説明

サーマルヘッドの保持機構

【目的】 サーマルヘッド押圧方向および受像搬送方向にある程度の自由度を持たせて保持し、位置決め板を用いてヘッドとプラテンの相対位置を規制することにより、ヘッドとプラテンの平行度、位置決め精度、押圧力均一性等を向上する。
【構成】 サーマルヘッド1は基準穴10を介してヘッド取付フレーム2に固定され、位置決め板16は位置決めピン14を介してヘッド取付フレーム2に取着する。このヘッド取付フレーム2はポリアセタールなど潤滑性のある材料で成型した受座13を介し、ヒンジピン3で支持する。受座13にはヒンジピン3が上下左右方向に一定範囲に動ける長穴6を穿設してある。さらに、位置決め板16とベアリング15を確実に当接させるため、予圧ばね9によりプリロードをかける。以上の構成により、ヘッドとプラテンの平行度、位置決め精度、押圧力の均一性の向上が図れる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複写機、ファクシミリ、ワードプロセッサ、プリンタ等の特にサーマルヘッドとプラテンローラとを含む熱転写型画像出力装置におけるサーマルヘッドの保持機構に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、サーマルヘッドの保持機構は図2に示すように、サーマルヘッド1の背面に設けられている基準穴10と嵌合するボス(図示せず)を持つヘッド取付フレーム2に対し、サーマルヘッド1の発熱抵抗体の配置ラインがプラテンローラ4の軸線に一致するようにU溝位置決め部7を設計する。このヘッド取付フレーム2には長穴部6が設けてあり、左右方向へ若干自由度を持たせてあり、同時にヒンジピン3の回りに回動可能であり、ヘッドのリトラクションができるようになっている。
【0003】さらに、発熱抵抗体とプラテン4との位置を確実なものとするため、予圧ばね9により、U溝位置決め部7の内側面11がプラテン軸8に隙間なく当接する機構を兼ね備えたものもある。例えば、特公昭63−7157号公報、特公平3−35111号公報、特開平2−295757号公報、特開平3−57674号公報、特開平3−75175号公報、実開昭58−86360号公報、実開昭62−175925号公報、実開昭63−194730号公報、実開平1−30239号公報、実開平1−175826号公報にこのような構造が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながらこの方式の保持機構には次のような課題があった。
■プラテンローラ4の軸心と二つのヒンジピン3の軸心が平行でない場合、サーマルヘッド1はプラテンローラ4に対して傾いて保持されることになり、ヘッドの長手方向の押圧力分布を均一にすることができず、濃度ムラやカスレが発生し印字品質を低下させてしまう。
■ヘッド取付フレーム2の長穴部6の端面とヒンジピン3との摺動抵抗が大きい場合、U溝位置決め部7の内側面11とプラテン軸との当接が再現性よくなされず、位置決め機構が確実に動作しなくなる。
【0005】そこで、本発明は以上のような点に着目してなされたもので、サーマルヘッドの位置決め機構と、サーマルヘッドとプラテンの平行ずれを吸収する機構とを合わせ持ち、印字中の振動や衝撃等によってプラテンやヘッドに位置ずれが生じても、常にヘッドとプラテンの相対的な位置関係を維持し得るサーマルヘッドの保持機構を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで上記課題を解決するために、本発明においてはサーマルヘッドを固定するためのヘッド取付フレームと、プラテンローラの回転支持軸の回りにプラテンローラと独立して回転でき、かつプラテンローラの両軸端に軸着したベアリングと、ベアリングの外輪に接触し、その接触面とサーマルヘッドの発熱抵抗体の配置ラインとの垂直距離がベアリングの中心から接触面までの距離に等しくなるように形状を規制され、かつその基準面が平行になるようにヘッド取付フレームの両端に取着したヘッド位置決め板と、プラテンローラと略平行に熱転写型画像出力装置の外枠フレームに取り付けられた二つのヒンジピンとを設け、ヒンジピンの外径の1.2〜1.5倍程度の寸法の幅で長手方向の寸法がヒンジピンの外径の1.5〜2倍程度の長穴が穿設されたポリアセタールなど潤滑性のある材料で成型された受座をヘッド取付フレームの後部両端に止着し、受座の長穴内にヒンジピンを貫通させて外枠フレームに固定し、さらに位置決め板をベアリングに当接させるために、ヘッド取付フレームと外枠フレームとの間にばねを係止する構成とした。
【0007】
【作用】上記のような構成にすれば、ヘッド取付フレームは上下左右方向に一定範囲で遊動自在に保持され、印字の際は左右方向は位置決め板が常にベアリングに当接されているため、発熱抵抗体の配置ラインとプラテンとの相対位置は一定に保たれる。
【0008】さらに、上下方向はプラテンによって規制され、ヘッドのプラテンに対する押圧力の均一性が確保される。したがって、ヘッドの位置決め機構とヘッドプラテン平行支持機構とを兼ね備えることとなる。
【0009】
【実施例】以下に本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施例を示す側面図、図3は本発明の一実施例を示す正面図である。この図1において、ヘッド取付フレーム2には、サーマルヘッド1の背面に設けられた基準穴10に嵌合するボス(図示せず)と、位置決め板16の取付位置を規制する位置決めピン14が相互の位置関係を厳しく規制して突設されている。そして、サーマルヘッド1は基準穴10を介して、ネジ締結などでヘッド取付フレーム2の底面に固定され、また、ヘッド取付フレーム2の両側面には位置決め板16を位置決めピン14を介して止着し、さらに位置決め板16の位置決め基準面12はベアリング15に当接している。このベアリング15は図3に示すように、プラテンローラ4の両端に軸着されている。
【0010】又、ヘッド取付フレームの後端両側面に長穴部6を穿設した受座13が止着されている。この受座13はポリアセタール、含油ポリアセタールなど摺動性に優れた樹脂を用い成型されたものである。特にその長穴部の寸法は図4に示すように、ヒンジピン3の直径dに対し、幅1.2〜1.5d、長さ1.5〜2dとし、上下左右方向にガタをもたせてある。さらに、ヘッド取付フレーム2には予圧ばね9により印字方向に予圧がかけられているため、位置決め板16の位置決め基準面12とベアリング15とが常に当接する方向にばね力が作用する。
【0011】以上のように構成すれば、予圧ばね9のばね力とサーマルヘッド1とインクシート(図示せず)の摩擦力の作用により、印字中は位置決め板16はベアリング15の外輪に常に当接しているため、位置決め板16とベアリング15との接触面である位置決め基準面12から発熱抵抗体の配置ラインまでの垂直距離は常に一定となるので、例えば出荷時またはヘッド交換時にはもとより、装置駆動源の振動などによって、プラテンローラ4が水平方向にずれても、位置決め板16と一体となってサーマルヘッド1を追随移動させるために、サーマルヘッド1とプラテンローラ4の法線位置上にサーマルヘッド1の印字位置を一致させることができ、これにより、装置の動作時に振動等が生じても、サーマルヘッド1とプラテン4とを適切な位置関係を保持して印字動作させることができる。
【0012】又、プラテンローラ4の軸心17とヒンジピン3の中心線18,19との距離L1,2 は図4に示すように穴位置公差や取付公差などの影響によって、誤差ε(≠0)をもつが、受座13とヒンジピン3とのガタ0.2d〜0.5dをこのεより大きくとってあれば、図3のようにサーマルヘッド1はプラテン4に平行な状態をとることが可能であり、その結果、サーマルヘッド1とプラテンローラ4との間に均一な押圧力が無調整で得られることになる。
【0013】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、サーマルヘッドとプラテンとの相対位置を調整する必要はなく、装置の振動等によってサーマルヘッドおよびプラテンなどに位置ずれが生じてもサーマルヘッドの印字位置とプラテンを常に適切な位置関係を保持して印字することができるという効果がある。
【0014】また、構成部品の加工精度や取付精度が多少悪くても、自動調心的にサーマルヘッドとプラテンローラとを平行に維持し、押圧力の分布を均一にし、高品質な印字を長期にわたって可能とするという効果も合わせもつ。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による一実施例を示す側面図である。
【図2】従来の一実施例を示す側面図である。
【図3】本発明による一実施例を示す正面図である。
【図4】本発明による受座の寸法図である。
【符号の説明】
1 サーマルヘッド
2 ヘッド取付フレーム
3 ヒンジピン
4 プラテン
9 予圧ばね
10 基準穴
12 位置決め基準面
13 受座
15 ベアリング
16 位置決め板

【特許請求の範囲】
【請求項1】 サーマルヘッドとプラテンローラとを含む熱転写型画像出力装置において、サーマルヘッドを固定するためのヘッド取付フレームと、プラテンローラの回転支持軸の回りに前記プラテンローラと独立して回転可能な前記プラテンローラの両軸端に軸着したベアリングと、前記ベアリングの外輪に接触し、その接触面と前記サーマルヘッドの発熱抵抗体の配置ラインとの垂直距離が、前記ベアリングの中心から前記接触面までの距離に等しくなるように形状を規制され、かつその基準面が平行になるように、前記ヘッド取付フレームの両端に取着したヘッド位置決め板とを有することを特徴とするサーマルヘッドの保持機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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