説明

ゴムバンドリングとその製造方法

【課題】高い接合強度を有し、ゴムバンドの両端部の接合を含む一連の製造作業を高速化して大量生産する。
【解決手段】原点位置Aにセットされたゴムバンド2の長手方向の先端部3aを把持して所定長さ引き出す工程と、引き出したゴムバンド2の基端部3b側を固定する工程と、引き出したゴムバンド2の先端部3aを原点位置Aに向けて折り返す工程と、折り返したゴムバンド2の先端部3aを原点位置Aの付近にある加工位置Cまで戻す工程と、加工位置Cにおいて先端部3aを基端部3bに重ね合わせた状態で超音波発振する超音波ホーン14を押し付けて先端部3aと基端部3bとを超音波溶着する工程と、ゴムバンド2の超音波溶着された部分の端縁をカットする工程とを備えてゴムバンドリング1を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラッピングに用いたり、書類や書籍などを結束したり、弁当箱などの蓋を留めたりするなど、様々な用途があるゴムバンドリングとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、例えばプレゼントなどの包装箱を装飾するためのラッピング用バンドや、書類や書籍などを結束したり弁当箱などの蓋を留めたりするためのバンドとして、全体がゴムで形成されたものが用いられていた。ところが、これでは滑りが悪くて使いにくいため、最近では、横糸に織り込まれる縦糸をゴムなどの弾性繊維としたいわゆるゴムバンドが用いられている。このゴムバンドは、その長手方向に伸縮し、滑りが良くて使いやすいものである。
【0003】
また、上述したゴムバンドをループにする場合には、例えばバックルを介して連結するなどがあるが、製作コストが高く、単一製品の結束などの使い捨て用途とするには不向きなものであった。通常、このような用途の場合には、所定寸法に裁断した上、予めリング状に永久的に接合されたものが用いられている。
【0004】
ゴムバンドをリング状に永久接合するための一般的な方法には、ゴムバンドの端部同士を縫合する方法や、端部同士を接着剤によって接着する方法などがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような接合方法では、まず、縫合の場合は、作業員の手作業によりなされるため、時間と手間がかかり、大量生産ができないという問題があった。次に、接着の場合は、接着した後、接着剤が乾くまでの時間が必要となり、また、接着箇所のはみ出しなどの見栄えの問題や、接合強度などに問題があった。さらに、二つの接合方法ともに消耗材(糸、又は接着剤)を必要とするため、ランニングコストが高くなるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点を解消するために、高い接合強度を有し、ゴムバンドの両端部の接合を含む一連の製造作業が高速化されて大量生産が可能となるゴムバンドリングとその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載のゴムバンドリングは、所定長さのゴムバンド2における一方面の両端部3a,3bが対面して重なり合った状態で超音波溶着されて形成されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2記載のゴムバンドリングの製造方法は、原点位置Aにセットされたゴムバンド2の長手方向の先端部3aを把持して所定長さ引き出す工程と、
前記引き出したゴムバンド2の基端部3b側を固定する工程と、
前記引き出したゴムバンド2の前記先端部3aを前記原点位置Aに向けて折り返す工程と、
前記折り返した前記ゴムバンド2の前記先端部3aを前記原点位置Aの付近にある加工位置Cまで戻す工程と、
前記加工位置Cにおいて、前記先端部3aを前記基端部3bに重ね合わせた状態で超音波発振する超音波ホーン14を押し付けて前記先端部3aと前記基端部3bとを超音波溶着する工程と、
前記ゴムバンド2の超音波溶着された部分の端縁をカットする工程と、
を具備することを特徴としている。
【0009】
請求項3記載のゴムバンドリングの製造方法は、前記加工位置Cには前記ゴムバンド2の下面側に受刃20が設けられており、
前記超音波ホーン14を前記ゴムバンド2の重なり合った前記先端部3aと前記基端部3bに押し付けることで前記溶着部分の端縁がカットされることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるゴムバンドリングによれば、ゴムバンドの両端部が超音波溶着されることによって高い接合強度を有するとともに、接着剤などを用いないことで意匠的にも見栄えが良いものとなる。
【0011】
また、本発明によるゴムバンドリングの製造方法によれば、ゴムバンドの伸縮性などに関わらず、同一寸法のゴムバンドリングを短時間で多数製造することができる。つまり、ゴムバンドリングの製造作業が高速化されるため、大量生産が可能となる。
【0012】
さらに、ゴムバンドの両端部を接合する工程と、ゴムバンドからリング状になった部分(ゴムバンドリング)を切り離すためにカットする工程とを略同時に行うことになるため、ゴムバンドリングの製造に要する時間を更に短縮することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して具体的に説明する。
図1(a),(b)は本発明によるゴムバンドリングを示す斜視図である。
【0014】
図1に示すように、ゴムバンドリング1(1A,1B)は、所定長さ及び所定幅のゴムバンド2の一方面の両端部3a,3bが対面して重なり合った状態で接合されて形成されている。また、両端部3a,3b(接合部分)は後述する超音波ウェルダーによって超音波溶着される。なお、ここでいうゴムバンドとは、全体がゴムで形成されているものではなく、熱可塑性樹脂の繊維からなる横糸にゴム(弾性繊維)からなる縦糸が織り込まれたものである。
【0015】
また、図1(a)における1Aは、ゴムバンドリング1の製造直後のものであり、図1(b)の1Bは、1Aを裏返したものである。通常、ゴムバンドリング1は1Bの状態で製品として販売及び使用されるが、1Aの状態でゴムバンドリング1として使用することも可能である。
【0016】
さらに、ゴムバンドリング1A,1Bの超音波溶着による溶着部分は、ゴムバンド2を構成する熱可塑性樹脂の強度と略同等の接合強度を有するようになる。すなわち、高い接合強度となる。
【0017】
図2はゴムバンドリングの製造装置を示す斜視図、図3(a)〜(c)はゴムバンドリングの製造工程の前半を示す説明図、図4(a)〜(c)は同工程の後半を示す説明図である。
【0018】
図2に示すように、この製造装置10は、二本のゴムバンド2,2がその幅方向に並列に配置される搬送路11と、搬送路11の終端部の上部に接離可能に設けられた固定ブロック12と、搬送路11の終端部の下部に設けられた受台13と、受台13の上方に昇降可能に設けられた超音波ホーン14と、搬送路11の一側部にこの搬送路11と平行に設けられ、一端を搬送路11の終端部付近に隣接させるとともに、他端を搬送路11の終端部から大きく前方に位置させ、Y方向に往復移動可能に設けられた第1直動機構15と、第1直動機構15上にX方向に往復移動可能に設けられた第2直動機構16と、第2直動機構16上に設けられた回転シリンダー17と、上端が受台13の前方に近接して配置され、前方に向けて傾斜した排出シュート18と、排出シュート18の下端部に配置された製品回収箱19と、を備えている。
【0019】
なお、二本のゴムバンド2,2は、図示しないが搬送路11の搬送始端部側ではロール状に巻回されており、繰り出しが可能なものである。各ゴムバンド2,2は、その先端部3aを搬送路11の終端部からやや突出させた状態でセットされている。
【0020】
図2に示すように、受台13上における超音波ホーン14との対向位置には、X方向に伸びた超硬合金などからなる受刃20が刃を上向きにして設けられている。受台13上には、この受刃20よりも後方に第1直動機構における原点位置Aが設定されている。また、受刃20上には加工位置Cが設定されている。さらに、Y方向に離れたところにはゴムバンドリング1の半周分の長さとなる折返し位置Bが設定されている。
【0021】
回転シリンダー17は、第2直動機構16上によってX方向に移動可能に設けられ、360度に回転可能な回転部21を有している。なお、回転部21の回転角度は任意に設定可能であり、この製造装置10では、回転部21は180度に回転するように設定されている。また、回転シリンダー17の回転部21には、X方向に伸びたチャック部22が設けられている。チャック部22は、上下方向(Z方向)に並んだ二本の棒状部材からなり、相対的に接離移動可能に構成されている。
【0022】
超音波ホーン14は、前述した超音波ウェルダーにおける超音波発振部であり、そのX方向の長さが受台13の幅と略同等に形成されている。超音波ホーン14は、一般にチタンクロムメッキアルミニウム合金によって形成されている。さらに、超音波ホーン14は、超音波ウェルダーの昇降機構によってZ方向に移動し、下降移動したときに超音波発振されることにより、ゴムバンド2を超音波溶着することができる。
【0023】
ここから、図3及び4を参照してゴムバンドリングの製造工程を説明する。
第1の工程では、まず、原点位置Aにおいて、図示しないがチャック部22は、第2直動機構16によって回転シリンダー17ごと図2におけるX方向上を前進して二本の棒状部材の間に搬送路11の終端部にセットされたゴムバンド2の先端部3aが入り込むようにする。次に、図3(a)に示すように、チャック部22の二本の棒状部材が近接移動することでゴムバンド2の先端部3aを把持し、同時に、それまでゴムバンド2を固定していた固定ブロック12が上昇してゴムバンド2の固定が解除される。そして、チャック部22がゴムバンド2の先端部3aを把持したまま、図3(b)に示すように、第1直動機構15によって第2直動機構16及び回転シリンダー17ごとY方向における折返し位置Bまで移動する。これにより、ゴムバンド2は所定長さに引き出される。
【0024】
第2の工程では、図3(c)に示すように、上昇した固定ブロックが再び下降し、ゴムバンドの基端部3b側を固定する。そして、回転シリンダー17の回転部21が180度に回転する。これにより、引き出されたゴムバンド2の先端部3aは、チャック部22によって原点位置Aに向けて折り返される。
【0025】
第3の工程では、図4(a)に示すように、回転部が180度に回転した回転シリンダー17が、第1直動機構15によって加工位置Cに向けて移動する(戻る)。なお、加工位置Cは、上述したように受刃20上に設定されているため、ゴムバンド2を把持しているチャック部22(回転シリンダー17)は第1直動機構15によって受刃20のやや前方で停止するように移動する。このとき、チャック部22と受刃20の間が溶着部分となる。
【0026】
第4の工程では、図4(b)に示すように、加工位置Cにおいて、ゴムバンド2の先端部3aと基端部3bとを重ね合わせた状態で超音波ホーン14が下降し、その下端面(超音波発振部)を押し付けて超音波溶着する。同時に、超音波ホーン14の下端面を押し付けることでゴムバンド2の溶着部分の端縁が超音波ホーンの14の下端面と受刃の間に挟まれてカットされる。
【0027】
最後に、第5の工程では、図4(c)に示すように、超音波ホーン14が上昇するとともに、これまでゴムバンド2を把持していたチャック部22の二本の棒状部材が互いに離間移動しながら第2直動機構16によって図2におけるX方向上を後退することで、ゴムバンド2のカットされた部分(ゴムバンドリング1)が自重によって排出シュート18を滑り落ち、製品回収箱19(図2参照)に収容される。また、回転シリンダー17は、第2直動機構16によってX方向上を後退し、同時に、その回転部21が−180度に回転し、さらに、第1直動機構15によって原点位置Aに移動して初期状態に戻るようになる。
【0028】
そして、以後は上述した各部が図3(a)から図4(c)までの動作を繰り返すことで次々とゴムバンドリングを製造することになる。なお、各部の駆動手段としては、空気圧、油圧、電動モータなどの各種駆動源を用いることができる。また、各位置A〜Cの検出手段にはリミットスイッチなどを用い、この検出を受けてシーケンス制御を行うことで、一定の手順及びタイミングで各動作を繰り返すことができる。
【0029】
上述した実施の形態によれば、ゴムバンド2の先端部3aと基端部3bとが超音波溶着されることによって高い接合強度を有するとともに、接着剤などを用いないことで意匠的にも見栄えが良いものとなる。
【0030】
また、ゴムバンド2の伸縮性などに関わらず、同一寸法のゴムバンドリング1を短時間で多数製造することができるようになる。
【0031】
さらに、ゴムバンド2の先端部3aと基端部3bとを接合する工程と、ゴムバンド2からゴムバンドリング1を切り離すためにカットする工程とを略同時に行うことになるため、ゴムバンドリング1の製造に要する時間を更に短縮することが可能となる。
【0032】
なお、上述した実施の形態では、搬送路11には二本のゴムバンド2,2が幅方向(X方向)に並列に配置されており、これら二本のゴムバンド2,2を同時に加工しているが、ゴムバンド2の本数はこれに限定せず、ゴムバンド2が複数本(二本以上)配置されていてもよい。二本以上のゴムバンド2を同時に加工することによって更なる大量生産が可能となる。その際には、搬送路11やチャック部22、排出シュート18などの各部を複数のゴムバンド2の全体幅に応じたサイズに形成しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明によるゴムバンドリングを示す斜視図である。
【図2】同ゴムバンドリングの製造装置を示す斜視図である。
【図3】(a)〜(c)同ゴムバンドリングの製造工程の前半を示す説明図である。
【図4】(a)〜(c)同ゴムバンドリングの製造工程の後半を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1…ゴムバンドリング
2…ゴムバンド
3a…先端部
3b…基端部
14…超音波ホーン
20…受刃
A…原点位置
C…加工位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さのゴムバンドにおける一方面の両端部が対面して重なり合った状態で超音波溶着されて形成されていることを特徴とするゴムバンドリング。
【請求項2】
原点位置にセットされたゴムバンドの長手方向の先端部を把持して所定長さ引き出す工程と、
前記引き出したゴムバンドの基端部側を固定する工程と、
前記引き出したゴムバンドの前記先端部を前記原点位置に向けて折り返す工程と、
前記折り返した前記ゴムバンドの前記先端部を前記原点位置の付近にある加工位置まで戻す工程と、
前記加工位置において、前記先端部を前記基端部に重ね合わせた状態で超音波発振する超音波ホーンを押し付けて前記先端部と前記基端部とを超音波溶着する工程と、
前記ゴムバンドの超音波溶着された部分の端縁をカットする工程と、
を具備することを特徴とするゴムバンドリングの製造方法。
【請求項3】
前記加工位置には前記ゴムバンドの下面側に受刃が設けられており、
前記超音波ホーンを前記ゴムバンド重なり合った前記先端部と前記基端部に押し付けることで前記溶着部分の端縁がカットされることを特徴とする請求項2記載のゴムバンドリングの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−269636(P2009−269636A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−119831(P2008−119831)
【出願日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】