説明

サツマイモの密植栽培方法

【課題】収穫量が多く、かつ、相対的にサイズの小さいサツマイモが得られる栽培法を提供すること。
【解決手段】耕作地に形成した畝間の寸法Aと、各畝に植えられるサツマイモの苗株の株間寸法Bと、該苗株自体の高さ寸法Cと、前記苗株の植え方Dとから規定されるサツマイモの栽培方法において、
前記畝間の寸法 A=50〜80cm、
前記苗株の株間寸法 B= 5〜25cm、
前記苗株自体の高さ寸法 C= 8〜12cmの範囲内にあり、
かつ、前記苗株の植え方 Dが、耕作地の地面に対して略垂直に苗株が植えられることを特徴とする。
これにより、10アール(a)当たり、約8,000〜16,000本の苗の定植が可能となり、かつ、収穫量が従来法に比較して約60%の増収となる。さらに、1個当たりの重量が約100〜350グラム(g)のものが全体の収穫量の約60%を占めようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1個当たりの重量がかさばらず、商品価値の高いサツマイモを栽培することができ、しかも収穫量を増加できる新規なサツマイモの密植栽培方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のサツマイモの栽培方法を、図2を参照して説明する。
図2において、耕作地に形成した1a,1b,1c・・・・のように山の部分を畝と呼んでいる。また、2a,2b,2c・・・・は谷の部分である。そして畝間寸法と言う場合、正確には相隣り合う山の部分、例えば1a,1b間の寸法を言うが、相隣り合う谷の部分2a,2b間の寸法であっても同じであるため、本発明の説明では相隣り合う谷の部分2a,2b間の寸法Aを畝間寸法として説明する。
【0003】
上記従来の畝間寸法Aは、一般的にA=75〜120cmであった。
また、従来のサツマイモ栽培方法における隣接するサツマイモ苗株3a,3b,3c・・・・の株間寸法Bは図4に示すように、B=約40〜50cmであった。
さらに、サツマイモの苗株自体の高さ寸法Cは、C=8〜12cmであり、その苗株の植え方Dは、図6乃至図8に示すような方法を採用していた。
【0004】
すなわち、図6に示す方法は、いわゆる「船底形植え」と称されるもので、土中4に、船底形に横たわった幹苗5a,5b,5c・・・・から略垂直に枝苗6a,6b,6c,6d・・・・が地上に這い上がるような植え方である。
また、図7に示す方法は、いわゆる「水平形植え」と称されるもので、幹苗7
a,7b,7c・・・・が土中4に略水平になるように植えられ、この幹苗7a,7b,7c・・・・から略垂直に枝苗8a,8b,8c,8d・・・・が地上に這い上がるような植え方である。
【0005】
図8に示す方法は、いわゆる「斜め挿し形植え」と称されるもので、土中4に幹苗9a,9b,9c・・・・が略斜めに植えられ、この幹苗9a,9b,9c・・・・から略垂直に枝苗10a,10b・・・・が地上に這い上がるような植え方である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のサツマイモの栽培方法は、上記のように畝間寸法A=75〜120cm、株間寸法B=40〜50cmであって、苗の高さ寸法C=20〜25cm程度のものを、その植え方(定植方法)Cとして「船底形植え」、「水平形植え」、「斜め挿し形植え」等を採用していた。
上記従来の定植方法は10a当たり約1,700〜3,300本定植し、その収穫量は2〜3トン程度であった。また、かかる場合、サツマイモは頂芽優勢であるため、形状が大きく肥大し、1個当たりの重量が重くなっていた。このように従来の定植方法ではサツマイモの苗の定植本数が相対的に少なく、そのため収穫量の増大が望めない。そればかりではなく、1個の重量が重く形状も大きいため、食料品として種々の用途に使い難く商品価値が低下するという難点があった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、サツマイモの苗株の定植本数を従来方法と比較して飛躍的に増大させ、その結果、収穫量を増加させるとともに、1個当たりの重量を減少させ、商品価値の高いサツマイモを収穫することができるサツマイモの密植栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載のサツマイモの密植栽培方法は、耕作地に形成した畝間の寸法Aと、各畝に植えられるサツマイモの苗株の株間寸法Bと、該苗株自体の高さ寸法Cと、前記苗株の植え方Dとから規定されるサツマイモの栽培方法において、
前記畝間の寸法 A=50〜80cm、
前記苗株の株間寸法 B= 5〜25cm、
前記苗株自体の高さ寸法 C= 8〜12cmの範囲内にあり、
かつ、前記苗株の植え方 Dが、耕作地の地面に対して垂直に苗株が植えられることを特徴とするものである。
尚、畝間の寸法AをA=50〜80cmの範囲としたのは密植栽培を行うためである。
49.9cm以下の場合、定職後の管理作業が困難になることとサツマイモの肥大が悪くなり収穫量が減少する。80.1cm以上の場合、定植後の雑草が繁殖し、除草対策に時間がかかることとサツマイモ1個当たりのサイズが肥大し、かつ重量も重くなり商品価値が低下するためである。
株間寸法Bを、B=5〜25cmの範囲としたのは、密植栽培する上でもっとも重要なものであり、4.9cm以下の場合はサツマイモのサイズが小さくなり商品価値がなくなるためである。また、25.1cm以上とした場合は逆にサツマイモサイズが大きくなり、これも商品価値が下がるためである。
苗株の高さ寸法をC=8〜12cmの範囲としたのは苗株本数の増加が目的である。7.9cm以下の場合は1本の苗における芽数の確保が難しいためである。また、逆の12.1cm以上とした場合は苗株本数が減少することと土中における芽数が増加し、余計なサツマイモの数も多くなり、サイズも小さくなり1個の重量も小さくなりその場合も商品価値が下がるためである。
【0009】
請求項2に記載のサツマイモの密植栽培方法は、前記A,B,C及びDの条件下で、耕作地面積10アール(a)当たり約8,000〜16,000本のサツマイモ苗株を定植することを特徴とするものである。これにより、10アール(a)当たり、役8,000〜16,000本の苗の定植が可能となり、かつ、収穫量が従来法に比較して約60%の増収となる。さらに、1個当たりの重量が約100〜350グラム(g)のものが全体の収穫量の約60%を占めるようになる。
【0010】
請求項3に記載のサツマイモの密植栽培方法は、前記A,B,C及びDの条件下で収穫したサツマイモの1個当たりの重量が約100グラム(g)以上約350グラム(g)以下であり、かつ、当該重量範囲内のサツマイモの収穫量が全体の収穫量の少なくとも約50%以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記のように構成したので、サツマイモの苗株の定植本数を従来方法と比較して飛躍的に増大させ、相対的に収穫量を増加させるとともに、1個当たりの重量を減少させ市場における商品価値の高いサツマイモを収穫することができる。

【実施例】
【0012】
以下に本発明の実施例を、図3及び図5に基づいて詳細に説明する。
図3は耕作地のある畝に沿った断面図であり、苗株11a,11b,11c,11d・・・・が畝Mの地中4に略等間隔に定植される。このとき苗株の株間寸法をBとすると、B=5〜25cmにする。この株間寸法Bは従来の方法では図4に示したようにB=40〜50cmであり、苗株の株間寸法Bが1/2〜1/10に縮小され、いわゆる密植栽培を特徴としている。
なお、上記定植方法に使用する苗株自体の高さ寸法Cは、C=8〜12cmのものを使用した。
【0013】
また、定植方法は、図5に示すように地中4から略垂直に苗株11a,11b,11c,11d,11e,11f・・・・が成長するような方法を採用している。
本発明のサツマイモの密植栽培方法を採用することにより、4〜5トンの収穫量となり従来方法によるサツマイモの収穫量が10アール(a)当たり2〜3トンであったのに対して約60%の増収となる。
【0014】
次に、本発明のサツマイモの密植栽培方法によって収穫したサツマイモの階級別分布状況を収穫時期第1乃至第3回に分けて表1に示す。
【表1】

【0015】
上記表1からも分かるように収穫したサツマイモの1個当たりの重量が230〜350g(Lサイズ)、150〜230g(Mサイズ)、100〜150g(Sサイズ)の階級に属するものの比率が全体の約60%占めることになる。このことは、市場における商品価値が高まり、販売上極めて有利となる利点がある。
なお、サイズ(2S以下)が小さすぎても使いづらいため、本発明方法では1個当たりの重量が150〜350gの範囲となるように調整栽培するようにした。また、上記実施例の結果、当該重量範囲のものが約60%となったが、その比率が50%以上であれば十分採算が取れることとなる。
さらに上記の実施例では、苗株の植え方Dを、いわゆる「直挿し形植え」を採用したが、苗株が略垂直に土中より這い上がるような植え方であれば、本発明の技術的思想の範囲内で種々の改変が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のサツマイモの密植栽培方法における畝間の状況の説明図である。
【図2】従来のサツマイモの栽培方法における畝間の状況の説明図である。
【図3】本発明のサツマイモの密植栽培方法における苗株の株間寸法の説明図である。
【図4】従来のサツマイモの栽培方法における苗株の株間寸法の説明図である。
【図5】本発明のサツマイモの密植栽培方法における「直挿し形植え」定植状況を示す説明図である。
【図6】従来のサツマイモの栽培方法における「船底形植え」定植状況を示す説明図である。
【図7】従来のサツマイモの栽培方法における「水平形植え」定植状況を示す説明図である。
【図8】従来のサツマイモの栽培方法における「斜め挿し形植え」定植状況を示す説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1a,1b,1c 山の部分(畝)
2a,2b,2c 谷の部分
3a,3b,3c サツマイモ苗株
4 土中
5a,5b,5c 幹株
6a,6b,6c,6d 枝株
7a,7b,7c 幹株
8a,8b,8c,8d 枝株
9a,9b,9c 幹株
10a,10b 枝株
11a,11b,11c,11d,11e,11f 苗株
A 畝間の寸法
B 苗株の株間寸法


【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕作地に形成した畝間の寸法Aと、各畝に植えられるサツマイモの苗株の株間寸法Bと、該苗株自体の高さ寸法Cと、前記苗株の植え方Dとから規定されるサツマイモの栽培方法において、
前記畝間の寸法 A=50〜80cm、
前記苗株の株間寸法 B= 5〜25cm、
前記苗株自体の高さ寸法 C= 8〜12cmの範囲内にあり、
かつ、前記苗株の植え方 Dが、耕作地の地面に対して略垂直に苗株が植えられることを特徴とするサツマイモの密植栽培方法。
【請求項2】
前記A,B,C及びDの条件下で、栽培地面積10アール(a)当たり約8,000〜16,000本のサツマイモ苗株を定植することを特徴とする請求項1に記載のサツマイモの密植栽培方法。
【請求項3】
前記A,B,C及びDの条件下で収穫したサツマイモの1個当たりの重量が約100グラム(g)以上約350グラム(g)以下であり、かつ、当該重量範囲内のサツマイモの収穫量が全体の収穫量の少なくとも約50%以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のサツマイモの密植栽培方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−46021(P2010−46021A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213451(P2008−213451)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(505007191)
【Fターム(参考)】