコールベッドメタンと、該コールベッドメタンに随伴して前記石炭層から取り出された随伴水とを含む混合物から前記コールベッドメタンハイドレートを合成する合成工程と、
該合成工程によって合成した前記コールベッドメタンハイドレートと残留水とを分離する分離工程と、
該分離工程によって分離された前記残留水を前記混合水に混入させる循環工程と、
を含むことを特徴とするコールベッドメタンハイドレート製造方法。
【請求項7】
前記分離工程で分離された前記残留水から前記コールベッドメタンハイドレートの合成に関与しない不純物を回収する回収工程を含むことを特徴とする請求項6に記載のコールベッドメタンハイドレート製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−222421(P2010−222421A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−68903(P2009−68903)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【Fターム(参考)】