説明

ゴム部材の凹凸量計測センサー及び同センサーを用いた計測装置

【目的】ゴム部材の凹凸量を容易かつ正確に計測できる計測センサおよび計測装置を提供する。
【構成】上面が矩形の平面2a、下面が所定の曲率半径の弯曲面2bの透明板2の弯曲面2bに、スペーサを介して任意の明度に着色された第1層シート3が、また、その下にスペーサを介して第1層シート3と明度差の大きい色に着色された第2層シート4を設け、さらにその下に黒色と明度差の大きい色に着色された第3層シート5を配設する。ゴム部材30に押付けると変形して容易かつ均一に密着し押付けを解除すると元の形状に回復しゴム部材30の凹凸が明瞭に可視化できる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はゴム部材の凹凸量を検出し計測するためのセンサーおよび同センサーを使用した計測装置に関する。
【0002】
【従来技術】ゴム部材の凹凸量を検出するものとして、従来タイヤ構成部材であるプライ等を環状のタイヤ部材に貼付けて、先端と後端が重ねられたときに、この重なり部分のオーバーラップ量を検出するのに透明平板を同重なり部に押付け同透明平板の側面から光を入射して上方よりカメラで撮像するという例があった。
【0003】同例は、プライの重なり部が透明板に密着し、同重なり部分が特に黒く浮き出るため、これを撮像し黒色部分を分析することでオーバーラップ量を計測していた。
【0004】また透明板の下面に、四角錐状の突起部が全面に亘って形成された黒色ゴムシートを張設した例もあり、同例では、ゴム部材の凸部に押付けると、凸部に対応する黒色ゴムシートの突起部が頂上端をつぶされて、透明板につぶされた部分が黒く浮き出るので、これを撮像することで凸部の範囲などを計測することができるものである。
【0005】
【解決しようとする課題】しかし透明板を直接ゴム部材に押付ける前者の直接方式の例では、未加硫ゴム部材を対象とする場合にゴム部材より析出する薬品その他により透明板の表面が汚れるおそれがあり、光の反射を利用する方法を採る当該例では致命的な妨害要因となる。またゴム部材表面にイオウ分等のタイヤ内より析出した薬品が付着するブルーム品の場合、部材表面が薬品の浮出しによりザラザラに荒れることがあり、このようなブルーム品の表面に透明板を押付けても、部材凸部と透明板との接触部分に空気層が形成されて光が正反射せず散乱して白っぽくなり凸部面を正確に検出できない。
【0006】また前記透明板下面に黒色ゴムシートを張設した後者の例では、平板状ゴム部材に押付けると、凸部以外でも黒色ゴムシートの突起部頂上端が小さい面積ではあるが黒く浮き出てしまい凹凸の範囲が不明確になる。
【0007】また分解能が黒色ゴムシートの突起部の大きさに影響されるとともに、黒色ゴムシート自体が凹凸を有するのでゴム部材とゴムシートとが接着し易く離れにくいといった不具合が生じる。
【0008】本発明はかかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、ゴム部材の凹凸量を明瞭に検出できるセンサーおよび計測装置を供する点にある。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用】上記目的を達成するために、本発明は、ゴム部材の凹凸量を計測するため該ゴム部材の凹凸部に接触させて凹凸量を検出するセンサーであって、所定の曲率半径の湾曲面を有する透明板と、前記透明板の湾曲面に沿い近接して設けられ所定押付力で押付けると前記透明板に容易に密着し、押付けを解除すると前記透明板から容易に離脱する性質を有し任意の明度に着色された第1層シート、前記第1層シートに平行に近接して設けられ所定押付力で押付けると前記第1層シートに容易に密着し、押付けを解除すると前記第1シートから容易に離脱する性質を有し前記第1層シートと明度差の大きい色に着色された第2層シートと、前記第2層シートに沿って設けられ、軟かくゴム部材に所定押付力で押付けると変形して前記ゴム部材に容易にかつ均一に密着し押付けを解除すると容易に離脱し元の形状に回復する性質を有する第3層シートとを備えたゴム部材の凹凸量計測センサーとした。該計測センサーをゴム部材の凹凸部に押付けると、凹凸に沿って第3層シートが変形して凸部において第2層シートを第1層シートに、第1層を透明板の湾曲面に押付け、凸部を透明板に明瞭に浮き出させることができ、凹凸量を正確に検出することができる。同センサーを使用し透明板を照明して透明板上方からカメラで撮像し画像処理し、計測処理をすることで、ゴム部材の凹部あるいは凸部の範囲などの凹凸量を容易かつ正確に計測できる。
【0010】
【実 施 例】以下図1ないし図5に図示した本発明の一実施例について説明する。
【0011】図1は、本実施例のゴム部材の凹凸量の計測センサ1の全体斜視図であり、図2はその断面図である。
【0012】アクリル製の透明板2は、上面が矩形の平面2aをなし、下面が所定の曲率半径にかかる円筒状湾曲面2bをなしている。
【0013】この透明板2の円筒状湾曲面2bの4隅にスペーサ6を介して下方に空気層10を形成してポリエチレンシートである第1層シート3が近接して配設されている。この第1層シート3は厚さ50μの乳白色をした矩形の平板である。
【0014】ついで第1層シート3の下方にスペーサ7を介して近接してビニールテープである第2層シート4が設けられており、同第2層シート4は薄い黒色のテープであり、その下に配設されるポリエチレンシートである第3層シート5の上面に貼着されている。
【0015】第2層シート4は、第1層シート3への密着性を有するとともに、容易に離脱する離型性も有する。
【0016】第3層シート5は、第1層シート3と同じく、ポリエチレン製で厚さ50μの乳白色をした矩形平板であり、この第3層シート5の上面に第2層シート4が一体に貼着されたものが、スペーサ7を介して第1層シート3との間に空気層11を形成して配設されている。
【0017】したがって第3層シート5に押付力が働らくと、第2層シート4は第3層シート5とともに変形して第1層シート3に容易に密着し、押付けが解除されると第2層シート4は第3層シート5の性質により第1層シート3から容易に離脱し元の形に回復する。
【0018】すなわち第3層シート5は、ゴム部材に押付けられるとゴム部材の表面に密接して表面形状になじむように変形し、押付けが解除されると容易にゴム部材から離脱して元の平板に回復する性質を有する。
【0019】計測センサ1は、以上のように透明板2、第1層シート3、第2層シート4、第3層シート5をスペーサ6,7を4隅に介装して所定位置関係に保って一体に構成されている。
【0020】かかる計測センサ1を利用した計測装置20の概略説明図を図3に示す。計測センサ1の上方所定位置にCCDカメラ21が設けられ、CCDカメラ21は計測センサ1の透明板2の下面湾曲面2bを焦点として所定位置関係を保って、計測センサ1とCCDカメラ21とは一体に移動可能であり、計測しようとするゴム部材30の凹凸部上方から下降させ、計測センサ1の最下層の第3層シート5を凹凸部に適当な圧力で押付ける。
【0021】本実施例では、タイヤ構成部材であるゴム部材30の貼付けにおいて、帯状のゴム部材30を環状に巻回し、その先端部と後端部の重なり部のオーバーラップ量(重なり部長さ)dを計測する。
【0022】計測センサ1は透明板2の湾曲面2bの中心線方向が測定方向であり、同中心線がゴム部材30の端縁に直角になるような姿勢で重なり部30aに押付ける。同中心線方向を以下前後方向とする。
【0023】透明板2の前後側面のうち一方の側面2cには、光源22から延出した光ファイバー管23の出射面が向けられており、同側面2cから透明板2の内部に光が入射され測定対象面を照射するようになっている。
【0024】こうして照明された透明板2を上方からCCDカメラ21が撮像し、その撮像信号は画像処理装置24に送られ、計測処理されて結果はモニターTV25に映し出される。
【0025】いま計測センサ1をゴム部材30の重なり部30aに適当な押付力で押付けた状態を図4および図5に示す。第3層シート5は、ゴム部材30の重なり部30aに押され、重なり部の形状に合わせて変形し、第3層シート5と一体の第2層シート4も同じように変形して第2層シート4は第1層シート3に密着しかつ第1層シート3を押圧して重なり部30aにおいて第1層シート3を透明板2の下面に密着させる。
【0026】すなわち透明板2の湾曲面2bの左右端部は中央と違って第1層シート3と距離があり空気層10が形成されているので、左右幅中央で、かつゴム部材30の重なり部30aのみで第1層シート3、第2層シート4、第3層シート5が空気層11を排除して重なり、第1層シート3が空気層10を排除して透明板2の下面に密接することになり、同部分は矩形領域31をなし(図4参照)、透明板2の下面2bのその他の部分は空気層10,11が残されることになる。
【0027】したがって透明板2の側面2cから入射された光は、第1層シート3が透明板2の湾曲面2bに密着した矩形領域31において正反射して他方の側に至り、上方への反射は少なく輝度が低い。また矩形領域31以外の透明板2の湾曲面2bでは空気層10が残されているので、入射光は散乱して輝度が高い。
【0028】すなわち透明板2を上方から見ると、ゴム部材30の重なり部30aであって第1層から第3層までのシートが重なって透明板2の下面の密接した矩形領域31では、乳白色をした薄い第1層シート3を透かして第2層シート4の黒色が浮き出て見え正反射で光が逃げて暗い。
【0029】一方矩形領域31の周囲では空気層10および乳白色3が透けて白くかつ光の散乱で明るく見える。第2層シート4の黒色は空気層11を介して第1層シート3が存在することで、またゴム部材30の黒色は空気層および第3層シート5を介することで影響を与えない。
【0030】したがって図4に示すように上から透明板2を見ると、ゴム部材30の重なり部30aでシートが密接した矩形領域31が、黒く浮き出て見える。この矩形領域31の前後幅がゴム部材30の重なり部30aのオーバーラップ量dである。
【0031】透明板2を上からCCDカメラ21が撮像すると、CCDカメラ21は透明板2の上面2aの輝度を撮像画素が把え電気信号に変換するので、矩形領域31は輝度が低く、矩形領域31以外は輝度が高い情報を得ることができ、同情報は画像処理装置24に送信され、この輝度情報を適当な閾値により2値化して境界を求め、演算処理してオーバーラップ量dを求め、これをモニターTV25に表示することができる。
【0032】透明板2は下面が湾曲しているので、ゴム部材の計測したい箇所が凹面内にある場合でも容易に計測可能であり、湾曲面の曲率は、計測する物の形状、材質あるいは部分によって適切なものを採用すればよい。ゴム部材が軟い材質であるときは、曲率半径の大きい湾曲面を有する透明板を用い、小さな押圧力で計測できるようにすることができる。
【0033】この透明板2の湾曲面2bに空気層10を介して近接して設けられた第1層シート3はゴム部材30の重なり部30aによる押付力により空気層を排して容易に透明板2に密接するので、この密接部の前後長はゴム部材30の重なり部30aを忠実に表わしている。
【0034】第1層シート3は、乳白色の薄いシートなので、下方の第2層シート4との接触圧力が小さくても接触部での第2層シート4の黒色を透かして浮き出させ、他の部分では計測センサ1との間に空気層10を残すとともに乳白色により第2層シート4の黒色が透けて見えるのを防止しているため、前記矩形領域31を強いコントラストで明瞭に表わすことができ、CCDカメラ21による画像情報の取り込みを容易としている。
【0035】また第1層シート3は押付力を解除したときに容易に透明板2から離脱するので、密着部を次の計測まで残して誤った計測をするのを防止できる。
【0036】第2層シート4は、黒色ビニールテープで、明度差の大きく異なる乳白色の第1層シート3との適当な密着により、ゴム部材30の重なり部30aの撮像を黒色情報として明瞭に表わすことができ、第1層シート3との接触も面接触なので従来の突起頂上部の接触に比べて分解能が高い。
【0037】第3層シート5は、復元力のある軟かいポリエチレンシートであり、ゴム部材30の重なり部30aの表面状態に合わせて変形し、第2層シート4に表面状態の情報を正確に伝達するとともに、透明板2にゴム部材30が直接接触して薬品や汚れが付着することを防止している。ブルーム品等のように表面がザラザラで粗くても柔らかい第3層シート5がこれを吸収して計測に影響をあたえない。また第3層シート5は乳白色をしており、かつゴム部材30の重なり部における接触部以外はゴム部材30との間に空気層が形成されているので、同領域においてゴム部材30の黒色が影響することがない。
【0038】このように透明板2および、第1,2,3層シート3,4,5がそれぞれ有効に働らいて、ゴム部材30の重なり部30aを示す矩形領域31を明瞭に現出可視化するので、そのオーバーラップ量dを正確に計測できる。
【0039】ゴム部材の被計測部が表面上段差がなくとも、ゴム部材の下方の状態によって接触圧分布が異なり、これを可視化することができる。すなわちゴム部材30の先端部に滑らかに後端部が重ねられて段差が見分けられない場合でも、該計測センサ1を適当な押付力で押付ければ接触圧の高い部分でのみ第1層シート3が透明板2に密着して接触圧分布を可視化してオーバーラップ量dを測定可能である。
【0040】なお本実施例では光ファイバー管23により透明板2の側面から光を入射させ、透明板2の内部全体を照らしたが、透明板2の上下面よりカメラのレンズに対して正反射を起さない方向に光照射してもよい。
【0041】またCCDカメラ21はエリアカメラであるが更に分解能を上げるには測定長さ方向の素子数をより多くとれるラインイメージセンサーでもよい。
【0042】
【発明の効果】本発明は、透明板の湾曲面に近接して適当な明度の第1層シートを配設し、この下方に第1層シートと明度差の大きい第2層シートを配設し、その下方に黒と明度差の大きい第3層シートを配した計測センサーとしたので、ゴム部材の凹凸を明瞭に可視化でき、この凹凸量を容易かつ正確に計測できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る一実施例の計測センサーの斜視図である。
【図2】同計測センサーの正面図である。
【図3】計測装置の全体概説図である。
【図4】計測センサーをゴム部材の重なり部に押付けた状態を示す説明図である。
【図5】図4におけるV−V断面図である。
【符号の説明】
1…計測センサ、2…透明板、3…第1層シート、4…第2層シート、5…第3層シート、6,7…スペーサ、10,11…空気層、20…計測装置、21…CCDカメラ、22…光源、23…光ファイバー管、24…画像処理装置、25…モニターTV、30…ゴム部材、31…矩形領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ゴム部材の凹凸量を計測するため該ゴム部材の凹凸部に接触させて凹凸量を検出するセンサーであって、所定の曲率半径の湾曲面を有する透明板と、前記透明板の湾曲面に沿い近接して設けられ所定押付力で押付けると前記透明板に容易に密着し、押付けを解除すると前記透明板から容易に離脱する性質を有し任意の明度に着色された第1層シートと、前記第1層シートに平行に近接して設けられ所定押付力で押付けると前記第1層シートに容易に密着し、押付けを解除すると前記第1層シートから容易に離脱する性質を有し前記第1層シートと明度差の大きい色に着色された第2層シートと、前記第2層シートに沿って設けられ、軟かくゴム部材に所定押付力で押付けると変形して前記ゴム部材に容易にかつ均一に密着し押付けを解除すると容易に離脱し元の形状に回復する性質を有する第3層シートとを備えたことを特徴とするゴム部材の凹凸量計測センサー。
【請求項2】 前記第1層シートが乳白色であり、前記第2層シートが乳白色と明度差の大きい黒色であり、前記第3層シートが乳白色であることを特徴とする請求項1記載のゴム部材の凹凸量計測センサー。
【請求項3】 前記第2層シートと前記第3層シートとが常に接着していることを特徴とする請求項1または2記載のゴム部材の凹凸量計測センサー。
【請求項4】 前記透明板と前記第1層シートとの間にスペーサを介装し、かつ前記第1層シートと前記第2層シートと間にもスペーサを介装したことを特徴とする請求項3記載のゴム部材の凹凸量計測センサー。
【請求項5】 前記請求項1,2,3又は4記載の計測センサーと、前記透明板を照明する照明手段と、前記透明板の湾曲面に対向する面の上方から撮像するカメラと、前記カメラにより撮像した画像を処理してゴム部材の凹凸量を計測する画像処理手段とからなることを特徴とするゴム部材の凹凸量計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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