説明

サンシェード装置

【課題】シェードの展開動作をより確実に行うことが可能なサンシェード装置を提供する。
【解決手段】シェード21を巻き取り可能な第1巻取軸25と、シェード21の巻取方向ないし展開方向に沿って延び、シェード21のスライドバー23に取り付けられる第1ベルト50と、第1ベルト50を巻き取ることで、スライドバー23を変位させてシェード21を展開可能な第2巻取軸40と、第2巻取軸40を回転駆動可能なモータ31と、を備え、第1巻取軸25は、第2巻取軸40に対して同軸上かつ第2巻取軸40とは別個に回転可能となるように取り付けられており、さらに、第2巻取軸40の回転であって、第1ベルト50の巻取方向とは反対方向への回転を第1巻取軸25へ伝達することで、第1巻取軸25をシェード巻取方向へ回転させることが可能な回転伝達装置60を備えることに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンシェード装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両ウィンドウなどを覆うためのサンシェード装置としては、シェードと、巻取軸を備え、巻取軸を駆動装置にて回転させることで、シェードの展開及び巻取を自動的に行うものが知られている(下記特許文献1)。下記特許文献に記載のものでは、ブラインドウェブ(シェード)の先端と、巻取リール(巻取軸)とを連結する形でロープ(被巻取部材)が張られている。このロープを巻取リールによって巻き取ることで、ブラインドウェブの先端を展開方向へ引っ張ることが可能となっている。ブラインドウェブを展開する際には、駆動装置によって巻取リールを回転させることで、ロープを巻き取り、ブラインドウェブの先端を展開方向へ変位させる。これと同時に巻取リールの回転によって、巻取リールに巻かれた状態のブラインドウェブが送り出される。つまり、一つの駆動装置によって、巻取リールを回転させることでブラインドウェブの先端を展開方向へ引っ張る(変位させる)動作と、巻取リールに巻かれた状態のブラインドウェブを送り出す動作を同時に行うことができ、ブラインドウェブを常に張った状態で展開させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−272341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の構成において、ブラインドウェブをより滑らかに展開させるためには、巻取リールが回転することで送り出されるブラインドウェブの送り出し速度(単位時間当たりの送り出し量)と、ブラインドウェブの先端の変位速度を一致させることが好ましい。ブラインドウェブの送り出し速度とブラインドウェブの先端の変位速度とが異なると、ブラインドウェブが部分的に撓んだり、引っ張られたりする結果、ブラインドウェブが滑らかに展開されず、ブラインドウェブが確実に展開されないおそれがあるためである。しかしながら、巻取リールに巻回された状態のブラインドウェブの径(外周の長さ)は、ブラインドウェブを展開するにつれて減少してゆく。ブラインドウェブの送り出し量は、回転速度が一定の場合、ブラインドウェブの径に比例する。このため、仮に巻取リールの回転速度が一定である場合には、ブラインドウェブを展開するにつれて、ブラインドウェブの送り出し速度が小さくなる結果、ブラインドウェブの先端の変位速度との間に差が生じてしまう事態が懸念される。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シェードの展開動作をより確実に行うことが可能なサンシェード装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のサンシェード装置は、可撓性部材からなるシェードと、前記シェードの一端部が取り付けられ、前記シェードを巻き取り可能な第1巻取軸と、前記シェードの巻取方向ないし展開方向に沿って延びる長尺状の可撓性部材であって、長手方向における一端部にて前記シェードの他端部に取り付けられる第1被巻取部材と、前記第1被巻取部材の長手方向における他端部が取り付けられ、前記第1被巻取部材を巻き取ることで、前記シェードの前記他端部を前記第1巻取軸から遠ざかる方向へ変位させて前記シェードを展開させることが可能な第2巻取軸と、前記第2巻取軸を回転駆動させることが可能な駆動装置と、を備え、前記第1巻取軸は、前記第2巻取軸に対して同軸上かつ前記第2巻取軸とは別個に回転可能となるように取り付けられており、さらに、前記第2巻取軸の回転であって、前記第1被巻取部材の巻取方向とは反対方向への回転を前記第1巻取軸へ伝達することで、前記第1巻取軸をシェード巻取方向へ回転させることが可能な回転伝達装置を備えることに特徴を有する。
【0007】
本発明において、シェード巻取時には、駆動装置によって第2巻取軸を第1被巻取部材の巻取方向とは反対方向へ回転させる。これにより、第2巻取軸の回転が、回転伝達装置を介して、第1巻取軸へ伝達され、第1巻取軸をシェード巻取方向へ回転させる。これにより、シェードを巻き取ることが可能となる。
【0008】
一方、シェード展開時には、駆動装置によって第2巻取軸が第1被巻取部材の巻取方向に回転され、第1被巻取部材を巻き取る。これにより、第1被巻取部材によって、シェードの他端部が第1巻取軸から遠ざかる方向へ変位される結果、シェードが展開される。
【0009】
本発明では、第1巻取軸が第2巻取軸とは別個に回転可能となるように取り付けられている。このため、シェード展開時には、第1巻取軸の回転速度は、第2巻取軸40の回転速度と一致せず、シェードの他端部の変位速度に比例した回転速度で回転する。
【0010】
このように、本発明においては、第1巻取軸が、シェードの他端部の変位速度(第2巻取軸の回転による第1被巻取部材の巻取速度に比例)に応じて回転する。これにより、従来の構成のように、第1巻取軸の回転によるシェードの送り出し速度と、シェード他端部の変位速度との間に差が生じる事態を防止できる。その結果、シェードや第1被巻取部材に過大な張力が作用したり、シェードや第1被巻取部材が撓んだりする事態を抑制でき、シェードをより滑らかに(より確実に)展開させることができる。また、第1巻取軸は、第2巻取軸に対して同軸上に取り付けられているため、より簡易な構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記回転伝達装置は、前記第2巻取軸と共に回転可能な第1歯車と、長尺状の可撓性部材であって、長手方向の一端部において前記第1巻取軸の外周面に取り付けられる第2被巻取部材と、前記第2被巻取部材の長手方向における他端部が取り付けられ、前記第2被巻取部材を巻き取り可能な第3巻取軸と、前記第1歯車と係合することで、前記第2巻取軸の回転を前記第3巻取軸に伝達する第2歯車と、を備え、前記第3巻取軸によって、前記第2被巻取部材を巻き取ることで、前記第1巻取軸を前記シェード巻取方向へ回転させることが可能な構成であるものとすることができる。
【0012】
本発明の構成であれば、第2巻取軸が回転すると、その回転は第1歯車及び第2歯車を介して第3巻取軸に伝達される。そして、回転する第3巻取軸によって第2被巻取部材が巻き取られることで、第1巻取軸がシェード巻取方向へ回転される。つまり、第2被巻取部材が、第1巻取軸を引っ張ることで、第1巻取軸をシェード巻取方向へ回転させることができる。
【0013】
可撓性部材である第2被巻取部材は、第3巻取軸に巻き取りされる際(シェード巻取時)には、第1巻取軸を引っ張ることで、第1巻取軸を回転させることができる。これに対して、第2被巻取部材は、送り出される際(シェード展開時)には、第1巻取軸に力を作用させることがなく、第1巻取軸を回転させることがない。つまり、回転伝達装置は、シェード巻取時には、第2巻取軸の回転を第1巻取軸に伝達することによって第1巻取軸を回転させる一方で、シェード展開時には、第2巻取軸の回転が第1巻取軸に伝達される事態を抑制する構成となっている。これにより、シェードの展開時に第2巻取軸の回転が、
第1巻取軸の回転速度に影響を与える事態を抑制することができる。このため、第1巻取軸の回転速度は、シェード他端部の変位速度のみに比例することとなり、シェードの送り出し速度と、シェード他端部の変位速度との間に差が生じる事態をより確実に抑制できる。
【0014】
また、前記第1被巻取部材の少なくとも一部が、前記第1被巻取部材の延設方向に弾性変形可能な弾性部であるものとすることができる。第1被巻取部材の少なくとも一部を弾性部とすれば、シェード展開時又はシェード巻取時において、仮にシェードや第1被巻取部材に過大な張力が作用した場合であっても、弾性部が弾性変形することで、その張力を低減することができる。このため、より滑らかにシェードの展開(又は巻取)を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、シェードの展開動作をより確実に行うことが可能なサンシェード装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るサンシェード装置を示す斜視図。
【図2】図1において、サンシェード装置の一端側を拡大して示す拡大図。
【図3】シェードを巻き取った状態のサンシェード装置を示す断面図(図2のA−A線で切断した図)。
【図4】図3において、シェードを展開した状態のサンシェード装置を示す断面図。
【図5】シェード巻取時における第1巻取軸と、第3巻取軸との関係を概略的に示す概略図(図3のB−B線で切断した図に対応)。
【図6】シェード展開時における第1巻取軸と、第3巻取軸との関係を概略的に示す概略図(図4のC−C線で切断した図に対応)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態を図1ないし図6によって説明する。なお、以下の説明では、図3の左側を車両前方とし、右側を車両後方として説明する。本実施形態のサンシェード装置20は、図1に示すように、車両用ドア(例えばサイドドア)に設けられたウインドウガラス13を覆うために使用されるもので、例えば、ウインドウガラス13を保持するウインドウフレーム14の車室内側に設置されている。なお、図1においては、ウインドウガラス13及びウインドウフレーム14を2点鎖線で図示してあり、サンシェード装置20との位置関係を概略的に図示してある。
【0018】
サンシェード装置20は、図1に示すように、シェード21と、シェード21を巻き取るための第1巻取軸25、シェード21の展開及び巻取を行うための一対の駆動機構30を主体に構成されている。なお、本実施形態において、第1巻取軸25は、ウインドウガラス13の上方に配されており、シェード21の展開方向が鉛直方向における下方、シェード21の巻取方向が鉛直方向における上方となっている。なお、以下の説明では、シェード21が展開されている状態をシェード展開状態(図4、図6に示す状態)と呼び、シェード21が第1巻取軸25に巻き取られている状態をシェード巻取状態(図2、図3、図5に示す状態)と呼ぶ。
【0019】
シェード21は、可撓性部材からなり、略方形状をなすシート状の部材である。シェード21は、展開時には、ウインドウガラス13のほぼ全面を車室内側から覆うことが可能な大きさとされる。このシェード21にて、ウインドウガラス13を覆うことで、ウインドウガラス13から差し込む光を遮光することができる。また、シェード21は、車外と車内とを視覚的に遮断するためにも用いられる。
【0020】
シェード21としては、例えば、半透明シート、不透明シート、メッシュシート、織布、不織布等を例示することができる。また、シェード21の材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂材料を例示することができる。
【0021】
シェード21は上側の周端部21A(一端部)において第1巻取軸25に取り付けられている。シェード21における下側の周端部には、車両前後方向に延びるスライドバー23(シェードの他端部に対応)が取り付けられている。第1巻取軸25は、車両前後方向に延びる棒状をなしている。第1巻取軸25は、図4に示すように、シェード21が巻回される本体部25Aと、本体部25Aの径よりも小さい径で設定された両側の端部25Bとから構成されている。
【0022】
各駆動機構30は、サンシェード装置20の各端部にそれぞれ配されている。具体的には、各駆動機構30は、第1巻取軸25の長手方向における各端部と、スライドバー23における長手方向の各端部とを連結する形でそれぞれ取り付けられている(詳しくは後述)。なお、両駆動機構30,30は、同一の構成であるため、以下の説明では、車両前方側に配された駆動機構30について説明を行うものとする。
【0023】
次に駆動機構30の構成について説明を行う。駆動機構30は、モータ31(駆動装置)、第2巻取軸40、第1ベルト50(第1被巻取部材)、回転伝達装置60を主体に構成されている。なお、図1において、車両後方側に配された駆動機構30のモータ31については、図示を省略してある。
【0024】
第2巻取軸40は、プーリー(ベルト車)であって、図2及び図3に示すように、略円筒状をなす本体部41と、本体部41におけるモータ31側の端部に設けられたモータ側歯車42と、本体部41における第1巻取軸25側の端部に設けられた第1歯車43と、を備えている。
【0025】
つまり、第1歯車43は、第2巻取軸40の一部を構成するものであって、第2巻取軸と共に回転可能なものとされる。また、第2巻取軸40におけるモータ側歯車42は、図2に示すように、モータ31の先端部31Aと係合されている。これにより、第2巻取軸40は、モータ31を駆動させることで、車両前後方向に沿った軸を回転軸として回転駆動させることが可能となっている。
【0026】
第2巻取軸40の本体部41には挿通孔41Aが形成されており、この挿通孔41Aには、第1巻取軸25の端部25Bが挿通されている。第1巻取軸25の端部25Bは、例えばベアリング(不図示)などを介して、本体部41に対して、回転可能に取り付けられている。これにより、第1巻取軸25は、第2巻取軸40に対して同軸上かつ第2巻取軸40とは別個に回転可能となるように取り付けられる構成となっている。
【0027】
第1ベルト50は、図2に示すように、長尺状の可撓性部材(例えばポリエステル製)とされる。第1ベルト50は、長手方向における一端部50Aにおいてスライドバー23の長手方向の端部に取り付けられており、長手方向における他端部50Bにおいて第2巻取軸40の本体部41の外周面に取り付けられている。
【0028】
第1ベルト50は、図2に示すように、スライドバー23から下方(シェードの展開方向)に延び、スライドバー23(及び第2巻取軸40)の下方に設けられたプーリー51によって、上方(シェードの巻取方向)に延びる形で折り返されている。そして、折り返された第1ベルト50の他端部50Bが第2巻取軸40の本体部41に取り付けられている。
【0029】
第1ベルト50は、長手方向において張力が付与された状態で、第2巻取軸40及びスライドバー23に取り付けられている。これにより、第2巻取軸40を回転させ、第1ベルト50を巻き取ることで、スライドバー23(シェード21の他端部)を下方(第1巻取軸から遠ざかる方向)へ変位させることができ、シェード21を展開させることが可能となっている。なお、図2において、第1ベルト50を巻き取る際の第2巻取軸40の回転方向を矢線T2で図示してある。また、第1ベルト50の一部(スライドバー23側の端部付近)は、第1ベルト50の延設方向に弾性変形可能なゴムバンド52(弾性部)で構成されている。
【0030】
次に回転伝達装置60の構成について説明を行う。回転伝達装置60は、第2巻取軸40の回転(第2巻取軸40における第1ベルト50の巻取方向とは反対方向M2への回転)を第1巻取軸25に伝達することで、第1巻取軸25をシェード巻取方向(図2の矢線M4)へ回転させるためのものである。
【0031】
回転伝達装置60は、図3及び図4に示すように、上述した第2巻取軸40の第1歯車43と、第2ベルト61(第2被巻取部材)と、第2ベルト61を巻き取り可能な第3巻取軸70と、を備えている。
【0032】
第2ベルト61は、長尺状の可撓性部材(例えばポリエステル製)とされる。第2ベルト61は、長手方向の一端部61Aにおいて本体部25A(第1巻取軸25)の外周面に取り付けられており、長手方向の他端部61Bにおいて本体部71(第3巻取軸70)の外周面に取り付けられている(図3、図4参照)。
【0033】
第3巻取軸70は、図2及び図3に示すように、プーリー(ベルト車)であって、略円筒状をなす本体部71と、本体部71における第2巻取軸40側の端部に設けられた第2歯車72を備えている。第2歯車72は、第1歯車43と係合されており、第2巻取軸40の回転を第3巻取軸70に伝達することが可能となっている。
【0034】
第2ベルト61は、図3及び図5に示すように、シェード巻取状態においては、第3巻取軸70の本体部71に幾重にも巻回されている。なお、第2ベルト61は、図5における反時計回りで第3巻取軸70に巻回されている。また、第2ベルト61は、図4及び図6に示すように、シェード展開状態においては、第1巻取軸25の本体部25Aに幾重にも巻回されている。なお、第2ベルト61は、図6における時計回りで第1巻取軸25に巻回されている。
【0035】
以上の構成によって、第3巻取軸70(本体部71)が巻取方向(図6における時計回り、矢線M3で示す)に回転することで第2ベルト61を巻き取ると、第2ベルト61によって、第1巻取軸25(本体部25A)が引っ張られる。その結果、第1巻取軸25をシェード巻取方向(図6における反時計回り、矢線M4で示す)へ回転させることが可能な構成となっている。
【0036】
また、第3巻取軸70(本体部71)が巻取方向と反対方向(図5において矢線T3で示す)に回転した場合は、第3巻取軸70に巻回されている第2ベルト61が第1巻取軸25側へ送り出される(第2ベルト61の送り方向を矢線T5で示す)。第2ベルト61が第1巻取軸25側へ送り出されると、第2ベルト61の一端部61Aは、本体部25Aに対する取付箇所を固定端として、本体部25Aから浮き上がる(遠ざかる)ように変位する。このため、送り出された第2ベルト61が、第1巻取軸25に回転方向の力(トルク)を作用させることは殆どなく(作用する場合であっても第3巻取軸70の回転力に比して非常に小さい力となる)、送り出された第2ベルト61が第1巻取軸25を時計周りに回転させることはない。このため、第3巻取軸70が巻取方向と反対方向(矢線T3)に回転した場合であっても、第1巻取軸25を回転させることはない。
【0037】
つまり、回転伝達装置60は、第3巻取軸70の巻取方向(矢線M3)への回転を第1巻取軸25に伝達することで、第1巻取軸25をシェード巻取方向(矢線M4)へ回転可能な構成であるとともに、第3巻取軸70の巻取方向とは反対方向(矢線T3)への回転(シェード展開時の回転)を、第1巻取軸25に伝達しない構成となっている。
【0038】
また、本実施形態においては、図3に示すように、第1巻取軸25の本体部25A、第2巻取軸40の本体部41、第3巻取軸70の本体部71は、全て同じ直径で設定されている。なお、第2巻取軸40、第3巻取軸70、プーリー51は、例えば、サンシェード装置20を収容するケース(図示しない)などに固定されており、各々車両前後方向に沿った軸が回転中心となる形で回転可能とされている。
【0039】
また、シェード21、第1ベルト50、第2ベルト61の厚さは全て同じ値で設定されている。さらに、図5に示すように、シェード巻取状態において、第1巻取軸25に巻回されているシェード21の巻き数と、第3巻取軸70に巻回されている第2ベルト61の巻き数は、例えば、同じ巻き数で設定されている。このため、第1巻取軸25に巻回されているシェード21の直径と、第3巻取軸70に巻回されている第2ベルト61の直径とは、ほぼ同じ値となる。
【0040】
次に、本実施形態のサンシェード装置20の作用効果について説明する。まず、本実施形態において、シェード巻取状態(図2、図3、図5に示す状態)から、シェード21を展開させる場合について説明を行う。なお、本実施形態においては、シェード21の左右両側に配された一対の駆動機構30(両モータ31)を同じタイミングで作動させることで、シェード21の展開又は巻き取りを行う。以下の説明では、一方側の駆動機構30の動作についてのみ説明を行う。
【0041】
<シェード展開時の作用>
シェード21展開時には、まずモータ31を駆動させ、第2巻取軸40を正転方向(図2に示す矢線T2)に回転させる。第2巻取軸40が回転することで、第1ベルト50が、第2巻取軸40の本体部41に巻き取られていく。なお、この時の第1ベルト50の変位方向(巻き取り方向)を矢線T6で示す。これにより、第1ベルト50によって、スライドバー23(シェード21の他端部に対応)が下方(第1巻取軸25から遠ざかる方向、各図において矢線T1で示す)に引っ張られる。
【0042】
スライドバー23が下方に引っ張られることで、第1巻取軸25が図5における時計回り(各図に示す矢線T4)に回転されつつ、シェード21が展開される。本実施形態においては、第1巻取軸25は、第2巻取軸40に対して同軸上かつ第2巻取軸40とは別個に回転可能となるように取り付けられている。このため、シェード21展開時において、第1巻取軸25の回転速度は、第2巻取軸40の回転速度とは一致せず、スライドバー23の移動速度(シェード21先端の変位速度)に比例した速度となる。
【0043】
また、第2巻取軸40が正転方向(図2に示すT2)に回転すると、第1歯車43及び第2歯車72を介して、第3巻取軸70が、第2巻取軸40の回転方向とは反対方向(図5に示す反時計回り、各図に示す矢線T3)に回転する。これにより、第3巻取軸70に巻回されている第2ベルト61は、第1巻取軸25側(図5の矢線T5)へ送り出される。これと同時に、第1巻取軸25は、矢線T4に示す方向に回転している。このため、第3巻取軸70から送り出された第2ベルト61は、送り出されるのとほぼ同時に第1巻取軸25に巻き取られていく。
【0044】
<シェード巻取時の作用>
シェード21巻取時には、まず、モータ31を駆動させ、第2巻取軸40を逆転方向(第1ベルト50の巻取方向とは反対方向、図2に示すM2)に回転させる。これにより、第1歯車43及び第2歯車72を介して、第3巻取軸70が、第2巻取軸40の回転方向とは反対方向(図6に示す時計回り、各図に示す矢線M3)に回転する。これにより、第1巻取軸25に巻き取られていた第2ベルト61が、第3巻取軸70に巻き取られていく。なお、この時の第2ベルト61の送り方向を図6において、矢線M5で示す。
【0045】
第2ベルト61が第3巻取軸70に巻き取られることで、第2ベルト61によって、第1巻取軸25(本体部25A)が引っ張られる。これにより生じた回転モーメントによって、第1巻取軸25はシェード巻取方向(矢線M4)へ回転する。また、第2巻取軸40が逆転方向(図2に示すM2)に回転すると、第2巻取軸40に巻回されている第1ベルト50が下方(図4における矢線M6で示す)に送り出される。これにより、第1巻取軸25がシェード巻取方向に回転することで、シェード21が巻き取られるのと同時にスライドバー23が上方に移動する(スライドバー23の移動方向を各図において、矢線M1で示す)。
【0046】
このように、本実施形態においては、第2巻取軸40を回転させることで、シェード21の展開及び巻取を行うことができる。そして、第1巻取軸25を第2巻取軸40に対して回転可能に取り付ける構成とすることで、シェード21の他端部(スライドバー23)の変位速度に比例した回転速度で、第1巻取軸25が回転する。これにより、シェード21の他端部(スライドバー23)の変位速度と、第1巻取軸25の回転速度との間に差が生じる事態を抑制することができる。
【0047】
また、シェード21の巻取時には、回転伝達装置60を介して、第2巻取軸40から第1巻取軸25へ、シェード巻取方向の回転を伝達することができる。つまり、第1巻取軸25を第2巻取軸40に対して回転可能に取り付ける構成とすることで、シェード展開時の問題点(シェード21の他端部(先端部)の変位速度と、シェード21を送り出す速度との間に差が生じる事態)を解消しつつも、回転伝達装置60を備えることで、シェード21をモータ31(第2巻取軸40)の駆動力によって巻き取ることができる。
【0048】
以上、説明したように、本実施形態のサンシェード装置20は、可撓性部材からなるシェード21と、シェード21の周端部21Aが取り付けられ、シェード21を巻き取り可能な第1巻取軸25と、シェード21の巻取方向ないし展開方向に沿って延びる長尺状の可撓性部材であって、長手方向における一端部50Aにてシェード21のスライドバー23に取り付けられる第1ベルト50と、第1ベルト50の長手方向における他端部50Bが取り付けられ、第1ベルト50を巻き取ることで、スライドバー23を第1巻取軸25から遠ざかる方向へ変位させてシェード21を展開させることが可能な第2巻取軸40と、第2巻取軸40を回転駆動させることが可能なモータ31と、を備え、第1巻取軸25は、第2巻取軸40に対して同軸上かつ第2巻取軸40とは別個に回転可能となるように取り付けられており、さらに、第2巻取軸40の回転であって、第1ベルト50の巻取方向とは反対方向への回転を第1巻取軸25へ伝達することで、第1巻取軸25をシェード巻取方向へ回転させることが可能な回転伝達装置60を備えることに特徴を有する。
【0049】
本実施形態において、シェード巻取時には、モータ31によって第2巻取軸40を第1ベルト50の巻取方向とは反対方向へ回転させる。これにより、第2巻取軸40の回転が、回転伝達装置60を介して、第1巻取軸25へ伝達され、第1巻取軸25をシェード巻取方向へ回転させる。これにより、シェード21を巻き取ることが可能となる。
【0050】
一方、シェード展開時には、モータ31によって第2巻取軸40を第1ベルト50の巻取方向に回転させ、第1ベルト50を巻き取る。これにより、第1ベルト50によって、シェード21のスライドバー23が第1巻取軸25から遠ざかる方向へ変位される結果、シェード21が展開される。
【0051】
本実施形態では、第1巻取軸25が第2巻取軸40に対して同軸上かつ第2巻取軸40とは別個に回転可能となるように取り付けられている。このため、シェード展開時には、第1巻取軸25の回転速度は、第2巻取軸40の回転速度と一致せず、シェード21の他端部(スライドバー23)の変位速度に比例した回転速度で回転する。
【0052】
このように、本実施形態においては、第1巻取軸25が、シェード21の他端部の変位速度(第2巻取軸40の回転による第1ベルト50の巻取速度に比例)に応じて回転する。これにより、従来の構成のように、第1巻取軸25の回転によるシェード21の送り出し速度と、シェード他端部の変位速度との間に差が生じる事態を防止できる。その結果、シェード21や第1ベルト50に過大な張力が作用したり、シェード21や第1ベルト50が撓んだりする事態を抑制でき、シェード21をより滑らかに(より確実に)展開させることができる。また、第1巻取軸25は、第2巻取軸40に対して同軸上に取り付けられているため、より簡易な構成とすることができる。
【0053】
上記構成において、回転伝達装置60は、第2巻取軸40と共に回転可能な第1歯車43と、長尺状の可撓性部材であって、長手方向の一端部61Aにおいて第1巻取軸25の外周面に取り付けられる第2ベルト61と、第2ベルトの長手方向における他端部61Bが取り付けられ、第2ベルト61を巻き取り可能な第3巻取軸70と、第1歯車43と係合することで、第2巻取軸40の回転を第3巻取軸70に伝達する第2歯車72と、を備え、第3巻取軸70によって、第2ベルト61を巻き取ることで、第1巻取軸25をシェード巻取方向へ回転させることが可能な構成となっている。
【0054】
本実施形態の構成であれば、第2巻取軸40が回転すると、その回転は第1歯車43及び第2歯車72を介して第3巻取軸70に伝達される。そして、回転する第3巻取軸70によって第2ベルト61が巻き取られることで、第1巻取軸25がシェード巻取方向へ回転される。つまり、第1巻取軸25の外周面に取り付けられた第2ベルト61が、第1巻取軸25を引っ張ることで、第1巻取軸25をシェード巻取方向へ回転させることができる。
【0055】
可撓性部材である第2ベルト61は、第3巻取軸70に巻き取りされる際(シェード巻取時)には、第1巻取軸25(の外周面)を引っ張ることで、第1巻取軸25を回転させることができる。これに対して、第2ベルト61は、送り出される際(シェード展開時)には、第1巻取軸25に力を作用させることがなく、第1巻取軸25を回転させることがない。
【0056】
つまり、回転伝達装置60は、シェード巻取時には、第2巻取軸40の回転を第1巻取軸25に伝達することによって第1巻取軸25を回転させる一方で、シェード展開時には、第2巻取軸40の回転が第1巻取軸25に伝達される事態を抑制する構成となっている。これにより、シェード21の展開時に第2巻取軸の回転が、第1巻取軸25の回転速度に影響を与える事態を抑制することができる。このため、第1巻取軸25の回転速度は、スライドバー23の変位速度のみに比例することとなり、シェード21の送り出し速度と、スライドバー23の変位速度との間に差が生じる事態をより確実に防止できる。
【0057】
また、第1ベルト50の少なくとも一部は、第1ベルト50の延設方向に弾性変形可能なゴムバンド52とされている。第1ベルト50の少なくとも一部をゴムバンド52とすれば、シェード展開時又はシェード巻取時において、仮にシェード21や第1ベルト50に過大な張力が作用した場合であっても、ゴムバンド52が弾性変形することで、その張力を低減することができる。このため、より滑らかにシェード21の展開(又は巻取)を行うことができる。
【0058】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0059】
(1)サンシェード装置20の設置箇所は、車両用ドアに限定されず適宜変更可能である。例えば、サンシェード装置20を車両のリヤウインドウなどに設置してもよい。また、シェード21による被覆対象はウインドウガラス13に限定されず適宜変更可能である。
【0060】
(2)上記実施形態では、第1被巻取部材及び第2被巻取部材として、ベルト(第1ベルト50又は第2ベルト61)を例示したが、これに限定されない。第1被巻取部材及び第2被巻取部材は、巻き取り可能な長尺状の可撓性部材であればよく、例えば、ロープやワイヤなどを用いてもよい。
【0061】
(3)上記実施形態では、第1ベルト50をスライドバー23に取り付ける構成、つまり、シェード21の端部がスライドバー23である構成を例示したが、第1ベルト50の取付箇所は、スライドバー23に限定されない。例えば、第1ベルト50をシェード21の端部に直接取り付ける構成としてもよい。
【0062】
(4)回転伝達装置60は、上記実施形態で例示したものに限定されない。回転伝達装置60は、シェード巻取時における第2巻取軸40の回転を第1巻取軸25に伝達し、シェード展開時における第2巻取軸40の回転を第1巻取軸25に伝達しない構成のものであればよい。
【0063】
(5)上記実施形態では、弾性部として、ゴムバンド52を例示したが、これに限定されない。弾性部としては、例えばコイルバネなどを用いてもよい。また、弾性部(ゴムバンド52)の配置箇所も第1ベルト50の端部に限定されず適宜変更可能である。また、第1ベルト50全体をゴムバンドで構成してもよい。
【符号の説明】
【0064】
20…サンシェード装置、21…シェード、21A…上側の周端部(シェードの一端部)、23…スライドバー(シェードの他端部)、25…第1巻取軸、31…モータ(駆動装置)、40…第2巻取軸、43…第1歯車、50…第1ベルト(第1被巻取部材)、50A…一端部(第1被巻取部材の長手方向における一端部)、50B…他端部(第1被巻取部材の長手方向における他端部)、52…ゴムバンド(弾性部)、60…回転伝達装置、61…第2ベルト(第2被巻取部材)、61A…一端部(第2被巻取部材の長手方向の一端部)、61B…他端部(第2被巻取部材の長手方向における他端部)、70…第3巻取軸、72…第2歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性部材からなるシェードと、
前記シェードの一端部が取り付けられ、前記シェードを巻き取り可能な第1巻取軸と、
前記シェードの巻取方向ないし展開方向に沿って延びる長尺状の可撓性部材であって、長手方向における一端部にて前記シェードの他端部に取り付けられる第1被巻取部材と、
前記第1被巻取部材の長手方向における他端部が取り付けられ、前記第1被巻取部材を巻き取ることで、前記シェードの前記他端部を前記第1巻取軸から遠ざかる方向へ変位させて前記シェードを展開させることが可能な第2巻取軸と、
前記第2巻取軸を回転駆動させることが可能な駆動装置と、を備え、
前記第1巻取軸は、前記第2巻取軸に対して同軸上かつ前記第2巻取軸とは別個に回転可能となるように取り付けられており、
さらに、前記第2巻取軸の回転であって、前記第1被巻取部材の巻取方向とは反対方向への回転を、前記第1巻取軸へ伝達することで、前記第1巻取軸をシェード巻取方向へ回転させることが可能な回転伝達装置を備えることを特徴とするサンシェード装置。
【請求項2】
前記回転伝達装置は、
前記第2巻取軸と共に回転可能な第1歯車と、
長尺状の可撓性部材であって、長手方向の一端部において前記第1巻取軸の外周面に取り付けられる第2被巻取部材と、
前記第2被巻取部材の長手方向における他端部が取り付けられ、前記第2被巻取部材を巻き取り可能な第3巻取軸と、
前記第1歯車と係合することで、前記第2巻取軸の回転を前記第3巻取軸に伝達する第2歯車と、を備え、
前記第3巻取軸によって、前記第2被巻取部材を巻き取ることで、前記第1巻取軸を前記シェード巻取方向へ回転させることが可能な構成であることを特徴とする請求項1に記載のサンシェード装置。
【請求項3】
前記第1被巻取部材の少なくとも一部は、前記第1被巻取部材の延設方向に弾性変形可能な弾性部であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のサンシェード装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−197044(P2012−197044A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62999(P2011−62999)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)