説明

ゴルフクラブシャフトの選定用器具

【課題】試打するゴルフクラブのシャフトのキックポイントや剛性を容易に変更し、自分自身に合ったゴルフクラブシャフトを選定できるようにする。
【解決手段】ゴルフクラブシャフトを複数に分割した複数のエリアのシャフト周りに巻き付く筒状の合成樹脂製または金属製の複数の筒体を設け、複数の筒体のうち1つまたは2つの筒体をシャフト周りに固定して筒体を巻き付けた部分のシャフトの剛性値やキックポイントを変えることができるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブシャフトの選定用器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブシャフトのキックポイントや硬さが自分に合ったものかどうかを選定するときに、従来はいろいろな特性のシャフトのついたゴルフクラブを試打して、自分に合った最適なものを選定するのが一般的であった。しかしながら、同じヘッドに特性の異なる複数のシャフトを取付けたものを用意して試打する必要があるばかりか、同じシャフトでもヘッドの特性によってシャフトの特性も変化するので、多種類のヘッドと複数のシャフトの組合せとなり、自分に合ったシャフトを探し出す時間と手間がかかっていた。
【0003】
最近は、ヘッドからシャフトを着脱するのが簡単な試打用ゴルフクラブも開発され、複数のヘッドとシャフトの組合せを容易かつ迅速に行なえ、より一層自分に合ったゴルフクラブを探し出し易くなった。
【0004】
それでも、キックポイントや剛性の異なるシャフトの試打をするには、多数のシャフトを交換してみなければならなかった。購入後のゴルフクラブを使用し、シャフトを取替えることなく、同一シャフトで剛性を変えることのできる手段も開発された。これは、ゴルフクラブ購入時にシャフト選定をするためのものではなく、すでに購入後のゴルフクラブのシャフトの外周面の全面または一部に補強材のテープを貼って、シャフトの全体または一部のこわさ(剛性)を増やすというものである(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−225078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の補強材(テープ)をヘッドからシャフトが着脱自在な試打用ゴルフクラブのシャフトに適用しても、補強材はアルミニウム箔の粘着テープであり、これを一部に貼る場合も、比較的長い範囲に貼るため、貼り付けたテープの重量分だけシャフト重量が増大し、スイング時のフィーリングが、硬さのみならず重さによっても変化してしまう。また、自分自身に合ったシャフトのこわさを発見するまで、テープを貼ったり、剥がしたりを繰り返すこととなり、テープの粘着力が低下するおそれがあった。粘着力が低下した状態で試打すると、試打中にテープが剥がれることもあった。また、テープの巻き方によっては、自分に合ったシャフトの選定を間違えることもあった。
【0007】
そこで、本発明は、従来のようなテープを使用せず、シャフトの特性、すなわちキックポイントや剛性を容易かつ迅速に変更して自分自身に合ったゴルフクラブシャフトを発見することのできるゴルフクラブシャフトの選定用器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明は、ゴルフクラブシャフトを複数に分割した複数のエリアのシャフト周りに巻き付く筒状の合成樹脂製または金属製の複数の筒体を設け、複数の筒体のうち1つまたは2つの筒体をシャフト周りに固定して筒体を巻き付けた部分のシャフトの剛性値やキックポイントを変えることができるように構成したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ゴルフクラブシャフトを複数に分割した複数のエリアのシャフト周りに巻き付く筒状の合成樹脂製または金属製の複数の筒体を設け、複数の筒体のうち1つまたは2つの筒体をシャフト周りに固定して筒体を巻き付けた部分のシャフトの剛性値を変えることができるように構成したので、任意の2つの筒体を組み合わせてシャフトに巻き付ければ、自分自身に合ったキックポイントを発見することも容易であり、器具の付け替えを繰り返しても器具自体が劣化することはない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】シャフトに2つの筒体を取付けた状態のゴルフクラブ正面図
【図2】筒体を取付けた部分のシャフト横断面図
【図3】第3エリアに第3筒体を取付けた状態のシャフトの剛性値(EI値)を示すグラフ
【図4】第2エリアに第2筒体を取付けた状態のシャフトのEI値を示すグラフ
【図5】第1エリアに第1筒体を取付けた状態のシャフトのEI値を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の好適な実施形態について図面を参照にして説明する。
【0012】
図1に示すように、試打用ゴルフクラブ1のシャフト2を3つに分割した第1エリア2A、第2エリア2B、第3エリア2Cと命名し、各エリア2A〜2Cのシャフト2の周りに巻き付く筒状の合成樹脂製または金属製の筒体3〜5を用意し、第2筒体4と第3筒体5をそれぞれ第2エリア2Bと第3エリア2Cに固定する。この図1の場合、第1筒体3は第1エリア2Aに取付けていない。前記第1ないし第3の筒体3〜5は、硬質で軽量なものであれば、材質は問わない。また、前記シャフト1のエリアを3つに分割する場合、先調子、中調子、元調子というキックポイントを作り出せる範囲に設定する。すなわち、第2及び第3の筒体4、5を第2及び第3のエリア2B、2Cにそれぞれ取付けることで、元調子のシャフトになり、第1及び第2の筒体3、4を第1及び第2のエリア2A、2Bにそれぞれ取付けることで先調子のシャフトになり、第1及び第3の筒体3、5を第1及び第3のエリア2A、2Cにそれぞれ取付けることで中調子のシャフトになる。第1ないし第3の各エリア2A〜2Cに、それぞれ第1ないし第3の筒体3〜5が対応する。
【0013】
前記第1ないし第3の筒体3〜5のシャフト2への取付けは、筒体3〜5の軸方向に沿ったひとつの開口を形成し、この開口から互いに同一方向に延びる延出片6A、6Aを形成し、この延出片6A、6Aを締め付ける締結具6Bを設けて取付具6とした(図2参照)。この取付具6としては、ガス管とホースとを締結するバンドと同じような構造としたが、筒体3〜5の円周を縮める方向、すなわちシャフト周りにきつく巻き付く力を作用させる手段であれば、種々の手段が採用できる。この取付具6は、筒体3〜5のシャフト2への着脱を容易かつ迅速に行うものである。
【0014】
前記第1ないし第3の筒体3〜5は、2つ1組で用いるときは、キックポイントの変更による適合性を発見するために使用され、1つだけで使用する場合は、シャフト2の筒体使用部分の剛性値(EI値)を高めたシャフトに変えるために行う。ここで、EI値は、曲げ剛性をいい、単位はkg・mである。
【0015】
図3ないし図5に示すグラフは、第1ないし第3のエリア2A〜2Cにそれぞれ1つの筒体3〜5を取付けたときのシャフト剛性値と筒体3〜5を取付けないときのシャフト(基本シャフト)の剛性値とを比較するものである。基本シャフトとしては、長さ1169mm、重さ50.2g、トルク5.7、振動数(CPM)208、調子(%)42.3のフレックスR2のものであって、いずれの筒体3〜5も取付けない状態をグラフ上符号Aの曲線で示す。図3のグラフは、シャフト2の先端(チップ)から150〜350mmの第3エリア2Cに第3筒体5を取付けたときのEI値を符号Xの曲線で示す。この図3のグラフを表化すると、表1のようになる。
【0016】
【表1】

【0017】
図4のグラフは、シャフト2の先端から400〜600mmの第2エリア2Bに第2筒体4を取付けた状態のEI値を符号Yの曲線で示す。
【0018】
【表2】

【0019】
図5のグラフは、シャフト2の先端から650〜800mmの第1エリア2Aに第1筒体3を取付けた状態のEI値を符号Zの曲線で示す。
【0020】
【表3】

【0021】
3つの筒体3〜5を3つのエリア2A〜2Cにそれぞれ1つずつ取付けた場合の、基本シャフトとの剛性値の違いを実験したが、基本シャフトのスペックが変われば当然に剛性値も変わる。なお、シャフトの硬度(フレックス)は、硬い順にX、S、SR、R、R2、A、L、R3としているが、各メーカーによって違いがあるので、その定義はまちまちである。一般的にフレックスの測定は、順式たわみと逆式たわみの平均をとってフレックスの目安とする場合と、固有振動数測定器により、クラブの手元を固定して、ヘッドを振動させて1分間に何回振幅を繰り返すかで、動的な硬さを測定する場合とがある。
【0022】
前記キックポイントは、シャフトの撓りやすい部分の位置の違いにより、先調子、中調子、元調子と区分したものである。グリップ側が硬く、先端が軟らかい先調子のシャフトは、一般的に、腕力が強く、スイングリズムが早く、クラブを振り下すときに腕のスピードが速い人にマッチするといわれている。また、グリップ側が軟らかく、シャフト全体が鞭のように撓る元調子のシャフトは、一般的に、非力な人で、スイングリズムがゆっくりで、クラブを振り下すときに腕のスピードが遅い人にマッチするといわれている。中調子シャフトは、上述した2つのシャフトの中間的特性のシャフトである。
【0023】
EI値については、本願出願人の特開2008−212340号公報に記載のように、例えばドライバー用のシャフトであれば、先端150mmの位置の曲げ剛性値と先端から950mmの位置の曲げ剛性値の差が5kg・m以上であり、先端から150mmの位置の曲げ剛性値が2kg・m以下であるものは、ヘッドスピードが35m/s〜40m/sのゴルファーに適することも知見されている。したがって、シャフトのどの部分の剛性値を大きくすれば、特定のゴルファーにとって打ち出し角を大きく、飛距離を増大させることができるのかを容易に見つけ出す手助けをこの選定用器具が果たすことができる。
【0024】
なお、上述した実施形態では、シャフト2を3つのエリアに分割したが、2つのエリアあるいは4以上のエリアに分割して、分割数に応じ器具を準備し、シャフトの各部分の特性を変えるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0025】
1 ゴルフクラブ
2 シャフト
2A 第1エリア
2B 第2エリア
2C 第3エリア
3 第1筒体
4 第2筒体
5 第3筒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブシャフトを複数に分割した複数のエリアのシャフト周りに巻き付く筒状の合成樹脂製または金属製の複数の筒体を設け、
複数の筒体のうち1つまたは2つの筒体をシャフト周りに固定して筒体を巻き付けた部分のシャフトの剛性値やキックポイントを変えることができるように構成したことを特徴とするゴルフクラブシャフトの選定用器具。
【請求項2】
前記筒体に筒体の円周を伸縮させることができる取付具を設け、シャフトへの筒体着脱を図ったことを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブシャフトの選定用器具。
【請求項3】
前記複数のエリアを第1ないし第3のエリアとしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴルフクラブシャフトの選定用器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−125489(P2012−125489A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281401(P2010−281401)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)
【Fターム(参考)】