説明

ゴルフボールにおけるディンプル配置方法

【課題】ゴルフボールにおけるディンプル同士の間隔をより均等にする。
【解決手段】本発明のゴルフボールにおけるディンプル配置方法は、ディンプルの初期配置を決定し(S2)、前記ゴルフボールの表面を互いに同一の複数の単位領域に分割し(S3)、前記単位領域のうちの1つにおいて、任意の2つのディンプルが隣接関係にあるかどうかを両ディンプルのディンプル間隔に基づいて決定し(S6)、隣接関係にある任意の2つのディンプルのディンプル間隔に応じて両ディンプルの位置を変更し(S13)、前記単位領域において隣接関係にある任意の2つのディンプルのディンプル間隔の最大値である最大間隔が所定の値以下となるまで(S16)、前記隣接関係の決定と前記位置の変更とを繰り返して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールにおけるディンプルの配置方法及びその方法により得られるゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールに対するディンプルの配置として、正8面体配置、正20面体配置などの正多面体に配置する手法が知られている。また、ゴルフボールの球面をいくつかの領域に分割し、各領域に配置されるディンプルがゴルフボールの中心軸に関して回転対称となるようにディンプルを配置する手法も知られている。例えば、特許文献1〜4がある。
【0003】
また、ゴルフボールにディンプルをランダムに配置するための演算方法が特許文献5及び6に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−234674号公報
【特許文献2】特開平7−178198号公報
【特許文献3】特開平9−28833号公報
【特許文献4】特開平11−137721号公報
【特許文献5】特開2000−189542号公報
【特許文献6】特開平9−164223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開昭60−234674号公報、特開平7−178198号公報、特開平9−28833号公報、特開平11−137721号公報によれば、配置されるディンプルのサイズや形状が一定のものに限られてしまうため、ディンプル同士の間隔を均等にすることに限界がある。
【0006】
また、特開2000−189542号公報及び特開平9−164223号公報は表面占有率を向上させることを目的としているものの、表面占有率が向上したとしても必ずしもディンプル同士の間隔を均等にすることができない場合がある。
【0007】
そこで、本願の開示内容は、暫定的にディンプルを配置した上で、ディンプルの位置を変更し、ディンプル同士の間隔をより均等にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明に係るゴルフボールのディンプル配置を決定する方法は、ゴルフボールにおけるディンプルの初期配置を決定する初期配置決定ステップと、前記ゴルフボールの表面を互いに同一の複数の単位領域に分割する単位領域分割ステップと、前記単位領域のうちの1つにおいて、任意の2つのディンプルが隣接関係にあるかどうかを両ディンプルのディンプル間隔に基づいて定める隣接関係決定ステップと、隣接関係にある任意の2つのディンプルのディンプル間隔に応じて両ディンプルの位置を変更し、前記初期配置を変更する位置変更ステップとを含み、前記単位領域において隣接関係にある任意の2つのディンプルのディンプル間隔の最大値である最大間隔が所定の値以下となるまで、前記隣接関係決定ステップと前記位置変更ステップとが繰り返して行われる。
【0009】
ゴルフボールのディンプル配置を決定する方法の別の形態によれば、前記隣接関係決定ステップにて、任意の2つのディンプルのディンプル間隔が、いずれか一方のディンプルの直径または半径にある係数を乗ずることにより得られる特定間隔と等しいかまたは小さい場合に当該2つのディンプルが隣接関係にあると定められる。
【0010】
ゴルフボールのディンプル配置を決定する方法の別の形態によれば、前記半径に乗ずる前記係数が0.2〜1.3であることが好ましく、0.3〜1.2であることがより好ましい。
【0011】
ゴルフボールのディンプル配置を決定する方法の別の形態によれば、前記位置変更ステップの後に、当該位置変更ステップにて位置が変更された2つのディンプルのサイズを変更するサイズ変更ステップをさらに含む。
【0012】
ゴルフボールのディンプル配置を決定する方法の別の形態によれば、ゴルフボールの中心を通る少なくとも2つの軸を選び、ゴルフボールに配置された各ディンプルの中心から前記軸までの距離と、当該ディンプルの仮想球面面積との積の総和を各軸について求め、ある軸について得られた総和と別の軸について得られた総和との比に基づいて、ゴルフボール全体に配置されたディンプルのシンメトリー性を評価するシンメトリー性評価ステップを前記位置変更ステップの後にさらに含む。
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明に係るゴルフボールは、前記ゴルフボールのディンプル配置を決定する方法により決定されたディンプル配置に基づいてディンプルが設けられている。
【発明の効果】
【0014】
本願の開示内容によれば、ゴルフボールに配置されるディンプル同士の間隔をより均等にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本明細書で用いる用語を説明するためのゴルフボールの部分断面図である。
【図2】ディンプル配置決定装置により行われるディンプルの配置を決定する処理のフローチャートである。
【図3】ディンプル配置決定装置のハードウェア構成例を示す説明図である。
【図4】ディンプル配置決定装置の機能構成例を示す説明図である。
【図5】表示装置に表示される画面の遷移の一例を示す説明図である。
【図6】ディンプルの配置の変化の一例を示す説明図である。
【図7】ディンプルの配置の変化の一例を示す説明図である。
【図8】ディンプルの移動回数と表面占有率及びディンプル間隔との関係を示す説明図である。
【図9】ディンプル配置決定処理により決定されたディンプルの配置の一例を示す説明図である。
【図10】ディンプル配置決定処理により決定されたディンプルの配置の一例を示す説明図である。
【図11】ディンプル配置決定処理により決定されたディンプルの配置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本明細書で用いる用語について図1を参照して説明する。図1は、ゴルフボール1の部分断面図を示している。ゴルフボール1は表面上にディンプル2とディンプル3とを有している。ディンプル2の仮想球面の中心はC2であり、これをディンプル2の中心と呼ぶ。そして、ディンプル2の縁部によって形成される平面状の円の半径R2をディンプル2の半径と呼ぶ。ディンプル3についても同様である。すなわち、ディンプル3の中心がC3であり、ディンプル3の半径がR3である。
【0017】
そして、ゴルフボール1の中心C1を中心として、ディンプル2の中心C2とディンプル3の中心C3とにより描かれる円弧の長さRを、ディンプル2とディンプル3とのディンプル間距離と呼ぶ。さらに、このディンプル間距離Rからディンプル2の半径R2とディンプル3の半径R3とを差し引いた長さRをディンプル間隔と呼ぶ。
【0018】
かかる用語の定義を踏まえた上で、ディンプルの配置を決定する処理について図2〜図4を参照して具体的に説明する。図2は、ディンプルの配置を決定する処理の一例を示すフローチャートである。この処理は、図3及び図4に示すディンプル配置決定装置5により行われる。
【0019】
図3は、ディンプル配置決定装置5のハードウェア構成例を示している。ディンプル配置決定装置5は、CPU51と、インタフェース装置52と、表示装置53と、入力装置54と、ドライブ装置55と、補助記憶装置56と、メモリ装置57とを備えており、これらがバス58により相互に接続されている。
【0020】
図2に示す処理を実現するプログラムは、CD−ROM等の記録媒体59によって提供される。プログラムを記録した記録媒体59がドライブ装置55にセットされると、プログラムが記録媒体59からドライブ装置55を介して補助記憶装置56にインストールされる。あるいは、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体59により行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータからダウンロードすることもできる。補助記憶装置56は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0021】
メモリ装置57は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置56からプログラムを読み出して格納する。CPU51は、メモリ装置57に格納されたプログラムに従ってディンプル配置決定装置5の機能を実現する。インタフェース装置52は、ネットワークを通して他のコンピュータに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置53はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置54はキーボード及びマウス等である。
【0022】
図4は、ディンプル配置決定装置5の機能構成例を示している。図示しているように、ディンプル配置決定装置5は、初期配置決定手段510と、単位領域分割手段520と、隣接ディンプル決定手段530と、干渉ディンプル修正手段540と、ディンプル調整手段550と、シンメトリー性評価手段560とを備えている。
【0023】
図2に戻り、処理の流れを説明する。まずステップS1にて処理を開始する。そして、ステップS2では初期配置決定手段510がディンプルの初期配置を決める。かかる初期配置を決めるにあたり、既知の種々の方法を用いることができる。例えば、ゴルフボールの球面上に互いに同一の8個の仮想三角形を投影した正8面体配置とする。あるいは、正20面体配置、回転対称といった他の正多面体配置とすることもでき、半球を単位領域とみなして半球面のディンプルを定義する手法を採用することもできる。
【0024】
ステップS3では、単位領域分割手段520がゴルフボールの球面を互いに同一の複数の単位領域に分割する。例えば、上述のような多面体配列に用いられている単位領域をそのまま採用することもできるが、多面体配列に捕らわれず別途単位領域を設定することも可能である。ここでは、例として上記正8面体配列にならってゴルフボールの球面を、その球面上に投影される8個の仮想三角形に分割する。
【0025】
ステップS4では、隣接ディンプル決定手段530が単位領域内にある複数のディンプルの中から1つのディンプルを選ぶ。このとき選ばれたディンプルを特定ディンプルDと呼ぶ。
【0026】
ステップS5では、隣接ディンプル決定手段530が、前記特定ディンプルと当該単位領域内にある特定ディンプル以外の全てのディンプルとのディンプル間距離及びディンプル間隔を求める。特定ディンプルが当該単位領域の境界付近にあるディンプルである場合には、当該単位領域と接する別の単位領域の境界付近にあるディンプルとのディンプル間距離及びディンプル間隔も求める。なお、特定ディンプルと別のディンプルとが重なり合っている場合、つまり干渉している場合に、両ディンプルのディンプル間隔が負の値となる。
【0027】
ステップS6では、隣接ディンプル決定手段530は、ステップS5にて算出された特定ディンプルとのディンプル間隔が、特定ディンプルの半径または直径に係数を掛けて算出される特定間隔と等しいかまたは小さいディンプルを選ぶ。このとき選ばれたディンプルを特定ディンプルに隣接する隣接ディンプルDと呼ぶ。
【0028】
前記特定間隔を求めるための前記係数は約1.01〜約3.00とすることができ、より好ましくは約1.5〜2.0とすることができる。また、特定ディンプルと隣接ディンプルとのディンプル間距離が約0.01〜6.0mmとなり、両ディンプルのディンプル間隔が約−3.0〜6.0mmとなるように、ディンプルの初期配置及び前記係数を定めることが好ましい。
【0029】
ステップS7では、隣接ディンプル決定手段530が、特定ディンプルと複数の隣接ディンプルとのディンプル間隔のうち最大のディンプル間隔を決定する。これを最大間隔と呼ぶ。
【0030】
ステップS8では、隣接ディンプル決定手段530が、特定ディンプルと複数の隣接ディンプルとのディンプル間隔の平均値を求める。これを平均間隔と呼ぶ。
【0031】
ステップS9では、隣接ディンプル決定手段530が、単位領域内にあるディンプルのうち、未だ特定ディンプルとして選ばれていないディンプルがあるかどうかを判断する。この判断結果が「YES」である場合には、ステップS4〜S9を繰り返す。そして、ステップS9の判断結果がいずれ「NO」となり、その場合はステップS10に進む。
【0032】
ステップS10にて、干渉ディンプル修正手段540は、干渉しているディンプルがあるかどうかを判断する。具体的には、互いに隣接関係にある2つのディンプルのディンプル間隔のうち、負の値となっているものがあるかどうかを判断する。この判断結果が「YES」である場合には、ステップS11に進み、さもなければ後述するステップS13に進む。
【0033】
ステップS11では、干渉ディンプル修正手段540が、干渉している2つのディンプルの位置を移動させる。そして、両ディンプルのディンプル間隔が正の値となるような位置に両ディンプルを移動させることが好ましい。また、両ディンプルのディンプル間隔が平均間隔とほぼ等しくなる位置に両ディンプルを移動させることがさらに好ましい。なお、ここでいう平均間隔とは、ステップS8にて求められた、単位領域内にあるディンプルの個数と同じ数だけ求められる平均間隔の平均値である。以下、同様の意味で「平均間隔」という用語を用いる。
【0034】
必要に応じて行われるステップS12では、干渉ディンプル修正手段540が、干渉している2つのディンプルの直径を小さくする。そして、両ディンプルのディンプル間隔が平均間隔とほぼ等しくなる位置に両ディンプルを移動させることが好ましい。その後、ステップS10の判断結果が「NO」となるまで、ステップS4〜S12を繰り返す。
【0035】
ステップS13では、ディンプル調整手段550が、最大間隔に係る2つのディンプルの位置を移動させ、両ディンプルのディンプル間隔が平均間隔とがほぼ等しくなるようにする。なお、ここでいう最大間隔とは、ステップS7にて求められた、単位領域内にあるディンプルの個数と同じ数だけ求められる最大間隔の最大値である。以下、同様の意味で「最大間隔」という用語を用いる。
【0036】
必要に応じて行われるステップS14では、ディンプル調整手段550が、互いに隣接している2つのディンプルの間隔のうち、第1のしきい値を上回るものがある場合には、両ディンプルの直径を拡大させる。第1のしきい値は、0.04mm以下が好ましく、0.01mm以下とすることががより好ましい。
【0037】
必要に応じて行われるステップS15では、シンメトリー性評価手段560が、配置されたディンプルのシンメトリー性を評価する。具体的には、ゴルフボールの中心を通る軸について、ゴルフボールの球面に配置された各ディンプルの仮想球面の面積S(1≦i≦n)と、当該ディンプルの中心から軸までの距離Lとの積の総和sumを計算する。ただし、nはゴルフボールの球面に配置されたディンプルの数である。sumの算出式は以下のとおりである。
sum=ΣL
【0038】
上記の軸は、少なくとも2つ設ける。そして、各軸について算出される総和sumの値を比較することにより、シンメトリー性を評価する。例えば、ポール軸周りに算出された総和sumPと、シームラインを通る軸周りに算出された総和sumSとを求める。ここで、ポール軸とは、金型を用いて射出成形された際のゴルフボールの北極点と南極点とを通る軸のことである。また、シームラインを通る軸とは、金型を用いて射出成形された際のゴルフボールの赤道上のある点とゴルフボールの中心とを通る軸のことである。
【0039】
そして、sumS/sumPが1.0に近いほどゴルフボールのシンメトリー性が高いと判断される。逆に、sumS/sumPが1.0から離れるほどゴルフボールのシンメトリー性が高くないと判断される。シンメトリー性が高くないと判断された場合には、北極点及び南極点付近または赤道付近に配置されているディンプルの直径を縮小し、シンメトリー性を向上させることができる。
【0040】
一例であるが、sumS/sumPが1.0より大きい場合には、北極点及び南極点付近に配置されているディンプルのサイズを小さくする。また、sumS/sumPが1.0より小さい場合には、赤道付近に配置されているディンプルのサイズを小さくする。
ここにいう付近とは、特定点を北極又は南極と見立てたときに、北緯または南緯が30°〜90°となるようなある一定の範囲を有することが好ましい。範囲が小さすぎる場合にはシンメトリー性に与える影響が小さくなりすぎる場合があるためである。
【0041】
また、総和sumを求める軸の数を増やし、各軸について得られたsumの値同士の比に基づいて、シンメトリー性の評価の精度を向上させることができる。
【0042】
ステップS16では、ディンプル調整手段550が、最大間隔が第2のしきい値以下であるかどうかを判断する。判断結果が「NO」である場合にはステップS4〜S16を繰り返し、さもなければステップS17にて処理を終了する。
【0043】
また、ステップS2で決定されたディンプルの初期配置が以降のステップにて変更されていく様子は表示装置53に表示される。そして、ユーザはその様子を視覚的に確認することができる。また、表示装置53には1つの単位領域のみを表示させることができる。
【0044】
表示装置53に1つの単位領域のみを表示させたときの画面の遷移の一例を図5(A)〜図5(C)に示している。図5(A)は、ステップS6終了後のゴルフボールの初期配置の一例である。図5(A)は、単位領域内の10個のディンプルを示しており、各ディンプルに示されている「4.40」といった数字は、当該ディンプルの直径をmm単位で示している。特定ディンプルDsが単位領域の境界に位置する場合、当該単位領域外のディンプルも隣接ディンプルDとなる。
【0045】
図5(B)は、複数回にわたって行われるステップS13のうち、ある1回が終わった後の単位領域の一例を示している。同時に、ディンプル間隔の最小間隔(Min)と平均間隔(Ave)と最大間隔(Max)も示されている。そして、図5(C)は、複数回にわたって行われ得るステップS15のうち、ある1回が終わった後の単位領域の一例を示している。図5(B)と比較して、ディンプル間隔の最小間隔、平均間隔、最大間隔のいずれも減少していることがわかる。
【0046】
上記のディンプル配置決定処理の終了後に、ディンプルの直径は0.5〜8mmとなることが好ましく、1.0〜7.0mmとなることがより好ましい。ディンプルの表面占有率(SR)は、70%〜98%以下となることが好ましく、75%〜93%となることがより好ましい。ただし、表面占有率は以下のように求めることとする。
表面占有率(SR)=(ディンプルの平面面積の合計)/(ゴルフボールの球表面積)
【0047】
これまで図2〜図5(C)を参照してディンプル配置を決定する方法の一形態について説明した。図2のステップS1〜S11、S13、S16、S17を行うことにより決定されるディンプルの配置においては、従来に比べてディンプル間隔のばらつきが小さく、より均等にディンプルが配置されている。
【0048】
また、図2のステップS12を行うことにより、ステップS11では解消できないようなディンプルの干渉を解消することができる。
【0049】
さらに、図2のステップS14にてディンプルのサイズを必要に応じて拡大することによっても、ゴルフボール全体に対し、ディンプル間隔が小さく、より密になるようにディンプルを配置することができる。
【0050】
加えて、図2のステップS15を行うことにより、ゴルフボール全体に配置されたディンプルのシンメトリー性をさらに高めることができる。
【0051】
図2のステップS2にて決定される初期配置におけるディンプルの形状は、円形であってもよいし、多角形ディンプルであってもよい。また、ゴルフボール全体に配置されるディンプルは200〜400個であることが好ましく、250〜350個であることがより好ましく、特に好ましくは300〜350個となることが好ましい。
【0052】
図2のステップS14を行うにあたり、互いに隣接している2つのディンプルのディンプル間隔が0.05mm以上であれば1点、0.20mm以上であれば2.5点、0.40mm以上であれば5点というようにスコアを設けることもできる。そして、スコアが5点以上であれば、当該2つのディンプルのサイズを拡大するというように、スコアを利用することができる。
【0053】
前述したディンプル配置決定装置の機能的構成及び物理的構成は、前述の態様に限られるものではなく、例えば、各機能や物理資源を統合して実装したり、逆に、さらに分散して実装したりすることも可能である。
【0054】
[実施例1]
図6(A)は、ステップS2において、3回の回転対称に配置した初期配置を示している。そして、図6(B)〜図6(D)は、図6(A)に示した初期配置に対し、ステップS3以降を行った場合のゴルフボール全体のディンプルの変化の一例を示している。ただし、ステップS12,S14,S15は行っていない。つまり、ディンプルのサイズは変えずにディンプルの位置のみを変更し、図6(D)においてディンプル間隔が均一となるように計算した。
【0055】
[実施例2]
図7(A)は、ステップS2において、3回の回転対称に配置した初期配置を示している。ここで、120度分を設計するにあたり、まず60度分を設計し、このとき設計した60度分の鏡像を残りの60度分とした。そして、図7(B)〜図7(F)は、図7(A)に示した初期配置に対し、ステップS3以降を行った場合のゴルフボール全体のディンプルの変化の一例を示している。ただし、ステップS15は行っていない。
【0056】
図7(A)〜図7(F)に対応して、図8(A)は、ディンプルの移動回数、すなわち図2のステップS13の実行回数と、表面占有率(SR)との関係を示した図である。また、図8(B)は、ディンプルの移動回数と最大間隔及び平均間隔との関係を示した図である。
【0057】
さらに、図7(F)には、ディンプル間隔の最小間隔(Min)が「0.000mm」であり、平均間隔(Ave)が「0.002mm」であり、最大間隔(Max)が「0.005mm」であることも示している。さらに、ディンプルの総数が「338個」であることと、表面占有率(SR)が「90.06%」であることと、ディンプルの直径の平均(AveR)が「4.39」であることとが示されている。
【0058】
[実施例3]
図9は、3回の回転対称に配列した上で、ステップS12,S14,S15も含めて行った後の最終的なディンプル配置を示している。
【0059】
この場合のディンプルの総数Nは318個であり、表面占有率SRは88.99%である。また、ディンプルの直径の平均は4.5mmである。
【0060】
[実施例4]
図10は、3回の回転対称に配列した上で、ステップS12,S14,S15も含めて行った後の最終的なディンプル配置の別の例を示している。
【0061】
この場合のディンプルの総数Nは330個であり、表面占有率SRは89.77%である。また、ディンプルの直径の平均は4.43mmである。
【0062】
[実施例5]
図11は、3回の回転対称に配列した上で、ステップS12,S14,S15も含めていった後の最終的なディンプル配置のさらに別の例を示している。
【0063】
この場合のディンプルの総数Nは334個であり、表面占有率SRは89.97%である。また、ディンプルの直径の平均は4.35mmである。
【符号の説明】
【0064】
1 ゴルフボール
2,3 ディンプル
C1 ゴルフボール1の中心
C2 ディンプル2の中心
C3 ディンプル3の中心
R2 ディンプル2の半径
R3 ディンプル3の半径
ディンプル間距離
ディンプル間隔
5 ディンプル配置決定装置
51 CPU
52 インタフェース装置
53 表示装置
54 入力装置
55 ドライブ装置
56 補助記憶装置
57 メモリ装置
58 バス
59 記録媒体
510 初期配置決定手段
520 単位領域分割手段
530 隣接ディンプル決定手段
540 干渉ディンプル修正手段
550 ディンプル調整手段
560 シンメトリー性評価手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフボールのディンプル配置を決定する方法であって、
ゴルフボールにおけるディンプルの初期配置を決定する初期配置決定ステップと、
前記ゴルフボールの表面を互いに同一の複数の単位領域に分割する単位領域分割ステップと、
前記単位領域のうちの1つにおいて、任意の2つのディンプルが隣接関係にあるかどうかを両ディンプルのディンプル間隔に基づいて定める隣接関係決定ステップと、
隣接関係にある任意の2つのディンプルのディンプル間隔に応じて両ディンプルの位置を変更し、前記初期配置を変更する位置変更ステップと
を含み、前記単位領域において隣接関係にある任意の2つのディンプルのディンプル間隔の最大値である最大間隔が所定の値以下となるまで、前記隣接関係決定ステップと前記位置変更ステップとが繰り返して行われる、方法。
【請求項2】
前記隣接関係決定ステップにて、任意の2つのディンプルのディンプル間隔が、いずれか一方のディンプルの直径または半径にある係数を乗ずることにより得られる特定間隔と等しいかまたは小さい場合に当該2つのディンプルが隣接関係にあると定められる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記半径に乗ずる前記係数が0.2〜1.3である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記位置変更ステップの後に、当該位置変更ステップにて位置が変更された2つのディンプルのサイズを変更するサイズ変更ステップをさらに含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ゴルフボールの中心を通る少なくとも2つの軸を選び、ゴルフボールに配置された各ディンプルの中心から前記軸までの距離と、当該ディンプルの仮想球面面積との積の総和を各軸について求め、ある軸について得られた総和と別の軸について得られた総和との比に基づいて、ゴルフボール全体に配置されたディンプルのシンメトリー性を評価するシンメトリー性評価ステップを前記位置変更ステップの後にさらに含む請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法により決定されたディンプル配置に基づいてディンプルが設けられたゴルフボール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−592(P2013−592A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133056(P2012−133056)
【出願日】平成24年6月12日(2012.6.12)
【出願人】(592014104)ブリヂストンスポーツ株式会社 (652)