説明

ゴム製裏込め材

【課題】 陸上や海上を問わず簡単に裏込めができ、既設の矢板壁の補強なども簡単にできるゴム製裏込め材を提供すること。
【解決手段】 被補強壁部材である矢板壁と補強部材である新設杭のH型鋼3との間に中空部材11と、ゴム製部材12とでなるゴム製裏込め材10を設け、内部に無収縮モルタルの充填部材13を充填してゴム製部材12を開口部側に突き出すようにすることで、被補強壁部材と補強部材との間の荷重を支持させて補強するようにする。
これにより、中空部材11を被補強壁部材と補強部材との間に配置することで、ゴム製部材12の膨らむ方向を規制でき、しかも充填部材13を充填するだけで簡単に裏込めでき、ひとつずつ設置しながら裏込めできるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ゴム製裏込め材に関し、中空部材とこれの端部を塞ぐゴム製部材との内部にモルタルなどを充填するようにしたもので、陸上や海上を問わず簡単に裏込めができ、特に既設の矢板壁の補強などに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
裏込め材を用いる土留め工事は土木現場において多く行われており、多種多様な土止め用の裏込め材が使用されており、例えば、木楔、袋詰めのコンクリート、金属製やプラスチック製の楔などが使用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、トンネルや坑道などを作製するシールド工法において用いる袋つき裏込め材が開示されており、セグメントと地山とで囲まれた閉じられた空間に袋とともにモルタルなどを充填して裏込めを行うようにしている。
【0004】
また、裏込めが必要な場合のひとつに、海上などの既設の矢板壁の補強があり、当初の設計海底面を深くして増深化する場合には、例えば、杭を新設し、新設杭と矢板壁の間の空間を裏込めする必要がある。
【0005】
さらに、矢板壁の補強構造については、特許文献2,3など種々の提案がある。
【特許文献1】特開2003−120189号公報
【特許文献2】特開2005−290790号公報
【特許文献3】特開2002−212943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1に開示されている袋つき裏込め材を、海上の既設の矢板壁と新設杭との空間に適用しようとすると、袋を空間に配置し、その内部にモルタルなどを充填することになるが、モルタルの重量で袋が下方に膨らむものの、矢板壁と新設杭との空間を最短で塞ぐ水平方向に膨らむようにすることができず、簡単に裏込めすることができないという問題がある。
【0007】
また、特許文献2,3などの矢板壁の補強構造などは、新たな矢板壁への適用は容易であるものの、既設の矢板壁への適用は簡単でないという問題がある。
【0008】
この発明は、かかる従来技術の問題に鑑みてなされたものであって、陸上や海上を問わず簡単に裏込めができ、既設の矢板壁の補強なども簡単にできるゴム製裏込め材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためこの発明の請求項1記載のゴム製裏込め材は、被補強壁部材と補強部材との間に設けられ当該被補強壁部材の荷重を当該補強部材に支持補強するゴム製裏込め材であって、前記被補強壁部材と前記補強部材の間隔より短い中空部材と、この中空部材の開口部の少なくとも一端に取り付けられて当該中空部材内に収納可能かつ当該中空部材を封鎖後充填される充填部材で開口部側に突き出して荷重を支持可能なゴム製部材とでなることを特徴とするものである。
【0010】
このゴム製裏込め材によれば、被補強壁部材と補強部材との間に中空部材と、ゴム製部材とでなるゴム製裏込め材を設け、内部に充填部材を充填してゴム製部材を開口部側に突き出すようにすることで、被補強壁部材と補強部材との間の荷重を支持させて補強できるようになる。
【0011】
これにより、中空部材を被補強壁部材と補強部材との間に配置することで、ゴム製部材の膨らむ方向を規制でき、しかも充填部材を充填するだけで簡単に裏込めでき、ひとつずつ設置しながら裏込めできるようになる。
【0012】
また、この発明の請求項2記載のゴム製裏込め材は、請求項1記載の構成に加え、前記中空部材の前記開口部の両端に、前記ゴム製部材を取り付けて当該中空部材を封鎖することを特徴とするものである。
【0013】
このゴム製裏込め材によれば、前記中空部材の前記開口部の両端に、前記ゴム製部材を取り付けて当該中空部材を封鎖するようにしており、ゴム製部材を両側に突き出すようにして大きな間隔に対しても裏込めでき、適用範囲を拡大できるようになる。
【0014】
さらに、この発明の請求項3記載のゴム製裏込め材は、請求項1記載の構成に加え、前記中空部材の前記開口部の他端に、封鎖用板部材を取り付けて封鎖することを特徴とするものである。
【0015】
このゴム製裏込め材によれば、前記中空部材の前記開口部の他端に、封鎖用板部材を取り付けて封鎖するようにしており、一方を封鎖用板部材で塞ぐことで、荷重の支持を安定させるとともに、支持面積を拡大したり、調整できるようになる。
【0016】
また、この発明の請求項4記載のゴム製裏込め材は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記ゴム製部材を、ダイヤフラム状、蛇腹状、折り重ね状のいずれかとして前記中空部材に収納可能かつ前記充填部材で突出支持可能に構成したことを特徴とするものである。
【0017】
このゴム製裏込め材によれば、前記ゴム製部材を、ダイヤフラム状、蛇腹状、折り重ね状のいずれかとして前記中空部材に収納可能かつ前記充填部材で突出支持可能に構成しており、必要な突き出し量に簡単に対応できるようにしている。
【0018】
さらに、この発明の請求項5記載のゴム製裏込め材は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記中空部材を鋼管で構成し、天部に排気口を設けるとともに、地部に前記充填部材の注入口を設けてなることを特徴とするものである。
【0019】
このゴム製裏込め材によれば、前記中空部材を鋼管で構成し、天部に排気口を設けるとともに、地部に前記充填部材の注入口を設けており、下から充填部材を注入することで、内部の空洞を防止でき、しかも確実に充填されたことを排気口で確認できるようになる。
【0020】
また、この発明の請求項6記載のゴム製裏込め材は、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記中空部材に、前記充填部材の充填により突き出す前記ゴム製部材を支持する支持部材を突き出し移動可能に設けてなることを特徴とするものである。
【0021】
このゴム製裏込め材によれば、前記中空部材に、前記充填部材の充填により突き出す前記ゴム製部材を支持する支持部材を突き出し移動可能に設けており、充填部材の充填で突き出したゴム製部材が垂れ下がることを支持部材で支持して防止できるようになる。
【0022】
さらに、この発明の請求項7記載のゴム製裏込め材は、請求項6記載の構成に加え、前記支持部材を、筒状または半筒状に構成してなることを特徴とするものである。
【0023】
このゴム製裏込め材によれば、前記支持部材を、筒状または半筒状に構成しており、ゴム製部材の周囲全体を覆ったり、下部の半周を覆って支持することで、確実に垂れ下がることを防止できるようになる。
【0024】
また、この発明の請求項8記載のゴム製裏込め材は、請求項1〜7のいずれかに記載の構成に加え、前記充填部材を、無収縮モルタルとしたことを特徴とするものである。
【0025】
このゴム製裏込め材によれば、前記充填部材を、無収縮モルタルとしており、確実に荷重を支持し、補強できるようになる。
【0026】
さらに、この発明の請求項9記載のゴム製裏込め材は、請求項1〜8のいずれかに記載の構成に加え、前記被補強壁部材を既設矢板壁とし、前記補強部材をH型鋼で連結して新設杭群で構成してなることを特徴とするものである。
【0027】
このゴム製裏込め材によれば、前記被補強壁部材を既設矢板壁とし、前記補強部材をH型鋼で連結して新設杭群で構成しており、既設の矢板壁と新設杭群のH型鋼との間に設けて海上や陸上からモルタルなどを充填することで簡単に裏込めでき、荷重の支持と補強できるようになる。
【発明の効果】
【0028】
この発明の請求項1記載のゴム製裏込め材によれば、被補強壁部材と補強部材との間に中空部材と、ゴム製部材とでなるゴム製裏込め材を設けたので、内部に充填部材を充填してゴム製部材を開口部側に突き出すようにすることで、被補強壁部材と補強部材との間の荷重を支持させて補強することができる。
【0029】
これにより、中空部材を被補強壁部材と補強部材との間に配置することで、ゴム製部材の膨らむ方向を規制することができ、しかも充填部材を充填するだけで簡単に裏込めすることができ、ひとつずつ設置しながら裏込めすることもできる。
【0030】
また、この発明の請求項2記載のゴム製裏込め材によれば、前記中空部材の前記開口部の両端に、前記ゴム製部材を取り付けて当該中空部材を封鎖するようにしたので、ゴム製部材を両側に突き出すようにして大きな間隔に対しても裏込めすることができ、適用範囲を拡大することができる。
【0031】
さらに、この発明の請求項3記載のゴム製裏込め材によれば、前記中空部材の前記開口部の他端に、封鎖用板部材を取り付けて封鎖するようにしたので、一方を封鎖用板部材で塞ぐことで、荷重の支持を安定させることができるとともに、この封鎖用板部材で支持面積を拡大したり、調整することもできる。
【0032】
また、この発明の請求項4記載のゴム製裏込め材によれば、前記ゴム製部材を、ダイヤフラム状、蛇腹状、折り重ね状のいずれかとして前記中空部材に収納可能かつ前記充填部材で突出支持可能に構成したので、必要な突き出し量に簡単に対応することができる。
【0033】
さらに、この発明の請求項5記載のゴム製裏込め材によれば、前記中空部材を鋼管で構成し、天部に排気口を設けるとともに、地部に前記充填部材の注入口を設けたので、下から充填部材を注入することで、内部の空気などを排出して空洞を防止でき、しかも確実に充填されたことを排気口で確認することができる。
【0034】
また、この発明の請求項6記載のゴム製裏込め材によれば、前記中空部材に、前記充填部材の充填により突き出す前記ゴム製部材を支持する支持部材を突き出し移動可能に設けたので、充填部材の充填で突き出したゴム製部材が垂れ下がることを支持部材で支持して防止することができる。
【0035】
さらに、この発明の請求項7記載のゴム製裏込め材によれば、前記支持部材を、筒状または半筒状に構成したので、ゴム製部材の周囲全体を覆ったり、下部の半周を覆って支持することで、確実に垂れ下がることを防止することができる。
【0036】
また、この発明の請求項8記載のゴム製裏込め材によれば、前記充填部材を、無収縮モルタルとしたので、収縮することがなく確実に荷重を支持し、補強することができる。
【0037】
さらに、この発明の請求項9記載のゴム製裏込め材によれば、前記被補強壁部材を既設矢板壁とし、前記補強部材をH型鋼で連結して新設杭群で構成したので、既設の矢板壁と新設杭群のH型鋼との間に設けて海上や陸上からモルタルなどを充填することで簡単に裏込めすることができ、荷重の支持と補強を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、この発明の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
図1〜図3はこの発明のゴム製裏込め材を既設矢板壁と新設杭との間の裏込め補強のために適用した一実施の形態にかかり、図1は全体の概略水平断面図、図2は全体の概略垂直断面図、図3はゴム製裏込め材の拡大垂直断面図である。
【0039】
このゴム製裏込め材10は、既設の矢板壁1を補強するため、鋼管杭2を新設し、新設杭2を連結するH型鋼3と矢板壁1との間に設けられて裏込めに用いられ、これにより、矢板壁1とH型鋼3とをゴム製裏込め材10を介して連結することで荷重の支持と補強を行うものである。
【0040】
このゴム製裏込め材10は、図3に示すように、中空部材11と、中空部材11の両端の開口部11aを塞ぐ伸縮性ゴムで形成したゴム製部材12、12とで構成され、内部に無収縮モルタルなどの充填部材13を充填することで、両端のゴム製部材12,12を外側に突き出すようにすることで、隙間をなくして連結状態に裏込めする。
【0041】
中空部材11は、裏込めすべき間隔である矢板壁1とH型鋼3との間隔より短い鋼管で構成され、例えば裏込めすべき間隔の半分程度の長さとされ、中空部材11の大きさは支持すべき荷重などにより適宜定める。
【0042】
この中空部材11は、例えば直径が300mmで、例えば裏込めすべき間隔を400mmとした場合に長さが200mmの鋼管が用いられる。
【0043】
なお、中空部材11の断面形状は、円形に限らず、三角形や多角形、楕円形など他の形状であっても良い。
【0044】
この鋼管で構成した中空部材11には、天部(取り付け状態での上部)の長さ方向中央に吊り金具14が溶接してあり、裏込めすべき位置に吊り下げて固定できるようにしてある。
【0045】
また、この中空部材11には、天部(取り付け状態での上部)に内部と連通する小径管で構成した排気口15が取り付けられるとともに、地部(取り付け状態での下部)に充填部材13を充填するための注入パイプなどを連結する小径管で構成した注入口16が内部と連通して取り付けてある。
【0046】
このような中空部材11には、両端の開口部11a,11aにゴム製部材12,12が取り付けられて塞がれている。
【0047】
このゴム製部材12は、中空部材11の開口部11aを塞ぐとともに、開口部外周を覆うように被せられ、通常時には、中空部材11の内側に収納状態とされ、充填部材13の充填時には、外側に突き出した状態となるようにしたゴム製のものが用いられ、開口部外周にバンド17を介して固定してある。
【0048】
このゴム製部材12は、例えば円板部12aの周囲に円すい部12bが形成され、円すい部の周囲に取付フランジ部12cが形成されて構成され、円板部12aがこれに加わる圧力などで移動するダイヤフラム状としてあり、円すい部12bが内側に位置する状態から反転して外側に突き出す状態となる。
【0049】
このように構成したゴム製裏込め材10は、図1および図2に示すように、既設の矢板壁1と、その補強のため新設された鋼管杭2を連結するH型鋼3との間に配置され、両端のゴム製部材12がそれぞれ矢板壁1とH型鋼3と対向し、中空部材11の中心軸が矢板壁1の壁面と直交する方向となるようにし、吊り金具14に連結した図示しないワイヤロープなどで矢板壁1あるいは、H型鋼3に支持固定する。こうして裏込めすべき位置にゴム製裏込め材10を吊り下げることで、天部に排気口15が位置し、地部に注入口16が位置することになる。
【0050】
次いで、ゴム製裏込め材10の注入口16に注入パイプを連結し、充填部材13として、例えば無収縮モルタルを注入する。すると、ゴム製裏込め材10の内部に注入される無収縮モルタル13で両端のゴム製部材12が外側に突き出すように膨らんで矢板壁1とH型鋼3と隙間を埋めて裏込めされ、連結状態として補強構造体を構成する。
【0051】
このようなゴム製裏込め材10を用いることで、中空部材11に対して両端のゴム製部材12,12の突き出し方向が規制され、突き出し代の分だけの隙間を裏込めすることができ、適用ストロークが大きく、特に大型工事が多い海洋工事に好適である。
【0052】
また、ゴム製裏込め材10は、排気口15および注入口16以外は水密状態であり、海水中に取り付けることもでき、充填部材13の注入を注入パイプを介して海上や地上のいずれかでも行うことができるので、地上や海上のいずれにも使用することができる。
【0053】
さらに、ゴム製裏込め材10を1つずつ施工することができ、裏込めのために大型装置や台船などを必要とせず、簡単に裏込めすることができる。
【0054】
次に、この発明のゴム製裏込め材の他の実施の形態について、図4により説明するが、すでに説明したゴム製裏込め材10と同一部分には、同一記号を記し重複する説明は省略する。
【0055】
このゴム製裏込め材20は、中空部材11の開口部11aの一端に封鎖用板部材11bを取り付けて塞いであり、鋼管で構成した中空部材11では、鉄板で構成した封鎖用板部材11bが溶接で取り付けてある。
【0056】
そして、このゴム製裏込め材20では、もう一方の開口部11aにゴム製部材12が被せるように取り付けられ、取付フランジ部12cの外側をバンド17で押さえて固定してあり、充填部材13の充填前は、円板部12aおよび円すい部12bが中空部材11内に収納状態としてある。
【0057】
なお、他の構成は、すでに説明したゴム製裏込め材10と同一である。
【0058】
このようなゴム製裏込め材20においても吊り金具14を介して裏込めすべき矢板壁1と新設杭2のH型鋼3との間に取り付けた後、注入口16を介して充填部材13である無収縮モルタルを内部に充填することで、ゴム製部材12を膨らませて外側に突き出すように反転させ、矢板壁1とH型鋼3とを連結状態とすることで、裏込めすることができ、矢板壁1を補強することができる。
【0059】
このようなゴム製裏込め材20によれば、中空部材11の一端に封鎖用板部材11bを取り付けて封鎖してあるので、矢板壁1あるいは、H型鋼3との密着性を向上したり、大きさを変えることで接触面積を大きくすることもでき、一層確実に矢板壁1とH型鋼3とを連結して補強することができる。
【0060】
また、このゴム製裏込め材20によってもすでに説明したゴム製裏込め材10と同様の作用効果を奏し、陸上や海上を問わず簡単に裏込めができ、既設の矢板壁の補強なども簡単にできる。
【0061】
次に、この発明のゴム製裏込め材のさらに他の実施の形態について、図5により説明するが、すでに説明したゴム製裏込め材10,20と同一部分には、同一記号を記し重複する説明は省略する。
【0062】
このゴム製裏込め材30は、中空部材11の開口部11aの一端に封鎖用板部材11bを取り付けて塞いであり、鋼管で構成した中空部材11では、鉄板で構成した封鎖用板部材11bが溶接で取り付けてある。
【0063】
そして、このゴム製裏込め材30では、もう一方の開口部11aにゴム製部材31が被せるように取り付けてある。
【0064】
このゴム製部材31は、底つき円筒状のゴム材を内周側に2回折り返して三層31a、31b、31cの筒状とし、外層31aと中間層31bとの間に中空部材11の端部が挿入され、バンド17を介して取り付けられ、中間層31bおよび内層31cが中空部材11内に収納状態とされ、ゴム材の底部分の円板部31dが開口部11aを塞ぐようになっている。
【0065】
なお、他の構成は、すでに説明したゴム製裏込め材20と同一である。
このようなゴム製裏込め材30においても吊り金具14を介して裏込めすべき矢板壁1と新設杭2のH型鋼3との間に取り付けた後、注入口16を介して充填部材13である無収縮モルタルを内部に充填することで、ゴム製部材31を膨らませて外側に突き出すようにし、矢板壁1とH型鋼3とを連結状態とすることで、裏込めすることができ、矢板壁1を補強することができる。
【0066】
このようなゴム製裏込め材30によれば、中空部材11の一端に折り重ね状のゴム製部材31を取り付けて塞ぐようにしてあるので、中間層31bおよび内層31cのそれぞれの長さ分だけ充填される無収縮モルタル13で突き出すようにすることができ、突出しストロークを拡大でき、折り重ね層の層数や各層の長さによって突出しストロークを簡単に変えることができる。
【0067】
また、このゴム製裏込め材30によってもすでに説明したゴム製裏込め材10および20と同様の作用効果を奏し、陸上や海上を問わず簡単に裏込めができ、既設の矢板壁の補強なども簡単にできる。
【0068】
次に、この発明のゴム製裏込め材の他の実施の形態について、図6により説明するが、すでに説明したゴム製裏込め材10,20、30と同一部分には、同一記号を記し重複する説明は省略する。
【0069】
このゴム製裏込め材40は、鋼管で構成した中空部材41の開口部41aの一端に外側に突出したフランジ部41bを形成し、このフランジ部41bに鉄板で構成した封鎖用板部材41cを当て、ボルトなどで締め付けることで塞ぐようにしてある。
【0070】
そして、このゴム製裏込め材40では、もう一方の開口部41aを塞ぐゴム製部材42が、底つきの蛇腹状とされ、蛇腹状の円筒部42aと底部分の円板部42bと取付フランジ部42cとで構成され、取付フランジ部42cを中空部材41のフランジ部41bと封鎖用板部材41cとの間に挟んでボルトで締め付けて取り付けてある。
【0071】
これにより、ゴム製部材42の蛇腹状の円筒部42aおよび底部分の円板部42bが中空部材11の内側に完全に収納された状態とされ、円板部42bが取付フランジ部42cと反対側の開口部41aの内側に位置した状態となっている。
【0072】
そして、このゴム製裏込め材40では、蛇腹状のゴム製部材42内に充填部材13を充填するため、封鎖用板部材41cに排気口15および注入口16が取り付けられ、曲がり管を介して上方および下方に開口するようにしてある。
【0073】
さらに、封鎖用板部材41cには、排気口15および注入口16との干渉を防止して矢板壁1や新設杭2のH型鋼3に当てることができるようにスペーサ43および当て板44が外側に突き出すように溶接して取り付けてある。
【0074】
なお、他の構成は、すでに説明したゴム製裏込め材10、20、30と同一である。
【0075】
このようなゴム製裏込め材40においても吊り金具14を介して裏込めすべき矢板壁1と新設杭2のH型鋼3との間に取り付けた後、注入口16を介して充填部材13である無収縮モルタルを内部に充填することで、ゴム製部材42を膨らませて外側に突き出すようにし、矢板壁1とH型鋼3とを連結状態とすることで、裏込めすることができ、矢板壁1を補強することができる。
【0076】
このようなゴム製裏込め材40によれば、中空部材41の内部にゴム製部材42を完全に収納した状態で運搬や設置ができ、ゴム製部材42の損傷を防止することができるとともに、取扱いが容易となる。
【0077】
また、このゴム製裏込め材40によってもすでに説明したゴム製裏込め材10、20および30と同様の作用効果を奏し、陸上や海上を問わず簡単に裏込めができ、既設の矢板壁の補強なども簡単にできる。
【0078】
次に、この発明のゴム製裏込め材のさらに他の実施の形態について、図7および図8により説明するが、すでに説明したゴム製裏込め材40と同一部分には、同一記号を記し重複する説明は省略する。
【0079】
このゴム製裏込め材40A,40Bは、ゴム製裏込め材40でのゴム製部材42が充填部材13の充填により外側に膨らみ突き出すようになった場合の下方への垂れ下がりを防止できるようにしたものであり、支持部材51、52が設けてある。
【0080】
そして、ゴム製裏込め材40Aでは、図7に示すように、円筒状の鋼管の中空部材41の外側に底付き円筒状の支持部材51が二重筒状に配置されてゴム製部材42の突き出しに応じて突き出し移動できるようになっており、支持部材51が矢板壁1に接触した状態でも基端部が中空部材41と重なるように長さが定めてある。
【0081】
なお、他の構成は、すでに説明したゴム製裏込め材40と同一である。
このような支持部材51を設けることで、ゴム製部材42が外側に膨らむように突き出しても支持部材51で下方に垂れ下がることが防止でき、確実に裏込めすることができるとともに、ゴム製部材42を保護することもできる。
【0082】
また、ゴム製裏込め材40Bでは、図8に示すように、円筒状の鋼管の中空部材41の内側に底付き半円筒状の支持部材52が二重筒状に配置されてゴム製部材42の突き出しに応じて突き出し移動できるようになっており、支持部材52が矢板壁1に接触した状態でも基端部が中空部材41と重なるように長さが定めてある。
【0083】
なお、他の構成は、すでに説明したゴム製裏込め材40と同一である。
このような支持部材52を設けることで、ゴム製部材42が外側に膨らむように突き出しても支持部材52で下方に垂れ下がることが防止でき、確実に裏込めすることができるとともに、ゴム製部材42を保護することもできる。
【0084】
このようなゴム製裏込め材40A、40Bによってもすでに説明したゴム製裏込め材40と同様の作用効果を奏し、陸上や海上を問わず簡単に裏込めができ、既設の矢板壁の補強なども簡単にできる。
【0085】
なお、上記実施の形態では、充填部材として無収縮モルタルを例に説明したが、これに限らず、他の充填部材を使用することもできる。
【0086】
さらに、支持部材として筒状または半筒状としてゴム製部材の周囲全体または下半分を覆うようにしたが、かご状など部分的にゴム製部材を覆って下部に垂れ下がることを防止するようにしても良い。
【0087】
また、被補強部材と補強部材は、既設矢板壁と新設杭を例に説明したが、これに限らず他の海上や陸上の壁部材と補強部材に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】この発明のゴム製裏込め材を既設矢板壁と新設杭との間の裏込め補強のために適用した一実施の形態にかかる全体の概略水平断面図である。
【図2】この発明のゴム製裏込め材を既設矢板壁と新設杭との間の裏込め補強のために適用した一実施の形態にかかる全体の概略垂直断面図である。
【図3】この発明のゴム製裏込め材を既設矢板壁と新設杭との間の裏込め補強のために適用した一実施の形態にかかる拡大垂直断面図である。
【図4】この発明のゴム製裏込め材を既設矢板壁と新設杭との間の裏込め補強のために適用した他の一実施の形態にかかる拡大垂直断面図である。
【図5】この発明のゴム製裏込め材を既設矢板壁と新設杭との間の裏込め補強のために適用した一実施の形態にかかる拡大垂直断面図である。
【図6】この発明のゴム製裏込め材を既設矢板壁と新設杭との間の裏込め補強のために適用した他の一実施の形態にかかる拡大垂直断面図である。
【図7】この発明のゴム製裏込め材を既設矢板壁と新設杭との間の裏込め補強のために適用したさらに他の一実施の形態にかかる拡大垂直断面図である。
【図8】この発明のゴム製裏込め材を既設矢板壁と新設杭との間の裏込め補強のために適用した一実施の形態にかかる拡大垂直断面図である。
【符号の説明】
【0089】
10,20,30 ゴム製裏込め材
40,40A,40B ゴム製裏込め材
11、41 中空部材
11a 開口部
11b 封鎖用板部材
12、31、42 ゴム製部材
12a 円板部
12b 円すい部
12c 取付フランジ部
13 充填部材
14 吊り金具
15 排気口
16 注入口
17 バンド
31a 外層
31b 中間層
31c 内層
31d 円板部
41a 開口部
41b フランジ部
41c 封鎖用板部材
42a 蛇腹状円筒部
42b 円板部
42c 取付フランジ部
43 スペーサ
44 当て板
51 筒状の支持部材
52 半筒状の支持部材
1 矢板壁
2 鋼管杭
3 H型鋼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被補強壁部材と補強部材との間に設けられ当該被補強壁部材の荷重を当該補強部材に支持補強するゴム製裏込め材であって、
前記被補強壁部材と前記補強部材の間隔より短い中空部材と、
この中空部材の開口部の少なくとも一端に取り付けられて当該中空部材内に収納可能かつ当該中空部材を封鎖後充填される充填部材で開口部側に突き出して荷重を支持可能なゴム製部材とでなることを特徴とするゴム製裏込め材。
【請求項2】
前記中空部材の前記開口部の両端に、前記ゴム製部材を取り付けて当該中空部材を封鎖することを特徴とする請求項1記載のゴム製裏込め材。
【請求項3】
前記中空部材の前記開口部の他端に、封鎖用板部材を取り付けて封鎖することを特徴とする請求項1記載のゴム製裏込め材。
【請求項4】
前記ゴム製部材を、ダイヤフラム状、蛇腹状、折り重ね状のいずれかとして前記中空部材に収納可能かつ前記充填部材で突出支持可能に構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム製裏込め材。
【請求項5】
前記中空部材を鋼管で構成し、天部に排気口を設けるとともに、地部に前記充填部材の注入口を設けてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゴム製裏込め材。
【請求項6】
前記中空部材に、前記充填部材の充填により突き出す前記ゴム製部材を支持する支持部材を突き出し移動可能に設けてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のゴム製裏込め材。
【請求項7】
前記支持部材を、筒状または半筒状に構成してなることを特徴とする請求項6記載のゴム製裏込め材。
【請求項8】
前記充填部材を、無収縮モルタルとしたことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のゴム製裏込め材。
【請求項9】
前記被補強壁部材を既設矢板壁とし、前記補強部材をH型鋼で連結して新設杭群で構成してなることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のゴム製裏込め材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−223331(P2008−223331A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63050(P2007−63050)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)