説明

シガレット

【課題】パフ回数を有意に変動させることなくタバコ主流煙中の一酸化炭素量を一層低減し得るシガレットを提供する。
【解決手段】アルカリ金属塩を2〜5重量%の割合で配合したタバコ刻みを含むタバコロッドを備えることを特徴とするシガレット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シガレットに係り、特に、タバコ主流煙中の一酸化炭素量が低減されたシガレットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シガレットには種々の要求がなされている。その1つに、シガレットの主流煙中の一酸化炭素(CO)量を低減させることがある。
【0003】
シガレットの主流煙中のCO量を低減するために、従来多くの提案がなされている。例えば、特許文献1は、フマル酸、クエン酸等の有機カルボン酸のナトリウムまたはカリウム塩をタバコ刻みに6.5〜20%添加することにより、主流煙中のCO量を低減させることを開示している。また、特許文献2は、特定の無機充填材をタバコに配合することにより、主流煙中の有害成分を低減させることを開示している。
【0004】
しかしながら、タバコ主流煙中のCO量を低減するために種々のCO低減添加剤をタバコ刻みに配合したとき、得られるシガレットのパフ回数が、CO低減添加剤無添加の場合に比べて、有意に変動すると、パフ回数を所定の値にするための別の工夫が必要となる。
【特許文献1】米国特許第4,489,739号明細書
【特許文献2】米国特許第4,033,359号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、パフ回数を有意に変動させることなくタバコ主流煙中の一酸化炭素量を一層低減し得るシガレットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、タバコ刻みに、タバコ刻みの重量の2〜5%の割合でアルカリ金属塩を配合すると、主流煙中のCO量が有意に低減するばかりか、無添加の刻みを用いたシガレットに比べてパフ回数がほとんど変わらないことを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明によれば、アルカリ金属塩を2〜5重量%の割合で配合したタバコ刻みを含むタバコロッドを備えることを特徴とするシガレットが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明のシガレットは、主流煙中のCO量が有意に低減するばかりでなく、アルカリ金属塩無添加の場合に比べて、ほとんど同じパフ回数を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0010】
本発明のシガレットは、アルカリ金属塩を所定量配合したタバコ刻みを含むタバコロッドを備える。タバコ刻みは、通常のシガレットに使用されているものであれば、特に制限なく使用することができる。例えば、黄色種タバコ刻み、バーレー種タバコ刻み、ブレンド刻み等を用いることができる。
【0011】
タバコ刻みに配合されるアルカリ金属塩には、無機アルカリ金属塩および有機アルカリ金属塩が含まれる。無機アルカリ金属塩の例を挙げると、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム等である。有機アルカリ金属塩の例を挙げると、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸リチウム等である。本発明において、アルカリ金属塩は、リチウム塩であることが好ましい。特に、リンゴ酸リチウムは、香喫味点で、より好ましい。
【0012】
アルカリ金属塩は、タバコ刻みの重量を基準として、2〜5%の量で配合される。アルカリ金属塩の配合量がこの範囲を逸脱すると、CO低減効果が十分に発揮されず、および/または、そのタバコ刻みを用いて作製したシガレットのパフ回数が、アルカリ金属塩無添加のタバコ刻みを用いて作製したシガレットのパフ回数に対し、有意に変化する。アルカリ金属塩をタバコ刻み重量の2〜5%の割合で添加することにより、得られるシガレットの主流煙中のCO量を低減することができるばかりでなく、アルカリ金属塩無添加のタバコ刻みを用いて作製したシガレットのパフ回数とほぼ同じパフ回数を達成しえるのである。すなわち、本発明のシガレットは、次式で算出されるパフ回数の変化率が±3%の範囲内にあり得る。
【0013】
パフ回数の変化率(%)={[(アルカリ金属塩添加時のパフ回数)−(アルカリ金属塩無添加時のパフ回数)]÷(アルカリ金属塩無添加時のパフ回数)}×100。
【0014】
したがって、本発明のシガレットに対し、パフ回数を調整するための別の手段を採用する必要がない。
【0015】
本発明のシガレットは、アルカリ金属塩を配合したタバコ刻みを用いること以外は通常のタバコ刻みを用いる通常のシガレットと同様に製造することができる。すなわち、アルカリ金属塩を添加したタバコ刻みを通常のタバコ巻紙で巻き上げてタバコロッドを作製することができる。このタバコロッドの一端には、常法に従って、例えばベンチレーション孔を形成したチップペーパーを用いてフィルターを取り付けることもできる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はそれらの実施例により限定されるものではない。
【0017】
例1〜例14
黄色種刻みに、表1に示す各種添加剤を表1に示す割合で配合し、得られたタバコ刻みをISO基準に従い、室温(22℃)、相対湿度60%の条件下で48時間以上調和した。
【0018】
調和したタバコ刻みを巻紙で手巻きしてタバコロッドを得た。タバコ刻みは、アルカリ金属塩添加前のタバコ刻み重量が700mgとなるように計り取った。
【0019】
得られたタバコロッドの先端に、ベンチレーション孔を有するチップペーパーを用いて繊維トウフィルターを装着した後、フィルターから繊維トウを取り除いた。さらに、チップペーパーのベンチレーション孔を粘着テープで閉塞した。こうしてシガレット試料を作製した。なお、1種の添加剤毎に10本のシガレット試料を作製した。
【0020】
これらシガレット試料について以下の手法によりシガレット試料1本当たりの主流煙中のCO量、パフ回数およびタール量を測定した。
【0021】
<CO量およびパフ回数の測定>
CO量の測定には、FILTRONA社製の8本掛けリニア型喫煙器(SM342)を用いてタバコ煙を捕集した。シガレットの燃焼は、ISO基準に基づき、35mL/2秒の吸引を60秒間隔で行い、ガラス繊維フィルターを通過した煙をガスバッグに捕集した。シガレット試料は、基準の燃焼長(シガレットの着火端から51mm(巻紙とチップペーペーの境界から先端側8mm))に達した時点で吸引を停止した。ここまでのパフ回数を記録した。燃焼後、シガレット中に残存するガスを捕集するため、火種を切除した後、3回の空パフを行った。このようにして、シガレット試料のガスをガスバッグに捕集し、全流量物質(TPM)をガラス繊維フィルターに捕集した。
【0022】
捕集したガスバッグを用い、FILTRONA社製のCO測定装置により、シガレット試料1本当たりのCO量を測定した。
【0023】
<タール量の測定>
CO量測定の際、ガラス繊維フィルターに捕集された粒子成分から粗タール量を秤量した後、フィルターを血清瓶に入れ、2−プロパノール(和光純薬社製GCグレード)10mLとともに20分間激しく振盪した。抽出液をバイアル瓶にろ過・注入した。これをガスクロマトグラフに掛け、水およびニコチン量を測定した。定量は内部標準法で行い、粗タール量から水およびニコチン量を差し引いた値をタール量とした。
【表1】

【0024】
表1に示す結果からわかるように、アルカリ金属塩をタバコ刻みの重量の2〜5%に相当する量でタバコ刻みに添加したシガレットは、1本当たりの主流煙中のCO量が有意に低減するとともに、パフ回数の変化率は±3%の範囲内にある。これに対し、本発明の範囲外のシガレット(比較例)は、主流煙中のCO量の有意の低減と有意に低いパフ回数の変化率とを同時に達成し得ない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属塩を2〜5重量%の割合で配合したタバコ刻みを含むタバコロッドを備えることを特徴とするシガレット。
【請求項2】
アルカリ金属塩が、有機アルカリ金属塩および無機アルカリ金属塩からなる群の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のシガレット。
【請求項3】
アルカリ金属塩が、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびクエン酸リチウムリチウム塩からなる群の中から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載のシガレット。
【請求項4】
アルカリ金属塩が、リチウム塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシガレット。
【請求項5】
アルカリ金属塩を添加しないタバコ刻みを用いたシガレットのパフ回数に対し、パフ回数の変化率が±3%の範囲内にある請求項1〜4のいずれか1項に記載のシガレット。

【公開番号】特開2006−187260(P2006−187260A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−2748(P2005−2748)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000004569)日本たばこ産業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】