説明

ゴム印判

【課題】印面の幅寸法が異なる場合でも一部の部品を共通して使用でき、その分だけ製造コストを削減できるゴム印判を提供する。
【解決手段】前面に開口2を備えた主ケース1と、開口2を開閉するカバー3と、ゴム印字体6を収容する印字体ホルダー4と、主ケース1の左右側面に装着される側枠5と、ゴム印字体6の印面6aを浮揚保持するリフトばね8、およびリフト枠9などでゴム印判を構成する。リフトばね8およびリフト枠9を側枠5と一体に形成して、これら3者を印面の幅寸法が異なるゴム印判で共用できるようにする。印字体ホルダー4の両側に設けたガイド部22でリフト枠9を上下スライド自在に案内支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不使用状態におけるゴム印字体の印面を、紙面から浮き離した状態に保持できるリフト枠を備えたゴム印判、なかでも印面が帯状に細長い形態のゴム印判に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のゴム印判は、例えば特許文献1に公知である。そこでは、グリップを兼ねるケースと、ケースで出没自在に案内支持される印字体ホルダーおよびリフト枠と、ケースの開口面を塞ぐカバーと、印字体ホルダーおよびリフト枠とケースとの間に配置される2種の圧縮コイルばねと、印字体ホルダーに収容されるゴム印字体およびインク吸蔵体などでゴム印判を構成している。リフト枠は、金属板材を素材とするプレス金具からなり、その下端縁が紙面に接当することでゴム印字体の印面を紙面から浮き離れた状態に保持する。捺印時には、ケースおよび印字体ホルダーがリフト枠に対して下降移動することで、ゴム印字体を紙面に押し付けて捺印できる。
【0003】
同様のゴム印判は、特許文献2、3にもみることができる。特許文献2では、リフト枠をプラスチック成形品で形成し、その上端に断面半円状のばね部を一体に形成している。特許文献3では、ゴム印字体を収容するケースに蛇腹構造のばねを一体に形成している。
【0004】
【特許文献1】実公昭55−38678号公報(第2欄15〜36行、第3図)
【特許文献2】実開昭48−80608号(第3頁第2〜8行、第1図)
【特許文献3】実開昭53−34316号(第1頁第14〜18行、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のゴム印判は、商品のコード番号、品番、法人名、あるいは勘定科目などを印字するために使用されるが、印面の幅寸法が異なるごとに専用の構成部品を用意する必要があり、さらに全体の構成部品点数が多いため全体コストが高く付く。詳しくは、ケース、印字体ホルダー、リフト枠、カバー、ゴム印字体、およびインク吸蔵体を、印面の幅寸法の違いに応じてそれぞれ用意する必要がある。特許文献2、3のゴム印判も同様の問題点がある。また、特許文献1のゴム印判では、印字体ホルダーの上面中央に配置した圧縮コイル形のばねで、ケースおよび印字体ホルダーを浮揚支持するので、捺印時に印字ホルダーが前後、左右にぐらつきやすく、さらに印面が帯状に細長いことも加わって、印面の左右で印字濃度がばらつきやすい。
【0006】
特許文献2のゴム印判ではリフト枠と一体にばね部を形成するので、ゴム印判の構成部品点数を削減できる。しかし内凹み状に形成したばね部を、ケースの胴壁に凹み形成したばね受座に係合する必要があるので、ケースに対するリフト枠の組み付けに手間が掛かる。ゴム印字体の印面は、捺印時に弾性変形したばね部が自由状態へ復帰するときのばね弾性で浮揚支持されるが、自由状態時に断面半円状であったばね部が、捺印時には断面U字に大きく弾性変形するので、ばね部がクリープ変形しやすく、長期使用時にばね弾性が徐々に低下するなど耐久性に問題がある。リフトばねの占める空間が大きく、その分だけゴム印判が大形化しやすい。特許文献3のゴム印判も同様の問題点がある。
【0007】
本発明の目的は、印面の幅寸法が異なる場合でも一部の部品を共通して使用でき、その分だけ製造コストを削減できるゴム印判を提供することにある。本発明の目的は、ゴム印判の構成部品点数を削減でき、さらに各構成部品の組み付けを簡便にしかも確実に行え、全体として製造コストを削減できるゴム印判を提供することにある。本発明の目的は、リフトばねが占める空間を最小限化して、コンパクトにまとめることができるゴム印判を提供することにある。本発明の目的は、帯状の細長い印面を備えた連続捺印型のゴム印判として使用するのに好適なゴム印判を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のゴム印判は、インク補充用の開口2を備えた主ケース1と、前記開口2を開閉する蓋体3と、ゴム印字体6を収容する印字体ホルダー4と、主ケース1の左右側面に装着される側枠5と、側枠5の下部に配置されてゴム印字体6の印面6aを浮揚保持するリフトばね8、およびリフト枠9とを含む。リフトばね8およびリフト枠9は側枠5と一体に形成されて、リフト枠9が印字体ホルダー4の両側に設けたガイド部22で上下スライド自在に案内支持してあることを特徴とする。
【0009】
リフトばね8は、側枠5の側壁に連続する少なくとも1個のばね腕8a・8bで構成する。ばね腕8a・8bは、側枠5の側壁の厚み寸法に一致する変形空間内で弾性変形できるように構成する。
【0010】
主ケース1の下部に、印字体ホルダー4の開口内面に差し込み係合される連結枠14と、印字体ホルダー4の両側に設けた係合部23に圧嵌係合される係合爪16とを設ける。さらに、主ケース1の側壁12と側枠5との対向面に、互いに係合する係合構造15・26を設ける。以て、連結枠14と印字体ホルダー4、および係合爪16と係合部23を係合連結して、主ケース1とゴム印字体6を一体化し、係合構造15・26を係合連結して側壁12と主ケース1とを一体化する。
【0011】
印字体ホルダー4の両側に、リフトばね8の外面を覆う遮蔽部30を設ける。
【0012】
本発明の別のゴム印判は、インク補充用の開口2を備えた主ケース1と、前記開口2を開閉する蓋体3と、ゴム印字体6を収容する印字体ホルダー4と、ゴム印字体6の印面6aを浮揚保持するリフト枠9とを含む。リフト枠9は、リフトばね8と装着部32とを一体に備えており、装着部32が、主ケース1または印字体ホルダー4の両側に設けた係合体34に装着固定されて、リフト枠9が印字体ホルダー4の両側に設けたガイド部22で上下スライド自在に案内支持される。
【0013】
印字体ホルダー4の両側にリフトばね8の外面を覆う遮蔽部30を設ける。
【発明の効果】
【0014】
本発明では主ケース1および蓋体3と、ゴム印字体6を収容する印字体ホルダー4と、左右の側枠5と、ゴム印字体6の印面6aを浮揚保持するリフトばね8、およびリフト枠9などでゴム印判を構成し、リフトばね8とリフト枠9を側枠5と一体に形成するので、ゴム印判の構成部品点数を削減できるうえ、印面6aの幅寸法が異なる複数種のゴム印判において、側枠5とリフトばね8とリフト枠9を共通して使用して、その分だけゴム印判の製造コストを削減できる。
【0015】
また、主ケース1の左右両側に側枠5と一体に設けたリフトばね8とリフト枠9を配置して、ゴム印字体6の両端をリフト枠9で浮揚保持し、さらにリフト枠9を印字体ホルダー4の両側に設けたガイド部22で上下スライド自在に案内支持するので、印字体ホルダーの上面中央に圧縮コイル形のばねを配置する従来の浮揚構造に比べて、捺印時に印字体ホルダー4が前後、左右にぐらつくのを確実に防止して、常に安定した状態で捺印を行うことができ、印面6aの両端で印字濃度がばらつくのを抑止できる。とくに、細長い印面6aを備えたゴム印判の長手方向両端における印字濃度のばらつきを抑止できる。
【0016】
側枠5の側壁に連続する少なくとも1個のばね腕8a・8bでリフトばね8を構成し、腕8a・8bが、側枠5の側壁の厚み寸法に一致する変形空間内でばね弾性変形できるように構成するので、より小さな空間内でリフトばね8を弾性変形させることができるうえ、弾性変形した状態においてリフトばね8が側枠5の側壁外面に突出することもない。これにより、ゴム印判においてリフトばね8が占める空間を最小限化して、ゴム印判の全体を小形化しコンパクト化できる。
【0017】
主ケース1に設けた連結枠14を印字体ホルダー4の開口内面に差し込み係合し、さらに係合爪16を印字体ホルダー4の係合部23に係合して、主ケース1と印字体ホルダー4を一体化すると、印字体ホルダー4の開口壁を連結枠14と係合爪16とで内外双方から係合して、主ケース1と印字体ホルダー4を確りと一体化できる。また、主ケース1の側壁12と側枠5との対向面に設けた係合構造15・26を係合することにより、側枠5を主ケース1と一体化して、リフトばね8およびリフト枠9を主ケース1および印字体ホルダー4と一体化できるので、各構成部品を間違う余地のない状態で簡便にしかも確実に組み付けることができ、構成部品点数が減ることと併せてゴム印判の製造コストを削減できる。主な構造体である主ケース1と印字体ホルダー4と両側枠5・5とを確りと一体化できるので、捺印時に主ケース1などがぐらつくのを確実に防止し、常に安定した状態で捺印を行える。
【0018】
印字体ホルダー4の両側に遮蔽部30を設け、これらの遮蔽部30でリフトばね8の外面を覆うようにすると、リフトばね8がゴム印判の表面に露出するのを防止して、ゴム印判の外観をシンプルですっきりとした印象にすることができる。さらに、リフトばね8やその周辺部分に塵埃が侵入するのを遮蔽部30で確実に防止して、リフトばね8の変形動作やリフト枠9の摺動動作が塵埃によって阻害されるのを解消できる。
【0019】
本発明の別のゴム印判では、主ケース1と、蓋体3と、ゴム印字体6を収容する印字体ホルダー4と、ゴム印字体6の印面6aを浮揚保持するリフト枠9などでゴム印判を構成し、リフト枠9に設けた装着部32を主ケース1または印字体ホルダー4の両側に設けた係合体34に装着固定することにより、リフトばね8およびリフト枠9を主ケース1および印字体ホルダー4と一体化するので、印面6aの幅寸法が異なる複数種のゴム印判においてリフトばね8とリフト枠9を共通して使用でき、その分だけゴム印判の製造コストを削減できる。
【0020】
また、主ケース1あるいは印字体ホルダー4の両側にリフトばね8とリフト枠9を配置して、ゴム印字体6の両端をリフト枠9で浮揚保持し、さらにリフト枠9を印字体ホルダー4の両側に設けたガイド部22で上下スライド自在に案内支持するので、印字体ホルダーの上面中央に圧縮コイル形のばねを配置する従来の浮揚構造に比べて、捺印時に印字体ホルダー4が前後、左右にぐらつくのを確実に防止して、常に安定した状態で捺印を行うことができ、印面6aの両端で印字濃度がばらつくのを抑止できる。
【0021】
印字体ホルダー4の両側に遮蔽部30を設け、これらの遮蔽部30でリフトばね8の外面を覆うようにすると、リフトばね8がゴム印判の表面に露出するのを防止して、ゴム印判の外観をシンプルですっきりとした印象にすることができる。さらに、リフトばね8やその周辺部分に塵埃が侵入するのを遮蔽部30で確実に防止して、リフト枠9の動作が塵埃によって阻害されるのを解消できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施例1) 図1ないし図5は本発明に係るゴム印判の実施例を示す。図1および図2において、ゴム印判は、主ケース1と、主ケース1の前面に設けられるインク補充用の開口2を開閉するカバー(蓋体)3と、主ケース1の下部に装着される印字体ホルダー4と、主ケース1の左右側面に装着される左右一対の側枠5・5と、印字体ホルダー4に収容されるゴム印字体6およびインク吸蔵体7と、側枠5・5の下部に設けられるリフトばね8およびリフト枠9とで構成する。ゴム印字体6の印面6aは左右方向に長い帯状に形成されており、多くの場合は印面6aに1行だけの数字列や文字列を捺印するための捺印部が形成してある。
【0023】
主ケース1は、四角形の主面壁11と、主面壁11の両側に連続する左右一対の側壁12と、主面壁11の内面に突設される補強リブ13と、主面壁11および両側壁12の下端に連続して段落ち状に形成される横断面がコ字状の連結枠14を一体に備えたプラスチック成形品からなる。両側壁12の上部には、側枠5を組み付けるための縦長四角形状の係合穴(係合構造)15が開口され、両側壁12の下端に下向きの係合爪16が形成してある。補強リブ13は、インク吸蔵体7の浮き上がりを防ぐ押さえ枠を兼ねている(図3参照)。
【0024】
カバー3は前壁3aと上壁3bを備えた縦断面が逆L字状のプラスチック成形品からなり、その下端に連結壁18が段落ち状に形成してある。カバー3を主ケース1に装着した状態では、主ケース1の上面開口と、前面の開口2とを前壁3aと上壁3bで塞ぐことができ、この状態の主ケース1とカバー3はゴム印判のグリップとして機能する。カバー3が不必要に開放するのを避けるために、先の主面壁11の上部とカバー3の上壁3bの後面とに、互いに凹凸係合する突起19aと凹部19bが形成してある。カバー3の上壁3bの上面には、ゴム印字体6の印字内容に一致する捺印表示カード20が貼り付けてある。
【0025】
印字体ホルダー4は、上下面が開口する左右横長の四角枠状のプラスチック成形品からなり、その左右壁の外面にリフト枠9を上下スライド自在に案内支持するガイド部22が形成され、左右壁の外面上部に先の係合爪16と係合する係合段部(係合部)23が形成してある。ガイド部22は前後一対のガイド溝22aで構成してある。印字体ホルダー4の前壁の外面左右には、印字領域を表わすリブ状の指標24が形成してある。印字体ホルダー4の内面下部にゴム印字体6が組み込まれ、その上面側にインク吸蔵体7が組み込まれる。ゴム印字体6は連続捺印が可能な多孔質のゴムで形成され、インク吸蔵体7は連続気泡を備えたプラスチック製の硬質マットで形成されており、それぞれ印字体ホルダー4に接着固定される。
【0026】
側枠5は、横断面がコ字状のプラスチック成形品からなり、その内面上部に先の係合穴15と係合する一対の爪(係合構造)26が横向きに突設してある。側枠5の下部は側壁が省略されて前後壁のみで形成されており、この前後壁の間にリフトばね8が側壁と一体に形成され、さらにリフトばね8の下部に連続してリフト枠9が一体に形成してある。
【0027】
図4に示すように、この実施例におけるリフトばね8は、側枠5の側壁に連続する部分円弧状の前後一対のばね腕8aで構成してあり、各ばね腕8aの突弧面が前後に対向する状態で配置してある。各ばね腕8aの長さは、リフト枠9の上下ストローク(後述する脚面28の突出寸法C)より充分に大きく設定してあって、その全体が想像線で示すように湾曲変形することで弾性を発揮するので、長期使用時にクリープ変形するのを確実に防止できる。また、各ばね腕8aは、側枠5の側壁の厚み寸法に一致する変形空間内で弾性変形し、弾性変形したばね腕8aが側枠5の外面に突出することがないので、ゴム印判においてリフトばね8が占める空間を最小限化して、ゴム印判を小形化しコンパクト化できる。なお、各ばね腕8aの厚み寸法は、側枠5の側壁の厚み寸法より僅かに小さい。リフト枠9の下半部の前後には、ガイド部22のガイド溝22aと係合するレール27が形成してある。捺印時には、リフト枠9の下端面の脚面28が紙面に接当する。
【0028】
以上のように構成したゴム印判は、ゴム印字体6およびインク吸蔵体7が組み込まれた印字体ホルダー4の上面側から、主ケース1の連結枠14を印字体ホルダー4の内面に差し込み係合し、さらに図3および図5に示すように係合爪16を印字体ホルダー4の左右の係合段部23に圧嵌係合することにより、主ケース1とゴム印字体6が一体化される。次に、レール27をガイド部22のガイド溝22aに下面側から差し込み係合し、さらに側枠5の上下の爪26を主ケース1の係合穴15に圧嵌係合して、側枠5を主ケース1と一体化する。最後に、カバー3の連結壁18を印字体ホルダー4の内面に差し込み係合して、カバー3を主ケース1と一体化し、主ケース1の前面および上面の開口をカバー3で塞ぐ。
【0029】
カバー3を装着した状態では、図1に示すようにカバー3の前面と側枠5とは面一状に連続する。上記のように、本発明のゴム印判は、各構成部品を所定の手順に従って圧嵌係合するだけで、組み間違いを生じる余地もなく、一連の組立作業を簡便かつ容易に終了できる。跳ね飛びやすいコイルばねを組み込む必要もない。
【0030】
上記のように構成したゴム印判は、図4に示すように常態において左右のリフト枠9の脚面28がゴム印字体6の印面6aより下方に突出するので、脚面28の突出寸法Cの分だけ印面6aを浮揚保持できる。捺印時には、リフト枠9の脚面28の位置、および前後の指標24の位置を目安にして印字位置を決め、主ケース1およびカバー3を押圧操作して印面6aを紙面に押し付けることにより、数字列や文字列を捺印できる。
【0031】
捺印状態においては、図4に想像線で示すように前後のばね腕8aが互いに接近する向きに弾性変形してばね弾性を発揮する。そのため、押圧力を解放すると、主ケース1や印字体ホルダー4がばね腕8aの弾性力で押し上げ上昇されるので、紙面に接当していた印面6aを再び浮き離れた状態に浮揚保持できる。不使用状態におけるばね腕8aは殆ど無負荷状態にある。しかも各ばね腕8aの長さはリフト枠9の上下ストロークより充分に大きく設定されていて、自由状態時と弾性変形時との間のばね腕8aの弾性変形量は極く小さい。そのため、長期使用時にばね腕8aがクリープ変形するのを解消でき、長期にわたって適切なばね弾性を発揮できる。
【0032】
印字された文字列のインク濃度が低下してきたら、カバー3を主ケース1から取り外してインク補充用の開口2を解放する。この状態で、所定量のインクをインク吸蔵体7に滴下し、ゴム印字体6に吸蔵されるインク量を増加することにより、印字された文字列のインク濃度を適切な状態に復帰できる。インク吸蔵体7はその上面全体が開放されているので、インクをインク吸蔵体7の上面に均等に分散した状態で滴下することができ、帯状に細長い印面6aを備えたゴム印字体6であるにもかかわらず、印字された文字列のインク濃度が長手方向でばらつくのを防止できる。
【0033】
図6は、上記のゴム印判と比べて印面6aの前後幅は同じであるが、印面6aの左右幅が大きなゴム印判を示す。両ゴム印判の高さ寸法は同じである。そこでは、上記のゴム印判と同様に、前面に開口2を備えた主ケース1と、カバー3と、印字体ホルダー4と、左右一対の側枠5・5と、ゴム印字体6およびインク吸蔵体7と、リフトばね8およびリフト枠9とでゴム印判を構成する。これらの構成部品のうち、側枠5、リフトばね8、リフト枠9の三者を、先の実施例のゴム印判と図6に示すゴム印判とで共用している。したがって、図6に示すゴム印判は、部品を共用する分だけ製造コストを節約できる。
【0034】
さらに、両ゴム印判において成形用の金型を共通使用すると、それぞれに専用の金型を使用して各構成部品を成形する場合に比べて、さらに製造コストを削減できる。その場合には、成形用の金型の左右幅方向の中途部にコアを介在させて成形することで、図6に示すような左右幅が大きな主ケース1と、カバー3と、印字体ホルダー4をそれぞれ成形できる。さらに、左右幅寸法が異なるコアを複数種用意しておくことにより、左右幅寸法が多様に異なるゴム印判を低コストで形成できる。
【0035】
図7はリフトばね8の変形例を示す。そこでは、リフトばね8を横臥U字状の1個のばね腕8bで構成している。その場合にも、ばね腕8bの全長をリフト枠9の上下ストロークより充分に大きく設定しておくことにより、ばね腕8aの全体が屈曲変形することで弾性を発揮させて、長期使用時にクリープ変形するのを防止できる。この実施例におけるばね腕8bは、先に説明したばね腕8aと同様に、側枠5の側壁の厚み寸法に一致する変形空間内で弾性変形できる。
【0036】
図8ないし図10は、本発明の別の実施例を示す。そこでは、左右のガイド部22の上方に遮蔽部30を膨出形成して、遮蔽部30でリフトばね8の外面を覆うようにした。遮蔽部30を印字体ホルダー4と一体に設けるのに対応して、側枠5の左右厚みを大きく設定して、組立完了状態において遮蔽部30の外側面と側枠5の外側面が面一に連続するようにした。
【0037】
上記のように遮蔽部30を設けると、ゴム印判をシンプルですっきりした外観とすることができる。リフトばね8の外面を遮蔽部30で覆うので、リフトばね8、レール27、およびガイド溝22aなどの可動部分や摺動部分に塵埃が侵入するのを防いで、可動部分等が動作不良に陥ることを確実に防止できる。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。以下の実施例においても同様に扱う。
【0038】
図11および図12は、別の発明に係るゴム印判の実施例を示す。そこでは、リフトばね8およびリフト枠9を独立した1個の部品で構成し、これを主ケース1に対して係合装着する点と、先の実施例における側枠5は使用せず、主ケース1が側枠5の機能を兼ねる点が先の実施例と異なる。
【0039】
具体的には、前面に開口2を備えた主ケース1と、前記開口2を開閉するカバー3と、主ケース1の下部に装着される印字体ホルダー4と、印字体ホルダー4に収容されるゴム印字体6およびインク吸蔵体7と、ゴム印字体6の印面6aを浮揚保持するリフト枠9などでゴム印判を構成する。リフト枠9およびリフトばね8は先の実施例と同様に構成し、リフトばね8の上部に装着部32を一体に設ける。
【0040】
装着部32は、リフトばね8と面一状の板壁からなり、その壁面の上下中央に取付溝(取付体)33が形成してある。主ケース1の両側壁12の内面には内側壁12aが形成され、その下部に係合爪16が一体に形成してある。側壁12と内側壁12aとの間に、先の取付溝33を差し込み係合するための係合リブ(係合体)34が形成してある。この場合のリフトばね8は、主ケース1の側壁11と遮蔽壁30で覆われるが、図8で示すように、遮蔽部30を印字体ホルダー4の上面上方に突設する場合には、リフトばね8の外面を遮蔽部30のみで覆うことができる。
【0041】
図13および図14は、ゴム印判のさらに別の実施例を示す。そこでは、リフトばね8およびリフト枠9を独立した1個の部品で構成し、これをリフトばね8の上部に設けた装着部32を介して印字体ホルダー4に係合装着した。装着部32は、リフトばね8と面一状の板壁からなり、その壁面の中央部分に四角形の取付穴(取付体)33が形成してある。印字体ホルダー4の遮蔽壁30は、図8に示す遮蔽壁30より上方へ延長されて、その内面に先の取付穴33を差し込み係合するためのリブ状の係合体34が形成してある。
【0042】
上記のように、リフトばね8と、リフト枠9と、装着部32を1個の独立部品として構成すると、リフトばね8の弾性力が異なる複数種のリフト枠9を用意しておき、ゴム印判の左右幅の違いに応じてリフト枠9を使い分けることにより、ゴム印判のばね弾性をさらに好適化できる。主ケース1と印字体ホルダー4の遮蔽壁30との上下の接合部分のそれぞれに係合体34を設けておいて、これらの係合体34に装着部32側の取付体33を同時に係合して、主ケース1と印字体ホルダー4を装着部32で分離不能に接合固定することができる。
【0043】
上記の実施例では、数字列や文字列が横書きであることを想定したが、文字列などは縦書きであってもよい。ガイド部22の側にレールやガイド突起を設け、リフト枠9の側にレールやガイド突起で案内される溝を形成することができる。リフトばね8の形状は必要に応じてZ字状やM字状など各種形状に形成できるので、実施例で説明した形状には限定しない。インク補充用の開口2は主ケース1の後面側に開口でき、必要があれば主ケース1の前後面に開口してもよい。蓋体3はカバー状である必要はなく、揺動開閉可能な蓋やプラグ構造の蓋として構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】ゴム印判の斜視図である。
【図2】ゴム印判の分解斜視図である。
【図3】ゴム印判の縦断正面図である。
【図4】リフトばねの構造を示す側面図である。
【図5】図3におけるA−A線断面図である。
【図6】ゴム印判の別の実施例を示す斜視図である。
【図7】リフトばねの別の実施例を示す側面図である。
【図8】ゴム印判の別の実施例を示す分解斜視図である。
【図9】図8に係るゴム印判の縦断正面図である。
【図10】図8に係るゴム印判の側面図である。
【図11】ゴム印判のさらに別の実施例を示す分解斜視図である。
【図12】図11に係るゴム印判の縦断正面図である。
【図13】ゴム印判のさらに別の実施例を示す要部の分解斜視図である。
【図14】図13に係るゴム印判の縦断正面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 主ケース
3 カバー
4 印字体ホルダー
5 側枠
6 ゴム印字体
8 リフトばね
9 リフト枠
22 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク補充用の開口(2)を備えた主ケース(1)と、前記開口(2)を開閉する蓋体(3)と、ゴム印字体(6)を収容する印字体ホルダー(4)と、主ケース(1)の左右側面に装着される側枠(5)と、側枠(5)の下部に配置されてゴム印字体(6)の印面(6a)を浮揚保持するリフトばね(8)、およびリフト枠(9)とを含み、
リフトばね(8)およびリフト枠(9)が側枠(5)と一体に形成されて、リフト枠(9)が印字体ホルダー(4)の両側に設けたガイド部(22)で上下スライド自在に案内支持してあるゴム印判。
【請求項2】
リフトばね(8)が、側枠(5)の側壁に連続する少なくとも1個のばね腕(8a・8b)で構成されており、
ばね腕(8a・8b)が、側枠(5)の側壁の厚み寸法に一致する変形空間内で弾性変形できるように構成してある請求項1記載のゴム印判。
【請求項3】
主ケース(1)の下部に、印字体ホルダー(4)の開口内面に差し込み係合される連結枠(14)と、印字体ホルダー(4)の両側に設けた係合部(23)に圧嵌係合される係合爪(16)とが設けられており、
主ケース(1)の側壁(12)と側枠(5)との対向面に、互いに係合する係合構造(15・26)が設けられており、
連結枠(14)と印字体ホルダー(4)、および係合爪(16)と係合部(23)を係合連結して、主ケース(1)とゴム印字体(6)が一体化され、係合構造(15・26)を係合連結して側壁(12)と主ケース(1)とが一体化してある請求項1または2記載のゴム印判。
【請求項4】
印字体ホルダー(4)の両側にリフトばね(8)の外面を覆う遮蔽部(30)が設けてある請求項1から3のいずれかに記載のゴム印判。
【請求項5】
インク補充用の開口(2)を備えた主ケース(1)と、前記開口(2)を開閉する蓋体(3)と、ゴム印字体(6)を収容する印字体ホルダー(4)と、ゴム印字体(6)の印面(6a)を浮揚保持するリフト枠(9)とを含み、
リフト枠(9)は、リフトばね(8)と装着部(32)とを一体に備えており、
装着部(32)が、主ケース(1)または印字体ホルダー(4)の両側に設けた係合体(34)に装着固定されて、リフト枠(9)が印字体ホルダー(4)の両側に設けたガイド部(22)で上下スライド自在に案内支持してあるゴム印判。
【請求項6】
印字体ホルダー(4)の両側にリフトばね(8)の外面を覆う遮蔽部(30)が設けてある請求項5記載のゴム印判。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−265112(P2008−265112A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−109917(P2007−109917)
【出願日】平成19年4月18日(2007.4.18)
【出願人】(000106461)サンビー株式会社 (12)