説明

サーキュレーター

【課題】薄型化が可能なサーキュレーターを提供する。
【解決手段】サーキュレーター11は、上端に吸込口13を、下端に吹出口17を有し、背面Rが室内の壁面100に面するように配置される中空のケーシング15と、このケーシング15内に配設されたファン本体23とこのファン本体23を駆動させるモータ27とを有するクロスフローファン25と、を備えている。ファン本体23は、複数のブレード19を有し、外径dが回転軸21の軸方向の厚みtよりも大きく、回転軸21がケーシング15の背面Rに対して略垂直な方向に向くように配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーキュレーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
室内では、暖気は上昇し冷気は下降するので、天井付近と床面付近の温度差ができやすく、特に、空気調和装置による冷暖房時には、その温度差が大きくなりやすい。
【0003】
このような場合に室内の空気を循環させて室内の温度差を小さくするための種々のサーキュレーターが提案されている。例えば、特許文献1に記載のサーキュレーターは、吸込口および吹出口を有するケーシング内に、吸込口から空気を吸い込み吹出口から吹き出すためのファンなどを備えている。
【0004】
このファンとしては、空気の吹き出し幅を大きくするのが容易であるという点でクロスフローファンが多く採用されている。クロスフローファンは、回転軸を中心とする円の周方向に沿って複数のブレードが配列され、回転軸の軸方向に長い円筒形状のファン本体とこのファン本体を回転駆動させるモータとを有している。ファン本体は、その回転軸の軸方向が吸込口の長手方向と平行になるようにケーシングの背面に沿って配置される。これにより空気の吹き出し幅を大きくできる。
【特許文献1】実公昭58−9707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ファンの風量を確保するためにファン本体の外径をある程度大きくする必要があるので、サーキュレーターの正面側から背面側への方向の厚みが大きくなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、薄型化が可能なサーキュレーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のサーキュレーターは、上端側および下端側の一方に吸込口(13)を、他方に吹出口(17)を有し、背面(R)が室内の壁面に面するように配置される中空のケーシング(15)と、前記ケーシング(15)内に配設されたファン本体(23)と前記ファン本体(23)を駆動させるモータ(27)とを有するクロスフローファン(25)と、を備えている。前記ファン本体(23)は、複数のブレード(19)を有し、外径(d)が回転軸(21)の軸方向の厚み(t)よりも大きく、前記回転軸(21)が前記ケーシング(15)の前記背面(R)に対して略垂直な方向に向くように配置されている。
【0008】
この構成では、外径(d)が回転軸(21)の軸方向の厚み(t)よりも大きいファン本体(23)を有するクロスフローファン(25)を用い、ファン本体(23)の回転軸(21)がケーシング(15)の背面(R)に対して略垂直な方向に向くようにファン本体(23)をケーシング(15)内に配置しているので、サーキュレーターの厚み(t)を従来よりも小さくすることができる。これにより、室内の壁面からのサーキュレーターの突出量を小さくすることができるので、設置する部屋の大きさ、形状などの制約を受けにくくなり、設置可能な部屋の選択肢が広がる。
【0009】
前記クロスフローファン(25)は、前記ファン本体(23)の外周の一部に沿って設けられ、前記ファン本体(23)内に空気が導入される導入領域(31)と前記ファン本体(23)内から空気が排出される排出領域(33)を区分する舌部材(35)と、前記舌部材(35)よりも下流側の前記ファン本体(23)の外周に沿って設けられ、前記排出領域(33)から排出される空気を前記吹出口(17)側へと導く案内部材(39)とをさらに有しているのが好ましい。この構成では、空気を吸込口(13)から吹出口(17)に向けてより安定して流すことができる。
【0010】
前記ケーシング(15)は前記壁面の下部から上部に至る高さ方向の寸法を有し、前記クロスフローファン(25)が前記ケーシング(15)の上端付近に配置されているのが好ましい。この構成では、クロスフローファン(25)がケーシング(15)の上端付近に配置されているので、クロスフローファン(25)の駆動音が居住者に届きにくくなり、室内を静かな状態に保つことができる。しかも、室内の壁面からのサーキュレーターの突出量が小さいので、壁面の下部から上部に至ってサーキュレーターが設置されていても邪魔(障害)になりにくい。
【0011】
前記ケーシング(15)は前記壁面の下部から上部に至る高さ方向の寸法を有し、前記クロスフローファン(25)が前記ケーシング(15)の前記高さ方向の中心よりも下方に配置されているのが好ましい。この構成では、クロスフローファン(25)がケーシング(15)の高さ方向の中心よりも下方に配置されているので、サーキュレーターの重心が下方に位置してサーキュレーターの設置状態がより安定するとともに、クロスフローファン(25)をメンテナンスする際の作業性が高まる。しかも、室内の壁面からのサーキュレーターの突出量が小さいので、壁面の下部から上部に至ってサーキュレーターが設置されていても邪魔(障害)になりにくい。
【0012】
前記モータ(27)はアウターローター型であるのが好ましい。アウターローター型のモータ(27)は薄型化しやすいので、この構成によれば、サーキュレーターの厚み(t)をさらに小さくすることができる。
【0013】
前記ファン本体(23)の前記軸方向の厚み(t)は前記外径(d)の1/8より小さいのが好ましい。この構成では、軸方向の厚み(t)を小さくしつつ外径(d)を大きくして風量を確保できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、上記したクロスフローファンを用い、ファン本体を所定方向に向けてケーシング内に配置しているので、サーキュレーターを薄型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態にかかるサーキュレーター11は、室内の壁面100に取り付けられる壁掛け型である。図2および図3に示すように、このサーキュレーター11は、下端に吸込口13を有し、上端に吹出口17を有し、背面Rが室内の壁面100に面するように配置される中空のケーシング15と、このケーシング15内に配設されたクロスフローファン25とを備えている。ケーシング15は、壁面100の下部から上部に至る高さ方向の寸法を有している。クロスフローファン25は、ケーシング15の高さ方向の中心よりも下方に配置されている。
【0017】
クロスフローファン25は、吸込口13から室内の空気を吸い込み、その空気を吹出口17に送る役割を果たす。吸込口13および吹出口17には、空気を浄化するフィルター18がそれぞれ取り付けられている。図1〜3の一点鎖線の矢印は空気の流れを示している。
【0018】
図4に示すように、クロスフローファン25は、ファン本体23と、このファン本体23を回転軸21の回りに回転駆動させるモータ27とを備えている。ファン本体23は、その中心に軸部材22の一端が取り付けられた円盤状の平板部20と、この平板部20の周囲に沿って配列された複数のブレード19とを有している。これらのブレード19は、互いに同形状であり、平板部20の半径方向に対してほぼ同じ角度で傾斜して配列されている。軸部材22はファン本体23の回転軸21上に配置されている。
【0019】
ファン本体23は、回転軸21がケーシング15の背面Rに対して略垂直な方向に向くようにケーシング15内に配置されている。すなわち、平板部20はケーシング15の背面Rに対して略平行である。
【0020】
ファン本体23の外径dは、回転軸21の軸方向の厚みtよりも大きい。厚みtは、外径dの好ましくは1/2以下、より好ましくは1/5以下、さらに好ましくは1/8以下であるのがよい。
【0021】
従来のサーキュレーターは、回転軸の軸方向に長い円筒形状で、その回転軸の軸方向が吸込口または吹出口の長手方向と平行になるようにケーシングの背面Rに沿って配置されたファン本体を備えている。このファン本体の外径は風量を確保するために通常100mm程度に設定される。この外形寸法がサーキュレーターの薄型化を妨げている。一方、本実施形態のサーキュレーター11では、上記のように厚みtを外径dよりも大幅に小さくできる。例えば、厚みtを25mm程度に薄くしてサーキュレーターの薄型化を実現するとともに、外径dを220mm程度に大きく設定して風量を確保することも可能になる(この場合、厚みtは外径dの1/8以下である。)。
【0022】
図4に示すように、モータ27は、薄型のアウターローター型であり、ロータ272とステータ271とを有している。ロータ272は、微小な磁石粒を含む樹脂により形成されており、ステータ271の発生する磁界により回転軸21を中心に回転する。ロータ272は、円筒部272aと円筒部272aの一端に一体に形成された底部272bとからなる。このロータ272は、底部272bにおいてファン本体23の平板部20と接合されている。具体的には、ロータ272は、例えばカシメ、ネジ、リベット、ピンなどでファン本体23の平板部20に固定されたり、接着剤などでファン本体23の平板部20に接着される。
【0023】
ステータ271は、ロータ272を回転させるためのものであり、磁界を発生させる図略の鉄心、コイルなどを有する。ステータ271は、ロータ272の円筒部272aの内部に配置された円柱状の小径部271aと、この小径部271aと一体に形成され、円筒部272aの外部に配置され、小径部271aよりも径の大きな大径部271bとを有している。大径部271bには、図略の取付部材が装着されており、この取付部材を介してステータ271がケーシング15に取り付けられる。
【0024】
ステータ271は、回転軸21に沿って設けられ、軸部材22が挿入された貫通口275を有している。この貫通口275の内周面には、この内周に沿って軸受け保持部274が配設されている。この軸受け保持部274と軸部材22との間には軸受け273が介在している。これにより、ロータ272およびファン本体23がステータ271に対して回転自在に保持されている。
【0025】
図2、図3および図5に示すように、ケーシング15は、正面Fと背面Rが略平行であり、厚み方向(図2における左右方向)が幅方向(図3における左右方向)よりも小さい扁平な内部空間(流通路)を有している。この内部空間において、背面Rに対して略平行に径方向が向くように各ファン本体23が配置されている。
【0026】
図5に示すように、クロスフローファン25は、ファン本体23の右側部と左側部の外周に沿ってそれぞれ配置された2つの舌部材35を有している。これらの舌部材35は、ケーシング15の正面Fと背面Rとの間の空間に跨って配置されている。舌部材35よりも上流側(図5における下方側)のファン本体23の外周の一部に沿った空間が、ファン本体23内に空気が導入される導入領域31となり、舌部材35よりも下流側(図5における上方側)のファン本体23の外周の他の一部に沿った空間が、ファン本体23から空気が排出される排出領域33となる。
【0027】
クロスフローファン25は、舌部材35よりも下流側のファン本体23の外周の一部に沿って設けられた案内部材39を有している。案内部材39は、ファン本体23の内部を通過して排出領域33から排出される空気を吹出口17側へと安定して導く役割を果たす。
【0028】
次に、サーキュレーター11における空気の流れについて説明する。サーキュレーター11のクロスフローファン25が駆動すると、ケーシング15の下端に設けられた吸込口13からケーシング15の内部に空気が吸い込まれ、その空気が上方に進み、導入領域31に流入する。導入領域31から流入した空気は、ファン本体23の内部を通過して排出領域33からファン本体23の外部に出て、案内部材39に沿って進む。この空気は、ケーシング15内をさらに上方に進み、上端に設けられた吹出口17から室内に吹き出される。
【0029】
以上説明したように、本実施形態のサーキュレーターは、上端側および下端側の一方に吸込口を、他方に吹出口を有し、背面Rが室内の壁面に面するように配置される中空のケーシングと、前記ケーシング内に配設されたファン本体と前記ファン本体を駆動させるモータとを有するクロスフローファンと、を備えている。前記ファン本体は、複数のブレードを有し、外径が回転軸の軸方向の厚みよりも大きく、前記回転軸が前記ケーシングの前記背面Rに対して略垂直な方向に向くように配置されているので、サーキュレーターの厚みを従来よりも小さくすることができる。これにより、室内の壁面からのサーキュレーターの突出量を小さくすることができるので、設置する部屋の大きさ、形状などの制約を受けにくくなり、設置可能な部屋の選択肢が広がる。
【0030】
また、本実施形態では、前記クロスフローファンは、前記ファン本体の外周の一部に沿って設けられ、前記ファン本体内に空気が導入される導入領域と前記ファン本体内から空気が排出される排出領域を区分する舌部材と、前記舌部材よりも下流側の前記ファン本体の外周に沿って設けられ、前記排出領域から排出される空気を前記吹出口側へと導く案内部材とをさらに有しているので、空気を吸込口から吹出口に向けてより安定して流すことができる。
【0031】
また、本実施形態では、前記ケーシングは前記壁面の下部から上部に至る高さ方向の寸法を有し、前記クロスフローファンが前記ケーシングの前記高さ方向の中心よりも下方に配置されているので、サーキュレーターの重心が下方に位置してサーキュレーターの設置状態がより安定するとともに、クロスフローファンをメンテナンスする際の作業性が高まる。しかも、室内の壁面からのサーキュレーターの突出量が小さいので、壁面の下部から上部に至ってサーキュレーターが設置されていても邪魔(障害)になりにくい。
【0032】
また、本実施形態では、前記モータはアウターローター型であり、薄型化しやすいので、サーキュレーターの厚みをさらに小さくすることができる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。例えば、上記実施形態では、ケーシング内にクロスフローファンを1つ配設した場合を例に挙げて説明したが、クロスフローファンの個数は2つ以上であってもよい。ケーシング内に2つ以上のクロスフローファンを配設する場合には、これらのクロスフローファンを空気の流れる方向に沿って直列に並べてもよく、空気の流れる方向に対して垂直な方向に並列に並べてもよい。
【0034】
上記実施形態では、ケーシングが壁面の下部から上部に至る高さ方向の寸法を有し、クロスフローファンがケーシングの高さ方向の中心よりも下方に配置されている場合を例に挙げて説明したが、クロスフローファンがケーシングの上端付近に配置されていてもよい。この形態では、クロスフローファンがケーシングの上端付近に配置されているので、クロスフローファンの駆動音が居住者に届きにくくなり、室内を静かな状態に保つことができる。しかも、室内の壁面からのサーキュレーターの突出量が小さいので、壁面の下部から上部に至ってサーキュレーターが設置されていても邪魔(障害)になりにくい。
【0035】
また、ケーシングの高さ方向の寸法は、例えば壁面の高さの半分以下となるように短くしてもよい。この形態では、サーキュレーターがよりコンパクトになり、設置する部屋の制約をさらに受けにくくなる。
【0036】
上記実施形態では、吸込口が下端側で吹出口が上端側に形成されている場合を例に挙げて説明したが、吸込口が上端側で吹出口が下端側に形成されていてもよい。
【0037】
上記実施形態では、室内の壁面に取り付ける壁掛け型のサーキュレーターを例に挙げて説明したが、本発明のサーキュレーターは、ケーシングの長手方向を壁面の上下方向に向け、室内の壁面から少し距離を置いて配置する床置き型にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態にかかるサーキュレーターを室内に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかるサーキュレーターを示す正面図である。
【図4】本発明の一実施形態にかかるサーキュレーターにおけるファン本体およびアウターローター型のモータを示す断面図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるクロスフローファンの周辺および内部の空気の流れを説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0039】
11 サーキュレーター
13 吸込口
15 ケーシング
17 吹出口
19 ブレード
21 回転軸
23 ファン本体
25 クロスフローファン
27 モータ
31 導入領域
33 排出領域
35 舌部材
39 案内部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端側および下端側の一方に吸込口(13)を、他方に吹出口(17)を有し、背面(R)が室内の壁面に面するように配置される中空のケーシング(15)と、
複数のブレード(19)を有し、外径(d)が回転軸(21)の軸方向の厚み(t)よりも大きく、前記回転軸(21)が前記ケーシング(15)の前記背面(R)に対して略垂直な方向に向くように前記ケーシング(15)内に配設されたファン本体(23)と、前記ファン本体(23)を駆動させるモータ(27)とを有するクロスフローファン(25)と、を備えたサーキュレーター。
【請求項2】
前記クロスフローファン(25)は、前記ファン本体(23)の外周の一部に沿って設けられ、前記ファン本体(23)内に空気が導入される導入領域(31)と前記ファン本体(23)内から空気が排出される排出領域(33)を区分する舌部材(35)と、前記舌部材(35)よりも下流側の前記ファン本体(23)の外周に沿って設けられ、前記排出領域(33)から排出される空気を前記吹出口(17)側へと導く案内部材(39)とをさらに有している、請求項1に記載のサーキュレーター。
【請求項3】
前記ケーシング(15)は前記壁面の下部から上部に至る高さ方向の寸法を有し、前記クロスフローファン(25)が前記ケーシング(15)の上端付近に配置されている、請求項1または2に記載のサーキュレーター。
【請求項4】
前記ケーシング(15)は前記壁面の下部から上部に至る高さ方向の寸法を有し、前記クロスフローファン(25)が前記ケーシング(15)の前記高さ方向の中心よりも下方に配置されている、請求項1または2に記載のサーキュレーター。
【請求項5】
前記モータ(27)がアウターローター型である、請求項1〜4のいずれかに記載のサーキュレーター。
【請求項6】
前記ファン本体(23)の前記軸方向の厚み(t)は前記外径(d)の1/8より小さい、請求項1〜5のいずれかに記載のサーキュレーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−65944(P2010−65944A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233411(P2008−233411)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】