説明

ゴム印判

【課題】構成部品点数の削減と、一部の部品の共通化とを実現して全体コストを削減でき、さらに、グリップ内部へのインクの滲みを防止できるゴム印判を提供する。
【解決手段】印字ケース1と、インク吸蔵体4およびゴム印字体3と、これら両者を押さえ保持する押え枠5と、左右一対のばねユニット6と、印字ケース1の上部に連結されるグリップ2とを備えている。ばねユニット6は、ばね部26と、ばね部26の上下に設けられる連結部27および脚部28を備えたプラスチックばねで形成する。ばねユニット6の連結部27は、印字ケース1に設けた固着体14に連結されて印字ケース1と一体化してある。印字ケース1に装着した押え枠5で左右の連結部27を受け止めて、ばねユニット6を抜け外れ不能に固定する。さらに、連結部27に配置したストッパー31で押え枠5を抜け外れ不能に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不使用状態におけるゴム印判の印面を、紙面から浮き離した状態に保持するためのリフト脚を備えている連続捺印型のゴム印判に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のゴム印判は、例えば特許文献1に公知である。そこでは、グリップを兼ねるケースと、ケースで出没自在に案内支持される印字ケースおよびリフト枠と、ケースの前開口を開閉するカバーと、2種の圧縮コイルばねと、印字ケースに装填されるゴム印字体およびインク吸蔵体などで、連続捺印型のゴム印判を形成している。リフト枠は、金属板材製の断面門形のプレス成形品からなり、その下縁が紙面に接当して、ゴム印字体の印面を紙面から浮き離れた状態に保持する。捺印時には、ケースおよび印字ケースが下降移動して、印面を紙面に押し付けることができる。
【0003】
本出願人は、特許文献1のゴム印判の構成部品点数を削減し、一部の部品を共通部品化し、さらに組立を簡便に行なえるようにして、ゴム印判の全体コストを削減できるゴム印判を先に提案している(特許文献2)。そこでは、グリップを兼ねる主ケースおよび蓋体と、ゴム印字体およびそのホルダーと、左右一対の側枠と、印字ケースを浮揚支持する左右一対のリフトばねなどでゴム印判を構成している。基本的に、リフトばねは側枠と一体に形成するが、リフト枠を備えた独立した部品として構成する実施例も開示してある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭55−35160号公報(第2欄15〜37行、第3図)
【特許文献2】特開2008−265112号公報(段落番号0022、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のゴム印判は、先に説明したように構成部品点数が多いうえ、印面の幅寸法が異なるごとに専用の構成部品を用意する必要があり、全体コストが高く付く。その点、特許文献2のゴム印判は、リフトばねを側枠と一体に形成して構成部品点数を削減できる。また、印面の前後幅が共通し左右幅が異なる複数種のゴム印において、側枠とリフトばねを共通部品化し、さらに成形用の金型を共用して、ゴム印判の全体コストを削減できる。使用状態においては、左右一対のリフトばねで印字体ホルダーを支持するので、捺印時の印字体ホルダーのぐらつきを防いで、印面の両端で印字濃度がばらつくのを抑止できる。
【0006】
本発明者は、特許文献2のゴム印判を製品化するために、数次に亘って試作品を成形し、各試作品ごとに組立の手順を確認し、使用状況を検証した。その結果、捺印性能、リフトばねの弾性力などの基本的な機能は満足できるものの、組立に手間取ることが判った。ゴム印字体、およびインク吸蔵体を除く構成部品を、全て主ケースに組み付ける構造であることが原因である。さらに、インク吸蔵体に含浸したインクが、毛細管現象によって主ケースおよび蓋体の内面および接合面に沿って、上向きに滲んで拡散することが判った。インク吸蔵体の上面を主ケースおよび蓋体の下端で抑え保持しているのが原因であると思われる。
【0007】
本発明の目的は、構成部品点数の削減と一部部品の共通化とを実現でき、しかも構成部品の組み付けを簡便に行なって全体コストを削減できるゴム印判を提供することにある。本発明の目的は、グリップの内部へのインクの滲みを防止できるゴム印判を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るゴム印判は、印字ケース1と、印字ケース1に装着されてインク吸蔵体4およびゴム印字体3を押さえ保持する押え枠5と、印字ケース1の両側に組み付けられる左右一対のばねユニット6と、印字ケース1の上部に連結されるグリップ2とを備えている。ばねユニット6は、ばね部26と、ばね部26の上下に設けられる連結部27および脚部28を一体に備えたプラスチックばねからなる。連結部27を印字ケース1に設けた固着体14に連結して、ばねユニット6を印字ケース1と一体化する。印字ケース1に装着した押え枠5で左右の連結部27を受け止めて、ばねユニット6を抜け外れ不能に固定する。連結部27に配置したストッパー31で押え枠5を抜け外れ不能に固定する。
【0009】
ばねユニット6を印字ケース1に組み付けた状態において、連結部27を印字ケース1の上面上方へ突出させる。グリップ2の印字ケース1との接合面の左右に、ばねユニット6の連結部27と係合する連結凹部44を設ける。連結凹部44を連結部27に係合して、グリップ2を連結部27を介して印字ケース1と一体化する。
【0010】
グリップ2は、前後に2分割された同一構造の前後グリップ体2a・2bを蓋合わせ状に接合して構成する。両グリップ体2a・2bを接合した状態において、互いに嵌合するピン40とボス41とを前後グリップ体2a・2bの接合面の周縁に沿って設ける。連結凹部44に臨んで配置したピン40とボス41の周面に、連結部27に設けた係合爪30と係合する連結体46を形成する。
【0011】
固着体は印字ケース1と一体に形成した連結爪14で構成する。連結部27に設けた連結穴32を連結爪14に係合して、ばねユニット6を印字ケース1に固定する。連結爪14はストッパー31を兼ねる。
【0012】
印字ケース1に装着した押え枠5の左右壁に、ストッパー31で受け止め係合される抜止体20と、ばねユニットの連結部27を押さえ保持する規制体21とを設ける。
【0013】
印字ケース1の内部に、ゴム印字体3およびインク吸蔵体4を収容する主区画11と、ばねユニット6を収容するばね区画12とを形成する。押え枠5と主区画11の周囲壁との間に、毛細管現象によるインクの滲みを防ぐ隙間Eを設ける。
【発明の効果】
【0014】
本発明においては、印字ケース1およびグリップ2と、印字ケース1に組み込まれるゴム印字体3、インク吸蔵体4、押え枠5と、左右一対のばねユニット6とでゴム印判を構成するので、従来のゴム印判に比べて構成部品点数を削減できる。また、幅寸法が異なる複数種のゴム印判においてばねユニット6を共通部品化してコストを削減できる。組立の過程では、印字ケース1に対して、ばねユニット6、ゴム印字体3、インク吸蔵体4、押え枠5を所定の手順に従って係合連結し、あるいは装填するだけでよく、より少ない手間で簡便に組立作業を行なえる。
【0015】
また、本発明のゴム印判では、連結部27を印字ケース1の固着体14に連結して、ばねユニット6を印字ケース1と一体化し、印字ケース1に装着した押え枠5で左右の連結部27を受け止めて、ばねユニット6を抜け外れ不能に固定した。さらに連結部27に配置したストッパー31で押え枠5を抜け外れ不能に固定した。このようにストッパー31および押え枠5を利用して、押え枠5およびばねユニット6の組み付け姿勢を適正に保持すると、押え枠5およびばねユニット6の取付構造の無駄を省くことができ、全体としてゴム印判のコストを削減できる。
【0016】
グリップ2に設けた連結凹部44をばねユニット6の連結部27に係合して、グリップ2を連結部27を介して印字ケース1と一体化すると、ゴム印判の構造を簡素化して製造コストを削減できる。ばねユニット6の連結部27を利用してグリップ2を印字ケース1に組み付けるので、グリップ2を印字ケース1に直接連結する場合に不可欠な係合構造を省略でき、しかも連結部27を利用することで構造の無駄を省くことができるからである。また、グリップ2を装着した状態においては、連結部27が連結凹部44内に収まるので、ゴム印判の外観をシンプルですっきりとしたものとすることができる。
【0017】
2分割された同一構造の前後グリップ体2a・2bでグリップ2を構成すると、左右のばねユニット6を同一部品とすることに加えて、前後グリップ体2a・2bも同一部品で構成して、部品の製造および管理に要する手間を軽減できる。また、両グリップ体2a・2bの接合面に設けたピン40とボス41を利用して、これらの周面に連結体46を形成することにより、構造の無駄を省いてゴム印判の構造をさらに簡素化し、製造コストを削減できる。さらに、グリップ2を連結部27を介して印字ケース1に強固に組み付けることにより、捺印時にグリップ2がぐらつくのを確実に防止して、印面の左右で印字濃度がばらつくのをよく防止できる。
【0018】
連結部27に設けた連結穴32を印字ケース1に形成した連結爪14に係合し、さらに連結爪14をストッパー31に利用して押え枠5を抜け外れ不能に受け止めると、押え枠5を固定保持するための構造を簡素化できる。また、印字ケース1と一体に形成した連結爪14で押え枠5を受け止めるので、押え枠5を印字ケース1に対して強固に、しかも高い組み付け精度の許に連結でき、したがってゴム印字体3やインク吸蔵体4を常に適正に押さえ保持できる。
【0019】
押え枠5に抜止体20と規制体21とを設け、抜止体20をストッパー31で受け止め、さらにばねユニットの連結部27を規制体21で押さえ保持すると、押え枠5および連結部27の組み付け姿勢をさらに適正に保持固定できる。また、ばねユニット6を常に適正な組み付け姿勢に維持するので、ばねユニット6によるばね弾性を常に均等に発揮させてゴム印判の捺印を安定して行なえることとなる。
【0020】
印字ケース1の内部に、主区画11とばね区画12を形成し、押え枠5と主区画11の周囲壁との間に隙間Eを設けると、毛細管現象によるグリップ2の内部へのインクの滲みを確実に防止できる。したがって、インク補給のためにグリップ2を印字ケース1から分離するような場合に、インクが手指に付着するのを解消して、インク補給やグリップ2の再組み付けなどの作業を円滑に行なえる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ゴム印判の支持構造を示す縦断正面図である。
【図2】ゴム印判の斜視図である。
【図3】ゴム印判の縦断正面図である。
【図4】ゴム印判の支持構造を示す、一部を破断した分解正面図である。
【図5】図3におけるA−A線断面図である。
【図6】図1におけるB−B線断面図である。
【図7】グリップの分解斜視図である。
【図8】グリップの連結構造を示す一部破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0022】
図1ないし図8は本発明に係るゴム印判の実施例を示す。図2においてゴム印判は、印字ケース1と、印字ケース1の上部に連結されるグリップ2とを外殻体にして構成してある。印字ケース1にはゴム印字体3とインク吸蔵体4が収容され、さらに、前記両者3・4を押さえ保持する押え枠5と左右一対のばねユニット6・6とが組み込んである。
【0023】
図3および図4において、印字ケース1は、上下面が開口する左右横長の四角枠状のプラスチック成形品からなる。印字ケース1の内部は、その前後壁を繋ぐ左右一対の区画壁10によって、中央の主区画11と、左右両側のばね区画12とに区分してある。主区画11の下面側の開口縁に沿って、ゴム印字体3の下面周縁を受け止める受壁13が周回状に張り出し形成してある。受壁13の下面の周囲には、印面が過剰に押し潰されるのを規制する規制壁18が設けてある。
【0024】
印字ケース1の左右壁の内面上部、すなわちばね区画12に臨むケース内面の両側上端には、ばねユニット6を連結するための連結爪(固着体)14が内向きに突設してある。連結爪14は、印字ケース1に装填した押え枠5を、抜け外れ不能に受け止めるストッパー31を兼ねており、その下面には三角形状の補強リブが設けてある。後述するように、ばねユニット6は、ばね区画12の下面開口15の側からばね区画12内へ組み込まれる。
【0025】
区画壁10は、印字ケース1の下面と、ケース内面の上下方向中途部との間にわたって形成してあり、左右の区画壁10が対向する空間にゴム印字体3とインク吸蔵体4が収容される。また、両区画壁10より上側の空間に押え枠5が組み付けられる。印字ケース1の前面下部、および左右側面の下部のそれぞれには、印字領域を表す位置決め凹部16が凹み形成され、ケース前面の位置決め凹部16の左右中央には位置決め用の中央指標17が縦長リブ状に形成してある。
【0026】
ゴム印字体3は、連続捺印が可能な多孔質ゴムで形成してあり、その印面3aは左右方向へ長い帯状に形成してある。印面3aには、1行だけの文字列や数字列を印字する捺印部が形成してある。インク吸蔵体4は、連続気泡性の硬質の発泡プラスチック体からなり、ゴム印字体3と同様に左右横長に形成してある。主区画11の下半部に装填したゴム印字体3およびインク吸蔵体4は、必要に応じて印字ケース1に対して接着固定される。不使用状態におけるゴム印字体3の印面3aは、印字ケース1に外嵌するキャップ7(図3参照)で覆われて保護してある。
【0027】
押え枠5は、上下面が開口する左右横長の四角枠状のプラスチック成形品からなり、その左右壁の上部に前後に長い抜止突起(抜止体)20と、前後一対の規制片(規制体)21とが形成してある。突起20の上面は平坦に形成してある。押え枠5の前後辺部に連続してガイド壁22が上向きに張り出してあり、その中央部内面には左右一対の補強壁23が一体に形成してある。押え枠5の前後面の5個所には、それぞれ補強リブを兼ねる縦長の突起24を形成して、先の補強壁23と協同して押え枠5の構造強度を増強している。なお、突起24の配置個数はゴム印判の左右幅の違いに応じて異なる。
【0028】
押え枠5を印字ケース1に装填した状態においては、図1に示すように押え枠5の下面が左右の区画壁10で受け止められるので、押え枠5が主区画11内へ過剰に押し込まれるのを防止して、ゴム印字体3とインク吸蔵体4を適度に押さえ保持できる。インク吸蔵体4に対するインクの補充は、グリップ2を印字ケース1から取り外したのち、押え枠5を印字ケースに装着した状態のままで、その上面開口の側からインクを滴下して行なう。
【0029】
図4においてばねユニット6は、3個の屈曲部を備えたm字状のばね部26と、ばね部26の上端に連続する四角形のブロック状の連結部27と、ばね部26の下端に連続する四角形状の脚部28を一体に備えたプラスチックばねからなる。連結部27の内側面には、グリップ2を連結するための係合爪30と、印字ケース1の連結爪14に嵌合するT字状の連結穴(固着体)32とが形成してある。連結穴32をT字状に形成するのは、連結爪14の下面に設けた補強リブとの接当干渉を避けるためである。左右のばねユニット6・6は同一部品であって、その構造に差異はない。
【0030】
係合爪30は断面山形の突起からなり、連結部27の前端から後端にわたってリブ状に形成してある。連結穴32は前後に長い直線溝からなり、連結爪14と係合してばねユニット6を印字ケース1に固定する。安定した状態でゴム印判を支持するために、脚部28は連結部27に比べて左右厚みが大きく設定してあり、その下面の前後2個所には、部分球面状の脚突起29が形成してある。
【0031】
図7に示すように、グリップ2は、前後に2分割した前後グリップ体2a・2bを蓋合わせ状に接合して構成してあり、前後の各グリップ体2a・2bは同一構造のプラスチック成形品として形成してある。前グリップ体2aおよび後グリップ体2bは、横長四角形状の主面壁35を有し、その両側縁および上縁に沿ってコ字状の周囲壁36が張り出してある。また、周囲壁36で囲まれる主面壁35の内面には、逆T字状に縦横の補強リブ37・38を設け、さらに主面壁35の四隅部分のそれぞれにピン40およびボス41が設けてある。周囲壁36の一側には、接合状態において前後のグリップ体2a・2bが横ずれするのを防ぐ規制壁42が突設され、周囲壁36の他側には、規制壁42を受け止める係合リブ43が突設してある(図3参照)。
【0032】
ピン40とボス41の配置パターンは、前後の各グリップ体2a・2bにおいて対称関係にあり、したがって、両グリップ体2a・2bを蓋合わせ状に接合した状態において、対応するピン40とボス41とが互いに係合できる。両グリップ体2a・2bを接合した状態においては、グリップ2の内部が、主面壁35の下部に設けた水平の補強リブ38で上下に区分される。この補強リブ38より下方に、下向きに開口する区室が形成され、区室の左右両側に連結部27と係合する連結凹部44が形成してある。
【0033】
詳しくは、図8に示すように、区室の左右端寄りに2組のピン40とボス41を配置して、周囲壁36の左右側壁と、ピン40およびボス41と、これら両者40・41と補強リブ38を繋ぐリブ45とで連結凹部44を区画している。連結凹部44は下向きに開口しており、この連結開口47を介して連結部27が連結凹部44に差し込み係合される。また、周囲壁36の左右側壁と対向するピン40およびボス41の周面のそれぞれに、先の係合爪30と係合する係合突起46が設けてある。係合突起46は断面山形に形成してある。
【0034】
以上のように構成したゴム印判は、例えば以下に説明する手順で簡便に組むことができる。前後のグリップ体2a・2bは予め接合して接着剤で固定しておく。まず、図4に示すように左右のばねユニット6を下面開口15の側からばね区画12に差し込んで、その連結部27を印字ケース1の上開口から上方へ突出させ、連結穴32を連結爪14に係合する。次に、ゴム印字体3とインク吸蔵体4を主区画11に装着し、両者3・4の組み付け姿勢を整える。
【0035】
上記の状態で、斜めにした押え枠5の抜止突起20を片方の連結爪14に掛止し、さらにばねユニット6にあてがった状態で主区画11に差し込み、押え枠5の他側を押し込むと、抜止突起20が連結爪14を乗り越えて、その下面で受け止められる。これにより押え枠5が印字ケース1と一体化される。最後に、グリップ2の左右の連結凹部44の連結開口47に、左右の連結部27を差し込んで位置決めし、その状態の印字ケース1をグリップ2に押し付けると、係合爪30が係合突起46と係合して、グリップ2が連結部27を介して印字ケース1と一体化される。
【0036】
グリップ2が前後にぐらつき、あるいは落下衝撃を受けたグリップ2が印字ケース1から分離するのを防ぐために、係合爪30を含む連結部27の厚み寸法を分厚くして、連結部27が連結凹部44から抜け外れるのを困難化している。グリップ2の連結凹部44を連結部27に係合した状態においては、係合爪30と係合突起46とが相対移動不能に係合しており、したがってグリップ2の連結部27に対する連結状態を確りと維持できる。
【0037】
以上のように、本発明のゴム印判によれば、印字ケース1を基本構造体にして、これにゴム印字体3、インク吸蔵体4、押え枠5、リフトばね6、グリップ2などを、所定の手順に従って組み付けるだけで、的確にしかも簡便に組立を行なうことができる。図5および図6に示すように、押え枠5を印字ケース1に装填した状態においては、突起24が主区画11の前後壁に接当して、印字ケース1と押え枠5の前後壁の間に小さな隙間Eを形成するので、インク吸蔵体4に吸蔵されたインクが毛細管現象によって上向きに滲んで拡散するのを防止できる。
【0038】
組立が完了した状態における押え枠5は、図6に示すように、規制片21が連結穴32の周囲壁を押さえ込んで、連結部27が連結爪14から抜け外れるのを規制している。また、図1に示すように、連結爪14で押え枠5の抜止突起20の上面を受け止めて、押え枠5が印字ケース1から分離するのを規制している。このように、連結爪14および押え枠5を利用して、押え枠5およびばねユニット6の組み付け姿勢を適正に保持できるようにすると、押え枠5およびばねユニット6の取付構造の無駄を省いて、ゴム印判の全体コストを削減できる。
【0039】
ゴム印判の左右幅は20から100mmの範囲内で選定することができるが、通常は左右幅が40mmと、50mmと、60mmのゴム印判が多用される。このように、ゴム印判の左右幅が異なる場合でも、左右一対のばねユニット6を共通部品として使用することができる。また、印字ケース1と、グリップ2と、ゴム印字体3と、インク吸蔵体4と、押え枠5と、左右のばねユニット6でゴム印判を構成するので、従来のゴム印判に比べて構成部品点数を削減できる。また、前後のグリップ体2a・2b、および左右のばねユニット6・6を同一部品で構成するので、部品の製造および管理に要する手間を軽減できる。
【0040】
上記構成のゴム印判によれば、常態において左右の脚部28がばね区画12の下面に突出し、さらに脚突起29がゴム印字体3の印面3aより下方に突出するので、印面3aを浮揚支持できる。したがって、キャップ7を装着した状態ではもちろんであるが、キャップ7を取り外した状態であっても、多数個のゴム印判を印箱に起立した姿勢で整理収納して、印面3aに塵埃などが付着するのを防止できる。捺印時には、位置決め凹部16および中央指標17を目安にして印字位置を決め、グリップ2を押し下げて印面3を紙面に押し付けることにより、文字列などを捺印できる。
【0041】
上記の実施例では、ストッパー31を兼ねる連結爪14で、印字ケース1に組み付けた押え枠5を抜け外れ不能に固定したが、その必要はない。例えば、連結部27にストッパー31を設けて、押え枠5を固定保持することができる。ばねユニット6の連結部27に連結爪(固着体)32を設け、印字ケース1のばね区画12に臨む側壁内面に連結穴(固着体)14を設けて、連結爪32を連結穴14に係合してばねユニット6を固定することができる。ばねユニット6のばね部26は、m字状とする以外に、M字状、W字状、あるいはZ字状などに変更することができる。グリップ2は、前後に2分割した前後のグリップ体2a・2bで構成する必要はなく、下向きに開口する1個の射出成形品で形成することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 印字ケース
2 グリップ
3 ゴム印字体
4 インク吸蔵体
5 押え枠
6 ばねユニット
11 主区画
12 ばね区画
14 連結爪(固着体)
20 抜止突起(抜止体)
21 規制片(規制体)
26 ばね部
27 連結部
28 脚部
30 係合爪
32 連結穴(固着体)
40 ピン
41 ボス
44 連結凹部
46 係合突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字ケース(1)と、印字ケース(1)に装着されてインク吸蔵体(4)およびゴム印字体(3)を押さえ保持する押え枠(5)と、印字ケース(1)の両側に組み付けられる左右一対のばねユニット(6)と、印字ケース(1)の上部に連結されるグリップ(2)とを備えており、
ばねユニット(6)は、ばね部(26)と、ばね部(26)の上下に設けられる連結部(27)および脚部(28)を一体に備えたプラスチックばねからなり、
前記連結部(27)を印字ケース(1)に設けた固着体(14)に連結して、ばねユニット(6)が印字ケース(1)と一体化されており、
印字ケース(1)に装着した押え枠(5)で左右の連結部(27)を受け止めて、ばねユニット(6)が抜け外れ不能に固定されており、
連結部(27)に配置したストッパー(31)で押え枠(5)が抜け外れ不能に固定してあることを特徴とするゴム印判。
【請求項2】
ばねユニット(6)を印字ケース(1)に組み付けた状態において、連結部(27)が印字ケース(1)の上面上方へ突出しており、
グリップ(2)の印字ケース(1)との接合面の左右に、ばねユニット(6)の連結部(27)と係合する連結凹部(44)が設けられており、
連結凹部(44)を連結部(27)に係合して、グリップ(2)が連結部(27)を介して印字ケース(1)と一体化してある請求項1に記載のゴム印判。
【請求項3】
グリップ(2)が、前後に2分割された同一構造の前後グリップ体(2a・2b)を蓋合わせ状に接合して構成されており、
両グリップ体(2a・2b)を接合した状態において、互いに嵌合するピン(40)とボス(41)とが前後グリップ体(2a・2b)の接合面の周縁に沿って設けられており、
連結凹部(44)に臨んで配置したピン(40)とボス(41)の周面に、連結部(27)に設けた係合爪(30)と係合する連結体(46)が形成してある請求項2に記載のゴム印判。
【請求項4】
固着体が印字ケース(1)と一体に形成した連結爪(14)で構成されており、
連結部(27)に設けた連結穴(32)を連結爪(14)に係合して、ばねユニット(6)が印字ケース(1)に固定されており、
連結爪(14)がストッパー(31)を兼ねている請求項2または3に記載のゴム印判。
【請求項5】
印字ケース(1)に装着した押え枠(5)の左右壁に、ストッパー(31)で受け止め係合される抜止体(20)と、ばねユニットの連結部(27)を押さえ保持する規制体(21)とが設けてある請求項2、3または4に記載のゴム印判。
【請求項6】
印字ケース(1)の内部に、ゴム印字体(3)およびインク吸蔵体(4)を収容する主区画(11)と、ばねユニット(6)を収容するばね区画(12)とが形成されており、
押え枠(5)と主区画(11)の周囲壁との間に、毛細管現象によるインクの滲みを防ぐ隙間(E)が設けてある請求項2から5のいずれかに記載のゴム印判。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−42139(P2011−42139A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193066(P2009−193066)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000106461)サンビー株式会社 (12)