説明

サイトカイン/ホルモンのスペクトルによる生理活性識別方法

【課題】 本発明は、経口、経皮、及び、非接触を含む物理学的手法について、統合的な尺度を与え、医療機関等の専門家に適正なガイドラインを与えたり、消費者が自ら判断する客観的な分かり易い尺度を与えることことを目的とする。
【解決手段】 本発明は、従来不可能であった物質情報に依存しない、普遍的な生理的影響を与え得る物質、刺激に対する情報を獲得し、比較可能なデータを与え、データを解析利用することによって、健康食品、医薬品、歯磨き粉などの医薬部外品、化粧品、装身品及び環境ホルモン様刺激物などの生理的影響を評価することができ、結果的に、より安全かつ健康増進・維持に役立つ情報を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口、経皮、及び、非接触を含む物理学的手法について、統合的な尺度を与え、医療機関等の専門家に適正なガイドラインを与えたり、消費者が自ら判断する客観的な分かり易い尺度を与えることに関する。より詳細には、従来比較が困難であった健康食品、医薬品、歯磨き粉などの医薬部外品、化粧品、装身品及び環境ホルモン様刺激物などの生理的影響を評価することができ、結果的に、より安全かつ健康増進・維持に役立つ情報提供に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品や食品等が生理的に及ぼす影響について、その原因物質の特定とメカニズムを明らかにすることにより、医薬品や食品等の摂取による生理的影響を考慮した処方箋、食事箋などが開発されてきた。しかしながら、欧米で最近顕著となった健康食品(国内においてはフードサプリメント、米国においてはダイエタリーサプリメント、欧州においてはフードサプリメント、または、ハーバルメディシンと呼ばれる)等においては、作用機序よりも統計的な結果に基づいた積極的な利用が医療機関を含めて行われている。例えば、イチョウ葉エキスの軽中度の認知症患者に対する処方やコンドロイチン硫酸及びグルコサミンの関節炎やリウマチ症患者への処方などがよく知られている。我が国においては、例示した成分は、未だ、健康食品や一部市販薬を利用して行われており、医療機関による処方よりは、オンライン型健康食品販売サイトや説明型薬局に代表されるような健康食品類についての情報提供事業体を通じて流通しているのが一般的である。
【0003】
一方、多くの健康食品が氾濫し、健康食品市場は近い将来の成長市場として期待されているが、作用結果や重複利用時の相乗作用や相互作用の結果についての情報は乏しく、同時に、成分について一部は微量の医薬品成分を混入した商品までも見受けられ、市場登場後に関連公的機関から危険情報が出されるなど後手に回っていることを否めない状況で、消費者は危険にもさらされ得る状況下にある。
【0004】
従来は、民間に伝承蓄積された情報に基づいた天然物を含む成分利用のため、天然物や成分に依存した情報として生理的影響についての情報が提供されており、特に、問題となった医薬品等との相互作用や利用されている天然物を含む成分自身の副作用などについて警告や注意が促されてきた。そのため、一定の共通の物差しで比較検討するような手法は存在し得なかった。例えば、免疫賦活と呼ばれる健康補助食品の領域では、キノコ類、海草類、菌類、植物油脂など様々な商材が存在することが知られているが、比較は動物実験データなどが存在して消費者に提供される程度であるが、実際には、その免疫賦活自体のバリエーションが存在し、有る一定の傷病群に対してのみ有効であることが最近理解されつつある。従来技術ではこれら特性を普遍的に表現することが不可能であった。また一方で、金属アレルギーは知られているが、経口でない限り、単純な物理刺激によるアレルギーとの判別が困難である。つまり、予め有る特定の金属物を装着した時のサイトカイン産生能を測定することにより、金属アレルギーか、物理刺激アレルギーかといった微妙な相違を定義できる可能性は従来の物質依存型の情報では為し得なかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、上述に鑑みてなされたものであり、従来及び将来提供される、経口、経皮、及び、非接触を含む物理学的手法について、統合的な尺度を与え、医療機関等の専門家に適正なガイドラインを与えたり、消費者が自ら判断する客観的な分かり易い尺度を与えることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、上記目的は、請求項1に記載されるが如く、(1)一般健常者、特定の傷病の健常者及び特定の傷病の罹患者に対する健康補助食品を含む食品の摂取による刺激前後の変化を前記健康補助食品の成分についてホルモン/サイトカインのスペクトルデータを記録し、
(2)前記記録されたデータは、統計的な解析によって、上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行い、
(3)前記刺激前に対する前記刺激後の前記ホルモン/サイトカインの分泌量又は産生量の変量を記録し、
(4)前記ステップ(2)又は(3)により記録されたパターンを経時的に記録し、経時的な変化を上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行うことによって、与えられた刺激のホルモン/サイトカインに対する特性を分析して、健康補助食品を含む食品を分類する手段によって達成される。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、従来では比較が困難であった健康食品の生理的影響を評価することができ、結果的に、より安全かつ健康増進・維持に役立つ情報が提供できる。
【0008】
請求項2にかかる発明は、(1)一般健常者、特定の傷病の健常者及び特定の傷病の罹患者に対する薬剤の摂取による刺激前後の変化を前記薬剤の成分についてホルモン/サイトカインのスペクトルデータを記録し、
(2)前記記録されたデータは、統計的な解析によって、上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行い、
(3)前記刺激前に対する前記刺激後の前記ホルモン/サイトカインの分泌量又は産生量の変量を記録し、
(4)前記ステップ(2)又は(3)により記録されたパターンを経時的に記録し、経時的な変化を上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行うことによって、与えられた刺激のホルモン/サイトカインに対する特性を分析して、薬剤を分類する手段によって達成される。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、従来では比較が困難であった薬剤の生理的影響を評価することができ、結果的に、より安全かつ健康増進・維持に役立つ情報が提供できる。
【0010】
請求項3にかかる発明は、(1)一般健常者、特定の傷病の健常者及び特定の傷病の罹患者に対する歯磨き粉の摂取による刺激前後の変化を前記歯磨き粉の成分についてホルモン/サイトカインのスペクトルデータを記録し、
(2)前記記録されたデータは、統計的な解析によって、上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行い、
(3)前記刺激前に対する前記刺激後の前記ホルモン/サイトカインの分泌量又は産生量の変量を記録し、
(4)前記ステップ(2)又は(3)により記録されたパターンを経時的に記録し、経時的な変化を上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行うことによって、与えられた刺激のホルモン/サイトカインに対する特性を分析して、歯磨き粉を分類する手段によって達成される。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、従来では比較が困難であった歯磨き粉の生理的影響を評価することができ、結果的に、より安全かつ健康増進・維持に役立つ情報が提供できる。
【0012】
請求項4にかかる発明は、(1)一般健常者、特定の傷病の健常者及び特定の傷病の罹患者に対する化粧品の摂取による刺激前後の変化を前記化粧品の成分についてホルモン/サイトカインのスペクトルデータを記録し、
(2)前記記録されたデータは、統計的な解析によって、上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行い、
(3)前記刺激前に対する前記刺激後の前記ホルモン/サイトカインの分泌量又は産生量の変量を記録し、
(3)前記ステップ(2)又は(3)のステップにより記録されたパターンを経時的に記録し、経時的な変化を上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行うことによって、与えられた刺激のホルモン/サイトカインに対する特性を分析して、化粧品を分類する手段によって達成される。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、従来では比較が困難であった化粧品の生理的影響を評価することができ、結果的に、より安全かつ健康増進・維持に役立つ情報が提供できる。
【0014】
請求項5にかかる発明は、(1)一般健常者、特定の傷病の健常者及び特定の傷病の罹患者に対する装身用品の着用による刺激前後の変化を前記装身用品の成分についてホルモン/サイトカインのスペクトルデータを記録し、
(2)前記記録されたデータは、統計的な解析によって、上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行い、
(3)前記刺激前に対する前記刺激後の前記ホルモン/サイトカインの分泌量又は産生量の変量を記録し、
(4)前記ステップ(2)又は(3)により記録されたパターンを経時的に記録し、経時的な変化を上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行うことによって、与えられた刺激のホルモン/サイトカインに対する特性を分析して、装身用品を分類する手段によって達成される。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、従来では比較が困難であった装身用品の生理的影響を評価することができ、結果的に、より安全かつ健康増進・維持に役立つ情報が提供できる。
【0016】
請求項6にかかる発明は、(1)一般健常者、特定の傷病の健常者及び特定の傷病の罹患者に対する環境ホルモン様刺激物の刺激前後の変化を前記環境ホルモン様刺激物の成分についてホルモン/サイトカインのスペクトルデータを記録し、
(2)前記記録されたデータは、統計的な解析によって、上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行い、
(3)前記刺激前に対する前記刺激後の前記ホルモン/サイトカインの分泌量又は産生量の変量を記録し、
(4)前記ステップ(2)又は(3)により記録されたパターンを経時的に記録し、経時的な変化を上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行うことによって、与えられた刺激のホルモン/サイトカインに対する特性を分析して、環境ホルモン様刺激物を分類する手段によって達成される。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、従来では比較が困難であった環境ホルモン様刺激物の生理的影響を評価することができ、結果的に、より安全かつ健康増進・維持に役立つ情報が提供できる。
【0018】
請求項7にかかる発明は、(5)請求項1乃至6のいずれか一項に記載の手段で分析された特性によって刺激を分類し、
(6)対象となる利用者の刺激前のホルモン/サイトカインの分泌又は産生の状況を前記ステップ(1)で記録された傷病罹患者と比較し、最近似のパターンを抽出し、
(7)前記ステップ(5)で分類された刺激の中から、最適な刺激を選択し、
(8)前記ステップ(7)で選択された刺激の前後でホルモン/サイトカインの分泌又は産生を前記ステップ(2)乃至(4)のいずれかで合致又は近似の刺激となる選択を補助する解析手段によって達成できる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、従来では比較が困難であった健康食品などの生理的影響を評価するためのデータ解析でき、結果的に、より安全かつ健康増進・維持に役立つ情報を提供できる。
【0020】
請求項8にかかる発明は、因子分析法による相関解析、セルオートマトン理論応用によるカオス状態の判別法に基づく異常性判断、又はポアッソン空間若しくは二項空間での異常集積データの判別を組み合わせて、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の手段で得られたデータを解析利用する手段によって達成できる。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、従来では比較が困難であった健康食品などの生理的影響を評価したデータ解析を利用することができ、結果的に、より安全かつ健康増進・維持に役立つ情報を提供できる。
【発明の効果】
【0022】
したがって、本発明は、従来技術の問題点として、物質依存型の情報を生理活性物質である、ホルモンやサイトカインに着眼し、適切な健常者との比較という共通の尺度で提供することにより、従来比較が困難であった健康食品、医薬品、歯磨き粉などの医薬部外品、化粧品、装身用品及び環境ホルモン様刺激物などの生理的影響を評価でき、結果的により安全かつ健康増進・維持に役立つ情報提供が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の最良の実施形態について説明する。
【0024】
健康食品、医薬品、歯磨き粉などの医薬部外品、化粧品、身体に装着する装飾品、環境ホルモン様刺激物などの成分には、それぞれ成分を特定し、ある程度その作用機序が明らかにされたものと伝統的、経験的に利用されている、例えば天然由来成分が存在する。これらの成分について特性を論理的に把握し、その効果をより広範囲にするために組み合わせることは成分同士の相互作用や他の成分が影響を与えた生理活性による、ある成分の生理活性の低減または消失などが予測され、極めて困難な作業である。しかしながら、近年の科学技術の進歩により、生理活性に従来理解されてきたホルモンと類似でしかも患部局所的に作用が及ぶものとしてサイトカインというものが存在することが明らかにされてきた。つまり、ホルモンのみならず、サイトカインについてある特定の成分(複合的な天然物も特定と見なして)の影響を調べることで組み合わせの基本的なデータを獲得できると考えられた。実際に、二つの成分で図3に示すように特性が異なる場合、組み合わせれば相互に補完する機能として利用できる可能性が示される。ホルモンは例えば性同一性障害の場合に利用されたりするなど作用が劇的なものが多いが、サイトカインは未知既知を含めて100種類以上が実際に存在すると想定され、同時に、その多様性、多機能性からサイトカイン自身が作用の緩衝効果が期待できるとも考えられる。つまり、天然物を含むある特定の成分について、ホルモンへの影響、サイトカインへの影響を詳しく調べ、これをデータベース化して適切に利用すれば、われわれ人類の健康の維持・増進に極めて有用な手法となると考えられる。
【0025】
実際には、ある傷病に対する有効性を検証する場合、ヒトの生理状態は条件によって様々なため、厳密な意味での健常者を集めることは現実的に不可能に近いため、傷病への罹患の有無を診断し、無い者を便宜的に健常者と定義し、有る者を罹患者と定義して、両者のデータを適切に比較検討することによって基準となるデータを得られる。また、視覚的に捉えたり、数学的に分析して捉え直すために、グラフに表示したり、電子計算機処理によって間接的な指標となるデータを得ることで、より利用し易くできる。逆に、最近話題となった化学品過敏症や金属アレルギーなどの疾患については、製品にサイトカイン/ホルモンの特性を予め添付して商品提供することにより、無作為な苦痛や掻痒感などから消費者を守ることも可能と出来る。また、一般的な健常者(特定の傷病に罹患していない者)についてのサイトカイン/ホルモン・スペクトルを作成しておけば、傷病に対する健常者・罹患者データと組み合わせたり、単独で利用することにより、新規の成分についてその定性的または定量的特性について類推することも可能となる。
【0026】
下記にさらに詳細に本発明を説明する。
【0027】
本発明において、基準となる生理的な影響を判断するデータが必要とされることは創造に難くないが、実際に、様々な生理状態を呈する生物について基準となる「健常」の定義が困難である。また、動物実験データは、高度に生理的機序が複雑なヒトにおいては殆どの場合、有効でないことは既に自明の理である。例えば、自然免疫系のNK細胞活性の動物実験データ(多くはマウスやラットで得られる)については、獲得免疫系の役割が大きいヒトでは関連性は皆無といえるほど存在しない。そこで、本発明では、ヒトの生理作用に偏在する、生理活性物質に着目した。つまり、ヒトの生理活性物質は、ホルモン、サイトカイン、及び、神経伝達物質が知られており、これらの分泌状況が派生する生理状態つまり生理反応をある程度左右している。また、互いに干渉しない生理活性物質であれば、重畳的な作用の可能性が少ないとも考えられるため、指標と出来る可能性が高いと考えられる。
【0028】
上記の「健常」の定義については困難であるため、傷病を指標とし、診断上異常が認められない群を「健常」者として扱う。健常者と傷病の罹患者について、健康補助食品や医薬品、その他刺激物を与えたり、接触させること(刺激)により、生理状態が変化し、ホルモンやサイトカインの分泌または産生の状況は変化する。この刺激の前後での変化の様子を、(1)健常者、(2)傷病罹患者、及び、(3)健常者と傷病罹患者の変化の3通りのデータを記録する。記録されたデータは、統計的に解析することにより、(4)上昇(亢進)/低下(抑制)/不変/不定の4通りに分類する投票分析(ボーティング分析:voting analysis)、(5)刺激前に対する刺激後の分泌量または産生量の変量、(6)(4)または(5)により記録されたパターンを経時的に記録し、経時的な変化を上昇(亢進)/低下(抑制)/不変/不定の4通りに分類する投票分析(ボーティング分析:voting analysis)することにより得られる経時的投票分析の6つの手法により、与えられた刺激のホルモン/サイトカインに対する特性を分析する。(7)分析された特性によって刺激を分類し、(8)対象となる利用者の刺激前のホルモン/サイトカインの分泌または産生の状況を(2)で記録された傷病罹患者と比較し、最近似のパターンを抽出し、(9)(7)で分類された刺激の中から、最適な刺激となる例えば健康補助食品、医薬品やその他の刺激を選択して、(10)(9)で選択された刺激の前後でホルモン/サイトカインの分泌または産生の状況を(4)乃至(6)のいずれかで合致または近似の刺激となる選択することを補助する。
【0029】
これら(1)乃至(10)の手段は各分泌量や産生量を電子的に記録し、電子計算機によって与えることも可能であるし、簡易的なフローチャートのような手段によって与えることも可能であって、手段を提供する方法に依存しない。
【0030】
また、上記(1)乃至(6)に記載された手順により得られたデータの数値化列を用いて、グラフに表示(図1、2)したり、さらに高度な統計的解析手法、例えば、健常者及び罹患者の性別、年齢、居住地域、食生活、嗜好品などの付帯情報と共に(11)主成分分析などの因子分析法による相関解析や(12)セルオートマトン理論応用によるカオス状態の判別法に基づく異常性判断、(13)ポアッソン空間や二項空間での異常集積データの判別を組み合わせてより適正に傷病の状態などを判定する。
【0031】
上記のように、本発明のサイトカイン/ホルモン・スペクトルによる生理活性識別法は、大別すると、(a)従来不可能であった物質情報に依存しない、普遍的な生理的影響を与え得る物質、刺激に対する情報をどのように獲得し、(b)どのような比較可能なデータを与え、(c)どのような手法で解析的利用に供するかという3つである。具体的には、まず、(a)については、末梢血や患部局所血を利用した血漿でのサイトカイン産生能を測定し、末梢血や患部局所血に含まれるホルモン量を測定することによって数値化することが可能である。次に、特に罹患している傷病が存在していない一般的な健常者、有る特定の傷病についての健常者と罹患者のデータを出来るだけ同じ条件下で比較することにより、その健常者同士、罹患者同士で有意な差異を示すサイトカイン及びホルモンのみに着眼して、これらの種類を横軸に産生能及び観測量の健常者との差異(比または差分など)を縦軸に表現することにより光のエネルギー分布と同様のサイトカイン及びホルモンについての観察強度のスペクトルを定量的に獲得できる。
【0032】
次に、(b)については、前述で得られた定量データの再現性の精度、確度を検討し、精度、確度が高ければそのまま比較データとして利用可能であり、精度、確度が低ければ、有意な差異を示したサイトカイン及びホルモンについて投票解析によって得たパターン、または、経時的に得られた前述の投票解析パターンのデータについてカオス理論応用の関係性パターンを記述することにより、比較可能なデータが得られる。
【0033】
最後に(c)については患者属性データを含めた主成分分析のような因子分析法や(a)で獲得された基本データを、例えば、医薬品と比較して加算的に効果が現れないか検討したり、相互的に打ち消し合う可能性がないかをサイトカインやホルモンによって惹起される臨床症状を推定することで可能にしたり、また、基本データが確率空間(二項空間やポアッソン確率空間)に有ると想定して、物質や刺激の利用者の経時的変化等を確率的に比較し、異常なデータの集積か否かを判定して、異常が十分と判断されれば利用についての警告を呈示するような方法で提供することも含まれる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明の製法にしたがって実施した具体例を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
対象となる物質や刺激についての安全性や有用性の例えば二重盲検のような実体確認は本発明の課題を解決するための手段には含まず、予め、実施されて確認されていることが前提となる。本発明の実施例において、末梢血や患部局所の採血により得られた血漿検体(手段によっては全血検体やさらに詳細な画分検体でもよい)について、細胞機能検査的にサイトカイン産生能を測定したり、成分検査としてホルモン含有量やサイトカイン含有量を測定することによって得られる。図4に本発明の具体的な実施例のダイアグラムを示し、例えば、歯周病患者に免疫を賦活するバチルス由来健康食品成分を投与した場合の例を示す。まず、始めにn=3以上の検体を健常者、罹患者毎に行い、有意な差異をもたらす可能性のあるサイトカイン及びホルモンの対象を絞り込むことも可能である。こうして得られたデータ(基本データ)とデータを得た実験状況(温湿度、実験日、実験で利用した試薬類のロット番号など)−すなわち実験属性データ、及び、検体の属性(検体採取日、検体の保存状況及び採取後経過時間、患者の年齢、性別、罹患傷病名、罹患傷病の状態、居住地域、女性の場合は生理周期と採血タイミングの相関または閉経後経過時間、食事状況、嗜好品の状況、感染履歴など)−すなわち検体属性データとともに記録する。なお、検体の属性については個人のプライバシーも問題に配慮して二重盲検的に工夫された別個のデータベースシステムに記録されてもよい。記録された実験属性データと検体属性データを用いて主成分分析を行い、属性データの中で基本データに有意に影響を与える因子について有意差を考慮した、例えば、有意でないグループの基本データを解析対象から外すような補正を行い、比較可能なデータを得る。次に比較可能なデータをグラフ等で可視化して利用者の目安として電子的または印刷物として提供したり、新規の物質や刺激等について新たに獲得した比較可能なデータについて、従来の類似データ(サイトカインやホルモンの項目の類似、各項目毎の増減または影響の有無の類似など)を抽出し、類似する物質や刺激の呈示、または、類似と新規との比較データの提供が可能である。また、有る特定の物質や刺激の利用者について経時的にホルモンやサイトカインの変化を記録し、比較可能なデータが確率分布空間にあると仮定して異常値を判別して、異常値が有る一定以上集積された場合に、警告や利用の制限を呈示することも可能である。
【0036】
したがって、物質依存型の情報を生理活性物質である、ホルモンやサイトカインに着眼し、適切な健常者との比較という共通の尺度で提供することにより、従来比較が困難であった健康食品の生理的影響を評価でき、結果的により安全かつ健康増進・維持に役立つ情報提供が実現できる。また、本発明は、健康食品だけでなく、医薬品、歯磨き粉などの医薬部外品、化粧品、装身品及び環境ホルモン様刺激物などの生理的影響を評価でき、結果的により安全かつ健康増進・維持に役立つ情報提供が実現できる。
【0037】
本発明によると、健康食品業界、医薬品業界においては、成分が特定できていない場合でも、相互作用を類推する手段として利用したり、特に、医薬品については患者が普段利用する健康食品等について処方された医薬品や処置の内容に応じて、予め、利用を制限したりといった対処がより正確さを伴って論理的に可能となる。また、医薬品開発において、天然成分を特定のホルモンやサイトカインへの影響という視点から、薬効の大きな成分のみならず、天然成分中に含まれる副作用を減じたりなどの目的での組み合わせを類推する創薬での利用が想定される。
【0038】
医療業界においては、診療の場面に於いて、医薬品のみならず、対象患者の全面的な支援が可能となり、個人毎に特化した保健指導や栄養指導などが実現できるとともに、患者も安心して普段の食生活を含めたホームドクターとして位置づけることが可能となり、大衆の健康増進・維持、並びにクオリティーオブライフ(QoL)の向上に資することが可能となる。また、集積された異常データの把握と適切な助言提供により、思わぬ被害を予防的に防いで、患者の未病状態の継続を実現することにより、社会的損失を最小限に抑制する効果も期待できる。
【0039】
健康産業界においては、経口のみならず、経皮、経鼻、また、皮膚接触や遠隔的電磁波の影響などを論理的に把握して評価することにより、実施的なクオリティーオブライフ(QoL)の向上や健康増進・維持のサービスが実現できると考えられる。
【0040】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は上記の特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】歯周病患者に免疫を賦活するバチルス由来健康食品成分を投与した場合のサイトカインの状況を示すグラフである。
【図2】図1の関係を補色関係を利用したダイアグラムで表現したパターン図である。
【図3】異なる二つの健康食品成分のサイトカイン産生能の比較を示す図である。
【図4】サイトカイン/ホルモンスペクトルの利用法を示すダイアグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)一般健常者、特定の傷病の健常者及び特定の傷病の罹患者に対する健康補助食品を含む食品の摂取による刺激前後の変化を前記健康補助食品の成分についてホルモン/サイトカインのスペクトルデータを記録し、
(2)前記記録されたデータは、統計的な解析によって、上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行い、
(3)前記刺激前に対する前記刺激後の前記ホルモン/サイトカインの分泌量又は産生量の変量を記録し、
(4)前記ステップ(2)又は(3)により記録されたパターンを経時的に記録し、経時的な変化を上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行うことによって、与えられた刺激のホルモン/サイトカインに対する特性を分析して、健康補助食品を含む食品を分類する手段。
【請求項2】
(1)一般健常者、特定の傷病の健常者及び特定の傷病の罹患者に対する薬剤の摂取による刺激前後の変化を前記薬剤の成分についてホルモン/サイトカインのスペクトルデータを記録し、
(2)前記記録されたデータは、統計的な解析によって、上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行い、
(3)前記刺激前に対する前記刺激後の前記ホルモン/サイトカインの分泌量又は産生量の変量を記録し、
(4)前記ステップ(2)又は(3)により記録されたパターンを経時的に記録し、経時的な変化を上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行うことによって、与えられた刺激のホルモン/サイトカインに対する特性を分析して、薬剤を分類する手段。
【請求項3】
(1)一般健常者、特定の傷病の健常者及び特定の傷病の罹患者に対する歯磨き粉の摂取による刺激前後の変化を前記歯磨き粉の成分についてホルモン/サイトカインのスペクトルデータを記録し、
(2)前記記録されたデータは、統計的な解析によって、上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行い、
(3)前記刺激前に対する前記刺激後の前記ホルモン/サイトカインの分泌量又は産生量の変量を記録し、
(4)前記ステップ(2)又は(3)により記録されたパターンを経時的に記録し、経時的な変化を上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行うことによって、与えられた刺激のホルモン/サイトカインに対する特性を分析して、歯磨き粉を分類する手段。
【請求項4】
(1)一般健常者、特定の傷病の健常者及び特定の傷病の罹患者に対する化粧品の摂取による刺激前後の変化を前記化粧品の成分についてホルモン/サイトカインのスペクトルデータを記録し、
(2)前記記録されたデータは、統計的な解析によって、上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行い、
(3)前記刺激前に対する前記刺激後の前記ホルモン/サイトカインの分泌量又は産生量の変量を記録し、
(3)前記ステップ(2)又は(3)のステップにより記録されたパターンを経時的に記録し、経時的な変化を上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行うことによって、与えられた刺激のホルモン/サイトカインに対する特性を分析して、化粧品を分類する手段。
【請求項5】
(1)一般健常者、特定の傷病の健常者及び特定の傷病の罹患者に対する装身用品の着用による刺激前後の変化を前記装身用品の成分についてホルモン/サイトカインのスペクトルデータを記録し、
(2)前記記録されたデータは、統計的な解析によって、上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行い、
(3)前記刺激前に対する前記刺激後の前記ホルモン/サイトカインの分泌量又は産生量の変量を記録し、
(4)前記ステップ(2)又は(3)により記録されたパターンを経時的に記録し、経時的な変化を上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行うことによって、与えられた刺激のホルモン/サイトカインに対する特性を分析して、装身用品を分類する手段。
【請求項6】
(1)一般健常者、特定の傷病の健常者及び特定の傷病の罹患者に対する環境ホルモン様刺激物の刺激前後の変化を前記環境ホルモン様刺激物の成分についてホルモン/サイトカインのスペクトルデータを記録し、
(2)前記記録されたデータは、統計的な解析によって、上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行い、
(3)前記刺激前に対する前記刺激後の前記ホルモン/サイトカインの分泌量又は産生量の変量を記録し、
(4)前記ステップ(2)又は(3)により記録されたパターンを経時的に記録し、経時的な変化を上昇/低下/不変/不定の4通りに分類する投票分析を行うことによって、与えられた刺激のホルモン/サイトカインに対する特性を分析して、環境ホルモン様刺激物を分類する手段。
【請求項7】
(5)請求項1乃至6のいずれか一項に記載の手段で分析された特性によって刺激を分類し、
(6)対象となる利用者の刺激前のホルモン/サイトカインの分泌又は産生の状況を前記ステップ(1)で記録された傷病罹患者と比較し、最近似のパターンを抽出し、
(7)前記ステップ(5)で分類された刺激の中から、最適な刺激を選択し、
(8)前記ステップ(7)で選択された刺激の前後でホルモン/サイトカインの分泌又は産生を前記ステップ(2)乃至(4)のいずれかで合致又は近似の刺激となる選択を補助する解析手段。
【請求項8】
因子分析法による相関解析、セルオートマトン理論応用によるカオス状態の判別法に基づく異常性判断、又はポアッソン空間若しくは二項空間での異常集積データの判別を組み合わせて、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の手段で得られたデータを解析利用する手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−10348(P2007−10348A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−188371(P2005−188371)
【出願日】平成17年6月28日(2005.6.28)
【出願人】(500349557)株式会社バイオ医療情報 (5)
【出願人】(505245058)
【出願人】(505245069)
【Fターム(参考)】