説明

サイディング用段差調整部材及び該使用方法

【課題】サイディングに変形等の不具合が生じるおそれの少なく、取り付け位置が自由に設定でき、備品を見栄えよく取り付けることのできるサイディング用段差調整部材を提供する。
【解決手段】段差が形成されたサイディング10の外面10aに備品を取り付けるための段差調整部材であって、中実の形状で、一方の面3に前記サイディングの外面10aに密着する形状を有ることを特徴とするサイディング用段差調整部材1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイディング用段差調整部材及び該使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物や構造物等の外壁には、外装化粧材としてサイディングが使用されることが多い。特に、合成樹脂サイディングは、耐久性に優れ、塩害による錆や凍結融解によるひび割れもなく、また目地にコーキングを必要とせず、撥水性や耐衝撃性に優れ、軽量で加工性も良好であることから長寿命の外装化粧材として、新築もしくは既存壁のリフォームに広く使用されている。
【0003】
サイディングには、杉板の下見板張りのようなクリップボード型やドイツ張りのダッチラップ型等の形状があり、働き幅も200〜400mmまでと様々な種類があり、また、建築物の形状に合わせて役物として使用する様々な部材が用意されている。
【0004】
建築物等の外壁に使用したサイディングの外面には、ドアホン、配管や配線、クーラーの排水ドレン、看板等の備品を取り付けることが多くある。前記のような段差が形成されたサイディングにこのような備品を取り付ける場合、備品をそのまま取り付けると、サイディングに形成された段差のために備品が斜めになったり、備品とサイディングの間に隙間や段差ができて取り付けが困難となったり、その隙間から雨水が侵入する等の不具合が生じることがあった。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1には、このような不具合を防ぎ、表面に段差のあるサイディングに備品を取り付けるのが容易で、指向性に優れた段差調整部材が示されている。
特許文献1の段差調整部材101は、図4及び図5に示すように、サイディング120の外面に対応した形状を有するベース枠102と、平板状のカバー材103とを有している。そして、取付ビス110によりベース枠102をサイディング120の外面に密着させて取り付け、そのベース枠102にカバー材103を取り付ける。このようにしてサイディング120に取り付けた段差調整部材101のカバー材103上にドアホン等の備品を取り付けることで、前記不具合が解消される。
【特許文献1】特開2006−132093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の段差調整部材101では、特にサイディングに段差として形成された凸条(凹条)に垂直な方向に沿って、備品の取り付け位置を自由に設定することが困難であった。
これは、サイディングに形成された凸条(凹条)に垂直な方向に沿って備品を取り付ける位置を変えるには、その都度ベース枠102のサイディング120の外面に対応する面の形状を変えなければならないためである。
【0007】
また、カバー材103を備品の形状に合わせて切断して使用しようとすると、ベース枠102に比べて小さくなりすぎた場合に、切断したカバー材103をベース枠102に取り付けられなくなる。
また、備品を取り付ける際、カバー材103とサイディング120との間には空間が存在するため、取付ビスで備品をカバー材103に強く締め付けた場合に、カバー材103が壊れたり、サイディング104が変形してしまうことがあった。
【0008】
そこで、本発明では、サイディングに備品を取り付けるための部材として、サイディングに変形等の不具合が生じるおそれが少なく、取り付け位置が自由に設定でき、備品を見栄えよく取り付けることのできるサイディング用段差調整部材を提供する。また、該サイディング用段差調整部材の使用方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のサイディング用段差調整部材は、段差が形成されたサイディングの外面に備品を取り付けるための段差調整部材であって、中実の板状で、一方の面に前記サイディングの外面に対応した形状を有することを特徴とする。
また、本発明のサイディング用段差調整部材は、前記サイディングに形成された段差が、同一パターン形状が繰り返すことで形成されていることが好ましい。
また、前記段差調整部材の他方の面が平面形状であることが好ましい。
【0010】
また、本発明のサイディング用段差調整部材の使用方法は、前記サイディング用段差調整部材を備品の形状に合わせて切り出す工程と、該サイディング用段差調整部材の切り出した部分をサイディングの外面に取り付ける工程と、該取り付けたサイディング用段差調整部材に備品を取り付ける工程とを含む方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のサイディング用段差調整部材によれば、サイディングに変形等の不具合が生じるおそれが少なく、備品の取り付け位置が自由に設定できる。また、備品の取り付けが見栄え良く行える。
また、本発明の使用方法によれば、前記サイディング用段差調整部材を用いてサイディングに変形等の不具合が生じるのを抑えることができ、かつサイディングの様々な位置に備品を見栄え良く取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のサイディング用段差調整部材の一実施形態例について図1及び図2に基づいて説明する。
本発明のサイディング用段差調整部材1(以下、段差調整部材1という)は、サイディング10の外面10aに備品を取り付けるための部材である。
サイディング10は、建築物等の外壁に使用される化粧材であり、図2に示すように同一パターン形状のサイディングボード11が繰り返して取り付けられる。そのため、凸条及び凹条の段差を有するサイディングボード11が繰り返し取り付けられることにより、サイディング10は同一パターン形状の段差が繰り返し形成される。
本発明の段差調整部材1を適用するサイディング10の材質としては、特に制限はなく、窯業系や金属系、木製サイディングであっても、合成樹脂製のサイディングであってもよい。
【0013】
[サイディング用段差調整部材]
本発明の段差調整部材1は、図1に示すように、板状の形状である。また、中実の部材であり、ソリッドや発泡のどちらであってもよい。
また、段差調整部材1は、サイディング接触面3(サイディング10に接触させる面)に、サイディング10の外面10aに対応する断面凹凸状の形状を有している。すなわち、図1に示すように、パターン形状4が繰り返して形成されていることにより、サイディング10の同一パターン形状の段差の繰り返しに対応している。これにより、図2に示すように、サイディング接触面3をサイディング10の外面10aに密着させることができ、段差調整部材1を安定にサイディング10に取り付けることができる。
【0014】
段差調整部材1の備品取付面2は、図1に示すように、平面形状を有しており、備品を取り付ける面である。段差調整部材1をサイディング10に取り付けると、図2に示すように、サイディング10が有する段差が備品取付面2の平面形状へと調節されるため、取り付けた備品が斜めになってしまうことを防ぐことができる。
【0015】
また、本実施形態例の段差調整部材1は、図2に示すように、縦2枚分のサイディングボード11に相当する長さを有している。段差調整部材1の長さ及び幅は、特に制限されず、用途等を考慮して決定すればよい。例えば、数mの長さを有する配管等の備品を取り付ける場合には、その形状に合わせて長尺の形状とすればよい。
【0016】
段差調整部材1の材質としては、例えば、合成樹脂が挙げられる。合成樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、AES(アクリロニトリル・エチレン−プロピレン−ジエン・スチレン)樹脂、ASA(アクリロニトリル・スチレン・アクリレート)樹脂等が挙げられる。
段差調整部材1には、必要に応じて、充填材、強化材、発泡材、衝撃改質剤、顔料、加工助剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等の添加物を加えてもよい。特に屋外での使用のため、紫外線吸収剤や衝撃改質剤を添加することが好ましい。
本発明の段差調整部材1は合成樹脂であり、デザイン性の点からも合成樹脂製のサイディングの使用に好適である。
【0017】
サイディング10への段差調整部材1の取り付けは、例えば、取付ビスにより段差調整部材1をサイディング10及び外壁に固定する方法が挙げられる。
【0018】
また、本発明の段差調整部材1は、中実の部材であることを特徴とする。
これにより、サイディング10の外面10aに取り付ける備品の形状及び取り付け位置に応じて、段差調整部材1を後加工して用いることが可能となる。
例えば、取り付ける備品の形状が円形である場合には、段差調整部材1を該備品に合わせて円形状に切り出しても、段差調整部材1が中実の部材であるために、切り出した円形状の部分のサイディング接触面3はサイディング10に密着させることができる。よって、このサイディング10と段差調整部材1の切り出した部分との密着性は、段差調整部材1を切り出す形状に左右されない。
また、備品を取り付ける位置が、サイディング10に形成された凸条10b(図2)の部分であっても、凹条10c(図2)の部分であっても、段差調整部材1のうちサイディング接触面3がその備品取り付け部分に対応する形状の部分を切り出せば、段差調整部材1が中実の部材であるために、切り出した部分のサイディング接触面3はサイディング10に密着させることができる。よって、このサイディング10と段差調整部材1の切り出した部分との密着性は、段差調整部材1のどの部分を切り出すかには左右されない。
このように、本発明の段差調整部材1は、備品の形状及び取り付け位置に合わせて適宜切り出して使用することができるため、サイディング10のどの位置にどのような形状の備品を取り付ける場合であっても見栄えの良い取り付けが可能となる。
【0019】
また、本発明の段差調整部材1は、このように備品に合わせて後加工して使用することができるため、備品の形状や取り付け位置に合わせた形状を有する段差調整部材をその都度製造する必要がない。そのため、段差調整部材1を製造する金型の数を低減することができ、経済性にも優れている。特に、図2で例示したような同一パターン形状の段差が繰り返し形成されるサイディングに対して使用する際には、例えば比較的大きな形状の段差調整部材1を1種類用意するだけで、そのサイディングの外面全ての位置に、あらゆる形状の備品を見栄え良く取り付けることができる。
【0020】
また、段差調整部材1が中実の部材であれば、段差調整部材1を切り出す位置や形状に関わらず、段差調整部材1の切り出した部分とサイディング10との間に隙間ができないため、取付ビスによる取り付けが容易であり、備品取り付け時にサイディング10が変形してしまうのを防ぐこともできる。
【0021】
尚、本発明の段差調整部材1の形状は、図1のような長尺の形状でなくてもよく、予め用途に応じた形状(例えば、正方形、円形、楕円形等)を有する段差調整部材であってもよい。また、段差調整部材1の備品取付面2は、備品を安定に取り付けられれば平面形状でなくてもよい。
また、本発明の段差調整部材を適用するサイディングに形成される段差は、同一パターン形状の段差が繰り返して形成されているものでなくてもよい。
【0022】
[使用方法]
本発明のサイディング用段差調整部材の使用方法は、サイディング用段差調整部材を備品の形状に合わせて切り出す工程(工程(1))と、該サイディング用段差調整部材の切り出した部分をサイディングの外面に取り付ける工程(工程(2))と、該取り付けたサイディング用段差調整部材に備品を取り付ける工程(工程(3))とを含む方法である。
以下、本実施形態例の段差調整部材1の使用方法の一例について説明する。
【0023】
工程(1)では、段差調整部材1のうち、サイディング10の外面10aの備品を取り付け位置の部分に対応する形状を有する部分を、備品の形状に合わせて切り出す。例えば、ドアホン(備品)をサイディング10に取り付ける場合には、図3(a)に示すように、ドアホンの形状及びドアホンの取り付け位置に合わせて、段差調整部材1をドアホン部分20の形状に切り出す(図3(b))。
【0024】
ついで、工程(2)では、工程(1)で得られた段差調整部材1のドアホン取り付け部分5(以下、段差調整部材5という)を、取付ビス等を用いてサイディング10の外面10aのドアホン取り付け位置に設置する(図3(c))。
【0025】
ついで、工程(3)において、サイディング10の所定位置に取り付けた段差調整部材5の備品取付面6にドアホンを取り付ける。
このようにすることで、備品を取り付ける部分のみに段差調整部材を取り付けることができ、備品を見栄え良く取り付けることができる。また、本発明の段差調整部材1は、中実の部材であるため、切り出す形状や位置に関わらず、段差調整部材の切り出した部分はサイディングに密着させることができる。そのため、サイディングに備品を安定に取り付けることができることから、備品の形状、取り付け位置を自由に設定できる。例えば、電源用の配線や、吸排気や給排水用の配管等の取り付けのように、穴や加工により取り付け位置に自由に加工することができる。
【0026】
尚、工程(2)及び工程(3)の順序は特に限定されない。例えば、段差調整部材5の備品取付面6にドアホン(備品)を取り付けた後(工程(3))、ドアホン(備品)を取り付けた段差調整部材5をサイディング10に取り付ける(工程(2))方法であってもよい。
【0027】
以上説明した、本発明のサイディング用段差調整部材によれば、備品の形状に合わせて段差調整部材を切り出して使用できることから、取付ビスや段差調整部材が見えてしまうのを避けられるため、サイディングに見栄え良く備品を取り付けることができる。
また、備品の取り付け位置に応じて段差調整部材を切り出して使用することもできる。そのため、予めドアホンやコンセント等を取り付ける位置が決定している場合であっても、それに応じて備品の取り付けが可能である。
このように、本発明のサイディング用段差調整部材は、備品の形状及び取り付け位置に左右されずに見栄え良く取り付けが行えるため、通常、各建築物によって取り付ける位置が異なる、サイディングを有する外壁への備品の取り付けに好適に使用できる。
【0028】
また、本発明のサイディング用段差調整部材は、段差調整部材とサイディングとの間に隙間が生じないため、取付ビス等により備品を取り付ける際にサイディングが変形するのを抑えることもできる。
【0029】
また、本発明の使用方法によれば、前記サイディング用段差調整部材を用いて、備品の形状及び取り付け位置に左右されず、容易に見栄えの良い備品取付が行える。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の段差調整部材の一実施形態例を示した斜視図である。
【図2】図1に示した段差調整部材をサイディングに取り付けた様子を示した斜視図である。
【図3】本発明の段差調整部材を切り出して使用する様子を示した斜視図である。(a)は切り出す前、(b)は切り出し後、(c)は切り出した段差調整部材をサイディングに取り付けた様子を示す。
【図4】従来の段差調整部材の一例を示した平面図である。
【図5】従来の段差調整部材をサイディングに取り付けた様子を示した一部断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 サイディング用段差調整部材 2 備品取付面 3 サイディング接触面 10 サイディング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
段差が形成されたサイディングの外面に備品を取り付けるための段差調整部材であって、
中実の板状で、一方の面に前記サイディングの外面に対応した形状を有することを特徴とするサイディング用段差調整部材。
【請求項2】
前記サイディングに形成された段差が、同一パターン形状が繰り返すことで形成されている、請求項1に記載のサイディング用段差調整部材。
【請求項3】
前記段差調整部材の他方の面が平面形状である、請求項1または2に記載のサイディング用段差調整部材。
【請求項4】
請求項3に記載のサイディング用段差調整部材を備品の形状に合わせて切り出す工程と、該サイディング用段差調整部材の切り出した部分をサイディングの外面に取り付ける工程と、該取り付けたサイディング用段差調整部材に備品を取り付ける工程とを含む、サイディング用段差調整部材の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−91741(P2009−91741A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261123(P2007−261123)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】