説明

ゴルフボール

【課題】付加価値の高いゴルフボールの提供。
【解決手段】ボール2は、ボール表層部に、香り成分を含有するアロマ層16を有する。このアロマ層16は、局所的に設けられている。アロマ層16は、全体的に設けられても良い。好ましい上記香り成分は、テルペン類、エステル化合物、芳香族化合物、エーテル化合物、アルデヒド化合物、アルコール化合物、天然精油、炭化水素、ケトン化合物、ラクトン化合物及び含窒素化合物よりなる群から選択される少なくとも1種である。香料内包マイクロカプセルが用いられても良い。局所的なアロマ層16は、好ましくは、スタンプによって設けられる。アロマ層は、噴霧によって形成されてもよい。香り吸着剤が更に用いられても良い。好ましくは、ゴルフボール2は、パッケージ20に入れられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールに関する。
【背景技術】
【0002】
多くのゴルフボールは白色であるが、白色でないゴルフボールも知られている。
【0003】
一方、香りが付与されたゴルフボールが知られている。特開2008−93117号公報には、塗膜が香料内包マイクロカプセルを含有するゴルフボールが開示されている。このゴルフボールは、香りの持続性に優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−93117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴルフボールに付加された香りは、ゴルファーに良い影響を与えうる。香りは、ゴルファーに、爽快感、清涼感、癒し感等を与えうる。
【0006】
一方、白色でないゴルフボール(以下、カラーゴルフボールともいう)は、識別性又は視認性を向上させる。また、白色でない外観は、ゴルフボールに高級感を付与しうる。
【0007】
ゴルフは、メンタルなスポーツである。ゴルフボールの外観や香りが、ゴルファーのスコアを改善することもありうる。また、ボールの外観及び香りは、商品価値に影響しうる。本発明者は、色又は香りに係る新たな技術思想を想到するに至った。
【0008】
本発明の目的は、付加価値が高いゴルフボールの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の態様のゴルフボールでは、香り成分を有するアロマ層が、ボール表層部に設けられており、このアロマ層が、全体的に設けられている。
【0010】
好ましくは、上記香り成分が、テルペン類、エステル化合物、芳香族化合物、エーテル化合物、アルデヒド化合物、アルコール化合物、ケトン化合物、天然精油、炭化水素、ラクトン化合物及び含窒素化合物よりなる群から選択される少なくとも1種である。
【0011】
好ましくは、上記香り成分を含み且つ溶剤で希釈されていてもよい液体(A)を用いて、上記アロマ層が形成されている。
【0012】
好ましくは、上記溶剤がアルコール化合物である。
【0013】
好ましくは、上記液体(A)における上記香り成分の含有率Raが、10質量%以上100質量%以下である。
【0014】
好ましくは、上記アロマ層が、噴霧によって形成されている。
【0015】
好ましくは、上記噴霧によって塗着した、ボール1個当たりの上記香り成分の塗着量が10mg以上100mg以下である。
【0016】
第二の態様のゴルフボールでは、香り成分を有するアロマ層が、ボール表層部に設けられており、このアロマ層が、局所的に設けられている。
【0017】
好ましくは、上記香り成分が、テルペン類、エステル化合物、芳香族化合物、エーテル化合物、アルデヒド化合物、アルコール化合物、ケトン化合物、天然精油、炭化水素、ラクトン化合物及び含窒素化合物よりなる群から選択される少なくとも1種である。
【0018】
好ましくは、上記香り成分が溶剤で希釈されてなる液体(B)、又は、上記香り成分を内包する香料内包マイクロカプセルを含む組成物(C)を用いて、上記アロマ層が形成されている。好ましくは、上記溶剤がアルコール化合物である。
【0019】
好ましくは、上記液体(B)における上記香り成分の含有率Rbが、5質量%以上30質量%以下である。
【0020】
好ましくは、上記香料内包マイクロカプセルの膜材が、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチン、尿素・ホルマリン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である。
【0021】
好ましくは、上記組成物(C)における上記香料内包マイクロカプセルの含有率Rcが、0.3質量%以上10質量%以下である。
【0022】
好ましくは、刺激により、上記香料内包マイクロカプセルの膜材が変質及び/又は破損されうる。好ましくは、上記刺激が物理的刺激である。また、好ましくは、上記刺激が化学的刺激である。
【0023】
好ましくは、局所的な上記アロマ層がスタンプによって形成されている。
【0024】
好ましくは、局所的な上記アロマ層に加えて、全体的なアロマ層が更に設けられている。
【0025】
好ましくは、上記香り成分を含み且つ溶剤で希釈されていてもよい液体(A)を用いて、上記全体的なアロマ層が形成されている。
【0026】
好ましくは、上記溶剤がアルコール化合物である。
【0027】
好ましくは、上記液体(A)における上記香り成分の含有率Raが、10質量%以上100質量%以下である。
【0028】
好ましくは、上記全体的なアロマ層に含まれる上記香り成分が、テルペン類、エステル化合物、芳香族化合物、エーテル化合物、アルデヒド化合物、アルコール化合物、ケトン化合物、天然精油、炭化水素、ラクトン化合物及び含窒素化合物よりなる群から選択される少なくとも1種である。
【0029】
好ましくは、上記全体的なアロマ層が、噴霧によって形成されている。
【0030】
好ましくは、上記噴霧によって塗着した上記香り成分の塗着量が、ボール1個当たり、10mg以上100mg以下である。
【0031】
上記ゴルフボールは、好ましくは、気密性を有するパッケージに入れられている。
【0032】
上記アロマ層及び/又は上記パッケージが、香り吸着剤を更に含んでいてもよい。好ましい上記香り吸着剤は、多孔体である。
【0033】
好ましくは、上記香り成分の香りとボールの色とが関連付けられている。
【0034】
好ましくは、上記ゴルフボールは、白色以外に着色されている。
【発明の効果】
【0035】
本発明のゴルフボールは、芳香性又は香り保持性に優れる。このゴルフボールは、高い付加価値を有しうる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係るボール入りパッケージの側面図である。
【図3】図3は、本発明に用いられうるパッケージの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0038】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール2が示された一部切り欠き断面図である。このゴルフボール2は、球状のコア4と、このコア4の外側に位置する中間層6と、この中間層6の外側に位置するカバー8とを備えている。カバー8の表面には、多数のディンプル10が形成されている。ゴルフボール2の表面のうちディンプル10以外の部分は、ランド12である。このゴルフボール2は、カバー8の外側にペイント層14を備えている。このペイント層14は、図1の拡大部のみに示されている。ゴルフボール2が、コア4と中間層6との間に他の層を備えてもよい。ゴルフボール2が、中間層6とカバー8との間に他の層を備えてもよい。なお本発明では、ボール2の内部構造は限定されない。ゴルフボール2は、ワンピースゴルフボールであってもよいし、ツーピースゴルフボールであってもよいし、スリーピースゴルフボールであってもよいし、4ピース以上のマルチピースゴルフボールであってもよい。
【0039】
このゴルフボール2の直径は、40mmから45mmである。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下が好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。このゴルフボール2の質量は、40g以上50g以下である。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上が好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が好ましい。
【0040】
コア4は、ゴム組成物が架橋されることによって形成されている。ゴム組成物の基材ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。2種以上のゴムが併用されてもよい。反発性能の観点からポリブタジエンが好ましく、特にハイシスポリブタジエンが好ましい。
【0041】
コア4の架橋には、共架橋剤が好適に用いられる。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムである。ゴム組成物には、共架橋剤と共に有機過酸化物が配合されるのが好ましい。好適な有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン及びジ−t−ブチルパーオキサイドが挙げられる。
【0042】
コア4のゴム組成物には、充填剤、硫黄、加硫促進剤、硫黄化合物、老化防止剤、着色剤、可塑剤、分散剤等の各種添加剤が、必要に応じて適量配合される。ゴム組成物に、架橋ゴム粉末又は合成樹脂粉末が配合されてもよい。
【0043】
コア4の直径は30.0mm以上、特には38.0mm以上である。コア4の直径は42.0mm以下、特には41.5mm以下である。コア4が2以上の層から構成されてもよいコア4が、その表面にリブを備えてもよい。コア4が空中であってもよい。。好ましくは、コア4は、ゴム組成物が架橋されることで得られる。好ましい基材ゴムとして、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体及び天然ゴムが例示される。反発性能の観点から、ポリブタジエンが好ましい。ポリブタジエンと他のゴムとが併用される場合は、ポリブタジエンが主成分とされることが好ましい。基材ゴム全量に対するポリブタジエンの量の比率は50質量%以上が好ましく、80質量%以上が特に好ましい。ポリブタジエンにおけるシス−1,4結合の比率は40%以上が好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0044】
コア4のゴム組成物は、共架橋剤を含む。共架橋剤により、コア4の高反発が達成される。反発性能の観点から好ましい共架橋剤は、炭素数が2から8であるα,β−不飽和カルボン酸の、1価又は2価の金属塩である。好ましい共架橋剤の具体例としては、アクリル酸亜鉛、アクリル酸マグネシウム、メタクリル酸亜鉛及びメタクリル酸マグネシウムが挙げられる。反発性能の観点から、アクリル酸亜鉛及びメタクリル酸亜鉛が特に好ましい。
【0045】
なお、本発明では、コア4の材質は限定されない。
【0046】
中間層6には、樹脂組成物が好適に用いられる。この樹脂組成物の基材ポリマーとしては、アイオノマー樹脂、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー及び熱可塑性ポリオレフィンエラストマーが例示される。
【0047】
好ましいアイオノマーとして、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい他のアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。この二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。この二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。
【0048】
アイオノマー樹脂と他の樹脂とが併用されてもよい。併用されうるポリマーとしては、二元共重合体であるアイオノマー樹脂、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー及び熱可塑性ポリオレフィンエラストマーが例示される。
【0049】
アイオノマー樹脂と併用されうる好ましい樹脂は、スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーである。このエラストマーは、ゴルフボール2の打球感に寄与しうる。このエラストマーは、ゴルフボール2の反発性能を阻害しない。このエラストマーは、ハードセグメントとしてのポリスチレンブロックと、ソフトセグメントとを備えている。スチレンブロック含有熱可塑性エラストマーには、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、SBSの水添物、SISの水添物及びSIBSの水添物が含まれる。SBSの水添物としては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)が挙げられる。SISの水添物としては、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が挙げられる。SIBSの水添物としては、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)が挙げられる。
【0050】
アイオノマー樹脂に代えて、中間層6に他のポリマーが用いられてもよい。他のポリマーとしては、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル及びポリオレフィンが例示される。2種以上のポリマーが併用されてもよい。
【0051】
なお、本発明では、中間層6の材質は限定されない。中間層6を有さないゴルフボール2であってもよい。
【0052】
中間層6の厚みは0.3mm以上、更には、0.5mm以上とされうる。中間層6の厚みは1.5mm以下、更には1.2mm以下、更には1.0mm以下とされうる。
【0053】
カバー8の材質は、例えば、アイオノマー樹脂である。好ましいアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸との二元共重合体が挙げられる。好ましい他のアイオノマー樹脂としては、α−オレフィンと炭素数が3以上8以下のα,β−不飽和カルボン酸と炭素数が2以上22以下のα,β−不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体が挙げられる。この二元共重合体及び三元共重合体において、好ましいα−オレフィンはエチレン及びプロピレンであり、好ましいα,β−不飽和カルボン酸はアクリル酸及びメタクリル酸である。この二元共重合体及び三元共重合体において、カルボキシル基の一部は金属イオンで中和されている。中和のための金属イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、亜鉛イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン及びネオジムイオンが例示される。
【0054】
アイオノマー樹脂に代えて、カバー8に他のポリマーが用いられてもよい。他のポリマーとしては、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル及びポリオレフィンが例示される。スピン性能及び耐擦傷性能の観点からは、ポリウレタンが好ましい。2種以上のポリマーが併用されてもよい。
【0055】
カバー8には、必要に応じ、二酸化チタンのような着色剤、硫酸バリウムのような充填剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光剤、蛍光増白剤等が適量配合される。比重調整の目的で、カバー8にタングステン、モリブデン等の高比重金属の粉末が配合されてもよい。
【0056】
カバー8の厚みは0.2mm以上、特には0.3mm以上である。カバー8の厚みは2.5mm以下、特には2.2mm以下である。カバー8の比重は0.90以上、特には0.95以上である。カバー8の比重は1.10以下、特には1.05以下である。カバー8が2以上の層から構成されてもよい。
【0057】
ペイント層14の樹脂成分は限定されない。この樹脂成分として、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル系樹脂及びセルロース系樹脂が挙げられる。ウレタン樹脂として、2液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。2液硬化型ウレタン樹脂が用いられた場合、耐摩耗性及び耐久性に優れたペイント層14が得られうる。
【0058】
2液硬化型ウレタン樹脂は、主剤と硬化剤との反応によって硬化したウレタン樹脂である。この2液硬化型ウレタン樹脂として、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有する主剤を、活性水素を有する硬化剤で硬化させた樹脂が挙げられる。この2液硬化型ウレタン樹脂の他の例として、ポリオール成分を含有する主剤をポリイソシアネート及びその誘導体で硬化させた樹脂が挙げられる。
【0059】
ペイント層14及び/又はカバー8が、光輝性粒子(複合粒子)を含んでいても良い。光輝性粒子により、外観性及び視認性が向上しうる。
【0060】
好ましい光輝性粒子の粒度は、5μm以上100μm以下である。「粒度が5μm以上100μm以下」とは、粒子の総体積のうちの80%以上の粒子が5μmから100μmの範囲にあることを意味する。より好ましい粒度は、5μm以上80μm以下である。更に好ましい粒度は、5μm以上60μm以下である。粒度が過大である場合、カバー8においてウエルドラインが目立つことがある。また粒度が過大である場合、ペイント層14の塗装において、スプレーガンなどの塗装ラインに詰まりが生じることがある。
【0061】
上記粒度は、例えば、Marvern社製マスターサイザーを用いてレーザー回折法により測定されうる。
【0062】
光輝性粒子として、例えば、コア層を一層以上の光反射性物質で被覆したものが挙げられる。コア層として、雲母、パールフレーク、ガラスフレーク、金属及び金属酸化物が例示される。光反射性物質として、金属、金属酸化物及び金属窒化物が例示される。上記コア層の金属として、例えば、アルミニウム、クロム、コバルト、金、銀、ニッケル及び鉄よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。上記コア層及び上記光反射性物質に用いられうる金属酸化物として、例えば、二酸化チタン及び酸化鉄が挙げられる。
【0063】
好ましい光輝性粒子として、例えば、雲母をコア層とし、その周囲が、光反射性物質で被覆されたものが好ましい。雲母をコア層とし、その周囲が、酸化チタン又は酸化鉄からなる光反射性物質で被覆されたものがより好ましい。
【0064】
光輝性粒子の具体例としては、例えば、雲母をコア層とし、その周囲が酸化チタンまたは酸化鉄からなる金属酸化物で被覆されたもの(メルク社製の商品名「イリオジン」)、ガラスフレークからなるコア層を有し、その周囲が二酸化チタン、酸化鉄などの金属酸化物、もしくは、金、銀又はニッケルなどの金属で被覆されたもの(日本板硝子社製の商品名「メタシャイン」)、アルミニウムまたは酸化鉄からなるコア層を有し、その周囲が二酸化ケイ素又は酸化鉄からなる金属酸化物で被覆されたもの(BASF社製の商品名「バリオクロム」)などが挙げられる。
【0065】
光輝性粒子として、光発色性積層体が用いられても良い。この光発色性積層体は、屈折率の異なるポリマー層が積層されてなる。好ましい光発色性積層体は、屈折率の異なる2種類のポリマー層を交互に積層してなる。
【0066】
光発色性積層体は、以下のようなメカニズムによって優れた光輝性を発現しているものと考えられる。すなわち、光発色性積層体に外部から進入した入射光は、積層体の表面や多層構造の界面で反射し、これらの反射光が干渉する。屈折率の異なるポリマーが積層されているので、反射光の角度、ポリマー層の膜厚、および、積層数などに応じて、特定色の反射光が強められて、見る角度によって微妙に見え方が異なる金属光沢が得られる。光発色性積層体の具体例として、例えば、帝人ファイバー(株)製の商品名「モルフォトーン」が挙げられる。
【0067】
[アロマ層]
ゴルフボール2は、アロマ層16を有する。図1において、アロマ層16が塗られた領域が、ハッチングで示されている。アロマ層16は、香り成分(香料)を含有する。
【0068】
なお、図1の全体図(拡大部でない部分)においては、アロマ層16の厚さが、実際よりも厚く示されている。
【0069】
アロマ層16は、ボールの表層部に設けられる。図1の拡大部が示すように、アロマ層16は、ペイント層14の外側に位置している。アロマ層16は、最外層である。最外層のアロマ層16は、香りを放出しやすい。
【0070】
ボール表層部とはボール本体よりも外側の部分を意味し、カバーを有するゴルフボールにおいてはカバーよりも外側の部分を意味する。
【0071】
アロマ層16は、最外層でなくてもよい。最外層でない場合であっても、香り成分の放出が可能な場合がある。例えばアロマ層16が薄い塗膜で覆われた場合、この薄い塗膜を透過して香り成分が外部の放出される場合がある。香り成分の放出性の観点から、アロマ層16は、ペイント層14の外側であるのが好ましい。
【0072】
[局所的なアロマ層]
本実施形態では、アロマ層16は、局所的に設けられている。本願において「局所的」とは、ボール表面の全体ではなく、ボール表面の一部であることを意味する。図1の実施形態では、4箇所のアロマ層16が設けられている。アロマ層16は、1箇所又は2箇所以上設けられる。アロマ層16の配置は限定されない。局所的なアロマ層16では、アロマ層16の塗布が容易とされうる。
【0073】
[全体的なアロマ層]
なお、アロマ層16は、非局所的であってもよい。即ちアロマ層16は、全体的であってもよい。アロマ層16が、ボールの全体を覆っていていてもよい。
【0074】
アロマ層16は、着色されていなくてもよいし、着色されていてもよい。透明なアロマ層16は、目立たない。ボールの外観等の観点から、アロマ層16は目立たないほうが好ましい場合がある。例えば、多数の箇所にアロマ層16を設ける場合、目立たないほうが好ましい場合がある。このような場合、透明なアロマ層16が好適に用いられ得る。一方、着色されたアロマ層16が好ましい場合もある。着色されたアロマ層16は、いわゆるマーク層の役割を果たすこともできる。この場合、アロマ層16により、メーカー名、ブランド、ボール番号等が表示される。
【0075】
[アロマ層の組成]
アロマ層は、香り成分を含む。アロマ層は、香り成分のみであってもよい。アロマ層は、香り成分と溶剤のみであってもよい。アロマ層は、溶剤の揮発により、香り成分のみとなっていてもよい。
【0076】
アロマ層は、樹脂成分を含んでいてもよい。樹脂成分を含むアロマ層の組成は、例えば、以下の通りとされうる。
(組成1)ゴルフボールのペイント層の組成に、香り成分が加えられた組成。
(組成2)ゴルフボールのマーク層の組成に、香り成分が加えられた組成。
(組成3)上記(組成1)又は(組成2)において、香り成分が放出抑制体(マイクロカプセル等)に内包されている組成。
(組成4)上記(組成1)、(組成2)又は(組成3)に、上記光輝性粒子が加えられた組成。
(組成5)上記(組成2)から、顔料が除かれた組成。
【0077】
なお、図1の実施形態では、上記(組成5)が採用されている。
【0078】
上記(組成1)において、ゴルフボールのペイント層の組成としては、あらゆる公知の組成を用いることができ、例えば、上記ペイント層14に関して前述されたいかなる組成も採用可能である。このペイント層は、塗料の塗布によって形成される。ペイント層の塗布方法として、静電塗装、スプレーガン塗装、刷毛塗り等が、採用されうる。塗料の基材樹脂としては、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、セルロース樹脂等が例示される。ペイント層の耐久性の観点からは、二液硬化型ポリウレタンが好ましい。
【0079】
二液硬化型ポリウレタンは、主剤と硬化剤との反応によって得られる。ポリオール成分を含有する主剤とポリイソシアネート(ポリイソシアネート誘導体を含む)を含有する硬化剤との反応によって得られる二液硬化型ポリウレタンが好ましい。
【0080】
主剤のポリオール成分としてウレタンポリオールが用いられることが、好ましい。ウレタンポリオールは、ウレタン結合と、少なくとも2以上のヒドロキシル基を有する。好ましくは、ウレタンポリオールは、その末端にヒドロキシル基を有する。ウレタンポリオールは、ポリオール成分のヒドロキシル基がポリイソシアネートのイソシアネート基に対してモル比で過剰になるような割合で、ポリオールとポリイソシアネートとが反応させられることによって得られうる。
【0081】
ウレタンポリオールの製造に使用されるポリオールは、複数のヒドロキシル基を有する。重量平均分子量が50以上2000以下、特には100以上1000以下のポリオールが好ましい。低分子量のポリオールとして、ジオール及びトリオールが挙げられる。ジオールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。トリオールの具体例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン及びヘキサントリオールが挙げられる。高分子量のポリオールとして、ポリオキシエチレングリコール(PEG)、ポリオキシプロピレングリコール(PPG)及びポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG)のようなポリエーテルポリオール;ポリエチレンアジぺート(PEA)、ポリブチレンアジペート(PBA)及びポリヘキサメチレンアジペート(PHMA)のような縮合系ポリエステルポリオール;ポリ−ε−カプロラクトン(PCL)のようなラクトン系ポリエステルポリオール;ポリヘキサメチレンカーボネートのようなポリカーボネートポリオール;並びにアクリルポリオールが挙げられる。2種以上のポリオールが併用されてもよい。
【0082】
ウレタンポリオールの製造に使用されるポリイソシアネートは、複数のイソシアネート基を有する。ポリイソシアネートの具体例としては、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネートと2,6−トルエンジイソシアネートの混合物(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフチレンジイソシアネート(NDI)、3,3’−ビトリレン−4,4’−ジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)及びパラフェニレンジイソシアネート(PPDI)のような芳香族ポリイソシアネート;4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、水素添加キシリレンジイソシアネート(HXDI)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)のような脂環式ポリイソシアネート;並びにヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のような脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。2以上のポリイソシアネートが併用されてもよい。耐候性の観点から、TMXDI、XDI、HDI、HXDI、IPDI及びH12MDIが好ましい。
【0083】
ウレタンポリオール生成のためのポリオールとポリイソシアネートとの反応では、既知の触媒が用いられうる。典型的な触媒は、ジブチル錫ジラウリレートである。
【0084】
ウレタンポリオールに含まれるウレタン結合の比率は、0.1mmol/g以上5mmol/g以下が好ましい。この比率が0.1mmol/g以上であるウレタンポリオールにより、ペイント層の耐擦傷性が達成されうる。この比率が5mmol/g以下であるウレタンポリオールにより、ペイント層のカバー8への追従性が達成されうる。追従性に優れたペイント層では、ゴルフボール2が繰り返し打撃されたときのクラックが生じにくい。原料となるポリオールの分子量の調整により、ウレタン結合の比率が上記範囲に設定されうる。ポリオールとポリイソシアネートとの配合比率の調整によっても、ウレタン結合の比率が上記範囲に設定されうる。
【0085】
主剤と硬化剤との反応に要する時間が短いとの観点から、ウレタンポリオールの重量平均分子量は4000以上が好ましく、4500以上がより好ましい。ペイント層のカバー8との密着性の観点から、重量平均分子量は10000以下が好ましく、9000以下がより好ましい。
【0086】
上記(組成2)又は(組成5)において、ゴルフボールのマーク層の組成としては、あらゆる公知の組成が用いられ得る。マーク層は、例えば、インク組成物からなる。このインク組成物は、基材樹脂と顔料とを含む。基材樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール及びニトロセルロースが例示される。
【0087】
前述したように、アロマ層は、透明であってもよい。透明なアロマ層を得るための組成は、例えば、上記(組成5)である。
【0088】
[香り成分(香料)]
香り成分は限定されない。好ましい香り成分として、テルペン類、エステル化合物、芳香族化合物、エーテル化合物、アルデヒド化合物、アルコール化合物、ケトン化合物、天然精油、炭化水素、ラクトン化合物及び含窒素化合物よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの2種以上の混合物であってもよい。
【0089】
香り成分は、例えば、爽快感や清涼感を与えうる。爽快感や清涼感を与えうる香りとして、ミント(ペパーミント)の香り及びスパイス(ハーブ)の香りが例示される。これらの香りは、プレイヤーの気分を転換させたり、集中力を高めたりといった効果を有しうる。爽快感や清涼感を与える香り成分として、例えば、リモネン(テルペン類:柑橘系果物の香り)、メントール(アルコール化合物:ミントの香り)、メントン(ケトン化合物:ミントの香り)、テルピネオール(アルコール化合物:ライムの香り)、シトラール(アルデヒド化合物:レモンの香り)、カンフル(ケトン化合物:ミントの香り)、アネトール(エーテル化合物:フェンネル等の香り)、エストラゴール(エーテル化合物:エストラゴンの香り)、1,8−シオネール(エーテル化合物:ユーカリやセージ、ローレルの香り)、オイゲノール(アルコール化合物:クローブやピメント等の香り)、クミンアルデヒド(アルデヒド化合物:クミンの香り)、シンナミルアルデヒド(アルデヒド化合物:シナモンの香り)、ペパーミントの香りを有する天然精油、などが挙げられる。
【0090】
また、香り成分は、例えば、癒し感を与えうる。癒し感を与える香り成分として、果物の香り及び花の香りが例示される。これらの香りは、気持ちが高ぶっているときや焦っているときなどに、気持ちを落ち着かせる効果を奏しうる。癒し感を与える香り成分として、例えば、キュウリアルコール(アルコール化合物:メロンやスイカの香り)、アルデヒドC−8(アルデヒド化合物:オレンジの香り)、キュウリアルデヒド(アルデヒド化合物:メロンやスイカの香り)、バニリン(アルデヒド化合物:バニラの香り)、ヌートカトン(ケトン化合物:グレープフルーツの香り)、ラズベリーケトン(ケトン化合物:ラズベリーの香り)、カプリン酸エチル(エステル化合物:ラム酒やブランデーの香り)、カプロン酸アリル(エステル化合物:パイナップルの香り)、酢酸イソアミル(エステル化合物:バナナの香り)、酢酸エチル(エステル化合物:メロンやぶどうの香り)、酢酸スチラリル(エステル化合物:グレープフルーツの香り)、酢酸ヘキシル(エステル化合物:リンゴや洋ナシの香り)、酪酸エチル(エステル化合物:パイナップルの香り)、ココナッツアルデヒド(ラクトン化合物:ココナッツの香り)、ピーチアルデヒド(ラクトン化合物:桃の香り)、アントラニル酸メチル(含窒素化合物:ぶどうの香り)、ローズオキシド(エーテル化合物:バラの香り)、ゲラニオール(アルコール化合物:ゼラニウムの香り)、リナロール(アルコール化合物:ラベンダーの香り)、β−フェネチルアルコール(アルコール化合物:バラの香り)、シクラメンアルデヒド(アルデヒド化合物:スズランの香り)、α−イオノン(ケトン化合物:スミレの香り)、シス−ジャスモン(ケトン化合物:ジャスミンの香り)、酢酸ベンジル(エステル化合物:ジャスミンの香り)、フラネオール(アルコール化合物:いちごの香り)などが挙げられる。
【0091】
[刺激による香り成分の放出]
上記アロマ層16は、刺激により上記香り成分を放出しうる。刺激は、香り成分の放出が可能となるような変化を与える。刺激は、例えば、香り成分の放出を抑制している物質を変質及び/又は破損させ、香り成分の放出を可能とする。本願において、香り成分の放出を抑制している物質が、放出抑制体とも称される。
【0092】
放出抑制体は、刺激を受けるまで、香り成分の放出を抑制する。この抑制により、ボールが使用されるまでの間における香り成分の拡散が抑制される。よって、ボールが使用される際に、多くの香り成分が放出される。
【0093】
[刺激]
刺激は限定されない。刺激として、物理的刺激及び化学的刺激が例示される。物理的刺激として、力(外力)が例示される。この力として、押圧力、衝撃力及び摩擦力が例示される。化学的刺激として、紫外線等の光線及び熱が例示される。
【0094】
刺激としての紫外線は、例えば、太陽光や人工的な光(蛍光灯等の光)に含まれる。例えば、ボールに太陽光に暴露されることにより、紫外線がボール表面に照射される。よって、ゴルフ場でプレーに供されたボールには、紫外線が照射される。この紫外線が、上記放出抑制体を変質させうる。この紫外線が、香り成分の放出を促進しうる。
【0095】
刺激としての摩擦力は、例えば、指でボール表面をこすることによって生じる。この摩擦により、上記放出抑制体が破損されうる。この摩擦は、香り成分の放出を促進しうる。
【0096】
刺激としての熱は、例えば、人体から発せられる。ボールが手で触れられると、手の熱がボールに伝達される。この熱により、上記放出抑制体が変質及び/又は破損されうる。刺激としての熱の他の例は、赤外線である。赤外線は、太陽光等に含まれる。
【0097】
刺激としての衝撃力は、例えば、ゴルフクラブによる打撃によって生じる。打撃によって、上記放出抑制体が破損されうる。
【0098】
[マイクロカプセル]
刺激によって変質及び/又は破損されるものとして、マイクロカプセルが例示される。このマイクロカプセルは、上記放出抑制体の一例である。このマイクロカプセルは、香り成分を内包する。
【0099】
このマイクロカプセルの材質(膜材)は限定されず、例えば、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチン、尿素・ホルマリン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である。刺激による破損と香り成分保持性とのバランスの観点から、メラミン樹脂が好ましい。
【0100】
香り成分の放出を抑制する観点から、マイクロカプセルの材質は、融点が110℃以上の樹脂であるのが好ましく、より好ましくは融点が120℃以上の樹脂であり、更に好ましくは融点が130℃以上の樹脂である。この場合、夏場のトランク内にゴルフボールを放置した場合にも、マイクロカプセルが溶融せず、香り成分の放出が抑制されうる。
【0101】
マイクロカプセルの材質の融点は、例えば、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製示差走査熱量計2910型を用いて測定することができる。
【0102】
アロマ層中における香料内包マイクロカプセルの含有量は、塗膜を構成する樹脂固形成分100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは0.6質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であって、好ましくは20質量部以下、より好ましくは18質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。前記香料内包マイクロカプセルの含有量が、0.5質量部未満である場合、香料の有効成分が不足して、長期に亘って香りを持続することができないことがある。一方、香料内包マイクロカプセルの含有量が20質量部を超える場合、塗膜が脆くなってゴルフボール本体への密着性が低下する場合がある。
【0103】
前記香料内包マイクロカプセルの数平均粒子径は、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、10μm以下がさらに好ましい。数平均粒子径が30μmを超える場合、塗装用のスプレーガンが詰まる場合がある。
【0104】
なお、上記数平均粒子径は、株式会社堀場製作所製光散乱式粒子計数器LA−910を用いて測定することができる。
【0105】
上記マイクロカプセルの具体例として、例えば、ケミテック株式会社製のカプセルコロンパウダーが例示される。
【0106】
香り成分がマイクロカプセルに内包されている場合、香り成分の放出が抑制される。また、使用時には、刺激により、マイクロカプセルが変質及び/又は破損されうる。本発明のゴルフボールでは、長期に亘って香りが持続しうる。
【0107】
[パッケージ]
このましくは、本発明に係るゴルフボール2は、パッケージに入れられる。このパッケージは、出荷から使用までの間における香り成分の拡散を抑制する。パッケージは、香りの持続性を向上させうる。
【0108】
パッケージは、上記刺激を防止又は抑制しうるものが好ましい。この場合、ボールがパッケージから取り出されるまで、刺激が防止又は抑制されるので、香りの持続性が向上しうる。例えば上記刺激が紫外線の場合、紫外線を実質的に透過させないパッケージであるのが好ましい。「紫外線を実質的に透過させない」とは、365nmの光の透過率が1%未満であることを意味する。この紫外線透過率は、島津製作所社製の分光光度計MPC−3100により測定されうる。
【0109】
パッケージに、上記香り成分が内包されていてもよい。この場合、パッケージからボールが取り出されるまでの間において、パッケージ内に、香り成分とボールとが共存することとなる。よって、パッケージからボールが取り出されるまでの間に、香り成分がボール表面に吸着されやすい。
【0110】
パッケージは、気密性を有するのが好ましい。この気密性は、香り成分の洩れを抑制する。この気密性は、ボール表面への香り成分の吸着量を増加させうる。この気密性は、香り成分の持続性を高めうる。
【0111】
パッケージ20を構成するシートの構造は、複数層であるのが好ましい。この複数層は、例えば、樹脂層と金属層と着色層とを含む。好ましい樹脂層は、ポリエチレン層である。好ましいシート構造の一例は、ポリエチレン層と、金属層と、着色層とを含む。着色層は最外層とされる。このましい着色層は、上記香り成分の香りと関連付けられた色を含む。金属層は、紫外線等の光線の侵入を効果的に抑制しうる。金属層の金属は、例えば、アルミ系金属(アルミニウム又はアルミニウム合金)である。金属層は、箔であってもよいし、蒸着により形成されていてもよい。ポリエチレン層は、気密性に優れる。ポリエチレン層は、香り成分の洩れを効果的に抑制する。香り成分の保持の観点から、特に好ましいシート構造は、内側から順に、ポリエチレン系樹脂層、ポリエチレンテレフタレート系樹脂層、アルミ系金属層の3層構造を有する。
【0112】
図2は、本発明に用いられ得るパッケージ20にゴルフボール2が入れられているゴルフボール梱包体P1を示す図である。図3は、パッケージ20の斜視図である。
【0113】
図2が示すように、ゴルフボール梱包体P1は、パッケージ20とゴルフボール2とを有する。本実施形態では、複数(3個)のゴルフボール2がパッケージ20に入れられている。ゴルフボール梱包体P1において、ゴルフボール2の個数は限定されない。
【0114】
図示しないが、パッケージ20の表面には、メーカー名、ブランド名等が表示されている。また、パッケージ20の表面の少なくとも一部は、上記香り成分の香りと関連付けられた色とされている。
【0115】
図3が示すように、パッケージ20は、開口部22と、本体部24と、底部シート26とを有する。開口部22を除き、パッケージ20の周囲部は密封されている。
【0116】
開口部22は、開閉可能である。開閉機構は、いわゆるジッパーである。このジッパーは、メスジッパー爪とオスジッパー爪とを有している。図示しないが、メスジッパー爪は、互いに平行に配置された2本の凸部である。この2本の凸部のそれぞれは、直線状である。オスジッパー爪は、1本の凸部である。この1本の凸部は、直線状である。2本のメスジッパー爪の間に、一本のオスジッパー爪が嵌め込まれる。この嵌め込みは、例えば、指による圧縮によって達成される。メスジッパー爪とオスジッパー爪とがかみ合うことにより、開口部22は閉じられる。開口部22が閉じられることにより、密封が達成される。この密封により、香り成分の洩れが抑制される。パッケージ20は、気密性を有する。
【0117】
メスジッパー爪とオスジッパー爪とのかみ合いを解除することにより、開口部22が開けられる。ゴルフボール2を取り出す際に、開口部22が開けられる。
【0118】
底部シート26は、マチである。底部シート26により、パッケージ20の内部容積が拡張されている。この内部容積の拡張により、ゴルフボール2が容易に収容されうる。また、底部シート26により、パッケージ20は、その上部の断面積に比較してその下部の断面積が広い形態を採りうる。この形態により、パッケージ20は、自立しうる(図3参照)。
【0119】
図3が示すように、ゴルフボール2が入れられた状態では、底部シート26が広がり、パッケージ20は安定的に自立する。ゴルフボール梱包体P1は、自立した状態で、店頭に並べられうる。また底部シート26は、折りたたまれうる。底部シート26が折りたたまれた場合、パッケージ20は、全体として、シート状とされうる。ゴルフボール2が取り出された後のパッケージ20は、小さく折りたたまれうる。
【0120】
パッケージ20の内部には、ゴルフボール2と共に、空間k1が存在する(図2参照)。この空間k1には、香り成分が存在する。パッケージ20に、香り成分が封入されている。空間k1に存在する香り成分は、ゴルフボール2の表面に吸着されうる。好ましくは、空間k1に存在する香り成分と、ゴルフボール2が有する香り成分とは同一である。
【0121】
[香り吸着剤]
本発明のゴルフボールは、香り吸着剤を有していても良い。香り吸着剤は、上記香り成分を吸着しうる限り、限定されない。好ましいゴルフボールは、香り吸着剤と、この香り吸着剤に吸着された香り成分とを有する。香り吸着剤に吸着された香り成分は、徐々に放出されうる。香り吸着剤は、香りの持続性に寄与しうる。香り吸着剤は、上記アロマ層に含まれていても良い。この場合、上記アロマ層が、後述されるアロマ保持層を兼ねることとなる。
【0122】
パッケージ内に香り吸着剤を存在させてもよい。例えば、パッケージが、香り吸着剤を有していてもよい。パッケージの内面に、香り吸着剤を付着させてもよい。また、パッケージに付着していない香り吸着剤が、ボールと共に、パッケージに入れられても良い。例えば、通気性のある袋に香り吸着剤を入れ、この袋をパッケージに入れておいても良い。パッケージ内の香り吸着剤に吸着された香り成分は、持続性が高い。また、パッケージ内の香り吸着剤に吸着された香り成分は、ボールに移行しうる。パッケージ内の香り吸着剤は、ボールの香りの持続性に寄与しうる。
【0123】
吸着の態様は限定されない。吸着は、ファンデルワールス力による物理吸着であってもよいし、化学吸着であってもよい。香り成分の放出の観点から、好ましくは、物理吸着である。
【0124】
好ましい香り吸着剤は、多孔体である。多孔体は、その体積に対して、その表面積が広い。多孔体は、香り成分の吸着性に優れる。
【0125】
上記多孔体として、活性炭、活性炭素繊維、活性アルミナ、ケイソウ土、カオリン、珪酸カルシウム、活性白土、シリカゲル、天然ゼオライト、合成ゼオライト、バーミキュライト、メソポーラスシリカ、セピオライト、パリゴルスカイト、フェルト等が例示される。
【0126】
また、香り吸着剤は、シリカ、アルミナ等の極性吸着剤であってもよいし、活性炭などの非極性吸着剤であってもよい。極性吸着剤は、極性の香り成分を吸着する。非極性吸着剤は、非極性の香り成分を吸着する。
【0127】
市販されている合成吸着剤も、香り吸着剤として用いられうる。この合成吸着剤として、スチレン−ジビニルベンゼン、修飾スチレン−ジビニルベンゼン又はメタクリル酸メチルを母体とするものが例示される。
【0128】
香り吸着剤への香り成分の吸着は、ボールの製造工程においてなされてもよい。また、パッケージ20の内部において、香り成分を香り吸着剤に吸着させてもよい。この場合、香り吸着剤を有するゴルフボール2をパッケージ20に入れると共に、パッケージ20の内部の空間k1に香り成分を存在させる。パッケージ20に入れられている間に、香り成分が香り吸着剤に吸着される。
【0129】
パッケージが、香り吸着剤を有していても良い。好ましくは、香り吸着剤は、パッケージの内側に配置される。好ましくは、香り吸着剤は、パッケージの内側に露出している。この香り吸着剤により、パッケージ内の香りの外部への漏れが抑制される。この香り吸着剤は、香りの保持に寄与しうる。ボール及びパッケージの両方が、香り吸着剤を有していても良い。
【0130】
ゴルフボール2の出荷時において、ゴルフボール梱包体P1が製造される。このゴルフボール梱包体P1の製造において、ゴルフボール2とともに、香り成分をパッケージ20の内部に入れ、パッケージ20を密封することが可能である。香り成分は、例えばスプレー等の手段によって、パッケージ20の内部に入れられる。ゴルフボール梱包体P1が消費者(ゴルファー)によって開封されるまでの間に、香り吸着剤に香り成分が吸着されうる。
【0131】
香り成分を含む液体をボールに噴霧することにより、香り吸着剤に香り成分が吸着されてもよい。香り成分を含む液体にボールを浸漬することにより、香り吸着剤に香り成分が吸着されてもよい。香り成分を含む液体は、例えば、溶剤と香り成分とを含む。好ましい溶剤は、有機溶剤であり、より好ましくはアルコールであり、更に好ましくはエタノールである。
【0132】
[アロマ保持層]
アロマ保持層は、香り吸着剤を含む層である。アロマ保持層は、上記アロマ層とは別に設けられても良い。また、アロマ保持層がアロマ層を兼ねていても良い。上記アロマ層に香り吸着剤が配合された場合、アロマ保持層がアロマ層を兼ねることとなる。
【0133】
アロマ保持層は、香り吸着剤に吸着されている香り成分が外部に放出されるように、設けられる。香り成分の放出の観点からは、アロマ保持層は、最外層であるのが好ましい。ただし、アロマ保持層は、最外層には限定されない。最外層でないアロマ保持層は、香りの持続性に寄与する場合がある。
【0134】
アロマ保持層は、外気に含まれる香りを吸着しうるように設けられるのが好ましい。この場合、前述の通り、パッケージ20の内部において香り成分を吸着させることが可能である。
【0135】
上記アロマ保持層は、局所的に設けられているのが好ましい。局所的なアロマ保持層は、ボール全体のアロマ保持層と比較して、塗布等の手間が容易とされうる。好ましくは、局所的なアロマ保持層は、スタンプによってボール表面に付与される。スタンプの方法として、パッド印刷及び刻印式印刷が例示される。局所的なアロマ保持層の他の付与方法として、インクジェット式印刷、転写フィルム式印刷、刷毛塗り等が、採用されうる。生産性の観点から、パッド印刷が好ましい。
【0136】
好ましくは、局所的なアロマ保持層は、ペイント層の硬化及び乾燥が完了した後に、付与される。硬化乾燥後のボールは取り扱いが容易である。硬化乾燥後のボールに局所的なアロマ保持層を付加することは、生産性の向上に寄与しうる。
【0137】
なお、アロマ保持層は、非局所的であってもよい。即ちアロマ保持層は、ボールの表層部の全体であってもよい。
【0138】
[アロマ保持層の組成]
アロマ保持層の組成は、好ましくは、樹脂成分と香り吸着剤とを含む。アロマ保持層の組成は、例えば、以下の通りとされうる。
(組成a)ゴルフボールのペイント層の組成に、上記香り吸着剤が加えられた組成。
(組成b)ゴルフボールのマーク層の組成に、上記香り吸着剤が加えられた組成。
(組成c)上記(組成a)又は(組成b)に、上記光輝性粒子が加えられた組成。
(組成d)上記(組成b)から、顔料が除かれた組成。
【0139】
上記(組成a)において、ゴルフボールのペイント層の組成としては、あらゆる公知の組成を採用することができ、例えば、上記ペイント層14に関して説明されたいかなる組成も採用可能である。このペイント層の組成は、上記(組成1)と同様である。
【0140】
上記(組成b)又は(組成d)において、ゴルフボールのマーク層の組成としては、あらゆる公知の組成が用いられ得る。このマーク層の組成は、上記(組成2)又は(組成5)と同様である。
【0141】
アロマ保持層は、透明であってもよい。透明なアロマ保持層を得るための組成は、例えば、上記(組成d)である。
【0142】
[アロマ層の形成方法]
アロマ層の形成方法として、浸漬、噴霧、スタンプ等が例示される。
【0143】
浸漬とは、香り成分を含む液体にボールを浸漬することである。この浸漬は、特に、全体的なアロマ層の形成に適している。噴霧は、塗布作業を容易とする。噴霧は、全体的なアロマ層の形成に適しているし、局所的なアロマ層の形成にも適している。スタンプは、局所的なアロマ層の形成に適している。
【0144】
好ましくは、噴霧は、ペイント層14の硬化及び乾燥が完了した後になされる。硬化乾燥後のボールは取り扱いが容易である。例えば、ボールを出荷する際に、梱包と同時に、パッケージの内部に噴霧することができる。この噴霧は、ボールの表面にアロマ層を形成しうる。またこの噴霧によって、パッケージの内部に香り成分を存在させることができる。硬化乾燥後のボールに局所的なアロマ層を付加することは、生産性の向上に寄与しうる。
【0145】
局所的なアロマ層は、全体的なアロマ層と比較して、塗布等の手間が容易とされうる。好ましくは、局所的なアロマ層は、スタンプによってボール表面に付与される。スタンプの方法として、パッド印刷及び刻印式印刷が例示される。局所的なアロマ層の他の付与方法として、インクジェット式印刷、転写フィルム式印刷、刷毛塗り等が、採用されうる。生産性の観点から、パッド印刷が好ましい。
【0146】
好ましくは、局所的なアロマ層16は、ペイント層14の硬化及び乾燥が完了した後に、付与される。硬化乾燥後のボールは取り扱いが容易である。硬化乾燥後のボールに局所的なアロマ層を付加することは、生産性の向上に寄与しうる。
【0147】
[液体(A)]
液体(A)は、香り成分を含む液体である。この液体(A)は、全体的なアロマ層を形成するのに用いられる。この液体(A)は、溶剤で希釈されていてもよい。好ましい溶剤は有機溶剤であり、より好ましくはアルコールであり、更に好ましくはエタノールである。この液体(A)は、香り成分のみからなっていてもよい。より好ましい液体(A)は、香り成分のみからなるか、又は、香り成分と溶剤のみからなる。
【0148】
[含有率Ra]
香りの強さ及び香りの持続性の観点から、液体(A)における香り成分の含有率Raは、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。香りの強さ及び香りの持続性の観点から、含有率Raは、100質量%以下が好ましい。この含有率Raは、香り成分の質量の、液体(A)の全体質量に対する割合である。
【0149】
[液体(B)]
液体(B)は、香り成分と溶剤とを含む液体である。この液体(B)は、局所的なアロマ層を形成するのに用いられる。好ましい溶剤は有機溶剤であり、より好ましくはアルコールであり、更に好ましくはエタノールである。より好ましい液体(B)は、香り成分と溶剤のみからなる。
【0150】
[含有率Rb]
香りの強さ及び香りの持続性の観点から、液体(B)における香り成分の含有率Rbは、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。局所的アロマ層の形成工程(スタンプ等)への適性の観点から、含有率Rbは、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。この含有率Rbは、香り成分の質量の、液体(B)の全体質量に対する割合である。
【0151】
[組成物(C)]
組成物(C)は、香料内包マイクロカプセルを含む。組成物(C)は、香料内包マイクロカプセルを含むアロマ層を形成するのに用いられる。好ましい組成物(C)は、溶剤を含む。好ましい溶剤は有機溶剤であり、より好ましくはアルコールであり、更に好ましくはエタノールである。より好ましい組成物(C)は、香り成分と溶剤のみからなる。この組成物(C)は、更に樹脂成分を含んでいても良い。
【0152】
[含有率Rc]
香りの強さ及び香りの持続性の観点から、組成物(C)における香料内包マイクロカプセルの含有率Rcは、0.3質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましい。局所的アロマ層の形成工程(スタンプ等)への適性の観点から、含有率Rcは、10質量%以下が好ましく、9質量%以下がより好ましい。この含有率Rcは、香料内包マイクロカプセルの質量の、組成物(C)の全体質量に対する割合である。
【0153】
[噴霧によって塗着した、ボール1個当たりの塗着量(mg)]
香りの強さ及び香りの持続性の観点から、噴霧により塗着した、ボール1個当たりの香り成分の質量(塗着量)は、10mg以上が好ましく、20mg以上がより好ましい。噴霧に適した噴霧液とする観点から、この香り成分の質量(塗着量)は、ボール1個当たり、100mg以下が好ましく、80mg以下がより好ましい。
【0154】
[ボールの色]
本発明において、ボールの色は限定されない。ボールの色は、白色であってもよいし、白色以外の色であってもよい。上記香り成分の香りとボールの色とが関連付けられる場合、ボールの色は白色以外であるのが好ましい。
【0155】
[香り成分と色との関連]
好ましいゴルフボールでは、上記香り成分の香りとボールの色とが関連付けられている。即ち、香り成分の香りから連想されるものの色とボールの色とが同系色とされる。また、好ましくは、パッケージ20の表面の少なくとも一部の色と、香り成分の香りから連想されるものの色とが、同系色とされる。
【0156】
香り成分と色とが関連した具体例は、例えば、次の通りである。
・香り成分がミントの香りであり、色がブルー系またはグリーン系である。
・香り成分がラベンダーの香りであり、色がパープル系である。
・香り成分がグレープフルーツの香りであり、色がイエロー系である。
・香り成分がオレンジの香りであり、色がオレンジ系である。
・香り成分がバラの香りであり、色がピンク系、ブルー系又はレッド系である。
・香り成分がいちごの香りであり、色がピンク系又はレッド系である。
・香り成分がバニラの香りであり、色がホワイト系である。
・香り成分がレモンの香りであり、色がイエロー系である。
・香り成分がバナナの香りであり、色がイエロー系である。
・香り成分がライムの香りであり、色がグリーン系である。
・香り成分がユーカリ、セージ又はローレルの香りであり、色がグリーン系である。
・香り成分がシナモンの香りであり、色がブラウン系である。
・香り成分がメロンの香りであり、色がグリーン系又はオレンジ系である。
・香り成分がスイカの香りであり、色がグリーン系又はレッド系である。
・香り成分がパイナップルの香りであり、色がイエロー系である。
・香り成分が桃の香りであり、色がピンク系である。
・香り成分がぶどうの香りであり、色がパープル系である。
【0157】
色に関して、後述の実施例等では、CIELAB表示系における指数L、a及びbが測定される。
【0158】
指数L、a及びbは、下記数式によって算出される。
= 116(Y/Yn)1/3 − 16
= 500((X/Xn)1/3 − (Y/Yn)1/3
= 200((Y/Yn)1/3 − (Z/Zn)1/3
これら数式において、X、Y及びZはXYZ表示系における三刺激値であり、Xn、Yn及びZnは完全拡散反射面の三刺激値である。CIELAB表示系は、国際照明委員会(CIE)によって1976年に決定された規格である。日本では、「JIS Z 8729」において、CIELAB表示系が採用されている。
【0159】
は、明度の指数である。a及びbは、色相及び彩度と相関する指数である。aのマイナス方向は緑方向であり、プラス方向は赤方向である。bのマイナス方向は青方向であり、プラス方向は黄方向である。彩度Sは、下記数式によって算出される。
S = ((a + (b1/2
【0160】
指数L、a及びbは、ミノルタ社の色彩色差計「CM−3500d」により測定される。受光部がゴルフボール2又はパッケージ20の表面に当てられ、測定がなされる。光源には、「標準の光D65」が採用される。この光源の色温度は、6504kである。分光感度としては、「2°視野」が採用される。ゴルフボール2の表面の色が測定される場合、受光部は、ランド12に当てられる。パッケージ20の表面が測定される場合、パッケージ20のシートの裏面を平板によって支持し、シートを平らな状態にした上で、受光部が当てられる。
【実施例】
【0161】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0162】
[実施例1]
100質量部のポリブタジエン(ジェイエスアール社の商品名「BR−730」)、25質量部のアクリル酸亜鉛、10質量部の酸化亜鉛、6質量部の二酸化チタン、15質量部の硫酸バリウム、0.5質量部のジフェニルジスルフィド(住友精化社)及び0.8質量部のジクミルパーオキサイド(日本油脂社)を混練し、ゴム組成物を得た。このコア配合が下記の表1に示される。このゴム組成物を共に半球状キャビティを備えた上型及び下型からなる金型に投入し、170℃にて20分間加熱して、直径が38.9mmであるコアを得た。
【0163】
45質量部のナトリウム中和型アイオノマー樹脂(デュポン社の商品名「サーリン8945」)、45質量部の亜鉛中和型アイオノマー樹脂(デュポン社の商品名「サーリン9945」)、10質量部のスチレンブロック含有熱可塑性エラストマー(三菱化学社の商品名「ラバロンSR04」)及び顔料(2質量部の二酸化チタンと0.6質量部の黄色顔料1)を二軸混練押出機にて混練し、樹脂組成物を得た。上記コアを、内周面に多数のピンプルを備えたファイナル金型に投入し、コアの周囲に上記樹脂組成物を射出成形法により注入した。注入により、厚みが1.9mmであるカバーを備えた本体が得られた。このカバーは、黄色である。カバーには、ピンプルの形状が反転した形状のディンプルが多数形成された。この本体の表面に、研磨処理を行った。このカバーの配合が下記の表2の「黄」の列に示される。
【0164】
【表1】

【0165】
【表2】

【0166】
二液硬化型ポリウレタンを基材とするクリアー塗料を、調製した。この塗料の主剤は、ポリエーテルポリオールとポリエステルポリオールとの混合物である。この塗料の硬化剤は、ヘキサメチレンジイソシアネートである。この塗料は、核が雲母からなりコート層が酸化チタンからなる複合粒子(メルク社の商品名「Iriodin 201」)とを含んでいる。この複合粒子の量は、基材樹脂100質量部に対して10質量部である。この複合粒子はフレーク状であり、その粒度は15μmである。この塗料を、カバーにスプレーガンにて塗装した。この塗料を40℃の温度下で120分間乾燥させ、厚みが約10μmであるペイント層を得た。
【0167】
このゴルフボールにおいて、図1にハッチングで示された位置(4箇所)に、アロマ層が付与された。このアロマ層は、スタンプ(パッド印刷)により付与された。アロマ層を形成するための塗料の組成は、100質量部の基材樹脂、19質量部の硬化剤(ヘキサメチレンジアミン)、23質量部のアセチルアセトン、及び、8質量部の香料内包マイクロカプセルである。基材樹脂は、エポキシ樹脂とされた。この香料内包マイクロカプセルの数平均粒子径は、30μmであった。香料内包マイクロカプセルに含まれる香り成分は小川香料社製の商品名「AR81731」であり、この香り成分はグレープフルーツの香りを有する。この塗料を40℃の温度下で120分間乾燥させ、厚みが約30μmであるアロマ層を得た。このアロマ層は、透明である。こうして、直径が42.7mmであり、質量が約45.4gである実施例1のゴルフボールを得た。このゴルフボールは、黄色である。この実施例1では、香り成分の香りとボールの色とが関連付けられている。
【0168】
このゴルフボール3個を、図2及び図3に示した上記パッケージに入れて密封し、実施例1のパッケージ入りゴルフボールを得た。
【0169】
[実施例2]
上記香料内包マイクロカプセルに代えて、10質量部の液体(B)が配合された他は実施例1と同様にして、実施例2のパッケージ入りゴルフボールを得た。この液体(B)は、50質量部の上記香り成分(「AR81731」)を、50質量部の溶剤(エタノール)で希釈して得た。
【0170】
[実施例3]
スタンプによるアロマ層の形成に代えて、上記香り成分(グレープフルーツの香り)を含む噴霧液を用いて噴霧がなされ、全体的なアロマ層が形成された。この噴霧の仕様は、表3における噴霧仕様Cである。この噴霧は、ペイント層の硬化後になされた。その他は実施例1と同様にして、実施例3のパッケージ入りゴルフボールを得た。
【0171】
[実施例4]
パッケージとして、気密性を有する上記パッケージに代えて、一般的な従来のパッケージである、紙製の箱が用いられた。その他は実施例3と同様にして、実施例4のパッケージ入りゴルフボールを得た。
【0172】
[実施例5]
スタンプによるアロマ層の形成までは、実施例1と同様になされた。このアロマ層の塗膜の硬化後、噴霧がなされた。上記香り成分(グレープフルーツの香り)を含む噴霧液を用い、噴霧仕様C(表3参照)のように噴霧され、全体的なアロマ層が形成された。その他は実施例1と同様にして、実施例5のパッケージ入りゴルフボールを得た。
【0173】
[実施例6]
カバーに用いられている顔料が、2質量部の二酸化チタン及び0.1質量部の青色顔料に変更された(表2参照)。この顔料により、ブルー系(水色)のカバーが得られた。また、マイクロカプセル内の香り成分が、小川香料社製の「AR89263」(ペパーミントの香り)に変更された。スタンプによるアロマ層が硬化した後、噴霧がなされた。この噴霧は、下記の表3に示す噴霧仕様Bとされ、香り成分として、小川香料社製の商品名「AR89263」(ペパーミントの香り)が用いられた。その他は実施例5と同様にして、実施例6のパッケージ入りゴルフボールを得た。
【0174】
[実施例7]
表2において「紫色」で示されているカバー配合が採用され、マイクロカプセル内の香り成分が、小川香料社製「AR81732」(ラベンダーの香り)に変更された。また噴霧が、噴霧仕様A(表3参照)に変更された。その他は実施例5と同様にして、実施例7のパッケージ入りゴルフボールを得た。
【0175】
[実施例8]
表2において「白」で示されているカバー配合が採用され、且つ、クリアー塗料における複合粒子が除かれた他は実施例5と同様にして、実施例8のパッケージ入りゴルフボールを得た。
【0176】
[実施例9]
パッケージが、実施例4で用いられたもの(普通の箱)に変更された他は実施例5と同様にして、実施例9のパッケージ入りゴルフボールを得た。
【0177】
[実施例10]
実施例5のスタンプに代えて、実施例2と同様にしてスタンプがなされた。その他は実施例5と同様にして、実施例10のパッケージ入りゴルフボールを得た。
【0178】
[実施例11]
パッケージが実施例4と同じもの(普通の箱)に変更された他は実施例10と同様にして、実施例11のパッケージ入りゴルフボールを得た。
【0179】
実施例1から4の仕様と評価結果が、下記の表4に示される。実施例5から8の仕様と評価結果が、下記の表5に示される。実施例9から11の仕様と評価結果が、下記の表6に示される。
【0180】
[指数L、a及びbの測定]
ボール表面の指数L、a及びbは、ミノルタ社の色彩色差計「CM−3500d」により、前述した方法によって測定された。ペイント及び香料が付加された完成品のボールの表面において、測定がなされた。この結果が、上記表2に示されている。
【0181】
[開封時の香り]
梱包してから30日放置したのち、パッケージを開けて、香りを評価した。以下の基準により、評価がなされた。この結果が、上記表4から7に示されている。
○:ボールを鼻に近づけることなく、手に取った状態で、香りが感じられる。
△:ボールを鼻に近づけると、香りが感じられる。
×:香りが感じられない。
【0182】
[香り発現のコントロール性]
以下の基準により、評価がなされた。この結果が、上記表4から7に示されている。
○:コントロールが可能である。
×:コントロールが不可能である。
【0183】
[香り持続性(1)]
パッケージを開けて取り出したボールを50回打撃し、その後、上記「開封時の香り」と同じ基準で評価した。この結果が、上記表4から7に示されている。
【0184】
[香り持続性(2)]
パッケージを開けて取り出したボールを50回打撃し、その後、再度パッケージに入れて30日間放置し、その後、パッケージを開けて、香りを評価した。上記「開封時の香り」と同じ基準で評価した。この結果が、上記表4から7に示されている。
【0185】
【表3】

【0186】
【表4】

【0187】
【表5】

【0188】
【表6】

【0189】
表に示されるように、実施例間で、効果の相違が見られた。本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0190】
以上説明された方法は、あらゆるゴルフボールに適用されうる。
【符号の説明】
【0191】
2・・・ゴルフボール
4・・・コア
6・・・中間層
8・・・カバー
10・・・ディンプル
12・・・ランド
14・・・ペイント層
16・・・アロマ層
20・・・パッケージ
22・・・開口部
P1・・・ゴルフボール梱包体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
香り成分を有するアロマ層が、ボール表層部に設けられており、
このアロマ層が、全体的に設けられているゴルフボール。
【請求項2】
上記香り成分が、テルペン類、エステル化合物、芳香族化合物、エーテル化合物、アルデヒド化合物、アルコール化合物、ケトン化合物、天然精油、炭化水素、ラクトン化合物及び含窒素化合物よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
上記香り成分を含み且つ溶剤で希釈されていてもよい液体(A)を用いて、上記アロマ層が形成されている請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項4】
上記溶剤がアルコール化合物である請求項3に記載のゴルフボール。
【請求項5】
上記液体(A)における上記香り成分の含有率Raが、10質量%以上100質量%以下である請求項3に記載のゴルフボール。
【請求項6】
上記アロマ層が、噴霧によって形成されている請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項7】
上記噴霧によって塗着した、ボール1個当たりの上記香り成分の塗着量が10mg以上100mg以下である請求項6に記載のゴルフボール。
【請求項8】
香り成分を有するアロマ層が、ボール表層部に設けられており、
このアロマ層が、局所的に設けられているゴルフボール。
【請求項9】
上記香り成分が、テルペン類、エステル化合物、芳香族化合物、エーテル化合物、アルデヒド化合物、アルコール化合物、ケトン化合物、天然精油、炭化水素、ラクトン化合物及び含窒素化合物よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項8に記載のゴルフボール。
【請求項10】
上記香り成分が溶剤で希釈されてなる液体(B)、又は、上記香り成分を内包する香料内包マイクロカプセルを含む組成物(C)を用いて、上記アロマ層が形成されている請求項9に記載のゴルフボール。
【請求項11】
上記溶剤がアルコール化合物である請求項10に記載のゴルフボール。
【請求項12】
上記液体(B)における上記香り成分の含有率Rbが、5質量%以上30質量%以下である請求項10に記載のゴルフボール。
【請求項13】
上記香料内包マイクロカプセルの膜材が、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、ゼラチン、尿素・ホルマリン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項10に記載のゴルフボール。
【請求項14】
上記組成物(C)における上記香料内包マイクロカプセルの含有率Rcが、0.3質量%以上10質量%以下である請求項10に記載のゴルフボール。
【請求項15】
刺激により、上記香料内包マイクロカプセルの膜材が変質及び/又は破損されうる請求項14に記載のゴルフボール。
【請求項16】
上記刺激が物理的刺激である請求項15に記載のゴルフボール。
【請求項17】
上記刺激が化学的刺激である請求項15に記載のゴルフボール。
【請求項18】
局所的な上記アロマ層がスタンプによって形成されている請求項8に記載のゴルフボール。
【請求項19】
香り成分を有し且つ全体的なアロマ層が更に設けられている請求項8に記載のゴルフボール。
【請求項20】
上記香り成分を含み且つ溶剤で希釈されていてもよい液体(A)を用いて、上記全体的なアロマ層が形成されている請求項19に記載のゴルフボール。
【請求項21】
上記溶剤がアルコール化合物である請求項20に記載のゴルフボール。
【請求項22】
上記液体(A)における上記香り成分の含有率Raが、10質量%以上100質量%以下である請求項20に記載のゴルフボール。
【請求項23】
上記全体的なアロマ層に含まれる上記香り成分が、テルペン類、エステル化合物、芳香族化合物、エーテル化合物、アルデヒド化合物、アルコール化合物、ケトン化合物、天然精油、炭化水素、ラクトン化合物及び含窒素化合物よりなる群から選択される少なくとも1種である請求項19に記載のゴルフボール。
【請求項24】
上記全体的なアロマ層が、噴霧によって形成されている請求項19に記載のゴルフボール。
【請求項25】
上記噴霧によって塗着した上記香り成分の塗着量が、ボール1個当たり、10mg以上100mg以下である請求項24に記載のゴルフボール。
【請求項26】
気密性を有するパッケージに入れられている請求項1から25のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項27】
上記香り成分の香りとボールの色とが関連付けられている請求項1から25のいずれかに記載のゴルフボール。
【請求項28】
白色以外に着色されている請求項1から25のいずれかに記載のゴルフボール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−110791(P2012−110791A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−66831(P2012−66831)
【出願日】平成24年3月23日(2012.3.23)
【分割の表示】特願2010−20813(P2010−20813)の分割
【原出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【出願人】(504017809)SRIスポーツ株式会社 (701)