説明

サーマルプリント機構、サーマルプリンタおよびサーマルプリント方法

【課題】連続する画素どうしの発色濃度が異なる場合にも当該連続する画素どうしの境界を目立ちにくくすること。
【解決手段】1つの画素の記録にかかる総時間内において、記録対象とする画素の発色濃度が高いほど長くなるように当該発色濃度に応じて設定される通電合計時間の間、発熱素子に対して通電をおこなうサーマルプリンタにおいて、総時間を任意の長さの複数の通電時間単位に分割するとともに分割された複数の通電時間単位のうち長さが所定時間以上となる通電時間単位をさらに2分割し、分割された各通電時間単位のうち通電をおこなう通電時間単位の合計が通電合計時間と一致するように通電をおこなう通電時間単位を特定し、特定された通電をおこなう通電時間単位と通電をおこなわない通電時間単位とが総時間における中間点を境界にした前半部分と後半部分とで略対称に出現するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発熱素子に対する通電をおこない当該発熱素子を昇温させることによって記録媒体に対する記録をおこなうサーマルプリント機構、当該サーマルプリント機構を備えたサーマルプリンタ、および、発熱素子に対する通電をおこない当該発熱素子を昇温させることによって記録媒体に対する記録をおこなうサーマルプリント方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昇温させた発熱素子を感熱発色性の記録媒体に接触させ、接触箇所を発色させることによって記録をおこなう、いわゆるサーマル方式のプリンタがあった。このようなサーマル方式のプリンタにおいては、発熱素子に対して通電をおこなうことによって当該発熱素子を昇温させる。
【0003】
また、従来、サーマル方式のプリンタにおいては、発熱素子に対する通電時間を調整することによって記録媒体の発色濃度を調整する、いわゆる多階調記録をおこなうものがあった。このような多階調記録をおこなうサーマル方式のプリンタにおいては、たとえば、記録対象とする画素の濃度が高いほど発熱素子に対して通電をおこなう時間が長くなるように、発熱素子に対する通電をおこなう。
【0004】
具体的には、従来、たとえば2進法に基づいて、1つの画素の記録にかかる総時間を2の乗数であらわされる複数の通電時間単位に分割し、分割された複数の通電時間単位の中から発熱素子に対して通電をおこなう時間と一致するように選択された所定の通電時間単位において通電をおこなうようにした技術があった。これにより、記録対象とする画素の濃度が高いほど発熱素子に対して通電をおこなう時間が長くなるように、通電時間に重み付けがなされる。
【0005】
このように、通電時間に重み付けをなすことによって多階調記録をおこなう方法においては、従来、分割された複数の通電時間単位を、時間が長い順番あるいは時間が短い順番に配列し、それらの通電時間単位の中から記録対象とする画素の濃度に基づいて選択された所定の通電時間単位において、発熱素子に対する通電をおこなっていた。
【0006】
また、具体的には、従来、たとえば総時間内における中間点を、個々の画素に対応する記録濃度を得るに必要な数の発熱パルスの中心と一致させて、当該必要な数の発熱パルス数分の通電を連続的におこなうようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【0007】
また、具体的には、従来、たとえば総時間(1画素の記録サイクル)中で、記録画素の濃度に応じて発熱通電時間を変える際に、各通電時間の中心間のピッチが1画素の記録サイクル時間とほぼ等しくなるように通電時間の開始時を制御するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献2を参照。)。
【0008】
また、具体的には、従来、たとえば記録画素の濃度階調をNとし最高濃度階調の発色面積を得る加熱時間をTとするとき、各濃度階調に応じた発色面積を得る加熱期間をT/(N−1)の整数倍にするとともに、これらの各濃度階調に応じた加熱期間を加熱期間Tの開始からT/2後を中心として前後に略等分に配置するようにした技術があった(たとえば、下記特許文献3を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−42706号公報
【特許文献2】特開平5−278253号公報
【特許文献3】特開昭62−260476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の技術は、いずれも、連続して記録される画素(以下「連続する画素」という)どうしの発色濃度が異なる場合に、階調の変化点となる当該連続する画素どうしの境界が目立ちやすくなってしまうという問題があった。これにより、明るさや色などが無段階的に変化する元画像である場合に、当該元画像の再現性が劣り、記録媒体に記録された画像中に元画像には存在しない不自然な階調変化部分があらわれる場合があるという問題があった。
【0011】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、連続する画素どうしの発色濃度が異なる場合にも当該連続する画素どうしの境界を目立ちにくくすることができるサーマルプリント機構、サーマルプリンタおよびサーマルプリント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかるサーマルプリント機構は、発熱素子を備えたヘッド部と、前記発熱素子に対する通電をおこなう通電部と、1つの画素の記録にかかる総時間内において、記録対象とする画素の記録媒体における発色濃度が高いほど長くなるように当該発色濃度に応じて設定される通電合計時間の間、前記発熱素子に対して通電がおこなわれるように前記通電部を制御する通電制御部と、を備え、前記通電制御部が、前記総時間を任意の長さの複数の通電時間単位に分割するとともに分割された複数の通電時間単位のうち長さが所定時間以上となる通電時間単位をさらに2分割し、分割された各通電時間単位のうち通電をおこなう通電時間単位の合計が前記通電合計時間と一致するように前記通電をおこなう通電時間単位を特定し、特定された前記通電をおこなう通電時間単位と通電をおこなわない通電時間単位とが前記総時間における中間点を境界にした前半部分と後半部分とで略対称に出現するように、前記通電部を制御することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、各通電時間単位を任意の長さとすることができるとともに、各通電時間単位を任意の長さとした場合にも、1つの画素の記録にかかる総時間内において通電をおこなう通電時間単位が、中間点を境界にして前半部分と後半部分とに略均等に分散される。
【0014】
また、この発明によれば、長さが所定時間以上となる通電時間単位をさらに2分割しているため、所定時間より長い間連続して通電がおこなわれることがなく、1つの画素の記録にかかる総時間内において通電をおこなう通電時間単位が、中間点を境界にして前半部分と後半部分とに略均等に分散される。
【0015】
このように、この発明によれば、1つの画素の記録にかかる総時間内において通電をおこなう通電時間単位が、中間点を境界にして前半部分と後半部分とに略均等に分散されるので、画素ごとに発色濃度の平均化を図ることができる。
【0016】
これにより、この発明によれば、分割された複数の通電時間単位のうち発色濃度に応じて選択された一部の通電時間単位において通電をおこなう(すなわち、重み付けをした通電をおこなう)記録方法において、所定時間以上の通電合計時間で記録された画素と、所定時間未満の通電合計時間で記録された画素と、が連続する場合に、当該連続する画素どうしの極端な階調変化を防止することができ、連続する画素どうしの発色濃度が異なる場合にも当該連続する画素どうしの境界を目立ちにくくすることができる。
【0017】
また、この発明にかかるサーマルプリント機構は、上記の発明において、前記通電制御部が、前記総時間における通電開始位置と当該通電開始位置からの通電時間とによって特定される通電パターンのうち、前記総時間における前半部分の通電パターンと前記総時間における後半部分の通電パターンとが前記総時間における中間点を境界にして対称となるように、前記通電部を制御することを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、1つの画素の記録にかかる総時間内において、通電をおこなうタイミングが中間点を境界にして前半部分と後半部分とに均等に分散されるので、画素ごとに発色濃度の平均化を図ることができる。
【0019】
また、この発明にかかるサーマルプリント機構は、上記の発明において、前記記録対象とする画素に割り当てられた濃度に関する情報と前記発熱素子に対する通電履歴に関する情報とに基づいて前記発色濃度を算出する発色濃度算出部と、前記発色濃度算出部によって算出された発色濃度に基づいて前記通電合計時間を算出する合計時間算出部と、を備え、前記通電制御部が、前記合計時間算出部によって算出された通電合計時間に基づいて前記通電部を制御することを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、記録対象とする画素に割り当てられた濃度のみならず発熱素子に対する通電履歴を加味して算出された発色濃度に基づいて算出された通電合計時間を、中間点を境界にして前半部分と後半部分とに分散することにより、連続する画素どうしの間での極端な階調変化を効果的に防止することができる。
【0021】
また、この発明にかかるサーマルプリンタは、上記のサーマルプリント機構が備えたヘッド部における発熱素子に対向配置されたプラテンと、前記ヘッド部と前記プラテンとの間に案内された記録媒体を所定方向に搬送する搬送機構と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、発色濃度が異なる連続する画素どうしの境界を目立ちにくくすることができる。これによって、明るさや色などが無段階的に変化する元画像を良好に再現した記録物を提供することができる。
【0023】
また、この発明にかかるサーマルプリント方法は、発熱素子を備えたヘッド部と、前記発熱素子に対する通電をおこなう通電部と、1つの画素の記録にかかる総時間内において、記録対象とする画素の記録媒体における発色濃度が高いほど長くなるように当該発色濃度に応じて設定される通電時間の間、前記発熱素子に対して通電がおこなわれるように前記通電部を制御する通電制御部と、を備えたサーマルプリント機構のサーマルプリント方法であって、前記通電制御部において、前記総時間を任意の長さの複数の通電時間単位に分割するとともに分割された複数の通電時間単位のうち長さが所定時間以上となる通電時間単位をさらに2分割し、分割された各通電時間単位のうち通電をおこなう通電時間単位の合計が前記通電合計時間と一致するように前記通電をおこなう通電時間単位を特定し、特定された前記通電をおこなう通電時間単位と通電をおこなわない通電時間単位とが前記総時間における中間点を境界にした前半部分と後半部分とで略対称に出現するように、前記通電部を制御することを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、各通電時間単位を任意の長さとすることができるとともに、各通電時間単位を任意の長さとした場合にも、1つの画素の記録にかかる総時間内において通電をおこなう通電時間単位が、中間点を境界にして前半部分と後半部分とに略均等に分散される。
【0025】
また、この発明によれば、長さが所定時間以上となる通電時間単位をさらに2分割しているため、所定時間より長い間連続して通電がおこなわれることがなく、1つの画素の記録にかかる総時間内において通電をおこなう通電時間単位が、中間点を境界にして前半部分と後半部分とに略均等に分散される。
【0026】
このように、この発明によれば、1つの画素の記録にかかる総時間内において通電をおこなう通電時間単位が、中間点を境界にして前半部分と後半部分とに略均等に分散されるので、画素ごとに発色濃度の平均化を図ることができる。
【0027】
また、この発明にかかるサーマルプリント方法は、上記の発明において、前記通電制御部において、前記総時間における通電開始位置と当該通電開始位置からの通電時間とによって特定される通電パターンのうち、前記総時間における前半部分の通電パターンと前記総時間における後半部分の通電パターンとが前記総時間における中間点を境界にして対称となるように、前記通電部を制御することを特徴とする。
【0028】
この発明によれば、1つの画素の記録にかかる総時間内において、通電をおこなうタイミングが中間点を境界にして前半部分と後半部分とに均等に分散されるので、画素ごとに発色濃度の平均化を図ることができる。
【発明の効果】
【0029】
この発明にかかるサーマルプリント機構、サーマルプリンタおよびサーマルプリント方法によれば、連続する画素間での極端な階調変化を防止することができ、連続する画素どうしの発色濃度が異なる場合にも当該連続する画素どうしの境界を目立ちにくくすることができるという効果を奏する。
【0030】
これによって、この発明にかかるサーマルプリント機構、サーマルプリンタおよびサーマルプリント方法によれば、明るさや色などが無段階的に変化する元画像である場合にも、当該元画像の再現性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明にかかる実施の形態1のサーマルプリンタの構成を示す説明図である。
【図2】この発明にかかる実施の形態1のサーマルプリンタの記録方法を示す説明図である。
【図3】従来の多階調記録方法による画素の発色状態を示す説明図(その1)である。
【図4】従来の多階調記録方法による画素の発色状態を示す説明図(その2)である。
【図5】この発明にかかる実施の形態2のサーマルプリンタの通電方法を示す説明図である。
【図6】従来の多階調記録方法による画素の発色状態を示す説明図(その3)である。
【図7】従来の多階調記録方法による画素の発色状態を示す説明図(その4)である。
【図8】この発明にかかる実施の形態2のサーマルプリンタによって多階調記録をおこなった画素の発色状態を示す説明図(その1)である。
【図9】この発明にかかる実施の形態2のサーマルプリンタによって多階調記録をおこなった画素の発色状態を示す説明図(その2)である。
【図10】この発明にかかる実施の形態3のサーマルプリンタの通電方法を示す説明図である。
【図11】この発明にかかる実施の形態3のサーマルプリンタの記録方法を示す説明図(その1)である。
【図12】この発明にかかる実施の形態3のサーマルプリンタの記録方法を示す説明図(その2)である。
【図13】この発明にかかる実施の形態4のサーマルプリンタの通電方法を示す説明図である。
【図14】この発明にかかる実施の形態4のサーマルプリンタによって多階調記録をおこなった画素の発色状態を示す説明図(その1)である。
【図15】この発明にかかる実施の形態4のサーマルプリンタによって多階調記録をおこなった画素の発色状態を示す説明図(その2)である。
【図16】この発明にかかる実施の形態5のサーマルプリンタにおける、レジスタTのビット数の算出手順を示すフローチャートである。
【図17】この発明にかかる実施の形態5のサーマルプリンタによって多階調記録をおこなった画素の発色状態を示す説明図である。
【図18】従来の多階調記録方法による画素の発色状態を示す説明図(その5)である。
【図19】従来の多階調記録方法による画素の発色状態を示す説明図(その6)である。
【図20】この発明にかかる実施の形態6のサーマルプリンタによって多階調記録をおこなった画素の発色状態を示す説明図(その1)である。
【図21】この発明にかかる実施の形態6のサーマルプリンタによって多階調記録をおこなった画素の発色状態を示す説明図(その2)である。
【図22】多階調記録をおこなうサーマルプリンタにおける通電時間の分割方法の変形例を示す説明図(その1)である。
【図23】多階調記録をおこなうサーマルプリンタにおける通電時間の分割方法の変形例を示す説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるサーマルプリント機構、サーマルプリンタおよびサーマルプリント方法の好適な実施の形態1を詳細に説明する。
【0033】
(実施の形態1)
まず、この発明にかかる実施の形態1のサーマルプリンタの構成について説明する。図1は、この発明にかかる実施の形態1のサーマルプリンタの構成を示す説明図である。図1において、この発明にかかる実施の形態1のサーマルプリンタは、ヘッド部101と、通電部102と、通電制御部103と、発色濃度算出部104と、合計時間算出部105と、によって構成されるサーマルプリント機構を備えている。
【0034】
ヘッド部101は、記録対象とする記録媒体を間にして、プラテンに対向配置されており、複数の発熱素子(図示を省略する)を備えている。この実施の形態1のサーマルプリンタにおいては、感熱発色性を備えたいわゆる感熱紙を記録媒体として使用する。感熱紙は、たとえば紙面にロイコ染料と顕色剤とを塗布した構成をなしており、加熱されることによって溶融したロイコ染料や顕色剤の化学反応によるロイコ染料の発色によって、記録をおこなうことができる。
【0035】
また、ヘッド部101は、発熱素子がプラテンに当接するように配置されている。発熱素子は、通電されることによって発熱する素子であって、記録媒体の幅方向(記録媒体の送り方向に直交する方向)において直線状に配置されている。発熱素子は、記録媒体の幅方向の寸法に相当する長さ分配置され、ラインヘッドを構成している。
【0036】
通電部102は、通電制御部103によって制御され、発熱素子に対する通電をおこなう。通電部102には、複数の発熱素子が各々接続されている。通電部102は、複数の発熱素子の中から、記録用データに基づいて特定される発熱素子(以下、適宜「該当する発熱素子」という)に対して選択的に通電をおこなう。
【0037】
サーマルプリンタにおける記録に際しては、ヘッド部101における発熱素子とプラテンとの間に記録媒体を案内した状態で、通電部102によって該当する発熱素子に対して選択的に通電がおこなわれる。これにより、ラインヘッドを構成する複数の発熱素子のうち選択された発熱素子が、昇温した状態で記録媒体に接触する。これによって、記録媒体において、該当する発熱素子が接触した部分を発色させることができる。また、サーマルプリンタにおける記録に際しては、ラインヘッドを構成する複数の発熱素子がなすラインごとに、記録がおこなわれる。
【0038】
通電制御部103は、1つの画素の記録にかかる総時間(以下、単に「総時間」という)内において、該当する発熱素子に対する通電をおこなう時間の合計時間(以下「通電合計時間」という)の間、当該該当する発熱素子に対して通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。通電合計時間は、記録対象とする画素の記録媒体における発色濃度に応じて設定される。
【0039】
この実施の形態において、発色濃度は、サーマルプリンタによる記録に用いる記録用データの元となる画像(以下「元画像」という)を構成する画素の濃度を、サーマルプリンタによる記録完了後の記録媒体において再現できるように、該当する発熱素子を昇温させるために要する通電合計時間をあらわす情報とすることができる。この実施の形態1において、発色濃度は、元画像を構成する画素の濃度を直接的に示す情報ではない。
【0040】
具体的には、たとえば元画像を構成する画素の濃度が4である場合、サーマルプリンタによる記録完了後の記録媒体に記録された画素の濃度は4である必要がある。このとき、該当する画素を記録する発熱素子の温度が高い場合は、発熱素子の温度が低い場合と比較して通電合計時間は短くなる。
【0041】
逆に、サーマルプリンタの設置環境の温度が低いなど、発熱素子の温度が低い場合は、サーマルプリンタの設置環境の温度が高かったり、連続して記録をおこなっていたために発熱素子の温度が高い場合と比較して、通電合計時間は長くなる。すなわち、発色濃度は、最終的に発色することを希望する画素の濃度を得るために、該当する発熱素子を通電する通電合計時間を特定可能な情報によってあらわすことができる。
【0042】
発色濃度算出部104は、記録対象とする画素に割り当てられた濃度に関する情報と、発熱素子に対する通電履歴に関する情報と、に基づいて、発色濃度を算出する。記録対象とする画素に割り当てられた濃度に関する情報は、元画像を構成する各画素の濃度をあらわす情報とすることができる。画素の濃度は、具体的には、たとえば明度や彩度などを用いて示すことができる。この場合、画素の濃度は、たとえば明度や彩度が高いほど、低くあらわすことができる。
【0043】
元画像がカラー画像である場合、該当する画素の色相を加味した情報を、記録対象とする画素に割り当てられた濃度に関する情報としてもよい。具体的には、たとえば黒色や青色などの濃色をあらわす画素の濃度は、黄色や水色などの淡色をあらわす画素の濃度よりも画素の濃度は高くあらわすことができる。
【0044】
発熱素子に対する通電履歴に関する情報は、次回記録をおこなうラインの所定数前のラインから直前ラインまでの間における各発熱素子の通電履歴を示す情報とすることができる。具体的には、発熱素子に対する通電履歴に関する情報は、たとえば次回記録をおこなうラインの所定数前のラインから直前ラインまでの間に通電をおこなった回数や、次回記録をおこなうラインの所定数前のラインから直前ラインまでの間に通電をおこなった時間の合計などを示す情報とすることができる。また、具体的には、発熱素子に対する通電履歴に関する情報は、たとえば各発熱素子の現在の温度を示す情報であってもよい。
【0045】
合計時間算出部105は、発色濃度算出部104によって算出された発色濃度に基づいて、通電合計時間を算出する。具体的には、合計時間算出部105は、発色濃度が高いほど長くなるように通電合計時間を算出し、発色濃度が低いほど短くなるように通電合計時間を算出する。この実施の形態1において、合計時間算出部105は、発色濃度に、最小の通電時間単位tを乗算した値を、通電合計時間として算出する。
【0046】
より具体的には、たとえば、元画像における濃度が等しい2つの画素の記録を2ライン連続しておこなう場合について説明する。ここでは、5行前のラインから直前ラインまでの間連続して通電されていた発熱素子(便宜上「第1の発熱素子」という)による画素の記録と、5行前のラインから直前ラインまでの間まったく通電されていなかった発熱素子(便宜上「第2の発熱素子」という)による画素の記録と、を例にして説明する。
【0047】
このような状況において、発色濃度算出部104は、第1の発熱素子が記録する画素の方が、第2の発熱素子が記録する画素よりも低くなるような発色濃度を算出する。すなわち、第1の発熱素子は、5行前のラインから直前ラインまでの間連続して通電されていたため余熱により或る程度昇温された状態であるため、発色濃度算出部104が算出する第1の発熱素子が記録する画素の発色濃度は、第2の発熱素子が記録する画素の発色濃度よりも低く算出される。このように、発色濃度は、元画像データに含まれる各画素のうちの記録対象とする画素の本来の濃度と各発熱素子の通電履歴とを加味して算出される。
【0048】
そして、このように算出された発色濃度に基づいて、合計時間算出部105は、一方の発熱素子に対する通電合計時間が、他方の発熱素子に対する通電合計時間よりも短くなるように合計時間の算出をおこなう。このように、サーマルプリンタにおいては、次回記録をおこなうラインにおいて同じ濃度の画素の記録をおこなう場合にも、各画素に対する通電履歴に応じて適宜調整した通電合計時間が設定される。
【0049】
これによって、記録媒体において、元画像を良好に再現することができる。この実施の形態において、通電制御部103、発色濃度算出部104、合計時間算出部105は、CPUとROMやRAMなどの各種メモリとによって構成されるマイクロコンピュータによってその機能を実現することができる。
【0050】
また、サーマルプリンタは、外部情報処理装置110との間で通信をおこなうI/F(インターフェース)106を備えている。サーマルプリンタには、当該サーマルプリンタにおいて記録に用いるデータの元となる画像(元画像)データの送信元となる外部情報処理装置110が接続されている。サーマルプリンタは、外部情報処理装置110から送信された各種データをI/Fを介して受信する。
【0051】
外部情報処理装置110は、サーマルプリンタに送信するための画像データ(スプールデータ)を、外部情報処理装置110が備える所定のアプリケーションからプリンタドライバを介して所定のメモリに書き出し、その後メモリに書き出した画像データをサーマルプリンタに送信する。外部情報処理装置110は、具体的には、たとえばパーソナルコンピュータなどによって実現することができる。パーソナルコンピュータについては、公知の技術であるため説明を省略する。
【0052】
たとえば外部情報処理装置110のOS(オペレーションシステム)がWindows(登録商標)である場合、スプールデータは「RAW」形式や「EMF(Enhanced Metafile Format:拡張メタファイル)」形式などの形式で記述される。RAWデータは、サーマルプリンタがそのまま解釈できる言語で記述されており、サーマルプリンタの種類(機種)に依存する。EMFデータは、WindowsのGDI描画コマンドを使って記述された中間データ形式であるため、サーマルプリンタの種類(機種)に依存しない。
【0053】
EMFデータ形式のスプールデータはプリンタドライバによってバックグラウンドにおいて解釈され、サーマルプリンタの種類(機種)に適した最終的な印刷データとして、サーマルプリンタに送信される。サーマルプリンタに送信するための画像データ(スプールデータ)をEMFデータ形式とすることにより、RAWデータ形式のようにサーマルプリンタの種類(機種)に依存するスプールデータと比較して、サーマルプリンタにおけるスプールデータの解釈や変換などにかかる時間短縮を図ることができる。
【0054】
RAWデータ形式のスプールデータよりEMFデータ形式のスプールデータを使用した方が、印刷データをスプールする時間が短縮され、結果として印刷にかかる時間短縮を図ることができる。これにより、動作音が静かで鮮明で美しい記録をおこなうことができることに加えて、記録スピードが速いというサーマルプリンタのメリットをより効果的に発揮させることができる。
【0055】
この実施の形態1のサーマルプリンタにおいて、通電制御部103は、総時間における通電開始位置と当該通電開始位置からの通電時間とによって特定される通電パターンのうち、総時間における前半部分の通電パターンと総時間における後半部分の通電パターンとが、総時間における時間的な中間点(以下「中間点」という)を境界にして対称となるように、通電部102を制御する。
【0056】
この実施の形態1のサーマルプリンタにおいては、たとえば2進法に基づいて総時間を各々が2の乗数であらわされるように分割した複数の通電時間単位の中から、通電合計時間に基づいて選択される所定数の通電時間単位において発熱素子に通電をおこなうことによって記録をおこなう。
【0057】
具体的には、たとえば2進法に基づいて総時間を各々が2の乗数であらわされるように分割した場合、複数の通電時間単位は、それぞれ、20t=t、21t=2t、22t=4t、・・・、2ntであらわすことができる。ここで、tは、通電時間単位の最小単位であり、たとえば1秒間などの単位時間あたりにおける記録媒体の搬送量(mm)と外部情報処理装置110からの記録データの転送量(bit)とに基づいて設定される。
【0058】
1つの画素を8階調(発色濃度0〜7のうちのいずれか)で示す場合、通電合計時間は、それぞれ、発色濃度0の場合は0t=0、発色濃度1の場合はt、発色濃度2の場合は2t、発色濃度3の場合は3t、発色濃度4の場合は4t、発色濃度5の場合は5t、発色濃度6の場合は6t、発色濃度7の場合は7tとなる。
【0059】
この実施の形態1において、1つの画素を8階調で記録する場合、通電制御部103は、総時間を1つの通電時間単位tと3つの通電時間単位2tとの各通電時間単位に分割するとともに、分割した各通電時間単位を2t→t→2t→2tの順に配置する。そして、該当する通電時間単位において通電をおこなう。総時間において、中間点は、通電時間単位tのつぎに出現する通電時間単位2tの開始位置(立ち上がり位置)に位置している。
【0060】
(発色濃度0の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が0である場合、通電制御部103は、総時間におけるいずれの通電時間単位においても発熱素子に対する通電がおこなわれないように、通電部102を制御する。
【0061】
(発色濃度1の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が1である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間がtとなるように通電部102を制御する。具体的には、通電時間単位tにおいて該当する発熱素子に対する通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0062】
(発色濃度2の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が2である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が2tとなるように通電部102を制御する。具体的には、通電時間単位tのつぎに出現する通電時間単位2tにおいて該当する発熱素子に対する通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0063】
(発色濃度3の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が3である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が3tとなるように通電部102を制御する。具体的には、通電時間単位tと当該通電時間単位tのつぎに出現する通電時間単位2tとにおいて該当する発熱素子に対する通電がおこなわれるように、通電部102を制御する(図2における1ライン目参照)。
【0064】
(発色濃度4の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が4である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が4tとなるように通電部102を制御する。具体的には、総時間において最初に出現する通電時間単位2tと最後に出現する通電時間単位2tとにおいて該当する発熱素子に対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する(図2における2ライン目参照)。
【0065】
(発色濃度5の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が5である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が5tとなるように通電部102を制御する。具体的には、通電時間単位tと、総時間において最初に出現する通電時間単位2tと、最後に出現する通電時間単位2tとにおいて該当する発熱素子に対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0066】
(発色濃度6の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が6である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が6tとなるように通電部102を制御する。具体的には、3つの通電時間単位2tにおいて該当する発熱素子に対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0067】
(発色濃度7の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が7である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間とが7tとなるように通電部102を制御する。具体的には、すべての通電時間単位t、2tに対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0068】
実施の形態1のサーマルプリンタにおいては、上記のように通電をおこなうことによって、1つの画素の記録にかかる総時間内において、通電をおこなう通電時間単位が中間点を境界にして前半部分と後半部分とに略均等に分散される。これによって、画素ごとに発色濃度の平均化を図ることができる。そして、画素ごとに発色濃度の平均化を図ることにより、連続する画素どうしの発色濃度が異なる場合にも、当該連続する画素どうしの境界を目立ちにくくすることができる。
【0069】
図2は、この発明にかかる実施の形態1のサーマルプリンタの記録方法を示す説明図である。図2においては、この実施の形態1のサーマルプリンタを用いて、1ライン目に発色濃度3の画素の記録をおこない、つづく2ライン目に発色濃度4の画素の記録をおこなう場合を示している。図2において、発色濃度3の画素および発色濃度4の画素は、いずれも、通電する通電時間単位が、総時間内において中間点を境界とする前半部分と後半部分とに略均等に分散されている。
【0070】
また、図2において、発色濃度3の画素の記録に際しては通電をおこなう通電時間単位が総時間における中央に配置され、発色濃度4の画素の記録に際しては、通電をおこなう通電時間単位が総時間における両端に配置されている。これによっても、連続する画素どうしの間で、通電をおこなう通電時間単位が分散されている。
【0071】
また、上記のように通電をおこなうことによって、分割された複数の通電時間単位のうち発色濃度に応じて選択された一部の通電時間単位において通電をおこなう記録方法、すなわち、重み付けをした通電をおこなう記録方法において、4t以上の通電合計時間で記録された画素と、4t未満の通電合計時間で記録された画素と、が連続する場合に、当該連続する画素どうしの極端な階調変化を防止することができる。これによって、連続する画素どうしの発色濃度が異なる場合にも、当該連続する画素どうしの境界を目立ちにくくすることができる。
【0072】
従来は、総時間をたとえば2の乗数で示される複数の通電時間単位に分割し、分割された複数の通電時間単位を時間が長い順番あるいは時間が短い順番に配列していた。このような従来の技術においては、連続する画素どうしの境界が目立ちやすくなってしまうという問題があった。具体的には、たとえば1つの画素を8階調であらわす際に、連続する2つの画素の発色濃度がそれぞれ3および4である場合、これらの画素どうしの境界が特に目立ちやすくなってしまうという問題があった。
【0073】
図3および図4は、従来の多階調記録方法による画素の発色状態を示す説明図である。図3および図4において、発色濃度3の画素と発色濃度4の画素とが連続している場合、これらの画素における通電がおこなわれない通電時間単位あるいは通電がおこなわれる通電時間単位が連続するため、発色濃度3の画素と発色濃度4の画素との境界部分に白線(白抜けして見える領域)あるいは発色濃度が著しく高く見える領域(濃く見える領域)が出現してしまう。
【0074】
より具体的には、たとえば、1つの画素においては各通電時間単位がt→2t→4tの順に配列されているため、発色濃度3の画素は総時間の前半部分において通電がおこなわれ、発色濃度4の画素は総時間の後半部分において通電がおこなわれる。このように、通電がおこなわれない4t、t、2t(1画素分に相当する非発色領域)が連続すると、この1画素分に相当する非発色領域が不自然な白抜き(白線)領域として顕在化する。
【0075】
また、より具体的には、たとえば、1つの画素においては各通電時間単位がt→2t→4tの順に配列されているため、発色濃度4の画素は総時間の後半部分において通電がおこなわれ、発色濃度3の画素は総時間の前半部分において通電がおこなわれる。このように、通電がおこなわれる4t、t、2t(1画素分に相当する非発色領域)が連続すると、この1画素分に相当する非発色領域が不自然に発色濃度の高い領域として顕在化する。
【0076】
これに対し、この実施の形態1のサーマルプリンタによれば、連続する画素に対する極端な階調変化を防止することができ、連続する画素との発色濃度が異なる場合にも当該連続する画素との境界を目立ちにくくすることができる。このように、連続する画素との発色濃度が異なる場合にも当該連続する画素との境界を目立ちにくくすることにより、明るさや色などが無段階的に変化する元画像の再現性の向上を図ることができる。
【0077】
また、上述したような、元画像にはない極端な階調変化は、記録速度(記録媒体の搬送速度)が大きいほど顕著にあらわれる傾向にある。一方で、近年、サーマルプリンタにおいては記録速度の向上が望まれている。これに対して、この実施の形態1のサーマルプリンタにおいては、記録速度が大きいほど、発色濃度が異なる連続する画素どうしの境界を目立ちにくくすることができるという効果を高く発揮することができる。
【0078】
なお、上述した実施の形態1においては、総時間を、2の乗数であらわされる通電時間単位に分割した例について説明したが、通電時間単位は2の乗数であらわされるものに限らない。通電時間単位は、たとえばnの乗数であらわされるものであってもよい。また、通電時間単位は、総時間を任意の長さに分割したものであってもよい。また、通電時間単位は、総時間を任意の数に分割したものであってもよい。
【0079】
通電時間単位を任意の長さとする場合、長さが所定時間以上となる通電時間単位をさらに2分割する。そして、通電合計時間に基づいて、分割された各通電時間単位のうち通電をおこなう通電時間単位の合計が通電合計時間と一致するように、通電をおこなう通電時間単位を特定する。通電制御部103は、前述のように特定された通電をおこなう通電時間単位と、通電をおこなわない通電時間単位と、が総時間における中間点を境界にした前半部分と後半部分とで略対称に出現するように、通電部102を制御する。
【0080】
上述した実施の形態1においては、通電合計時間に基づいて、通電時間単位が4t以上となる通電時間単位が選択される場合、当該通電時間単位4tを2つの通電時間単位2tに分割する。そして、分割した各通電時間単位2tが中間点を境界にした前半部分と後半部分とで略対称に出現するように、通電部102を制御する。
【0081】
このように、長さが所定時間以上となる通電時間単位を2分割し、分割した各通電時間単位が中間点を境界にした前半部分と後半部分とで略対称に出現するように通電部102を制御することにより、各通電時間単位を任意の長さとすることができるとともに、各通電時間単位を任意の長さとした場合にも、1つの画素の記録にかかる総時間内において通電をおこなう通電時間単位を、中間点を境界にして前半部分と後半部分とに略均等に分散することができる。
【0082】
また、長さが所定時間以上となる通電時間単位を2分割し、分割した各通電時間単位が中間点を境界にした前半部分と後半部分とで略対称に出現するように通電部102を制御することにより、所定時間よりも長い間連続して通電がおこなわれることがなく、1つの画素の記録にかかる総時間内において通電をおこなう通電時間単位を、中間点を境界にして前半部分と後半部分とに略均等に分散することができる。
【0083】
このように、実施の形態1のサーマルプリンタによれば、1つの画素の記録にかかる総時間内において通電をおこなう通電時間単位が、中間点を境界にして前半部分と後半部分とに略均等に分散されるので、画素ごとに発色濃度の平均化を図ることができる。
【0084】
これにより、実施の形態1のサーマルプリンタによれば、重み付けをした通電をおこなう記録方法において、所定時間以上の通電合計時間で記録された画素と、所定時間未満の通電合計時間で記録された画素と、が連続する場合に、当該連続する画素どうしの極端な階調変化を防止することができ、連続する画素どうしの発色濃度が異なる場合にも当該連続する画素どうしの境界を目立ちにくくすることができる。
【0085】
そして、このように、連続する画素との発色濃度が異なる場合にも当該連続する画素との境界を目立ちにくくすることにより、明るさや色などが無段階的に変化する元画像の再現性の向上を図ることができる。
【0086】
(実施の形態2)
つぎに、この発明にかかる実施の形態2のサーマルプリンタについて説明する。実施の形態2においては、上述した実施の形態1と同一部分については同一符号で示し、説明を省略する。
【0087】
図5は、この発明にかかる実施の形態2のサーマルプリンタの通電方法を示す説明図である。図5において、この発明にかかる実施の形態2のサーマルプリンタが備える通電制御部103は、各画素を16階調(発色濃度0〜15のうちのいずれか)であらわす。
【0088】
また、この発明にかかる実施の形態2のサーマルプリンタが備える通電制御部103は、16階調であらわされる画素の記録に際して、総時間を1つの通電時間単位tと1つの通電時間単位2tと3つの通電時間単位4tの各通電時間単位に分割するとともに、分割した各通電時間単位を4t→t→2t→4t→4tの順に配置する。そして、該当する通電時間単位において通電をおこなう。総時間において、中間点は、通電時間単位2tのつぎに出現する通電時間単位4tの開始位置(立ち上がり位置)に位置している。
【0089】
1つの画素を16階調(発色濃度0〜15のうちのいずれか)であらわす場合、通電合計時間は、それぞれ、発色濃度0の場合は0t、発色濃度1の場合はt、発色濃度2の場合は2t、発色濃度3の場合は3t、発色濃度4の場合は4t、発色濃度5の場合は5t、発色濃度6の場合は6t、発色濃度7の場合は7t、発色濃度8の場合は8t、発色濃度9の場合は9t、発色濃度10の場合は10t、発色濃度11の場合は11t、発色濃度12の場合は12t、発色濃度13の場合は13t、発色濃度14の場合は14t、発色濃度15の場合は15tとなる。
【0090】
(発色濃度0の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が0である場合、通電制御部103は、総時間におけるいずれの通電時間単位においても発熱素子に対する通電がおこなわれないように、通電部102を制御する。
【0091】
(発色濃度1の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が1である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間がtとなるように通電部102を制御する。具体的には、通電時間単位tにおいて該当する発熱素子に対する通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0092】
(発色濃度2の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が2である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が2tとなるように通電部102を制御する。具体的には、通電時間単位2tにおいて該当する発熱素子に対する通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0093】
(発色濃度3の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が3である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が3tとなるように通電部102を制御する。具体的には、通電時間単位tと当該通電時間単位tのつぎに出現する通電時間単位2tとにおいて該当する発熱素子に対する通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0094】
(発色濃度4の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が4である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が4tとなるように通電部102を制御する。具体的には、総時間において通電時間単位2tのつぎに出現する通電時間単位4tにおいて該当する発熱素子に対して通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0095】
(発色濃度5の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が5である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が5tとなるように通電部102を制御する。具体的には、通電時間単位tと総時間において通電時間単位2tのつぎに出現する通電時間単位4tとにおいて該当する発熱素子に対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0096】
(発色濃度6の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が6である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が6tとなるように通電部102を制御する。具体的には、通電時間単位2tと当該通電時間単位2tのつぎに出現する通電時間単位4tとにおいて該当する発熱素子に対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0097】
(発色濃度7の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が7である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が7tとなるように通電部102を制御する。具体的には、通電時間単位tと通電時間単位2tと当該通電時間単位2tのつぎに出現する通電時間単位4tとにおいて該当する発熱素子に対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0098】
(発色濃度8の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が8である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が8tとなるように通電部102を制御する。具体的には、総時間において最初に出現する通電時間単位4tと最後に出現する通電時間単位4tとにおいて該当する発熱素子に対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0099】
(発色濃度9の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が9である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が9tとなるように通電部102を制御する。具体的には、総時間において最初に出現する通電時間単位4tと当該通電時間単位4tのつぎに出現する通電時間単位tと最後に出現する通電時間単位4tとにおいて該当する発熱素子に対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0100】
(発色濃度10の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が10である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が10tとなるように通電部102を制御する。具体的には、総時間において最初に出現する通電時間単位4tと通電時間単位2tと最後に出現する通電時間単位4tとにおいて該当する発熱素子に対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0101】
(発色濃度11の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が11である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が11tとなるように通電部102を制御する。具体的には、総時間において最初に出現する通電時間単位4tと通電時間単位t、2tと最後に出現する通電時間単位4tとにおいて該当する発熱素子に対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0102】
(発色濃度12の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が12である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が12tとなるように通電部102を制御する。具体的には、3つの通電時間単位4tにおいて該当する発熱素子に対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0103】
(発色濃度13の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が13である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が13tとなるように通電部102を制御する。具体的には、3つの通電時間単位4tおよび通電時間単位tにおいて該当する発熱素子に対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0104】
(発色濃度14の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が14である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が14tとなるように通電部102を制御する。具体的には、3つの通電時間単位4tおよび通電時間単位2tにおいて該当する発熱素子に対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0105】
(発色濃度15の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が15である場合、通電制御部103は、総時間における通電合計時間が15tとなるように通電部102を制御する。具体的には、すべての通電時間単位t、2t、4tにおいて該当する発熱素子に対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0106】
図6および図7は、従来の多階調記録方法による画素の発色状態を示す説明図である。図6および図7においては、16階調で記録される画素の発色状態を示している。図6においては、従来の多階調記録方法で、連続する画素に対して発色濃度が1階調異なる3つの連続する画素を記録した状態を示している。図7においては、従来の多階調記録方法で記録をおこなった結果、記録物において不具合が顕著に発生する状態を示している。図6および図7における紙面左側の3桁の数字は、いずれも、連続する3つの画素(3つの画素を連続して記録する場合の各画素)のそれぞれの発色濃度の配列パターンを示している。
【0107】
図6および図7において、従来は、総時間をたとえば2の乗数で示される複数の通電時間単位に分割し、分割された複数の通電時間単位を時間が長い順番あるいは時間が短い順番に配列し、発色濃度に応じて通電がおこなわれる通電時間単位を選択していた。具体的には、たとえば1つの画素を8階調であらわす場合、総時間をt、2t、4t、8tに分割し、t→2t→4t→8tあるいは8t→4t→2t→tの順に配列していた。
【0108】
このような従来の技術において、発色濃度が1〜7のいずれかである場合、通電がおこなわれる通電時間単位は、総時間における前半部分に配置されている通電時間単位t、2t、4tの中から選択され、総時間における後半部分に配置されている通電時間単位8tは確実に選択されない。また、発色濃度が8〜15である場合、通電がおこなわれる通電時間単位として総時間における後半部分に配置されている通電時間単位8tがかならず選択され、総時間における後半部分において長時間の連続した通電がおこなわれていた。
【0109】
このため、通電がおこなわれる通電時間単位が総時間における前半部分に偏っている画素のつぎに、通電がおこなわれる通電時間単位が総時間における後半部分に偏っている画素の記録をおこなう場合、これらの連続する画素どうしの境界部分に白線(白抜けして見える領域)が出現してしまう。
【0110】
また、このため、通電がおこなわれる通電時間単位が総時間における後半部分に偏っている画素のつぎに、通電がおこなわれる通電時間単位が総時間における前半部分に偏っている画素の記録をおこなう場合、発熱素子の余熱が十二分になされているために、記録媒体に記録された画素の濃度は本来所望する発色濃度よりも高くなり、発色濃度が著しく高く見える領域(濃く見える領域)が出現してしまう。
【0111】
このような、白線や濃い部分は、図7に示すように「発色濃度1→発色濃度8→発色濃度1」、「発色濃度3→発色濃度8→発色濃度3」、「発色濃度7→発色濃度8→発色濃度7」など特定の組み合わせ部分において顕著に出現する。
【0112】
図8および図9は、この発明にかかる実施の形態2のサーマルプリンタによって多階調記録をおこなった画素の発色状態を示す説明図である。図8および図9においては、16階調で記録される画素の発色状態を示している。図8においては、この実施の形態2のサーマルプリンタによって、連続する画素に対して発色濃度が1階調異なる3つの連続する画素を記録した状態を示している。図9においては、従来の記録方法で記録をおこなった場合に顕著な不具合が発生する発色濃度の配列順で連続する3つの画素を、この実施の形態2のサーマルプリンタによって記録した状態を示している。図8および図9における紙面左側の3桁の数字は、いずれも、連続する3つの画素(3つの画素を連続して記録する場合の各画素)のそれぞれの発色濃度の配列パターンを示している。
【0113】
図8および図9において、この実施の形態2のサーマルプリンタは、通電をおこなう通電時間単位を図5に示したように選択し、選択した通電時間単位において該当する発熱素子に対して通電をおこなうことによって、通電をおこなう通電時間単位を総時間内における前半部分と後半部分とに略均等に分散させることができる。これによって、画素ごとに発色濃度の平均化を図ることができる。
【0114】
画素ごとに発色濃度の平均化を図ることにより、重み付けをした通電をおこなう記録方法によって発色濃度が異なる画素を連続して記録する場合にも、連続する画素どうしの極端な階調変化を防止することができる。これによって、連続する画素どうしの発色濃度が異なる場合にも、当該連続する画素どうしの境界を目立ちにくくすることができる。
【0115】
そして、このように、連続する画素どうしの発色濃度が異なる場合にも当該連続する画素どうしの境界を目立ちにくくすることにより、明るさや色などが無段階的に変化する元画像の再現性の向上を図ることができる。
【0116】
特に、図9に示したように、従来の記録方法ではもっとも影響が大きい7t→8t→7tというパターンの通電をおこなう場合に連続する画素どうしの境界を目立ちにくくする高い効果が得られる。これによって、階調印字データの転送回数を最小限に抑えつつ、連続する画素どうしの境界を目立ちにくくすることができる。
【0117】
なお、実施の形態2においては、所定時間を8tとし、長さが8t以上となる通電時間単位を2つの通電時間単位4tに分割し、総時間内における前半部分と後半部分とに略均等に分散させるようにしたが、これに限るものではない。さらに、通電時間単位4tをさらに分割し、分割された各通電時間単位2tを総時間内における前半部分と後半部分とに略均等に分散させるようにしてもよい。
【0118】
(実施の形態3)
つぎに、この発明にかかる実施の形態3のサーマルプリンタについて説明する。実施の形態3においては、上述した実施の形態1および実施の形態2と同一部分については同一符号で示し、説明を省略する。実施の形態3においては、実施の形態1および実施の形態2と比較して、通電時間単位の分割方法および通電する通電時間単位の選択方法が異なる。
【0119】
図10は、この発明にかかる実施の形態3のサーマルプリンタの通電方法を示す説明図である。図10において、この実施の形態3のサーマルプリンタが備える通電制御部103は、1つの画素を8階調で記録する場合に、総時間を3つの通電時間単位tと2つの通電時間単位2tとの各通電時間単位に分割するとともに、分割した各通電時間単位を2t→t→t→t→2tの順に配置する。そして、該当する通電時間単位において通電をおこなう。3つの通電時間単位tのうち真ん中の通電時間単位tは、総時間における中間点をまたいで配置される。
【0120】
(発色濃度0の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が0である場合、通電制御部103は、総時間におけるいずれの通電時間単位においても通電がおこなわれないように、通電部102を制御する。
【0121】
(発色濃度1の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が1である場合、通電制御部103は、総時間における前半部分の通電合計時間および後半部分の通電合計時間とが、それぞれ0.5tとなるように通電部102を制御する。具体的には、総時間における中間点をまたいで配置される通電時間単位tに対して通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0122】
(発色濃度2の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が2である場合、通電制御部103は、総時間における前半部分の通電合計時間および後半部分の通電合計時間とが、それぞれtとなるように通電部102を制御する。具体的には、総時間における中間点をまたいで配置される通電時間単位t以外の通電時間tに対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0123】
(発色濃度3の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が3である場合、通電制御部103は、総時間における前半部分の通電合計時間および後半部分の通電合計時間とが、それぞれ1.5tとなるように通電部102を制御する。具体的には、3つの通電時間単位tに対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0124】
(発色濃度4の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が4である場合、通電制御部103は、総時間における前半部分の通電合計時間および後半部分の通電合計時間とが、それぞれ2tとなるように通電部102を制御する。具体的には、2つの通電時間単位2tに対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0125】
(発色濃度5の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が5である場合、通電制御部103は、総時間における前半部分の通電合計時間および後半部分の通電合計時間とが、それぞれ2.5tとなるように通電部102を制御する。具体的には、総時間における中間点をまたいで配置される通電時間単位tと、2つの通電時間単位2tにおいて、それぞれ、該当する発熱素子に対して通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0126】
(発色濃度6の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が5である場合、通電制御部103は、総時間における前半部分の通電合計時間および後半部分の通電合計時間とが、それぞれ3tとなるように通電部102を制御する。具体的には、総時間における中間点をまたいで配置される通電時間単位t以外の通電時間単位tおよび2tに対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0127】
(発色濃度7の場合)
たとえば、1つの画素を8階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が7である場合、通電制御部103は、総時間における前半部分の通電合計時間および後半部分の通電合計時間とが、それぞれ3.5tとなるように通電部102を制御する。具体的には、すべての通電時間単位t、2tに対してそれぞれ通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0128】
図11および図12は、この発明にかかる実施の形態3のサーマルプリンタの記録方法を示す説明図である。図11においては、この実施の形態3のサーマルプリンタを用いて、1ライン目に発色濃度3の画素の記録をおこない、つづく2ライン目に発色濃度4の画素の記録をおこなう場合を示している。図12においては、この実施の形態3のサーマルプリンタを用いて、1ライン目に発色濃度4の画素の記録をおこない、つづく2ライン目に発色濃度3の画素の記録をおこなう場合を示している。
【0129】
図11および図12において、この実施の形態3のサーマルプリンタにおいては、各通電時間単位t、2tが、中間点を境界にして対称に配置されている。具体的には、この実施の形態2のサーマルプリンタにおいては、3つの通電時間単位tのうち真ん中の通電時間単位tが、中間点をまたいで配置されているとともに、前半部分の通電時間単位t、2tと後半部分の通電時間単位t、2tとが、真ん中の通電時間単位tを間にして対称に配置されている。
【0130】
また、図11および図12において、発色濃度3の画素の記録に際しては通電をおこなう通電時間単位が総時間における中央に配置され、発色濃度4の画素の記録に際しては、通電をおこなう通電時間単位が総時間における両端に配置されている。これによっても、連続する画素どうしの間で、通電をおこなう通電時間単位が分散されている。
【0131】
そして、図11および図12に示したように、発色濃度3の画素および発色濃度4の画素は、いずれも、通電する通電時間単位が、総時間内において中間点を境界とする前半部分と後半部分とに均等に分散されている。これによって、画素ごとに発色位置を分散させ、画素ごとに発色濃度の平均化を図ることができる。そして、画素ごとに発色濃度の平均化を図ることにより、連続する画素どうしの発色濃度が異なる場合にも、当該連続する画素どうしの境界を目立ちにくくすることができる。
【0132】
このように、この実施の形態3のサーマルプリンタによれば、通電合計時間を0.5tの単位まで分割するとともに、通電をおこなう通電時間単位が、総時間における中間点を境界にした前半部分と後半部分とで対称に出現するように通電部102を制御することにより、1つの画素の記録にかかる総時間内において通電をおこなう通電時間単位を、中間点を境界にして前半部分と後半部分とに均等に分散することができる。これによって、画素ごとに発色位置を分散させ、画素ごとに発色濃度の平均化を図ることができる。
【0133】
(実施の形態4)
つぎに、この発明にかかる実施の形態4のサーマルプリンタについて説明する。実施の形態4においては、上述した実施の形態1、実施の形態2あるいは実施の形態3と同一部分については同一符号で示し、説明を省略する。
【0134】
図13は、この発明にかかる実施の形態4のサーマルプリンタの通電方法を示す説明図である。図13において、この発明にかかる実施の形態4のサーマルプリンタは、1つの画素を16階調(発色濃度0〜15のうちのいずれか)であらわす画素を記録する。
【0135】
この発明にかかる実施の形態4のサーマルプリンタにおいて1つの画素を16階調で記録する場合、通電制御部103は、総時間を3つの通電時間単位tと2つの通電時間単位2tと2つの通電時間単位4tとの各通電時間単位に分割するとともに、分割した各通電時間単位を4t→2t→t→t→t→2t→4tの順に配置する。そして、該当する通電時間単位において通電をおこなう。3つの通電時間単位tのうち真ん中の通電時間単位tは、総時間における中間点をまたいで配置される。
【0136】
(発色濃度0〜7の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が0〜7である場合は、上述の実施の形態3における図10において説明したように、1つの画素を8階調であらわす際と同様にしておこなう。
【0137】
(発色濃度8の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が8である場合、通電制御部103は、総時間における前半部分の通電合計時間および後半部分の通電合計時間とが、それぞれ4tとなるように通電部102を制御する。具体的には、2つの通電時間単位4tにおいて該当する発熱素子に対する通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0138】
(発色濃度9の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が9である場合、通電制御部103は、総時間における前半部分の通電合計時間および後半部分の通電合計時間とが、それぞれ4.5tとなるように通電部102を制御する。具体的には、総時間における中間点をまたいで配置される通電時間単位tと2つの通電時間単位4tとにおいて該当する発熱素子に対する通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0139】
(発色濃度10の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が10である場合、通電制御部103は、総時間における前半部分の通電合計時間および後半部分の通電合計時間とが、それぞれ5tとなるように通電部102を制御する。具体的には、総時間における中間点をまたいで配置される通電時間単位t以外の2つの通電時間tと2つの通電時間単位4tとにおいて該当する発熱素子に対する通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0140】
(発色濃度11の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が11である場合、通電制御部103は、総時間における前半部分の通電合計時間および後半部分の通電合計時間とが、それぞれ5.5tとなるように通電部102を制御する。具体的には、3つの通電時間単位tと2つの通電時間単位4tとにおいて該当する発熱素子に対する通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0141】
(発色濃度12の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が12である場合、通電制御部103は、総時間における前半部分の通電合計時間および後半部分の通電合計時間とが、それぞれ6tとなるように通電部102を制御する。具体的には、2つの通電時間単位2tと2つの通電時間単位4tとにおいて該当する発熱素子に対する通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0142】
(発色濃度13の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が13である場合、通電制御部103は、総時間における前半部分の通電合計時間および後半部分の通電合計時間とが、それぞれ6.5tとなるように通電部102を制御する。具体的には、総時間における中間点をまたいで配置される通電時間単位tと2つの通電時間単位2tと2つの通電時間単位4tとにおいて該当する発熱素子に対する通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0143】
(発色濃度14の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が14である場合、通電制御部103は、総時間における前半部分の通電合計時間および後半部分の通電合計時間とが、それぞれ7tとなるように通電部102を制御する。具体的には、総時間における中間点をまたいで配置される通電時間単位t以外のすべての通電時間単位t、2t、4tにおいて該当する発熱素子に対する通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0144】
(発色濃度15の場合)
たとえば、1つの画素を16階調であらわす際に、記録対象とする画素の発色濃度が15である場合、通電制御部103は、総時間における前半部分の通電合計時間および後半部分の通電合計時間とが、それぞれ7.5tとなるように通電部102を制御する。具体的には、すべての通電時間単位t、2t、4tにおいて該当する発熱素子に対する通電がおこなわれるように、通電部102を制御する。
【0145】
実施の形態4のサーマルプリンタにおいては、上記のように通電をおこなうことによって、1つの画素の記録にかかる総時間内において通電をおこなう通電時間単位が、中間点を境界にして前半部分と後半部分とに均等に分散される。これによって、発色濃度の平均化を、画素ごとに高精度におこなうことができる。そして、発色濃度の平均化を画素ごとに高精度におこなうことにより、連続する画素どうしの発色濃度が異なる場合にも、当該連続する画素どうしの境界をより目立ちにくくすることができる。
【0146】
図14および図15は、この発明にかかる実施の形態4のサーマルプリンタによって多階調記録をおこなった画素の発色状態を示す説明図である。図14および図15においては、16階調で記録される画素の発色状態を示している。図14においては、この実施の形態4のサーマルプリンタによって、連続する画素に対して発色濃度が1階調異なる3つの連続する画素を記録した状態を示している。図15においては、従来の記録方法で記録をおこなった場合に顕著な不具合が発生する発色濃度の配列順で連続する3つの画素を、この実施の形態4のサーマルプリンタによって記録した状態を示している。図14および図15における紙面左側の3桁の数字は、いずれも、連続する3つの画素(3つの画素を連続して記録する場合の各画素)のそれぞれの発色濃度の配列パターンを示している。
【0147】
図14および図15において、この実施の形態4のサーマルプリンタは、通電をおこなう通電時間単位を図13に示したように選択し、選択した通電時間単位において該当する発熱素子に対して通電をおこなうことによって、通電をおこなう通電時間単位を総時間内における前半部分と後半部分とに略均等に分散させることができる。これによって、画素ごとに発色濃度の平均化を図ることができる。
【0148】
画素ごとに発色濃度の平均化を図ることにより、重み付けをした通電をおこなう記録方法によって発色濃度が異なる画素を連続して記録する場合にも、連続する画素どうしの極端な階調変化を防止することができる。これによって、連続する画素どうしの発色濃度が異なる場合にも、当該連続する画素どうしの境界を目立ちにくくすることができる。
【0149】
図15に示したようなパターンで配列された画素の記録をおこなう場合、すなわち通電合計時間が8tとなる画素の記録をおこなう場合、8tを2分割で通電するために連続で通電する8tよりも記録された画素の濃度が薄くなる(薄く見える)が、物理的な印字位置の偏り(ドット間の隙間)を緩和しているため、連続する画素どうしの極端な階調変化を防止することができる。
【0150】
また、図15に示したようなパターンで配列された画素の記録をおこなう場合、すなわち通電合計時間が8tとなる画素の記録の後に通電合計時間が7tとなる画素の記録をおこなう場合、8tを2分割で通電するために連続で通電する8tよりも記録された画素の濃度が薄くなる(薄く見える)が、8tを2分割で通電することにより前の画素が履歴に与える影響を緩和することができ、つぎの画素を良好に記録することができる。
【0151】
そして、このように、連続する画素との発色濃度が異なる場合にも当該連続する画素との境界を目立ちにくくすることにより、明るさや色などが無段階的に変化する元画像の再現性の向上を図ることができる。
【0152】
なお、実施の形態4においては、所定時間を8tとし、長さが8t以上となる通電時間単位を2つの通電時間単位4tに分割し、総時間内における前半部分と後半部分とに略均等に分散させるようにしたが、これに限るものではない。さらに、通電時間単位4tをさらに分割し、分割された各通電時間単位2tを総時間内における前半部分と後半部分とに均等に分散させるようにしてもよい。
【0153】
(実施の形態5)
つぎに、この発明にかかる実施の形態5について説明する。この実施の形態5においては、上述した実施の形態1〜4と比較して、通電時間単位の分割方法が異なり、総時間を分割することによって得られる各通電時間単位を任意な時間とすることができる。そして、この実施の形態5においては、各通電時間単位を任意な時間とした場合にも、記録対象とする画素の濃度が高いほど発熱素子に対して通電をおこなう時間が長くなるように、通電時間に重みを付けた記録を実現する。
【0154】
外部情報処理装置110は、サーマルプリンタに対して、記録対象とする画素の階調を2進法(2のn乗)で表現した階調印字データを転送する。上述した実施の形態1〜4においては、この転送方法にしたがって、各通電時間単位を2進法(2のn乗)によってあらわされる長さとしていた。この場合、上述した実施の形態1〜4において説明したように、各画素の階調を2進法によって表現した場合のビットの位置を、通電位置(通電時間単位)に割り当てることが可能である。
【0155】
この発明にかかる実施の形態5のサーマルプリンタにおいては、各通電時間単位を2進法(2のn乗)によってあらわされる長さ以外の長さ(以下「2進法以外の長さ」という)とした場合にも、通電時間に重みを付けた記録方法によって各画素の多階調記録を実現する。
【0156】
具体的には、この発明にかかる実施の形態5のサーマルプリンタにおいて、最大の分割数をnmaxとし、総時間を任意な長さの複数の通電時間単位に分割した場合のそれぞれの通電時間単位をt[n]とするときに、以下の手順によって各通電時間単位に相当するレジスタTのビット数を算出する。
【0157】
図16は、この発明にかかる実施の形態5のサーマルプリンタにおける、レジスタTのビット数の算出手順を示すフローチャートである。図16のフローチャートにおいて、まず、変数LtにLを設定する(ステップS1601)。Lは、記録すべき画素に対応付けられた濃度を記録するために必要な通電合計時間(設定濃度通電時間)とすることができる。また、変数nにnmaxを設定する(ステップS1602)。
【0158】
つぎに、変数Ltから通電時間単位t[n]を差し引いた残りの値が0以上であるか否かを判断する(ステップS1603)。ステップS1603において、変数Ltから通電時間単位t[n]を差し引いた残りの値が0以上である場合(ステップS1603:Yes)は、レジスタTのnビットを1にする(ステップS1604)。さらに、変数Ltに、Lt−t[n]を設定する(ステップS1605)とともに、nにn−1を設定する(ステップS1606)。
【0159】
そして、レジスタTのnビットが1であるか否か(n=0であるか否か)を判断し(ステップS1607)、レジスタTのnビットが1(n=0)ではない場合(ステップS1607:No)は、ステップS1603へ戻る。一方、レジスタTのnビットが1(n=0)である場合(ステップS1607:Yes)、該当する発熱素子に対して通電時間単位t[n]の通電をおこなう(ステップS1608)。
【0160】
また、ステップS1603において、変数Ltから通電時間単位t[n]を差し引いた残りの値が0以上ではない場合(ステップS1603:No)は、レジスタTのnビットを0(T[n]=0)にして(ステップS1609)、ステップS1607へ移行する。
【0161】
このような処理をおこなうことにより、レジスタTのビット数を、総時間を複数の通電時間単位に分割することによる各分割位置に対応させて算出することができる。これによって、この実施の形態5のサーマルプリンタによれば、各通電時間単位を2進法以外の長さとした場合にも、通電時間に重みを付けた記録方法によって各画素の多階調記録をおこなうことができる。
【0162】
図16に示した処理においては、t[n]を、t[n]≧t[n−1]≧t[n−2]≧・・・≧t[1]とすることが好ましい。これによって、画素の階調を2進法(2のn乗)で表現した階調印字データのビット数を、任意の長さの通電時間単位に応じたレジスタTのビット数に効率よく変換することができる。また、t[n]を整数とし、当該t[n]を「(t[n−1]からt[1]の和)+1」とすることにより、レジスタTのビット数を連続的な通電によって表現することができる。
【0163】
図17は、この発明にかかる実施の形態5のサーマルプリンタによって多階調記録をおこなった画素の発色状態を示す説明図である。図17において、発色濃度6の画素の記録をおこなう場合、1番目および2番目の通電時間単位tと4番目の通電時間単位4tとにおいて、該当する発熱素子に対する通電がおこなわれる。これにより、発色濃度6の画素の記録に際しては、該当する発熱素子に対する通電が、3回に分けておこなわれる。
【0164】
この場合、該当する発熱素子に対して通電がおこなわれる通電時間単位以外の通電時間単位、すなわち該当する発熱素子に対する通電がおこなわれない通電時間単位(以下「休止時間」という)は、3番目の通電時間単位3tおよび5番目の通電時間単位9tとされる。
【0165】
(実施の形態6)
つぎに、この発明にかかる実施の形態6のサーマルプリンタについて説明する。実施の形態6においては、上述した各実施の形態1〜5と同一部分については同一符号で示し、説明を省略する。
【0166】
外部情報処理装置110が、サーマルプリンタに対して、記録対象とする画素の階調を2進法(2のn乗)で表現した階調印字データを転送することによって、当該階調印字データの転送回数を減らすことができるが、この転送方法の場合、通電時間単位の組み合わせによっては記録結果において濃度が連続的に変化しない部分が生じることがあった。
【0167】
図18および図19は、従来の多階調記録方法による画素の発色状態を示す説明図である。図18および図19においては、従来の多階調記録方法の具体的例として、たとえば16階調の階調印字データを4ビットで転送する場合に、各発色濃度に応じた通電方法によって記録をおこなった画素の発色状態を示している。具体的に、図18においては、従来の多階調記録方法によって発色濃度7の画素を記録した状態を示している。また、具体的に、図19においては、従来の多階調記録方法によって発色濃度8の画素を記録した状態を示している。
【0168】
図18に示すように、発色濃度が7の画素の記録に際しては3回に分けて通電をおこなっていた。これに対し、たとえば16階調の階調印字データを4ビットで転送する場合であって、発色濃度が8の画素の記録に際しては、図19に示すように、1回の通電によって記録をおこなっていた。
【0169】
より具体的には、このような記録方法の場合、たとえば、図18に示す発色濃度7の画素の記録においては各通電時間単位どうしの間に通電が休止される時間があり、通電が休止される時間においては発色していない部分が生じる。そして、1つの画素の記録に際して、途中で通電が休止される時間が出現し、1つの画素の記録中に非発色部分が存在している場合、所望する濃度よりも、記録された画素の実際の濃度の方が薄くなる(薄く見える)傾向にあった。
【0170】
一方、たとえば、図19に示す発色濃度8の画素の記録においては、1つの画素の記録にかかる通電合計時間をなす各通電時間単位の途中に非発色部分が存在しない。すなわち、発色濃度8の画素の記録においては、1つの画素の記録中に非発色部分が存在しないため、発色濃度7の画素に対して1の濃度差しかないにもかかわらず、発色濃度7の画素よりも格段に濃い(濃く見える)傾向にあった。
【0171】
このように、従来の記録方法においては、発色濃度が7の画素と発色濃度が8の画素とを連続して記録する場合に、連続する画素間に極端な階調変化部分が発生し、濃度が異なる複数の画素が連続している場合には当該連続する画素どうしの境界が目立つ傾向にあり、記録画像の連続性が損なわれてしまうことがあった。
【0172】
これに対し、この実施の形態6のサーマルプリンタにおいては、濃度が異なる複数の画素が連続している場合に、連続した濃度に対して分割数が極端に変化しないような設定で分割通電をおこなうことにより、当該連続する画素どうしの境界における濃淡差を低減し、当該連続する画素間における階調変化に対する連続性の付与を実現する。
【0173】
具体的には、この発明にかかる実施の形態6のサーマルプリンタにおいて、通電時間単位を2進法(2のn乗)ではなく、「隣り合う通電時間単位の和+1」の時間に設定する。この場合、n分割目の通電時間単位をt[n]とする場合、t[n]=t[n−1]+1であらわされる。ただし、この場合、1分割目の通電時間単位t[1]および2分割目の通電時間単位t[2]を、t[1]=t[2]とする。
【0174】
図20および図21は、この発明にかかる実施の形態6のサーマルプリンタによって多階調記録をおこなった画素の発色状態を示す説明図である。図20においては、この発明にかかる実施の形態6の多階調記録方法によって発色濃度7の画素を記録した状態を示している。図21においては、この発明にかかる実施の形態6の多階調記録方法によって発色濃度8の画素を記録した状態を示している。
【0175】
図20において、この発明にかかる実施の形態6の多階調記録方法によって発色濃度7の画素の記録をおこなう場合、1番目および2番目の通電時間単位tと4番目の通電時間単位5tとにおいて、該当する発熱素子に対する通電がおこなわれる。これにより、発色濃度7の画素の記録に際しては、該当する発熱素子に対する通電が、3回に分けておこなわれる。
【0176】
この場合、該当する発熱素子に対して通電がおこなわれる通電時間単位以外の通電時間単位、すなわち該当する発熱素子に対する通電がおこなわれない通電時間単位(以下「休止時間」という)は、3番目の通電時間単位3tおよび5番目の通電時間単位9tとされる。
【0177】
また、図21において、この発明にかかる実施の形態6の多階調記録方法によって発色濃度8の画素の記録をおこなう場合、3番目の通電時間単位3tと4番目通電時間単位5tとにおいて、該当する発熱素子に対する通電がおこなわれる。これにより、発色濃度8の画素の記録に際しては、該当する発熱素子に対する通電が、2回に分けておこなわれる。この場合、休止時間は、1番目および2番目の通電時間単位tおよび5番目の通電時間単位9tとされる。
【0178】
また、具体的には、この発明にかかる実施の形態6の多階調記録方法によって、たとえば発色濃度9の画素の記録をおこなう場合は、4番目の通電時間単位4t、5番目の通電時間単位5tにおいて該当する発熱素子に対する通電が2回おこなわれる。この場合の休止時間は、1番目および2番目の通電時間単位t、3番目の通電時間単位3tとされる。
【0179】
また、具体的には、この発明にかかる実施の形態6の多階調記録方法によって、たとえば発色濃度10の画素の記録をおこなう場合は、2番目(あるいは1番目)の通電時間単位t、4番目の通電時間単位4t、5番目の通電時間単位5tにおいて該当する発熱素子に対する通電が3回に分けておこなわれる。この場合の休止時間は、1番目(あるいは2番目)の通電時間単位tおよび3番目の通電時間単位3tとされる。
【0180】
このように、この実施の形態6のサーマルプリンタによれば、発色濃度が連続的に変化する場合に、この発色濃度の連続的な変化に対して、休止時間の変化量が連続的となる。これによって、連続する画素どうしの境界における濃淡差を低減することができる。そして、これによって、当該連続する画素間における階調変化の連続性を付与することができる。
【0181】
図22および図23は、多階調記録をおこなうサーマルプリンタにおける通電時間の分割方法の変形例を示す説明図である。図22および図23においては、総時間を、3進法(3のn乗)によってあらわされる通電時間単位によって分割した例を示している。図22および図23において、多階調記録をおこなうサーマルプリンタにおいては、通電時間単位を2進法(2のn乗)ではなく3進法(3のn乗)によってあらわし、3進法(3のn乗)によってあらわされる通電時間単位によって総時間を分割してもよい。この場合、1分割目の通電時間単位t[1]および2分割目の通電時間単位t[2]は、t[1]=t[2]とする。
【0182】
図22および図23に示したような方法によって多階調記録をおこなう場合であって、具体的には、図22に示すように、たとえば発色濃度7の画素の記録をおこなう場合は、2番目(あるいは1番目)の通電時間単位t、3番目および4番目の通電時間単位3tにおいて、該当する発熱素子に対する通電をおこなう。この場合、該当する発熱素子に対する通電は、3回に分けておこなわれる。
【0183】
なお、図22に示した方法によって発色濃度7となる画素の記録をおこなう場合、2番目あるいは1番目)の通電時間単位t、3番目および4番目の通電時間単位3tにおいて、該当する発熱素子に対する通電をおこなうようにしてもよい。この場合も、該当する発熱素子に対する通電は、3回に分けておこなわれる。
【0184】
また、具体的には、図23に示すように、たとえば発色濃度8となる画素の記録をおこなう場合は、1番目および2番目の通電時間単位t、3番目および4番目の通電時間単位3tにおいて、該当する発熱素子に対する通電をおこなう。この場合、該当する発熱素子に対する通電は、4回に分けておこなわれる。
【0185】
また、図22および図23に示した多階調記録方法によって、具体的には、たとえば発色濃度9の画素の記録をおこなう場合は、5番目の通電時間単位9tにおいて該当する発熱素子に対する通電が1回おこなわれる。この場合の休止時間は、1番目および2番目の通電時間単位t、3番目および4番目の通電時間単位3tとされる。
【0186】
また、図22および図23に示した多階調記録方法によって、具体的には、たとえば発色濃度10の画素の記録をおこなう場合は、2番目(あるいは1番目)の通電時間単位tおよび5番目の通電時間単位9tにおいて該当する発熱素子に対する通電が2回に分けておこなわれる。この場合の休止時間は、1番目(あるいは2番目)の通電時間単位t、3番目および4番目の通電時間単位3tとされる。
【0187】
なお、図22および図23に示した方法によって多階調記録をおこなう場合、発色濃度によっては、休止時間の変化量の連続性が損なわれる場合がある。具体的には、たとえば発色濃度8の画素の記録に際しては4回に分けて通電がおこなわれるのに対し、発色濃度9の画素の記録に際しては5番目の通電時間単位9tにおいて1回のみの通電がおこなわれる。
【0188】
このような状況が発生することを含めても、上記のような方法によって多階調記録をおこなうことによって、発色濃度が連続的に変化する場合に、この発色濃度の連続的な変化に対して、休止時間の変化量を連続的とすることができる。これによって、連続する画素どうしの境界における濃淡差を低減することができる。そして、これによって、当該連続する画素間における階調変化の連続性を付与することができる。
【0189】
通電時間単位の分割方法は、たとえば外部情報処理装置110から転送される階調印字データの形式によって適宜変更できるようにしてもよい。また、通電時間単位の分割方法は、たとえば記録結果に要求される画質と記録にかかる時間とに基づいて、適宜変更できるようにしてもよい。
【0190】
具体的には、たとえば記録結果に要求される画質の高さを確保する方が、記録にかかる時間を短縮することよりも優先される場合は、通電時間単位を細かく分割し、通電がおこなわれる通電時間単位が中間点を間にして前半部分と後半部分とで均等に出現するような記録をおこなう。
【0191】
また、具体的には、たとえば記録にかかる時間を短縮することの方が、記録結果に要求される画質の高さを確保することよりも優先される場合は、外部情報処理装置110から転送される階調印字データの形式にあわせて、従来の方法によって記録をおこなうようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0192】
以上のように、この発明にかかるサーマルプリント機構、サーマルプリンタおよびサーマルプリント方法は、発熱素子に対する通電をおこない当該発熱素子を昇温させることによって記録媒体に対する記録をおこなうサーマルプリント機構、当該サーマルプリント機構を備えたサーマルプリンタ、および、発熱素子に対する通電をおこない当該発熱素子を昇温させることによって記録媒体に対する記録をおこなうサーマルプリント方法に有用であり、特に、多階調記録をおこなうサーマルプリント機構、サーマルプリンタおよびサーマルプリント方法に適している。
【符号の説明】
【0193】
100 サーマルプリンタ
101 ヘッド部
102 通電部
103 通電制御部
104 発色濃度算出部
105 合計時間算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱素子を備えたヘッド部と、
前記発熱素子に対する通電をおこなう通電部と、
1つの画素の記録にかかる総時間内において、記録対象とする画素の記録媒体における発色濃度が高いほど長くなるように当該発色濃度に応じて設定される通電合計時間の間、前記発熱素子に対して通電がおこなわれるように前記通電部を制御する通電制御部と、
を備え、
前記通電制御部は、
前記総時間を任意の長さの複数の通電時間単位に分割するとともに分割された複数の通電時間単位のうち長さが所定時間以上となる通電時間単位をさらに2分割し、
分割された各通電時間単位のうち通電をおこなう通電時間単位の合計が前記通電合計時間と一致するように前記通電をおこなう通電時間単位を特定し、
特定された前記通電をおこなう通電時間単位と通電をおこなわない通電時間単位とが前記総時間における中間点を境界にした前半部分と後半部分とで略対称に出現するように、前記通電部を制御することを特徴とするサーマルプリント機構。
【請求項2】
前記通電制御部は、前記総時間における通電開始位置と当該通電開始位置からの通電時間とによって特定される通電パターンのうち、前記総時間における前半部分の通電パターンと前記総時間における後半部分の通電パターンとが前記総時間における中間点を境界にして対称となるように、前記通電部を制御することを特徴とする請求項1に記載のサーマルプリント機構。
【請求項3】
前記記録対象とする画素に割り当てられた濃度に関する情報と前記発熱素子に対する通電履歴に関する情報とに基づいて前記発色濃度を算出する発色濃度算出部と、
前記発色濃度算出部によって算出された発色濃度に基づいて前記通電合計時間を算出する合計時間算出部と、
を備え、
前記通電制御部は、前記合計時間算出部によって算出された通電合計時間に基づいて前記通電部を制御することを特徴とする請求項1または2に記載のサーマルプリント機構。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載のサーマルプリント機構と、
前記サーマルプリント機構が備えたヘッド部における発熱素子に対向配置されたプラテンと、
前記ヘッド部と前記プラテンとの間に案内された記録媒体を所定方向に搬送する搬送機構と、
を備えたことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項5】
発熱素子を備えたヘッド部と、前記発熱素子に対する通電をおこなう通電部と、1つの画素の記録にかかる総時間内において、記録対象とする画素の記録媒体における発色濃度が高いほど長くなるように当該発色濃度に応じて設定される通電時間の間、前記発熱素子に対して通電がおこなわれるように前記通電部を制御する通電制御部と、を備えたサーマルプリント機構のサーマルプリント方法であって、
前記通電制御部において、
前記総時間を任意の長さの複数の通電時間単位に分割するとともに分割された複数の通電時間単位のうち長さが所定時間以上となる通電時間単位をさらに2分割し、
分割された各通電時間単位のうち通電をおこなう通電時間単位の合計が前記通電合計時間と一致するように前記通電をおこなう通電時間単位を特定し、
特定された前記通電をおこなう通電時間単位と通電をおこなわない通電時間単位とが前記総時間における中間点を境界にした前半部分と後半部分とで略対称に出現するように、前記通電部を制御することを特徴とするサーマルプリント方法。
【請求項6】
前記通電制御部において、前記総時間における通電開始位置と当該通電開始位置からの通電時間とによって特定される通電パターンのうち、前記総時間における前半部分の通電パターンと前記総時間における後半部分の通電パターンとが前記総時間における中間点を境界にして対称となるように、前記通電部を制御することを特徴とする請求項5に記載のサーマルプリント方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−79195(P2011−79195A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232590(P2009−232590)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【出願人】(507351883)シチズン・システムズ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】