説明

サポーター用ステー

【課題】 金属製スパイラルステーと同等の高剛性及び可動性を有し、プラスチック製ステーの持つ高耐久性、安全性、軽量性等を併せ持ち、装着後の状態が良好で、装着違和感を生じないサポーターのための用ステーを提供する。
【解決手段】 樹脂線材を扁平螺旋状に形成してなり、該樹脂線材を固着してなる固定支持部を長手方向に少なくとも2ヶ所有するサポーター用ステー。固定支持部が、扁平螺旋状樹脂線材の螺旋内部を貫通する芯材樹脂線材又は螺旋外部に設けた芯材樹脂線材が扁平螺旋状樹脂線材に固着されてなるサポーター用ステー。固定支持部が扁平螺旋状樹脂線材の複数箇所が相互に固着されてなるものであるサポーター用ステー。これらのサポーター用ステーを取り付けてなるサポーター。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体各部位に用いられるサポーター本体に、異常揺動の防止及びサポーター形状の維持の目的で内蔵又は外付けして用いられるサポーター用ステーに関する。更に詳しくは、機械的特性(強度、屈曲性、耐久性等)、軽量性及び安全性に優れ、装着後の状態が良好で、装着違和感を生じないサポーターを構成するためのステーに関する。
【背景技術】
【0002】
人体の膝関節、肘関節、脊椎関節等の身体屈伸部における捻挫、筋肉痛、リウマチ、神経痛等の治療用や、運動時又は日常生活におけるこれらの身体屈伸部保護用として、更には、寒季における保温等のために、これら身体屈伸部に装着するサポーターが用いられている。また、筋肉の肉離れや断裂が起きたときに筋肉を圧迫して保護するために、また、寒さから筋肉を保護するための保温目的で、大腿、下腿、上腕、前腕等の筋腹部に装着するサポーターが用いられている。これらのサポーターには、サポーターが身体屈伸部の屈伸運動や筋腹部筋肉の収縮運動等により所定位置からずれることを防止するために、また、怪我により破綻を来たした関節や筋肉の異常揺動を防止するために、更には外部から与えられる異常外力から関節や筋肉を保護するために、サポーターの側部の所定箇所にステーが備えられている。
【0003】
このようなステーとしては、金属製スパイラルステーや樹脂製平板状ステーが用いられている。
金属製スパイラルステーとしては、線材を蛇行状に折り曲げて形成したジグザグばね(特許文献1)、上下に配置した非屈曲性の部分とその間に設けられたコイルスプリング等の屈曲可能な部分とを有するもの(特許文献2)、コイル状のばね鋼線を扁平に押し潰して形成した扁平ばね棒(特許文献3)が知られている。
これらの金属製ステーは、金属の剛性が大きいので、厚さを薄くしても高い形状保持性や制動性(「制動」とは、例えば、靭帯が損傷して関節の構造が破綻したことにより引き起こされ得る生理的可動範囲外の動きをステーの剛性によって抑制することをいう。)が得られ、可撓性が大きく、身体屈伸部の動きや筋肉の収縮に追従して変形することができる。従って、このステーを用いたサポーターは違和感なく装着できること等の利点を有している。しかし、一方で、長期間使用すると、金属疲労による折損が起こってサポーターを傷つけたり、錆が発生したり問題がある。
【0004】
樹脂製平板状ステーとしては、細幅扁平状のもの(特許文献4)が知られている。樹脂製のステーは、錆発生の恐れがなく、耐久性が高く繰り返し使用に耐える利点がある。しかしながら、高い制動性を得るためには、厚さを増したり、幅を広くしたりしなければならない。そうすると、その厚さや幅の増加、それによる可撓性の低下によって、このステーを用いたサポーターは、装着違和感を生じる。
【0005】
特許文献5には、複数本の芯材の端部を樹脂で被覆して、これを溶着することにより各芯材を連結して1本の芯材としたサポーター等の芯材が開示されている。これは、長尺の芯材の端部がサポーターやファンデーションに食い込んで突き出るという欠点を改良するために考案されたものであるが、その構造上、各芯材の連結部分に応力が集中し、装着部分の屈曲・伸展にスムーズに追従できない、連結部分に動きが集中するのでこの部分の耐久性が低下する、連結部分では芯材が連結していないので強度が低下する等の問題がある。
【0006】
特許文献6には、弾性を有する合成樹脂からなる樹脂製コイルと、その開口部に挿通する形状記憶合金からなる中心線材と、からなるファンデーション用芯材が開示されている。この芯材は、それまでの全金属製形状記憶性ファンデーション用芯材が高価で嵩張ると共に金属疲労により折れることもあるほか、形状復元時に中心線材のずれによって必ずしも元の形状に戻らないことがあるのを改善するために開発されたものであり、形状記憶合金からなる中心線材を合成樹脂製のコイルに設けた中心線材保持部で安定的に保持しようとするものである。
このファンデーション芯材をサポーター用ステーに応用しようとすると、やはり使用中に中心線材のずれが起こり、また、中心線材の飛び出しを防ぐためのキャップが使用中に外れてしまい、従って中心線材が飛び出すという問題も生じる。
このように、サポーター用ステーに求められる各種の特性を満足させるものは、これまで見出されていない。
【0007】
【特許文献1】実開昭56−124470号公報
【特許文献2】実開昭63−176430号公報
【特許文献3】実開平3−104322号公報
【特許文献4】特開昭60−215361号公報
【特許文献5】実開昭63−69105号公報
【特許文献6】実開平4−135909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、プラスチックのスパイラルステーを用いて、その強度特性を向上させることにより、金属製スパイラルステーと同等の高剛性及び可動性を有し、プラスチック製ステーの持つ高耐久性、安全性、軽量性等を併せ持つ、装着後の状態が良好で、装着違和感を生じないサポーター用ステーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、サポーター用のステーの材質や構造について鋭意研究を進めた結果、特定の形状を有する樹脂線材を用いて扁平螺旋状ステーを形成し、この扁平螺旋状ステーの長手方向に少なくとも2箇所の固定支持部を設けることによって、上記課題を達成できることを見出し、この知見に基づいて更に検討を進めて、本発明を完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明によれば、樹脂線材を扁平螺旋状に形成してなり、該樹脂線材を固着してなる固定支持部を長手方向に少なくとも2ヶ所有するサポーター用ステーが提供される。
本発明のサポーター用ステーにおいて、扁平螺旋状樹脂線材は複数の樹脂線材からなるものであってもよい。また、このとき、複数の樹脂線材は、巻き方向の対称な2本の扁平螺旋状樹脂線材を含むものであることが好ましい。
本発明のサポーター用ステーにおいて、固定支持部は、扁平螺旋状樹脂線材の螺旋内部を貫通する芯材樹脂線材又は螺旋外部に設けた芯材樹脂線材が扁平螺旋状樹脂線材に固着されてなるものであることができる。このとき、扁平螺旋状樹脂線材の螺旋内部を貫通する芯材樹脂線材又は螺旋外部に設けた芯材樹脂線材が扁平螺旋状樹脂線材の融点よりも高くない融点を有するものであってもよい。
本発明のサポーター用ステーにおいて、固定支持部は、また、扁平螺旋状樹脂線材の複数箇所が相互に固着されてなるものであることができる。このとき、扁平螺旋状樹脂線材が融点の異なる複数の樹脂線材からなるものであることが好ましい。
本発明のサポーター用ステーにおいて、固定支持部は、また、扁平螺旋状樹脂線材を被覆する樹脂製チューブが扁平螺旋状樹脂線材に固着されてなるものであることができる。
【0011】
本発明のサポーター用ステーにおいて、固定支持部は、扁平螺旋状樹脂線材の融着によって形成されたものであることができる。
本発明のサポーター用ステーにおいて、固定支持部は、扁平螺旋状樹脂線材の接着によって形成されたものであることができる。
更に、本発明のサポーター用ステーは、好適には、10N以上の3点曲げ強度を有する。
更に本発明によれば、本発明のサポーター用ステーを取り付けてなるサポーターが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属製スパイラルステーと同等の高剛性及び可動性を有し、プラスチック製ステーの持つ高耐久性、安全性、軽量性等を併せ持つ、装着後の状態が良好で、装着違和感を生じない、身体屈伸部装着サポーター及び筋腹部装着サポーターとして好適なサポーターを得るためのサポーター用ステーが提供される。
このサポーター用ステーを用いることにより、機械的特性、軽量性及び安全性に優れ、装着後の状態が良好で、装着違和感を生じない、身体屈伸部装着サポーター及び筋腹部装着サポーターとして好適なサポーターを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のサポーター用ステー(以下、単に「ステー」ということがある。)は、樹脂線材を扁平螺旋状に形成してなる。
扁平螺旋状樹脂線材を構成する樹脂は、弾性を有するものであれば、特に限定されないが、その具体例としては、ポリエステル、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂等を挙げることができる。
この中でも、各種ポリエステル、ポリプロピレン(PP)及びポリアミド樹脂が好ましい。好ましいポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等を挙げることができる。
これらの樹脂は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
扁平螺旋状樹脂線材を構成するための樹脂線材の径は、特に限定されないが、通常、0.4〜1.5mm、好ましくは0.7〜1.2mmの範囲である。また、樹脂線材の3点曲げ強度は、特に限定されないが0.2N以上であることが好ましい。
この樹脂線材を螺旋状(螺旋の内径6〜15mm、好ましくは8〜10mm、螺旋のピッチ0〜3mm、好ましくは0.5〜1mm)に形成し、これをプレス加工して所定厚みの扁平螺旋状とする。
【0014】
扁平螺旋状樹脂線材は、単一の樹脂線材から構成されていてもよく、複数の樹脂線材から構成されていてもよい。複数の樹脂線材から構成すると、扁平螺旋状としたときに、相互に絡み合って、ステーとしての強度、耐久性等の機械的特性が好適なものとなる。
【0015】
また、扁平螺旋状樹脂線材を複数の扁平螺旋状樹脂線材から構成するとき、その巻き方向が対称な2本(例えば、右巻きと左巻き)の扁平螺旋状樹脂線材を含むものであることが好ましい。即ち、巻き方向が対称な2本の扁平螺旋状樹脂線材の組み合わせであってもよく、これに更に右巻きの扁平螺旋状樹脂線材及び/又は左巻きの扁平螺旋状樹脂線材を組み合わせたものであってもよい。
このとき、複数の扁平螺旋状樹脂線材同士が、緊密に噛み合い、ステーとしての強度、耐久性等の機械的特性が好適なものとなる。
【0016】
本発明のサポーター用ステーは、上記扁平螺旋状樹脂線材において、その長手方向に、これを構成する樹脂線材を固着してなる固定支持部を少なくとも2ヶ所有することが必要である。
固定支持部は、樹脂線材同士を又は樹脂線材と他の部材とを固着して形成される。この固定支持部を複数ヶ所設けることによって、固定支持部間が一定の距離に保たれ、サポーター用ステーに高剛性と可動性とを付与する。
固定支持部は、ステーの長手方向に少なくとも2ヶ所必要である。好ましくは、扁平螺旋状線材の螺旋ピッチとほぼ同等〜10倍の間隔で固定支持部を設ける。この間隔が大きすぎると、ステーの剛性及び復元性が不足する。
【0017】
固定支持部は、扁平螺旋状樹脂線材の螺旋内部を貫通する芯材樹脂線材を扁平螺旋状樹脂線材に固着することによって設けることができる。
芯材樹脂線材が内部を貫通した扁平螺旋状樹脂線材を得るには、螺旋状樹脂線材の螺旋内部に芯材樹脂線材を貫通させたのち、これをプレス加工して扁平とすればよい。
固定支持部は、また、扁平螺旋状樹脂線材の螺旋外部に設けた芯材樹脂線材を扁平螺旋状樹脂線材に固着することによっても設けることができる。
芯材樹脂線材を螺旋外部に設けた扁平螺旋状樹脂線材を得るには、螺旋状樹脂線材の螺旋外部に芯材樹脂線材を沿わせた後、これをプレス加工して扁平とするか、螺旋状樹脂線材を扁平とした後、これに芯材樹脂線材を載せてプレス加工すればよい。
【0018】
扁平螺旋状樹脂線材と芯材樹脂線材とを固着させるには、所望ならば加圧下に、加熱によりこれらの線材を融着させるか、これらの線材を溶剤等により膨潤ないし溶解した状態で両者を好ましくは加圧下に接触させ、次いで溶剤等を揮散させればよい。上記加熱の温度は、芯材線材の融点以上であることが好ましいが、15℃程度であれば芯材樹脂線材の融点よりも低い温度であってもよい。
扁平螺旋状樹脂線材と芯材樹脂線材との固着は、螺旋状樹脂線材を扁平とする前に行っても後に行ってもよいが、固着を強固にする観点からは、扁平とするのと同時か扁平とした後に行うのが好ましい。
【0019】
芯材樹脂線材は、その直径が0.4mm以上であり、その3点曲げ強度が1.0N以上であることが好ましい。芯材樹脂線材の特性がこの範囲にあるときに、ステーの剛性や屈曲性が良好なものとなる。
芯材樹脂線材の数は、一本でも複数本でもよいが、ステーとしての屈曲性、耐久性等を考慮すると、複数本であることが好ましい。なお、複数本の芯材樹脂線材の全てが扁平螺旋状樹脂線材に固着されていることは、必ずしも必要ではない。
【0020】
芯材樹脂線材の材質は、螺旋状樹脂線材に固着され得るものであれば、特に限定されないが、その具体例としては、ポリエステル、ポリプロピレン等のオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、塩化ビニル樹脂等を挙げることができる。このほか、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール等を用いることもできる。
この中でも、各種ポリエステル、ポリプロピレン及びポリアミド樹脂が好ましく、とりわけポリエステルが好ましい。
【0021】
本発明のサポーター用ステーにおいて、芯材樹脂線材の融点が扁平螺旋状樹脂線材の融点と同等であるか、これよりも低いことが好ましい。これにより、扁平螺旋状樹脂線材の螺旋内部に芯材樹脂線材を貫通させ又は螺旋外部に設けた状態で、両者を扁平螺旋状樹脂線材の融点よりも低く、且つ芯材樹脂線材の融点と同じか、より高い温度に加熱することにより、芯材樹脂線材のみを溶融させて扁平螺旋状樹脂線材の周囲に展延させ、この状態で冷却して、扁平螺旋状樹脂線材と芯材樹脂線材とを固着させることができる。
【0022】
固定支持部は、扁平螺旋状樹脂線材の複数箇所を相互に固着させることによっても形成することができる。
なお、このとき、芯材樹脂線材を、扁平螺旋状樹脂線材の螺旋内部に貫通させ又は螺旋外部に設けておいてもよい。
螺旋状樹脂線材をプレス加工すると、扁平螺旋状樹脂線材同士が重なり合う部分が生じる。加熱によりこれらの線材の重なり合う部分を融着させるか、これらの線材が溶剤等により膨潤ないし溶解した状態で両者を好ましくは加圧下に接触させ、次いで溶剤等を揮散させればよい。上記の加熱の温度は、螺旋状樹脂線材の融点付近の温度であることが好ましい。
なお、プレス加工と固着とは、同時に行ってもよい。
【0023】
扁平螺旋状樹脂線材を融点の異なる複数の樹脂線材で構成することができる。
このとき、複数の樹脂線材のそれぞれの融点の中間の温度で加熱を行うことにより、低融点の樹脂線材のみを溶融させて高融点の樹脂線材の周囲に展延させ、この状態で冷却して、両樹脂線材を固着させることができる。また、このとき、両者を加圧することもできる。
【0024】
固定支持部は、扁平螺旋状樹脂線材を熱収縮性重合体チューブで被覆し、この熱収縮性重合体チューブを扁平螺旋状樹脂線材の外形に沿った形に収縮させることにより、扁平螺旋状樹脂線材の自由度を束縛して形成することができる。このとき、チューブと線材との間の結合を生じさせることは必須ではない。チューブ被覆により、扁平螺旋状樹脂線材の長さや幅は変化しないが柔軟性があり、屈曲し得る状態となっている。
【0025】
熱収縮性重合体チューブとして用い得る重合体の具体例としては、ポリオレフィン、エチレンプロピレンゴム、シリコンゴム、フッ素樹脂、塩化ビニル樹脂等を挙げることができる。これらのうち、引張強度が1〜3.0kg/mm(JIS K 6251)、内径収縮率が30〜70%のものを好適に使用することができる。
【0026】
本発明のサポーター用ステーは、好適には、10N以上の3点曲げ強度を有する。
本発明のサポーターは、サポーターに本発明のサポーター用ステーを取り付けてなる。
サポーターは、従来公知の構造のものでよく、また、身体屈伸部装着サポーター及び筋腹部装着サポーターのいずれであってもよい。
サポーターは、通常、編織布で構成されている。素材として伸縮性素材を用いてもよい。
このような伸縮性素材としては、天然繊維、化学繊維よりなる織布、編布、不織布、パイル生地、プラスチックフォーム等を単独で又は組み合わせて使用することができる。具体的な素材としては、綿、毛、ウール、レーヨン、アクリル、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン等の繊維を適宜組み合わせてなる経編み又は緯編みのジャージ生地、パワーネットのような弾性糸混紡編物、ダブルラッセル生地等の立体編物等がある。更に、これらの生地とゴム発泡体(クロロプレンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、イソプレンゴム等)、ウレタン発泡体(圧縮ウレタン)等のフォーム材料を積層した複合材料が挙げられる。
【0027】
ステーをサポーターに取り付ける方法は、特に限定されず、サポーターに縫い付ける、サポーターに接着剤等を用いて接着する等の方法でもよいが、通常、サポーター側部に設けた収納部分(ステーカバー)にステーを収納する。収納部分は、本体部の外側に設けてもよく、内側に設けてもよい。材質には、特に限定はなく、本体部と同一であっても、異なっていてもよい。収納部分の形状も、ステーをある程度の自由度を持ってサポーター側部に保持できる袋状等のものであればよい。収納部は、本体と一体に形成されていてもよく、別途、形成したものを縫合等の手段により、本体部に合体させてもよい。
【実施例】
【0028】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
なお、本発明において、ステー及びこれを取り付けたサポーター用ステー等の特性は、以下の試験法により測定した。
【0029】
[ステーの3点曲げ強度]
JIS K 6911の曲げ強さ及び曲げ弾性率に準じて測定する。具体的には、万能試験機[島津製作所社製オートグラフ]を用いて行う。検体を固定する治具は、直方体のブロックに検体の厚さに相当するスリットがあるもので、それを2個支点として内側側面間の距離が50mmになるように固定し、長さ200mmの検体を、少なくとも検体の支持部が回転や捻れを起こさないようにスリット部分に挟み込んで固定し、検体の支点間中央を試験速度1,000mm/分の条件で垂直方向に10mm押し込んだときの強度を測定する。
【0030】
[フィラメントの3点曲げ強度]
JIS K 6911の曲げ強さ及び曲げ弾性率に準じて測定する。具体的には、万能試験機[島津製作所社製オートグラフ]を用いて行う。検体を固定する治具は、直方体のブロックにフィラメントの径に相当するスリットがあるもので、それを2個支点として内側側面間の距離が50mmになるように固定し、長さ200mmの検体を、少なくとも検体の支持部が回転や捻れを起こさないようにスリット部分に挟み込んで固定し、検体の支点間中央を試験速度1,000mm/分の条件で垂直方向に10mm押し込んだときの強度を測定する。
【0031】
[ステーの横方向しなり角度]
長さ100mmの試験片の両端をペンチで把持し、試験片を含む平面内でこの試験片を曲げた際に、この試験片が前記平面からはみ出したり、試験片に撚れが生じたりする前の最大曲げ角度θ1(曲げる前の角度が0度である。図1参照)を求める。
【0032】
[ステーの耐久性]
長さ100mmの試験片の長手方向50mmの間隔で試験片の二箇所を、試験片の長手方向と直角の角度からペンチで挟み、捻れないようにして(試験片平面内での)100度の屈曲を100回行い、次に試験片の短手方向180度の捻り(試験片が短手方向に裏返る)を100回行う。この100回の屈曲及び100回の捻りを1セットとして、5セット繰り返したときに折損を生じるまでの回数を表示する。この回数が多いほどよい(図2及び図3参照)。
【0033】
[サポーター装着後の状態]
経編みジャージ生地とウレタン発泡体とを積層した材料を膝形状にあわせてスリーブ状に縫製し、膝の内側及び外側に当該ステーを取り付けるステー挿入袋を設けた汎用的な膝用スリーブサポーターにステーを取り付け、このサポーターを装着し、その状態で日常動作を行い、1時間後のサポーターの状況を見たときに、サポーター本体が装着部位の身体形状に沿ってフィットしているか、あるいは沿わずにサポーター本体に潰れが生じているかを、10人の被験者について調べる。潰れが生じていないほうがよい。
【0034】
[サポーター装着違和感]
ステーを取り付けたサポーターを装着したときに、ステーが装着部位に当たって痛みを覚えたり、ステーの存在に不快を感じさせたりするかどうかを、10人の被験者について調べ、装着違和感を覚えた者の数で示す。この数が少ない方がよい。
【0035】
(実施例1)
径が0.7mmのポリエチレンテレフタレート(PET)(融点=250℃)からなるモノフィラメント(3点曲げ強度1.2N)を直径8mmの円柱材に巻きつけ180℃で熱セットして螺旋状樹脂線材を作製した。また、これと逆巻きになるようにもう1本の螺旋状樹脂線材を作製した。これら2本の螺旋状樹脂線材を噛み合わせて複合螺旋状樹脂線材を得た。この複合螺旋状樹脂線材の中心に径が0.7mmのポリブチレンテレフタレート(PBT)(融点=225℃)のモノフィラメント(3点曲げ強度1.2N)からなる芯材樹脂線材を2本挿入し、これを熱プレス機で225℃の温度で熱圧着することにより、扁平複合螺旋状樹脂線材と芯材樹脂線材とが少なくとも2ヶ所で固着した固定支持部を有するサポーター用ステー1を得た。
サポーター用ステー1の構成を表1に示す。このサポーター用ステー1及びこれを取り付けたサポーターについて各特性を評価した。結果を表3に示す。
【0036】
(実施例2)
扁平螺旋状樹脂線材を径が1.2mmのPET(融点=250℃)からなるモノフィラメント(3点曲げ強度4.0N)で形成し、芯材樹脂線材を径が1.2mmのPBT(融点=225℃)からなるモノフィラメント(3点曲げ強度3.2N)で形成するほかは、実施例1と同様にして、扁平複合螺旋状樹脂線材と芯材樹脂線材とが少なくとも2ヶ所で固着した固定支持部を有するサポーター用ステー2を得た。
サポーター用ステー2の構成を表1に示す。このサポーター用ステー2及びこれを取り付けたサポーターについて各特性を評価した。結果を表3に示す。
【0037】
(実施例3)
螺旋状樹脂線材の1本を径が1.2mmのPET(融点=250℃)からなるモノフィラメント(3点曲げ強度4.0N)で形成し、もう1本をこれと逆巻になるように径が1.2mmのポリプロピレン(PP)(融点=125℃)からなるモノフィラメント(3点曲げ強度3.2N)で形成するほかは実施例1と同様にして複合螺旋状樹脂線材を得た。この複合螺旋状線材の中心に径が1.2mmのPP(融点=125℃)からなるモノフィラメント(3点曲げ強度3.2N)で形成した芯材樹脂線材を3本挿入し、これを熱プレス機で125℃の温度で芯材と同幅部位のみを熱圧着することにより、扁平複合螺旋状樹脂線材と芯材樹脂線材とが少なくとも2ヶ所で固着した固定支持部を有するサポーター用ステー3を得た。
サポーター用ステー3の構成を表1に示す。このサポーター用ステー3及びこれを取り付けたサポーターについて各特性を評価した。結果を表3に示す。
【0038】
(実施例4)
径が1.2mmのPET(融点=250℃)からなるモノフィラメント(3点曲げ強度4.0N)を直径8mmの円柱材に巻きつけ180℃で熱セットして螺旋状樹脂線材を作製した。
この螺旋状樹脂線材の中心に径が1.2mmのPBT(融点=225℃)のモノフィラメント(3点曲げ強度3.2N)からなる芯材樹脂線材を2本挿入し、これを熱プレス機で225℃の温度で熱圧着することにより、扁平螺旋状樹脂線材と芯材樹脂線材とが少なくとも2ヶ所で固着した固定支持部を有するサポーター用ステー4を得た。
サポーター用ステー4の構成を表1に示す。このサポーター用ステー4及びこれを取り付けたサポーターについて各特性を評価した。結果を表3に示す。
【0039】
(実施例5)
径が1.2mmのPET(融点=250℃)のモノフィラメント(3点曲げ強度4.0N)で形成し、熱圧着時の温度を250℃とするほかは、実施例4と同様にして、扁平螺旋状樹脂線材と芯材樹脂線材とが少なくとも2ヶ所で融着固着した固定支持部を有するサポーター用ステー5を得た。
サポーター用ステー5の構成を表1に示す。このサポーター用ステー5及びこれを取り付けたサポーターについて各特性を評価した。結果を表3に示す。
【0040】
(実施例6)
径が1.2mmのPET(融点=250℃)からなるモノフィラメント(3点曲げ強度4.0N)を直径8mmの円柱材に巻き付け180℃で熱セットして螺旋状樹脂線材を作製した。また、これと逆巻きになるようにもう1本の螺旋状樹脂線材を作製した。これら2本の螺旋状樹脂線材を噛み合わせて複合螺旋状樹脂線材を得た。この複合螺旋状樹脂線材の長さ方向に沿って幅方向の中心部を幅約1mmに亘って250℃で熱圧着して扁平とし、熱圧着した部分が融着固着している固定支持部を少なくとも2ヶ所有するサポーター用ステー6を得た。
サポーター用ステー6の構成を表1に示す。このサポーター用ステー6及びこれを取り付けたサポーターについて各特性を評価した。結果を表3に示す。
【0041】
(実施例7)
実施例6におけると同様にして複合螺旋状樹脂線材を得た。熱プレス機を用いてこれを200℃の温度で熱圧着して扁平複合螺旋状樹脂線材とした後、内径が10mmのポリオレフィンからなる熱収縮性チューブ(厚さ0.25mm、引張強度1.05kg/mm、内径収縮率40%、収縮温度115℃以上)内に挿入し、ドライヤーを用いて120℃の温風を当て、熱収縮性チューブを収縮させることより、熱収縮チューブが扁平複合螺旋状樹脂線材に少なくとも2ヶ所で固着された固定支持部を有するサポーター用ステー7を得た。
サポーター用ステー7の構成を表2に示す。このサポーター用ステー7及びこれを取り付けたサポーターについて各特性を評価した。結果を表3に示す。
【0042】
(実施例8)
扁平複合螺旋状樹脂線材を径が1.2mmのPBT(融点=225℃)からなるモノフィラメント(3点曲げ強度3.2N)で形成し、熱収縮性チューブとして内径が10mmのエチレンプロピレンゴム(EPR)からなる熱収縮性チューブ(厚さ0.4mm、引張強度1.30kg/mm、内径収縮率50%、収縮温度120℃以上)を使用するほかは、実施例7と同様にして、熱収縮チューブが扁平複合螺旋状樹脂線材に少なくとも2ヶ所固着された固定支持部を有するサポーター用ステー8を得た。
サポーター用ステー8の構成を表2に示す。このサポーター用ステー8及びこれを取り付けたサポーターについて各特性を評価した。結果を表3に示す。
【0043】
(比較例1)
実施例1におけると同様にして、径が0.7mmのPET(融点=250℃)からなるモノフィラメント(3点曲げ強度1.2N)を用いて複合螺旋状樹脂線材を得た。この複合螺旋状樹脂線材の中心に径が0.7mmのPET(融点=250℃)のモノフィラメント(3点曲げ強度1.2N)からなる芯材樹脂線材を2本挿入し、これを熱プレス機で180℃の温度で熱圧着してサポーター用ステー9を得た。このとき熱プレス機でかけた温度は芯材樹脂線材の融点よりも遥かに低く、芯材樹脂線材と扁平複合螺旋状樹脂線材は固着していない。
サポーター用ステー9の構成を表2に示す。このサポーター用ステー9及びこれを取り付けたサポーターについて各特性を評価した。結果を表3に示す。
【0044】
(比較例2)
径が1.2mmのPET(融点=250℃)からなるモノフィラメント(3点曲げ強度4.0N)を直径8mmの円柱材に巻きつけ180℃で熱セットして螺旋状樹脂線材を作製した。
この螺旋状樹脂線材の中心に径が1.2mmのPBT(融点=225℃)のモノフィラメント(3点曲げ強度3.2N)からなる芯材樹脂線材を2本挿入し、これを熱プレス機で180℃の温度で熱圧着してサポーター用ステー10を得た。このとき熱プレス機でかけた温度は芯材樹脂線材の融点よりも遥かに低く、芯材樹脂線材と扁平複合螺旋状樹脂線材は固着していない。
サポーター用ステー10の構成を表2に示す。このサポーター用ステー10及びこれを取り付けたサポーターについて各特性を評価した。結果を表3に示す。
【0045】
(比較例3)
外径が10mmの螺旋形状ステンレス鋼製コイルを長手方向に押し潰して幅10.0mm、厚み1.6mmステンレス鋼製スパイラルステー11を得た。
このスパイラルステー11の構成を表2に示す。このスパイラルステー11及びこれを取り付けたサポーターについて各特性を評価した。結果を表3に示す。
【0046】
(比較例4)
ポリウレタンを用いて射出成形により幅10.0mm、厚さ5.2mmの樹脂製板状ステー12(JIS硬度A:95)を得た。
この樹脂製板状ステー12の構成を表2に示す。この樹脂製板状ステー12及びこれを取り付けたサポーターについて各特性を評価した。結果を表3に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
【表3】

【0050】
上記の結果から示されるように、扁平螺旋状樹脂線材と芯材樹脂線材とが固着していない場合は、3点曲げ強度が弱く、サポーター装着後に潰れが発生する(比較例1と実施例1との対比及び比較例2と実施例4との対比)。
ステンレス鋼スパイラルステー11(比較例3)は、強度及び横方向しなり角度は良好であるが、金属疲労による折損が発生することから明らかなように、耐久性が悪い。更に、ポリウレタンの射出成形で得た厚さ5.2mmの樹脂製板状ステー12(比較例4)は、強度、横方向しなり角度及び耐久性は良好であるが、厚みがあるため装着感が悪い。
これに対して、本発明のステーは強度や屈曲性の強度特性及び耐久性に優れており、また、これを取り付けたサポーターは装着後の状態がよく、また、装着感も良好である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】横方向しなり角度の測定法を示す図 (a)は試験前の状態を、(b)はしなり角度θ1となっている状態を示す。
【図2】ステーの屈曲試験の方法を示す図 (a)は常態を、(b)は100度に屈曲した状態を示す。
【図3】ステーの捻り試験の方法を示す図 (a)は常態を、(b)は180度捻った状態を示す。
【符号の説明】
【0052】
θ1 横方向しなり角度試験におけるしなり角度
θ2 耐久性(屈曲試験)における屈曲角度(100度)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂線材を扁平螺旋状に形成してなり、該樹脂線材を固着してなる固定支持部を長手方向に少なくとも2ヶ所有するサポーター用ステー。
【請求項2】
扁平螺旋状樹脂線材が複数の樹脂線材からなるものである請求項1に記載のサポーター用ステー。
【請求項3】
複数の樹脂線材が、巻き方向の対称な2本の扁平螺旋状樹脂線材を含むものである請求項2に記載のサポーター用ステー。
【請求項4】
固定支持部が、扁平螺旋状樹脂線材の螺旋内部を貫通する芯材樹脂線材又は螺旋外部に設けた芯材樹脂線材が扁平螺旋状樹脂線材に固着されてなるものである請求項1〜3のいずれかに記載のサポーター用ステー。
【請求項5】
扁平螺旋状樹脂線材の螺旋内部を貫通する芯材樹脂線材又は螺旋外部に設けた芯材樹脂線材が扁平螺旋状樹脂線材の融点よりも高くない融点を有するものである請求項4に記載のサポーター用ステー。
【請求項6】
固定支持部が扁平螺旋状樹脂線材の複数箇所が相互に固着されてなるものである請求項1〜3のいずれかに記載のサポーター用ステー。
【請求項7】
扁平螺旋状樹脂線材が融点の異なる複数の樹脂線材からなるものである請求項6に記載のサポーター用ステー。
【請求項8】
固定支持部が、扁平螺旋状樹脂線材を被覆する熱収縮重合体チューブが扁平螺旋状樹脂線材に固着されてなるものである請求項1〜3のいずれかに記載のサポーター用ステー。
【請求項9】
固定支持部が、扁平螺旋状樹脂線材の融着によって形成されたものである請求項1〜3のいずれかに記載のサポーター用ステー。
【請求項10】
固定支持部が、扁平螺旋状樹脂線材の接着によって形成されたものである請求項1〜3のいずれかに記載のサポーター用ステー。
【請求項11】
3点曲げ強度が10N以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサポーター用ステー。
【請求項12】
請求項1〜3のいずれかに記載のサポーター用ステーを取り付けてなるサポーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−2369(P2007−2369A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185336(P2005−185336)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】