説明

ゴム風船及びその製造方法

【課題】印刷工程や色付ゴム糊の模様付け工程を必要とせずに模様付けが可能になるゴム風船及びその製造方法を提供する。
【解決手段】風船本体2が色付ゴム組成物からなり、非インフレートのとき該風船本体2の内壁面に突部5からなる模様を有し、インフレートしたとき突部5を非透明にしたまま残部のゴム膜を透明化して風船本体2の表面に突部5に基づく模様を顕在化させるゴム風船1である。ゴム風船の製造方法は、表面に凹溝15からなる模様を有する風船型11を使用して、その表面にラテックス液を被覆してゴム被膜を形成し、該ゴム被膜を乾燥したのち風船型11から離型する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム風船及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、印刷インクや色付ゴム糊液を使用することなく風船本体に対する模様付けを可能にしたゴム風船及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム風船は、液体を封入してインフレートさせるヨーヨー風船、ヘリウムガスなどの軽比重ガスの封入してインフレートさせる風船などあり、これらは玩具としての用途のほか、商業用の宣伝や室内外の装飾用等といして幅広く使用されている。このゴム風船には、表面が無地のままのものもあるが、模様を施すことにより外観を多様化することにより、更に用途を拡大するようにしたものがある。
【0003】
従来、ゴム風船に模様付けを行う方法としては、ゴム風船をインフレートさせた状態にして手作業で表面に色付ゴム糊を塗布するものが一般的であった。しかし、これでは生産性が低いため、特許文献1は、これを機械により自動化することにより著しく生産性を向上するようにした模様付け方法を提案している。
【0004】
特許文献1が提案する自動模様付け方法は、エンドレスに移動する搬送チェンに多数の風船型を間隔をおいて間欠的に取り付け、これら風船型を搬送チェンで搬送しながらラテックス液に順次浸漬させてゴム被膜を形成し、次いでゴム被膜が形成された風船型を搬送チェン上で軸まわりに回転させながら揺動させ、その揺動中のゴム被膜の表面に色付ゴム糊を滴下させることにより螺旋状の模様を付与するようにしている。さらに、模様付けされた表面を再びラテックス液に浸漬させてカバーゴムを被覆することで、色付ゴム糊の模様が剥離しないように防止処理している。
【0005】
しかし、自動化しても色付ゴム糊を塗布する時間の掛かる模様付け工程を必要とすることに変わりはないため、その模様付け工程を実施するための時間や、その工程のための設備費が掛かることになり、依然として多くの時間と費用が掛かることに変わりはなかった。
【特許文献1】特許第2811412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、印刷工程や色付ゴム糊の模様付け工程を必要とせずに模様付けが可能なゴム風船及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明のゴム風船は、風船本体が色付ゴム組成物からなり、該風船本体が非インフレートのとき該風船本体の内壁面に該内壁面から突出した突部からなる模様を有し、該風船本体をインフレートしたとき前記突部を非透明にしたまま残部のゴム膜を透明化して前記風船本体の表面に前記突部からなる模様を顕在化させることを特徴とするものである。
【0008】
上記突部が風船本体の内壁面から突出する高さは、ゴム風船のサイズにもよるが0.1〜1.5mmの範囲にすることが好ましい。突部の高さをこのような範囲にすることにより、同じく模様の顕在化を有利にすることができる。また、色付ゴム組成物には、天然ゴム又は合成ゴムのゴム成分に少なくとも顔料、加硫剤及び加硫促進剤を配合したゴム組成物が好ましく使用される。
【0009】
本発明のゴム風船の製造方法は、表面に凹溝からなる模様を有する風船型を使用し、該風船型の表面にラテックス液のゴム被膜を形成し、該ゴム被膜を乾燥させたのち前記風船型から離型して内壁面に突部からなる模様を有するゴム風船を製造することを特徴とするものである。
【0010】
上記風船型の凹溝の深さとしては、上記突部の高さに対応させて0.1〜1.5mmにするのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴム風船は、色付ゴム組成物からなる風船本体が非インフレート時には内壁面に突部からなる模様を有し、それが風船本体をインフレートさせたときは、前記突部を非透明にしたまま残部のゴム膜を透明化させ、風船本体の表面に突部の模様を顕在化させるので、印刷工程や色付ゴム糊の模様付け工程を設けることなく模様付きゴム風船を得ることが可能になる。
【0012】
また、本発明のゴム風船の製造方法は、表面に凹溝の模様を有する風船型を使用し、ラテックス液のゴム被膜を形成し、このゴム被膜を乾燥したのち離型するので、上記のように内壁面に突部からなる模様を有し、これがインフレートしたときに模様になって顕在化するゴム風船を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のゴム風船は、インフレートを行なう風船本体と、この風船本体にインフレート用の流体を圧入する吹込み部とが一体成形された構成からなり、その風船本体には、風船本体が非インフレートのとき、その内壁面に内壁面から突出する突部で形成された模様を有するように構成されている。
【0014】
色付ゴム組成物としては、天然ゴム及び/又は合成ゴムを主成分として構成される。そのうちの合成ゴムとしては、例えば、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン共重合体などを使用することができる。また、色付ゴム組成物には少なくとも顔料、加硫剤及び加硫促進剤が配合されるほか、必要により安定剤や老化防止剤などを配合することができる。
【0015】
顔料は、ゴム組成物に対して赤、緑、黄色、青、白などの着色を行う材料である。例えば、酸化チタン、ベンガラ、群青、黄鉛などを例示することができる。ゴム成分に対して配合する顔料の配合量は、色によって異なるがゴム成分100重量部に対して0.1〜4重量部が好ましい。この顔料の配合量が少なすぎると、インフレート時に突部を非透明に維持することが難しくなり、また多くなりすぎると、インフレート時に風船本体のゴム膜の透明化が阻害される。
【0016】
上記のように形成されたゴム風船は、非インフレート時にはゴム膜全体が非透明であるが、流体を圧入して風船本体のインフレートさせると、ゴム膜が薄膜化して内壁面の突部の模様を非透明に維持したまま、残部のゴム膜が透明化する。このゴム膜の変化により、風船本体の外表面には突部の模様が視認可能な状態に表れて顕在化する。したがって、本発明のゴム風船では、従来のゴム風船のように印刷工程や色付ゴム糊の模様付け工程を格別に設けることなく、風船本体の外表面に模様を具備させることができる。
【0017】
ここで風船本体をインフレートさせて突部を除く残部のゴム膜が透明化するとは、非インフレート時の風船本体の胴部直径を6倍にインフレートさせた時に透明化していることを基準にして判断するものとする。非インフレート時の6倍にインフレートさせた時を基準にしたのは、6倍はゴム風船をインフレートさせて使用するときの最も標準的は膨張倍数であるからである。胴部直径を非インフレート時の6倍にインフレートした時、そのゴム膜が透明部と非透明部とを顕在化させるようになっていれば、その膨張倍数から大幅に異なる状態で使用されることは少なく、ほぼ本発明の効果を得ることができるようになるからである。
【0018】
本発明において、風船本体の内壁面に形成する突部の模様としては、絵、文字、記号などを含めた広い意味で使用され、その形態としては特に限定されない。突部で形成される模様としては、例えば、複数のリブ状の突部が互いに交差する格子模様、菱形模様、亀甲模様など、複数のリブ状の突部が風船本体の周方向或いは長手方向に並んだ縞模様、リブ状の突部がエンドレスに巻回する螺旋模様、リブ状の突部が多数の円を描く水玉模様、その他ランダムな形状をなす模様などを例示することができる。
【0019】
突部が風船本体の内壁面から突出する高さは、インフレート時に突部が非透明を維持する程度のものであれば特に限定されない。ゴム風船のサイズにもよるが、好ましくは0.1〜1.5mm、さらに好ましくは0.1〜1.0mm、特に好ましくは0.1〜0.5mmにするのがよい。突部の高さが0.1mm未満であると、インフレート時に突部を非透明に維持することが難しくなる。1.5mmを超えると、風船型から成形後のゴム風船を離脱するときの離型性が低下する。
【0020】
また、風船本体の突部を除く地部分の厚さとしては、ゴム風船のサイズにもよるが、0.5〜1.5mmの範囲にすることが好ましく、特に好ましくは0.6〜0.9mmの範囲にするのがよい。
【0021】
以下、図に示す実施形態により具体的に説明する。
【0022】
図1及び図2は本発明の実施形態からなるゴム風船の非インフレート時の状態を示し、図1は正面図、図2は図1におけるX−X矢視断面図である。
【0023】
図1及び図2に示すように、ゴム風船1は、楕円球状の風船本体2とチューブ状の吹込み部3とが一体成形されている。吹込み部3の開口端には端部を巻き上げた口輪4がリング状に形成されている。風船本体2は外表面側は平滑であるが、内壁面には多数のリブ状の突部5が長手方向と周方向とに交差するように設けられ、格子状の凹凸模様を形成している。
【0024】
このように風船本体2の内壁面に突部5が一体に形成されていることにより、風船本体2の地部分6はゴム膜が薄肉なのに対して、突部5の格子模様は厚肉になっている。この突部5が風船本体2の内壁面(地部分)から突出する高さとしては、前述したように、ゴム風船のサイズにもよるが0.1〜1.5mmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜1.0mm、特に好ましくは0.1〜0.5mmであるとよい。
【0025】
図3は、上記ゴム風船1の胴部外径(最大部外径)を非インフレート時の6倍にインフレートさせ、吹込み部3をクリップ7で封止した状態を示す。
【0026】
ゴム風船1は、インフレートによりゴム膜全体が非インフレート時よりも薄膜化するため、風船本体2の地部分6が透明に変化する。しかし、突部5は薄膜化はするものの地部分6より厚肉であるため非透明な状態を維持する。このように透明になった地部分6に対してリブ状の突部5が非透明状態で残存するため、突部5の格子模様が風船本体2の外表面に視認可能に表れて顕在化する。また、地部分6が透明化しているため、反対側の内壁面の格子模様まで透視することができ、表面側の格子模様と反対側の内壁面の格子模様とがコントラストして、美しい外観を呈することができる。
【0027】
以下、上述した本発明のゴム風船の製造方法について説明する。
【0028】
本発明のゴム風船は、図4に示すように、表面に凹溝の模様を設けた風船型を使用して製造することができる。風船型はゴムとの離型性に優れた材料で構成することが好ましく、例えば、ガラス、セラミック、プラスチックなどを使用することができる。
【0029】
図4に例示する風船型は、図1及び図2のゴム風船を製造するための風船型11であり、型本体12と軸部13から構成されている。型本体12の表面には多数の凹溝15が長手方向(軸方向)及び周方向に設けられて格子模様が形成されている。この格子模様の凹溝15は、図1及び図2のゴム風船1の内壁面に形成されたリブ状の突部5の格子模様に対応するものである。凹溝15の深さは、突部5の大きさに対応させて、好ましくは0.1〜1.5mmであり、さらに好ましくは0.1〜1.0mm、特に好ましくは0.1〜0.5mmにするのがよい。
【0030】
上記のように凹溝の模様を設けた風船型は、ラテックス液に浸漬させ、その風船型の表面にゴム被膜を形成させ、そのゴム被膜を加熱乾燥して加硫させる。風船型上で加硫を完了したゴム被膜は、これを風船型から離型すれば、内壁面に凹溝に対応した突部の模様を形成したゴム風船を得ることができる。
【0031】
図5は、本発明のゴム風船を製造する工程の一例を示す。
【0032】
21は製造工程をエンドレスに循環する搬送チェンである。この搬送チェン21に沿って多数の風船型11が定間隔に取り付けられている。この搬送チェン21の循環路に沿って、ラテックス液Lを貯留した第1及び第2のラテックス槽22、23及びそれぞれのラテックス槽22、23の下流側に熱風が循環する乾燥機24が設置されている。このラテックス槽22、23は、ゴム被覆に必要とされる厚さに応じて、さらに複数段に設けるようにしてもよい。最後のラテックス槽の下流側に、風船型11上のゴム被膜の端部を巻き上げ処理する巻上機25が設けられ、さらに乾燥機24を通過した下流に風船型11からゴム被覆を圧縮空気で剥離する噴射ノズル26が設置されている。
【0033】
搬送チェン21により移送される風船型11は、まず最初に第1のラテックス槽22でラテックス液Lに浸漬されてゴム被膜を形成し、一時的に乾燥処理された後、さらに第2のラテックス槽23のラテックス液Lに浸漬されることによりゴム被膜の厚さを増やす。設置するラテックス槽は、それぞれ1槽に限らず2以上の複数を設けるようにしてよく、ゴム風船に必要とされるゴム膜の厚さに応じて決めればよい。
【0034】
ラテックス槽22及び23でゴム被膜が形成された風船型11は、それぞれのラテックス槽22,23を通過後に一時的に乾燥機24の熱風で乾燥処理され、少しずつ加硫を進行させた後、巻上機25でゴム被覆の裾部を巻き上げ処理されてリング状の口輪4を形成する。次いで再び乾燥機24に入って通過する間に加熱されながら加硫を完了する。最後に乾燥機24を出ると、噴射ノズル26から噴射する圧縮空気によりゴム被覆が風船型11から剥離させられ、ゴム風船1となって回収トレー27に回収される。
【0035】
このようにして回収されたゴム風船1は、図1及び図2に示すように風船本体2の内壁面に風船型11の凹溝15に対応したリブ状の突部5が格子模様になって形成されいる。したがって、このゴム風船1をインフレートさせると、突部5を非透明にしたまま残部のゴム膜が透明化し、風船本体2の表面に突部に基づく格子模様を顕在化させることができる。このように本発明によれば、印刷工程や色付ゴム糊の模様付け工程を設けることなく模様付きゴム風船を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態からなるゴム風船の非インフレート時の正面図である。
【図2】図1におけるX−X矢視断面図である。
【図3】図1のゴム風船をインフレートした時の正面図である。
【図4】本発明のゴム風船の製造に使用される風船型を例示する正面図である。
【図5】本発明のゴム風船の製造工程を例示する概略図である。
【符号の説明】
【0037】
1 ゴム風船
2 風船本体
3 吹込み部
5 突部
6(風船本体の)地部分
11 風船型
22,23 ラッテクス液槽
24 乾燥機
25 巻上機
26 噴射ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
風船本体が色付ゴム組成物からなり、該風船本体が非インフレートのとき該風船本体の内壁面に該内壁面から突出した突部からなる模様を有し、該風船本体をインフレートしたとき前記突部を非透明にしたまま残部のゴム膜を透明化して前記風船本体の表面に前記突部からなる模様を顕在化させるゴム風船。
【請求項2】
前記突部が前記風船本体の内壁面から突出する高さが0.1〜1.5mmである請求項1に記載のゴム風船。
【請求項3】
前記色付ゴム組成物が、天然ゴム又は合成ゴムのゴム成分に少なくとも顔料、加硫剤及び加硫促進剤を配合したゴム組成物である請求項1又は2に記載のゴム風船。
【請求項4】
表面に凹溝からなる模様を有する風船型を使用し、該風船型の表面にラテックス液のゴム被膜を形成し、該ゴム被膜を乾燥させたのち前記風船型から離型して内壁面に突部からなる模様を有するゴム風船を製造するゴム風船の製造方法。
【請求項5】
前記風船型の凹溝の深さが0.1〜1.5mmである請求項4に記載のゴム風船の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−284012(P2008−284012A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−129256(P2007−129256)
【出願日】平成19年5月15日(2007.5.15)
【出願人】(592003946)株式会社鈴木ラテックス (1)
【Fターム(参考)】