説明

サイジングプレス機

【課題】フランジを有する焼結体を貫通孔内に安定して保持するとともにサイジング処理を円滑に行うことができるサイジングプレス機を提供する。
【解決手段】サイジングプレス機10において、ターンテーブル20に設けられた貫通孔31内においてフランジ2bが形成された焼結体2を保持する保持部33と、保持部33を貫通孔31の内方に向かって付勢する弾性体と、保持部33の先端に配置される回転体38とを設け、パンチ41のプレスによって焼結体2が移動する際に、回転体38の外周が焼結体2の移動方向に回転しながら該回転体38が貫通孔31の外方に退避するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末の燒結体を再び金型に入れてプレスしてサイジングを行うサイジングプレス機に関する。
【背景技術】
【0002】
寸法精度が要求される燒結体を作る場合、通常行われる金属粉末混合工程、成形工程、燒結工程の後にさらにサイジングを施す場合がある。このサイジングは所定の寸法を得るため、燒結体を再び金型に入れて圧縮することをいい、例えば特許文献1に示すようなサイジングプレス機で行なわれるのが一般的である。
【0003】
このサイジングプレス機は、図9に示すように、間欠的に回転されるターンテーブル1を備えており、該ターンテーブル1を上下方向に貫通して形成された貫通孔1aの内側に焼結体120がセットされる。この焼結体120は、円筒部120aの端部に径方向外側に張り出すフランジ120bが形成された二段円筒状をなしている。
【0004】
また、貫通孔1aには、該貫通孔1aの内方に向かってバネ等により付勢されたボールブッシュ(保持部)3が複数設けられており、焼結体120のフランジ120bの外周がボールブッシュ3によって押圧されることにより貫通孔1a内に焼結体120が保持される構成とされている。これによって焼結体120が貫通孔1a内において該焼結体120の周方向に回転することなく固定される。
【0005】
そして、このようにセットされた焼結体120は、ターンテーブル1の間欠回転により移動され、サイジングステーションにおいて図示しないパンチによるプレスを受けることでサイジングが施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−197106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記サイジングプレス機においては、複数のボールブッシュ3の付勢力により焼結体120のフランジ120bを押圧して保持する構成のため、焼結体120のフランジ120bの厚みが小さい場合には、該焼結体120の保持が不安定となってしまうという問題があった。
【0008】
また、サイジング処理を円滑に行うためには、上記ボールブッシュ3のように焼結体120を保持する保持部がプレスの妨げにならないことが好ましい。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、フランジを有する焼結体を貫通孔内に安定して保持するとともにサイジング処理を円滑に行うことができるサイジングプレス機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係るサイジングプレス機は、粉末金属を圧粉、焼結した厚さ方向の一部にフランジが形成された焼結品を収納する貫通孔が周方向に複数形成され、焼結体供給ステージにて前記焼結品を受け取り、軸線回りに回転して、パンチによるプレスが施されるサイジングステーションまで移動させるターンテーブルを備えたサイジングプレス機であって、前記焼結品を保持する保持部と、前記保持部を前記貫通孔の内方に向かって付勢する付勢手段と、前記保持部を退避させる退避手段とを備え、前記保持部の先端は、前記貫通孔に前記焼結品が収納された場合に前進状態にて前記フランジの下方に位置し、かつ、前記退避手段によって後退する場合に前記フランジより外方に移動可能とされることを特徴している。
【0010】
このような特徴のサイジングプレス機によれば、保持部が前進状態の場合には、該保持部の先端が焼結体のフランジの下方に位置する。これにより、焼結体を貫通孔内にて保持する際には、保持部の先端が焼結体のフランジに上方から当接し、該フランジが保持部上に載置された状態になる。さらに、保持部は貫通孔の内方に向かって付勢状態にあるため、焼結体の外周面が保持部によって押圧される。
このように、保持部の先端上にフランジが載置されるとともに該保持部により焼結体の外周面が押圧されることにより、焼結体のフランジの厚み寸法にかかわらず、該焼結体を貫通孔内に安定的に保持することができる。
さらに、焼結体にプレスが施される際には、退避手段によって保持部がフランジより外方に退避されるため、保持部の存在がプレスの妨げとなることがなく、プレスによるサイジング処理を円滑に行なうことができる。
【0011】
また、本発明に係るサイジングプレス機においては、前記退避手段が、前記保持部の先端に設けられた回転体であって、該回転体は前記パンチのプレスによって前記焼結品が移動する際に、前記焼結品の移動方向に回転することを特徴としている。
【0012】
このような特徴のサイジングプレス機によればパンチのプレスによって焼結体が移動する際に、焼結体のフランジが回転体を上方から押圧する。これにより、回転体は焼結体の移動方向に回転しながら、自らの外周の形状に従って貫通孔の外方に退避させられる。これにともなって、保持部が貫通孔の外方に退避させられるため、保持部の存在がプレスの妨げとなることなく、プレスによるサイジング処理を円滑に行うことができる。
【0013】
さらに、本発明に係るサイジングプレス機においては、前記退避手段が、前記保持部の上下方向に貫通して形成され、下方に向かうに従って前記貫通孔の内方に向かって傾斜する傾斜面を備えた挿入孔と、前記パンチのプレスの際に前記挿入孔に挿入され、前記傾斜面の下方に移動して前記保持部を前記貫通孔の外方に退避させるガイド部材とからなるものであってもよい。
【0014】
このような特徴のサイジングプレス機によれば、パンチがプレスする際にガイド部材が保持部の挿入孔に挿入される。すると、該ガイド部材の先端が傾斜面に当接しながら該傾斜面の下方に移動することにより、保持部は傾斜面の傾斜に応じて貫通孔の外方に退避する。即ち、パンチのプレスに伴うガイド部材の挿入部への挿入により、保持部が貫通孔の外方に移動するのである。これによって、保持部の存在がプレスの妨げとなることなく、円滑なサイジング処理を行うことができる。
【0015】
また、本発明に係るサイジングプレス機においては、前記退避手段が、前記保持部の上下方向に貫通して形成された挿入孔内に配置された回転体と、前記パンチのプレスの際に前記挿入孔に挿入され、前記回転体を回転させながら前記保持部を前記貫通孔の外方に退避させるガイド部材とからなるものであってもよい。
【0016】
このような特徴のサイジングプレス機によれば、パンチがプレスする際にガイド部材が保持部の挿入孔に挿入される。この際、ガイド部材が挿入孔内の回転体を下方に向かって押圧し、これにより、回転体はガイド部材の移動方向に回転しながら、自らの外周の形状に従って貫通孔の外方に向かって退避させられる。これにともなって、保持部が貫通孔の外方に退避させられるため、保持部の存在がプレスの妨げとなることなく、プレスによるサイジング処理を円滑に行うことができる。
【0017】
さらに、本発明に係るサイジングプレス機においては、前記付勢手段及び退避手段が、前記保持部を前記貫通孔の内方及び外方に進退させる駆動機構であってもよい。
これによって、保持部を貫通孔の内方に前身させることができるとともに貫通孔の外方に退避させられるため、ワークを確実に保持しつつも保持部の存在がプレスの妨げとなることなく、プレスによるサイジング処理を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明のサイジングプレス機によれば、保持部によって焼結体のフランジの下方を保持することにより、焼結体を貫通孔内に安定して保持することができる。また、プレスの際に保持部が退避手段によりフランジの外方に退避されるため、保持部の存在がプレスの妨げとなることはなく、サイジング処理を円滑に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態に係るサイジングプレス機のターンテーブルの平面図である。
【図2】サイジングステーションにおけるサイジングプレス機の縦断面図である。
【図3】図2の保持部付近の拡大図である。
【図4】プレス時のサイジングステーションにおけるサイジングプレス機の縦断面図で ある。
【図5】退避手段の第1変形例を説明する図である。
【図6】退避手段の第2変形例を説明する図である。
【図7】退避手段の第3変形例を説明する図である。
【図8】退避手段の第4変形例を説明する図である。
【図9】従来のサイジングプレス機の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のサイジングプレス機の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
本実施形態のサイジングプレス機10は、ターンテーブル20により焼結体2を搬送し、プレス機構40によって焼結体2に対してサイジング処理を施すものである。
【0021】
本実施形態のサイジングプレス機10によってサイジング処理が施される焼結体2は、図2に示すように、軸線Oを中心とした円筒部2aと該円筒部2aの一端部から径方向外側に張り出すフランジ2bとからなる二段円筒状をなしている。また、焼結体2には、軸線Oと平行に穿設されたコア孔2cが周方向に一定の間隔を空けて複数形成されている。このような焼結体2は、粉末金属を圧粉、焼結することにより成形される。
【0022】
ターンテーブル20は、略円盤状をなし、その鉛直方向に沿った中心軸C回りに回転可能に設置されている。このターンテーブル20の外周には、中心軸Cと平行に、即ち、上下方向に貫通するととも該ターンテーブル20の径方向内側に向かって延びるスリット21が周方向に等間隔を空けて複数形成されている。
【0023】
また、ターンテーブル20の外周側には、このターンテーブル20を間欠回転させる駆動機構22が設置されている。駆動機構22は、ターンテーブル20の中心軸Cと平行な回転軸Pを備えており、該回転軸Pにはその径方向外側に向かって延びるカム24が固定されている。
【0024】
さらに、カム24の先端部には下方に向かって凸状をなす突起部24aが設けられており、該突起部24aが描く円形の軌跡の一部である約90°の範囲においては、該突起部24aがターンテーブル20のスリット21内に収容状態とされ、残りの270°の範囲においてはスリット21から脱出状態とされている。
このようにして、カム24は回転軸Pの回転とともに一定の回転速度で水平面上を回転方向Uに旋回することになる。
【0025】
これにより、駆動機構22が回転軸P回りに一定速度で回転すると、突起部24aがスリット21内に収容状態とされている場合にのみターンテーブル20に駆動機構22の回転が伝達されて、ターンテーブル20が回転方向Tに送られて回転する。これに対し、突起部24aがスリット21内から脱出状態とされている場合には、カム24のみが旋回しターンテーブル20は停止状態となる。このようにして、駆動機構22によってターンテーブル20が回転方向Tに間欠回転させられる。
【0026】
このようなターンテーブル20にはその外周に沿うようにして、上下に円形に貫通する孔部20aが周方向に複数(本実施形態では12つ)形成されている。この孔部20aには、焼結体2を収納する焼結体収容部30が嵌め込まれている。
【0027】
焼結体収容部30は、軸線Oを中心とした略円筒状をなす部材であって、図2に示すように、両端開口が上下を向くように孔部20aに嵌め込まれており、その内側が焼結体2を収納する貫通孔31とされている。
この貫通孔31の内径は、焼結体2のフランジ2bの外径と略同一に形成されている。これにより、焼結体2が貫通孔31に収容された際には、焼結体2のフランジ2bが貫通孔31と僅かな隙間を空けて配置される
なお、貫通孔31の内径が焼結体2のフランジ2bの外径よりも大きく、焼結体2を貫通孔31に収納した際に、貫通孔31と焼結体2との間に間隙が形成されるものであってもよい。
【0028】
このような焼結体収容部30には、その径方向に沿って貫通孔31と焼結体収容部30の外周面とを貫通する収納孔32が形成されている。この収納孔32は、焼結体収容部30の周方向に等間隔を空けて複数(本実施形態では3つ)形成されている。
【0029】
そして、各収納孔32には、焼結体2を貫通孔31内に保持するための保持部33が設けられている。この保持部33は、詳しくは図3に示すように、保持部本体36と、弾性体(付勢手段)37と、回転体(退避手段)38とから構成されている。
【0030】
保持部本体36は焼結体収容部30の径方向に沿って延びる部材であって、該保持部本体36における焼結体収容部30の径方向外側の端部に弾性体37が取り付けられ、焼結体収容部30の径方向内側の端部に回転体38が取り付けられている。
【0031】
弾性体37は、例えばスプリングコイル等の伸縮可能な部材であって、該弾性体37の保持部本体36に取り付けた端部の反対側の端部は、ターンテーブル20の孔部20aの内周面に支持されている。この弾性体37によって、保持部本体36が焼結体収容部30の径方向内側、即ち、貫通孔31の内方に向かって付勢される。
【0032】
また、上記回転体38は、保持部本体36の焼結体収容部30径方向内側の端部に、焼結体収容部30の径方向に直交する軸線回りに回転可能に取り付けられたローラーであって、弾性体37の付勢によって焼結体収容部30の貫通孔31の内周面よりも径方向内側に突出させられる。
【0033】
以上のような構成の焼結体収容部30を備えたターンテーブル20は、駆動機構22によって間欠回転され、焼結体収容部30が焼結体供給ステージ(図示省略)に位置した際に、該焼結体収容部30の貫通孔31内に焼結体2が収納される。
この焼結体供給ステージにおいては、焼結体2が上方から貫通孔31内に挿入され、焼結体2の円筒部2aの外周面及びフランジ2bの下面に保持部33の回転体38が当接する。これにより、焼結体2が貫通孔31内に保持される。
【0034】
そして、焼結体2が保持された焼結体収容部30がターンテーブル20の間欠回転によりサイジングステーション(図示省略)に移動した際に、プレス機構40によって焼結体2に対するサイジング処理が行われる。
このプレス機構40は、図2に示すように、パンチ41と、ダイ43と、パンチ受部45とから構成されている。
【0035】
パンチ41は、上下方向に往復移動して、貫通孔31内に収納された焼結体2に上方からプレスする略円筒状をなす部材であって、サイジングステーション移動した焼結体収容部30の上方において、焼結体2の軸線Oと同軸に配置されている。このパンチ41は、その下側部分の外径が貫通孔31の内径と略同一寸法に形成されており、該パンチ41が下方に移動した際に貫通孔31内に僅かな隙間を介して挿入されるようになっている。このようなパンチ41のプレス動作により、該貫通孔31内に保持された焼結体2が下方に向かって押し出される。
【0036】
また、パンチ41には、下方に向かって延びるコアピン41aが周方向に等間隔を空けて複数設けられている。このコアピン41aは、パンチ41が下降した際に焼結体2のコア孔2cにそれぞれ挿入されるようになっている。これにより、パンチ41が下降した際の焼結体2の周方向の移動が規制され、プレス時における焼結体2の位置決めを確実に行なうことができる。
【0037】
ダイ43は、サイジングステーションに移動した焼結体収容部30の下方に配置されており、上下に貫通するダイ孔44が形成されている。
このダイ孔44は、上記パンチ41と同じく焼結体2の軸線Oと同軸に配置されている。また、ダイ孔44の上部開口部は、焼結体2のフランジ2bの外径と同一の内径を有する拡径部44aとされており、該拡径部44aの下側は、拡径部44aよりも一段縮径して焼結体2の円筒部2aの外径と略同一の内径を有する縮径部44bとされている。これにより、パンチ41により貫通孔31内から下方に押し出された焼結体2は、そのフランジ2bが拡径部44aに、円筒部2aが縮径部44bにそれぞれ隙間なく嵌り込む。
【0038】
パンチ受部45は、円筒状をなし、上記パンチ41及びダイ孔44と同様に、焼結体2の軸線Oと同軸に配置されている。
該パンチ受部45のその上側部分の外径は、ダイ孔44の縮径部44bの内径と同一に形成されている。これにより、パンチ受部45の上側部分はダイ孔44に下方から挿入され、パンチ受部45の上端がダイ孔44に嵌り込んだ焼結体2の下端面に当接するようになっている。
【0039】
このプレス機構40により焼結体2にサイジング処理を施す際には、パンチ41が下方に移動して焼結体2を焼結体収容部30内からダイ43のダイ孔44内へと押し出す。そして、図4に示すように、ダイ孔44内にて焼結体2がパンチ41とパンチ受部45とに挟み込まれて荷重を与えられることにより、焼結体2が所望のサイズに再成形される。そして、そして焼結体2にサイジングが行なわれた後は、パンチ41が上昇した後、ターンテーブル20が間欠回転して新たな焼結体2がサイジングステーションに搬送される。
このようにして、パンチ41の上下のストロークとターンテーブル20の間欠回転とによって複数の焼結体2に順次サイジング処理が施されるのである。
【0040】
以上のような構成からなるサイジングプレス機10においては、保持部33が前進状態の場合に、該保持部33の先端の回転体38が焼結体2のフランジ2bの下方に位置する。これにより、焼結体2を貫通孔31内にて保持する際には、保持部33の先端が焼結体2のフランジ2bに上方から当接し、該フランジ2bが保持部33の先端である回転体38上に載置された状態になる。さらに、保持部33は弾性体37によって貫通孔31の内方に向かって付勢状態にあるため、焼結体2の円筒部2aの外周面が複数の保持部33によって押圧される。
このように、回転体38上にフランジ2bが載置されるとともに該回転体38が円筒部2aの外周面を押圧することにより、焼結体2のフランジ2bの厚み寸法にかかわらず、該焼結体2を貫通孔31内に安定的に保持することができる。
【0041】
また、パンチ41の下降によって焼結体2が下方に移動する際には、保持部33が貫通孔31の外方、即ち、貫通孔31の径方向外側に向かって退避するため、保持部33の存在がパンチ41によるプレスの妨げとなることなく、サイジング処理を円滑に行うことができる。
【0042】
即ち、本実施形態においては、貫通孔31内に収納された焼結体2が下方に移動する際には、焼結体2のフランジ2bが回転体38における貫通孔31径方向内側の部分を下方に向かって押圧することで、該回転体38は回転しながら自らの外周の形状に従って貫通孔31の径方向外側に退避させられる。これにともなって、保持部33が焼結体収容部30の外方に退避させられる。したがって、保持部33の存在がプレスの妨げとなることなく、プレスによるサイジング処理を円滑に行うことができる。
【0043】
以上、本発明の実施形態であるサイジングプレス機10について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0044】
なお、実施形態においては、保持部33を焼結体収容部30の径方向外側に退避させる退避手段として回転体38を採用したものについて説明したが、第1変形例として、該回転体38に代えて、保持部33に上下方向に貫通する挿入孔39が形成され、該挿入孔39に挿入されるガイド部材48がパンチ41に取り付けられたものであってもよい。
【0045】
即ち、この変形例においては、図5に示すように、保持部33にその上下方向を貫通する挿入孔39が形成されており、該挿入孔39の内周面の一部が下方に向かうに従って焼結体収容部30の径方向内側に向かって傾斜する傾斜面39aとされている。また、保持部33の退避位置における挿入孔39の直上には、焼結体収容部30の上面と収納孔32の内周面とを鉛直方向に沿って貫通する連通孔30aが形成されている。
さらに、弾性体37の付勢により保持部33は前進状態にあり、該保持部33の先端は、
曲面状をなして貫通孔31の内周面よりも突出している。この状態では、挿入孔39の傾斜面39aの直上部分と連通孔30aとは一部分のみが鉛直方向にオーバーラップしている。
また、ガイド部材48は、パンチ(図5において図示省略)41と一体的に、あるいは別体として設けられ、上記連通孔30aの直上から下方に向かって延びるように配置されている。
【0046】
このような変形例においては、保持部33が貫通孔31の内周面から突出して焼結体2を保持している状態において焼結体2にサイジングを施すべくパンチ41が下降すると、図5(a)に示すように、ガイド部材48も下降して該ガイド部材48の先端が連通孔30bに挿入される。
【0047】
その後、パンチ41がさらに下降すると、ガイド部材48の先端が連通孔30bと一部分がオーバーラップする挿入孔39内に挿入され、該ガイド部材48の先端が挿入孔39の傾斜面39aに接触する。
そして、このようにガイド部材48の先端と傾斜面39aとが接触した状態でさらにガイド部材48が下降すると、保持部33は傾斜面39aの傾斜に応じて焼結体収容部30の径方向外側に後退する。即ち、ガイド部材48の下降動作によって、保持部33が貫通孔31の外方に退避することになる。これによって、パンチ41によるプレスの際に、保持部33を貫通孔31の外方に退避させることができ、円滑なサイジング処理を行うことが可能となる。なお、このガイド部材48の下降速度は、パンチ41の下降速度よりも大きく設定されていることが好ましい。
【0048】
また、第2変形例として、図6に示すように、上記第1変形例の保持部33の先端に、実施形態と同様の回転体38が設けられていてもよい。この場合、上記ガイド部材48により保持部33が退避させられるのに加えて、プレス時に焼結体2のフランジ2bが回転体38を下方に向かって押圧することで、保持部33を退避させることができる。したがって、保持部33の存在がパンチ41によるプレスの妨げとなることなく、サイジング処理をより円滑に行うことができる。
【0049】
さらに、第3変形例として、図7に示すように、第1変形例及び第2変形例と同様のガイド部材48を備えるとともに、保持部33に形成された挿入孔における後方の壁面側に回転体38を設けた構成であってもよい。この場合、ガイド部材48が下降して挿入孔39内に挿入されると、該ガイド部材48が回転体38における前進側の部分を下方に向かって押圧する。これにより、回転体38は回転しながら自らの外周の形状に従って貫通孔31の後方側に退避させられる。したがって、この第3変形例においても、保持部33の存在がパンチ41によるプレスの妨げとなることなく、サイジング処理を円滑に行うことができる。
【0050】
さらにまた、第4変形例として、図8に示すように、保持部33の後端側が、例えばエアシリンダー等の駆動機構50に接続されており、該駆動機構50の駆動によって保持手段33が進退する構成であってもよい。この場合、駆動機構50が、保持手段33の退避手段及び付勢手段を兼ねた構成とされる。また、駆動機構50としては、エアシリンダーの他、油圧シリンダーやボールネジ機構等であってもよい。
この第4変形例においては、駆動機構50を任意に駆動させることにより迅速に保持手段33を進出、退避させることができるため、特に焼結体の軸線O方向の厚みが薄い場合に、該焼結体2を適確に保持することが可能となる。
【0051】
また、上記変形例の他、例えば、保持部33を退避させる手段として、パンチ41のストロークとは独立して駆動して保持部33を退避させるカムやアクチュエータ等の制御装置が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
2 焼結体
2a 円筒部
2b フランジ
10 サイジングプレス機
20 ターンテーブル
20a 孔部
21 スリット
30 焼結体収容部
31 貫通孔
32 収納孔
33 保持部
36 保持部本体
37 弾性体(付勢手段)
38 回転体(退避手段)
39 挿入孔(退避手段)
39a 傾斜面
40 プレス機構
41 パンチ
48 ガイド部材(退避手段)
50 駆動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末金属を圧粉、焼結した厚さ方向の一部にフランジが形成された焼結品を収納する貫通孔が周方向に複数形成され、焼結体供給ステージにて前記焼結品を受け取り、軸線回りに回転して、パンチによるプレスが施されるサイジングステーションまで移動させるターンテーブルを備えたサイジングプレス機であって、
前記焼結品を保持する保持部と、
前記保持部を前記貫通孔の内方に向かって付勢する付勢手段と、
前記保持部を退避させる退避手段とを備え、
前記保持部の先端は、前記貫通孔に前記焼結品が収納された場合に前進状態にて前記フランジの下方に位置し、かつ、前記退避手段によって後退する場合に前記フランジより外方に移動可能とされることを特徴とするサイジングプレス機。
【請求項2】
前記退避手段が、前記保持部の先端に設けられた回転体であって、
該回転体は、前記パンチのプレスによって前記焼結品が移動する際に、前記焼結品の移動方向に回転することを特徴とする請求項1に記載のサイジングプレス機。
【請求項3】
前記退避手段が、
前記保持部の上下方向に貫通して形成され、下方に向かうに従って前記貫通孔の内方に向かって傾斜する傾斜面を備えた挿入孔と、
前記パンチのプレスの際に前記挿入孔に挿入され、前記傾斜面の下方に移動して前記保持部を前記貫通孔の外方に退避させるガイド部材とからなることを特徴とする請求項1に記載のサイジングプレス機。
【請求項4】
前記退避手段が、
前記保持部の上下方向に貫通して形成された挿入孔内に配置された回転体と、
前記パンチのプレスの際に前記挿入孔に挿入され、前記回転体を回転させながら前記保持部を前記貫通孔の外方に退避させるガイド部材とからなることを特徴とする請求項1に記載のサイジングプレス機。
【請求項5】
前記付勢手段及び前記退避手段が、前記保持部を前記貫通孔の内方及び外方に進退させる駆動機構であることを特徴とする請求項1に記載のサイジングプレス機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−219792(P2011−219792A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87861(P2010−87861)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】