説明

サンドイッチパネル及び人工衛星

【課題】サンドイッチパネルの強度や剛性を低下させることなくサンドイッチパネル内部での配線を実現する。
【解決手段】ハニカムサンドイッチパネル10において、2枚の表皮11a,bの間で、角パイプ13a〜cが予め設計された位置に配置され、表皮11a,bの間の角パイプ13a〜c以外の領域にはハニカムコア12a〜dが配置される。表皮11a,b上に電子機器を設置する前に、電子機器の近傍、かつ、角パイプ13a〜cの上には、電子機器に接続されているワイヤハーネスが十分に出し入れできる穴を加工しておく。電子機器の設置後、ワイヤハーネスは、ハニカムサンドイッチパネル10にあけられた穴に入れられ、ハニカムサンドイッチパネル10内部に設置されている角パイプ13a〜c内部を通され、さらに、ハニカムサンドイッチパネル10の端面、もしくは、別の場所にあけられた穴から出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンドイッチパネル及び人工衛星に関するものである。本発明は、特に、人工衛星の構成部品となるハニカムサンドイッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
人工衛星の構成部品となるハニカムサンドイッチパネルの表面には人工衛星を運用、機能させるための電子機器類が高い密度で配置され、さらにその隙間をぬって電子機器類のワイヤを束ねたワイヤハーネスが配線されている。
【0003】
このようにハニカムサンドイッチパネル表面に電子機器、ワイヤハーネスを配置する方法による人工衛星では、ハニカムサンドイッチパネル表面に電子機器、ワイヤハーネスが高密度に配置されているために十分な作業スペースが確保できず、電子機器やワイヤハーネスの設置作業の作業性が悪く、品質低下が懸念される。さらに、手順が複雑、かつ、多いために、狭いスペースでは作業速度が低下し、製造期間の長期化、製造コストの増加に繋がっている。
【0004】
この課題に対し、ハニカムサンドイッチパネル内部の空間を利用することを提案した例がある(特許文献1参照)。ハニカムサンドイッチパネルは、中央にハニカムコアを配置し、その両面を表皮材で挟み込んで構成される。特許文献1に開示されている例では、ハニカムサンドイッチパネルのハニカムコアの一部を繰り抜き、そのスペースに電子機器及びワイヤハーネスを埋め込むことで、ハニカムサンドイッチパネル表面のスペースが確保可能となり、高密度実装、さらには人工衛星の小型、軽量化、低コスト化に繋がるとしている。
【0005】
しかしながら、一般的な人工衛星用ハニカムサンドイッチパネルの成形では、ハニカムサンドイッチパネル全面に一定圧力及び熱を加える必要があり、内部に電子機器、ワイヤハーネスを埋め込むための空間を成形前に予めくり抜くと、成形時の圧力により表皮が破損する、もしくは、ハニカムコアをくり抜いた部分周辺が座屈する等の問題が発生するおそれがあり、現実的には製品へ適用する場合には制限が多いと考えられる。
【0006】
また、ハニカムコアをくり抜いた部分は、ハニカムサンドイッチパネルの強度や剛性を低下させるため、サンドイッチパネル表皮を補強する等の追加作業、工程が発生すると予測され、製造工期短縮、製造コスト低減が困難になると考えられる。
【0007】
また、人工衛星では、製造中においてもしばしば電子機器の配置変更が発生するが、上記構成では電子機器を掘り出し、埋め直すといった大規模な修理が必要となり、これによる製造工期の長期化、コスト増加への影響が大きく、製造リスクが高いと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−349874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の技術は、高密度実装を目的としてハニカムサンドイッチパネル内部に電子機器、ワイヤハーネスを埋め込むものであったが、ハニカムコアをくり抜くことで、製造困難となり、また、ハニカムサンドイッチパネルの強度や剛性が低下し、これによる補強が必要になる等の追加作業が発生してしまう。さらに、電子機器配置変更に対する高いリスクを抱えるといった課題があった。
【0010】
本発明は、例えば、サンドイッチパネルの強度や剛性を低下させることなくサンドイッチパネル内部での配線を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一の態様に係るサンドイッチパネルは、
互いに対向する1対の表皮部材と、
少なくとも1つの開口部を有し、当該開口部から所定部材が挿入される通路を内側に形成し、外側が前記1対の表皮部材の対向する面それぞれの所定領域で挟み込まれる中空部材と、
前記1対の表皮部材の対向する面それぞれの前記所定領域以外の領域で挟み込まれるコア部材とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一の態様によれば、サンドイッチパネルの中空部材が、開口部から所定部材が挿入される通路を内側に形成し、外側がサンドイッチパネルの表皮部材の対向する面それぞれの所定領域で挟み込まれ、サンドイッチパネルのコア部材が、上記表皮部材の対向する面それぞれの上記所定領域以外の領域で挟み込まれることにより、サンドイッチパネルの強度や剛性を低下させることなくサンドイッチパネル内部での配線を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施の形態1に係るサンドイッチパネルの構成例を示す図である。
【図2】実施の形態1に係るサンドイッチパネルへの電子機器の実装例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。
【0015】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係るハニカムサンドイッチパネル10(サンドイッチパネルの一例)の構成例(分解状態)を示す図である。
【0016】
ハニカムサンドイッチパネル10は、1対の表皮11a,b(表皮部材の一例)、4つのハニカムコア12a〜d(コア部材の一例)、3つの角パイプ13a〜c(中空部材の一例)を備えている。表皮11aと表皮11bとは、互いに対向するように配置されている。表皮11a,bは、アルミニウムもしくはCFRP(Carbon・Fiber・Reinforced・Plastics)で成形されており、同一形状を有している。ハニカムコア12a〜dは、アルミニウムからなる。角パイプ13a〜cは、表皮11a,bと同一材料で成形されている。角パイプ13a〜cは、ハニカムコア12a〜dと略同一の高さに加工されている。即ち、角パイプ13a〜cは、1対の表皮11a,bの対向する面に対して垂直方向の長さがハニカムコア12a〜dと略同一である。
【0017】
図2は、図1に示したハニカムサンドイッチパネル10への電子機器14a〜eの実装例を示す図である。
【0018】
電子機器14a〜eは、ハニカムサンドイッチパネル10の表面の予め設計された位置に配置されている。即ち、電子機器14a〜eは、1対の表皮11a,bの対向する面と反対側の面の所定位置に配設されている。なお、図2では、電子機器14a〜eは、表皮11b側にしか配設されていないが、表皮11a側にも配設可能である。ワイヤハーネス15(電線の一例)は、電子機器14a〜eに接続されているワイヤを束ねたものである。
【0019】
以下、図1及び図2を用いて、電子機器14a〜eが実装されたハニカムサンドイッチパネル10の構成の詳細について説明する。
【0020】
角パイプ13a〜cは、外側が表皮11a,bの対向する面それぞれの所定領域で挟み込まれている。一方、ハニカムコア12a〜dは、表皮11a,bの対向する面それぞれの上記所定領域以外の領域で挟み込まれている。つまり、ハニカムサンドイッチパネル10において、2枚の表皮11a,bの間で、角パイプ13a〜cが予め設計された位置に配置され、2枚の表皮11a,bの間の角パイプ13a〜c以外の領域にはハニカムコア12a〜dが配置されている。
【0021】
角パイプ13a〜cは、少なくとも1つの開口部を有し、当該開口部からワイヤハーネス15が挿入される通路を内側に形成している。例えば、図1に示すように、角パイプ13aの両端には1つずつ開口部が設けられている。同様に、角パイプ13b,cの両端にも1つずつ開口部が設けられている。また、図2に示すように、角パイプ13aの1側面の中央付近には、さらに別の開口部が設けられている。同様に、角パイプ13cの1側面の中央付近にも、さらに別の開口部が設けられている。角パイプ13aの1側面の中央付近に設けられた開口部と角パイプ13cの1端に設けられた開口部とは、角パイプ13a,cによって共有され、当該2つの開口部を介して、角パイプ13a,cそれぞれの内側に形成した通路が連通されている。同様に、角パイプ13bの1端に設けられた開口部と角パイプ13cの1側面の中央付近に設けられた開口部とは、角パイプ13b,cによって共有され、当該2つの開口部を介して、角パイプ13b,cそれぞれの内側に形成した通路が連通されている。つまり、角パイプ13a,c同士あるいは角パイプ13b,c同士の接触部には穴があいており、ハニカムサンドイッチパネル10の内部では、互いに接触する角パイプ13a,c同士あるいは角パイプ13b,c同士の空間は繋がっている。
【0022】
また、図2に示すように、上記の開口部以外にも、角パイプ13aの表皮11bと対向する面には開口部として2つの穴16a,bが設けられている。同様に、角パイプ13bの表皮11bと対向する面にも開口部として1つの穴16cが設けられている。同様に、角パイプ13cの表皮11bと対向する面にも開口部として2つの穴16d,eが設けられている。このように、ハニカムサンドイッチパネル10の表皮11b上に電子機器14a〜eを設置する前に、角パイプ13a〜cの上で、かつ、電子機器14a〜eの近傍に、電子機器14a〜eに接続されているワイヤハーネス15が十分に出し入れできる穴16a〜eを加工しておく。なお、表皮11bにもワイヤハーネス15が挿入される貫通孔が設けられ、角パイプ13a〜cは、穴16a〜eを当該貫通孔と対応する位置に有しているものとする。
【0023】
電子機器14a〜eの設置後、ワイヤハーネス15は、ハニカムサンドイッチパネル10にあけられた穴16a〜eに入れられ、ハニカムサンドイッチパネル10内部に設置されている角パイプ13a〜c内部を通され、さらに、ハニカムサンドイッチパネル10の端面、もしくは、別の場所にあけられた穴16a〜eから出される。これにより、ハニカムサンドイッチパネル10内部での配線が実施される。このようなハニカムサンドイッチパネル10によって人工衛星の一部を構成することにより、本実施の形態によれば、以下のような効果を奏する。
【0024】
まず、ハニカムサンドイッチパネル10内部でのワイヤハーネス15の配線が製品に適用できる現実的なレベルで実現可能となり、従来はパネル表皮上で必要だったワイヤハーネス配線用のスペースが不要となるため、作業性向上による、工期短縮、コスト低減、もしくは、さらなる高密度実装による、人工衛星の小型化、軽量化、コスト低減が実現できる。
【0025】
また、ハニカムサンドイッチパネル10の成形の際には、ハニカムサンドイッチパネル10全面に一定圧力を加える必要があるが、ワイヤハーネス15の配線箇所には、角パイプ13a〜cが配置されているため、成形時の圧力で破損することなく、一般的な成形方法で成形可能である。さらに、角パイプ13a〜cがハニカムサンドイッチパネル10内部に配置されることで、ハニカムサンドイッチパネル10の強度や剛性が向上するため、何らかの部材を追加して補強する必要はない。
【0026】
さらに、電子機器14a〜eの配置変更が発生した場合でも、ワイヤハーネス15を通す穴(穴16a〜eと同様)を電子機器14a〜eの近傍にあけ直すだけで対応可能であり、電子機器14a〜eの配置変更に対するリスクは小さい。また、追加加工する穴の位置は、高い精度で決める必要はないため、機械加工は必要なく、手加工で穴を設ければよいため、ハニカムサンドイッチパネル10単独での配置変更にも、人工衛星の構成部品としてハニカムサンドイッチパネル10を組立てた後での配置変更にも、作業スペースさえ確保できれば対応可能である。
【0027】
なお、本実施の形態において、角パイプ13a〜cの開口部に、ワイヤハーネス15以外の部材を挿入することも可能である。また、本実施の形態は、ハニカムサンドイッチパネル10以外のサンドイッチパネルにも適用可能である。また、本実施の形態は、人工衛星の構成部品以外の用途で用いられるサンドイッチパネルにも適用可能である。
【0028】
以上説明したように、本実施の形態に係るハニカムサンドイッチパネル10は、2枚の表皮11a,bの間に、角パイプ13a〜cが予め設計された位置に配置され、2枚の表皮11a,b間の角パイプ13a〜c以外の領域にはハニカムコア12a〜dが配置されていることを特徴とする。
【0029】
また、上記ハニカムサンドイッチパネル10は、表皮11a,bの材料がアルミニウムもしくはCFRPであり、ハニカムコア12a〜dにはアルミニウムを使用し、角パイプ13a〜cは、材料が表皮11a,bの材料と同一、かつ、高さがハニカムコアと略同一に仕上げられていることを特徴とする。
【0030】
また、上記ハニカムサンドイッチパネル10は、ハニカムサンドイッチパネル10内部に埋め込まれた角パイプ13a〜c同士が接触する部分は、角パイプ13a〜c側面に穴が開けられ、ハニカムサンドイッチパネル10内部で角パイプ13a〜c同士の空間は連続していることを特徴とする。
【0031】
また、上記ハニカムサンドイッチパネル10は、ハニカムサンドイッチパネル10内部の角パイプ13a〜c上に、ワイヤハーネス15を出し入れできる大きさの穴16a〜eが開いていることを特徴とする。
【0032】
また、上記ハニカムサンドイッチパネル10は、ハニカムサンドイッチパネル10表面に電子機器14a〜eが設置され、電子機器14a〜eと接続しているワイヤハーネス15が、ハニカムサンドイッチパネル10内部に埋め込まれた角パイプ13a〜c内で、配線されていることを特徴とする。
【0033】
上記のような特徴により、本実施の形態では、製品適用可能なレベルでの製造が可能であり、ハニカムサンドイッチパネル10の強度や剛性を低下させることなく、従来はパネル表面上に配線されていたワイヤハーネス15をハニカムサンドイッチパネル10内部で配線することを可能とし、さらに電子機器14a〜eの配置変更のリスクを低減し、電子機器14a〜e、ワイヤハーネス15の設置作業の作業性向上による、工期短縮、コスト低減が可能となる。
【符号の説明】
【0034】
10 ハニカムサンドイッチパネル、11a,b 表皮、12a〜d ハニカムコア、13a〜c 角パイプ、14a〜e 電子機器、15 ワイヤハーネス、16a〜e 穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する1対の表皮部材と、
少なくとも1つの開口部を有し、当該開口部から所定部材が挿入される通路を内側に形成し、外側が前記1対の表皮部材の対向する面それぞれの所定領域で挟み込まれる中空部材と、
前記1対の表皮部材の対向する面それぞれの前記所定領域以外の領域で挟み込まれるコア部材とを備えることを特徴とするサンドイッチパネル。
【請求項2】
前記中空部材は、前記1対の表皮部材の対向する面に対して垂直方向の長さが前記コア部材と略同一であることを特徴とする請求項1に記載のサンドイッチパネル。
【請求項3】
前記サンドイッチパネルは、前記中空部材を2つ以上備え、
少なくとも2つの中空部材は、少なくとも1つの開口部を共有し、当該開口部を介して、それぞれの内側に形成した通路を連通させていることを特徴とする請求項1又は2に記載のサンドイッチパネル。
【請求項4】
前記所定部材は、電線であり、
前記サンドイッチパネルは、さらに、
前記電線が接続される電子機器を備えることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載のサンドイッチパネル。
【請求項5】
前記電子機器は、前記1対の表皮部材の対向する面と反対側の面の所定位置に配設され、
前記電子機器が配設された表皮部材には、前記電線が挿入される貫通孔が設けられ、
前記中空部材は、少なくとも1つの開口部を前記貫通孔と対応する位置に有することを特徴とする請求項4に記載のサンドイッチパネル。
【請求項6】
前記中空部材は、アルミニウム又はCFRP(Carbon・Fiber・Reinforced・Plastics)製の角パイプであり、
前記コア部材は、アルミニウム製のハニカムコアであることを特徴とする請求項1から5までのいずれかに記載のサンドイッチパネル。
【請求項7】
互いに対向する1対の表皮部材と、
少なくとも1つの開口部を有し、当該開口部から所定部材が挿入される通路を内側に形成し、外側が前記1対の表皮部材の対向する面それぞれの所定領域で挟み込まれる中空部材と、
前記1対の表皮部材の対向する面それぞれの前記所定領域以外の領域で挟み込まれるコア部材とを備えるサンドイッチパネルによって一部が構成されたことを特徴とする人工衛星。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−201965(P2010−201965A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−46677(P2009−46677)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)