サンプリング速度変換装置、及び、復調装置
【課題】入力クロックと異なる周波数のクロックに同期するように、入力データをサンプリング変換して出力できるとともに、出力サンプルデータの誤差を低減できるサンプリング速度変換装置を提供する。
【解決手段】第一クロックに同期して入力されるサンプルデータを第一クロックと異なる周波数の第二クロックに同期して出力するサンプリング速度変換装置5であって、所定クロックをカウントして生成された格納アドレスをグレイコードに変換する符号器55と、第二クロックに同期して符号器55の出力を取り込みバイナリコードに変換して前記格納アドレスを生成する復号器56と、第二クロックに同期して復号器56の出力値をアドレスとして記憶部53から読み出した特定の補間係数群をフィルタ係数としてサンプルデータの補間データを演算出力するFIRフィルタ57を備えている。
【解決手段】第一クロックに同期して入力されるサンプルデータを第一クロックと異なる周波数の第二クロックに同期して出力するサンプリング速度変換装置5であって、所定クロックをカウントして生成された格納アドレスをグレイコードに変換する符号器55と、第二クロックに同期して符号器55の出力を取り込みバイナリコードに変換して前記格納アドレスを生成する復号器56と、第二クロックに同期して復号器56の出力値をアドレスとして記憶部53から読み出した特定の補間係数群をフィルタ係数としてサンプルデータの補間データを演算出力するFIRフィルタ57を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一クロックに同期して入力されるサンプルデータを前記第一クロックの周波数とは異なる周波数の第二クロックに同期して出力するサンプリング速度変換装置、及び、サンプリング速度変換装置を備えた復調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の周波数のクロックでサンプリングされたサンプルデータを入力し、異なる周波数のクロックに同期して補間あるいは間引きしたサンプルデータを出力するサンプリング速度変換装置が知られている。例えば、特許文献1には、画素数の異なる画像データを所定の画素数で共通の出力装置に表示する画像処理装置や、複数の画像フォーマットを多重化した放送波を受信し、所定のサイズの画像に変換して表示する受像装置等に用いられるサンプリング速度変換装置が記載されている。
【0003】
かかるサンプリング速度変換装置の構成例を図1に示す。入力クロックCLKinに同期してサンプリング速度変換装置に入力される入力サンプルデータSinは、シフトレジスタにより構成されるサンプルデータ蓄積部910に蓄積される。
【0004】
カウンタ920は、入力クロックCLKinの周波数を第一逓倍回路930にて自然数倍(L倍)したクロックで、記憶部940に格納された補間係数のアドレスをカウントする。
【0005】
FIRフィルタ950は、入力クロックCLKinの周波数を第一逓倍回路930及び第二逓倍回路960にて有理数倍(L/M倍)した出力クロックCLKoutに応答して、その時点でカウントされたアドレスに格納される補間係数を用いて、サンプルデータ蓄積部910に蓄積された入力サンプルデータSinを補間し、その補間データを出力サンプルデータSoutとして出力する。
【0006】
かかるサンプリング速度変換装置は、入力前のデータ処理系統と出力後のデータ処理系統とが共通のクロック源を持つ場合に有効に用いられる。
【0007】
つまり、かかるサンプリング速度変換装置では、入力クロックを外部の共通のクロック源から得て、入力クロックを有理数倍することで出力クロックを得ることにより、出力クロックに同期して出力されるサンプルデータは共通のクロック源の周波数を有理数倍した周波数を持つことになる。即ち、サンプリング速度変換装置は、出力後のデータ処理系統のクロックと同期したサンプリング周波数のサンプルデータを出力することができる。
【特許文献1】特開2001−24479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のサンプリング速度変換装置では、入力前のデータ処理系統と出力後のデータ処理系統とが異なるクロック源を持つ場合には、入力クロックの周波数を有理数倍した出力クロックに同期したサンプルデータを出力しても、その出力サンプルデータのサンプリング周波数は出力後のデータ処理系統のクロックに同期していないという問題が生じる。
【0009】
例えば、放送波を受信して受信信号を変換するAD変換する受信部と、受信部から受け取ったデジタルデータを復調する復調部とを有する放送波受信装置において、受信部と復調部とが異なるクロック源を有するような場合には、受信部のクロックを有理数倍したクロックに同期するようにデジタルデータをサンプリング変換しても、出力データのサンプリング周波数が復調部のクロックに同期しないことになる。
【0010】
また、図1に示すような従来のサンプリング速度変換装置では、補間係数のアドレスはカウンタ920のカウント値によって決定されるが、一般にカウンタでは、カウントアップに応じて、カウント値を示すためのデータビットのうちの複数のデータビットが変化することがあり、しかも各データビットの変化のタイミングが完全に同時であるとは限らない。
【0011】
そして、図1に示すような従来のサンプリング速度変換装置において、入力前のデータ処理系統と出力後のデータ処理系統とが異なるクロック源を持つ場合、FIRフィルタ950は、カウンタ920における各データビットの変化タイミングのずれによって、本来取り込むべきカウント値とは全く違うカウント値を取り込んでしまい、出力したサンプルデータに誤差が発生する虞がある。
【0012】
このような誤ったカウント値の取り込みは、例えば、FIRフィルタ950が出力クロックによってカウンタ920のカウント値を取り込むタイミングと、カウンタ920が入力クロックによってカウントアップ(またはカウントダウン)するタイミングとが略同時である場合に発生する。
【0013】
本発明の目的は、上述した従来の問題点に鑑み、入力クロックとは異なるクロック源から供給される入力クロックの周波数の有理数倍でない周波数を持つクロックに同期するように、入力データをサンプリング変換して出力することができるとともに、出力サンプルデータの誤差を低減することのできるサンプリング速度変換装置、及び、復調装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明によるサンプリング速度変換装置の特徴構成は、第一クロックに同期して入力されるサンプルデータを前記第一クロックの周波数とは異なる周波数の第二クロックに同期して出力するサンプリング速度変換装置であって、前記サンプルデータを蓄積するサンプルデータ蓄積部と、前記第一クロックの周波数を逓倍して第三クロックを生成する逓倍回路と、複数の補間係数を補間係数群とし、さらに前記補間係数群を複数組持つ記憶部と、前記第三クロックをカウントして前記補間係数群に対応する格納アドレスを生成するバイナリカウンタと、前記バイナリカウンタの出力値をグレイコードに変換する符号器と、前記第二クロックに同期して前記符号器の出力を取り込みバイナリコードに変換して前記格納アドレスを生成する復号器と、前記第二クロックに同期して前記復号器の出力値をアドレスとして前記記憶部から読み出した前記補間係数群をフィルタ係数として前記サンプルデータの補間データを演算出力するFIRフィルタを備えている点にある。
【0015】
上述の構成によれば、サンプルデータが第一クロック(入力クロック)に同期して入力される一方、FIRフィルタが、第一クロックの周波数とは異なる周波数の第二クロック(出力クロック)に同期して、サンプルデータの補間データを演算出力するので、出力クロックの周波数が入力クロックの周波数の有理数倍でない場合であっても、出力クロックに同期して補間されたサンプルデータを出力することができる。
【0016】
また、上述の構成によれば、符号器が、バイナリカウンタの出力をカウントアップ(またはカウントダウン)毎に1ビットしか信号変化しないグレイコードに変換するとともに、復号器が、符号器によってグレイコードに変換されたアドレス情報を取り込む。そのため、第二クロックの入力タイミングによって発生し得るバイナリカウンタの各データビットの変化タイミングのずれは、最大でも1ビットとなり、FIRフィルタが、本来取り込むべきカウント値と全く違うカウント値を取り込むことがなくなる。その結果、出力サンプルデータの誤差を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明した通り、本発明によれば、入力クロックとは異なるクロック源から供給される入力クロックの周波数の有理数倍でない周波数を持つクロックに同期するように、入力データをサンプリング変換して出力することができるとともに、出力サンプルデータの誤差を低減することのできるサンプリング速度変換装置、及び、復調装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明によるサンプリング速度変換装置、及び、復調装置について説明する。図2は、このサンプリング速度変換装置が適用される車載用放送波受信装置の構成例を示している。この車載用放送波受信装置は、AM、FM等のラジオ放送や地上デジタルテレビジョン放送等の複数系統の放送波を受信する車載機器用の放送波受信装置であり、複数のアンテナ11〜1nと、アンテナ装置2と、復調装置3と、伝送ケーブル4とを備えている。
【0019】
アンテナ装置2は、複数のアンテナ11〜1nの近傍に配置され、複数のアンテナ11〜1nと同軸ケーブル等で接続されている。
【0020】
また、アンテナ装置2は、信号系統の異なる各アンテナ11〜1nで受信された受信信号を増幅する高周波増幅部21〜2nと、増幅された受信信号にダウンコンバート等の周波数変換を施す周波数変換部221〜22nと、周波数変換された受信信号のうち所望の周波数成分を通過させるバンドパスフィルタ231〜23nと、入力された受信信号をアナログからデジタルに変換するAD変換部241〜24nと、AD変換された受信デジタル信号を予め設定されたフォーマットに従って多重化し、多重化した受信デジタル信号を所定ビット数のパラレルデータとして出力する多重化処理部25と、入力されたパラレルデータをシリアルデータに変換し、所定の伝送クロックに同期して伝送ケーブル4に出力するシリアルデータ送出部26とを備えて構成されている。
【0021】
復調装置3は、複数系統のアンテナ11〜1nで受信され、夫々異なる周波数(第一クロック及び第二クロック)を生成する二個のクロック源34、35と、受信したデータをシリアルデータからパラレルデータに変換するシリアルデータ受信部31と、多重化された受信デジタル信号を各系統の受信デジタル信号に分離する多重分離部32と、多重分離部32で分離された各系統の受信デジタル信号を復調する複数の復調処理部33(331〜33n)と、多重分離部32から第一クロックに同期して出力される各系統のサンプルデータを、第二クロックに同期して復調処理部331〜33nに出力する複数のサンプリング速度変換装置5(51〜5n)を備えている。
【0022】
多重分離部32は、多重化処理部25と同じフォーマットを用いて多重化処理部25と逆の処理を行なうことによって、多重化されたデータをアンテナ装置2で受信されたときと同一種類の信号系統毎に分離する。
【0023】
復調処理部33は、DSP(Digital Signal Processor)で構成され、受信する各信号系統の信号処理を書換え可能なプログラムに従って実行するので、アンテナ装置2のハードウェア構成に依存しない。よって、復調処理部33は、放送メディアの信号処理方法の変更に柔軟に対応して構成することができる。
【0024】
復調処理部33は上述のような特徴を有するため、独自のクロック(具体的には、多重分離部32のクロック源34による第一クロックとは異なるクロック源35による第二クロック)に同期して動作している。そして、第二クロックは第一クロックの有理数倍であるとは限らない。
【0025】
そのため、復調装置3は、多重分離部32より第一クロックに同期して入力されるサンプルデータを、第二クロックに同期して出力するサンプリング速度変換装置5を備えているのである。
【0026】
つまり、サンプリング速度変換装置5では、第一クロックはサンプルデータを生成処理する前置データ処理系統のクロック源34から供給され、第二クロックは補間データを処理する後置データ処理系統のクロック源35から供給される。ここで、本実施形態では、前置データ処理系統は多重分離部32のことであり、後置データ処理系統は復調処理部331〜33nのことであり、補間データは後述するようにサンプリング速度変換装置5からの出力データのことである。
【0027】
以下、サンプリング速度変換装置5について説明する。図3に示すように、サンプリング速度変換装置5は、入力されたサンプルデータを蓄積するサンプルデータ蓄積部51と、第一クロックの周波数を逓倍して第三クロックを生成する逓倍回路52と、複数の補間係数を補間係数群とし、さらに前記補間係数群を複数組持つ記憶部53と、前記第三クロックをカウントして前記補間係数群に対応する格納アドレスを生成するバイナリカウンタ54と、バイナリカウンタ54の出力値をグレイコードに変換する符号器55と、第二クロックに同期して符号器55の出力を取り込みバイナリコードに変換して格納アドレスを生成する復号器56と、第二クロックに同期して復号器56の出力値をアドレスとして記憶部53から読み出した前記補間係数群をフィルタ係数としてサンプルデータの補間データを演算出力するFIRフィルタ57を備えている。
【0028】
換言すると、記憶部53は、第三クロックの周波数に対応した複数の補間係数郡を格納し、バイナリカウンタ54は、第三クロックをカウントして記憶部53に格納された特定の補間係数群の格納アドレスに対応したアドレス情報を生成し、FIRフィルタ57は、第二クロックに同期して復号器56の出力値をアドレスとして記憶部53から読み出した前記特定の補間係数群をフィルタ係数としてサンプルデータの補間データを演算出力する。
【0029】
図4は、図3に示したサンプリング速度変換装置5の第一の構成例を説明するための図である。この構成例では、入力サンプルデータの補間方法としてラグランジュ補間による二次補間を用い、三個の入力サンプルデータに基づき二個の入力サンプルデータ間の補間データを求める。具体的には、二個の入力サンプルデータ間において三個の補間データを求め、入力サンプルデータを四倍に補間する。尚、FIRフィルタ57において実行される補間データの演算についての詳細については後述する。
【0030】
サンプルデータ蓄積部51は、三個の入力サンプルデータを保持するシフトレジスタSR1、SR2、SR3を有し、第一クロックに同期してシフトレジスタSR1に入力されたサンプルデータY(1),Y(2),・・・,Y(n)は、第一クロックに同期してSR2、SR3と順次シフトし、シフトレジスタSR1、SR2、SR3に蓄積された三個の入力サンプルデータがFIRフィルタ57の乗算器571(571a、571b、571c)へ入力される。
【0031】
バイナリカウンタ54は、逓倍回路52において生成された第一クロックの周波数を四倍した第三クロックで4クロック分のカウントを行なう。カウントは、「3」を初期値として「0」までデクリメントされ、「0」になると初期値「3」にリセットされるという動作の繰り返しによって行なわれる。「3」から「0」の何れかであるカウント値は、記憶部3に記憶された複数の補間係数郡(tapn1,tapn2,tapn3,n=0,1,2,3)の格納アドレスArのアドレス番号であり、バイナリカウンタ54は、当該カウント値を符号器55に出力する。
【0032】
符号器55では、バイナリカウンタ54より入力されたバイナリコードであるカウント値(「0」〜「3」)を、図5(a)に示す変換表に従ってグレイコードへ変換し、復号器56へ出力する。
【0033】
復号器56は、第二クロックに従って、例えば第二クロックの立下りのタイミングで、符号器55より入力されたグレイコードであるカウント値を取り込み、取り込んだカウント値を図5(b)に示す変換表に従ってバイナリコードへ変換する。
【0034】
尚、変換表は、カウント値のデクリメントに対応して1ビットしか変化しない変換を行なうものであれば、図5(a)、(b)に示すものに限らない。
【0035】
上述のように、カウント値の取り込みをグレイコードへの変換を行なった上で行なうと、バイナリカウンタ54の各データビットの変化タイミングのずれによって発生するカウント値の取り込み誤差を低減することができる。
【0036】
以下に詳述する。例えば、復号器56が、カウント値の取り込みをバイナリコードのままで行なう構成であって、「1(0001)」から「2(0010)」へカウントアップしたカウント値「2」を取り込む場合、カウント値が「1(0001)」から「2(0010)」へカウントアップすると、下位の2ビット(LSB及び下2桁目のビット)が変化する。
【0037】
この際、LSB及び下2桁目のビットが同時に変化するとは限らない。よって、LSBが「1」から「0」に変わってカウント値が「0(0000)」となった瞬間に、復号器56に第二クロックの立下り信号が入力されると、復号器56はカウント値「0(0000)」を取り込んでしまう。
【0038】
つまり、復号器56は、本来取り込むべきカウント値「2(0010)」でなく、カウント値「0(0000)」を取り込んでしまったこととなり、この場合の誤差は2となる。
【0039】
一方、本実施形態のように、復号器56が、カウント値の取り込みをグレイコードで行なう構成であって、上記の場合と同様にカウント値「2」を取り込む場合、カウント値が「1(0001)」から「2(0011)」へカウントアップしても、下2桁目のビットしか変化しない。
【0040】
よって、下2桁目のビットが「0」から「1」に変わってカウント値が「2(0011)」となる前に、復号器56に第二クロックの立下り信号が入力されると、復号器56はカウント値「1(0001)」を取り込んでしまう。
【0041】
つまり、復号器56は、本来取り込むべきカウント値「2(0011)」でなく、カウント値「1(0001)」を取り込んでしまったこととなるが、上記の場合と異なり、この場合の誤差は1で済むのである。
【0042】
尚、カウント値の取り込みをグレイコードで行なうことによる誤差の低減の効果は、バイナリカウンタ54によってカウントされるカウント数が大きい程、大きくなる。
【0043】
記憶部53には、複数の補間係数郡として、ラグランジュ補間によって補間データを演算するための補間係数が格納されている。以下、図6(a)を用いて記憶部53に格納される補間係数について説明する。
【0044】
公知のラグランジュ補間では、間隔Sの離散点D2(X(2),Y(2)),D3(X(3),Y(3))で表される二個の入力サンプルデータ間の補間点(xn,yn)のY座標値は、点D2,D3を含む三個以上の既知の離散点のY座標値に対して所定の式で求められる補間係数を乗算し、その乗算結果の和として求められる。
【0045】
本構成例では、等間隔Sの三個の離散点D1(X(1),Y(1)),D2(X(2),Y(2)),D3(X(3),Y(3))を用いて、点D2,D3の二点間を四倍に補間、つまり二点間に三点(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)を等間隔に挿入する二次補間を行なう。
【0046】
ここで、各補間点(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)による補間比pを、p=dn/S(但し、dn=xn−X(2),n=0,1,2,3)とすると、各補間点のX座標値x1,x2,x3に対応する補間比pは、0,0.25,0.5,0.75となり、記憶部53に格納される補間係数Q1,Q2,Q
3は以下に示す数1〜数3で求められる。
【数1】
【数2】
【数3】
【0047】
つまり、図6(b)に示すように、予め、補間比pの各値0,0.25,0.5,0.75を数1〜数3に代入することによって補間係数Q1,Q2,Q3の組合せを算出しておき、算出した補間係数Q1,Q2,Q3の組合せを、補間比pの各値に対応付けられた記憶部3のアドレスAr(「3」〜「0」)に格納しておくのである。
【0048】
FIRフィルタ57は、乗算器571と、加算器572と、三個のレジスタtap1,tap2,tap3で構成されるラッチ回路573とを備えて構成されている。
【0049】
FIRフィルタ57について詳述する。FIRフィルタ57では、第二クロックに同期して、復号器56で取り込まれたカウント値に対応した記憶部53のアドレスAr(「3」〜「0」の何れか)から、当該アドレスArに格納される三個の補間係数(tapn1,tapn2,tapn3,n=0,1,2,3)が、ラッチ回路573のレジスタtap1,tap2,tap3へ取り込まれ、乗算器571a、571b、571cにより入力サンプルデータと各補間係数が乗算され、乗算結果が加算器572により合計されて出力される。
【0050】
つまり、FIRフィルタ57から出力されるデータは、以下の数4に示すように、補間係数Q1,Q2,Q3と点D1(X(1),Y(1)),D2(X(2),Y(2)),D3(X(3),Y(3))の夫々のY座標値との積和演算によって算出された、各補間点のY座標値ynである。
【数4】
【0051】
図7は、第一の構成例のサンプリング速度変換装置5に入力されるデータについて説明するチャート図である。本図においては横軸方向に時間が示される。第一クロックの立上りに同期して、Y(1),Y(2),・・・,Y(n)の値を示す入力サンプルデータがシフトレジスタSR1へ入力され、シフトレジスタSR1からSR2へ、SR2からSR3へと順次シフトする。図7は、第一クロックのクロック1に同期して入力サンプルデータのY(1),Y(2),Y(3)がシフトレジスタへ格納された時点から示している。
【0052】
第一クロックが四倍された第三クロックに同期して、バイナリカウンタ54によるカウント値は、「3」から「0」までデクリメントする。そして、第二クロックのクロック1の立上りに同期して、復号器56においてカウント値「3」が取り込まれ、当該カウント値「3」に対応した補間係数{0,1,0}がラッチ回路573へ取り込まれる。そして、乗算器571a,571b,571cによりシフトレジスタSR1,SR2,SR3から入力されるデータ{Y(3),Y(2),Y(1)}と補間係数{0,1,0}が夫々乗算され、各乗算結果が加算器572で合計されてサンプルデータY(2)とY(1)の間の補間比「0」の補間点(つまりY(2))として出力される。
【0053】
次に、第二クロックのクロック2の立上りに同期して、復号器56においてカウント値「0」が取り込まれ、当該カウント値「0」に対応した補間係数{−0.09375,0.4375,0.65625}がラッチ回路573へ取り込まれる。そして、乗算器571a,571b,571cによりシフトレジスタSR1,SR2,SR3から入力されるデータ{Y(3),Y(2),Y(1)}と補間係数{−0.09375,0.4375,0.65625}が夫々乗算され、各乗算結果が加算器572で合計されてサンプルデータY(2)とY(1)の間の補間比「0.75」の補間点として出力される。
【0054】
次に、第二クロックのクロック3の立上りに同期して、復号器56においてカウント値「1」が取り込まれ、当該カウント値「1」に対応した補間係数{−0.125,0.75,0.375}がラッチ回路573へ取り込まれる。この時は、シフトレジスタSR1,SR2,SR3には、入力サンプルデータ{Y(4),Y(3),Y(2)}が格納されているので、乗算器571a,571b,571cによりシフトレジスタSR1,SR2,SR3から入力されるデータ{Y(4),Y(3),Y(2)}と補間係数{−0.125,0.75,0.375}が夫々乗算され、各乗算結果が加算器572で合計されてサンプルデータY(3)とY(2)の間の補間比「0.5」の補間点として出力される。
【0055】
次に、第二クロックのクロック4の立上りに同期して、復号器56においてカウント値「2」が取り込まれ、当該カウント値「2」に対応した補間係数{−0.09375,0.09375,0.15625}がラッチ回路573へ取り込まれる。この時は、シフトレジスタSR1,SR2,SR3には、入力サンプルデータ{Y(5),Y(4),Y(3)}が格納されているので、乗算器571a,571b,571cによりシフトレジスタSR1,SR2,SR3から入力されるデータ{Y(5),Y(4),Y(3)}と補間係数{−0.09375,0.09375,0.15625}が夫々乗算され、各乗算結果が加算器572で合計されてサンプルデータY(4)とY(3)の間の補間比「0.25」の補間点として出力される。
【0056】
以降、同様にして、バイナリカウンタ54が第三クロックに同期して「3」〜「0」のカウントを反復する間、FIRフィルタ57では、第二クロックの立上りに同期して復号器56によって取り込まれたカウント値に対応したアドレスArの補間係数を用いて、その時サンプルデータ蓄積部51のシフトレジスタSR1,SR2,SR3に蓄積されているサンプルデータ間の補間が行なわれる。
【0057】
上記のように構成されるサンプリング速度変換装置5の入出力データを模式的に図8において示す。本図において横軸は時間を示しており、サンプルデータ蓄積部51に入力される第一クロックに同期したサンプルデータSinを、第一クロックの四倍の第三クロックの分解能に対応して補間したとすると、実線及び一点鎖線で示される補間データSipのようになる。尚、入力サンプルデータSin、補間データSipは共に縦軸にデータの値を示す。ここで、実際の補間は、復号器56において第二クロックに同期して取り込まれたバイナリカウンタ54のカウント値に対応して行なわれ、その結果、実線で示される補間データSipが算出されて、出力サンプルデータSoutとして出力される。
【0058】
尚、上述においてはラグランジュ補間の二次補間を行なう場合について説明したが、(n+1)個の補間係数と(n+1)個のシフトレジスタを有し、三次以上のn次補間を行なう構成であってもよい。
【0059】
また、二点間の補間比に応じた数の補間係数の組合せを記憶部53に格納し、逓倍回路52において第一クロックの周波数を逓倍して補間比に応じた分解能を有する第三クロックを生成し、第三クロックに同期して補間係数のアドレスカウントが行なわれるように構成することで、二点間の分解能を高めることができる。
【0060】
例えば、逓倍回路52において第一クロックを16倍した第三クロックを生成し、第三クロックに同期して「15」から「0」までデクリメントするバイナリカウンタ54を備え、補間比を0,1/16,2/16,・・・,14/16,15/16として算出された16組の補間係数を記憶部53に格納しておくことで、サンプルデータを16倍に補間することが可能となる。
【0061】
一例として、サンプリング速度変換装置5の第二の構成例を図9に基づいて説明する。この構成例は、第二クロックに同期して、六次のラグランジュ補間により七個の入力サンプルデータに基づき二個の入力サンプルデータ間の補間データを求めて出力する場合の構成例である。更に、この構成例では、サンプルデータ間を48倍で補間するために、七個の補間係数からなる組合せを48組備える。
【0062】
また、この構成例のサンプリング速度変換装置5は、逓倍回路52に設けられており第三クロックの位相を等量ずらせた複数の第三クロックを生成する移相器521と、移相器521から出力される各クロックをカウントする複数(本構成例では四個)のバイナリカウンタ54(541〜544)と、各バイナリカウンタ54の出力値を夫々グレイコードに変換する複数(本構成例では四個)の符合器55(551〜554)を備え、復号器56が各符号器55の出力を取り込みバイナリコードに変換してその加算値に基づいて格納アドレスを生成するように構成されている。
【0063】
サンプルデータ蓄積部51は、七個の入力サンプルデータを保持するシフトレジスタSR1,SR2,・・・,SR7を有し、第二逓倍回路58にてシステムクロックの周波数を1/4倍にした第一クロックに同期してシフトレジスタSR1に入力されたサンプルデータY(1),Y(2),・・・,Y(n)は、第一クロックに同期してSR2,SR3,・・・,SR7と順次シフトし、シフトレジスタSR1,SR2,・・・,SR7に蓄積された七個の入力サンプルデータがFIRフィルタ57の乗算器571(571a,571b,・・・,571g)へ入力される。
【0064】
また、移相器521は、システムクロックを逓倍回路52で3倍にしたクロック(つまり第一クロックの12倍のクロック)に基づき、0度、90度、180度、270度に位相をずらした四個のクロックCLK1,CLK2,CLK3,CLK4を生成する。そして、夫々のクロックに同期して12クロック分のカウントを行なうバイナリカウンタ541〜544の夫々から、「12」または「11」から「0」までデクリメントされる夫々のカウント値が、符号器551〜554へ出力される。
【0065】
符号器551は、バイナリカウンタ541より入力されたバイナリコードであるカウント値(「12」〜「0」)を、図10(a)に示す変換表に従ってグレイコードへ変換し、復号器56へ出力する。また、符号器552〜554は、バイナリカウンタ541より入力されたバイナリコードであるカウント値(「11」〜「0」)を、図10(a)に示す変換表に従ってグレイコードへ変換し、復号器56へ出力する。
【0066】
復号器56は、第二クロックに従って、例えば第二クロックの立下りのタイミングで、符号器551〜554より入力されたグレイコードである各カウント値を取り込み、取り込んだ各カウント値を図10(b)に示す変換表に従ってバイナリコードへ変換する。そして、バイナリコードへ変換された各カウント値を加算する。
【0067】
尚、変換表は、カウント値のデクリメント(またはインクリメント)に対応して1ビットしか変化しない変換を行なうものであれば、図10(a)、(b)に示すものに限らない。
【0068】
ここで、復号器56において加算されるカウント値について、図11を用いて説明する。バイナリカウンタ541〜544は、一つのカウンタにより第一クロックの周波数を48倍したクロックでカウントを行なう代わりに、第一クロックの12倍の速度で90度ずつ位相が異なる四個のクロックCLK1,CLK2,CLK3,CLK4夫々に同期してカウントを行なう。各バイナリカウンタ541〜544のカウント値は、「12」または「11」から「0」までデクリメントしリセットされる。
【0069】
尚、各バイナリカウンタ541〜544をリセットするために、第二の構成例では、サンプリング速度変換装置5はリセット回路59を備えており、リセット回路59は第一クロックに基づいて各バイナリカウンタ541〜544をリセットする。リセット回路59については、図13において後述する。
【0070】
復号器56において、「12」または「11」から「0」までのカウント値が四位相分合計されると「47」から「0」までの48通りの何れかの値となり、復号器56は、第二クロックに同期して、記憶部53における「47」から「0」までの何れかのアドレスのカウント値を出力する。
【0071】
そして、記憶部53の当該アドレスに格納される補間係数tapn1,tapn2,・・・,tapn7(n=00,01,・・・,46,47)がラッチ回路573のレジスタtap1,tap2,・・・,tap7へ取り込まれ、乗算器571a,571b,・・・,571gにより入力サンプルデータと各補間係数が乗算され、乗算結果が加算器572により合計されて出力される。
【0072】
尚、第二の構成例では、サンプルデータ間を48倍に補間するために、記憶部53に48組の補間係数の組合せが格納される。この場合、補間比pは、0,1/48,2/48,・・・,46/48,47/48の48通りであり、夫々に対応する補間係数は以下の数5〜数11で求められる。
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【0073】
このようにして、第一クロックの周波数の12倍のクロックを使用するだけで、48倍まで高めた分解能での補間が可能となる。よって、FIRフィルタ57は、第一クロックが48倍される場合より安定した状態で補間を行なうことが可能となる。
【0074】
図12は、第二の構成例のサンプリング速度変換装置5の処理の流れについて説明するチャート図である。本図において横軸方向は時間を示す。
【0075】
シフトレジスタSR1,SR2,・・・,SR7は、第一クロックの立下りタイミングでデータをシフトする。図12におけるシフトデータは、SR1からSR2,SR2からSR3,・・・,SR6からSR7へシフトされる入力サンプルデータを示している。尚、バイナリカウンタ54は、データがシフトされる第一クロックの立下りタイミングで、リセット信号によってリセットされるが、これについては図13において後述する。
【0076】
第二の構成例では、FIRフィルタ57は、reg11,reg12,・・・,reg17で構成されるラッチ用レジスタ、及び、reg21,reg22,・・・,reg27で構成される演算用レジスタの二種類のレジスタ574を備えている。
【0077】
そして、シフトレジスタSR1,SR2,・・・,SR7に保持されているサンプルデータは、第二クロックの立下りタイミングでラッチ用レジスタにコピーされ、ラッチ用レジスタにコピーされたサンプルデータは、次の第二クロックの立下りタイミングで演算用レジスタにコピーされる。
【0078】
このように二種類のレジスタを備えることで、第一クロックの立下りタイミング(シフトレジスタのデータシフトタイミング)と、第二クロックの立下りタイミングとが重なった場合でも、FIRフィルタ57は正しい演算データを取得することができる。
【0079】
復号器56は、第二クロックの立下りタイミングで、バイナリカウンタ541〜544のカウント値を取り込んで、それらの合計値によって使用する補間係数を決定する。
【0080】
図12では、復号器56は、第二クロックの立下りタイミングで、各バイナリカウンタ541〜544からカウント値「2」、「3」、「3」、「3」を取り込み、グレイコードである当該カウント値を図10(b)の変換表によりバイナリコードに変換する。
【0081】
つまり、バイナリカウンタ541のグレイコードのカウント値「2」は、バイナリコードのカウント値「10」に、バイナリカウンタ542〜544のグレイコードのカウント値「3」は、バイナリコードのカウント値「10」に夫々変換される。
【0082】
変換されたカウント値の合計値が「40」であるので、記憶部53のアドレス「40」であるtap401,tap402,・・・,tap407に記憶されている補間係数を、次の第二クロックの立下りタイミングでラッチ回路573に格納する。
【0083】
図13は、第二の構成例のサンプリング速度変換装置5のバイナリカウンタ541〜544のリセット処理の一例について説明するチャート図である。本図において横軸方向は時間を示す。
【0084】
リセット回路59は、バイナリカウンタ541のカウント値を検出しており、カウント値が零となったことを検出すると、ローレベルのリセット信号を出力してバイナリカウンタ542〜544をリセットする(カウント値を初期値である「12」にする)。そして、第一クロックの次の立下りタイミングに同期して、リセット信号をローレベルからハイレベルに立ち上げることで、バイナリカウンタ541もリセットする(カウント値を初期値である「11」にする)。以上の動作によってバイナリカウンタ54(541〜544)をリセットする。
【0085】
ところで、第二の構成例では、クロックCLK1,CLK2,CLK3,CLK4の位相は90度ずつずれているため、各バイナリカウンタ541〜544を同時にリセットすることはできない。そのため、一部のバイナリカウンタ54のみリセットされている状態では、カウント値の合計値は正しくならない。
【0086】
具体的には、図13の最下段に示すように、本来であればカウント値の合計値が「2」、「1」、「0」となるべきタイミングであっても、当該タイミングでは一部のバイナリカウンタ54のみリセットされている状態であるために、カウント値の合計値が「14」、「25」、「36」となってしまう。
【0087】
そこで、第二の構成例では、図9に破線で示すように、復号器56に、各符号器551〜554の出力を変換したバイナリコードに基づいて加算値を補正する格納アドレス補正部561を備えることで、カウント値の合計値の誤りを是正している。
【0088】
詳述すると、格納アドレス補正部561は、合計値が誤った値となる特定のカウント値の組合せと、当該組合せに対応する正しい合計値とで構成される、図14(a)に示すようなデータテーブルを備えている。
【0089】
そして、格納アドレス補正部561は、復号器56に入力されてバイナリコードへ変換された各カウント値の組合せを当該データテーブルに当てはめて、当該データテーブルに記憶されたカウント値の組合せと合致する場合には、各カウント値を加算して合計値を算出して出力する代わりに、当該データテーブルに記憶されている補正値を正しい合計値として出力する。
【0090】
バイナリカウンタ541は、理論上は図13に示すようにクロックCLK1,CLK2,CLK3,CLK4に従ってカウントを実行するので、図14(a)に示すデータテーブルによるカウント値の補正をおこなうことで、カウント値の合計値が正しくならない全ての組合せに対応していることになる。
【0091】
しかし、実際の回路では、第二クロックの立下りタイミング(復号器56によるカウント値の取り込みタイミング)と、CLK1,CLK2,CLK3,CLK4の何れかの立上りタイミング(カウント値の変化タイミング)とが重なることで、カウンタ値が1つずれてしまい、理論上起こり得ない組合せが発生してしまう。また、実際の回路では、クロックのずれ、回路遅延、配線遅延、または温度変動等により、本来等間隔であるはずのカウント値の合計値の期間(図13において「t」で示す期間)が伸縮し、理論上起こり得ない組合せが発生してしまう。
【0092】
そこで、格納アドレス補正部561は、図14(a)に示すようなデータテーブルに加えて、上述のような起こり得ない組合せを登録した、図14(b)や図14(c)に示すようなデータテーブルを備えることで、復号器56に起こり得ない組合せが入力して場合であっても正しい合計値を出力することができる。
【0093】
例えば、格納アドレス補正部561は、復号器56に入力されてバイナリコードへ変換された各カウント値の組合せが「1」、「12」、「1」、「1」である場合、図14(b)の破線で示すような組合せに合致するので、各カウント値の合計値「15」を出力する代わりに、当該データテーブルに記憶されている補正値「2」を正しい合計値として出力する。
【0094】
本例の場合、入力された各カウント値の組合せである「1」、「12」、「1」、「1」は、本来、「0」、「12」、「1」、「1」の組合せ(つまり、図14(a)における補正値「2」に対応する組合せ)であるべきところ、バイナリカウンタ541(0°のカウンタ)が1つずれてしまうことで、「1」、「12」、「1」、「1」の組合せとなってしまったものであると、格納アドレス補正部561によって判断されているのである。
【0095】
尚、データテーブルは、図14(a)〜(c)に示したものに限らない。例えば、バイナリカウンタ541〜544のうち、二個のカウンタのカウント値が同時にずれてしまった場合、理論上起こり得ない組合せとして、「0」、「12」、「2」、「2」の組合せといった図14(b)に示された組合せ以外の組合せが発生するが、このような場合であっても、格納アドレス補正部561は、発生した当該組合せを図14(b)のデータテーブルに追加登録した構成であってもよい。
【0096】
図15は、本実施形態のサンプリング速度変換装置5の第三の構成例を説明する図である。本構成例は、復号器56及びFIRフィルタ57に入力される第二クロックを、第一クロックを逓倍した第四クロックに切り替えるクロック切替部60を備えた構成例である。
【0097】
本構成例では、クロック切替部60により、クロック源34からの第一クロックを第三逓倍回路61にて有理数倍したクロック、または、クロック源35からの第二クロックの何れかを、復号器56及びFIRフィルタ57へ入力するクロックとすることができる。
【0098】
よって、出力サンプルデータの処理系統が入力サンプルデータの処理系統と同一のクロック源を有するようなシステムにおけるサンプリング変換を行なう場合は、第一クロックを有理数倍したクロックを復号器56及びFIRフィルタ57へ入力するクロックとし、異なるクロック源の場合は、出力サンプルデータの処理系統のクロック源35から供給される第二クロックを復号器56及びFIRフィルタ57へ入力するクロックとする。そうすることにより、サンプリング速度変換装置5が適用されるシステム構成に応じて出力データの処理系統のクロックに同期した出力サンプルデータを出力することができる。
【0099】
尚、第一の構成例では二次補間、第二の構成例では六次補間について説明したが、補間係数の個数は三個あるいは七個に限らず、補間係数の数に応じた入力サンプルデータを蓄積できるサンプルデータ蓄積部51を備え、これに応じた数の補間係数を記憶部53に格納することにより任意の高次補間を行なうことができる。また、補間比も上記の4倍あるいは48倍に限らず、補間比に応じた補間係数の組合せを記憶部53に格納し、第一クロックを逓倍して補間比に応じた分解能でカウントするバイナリカウンタ54を備えることにより、任意の補間比とするうことが可能である。
【0100】
また、上記の構成例ではラグランジュ補間を行なうが、蓄積されたサンプルデータに対し補間係数を用いて補間データを求めるようにFIRフィルタ57を構成すれば、係数の積和演算以外の方法により補間を行なう方法にも本実施形態は適用できる。
【0101】
さらに、本実施形態のサンプリング速度変換装置5は、車載用放送波受信装置だけでなく、様々な画像処理装置、音声出力装置等、異なるクロックにより動作するデータ処理系統間で転送されるデータのサンプリング周波数変換に適用される。
【0102】
このように、本実施形態によれば、出力クロックの周波数が入力クロックの周波数の有理数倍でない場合であっても出力クロックにほぼ同期して補間されたサンプルデータを出力することができる。
【0103】
尚、上述の実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各ブロックの具体的構成等は適宜変更設計できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】従来のサンプリング速度変換装置の機能ブロック構成図
【図2】車載用放送波受信装置の機能ブロック構成図
【図3】本発明によるサンプリング速度変換装置の機能ブロック構成図
【図4】図3に示したサンプリング速度変換装置の第一の構成例の機能ブロック構成図
【図5】(a)は、第一の構成例におけるバイナリコードからグレイコードへの変換を示し、(b)は、第一の構成例におけるグレイコードからバイナリコードへの変換を示す説明図
【図6】(a)は、記憶部に記憶された補間係数の算出についての説明図、(b)は、記憶部に記憶された補間係数の組合せを示す説明図
【図7】第一の構成例のサンプリング速度変換装置各部に入力されるデータについて説明するチャート図
【図8】第一の構成例のサンプリング速度変換装置の出力データを模式的に示す説明図
【図9】本実施形態のサンプリング速度変換装置の第二の構成例の機能ブロック構成図
【図10】(a)は、第二の構成例におけるバイナリコードからグレイコードへの変換を示し、(b)は、第二の構成例におけるグレイコードからバイナリコードへの変換を示す説明図
【図11】第二の構成例において復号器において加算されるカウント値についての説明図
【図12】第二の構成例のサンプリング速度変換装置の処理の流れについて説明するチャート図
【図13】第二の構成例のサンプリング速度変換装置のバイナリカウンタのリセット処理について説明するチャート図
【図14】(a)は、理論上起こり得る特定のカウント値の組合せのデータテーブルを示し、(b)は、理論上起こり得ない特定のカウント値の組合せのデータテーブルを示し、(c)は、外的要因により発生する特定のカウント値の組合せのデータテーブルを示す説明図
【図15】本実施形態のサンプリング速度変換装置の第三の構成例の機能ブロック構成図
【符号の説明】
【0105】
3:復調装置
32:多重分離部
33:復調処理部
5:サンプリング速度変換装置
51:サンプルデータ蓄積部
52:逓倍回路
53:記憶部
54:バイナリカウンタ
55:符号器
56:復号器
561:格納アドレス補正部
57:FIRフィルタ
60:クロック切替部
【技術分野】
【0001】
本発明は、第一クロックに同期して入力されるサンプルデータを前記第一クロックの周波数とは異なる周波数の第二クロックに同期して出力するサンプリング速度変換装置、及び、サンプリング速度変換装置を備えた復調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の周波数のクロックでサンプリングされたサンプルデータを入力し、異なる周波数のクロックに同期して補間あるいは間引きしたサンプルデータを出力するサンプリング速度変換装置が知られている。例えば、特許文献1には、画素数の異なる画像データを所定の画素数で共通の出力装置に表示する画像処理装置や、複数の画像フォーマットを多重化した放送波を受信し、所定のサイズの画像に変換して表示する受像装置等に用いられるサンプリング速度変換装置が記載されている。
【0003】
かかるサンプリング速度変換装置の構成例を図1に示す。入力クロックCLKinに同期してサンプリング速度変換装置に入力される入力サンプルデータSinは、シフトレジスタにより構成されるサンプルデータ蓄積部910に蓄積される。
【0004】
カウンタ920は、入力クロックCLKinの周波数を第一逓倍回路930にて自然数倍(L倍)したクロックで、記憶部940に格納された補間係数のアドレスをカウントする。
【0005】
FIRフィルタ950は、入力クロックCLKinの周波数を第一逓倍回路930及び第二逓倍回路960にて有理数倍(L/M倍)した出力クロックCLKoutに応答して、その時点でカウントされたアドレスに格納される補間係数を用いて、サンプルデータ蓄積部910に蓄積された入力サンプルデータSinを補間し、その補間データを出力サンプルデータSoutとして出力する。
【0006】
かかるサンプリング速度変換装置は、入力前のデータ処理系統と出力後のデータ処理系統とが共通のクロック源を持つ場合に有効に用いられる。
【0007】
つまり、かかるサンプリング速度変換装置では、入力クロックを外部の共通のクロック源から得て、入力クロックを有理数倍することで出力クロックを得ることにより、出力クロックに同期して出力されるサンプルデータは共通のクロック源の周波数を有理数倍した周波数を持つことになる。即ち、サンプリング速度変換装置は、出力後のデータ処理系統のクロックと同期したサンプリング周波数のサンプルデータを出力することができる。
【特許文献1】特開2001−24479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のサンプリング速度変換装置では、入力前のデータ処理系統と出力後のデータ処理系統とが異なるクロック源を持つ場合には、入力クロックの周波数を有理数倍した出力クロックに同期したサンプルデータを出力しても、その出力サンプルデータのサンプリング周波数は出力後のデータ処理系統のクロックに同期していないという問題が生じる。
【0009】
例えば、放送波を受信して受信信号を変換するAD変換する受信部と、受信部から受け取ったデジタルデータを復調する復調部とを有する放送波受信装置において、受信部と復調部とが異なるクロック源を有するような場合には、受信部のクロックを有理数倍したクロックに同期するようにデジタルデータをサンプリング変換しても、出力データのサンプリング周波数が復調部のクロックに同期しないことになる。
【0010】
また、図1に示すような従来のサンプリング速度変換装置では、補間係数のアドレスはカウンタ920のカウント値によって決定されるが、一般にカウンタでは、カウントアップに応じて、カウント値を示すためのデータビットのうちの複数のデータビットが変化することがあり、しかも各データビットの変化のタイミングが完全に同時であるとは限らない。
【0011】
そして、図1に示すような従来のサンプリング速度変換装置において、入力前のデータ処理系統と出力後のデータ処理系統とが異なるクロック源を持つ場合、FIRフィルタ950は、カウンタ920における各データビットの変化タイミングのずれによって、本来取り込むべきカウント値とは全く違うカウント値を取り込んでしまい、出力したサンプルデータに誤差が発生する虞がある。
【0012】
このような誤ったカウント値の取り込みは、例えば、FIRフィルタ950が出力クロックによってカウンタ920のカウント値を取り込むタイミングと、カウンタ920が入力クロックによってカウントアップ(またはカウントダウン)するタイミングとが略同時である場合に発生する。
【0013】
本発明の目的は、上述した従来の問題点に鑑み、入力クロックとは異なるクロック源から供給される入力クロックの周波数の有理数倍でない周波数を持つクロックに同期するように、入力データをサンプリング変換して出力することができるとともに、出力サンプルデータの誤差を低減することのできるサンプリング速度変換装置、及び、復調装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的を達成するため、本発明によるサンプリング速度変換装置の特徴構成は、第一クロックに同期して入力されるサンプルデータを前記第一クロックの周波数とは異なる周波数の第二クロックに同期して出力するサンプリング速度変換装置であって、前記サンプルデータを蓄積するサンプルデータ蓄積部と、前記第一クロックの周波数を逓倍して第三クロックを生成する逓倍回路と、複数の補間係数を補間係数群とし、さらに前記補間係数群を複数組持つ記憶部と、前記第三クロックをカウントして前記補間係数群に対応する格納アドレスを生成するバイナリカウンタと、前記バイナリカウンタの出力値をグレイコードに変換する符号器と、前記第二クロックに同期して前記符号器の出力を取り込みバイナリコードに変換して前記格納アドレスを生成する復号器と、前記第二クロックに同期して前記復号器の出力値をアドレスとして前記記憶部から読み出した前記補間係数群をフィルタ係数として前記サンプルデータの補間データを演算出力するFIRフィルタを備えている点にある。
【0015】
上述の構成によれば、サンプルデータが第一クロック(入力クロック)に同期して入力される一方、FIRフィルタが、第一クロックの周波数とは異なる周波数の第二クロック(出力クロック)に同期して、サンプルデータの補間データを演算出力するので、出力クロックの周波数が入力クロックの周波数の有理数倍でない場合であっても、出力クロックに同期して補間されたサンプルデータを出力することができる。
【0016】
また、上述の構成によれば、符号器が、バイナリカウンタの出力をカウントアップ(またはカウントダウン)毎に1ビットしか信号変化しないグレイコードに変換するとともに、復号器が、符号器によってグレイコードに変換されたアドレス情報を取り込む。そのため、第二クロックの入力タイミングによって発生し得るバイナリカウンタの各データビットの変化タイミングのずれは、最大でも1ビットとなり、FIRフィルタが、本来取り込むべきカウント値と全く違うカウント値を取り込むことがなくなる。その結果、出力サンプルデータの誤差を低減することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明した通り、本発明によれば、入力クロックとは異なるクロック源から供給される入力クロックの周波数の有理数倍でない周波数を持つクロックに同期するように、入力データをサンプリング変換して出力することができるとともに、出力サンプルデータの誤差を低減することのできるサンプリング速度変換装置、及び、復調装置を提供することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明によるサンプリング速度変換装置、及び、復調装置について説明する。図2は、このサンプリング速度変換装置が適用される車載用放送波受信装置の構成例を示している。この車載用放送波受信装置は、AM、FM等のラジオ放送や地上デジタルテレビジョン放送等の複数系統の放送波を受信する車載機器用の放送波受信装置であり、複数のアンテナ11〜1nと、アンテナ装置2と、復調装置3と、伝送ケーブル4とを備えている。
【0019】
アンテナ装置2は、複数のアンテナ11〜1nの近傍に配置され、複数のアンテナ11〜1nと同軸ケーブル等で接続されている。
【0020】
また、アンテナ装置2は、信号系統の異なる各アンテナ11〜1nで受信された受信信号を増幅する高周波増幅部21〜2nと、増幅された受信信号にダウンコンバート等の周波数変換を施す周波数変換部221〜22nと、周波数変換された受信信号のうち所望の周波数成分を通過させるバンドパスフィルタ231〜23nと、入力された受信信号をアナログからデジタルに変換するAD変換部241〜24nと、AD変換された受信デジタル信号を予め設定されたフォーマットに従って多重化し、多重化した受信デジタル信号を所定ビット数のパラレルデータとして出力する多重化処理部25と、入力されたパラレルデータをシリアルデータに変換し、所定の伝送クロックに同期して伝送ケーブル4に出力するシリアルデータ送出部26とを備えて構成されている。
【0021】
復調装置3は、複数系統のアンテナ11〜1nで受信され、夫々異なる周波数(第一クロック及び第二クロック)を生成する二個のクロック源34、35と、受信したデータをシリアルデータからパラレルデータに変換するシリアルデータ受信部31と、多重化された受信デジタル信号を各系統の受信デジタル信号に分離する多重分離部32と、多重分離部32で分離された各系統の受信デジタル信号を復調する複数の復調処理部33(331〜33n)と、多重分離部32から第一クロックに同期して出力される各系統のサンプルデータを、第二クロックに同期して復調処理部331〜33nに出力する複数のサンプリング速度変換装置5(51〜5n)を備えている。
【0022】
多重分離部32は、多重化処理部25と同じフォーマットを用いて多重化処理部25と逆の処理を行なうことによって、多重化されたデータをアンテナ装置2で受信されたときと同一種類の信号系統毎に分離する。
【0023】
復調処理部33は、DSP(Digital Signal Processor)で構成され、受信する各信号系統の信号処理を書換え可能なプログラムに従って実行するので、アンテナ装置2のハードウェア構成に依存しない。よって、復調処理部33は、放送メディアの信号処理方法の変更に柔軟に対応して構成することができる。
【0024】
復調処理部33は上述のような特徴を有するため、独自のクロック(具体的には、多重分離部32のクロック源34による第一クロックとは異なるクロック源35による第二クロック)に同期して動作している。そして、第二クロックは第一クロックの有理数倍であるとは限らない。
【0025】
そのため、復調装置3は、多重分離部32より第一クロックに同期して入力されるサンプルデータを、第二クロックに同期して出力するサンプリング速度変換装置5を備えているのである。
【0026】
つまり、サンプリング速度変換装置5では、第一クロックはサンプルデータを生成処理する前置データ処理系統のクロック源34から供給され、第二クロックは補間データを処理する後置データ処理系統のクロック源35から供給される。ここで、本実施形態では、前置データ処理系統は多重分離部32のことであり、後置データ処理系統は復調処理部331〜33nのことであり、補間データは後述するようにサンプリング速度変換装置5からの出力データのことである。
【0027】
以下、サンプリング速度変換装置5について説明する。図3に示すように、サンプリング速度変換装置5は、入力されたサンプルデータを蓄積するサンプルデータ蓄積部51と、第一クロックの周波数を逓倍して第三クロックを生成する逓倍回路52と、複数の補間係数を補間係数群とし、さらに前記補間係数群を複数組持つ記憶部53と、前記第三クロックをカウントして前記補間係数群に対応する格納アドレスを生成するバイナリカウンタ54と、バイナリカウンタ54の出力値をグレイコードに変換する符号器55と、第二クロックに同期して符号器55の出力を取り込みバイナリコードに変換して格納アドレスを生成する復号器56と、第二クロックに同期して復号器56の出力値をアドレスとして記憶部53から読み出した前記補間係数群をフィルタ係数としてサンプルデータの補間データを演算出力するFIRフィルタ57を備えている。
【0028】
換言すると、記憶部53は、第三クロックの周波数に対応した複数の補間係数郡を格納し、バイナリカウンタ54は、第三クロックをカウントして記憶部53に格納された特定の補間係数群の格納アドレスに対応したアドレス情報を生成し、FIRフィルタ57は、第二クロックに同期して復号器56の出力値をアドレスとして記憶部53から読み出した前記特定の補間係数群をフィルタ係数としてサンプルデータの補間データを演算出力する。
【0029】
図4は、図3に示したサンプリング速度変換装置5の第一の構成例を説明するための図である。この構成例では、入力サンプルデータの補間方法としてラグランジュ補間による二次補間を用い、三個の入力サンプルデータに基づき二個の入力サンプルデータ間の補間データを求める。具体的には、二個の入力サンプルデータ間において三個の補間データを求め、入力サンプルデータを四倍に補間する。尚、FIRフィルタ57において実行される補間データの演算についての詳細については後述する。
【0030】
サンプルデータ蓄積部51は、三個の入力サンプルデータを保持するシフトレジスタSR1、SR2、SR3を有し、第一クロックに同期してシフトレジスタSR1に入力されたサンプルデータY(1),Y(2),・・・,Y(n)は、第一クロックに同期してSR2、SR3と順次シフトし、シフトレジスタSR1、SR2、SR3に蓄積された三個の入力サンプルデータがFIRフィルタ57の乗算器571(571a、571b、571c)へ入力される。
【0031】
バイナリカウンタ54は、逓倍回路52において生成された第一クロックの周波数を四倍した第三クロックで4クロック分のカウントを行なう。カウントは、「3」を初期値として「0」までデクリメントされ、「0」になると初期値「3」にリセットされるという動作の繰り返しによって行なわれる。「3」から「0」の何れかであるカウント値は、記憶部3に記憶された複数の補間係数郡(tapn1,tapn2,tapn3,n=0,1,2,3)の格納アドレスArのアドレス番号であり、バイナリカウンタ54は、当該カウント値を符号器55に出力する。
【0032】
符号器55では、バイナリカウンタ54より入力されたバイナリコードであるカウント値(「0」〜「3」)を、図5(a)に示す変換表に従ってグレイコードへ変換し、復号器56へ出力する。
【0033】
復号器56は、第二クロックに従って、例えば第二クロックの立下りのタイミングで、符号器55より入力されたグレイコードであるカウント値を取り込み、取り込んだカウント値を図5(b)に示す変換表に従ってバイナリコードへ変換する。
【0034】
尚、変換表は、カウント値のデクリメントに対応して1ビットしか変化しない変換を行なうものであれば、図5(a)、(b)に示すものに限らない。
【0035】
上述のように、カウント値の取り込みをグレイコードへの変換を行なった上で行なうと、バイナリカウンタ54の各データビットの変化タイミングのずれによって発生するカウント値の取り込み誤差を低減することができる。
【0036】
以下に詳述する。例えば、復号器56が、カウント値の取り込みをバイナリコードのままで行なう構成であって、「1(0001)」から「2(0010)」へカウントアップしたカウント値「2」を取り込む場合、カウント値が「1(0001)」から「2(0010)」へカウントアップすると、下位の2ビット(LSB及び下2桁目のビット)が変化する。
【0037】
この際、LSB及び下2桁目のビットが同時に変化するとは限らない。よって、LSBが「1」から「0」に変わってカウント値が「0(0000)」となった瞬間に、復号器56に第二クロックの立下り信号が入力されると、復号器56はカウント値「0(0000)」を取り込んでしまう。
【0038】
つまり、復号器56は、本来取り込むべきカウント値「2(0010)」でなく、カウント値「0(0000)」を取り込んでしまったこととなり、この場合の誤差は2となる。
【0039】
一方、本実施形態のように、復号器56が、カウント値の取り込みをグレイコードで行なう構成であって、上記の場合と同様にカウント値「2」を取り込む場合、カウント値が「1(0001)」から「2(0011)」へカウントアップしても、下2桁目のビットしか変化しない。
【0040】
よって、下2桁目のビットが「0」から「1」に変わってカウント値が「2(0011)」となる前に、復号器56に第二クロックの立下り信号が入力されると、復号器56はカウント値「1(0001)」を取り込んでしまう。
【0041】
つまり、復号器56は、本来取り込むべきカウント値「2(0011)」でなく、カウント値「1(0001)」を取り込んでしまったこととなるが、上記の場合と異なり、この場合の誤差は1で済むのである。
【0042】
尚、カウント値の取り込みをグレイコードで行なうことによる誤差の低減の効果は、バイナリカウンタ54によってカウントされるカウント数が大きい程、大きくなる。
【0043】
記憶部53には、複数の補間係数郡として、ラグランジュ補間によって補間データを演算するための補間係数が格納されている。以下、図6(a)を用いて記憶部53に格納される補間係数について説明する。
【0044】
公知のラグランジュ補間では、間隔Sの離散点D2(X(2),Y(2)),D3(X(3),Y(3))で表される二個の入力サンプルデータ間の補間点(xn,yn)のY座標値は、点D2,D3を含む三個以上の既知の離散点のY座標値に対して所定の式で求められる補間係数を乗算し、その乗算結果の和として求められる。
【0045】
本構成例では、等間隔Sの三個の離散点D1(X(1),Y(1)),D2(X(2),Y(2)),D3(X(3),Y(3))を用いて、点D2,D3の二点間を四倍に補間、つまり二点間に三点(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)を等間隔に挿入する二次補間を行なう。
【0046】
ここで、各補間点(x1,y1),(x2,y2),(x3,y3)による補間比pを、p=dn/S(但し、dn=xn−X(2),n=0,1,2,3)とすると、各補間点のX座標値x1,x2,x3に対応する補間比pは、0,0.25,0.5,0.75となり、記憶部53に格納される補間係数Q1,Q2,Q
3は以下に示す数1〜数3で求められる。
【数1】
【数2】
【数3】
【0047】
つまり、図6(b)に示すように、予め、補間比pの各値0,0.25,0.5,0.75を数1〜数3に代入することによって補間係数Q1,Q2,Q3の組合せを算出しておき、算出した補間係数Q1,Q2,Q3の組合せを、補間比pの各値に対応付けられた記憶部3のアドレスAr(「3」〜「0」)に格納しておくのである。
【0048】
FIRフィルタ57は、乗算器571と、加算器572と、三個のレジスタtap1,tap2,tap3で構成されるラッチ回路573とを備えて構成されている。
【0049】
FIRフィルタ57について詳述する。FIRフィルタ57では、第二クロックに同期して、復号器56で取り込まれたカウント値に対応した記憶部53のアドレスAr(「3」〜「0」の何れか)から、当該アドレスArに格納される三個の補間係数(tapn1,tapn2,tapn3,n=0,1,2,3)が、ラッチ回路573のレジスタtap1,tap2,tap3へ取り込まれ、乗算器571a、571b、571cにより入力サンプルデータと各補間係数が乗算され、乗算結果が加算器572により合計されて出力される。
【0050】
つまり、FIRフィルタ57から出力されるデータは、以下の数4に示すように、補間係数Q1,Q2,Q3と点D1(X(1),Y(1)),D2(X(2),Y(2)),D3(X(3),Y(3))の夫々のY座標値との積和演算によって算出された、各補間点のY座標値ynである。
【数4】
【0051】
図7は、第一の構成例のサンプリング速度変換装置5に入力されるデータについて説明するチャート図である。本図においては横軸方向に時間が示される。第一クロックの立上りに同期して、Y(1),Y(2),・・・,Y(n)の値を示す入力サンプルデータがシフトレジスタSR1へ入力され、シフトレジスタSR1からSR2へ、SR2からSR3へと順次シフトする。図7は、第一クロックのクロック1に同期して入力サンプルデータのY(1),Y(2),Y(3)がシフトレジスタへ格納された時点から示している。
【0052】
第一クロックが四倍された第三クロックに同期して、バイナリカウンタ54によるカウント値は、「3」から「0」までデクリメントする。そして、第二クロックのクロック1の立上りに同期して、復号器56においてカウント値「3」が取り込まれ、当該カウント値「3」に対応した補間係数{0,1,0}がラッチ回路573へ取り込まれる。そして、乗算器571a,571b,571cによりシフトレジスタSR1,SR2,SR3から入力されるデータ{Y(3),Y(2),Y(1)}と補間係数{0,1,0}が夫々乗算され、各乗算結果が加算器572で合計されてサンプルデータY(2)とY(1)の間の補間比「0」の補間点(つまりY(2))として出力される。
【0053】
次に、第二クロックのクロック2の立上りに同期して、復号器56においてカウント値「0」が取り込まれ、当該カウント値「0」に対応した補間係数{−0.09375,0.4375,0.65625}がラッチ回路573へ取り込まれる。そして、乗算器571a,571b,571cによりシフトレジスタSR1,SR2,SR3から入力されるデータ{Y(3),Y(2),Y(1)}と補間係数{−0.09375,0.4375,0.65625}が夫々乗算され、各乗算結果が加算器572で合計されてサンプルデータY(2)とY(1)の間の補間比「0.75」の補間点として出力される。
【0054】
次に、第二クロックのクロック3の立上りに同期して、復号器56においてカウント値「1」が取り込まれ、当該カウント値「1」に対応した補間係数{−0.125,0.75,0.375}がラッチ回路573へ取り込まれる。この時は、シフトレジスタSR1,SR2,SR3には、入力サンプルデータ{Y(4),Y(3),Y(2)}が格納されているので、乗算器571a,571b,571cによりシフトレジスタSR1,SR2,SR3から入力されるデータ{Y(4),Y(3),Y(2)}と補間係数{−0.125,0.75,0.375}が夫々乗算され、各乗算結果が加算器572で合計されてサンプルデータY(3)とY(2)の間の補間比「0.5」の補間点として出力される。
【0055】
次に、第二クロックのクロック4の立上りに同期して、復号器56においてカウント値「2」が取り込まれ、当該カウント値「2」に対応した補間係数{−0.09375,0.09375,0.15625}がラッチ回路573へ取り込まれる。この時は、シフトレジスタSR1,SR2,SR3には、入力サンプルデータ{Y(5),Y(4),Y(3)}が格納されているので、乗算器571a,571b,571cによりシフトレジスタSR1,SR2,SR3から入力されるデータ{Y(5),Y(4),Y(3)}と補間係数{−0.09375,0.09375,0.15625}が夫々乗算され、各乗算結果が加算器572で合計されてサンプルデータY(4)とY(3)の間の補間比「0.25」の補間点として出力される。
【0056】
以降、同様にして、バイナリカウンタ54が第三クロックに同期して「3」〜「0」のカウントを反復する間、FIRフィルタ57では、第二クロックの立上りに同期して復号器56によって取り込まれたカウント値に対応したアドレスArの補間係数を用いて、その時サンプルデータ蓄積部51のシフトレジスタSR1,SR2,SR3に蓄積されているサンプルデータ間の補間が行なわれる。
【0057】
上記のように構成されるサンプリング速度変換装置5の入出力データを模式的に図8において示す。本図において横軸は時間を示しており、サンプルデータ蓄積部51に入力される第一クロックに同期したサンプルデータSinを、第一クロックの四倍の第三クロックの分解能に対応して補間したとすると、実線及び一点鎖線で示される補間データSipのようになる。尚、入力サンプルデータSin、補間データSipは共に縦軸にデータの値を示す。ここで、実際の補間は、復号器56において第二クロックに同期して取り込まれたバイナリカウンタ54のカウント値に対応して行なわれ、その結果、実線で示される補間データSipが算出されて、出力サンプルデータSoutとして出力される。
【0058】
尚、上述においてはラグランジュ補間の二次補間を行なう場合について説明したが、(n+1)個の補間係数と(n+1)個のシフトレジスタを有し、三次以上のn次補間を行なう構成であってもよい。
【0059】
また、二点間の補間比に応じた数の補間係数の組合せを記憶部53に格納し、逓倍回路52において第一クロックの周波数を逓倍して補間比に応じた分解能を有する第三クロックを生成し、第三クロックに同期して補間係数のアドレスカウントが行なわれるように構成することで、二点間の分解能を高めることができる。
【0060】
例えば、逓倍回路52において第一クロックを16倍した第三クロックを生成し、第三クロックに同期して「15」から「0」までデクリメントするバイナリカウンタ54を備え、補間比を0,1/16,2/16,・・・,14/16,15/16として算出された16組の補間係数を記憶部53に格納しておくことで、サンプルデータを16倍に補間することが可能となる。
【0061】
一例として、サンプリング速度変換装置5の第二の構成例を図9に基づいて説明する。この構成例は、第二クロックに同期して、六次のラグランジュ補間により七個の入力サンプルデータに基づき二個の入力サンプルデータ間の補間データを求めて出力する場合の構成例である。更に、この構成例では、サンプルデータ間を48倍で補間するために、七個の補間係数からなる組合せを48組備える。
【0062】
また、この構成例のサンプリング速度変換装置5は、逓倍回路52に設けられており第三クロックの位相を等量ずらせた複数の第三クロックを生成する移相器521と、移相器521から出力される各クロックをカウントする複数(本構成例では四個)のバイナリカウンタ54(541〜544)と、各バイナリカウンタ54の出力値を夫々グレイコードに変換する複数(本構成例では四個)の符合器55(551〜554)を備え、復号器56が各符号器55の出力を取り込みバイナリコードに変換してその加算値に基づいて格納アドレスを生成するように構成されている。
【0063】
サンプルデータ蓄積部51は、七個の入力サンプルデータを保持するシフトレジスタSR1,SR2,・・・,SR7を有し、第二逓倍回路58にてシステムクロックの周波数を1/4倍にした第一クロックに同期してシフトレジスタSR1に入力されたサンプルデータY(1),Y(2),・・・,Y(n)は、第一クロックに同期してSR2,SR3,・・・,SR7と順次シフトし、シフトレジスタSR1,SR2,・・・,SR7に蓄積された七個の入力サンプルデータがFIRフィルタ57の乗算器571(571a,571b,・・・,571g)へ入力される。
【0064】
また、移相器521は、システムクロックを逓倍回路52で3倍にしたクロック(つまり第一クロックの12倍のクロック)に基づき、0度、90度、180度、270度に位相をずらした四個のクロックCLK1,CLK2,CLK3,CLK4を生成する。そして、夫々のクロックに同期して12クロック分のカウントを行なうバイナリカウンタ541〜544の夫々から、「12」または「11」から「0」までデクリメントされる夫々のカウント値が、符号器551〜554へ出力される。
【0065】
符号器551は、バイナリカウンタ541より入力されたバイナリコードであるカウント値(「12」〜「0」)を、図10(a)に示す変換表に従ってグレイコードへ変換し、復号器56へ出力する。また、符号器552〜554は、バイナリカウンタ541より入力されたバイナリコードであるカウント値(「11」〜「0」)を、図10(a)に示す変換表に従ってグレイコードへ変換し、復号器56へ出力する。
【0066】
復号器56は、第二クロックに従って、例えば第二クロックの立下りのタイミングで、符号器551〜554より入力されたグレイコードである各カウント値を取り込み、取り込んだ各カウント値を図10(b)に示す変換表に従ってバイナリコードへ変換する。そして、バイナリコードへ変換された各カウント値を加算する。
【0067】
尚、変換表は、カウント値のデクリメント(またはインクリメント)に対応して1ビットしか変化しない変換を行なうものであれば、図10(a)、(b)に示すものに限らない。
【0068】
ここで、復号器56において加算されるカウント値について、図11を用いて説明する。バイナリカウンタ541〜544は、一つのカウンタにより第一クロックの周波数を48倍したクロックでカウントを行なう代わりに、第一クロックの12倍の速度で90度ずつ位相が異なる四個のクロックCLK1,CLK2,CLK3,CLK4夫々に同期してカウントを行なう。各バイナリカウンタ541〜544のカウント値は、「12」または「11」から「0」までデクリメントしリセットされる。
【0069】
尚、各バイナリカウンタ541〜544をリセットするために、第二の構成例では、サンプリング速度変換装置5はリセット回路59を備えており、リセット回路59は第一クロックに基づいて各バイナリカウンタ541〜544をリセットする。リセット回路59については、図13において後述する。
【0070】
復号器56において、「12」または「11」から「0」までのカウント値が四位相分合計されると「47」から「0」までの48通りの何れかの値となり、復号器56は、第二クロックに同期して、記憶部53における「47」から「0」までの何れかのアドレスのカウント値を出力する。
【0071】
そして、記憶部53の当該アドレスに格納される補間係数tapn1,tapn2,・・・,tapn7(n=00,01,・・・,46,47)がラッチ回路573のレジスタtap1,tap2,・・・,tap7へ取り込まれ、乗算器571a,571b,・・・,571gにより入力サンプルデータと各補間係数が乗算され、乗算結果が加算器572により合計されて出力される。
【0072】
尚、第二の構成例では、サンプルデータ間を48倍に補間するために、記憶部53に48組の補間係数の組合せが格納される。この場合、補間比pは、0,1/48,2/48,・・・,46/48,47/48の48通りであり、夫々に対応する補間係数は以下の数5〜数11で求められる。
【数5】
【数6】
【数7】
【数8】
【数9】
【数10】
【数11】
【0073】
このようにして、第一クロックの周波数の12倍のクロックを使用するだけで、48倍まで高めた分解能での補間が可能となる。よって、FIRフィルタ57は、第一クロックが48倍される場合より安定した状態で補間を行なうことが可能となる。
【0074】
図12は、第二の構成例のサンプリング速度変換装置5の処理の流れについて説明するチャート図である。本図において横軸方向は時間を示す。
【0075】
シフトレジスタSR1,SR2,・・・,SR7は、第一クロックの立下りタイミングでデータをシフトする。図12におけるシフトデータは、SR1からSR2,SR2からSR3,・・・,SR6からSR7へシフトされる入力サンプルデータを示している。尚、バイナリカウンタ54は、データがシフトされる第一クロックの立下りタイミングで、リセット信号によってリセットされるが、これについては図13において後述する。
【0076】
第二の構成例では、FIRフィルタ57は、reg11,reg12,・・・,reg17で構成されるラッチ用レジスタ、及び、reg21,reg22,・・・,reg27で構成される演算用レジスタの二種類のレジスタ574を備えている。
【0077】
そして、シフトレジスタSR1,SR2,・・・,SR7に保持されているサンプルデータは、第二クロックの立下りタイミングでラッチ用レジスタにコピーされ、ラッチ用レジスタにコピーされたサンプルデータは、次の第二クロックの立下りタイミングで演算用レジスタにコピーされる。
【0078】
このように二種類のレジスタを備えることで、第一クロックの立下りタイミング(シフトレジスタのデータシフトタイミング)と、第二クロックの立下りタイミングとが重なった場合でも、FIRフィルタ57は正しい演算データを取得することができる。
【0079】
復号器56は、第二クロックの立下りタイミングで、バイナリカウンタ541〜544のカウント値を取り込んで、それらの合計値によって使用する補間係数を決定する。
【0080】
図12では、復号器56は、第二クロックの立下りタイミングで、各バイナリカウンタ541〜544からカウント値「2」、「3」、「3」、「3」を取り込み、グレイコードである当該カウント値を図10(b)の変換表によりバイナリコードに変換する。
【0081】
つまり、バイナリカウンタ541のグレイコードのカウント値「2」は、バイナリコードのカウント値「10」に、バイナリカウンタ542〜544のグレイコードのカウント値「3」は、バイナリコードのカウント値「10」に夫々変換される。
【0082】
変換されたカウント値の合計値が「40」であるので、記憶部53のアドレス「40」であるtap401,tap402,・・・,tap407に記憶されている補間係数を、次の第二クロックの立下りタイミングでラッチ回路573に格納する。
【0083】
図13は、第二の構成例のサンプリング速度変換装置5のバイナリカウンタ541〜544のリセット処理の一例について説明するチャート図である。本図において横軸方向は時間を示す。
【0084】
リセット回路59は、バイナリカウンタ541のカウント値を検出しており、カウント値が零となったことを検出すると、ローレベルのリセット信号を出力してバイナリカウンタ542〜544をリセットする(カウント値を初期値である「12」にする)。そして、第一クロックの次の立下りタイミングに同期して、リセット信号をローレベルからハイレベルに立ち上げることで、バイナリカウンタ541もリセットする(カウント値を初期値である「11」にする)。以上の動作によってバイナリカウンタ54(541〜544)をリセットする。
【0085】
ところで、第二の構成例では、クロックCLK1,CLK2,CLK3,CLK4の位相は90度ずつずれているため、各バイナリカウンタ541〜544を同時にリセットすることはできない。そのため、一部のバイナリカウンタ54のみリセットされている状態では、カウント値の合計値は正しくならない。
【0086】
具体的には、図13の最下段に示すように、本来であればカウント値の合計値が「2」、「1」、「0」となるべきタイミングであっても、当該タイミングでは一部のバイナリカウンタ54のみリセットされている状態であるために、カウント値の合計値が「14」、「25」、「36」となってしまう。
【0087】
そこで、第二の構成例では、図9に破線で示すように、復号器56に、各符号器551〜554の出力を変換したバイナリコードに基づいて加算値を補正する格納アドレス補正部561を備えることで、カウント値の合計値の誤りを是正している。
【0088】
詳述すると、格納アドレス補正部561は、合計値が誤った値となる特定のカウント値の組合せと、当該組合せに対応する正しい合計値とで構成される、図14(a)に示すようなデータテーブルを備えている。
【0089】
そして、格納アドレス補正部561は、復号器56に入力されてバイナリコードへ変換された各カウント値の組合せを当該データテーブルに当てはめて、当該データテーブルに記憶されたカウント値の組合せと合致する場合には、各カウント値を加算して合計値を算出して出力する代わりに、当該データテーブルに記憶されている補正値を正しい合計値として出力する。
【0090】
バイナリカウンタ541は、理論上は図13に示すようにクロックCLK1,CLK2,CLK3,CLK4に従ってカウントを実行するので、図14(a)に示すデータテーブルによるカウント値の補正をおこなうことで、カウント値の合計値が正しくならない全ての組合せに対応していることになる。
【0091】
しかし、実際の回路では、第二クロックの立下りタイミング(復号器56によるカウント値の取り込みタイミング)と、CLK1,CLK2,CLK3,CLK4の何れかの立上りタイミング(カウント値の変化タイミング)とが重なることで、カウンタ値が1つずれてしまい、理論上起こり得ない組合せが発生してしまう。また、実際の回路では、クロックのずれ、回路遅延、配線遅延、または温度変動等により、本来等間隔であるはずのカウント値の合計値の期間(図13において「t」で示す期間)が伸縮し、理論上起こり得ない組合せが発生してしまう。
【0092】
そこで、格納アドレス補正部561は、図14(a)に示すようなデータテーブルに加えて、上述のような起こり得ない組合せを登録した、図14(b)や図14(c)に示すようなデータテーブルを備えることで、復号器56に起こり得ない組合せが入力して場合であっても正しい合計値を出力することができる。
【0093】
例えば、格納アドレス補正部561は、復号器56に入力されてバイナリコードへ変換された各カウント値の組合せが「1」、「12」、「1」、「1」である場合、図14(b)の破線で示すような組合せに合致するので、各カウント値の合計値「15」を出力する代わりに、当該データテーブルに記憶されている補正値「2」を正しい合計値として出力する。
【0094】
本例の場合、入力された各カウント値の組合せである「1」、「12」、「1」、「1」は、本来、「0」、「12」、「1」、「1」の組合せ(つまり、図14(a)における補正値「2」に対応する組合せ)であるべきところ、バイナリカウンタ541(0°のカウンタ)が1つずれてしまうことで、「1」、「12」、「1」、「1」の組合せとなってしまったものであると、格納アドレス補正部561によって判断されているのである。
【0095】
尚、データテーブルは、図14(a)〜(c)に示したものに限らない。例えば、バイナリカウンタ541〜544のうち、二個のカウンタのカウント値が同時にずれてしまった場合、理論上起こり得ない組合せとして、「0」、「12」、「2」、「2」の組合せといった図14(b)に示された組合せ以外の組合せが発生するが、このような場合であっても、格納アドレス補正部561は、発生した当該組合せを図14(b)のデータテーブルに追加登録した構成であってもよい。
【0096】
図15は、本実施形態のサンプリング速度変換装置5の第三の構成例を説明する図である。本構成例は、復号器56及びFIRフィルタ57に入力される第二クロックを、第一クロックを逓倍した第四クロックに切り替えるクロック切替部60を備えた構成例である。
【0097】
本構成例では、クロック切替部60により、クロック源34からの第一クロックを第三逓倍回路61にて有理数倍したクロック、または、クロック源35からの第二クロックの何れかを、復号器56及びFIRフィルタ57へ入力するクロックとすることができる。
【0098】
よって、出力サンプルデータの処理系統が入力サンプルデータの処理系統と同一のクロック源を有するようなシステムにおけるサンプリング変換を行なう場合は、第一クロックを有理数倍したクロックを復号器56及びFIRフィルタ57へ入力するクロックとし、異なるクロック源の場合は、出力サンプルデータの処理系統のクロック源35から供給される第二クロックを復号器56及びFIRフィルタ57へ入力するクロックとする。そうすることにより、サンプリング速度変換装置5が適用されるシステム構成に応じて出力データの処理系統のクロックに同期した出力サンプルデータを出力することができる。
【0099】
尚、第一の構成例では二次補間、第二の構成例では六次補間について説明したが、補間係数の個数は三個あるいは七個に限らず、補間係数の数に応じた入力サンプルデータを蓄積できるサンプルデータ蓄積部51を備え、これに応じた数の補間係数を記憶部53に格納することにより任意の高次補間を行なうことができる。また、補間比も上記の4倍あるいは48倍に限らず、補間比に応じた補間係数の組合せを記憶部53に格納し、第一クロックを逓倍して補間比に応じた分解能でカウントするバイナリカウンタ54を備えることにより、任意の補間比とするうことが可能である。
【0100】
また、上記の構成例ではラグランジュ補間を行なうが、蓄積されたサンプルデータに対し補間係数を用いて補間データを求めるようにFIRフィルタ57を構成すれば、係数の積和演算以外の方法により補間を行なう方法にも本実施形態は適用できる。
【0101】
さらに、本実施形態のサンプリング速度変換装置5は、車載用放送波受信装置だけでなく、様々な画像処理装置、音声出力装置等、異なるクロックにより動作するデータ処理系統間で転送されるデータのサンプリング周波数変換に適用される。
【0102】
このように、本実施形態によれば、出力クロックの周波数が入力クロックの周波数の有理数倍でない場合であっても出力クロックにほぼ同期して補間されたサンプルデータを出力することができる。
【0103】
尚、上述の実施形態は、本発明の一例に過ぎず、本発明の作用効果を奏する範囲において各ブロックの具体的構成等は適宜変更設計できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】従来のサンプリング速度変換装置の機能ブロック構成図
【図2】車載用放送波受信装置の機能ブロック構成図
【図3】本発明によるサンプリング速度変換装置の機能ブロック構成図
【図4】図3に示したサンプリング速度変換装置の第一の構成例の機能ブロック構成図
【図5】(a)は、第一の構成例におけるバイナリコードからグレイコードへの変換を示し、(b)は、第一の構成例におけるグレイコードからバイナリコードへの変換を示す説明図
【図6】(a)は、記憶部に記憶された補間係数の算出についての説明図、(b)は、記憶部に記憶された補間係数の組合せを示す説明図
【図7】第一の構成例のサンプリング速度変換装置各部に入力されるデータについて説明するチャート図
【図8】第一の構成例のサンプリング速度変換装置の出力データを模式的に示す説明図
【図9】本実施形態のサンプリング速度変換装置の第二の構成例の機能ブロック構成図
【図10】(a)は、第二の構成例におけるバイナリコードからグレイコードへの変換を示し、(b)は、第二の構成例におけるグレイコードからバイナリコードへの変換を示す説明図
【図11】第二の構成例において復号器において加算されるカウント値についての説明図
【図12】第二の構成例のサンプリング速度変換装置の処理の流れについて説明するチャート図
【図13】第二の構成例のサンプリング速度変換装置のバイナリカウンタのリセット処理について説明するチャート図
【図14】(a)は、理論上起こり得る特定のカウント値の組合せのデータテーブルを示し、(b)は、理論上起こり得ない特定のカウント値の組合せのデータテーブルを示し、(c)は、外的要因により発生する特定のカウント値の組合せのデータテーブルを示す説明図
【図15】本実施形態のサンプリング速度変換装置の第三の構成例の機能ブロック構成図
【符号の説明】
【0105】
3:復調装置
32:多重分離部
33:復調処理部
5:サンプリング速度変換装置
51:サンプルデータ蓄積部
52:逓倍回路
53:記憶部
54:バイナリカウンタ
55:符号器
56:復号器
561:格納アドレス補正部
57:FIRフィルタ
60:クロック切替部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一クロックに同期して入力されるサンプルデータを前記第一クロックの周波数とは異なる周波数の第二クロックに同期して出力するサンプリング速度変換装置であって、
前記サンプルデータを蓄積するサンプルデータ蓄積部と、
前記第一クロックの周波数を逓倍して第三クロックを生成する逓倍回路と、
複数の補間係数を補間係数群とし、さらに前記補間係数群を複数組持つ記憶部と、前記第三クロックをカウントして前記補間係数群に対応する格納アドレスを生成するバイナリカウンタと、
前記バイナリカウンタの出力値をグレイコードに変換する符号器と、
前記第二クロックに同期して前記符号器の出力を取り込みバイナリコードに変換して前記格納アドレスを生成する復号器と、
前記第二クロックに同期して前記復号器の出力値をアドレスとして前記記憶部から読み出した前記補間係数群をフィルタ係数として前記サンプルデータの補間データを演算出力するFIRフィルタを備えているサンプリング速度変換装置。
【請求項2】
前記第三クロックの位相を等量ずらせた複数の第三クロックを生成する移相器と、前記移相器から出力される各クロックをカウントする複数のバイナリカウンタと、各バイナリカウンタの出力値を夫々グレイコードに変換する複数の符合器を備え、前記復号器が各符号器の出力を取り込みバイナリコードに変換してその加算値に基づいて前記格納アドレスを生成する請求項1記載のサンプリング速度変換装置。
【請求項3】
前記復号器に、各符号器の出力を変換したバイナリコードに基づいて前記加算値を補正する格納アドレス補正部を備えている請求項2記載のサンプリング速度変換装置。
【請求項4】
前記復号器及び前記FIRフィルタに入力される第二クロックを、前記第一クロックを逓倍した第四クロックに切り替えるクロック切替部を備えている請求項1から3の何れかに記載のサンプリング速度変換装置。
【請求項5】
前記第一クロックは前記サンプルデータを生成処理する前置データ処理系統のクロック源から供給され、前記第二クロックは前記補間データを処理する後置データ処理系統のクロック源から供給される請求項1から4の何れかに記載のサンプリング速度変換装置。
【請求項6】
複数系統のアンテナで受信され、多重化された受信デジタル信号を各系統の受信デジタル信号に分離する多重分離部と、前記多重分離部で分離された各系統の受信デジタル信号を復調する複数の復調処理部と、前記多重分離部から前記第一クロックに同期して出力される各系統のサンプルデータを、前記第二クロックに同期して前記復調処理部に出力する請求項1から4の何れかに記載の複数のサンプリング速度変換装置を備えている復調装置。
【請求項1】
第一クロックに同期して入力されるサンプルデータを前記第一クロックの周波数とは異なる周波数の第二クロックに同期して出力するサンプリング速度変換装置であって、
前記サンプルデータを蓄積するサンプルデータ蓄積部と、
前記第一クロックの周波数を逓倍して第三クロックを生成する逓倍回路と、
複数の補間係数を補間係数群とし、さらに前記補間係数群を複数組持つ記憶部と、前記第三クロックをカウントして前記補間係数群に対応する格納アドレスを生成するバイナリカウンタと、
前記バイナリカウンタの出力値をグレイコードに変換する符号器と、
前記第二クロックに同期して前記符号器の出力を取り込みバイナリコードに変換して前記格納アドレスを生成する復号器と、
前記第二クロックに同期して前記復号器の出力値をアドレスとして前記記憶部から読み出した前記補間係数群をフィルタ係数として前記サンプルデータの補間データを演算出力するFIRフィルタを備えているサンプリング速度変換装置。
【請求項2】
前記第三クロックの位相を等量ずらせた複数の第三クロックを生成する移相器と、前記移相器から出力される各クロックをカウントする複数のバイナリカウンタと、各バイナリカウンタの出力値を夫々グレイコードに変換する複数の符合器を備え、前記復号器が各符号器の出力を取り込みバイナリコードに変換してその加算値に基づいて前記格納アドレスを生成する請求項1記載のサンプリング速度変換装置。
【請求項3】
前記復号器に、各符号器の出力を変換したバイナリコードに基づいて前記加算値を補正する格納アドレス補正部を備えている請求項2記載のサンプリング速度変換装置。
【請求項4】
前記復号器及び前記FIRフィルタに入力される第二クロックを、前記第一クロックを逓倍した第四クロックに切り替えるクロック切替部を備えている請求項1から3の何れかに記載のサンプリング速度変換装置。
【請求項5】
前記第一クロックは前記サンプルデータを生成処理する前置データ処理系統のクロック源から供給され、前記第二クロックは前記補間データを処理する後置データ処理系統のクロック源から供給される請求項1から4の何れかに記載のサンプリング速度変換装置。
【請求項6】
複数系統のアンテナで受信され、多重化された受信デジタル信号を各系統の受信デジタル信号に分離する多重分離部と、前記多重分離部で分離された各系統の受信デジタル信号を復調する複数の復調処理部と、前記多重分離部から前記第一クロックに同期して出力される各系統のサンプルデータを、前記第二クロックに同期して前記復調処理部に出力する請求項1から4の何れかに記載の複数のサンプリング速度変換装置を備えている復調装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−65622(P2009−65622A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−234014(P2007−234014)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
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