説明

シクロデキストリン複合体としての相乗的な殺虫組成物の製剤

本発明は、シクロデキストリンを基礎とした新規の殺虫製剤を提供する。本発明において、活性物質(殺虫作用及び/又は虫成長調節剤)と、この活性物質と相乗的な化合物とは、シクロデキストリンで同時に複合化される。本発明による製剤は、固形又は固形/油状組成物であって、水又は水和溶媒の水系混合物中で溶解又は完全にエマルジョン化される。本発明による製剤の活性は、シクロデキストリンと分離してそれぞれ複合化された上記の2つの活性成分の混合物よりも、同容量で増大した。本発明による製剤の調製方法、及び獣医学的な使用又は屋内害虫を消失させるための農業における殺虫剤としての使用についても、本発明のさらなる態様である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺虫組成物に係り、特に、害虫の無毒化機構を阻害する物質と混和された殺虫剤に関する。この新規の組成物において、殺虫剤及び相乗的な物質の効果は、シクロデキストリンと同時に複合化することにより、さらに促進される。
【背景技術】
【0002】
殺虫活性に対する耐性及び抵抗性の問題は、特に重要で、且つ重要性が増しており、農業、獣医学及び家内衛生において、その制御及び虫の根絶がより困難となっている。多くの虫は、毒物に対して、本来備わる防衛機構や、免疫及び酵素系を強化しており、これらが接触すると、これらを破壊するため、新規の殺虫剤又は害虫成長阻害剤の投与量を増加し或いはこれらの薬剤を連続して使用する必要が生じ、結果として、生態系全体やヒトへと至る食物連鎖に対するリスクや障害が増大し、コスト的にも不利となる。
【0003】
ピペロニルブトキサイド(PBO)やそのアナログなどの物質を使用して、殺虫剤と相乗的に組み合わせて、無毒化や殺虫剤耐性機構に包含される特定の代謝酵素の活性を阻害し、従って、in vitroでの有効性を促進し得ることは、非特許文献1などで知られており、in vivoでの使用についても、示唆されている。
【0004】
相乗的な活性を良好に示すため、特に、虫が種々の時間及び殺虫の処置の前においてこの相乗的な製品の処置に対して最も耐性を示し、或いは繰り返し殺虫剤での処理が提案されている場合に、この相乗的な化合物での前処理は、殺虫剤の連続的な曝露により既に感受的となっている虫に行う場合に、特に有用であり、従って、より効果的である。しかしながら、分離して投与することは、2つの成分の単一の適用に比較して、それほど実用的でなく、且つ経済的にも望ましいものではない。
【0005】
また、シクロデキストリン(CD)中に殺虫剤と害虫成長調節剤とを有する製剤は、既に文献及び特許文献に述べられている(非特許文献2、特許文献1参照。)。斯かる包接化合物の使用には多くの原理的な理由が存在し、これらには、殺虫剤の物理化学的特性の改善、安定性の増加、並びに低い溶解性及び低い吸収性を有する殺虫剤の湿潤性及びバイオアベーラビリティーの増大などが挙げられる。
【0006】
α、β及びγシクロデキストリンは、天然、又は半合成の環状多糖類であって、一般的に非毒性で、生物分解性を有する;β−CD、並びにそのヒドロキシプロピル体(HP−β−CD)やスルフォブチルエーテル(SBE−β−CD)などのいくつかの誘導体は、適用上、特に好ましい。
【0007】
特許文献1は、CDと複合化した殺虫剤の活性が、複合化していない殺虫剤よりも良好であることを開示する。しかしながら、相乗的な化合物を同時に含有する製剤については、述べていない。PBOは、CDとの複合体として調製されているが(特許文献2参照)、複合化していないPBOの殺虫活性の相乗性としては、より効果的であることを示す;しかしながら、この場合、複合化されていない殺虫剤とPBO/CDとの混合物についての検討は行われているものの、単独の製剤については、行われていない。
【特許文献1】米国特許第3,846,551号明細書
【特許文献2】米国特許第4,524,068号明細書
【非特許文献1】Gunningら著、”Piperonyl Butoxide”、Academic Press、1998年、p.215−225
【非特許文献2】L.Szenteら著、”Cyclodextrins in Pesticides”、Comprehensive Supramolecular Chemistry、Elsevier、1996年、p.503−514
【非特許文献3】Gunning R.Vら著、J.Econ.Entomol.、1984年、77巻、p.1283−1287
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における問題を克服し、単一の処置による市販で公知の殺虫剤又は害虫成長調節剤の特性を有意に向上させることを提案する。
【0009】
また、本発明のさらなる態様は、ユーザーに対する毒性が低く或いはほとんど毒性を示さない上記の製剤についての経済的で工業的な規模での調製方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、シクロデキストリンとの複合体として同時に存在することを特徴とする新規の製剤に関するものであって、
(i)殺虫活性を有する成分及び/又は害虫成長調節活性を有する成分である活性本体と;
(ii)活性本体の活性を相乗的に促進し得る成分と;
を有する。
【0011】
本発明は、この製剤の調製方法、並びに農業、獣医学的適用、及び家内害虫の駆除への使用に関する。この製剤は、殺虫剤及び相乗的な化合物を共にCDに複合化することで得られる。
【0012】
本発明による製剤は、虫が同様の活性物質による殺虫活性又は成長調節に対して耐性及び抵抗性を有する場合にも効果的であって、分離してシクロデキストリンと複合化されたような混合物に使用される同様の活性成分により示される致死率よりも、殺虫剤及び同様の投与量で、実質的に高い致死率を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において、種々のシクロデキストリン類を使用し得る。シクロデキストリンの例としては、α、β又はγシクロデキストリンが挙げられ、或いは、適宜、これらのシクロデキストリンの親水性又は疎水性を増加させるように誘導体化されたものも挙げられる。特に好ましいのは、β−CD及びγ−CDであり、コスト的に、HP−β−CD、β−CDがより好ましい。本発明において使用され得る殺虫剤としては、その構造中に少なくとも1つの芳香性炭素環又はヘテロ環を有するものが好ましい。特に好ましいのは、アレスリン(Allethrin)、バイオアレスリン(Bioallethrin)、テトラメスリン(Tetramethrin)、パラレスリン(Prallethrin)、シペルメスリン類(Cypermethrins(α−シペルメスリン、β−シペルメスリン、ξ−シペルメスリンなど))、エスビオスリン(Esbiothrin)、ペルメスリン(Permethrin)、フェンプロパスリン(Fenpropathrin)、トランスフルスリン(Transfluthrin)、ビフェンスリン(Bifenthrin)、レスメスリン(Resmethrin)、バイオレスメスリン(Bioresmethrin)、フェンバレレート(Fenvalerate)、エスフェンバレレート(Esfenvalerate)、テトラメスリン(Tetramethrin)、イミプロスリン(Imiprothrin)、フェノスリン(Phenothrin)、β−シフルスリン(Cyfluthrin)、デルタメスリン(Deltamethrin)、シハロスリン(Cyhalothrin)、エトフェンプロックス(Etofenprox)、及びシラフルオフェン(Silafluofen)並びにこれらのエナンチオマー体及び/又はジアステレオマーの混合物等が挙げられる。シペルメスリン、フェンバレレート、デルタメスリン及びβシフルスリン並びにこれらのエナンチオマー及び/又はジアステレオマー混合物が最も好ましい。
【0014】
シクロデキストリンに対するこれらの殺虫剤の量は、5〜40%(重量/重量比)が好ましく、10〜25%がより好ましい。
【0015】
適当な害虫成長調節剤としては、例えば、ブレビオキシム(Brevioxime)、ブプロフェジン(Buprofezin)、ケトコナゾール(Ketoconazole)、テフルベンズロン(Teflubenzuron)が挙げられる。
【0016】
シクロデキストリンに対する害虫成長調節剤の量は、0.01〜5%(重量/重量比)が好ましく、0.5〜3%がより好ましい。
【0017】
活性本体の活性を相乗的に促進し得る成分(以下、単に「相乗化合物」と称する。)は、それ自体公知であって、既に使用されている。斯かる製品は、例えばエステラーゼやオキシダーゼなどの虫無毒化酵素の阻害剤である。相乗化合物の好ましい例としては、ピペロニルブトキサイド(piperonylbutoxide)及びセサモール(sesamol)である。ピペロニルブトキサイドは、特に好ましい。
【0018】
相乗化合物は、それ自体、又は添加物と既に製剤化されているものとして使用されてもよい。この前もって製剤化されているものの例としては、PB80EC−NFが知られている;これは、88%のPBOと、12%の乳化剤(SOITEMとして公知のドデシルベンゼンスルフォネート)とを含む。
【0019】
シクロデキストリンに相対した相乗化合物の量は、10〜100%(重量/重量比)が好ましく、25〜95%がより好ましい;これらの比率は、純相乗化合物の量に対するものであって、上述の前もって製剤化されたものに含まれ得る添加物を除いている。
【0020】
相乗化合物に相対した殺虫剤の量は、5〜50%(重量/重量比)が好ましく、10〜30%がより好ましい。
【0021】
乳化剤、UV安定化剤、抗酸化剤、及び殺虫活性に特に影響しないが特定の適用に有用であるその他の添加物は、上述の製剤に含まれてもよい。
【0022】
シクロデキストリンに相対した上述の添加剤の量は、0〜30%(重量/重量比)が好ましく、5〜15%がより好ましい。これらの比率は、使用されている活性本体の前もって製剤化されたものに既に含まれるものを含む存在する全ての添加剤に対するものである。
【0023】
使用してもよい乳化剤としては、例えば、上述のドデシルベンゼンスルフォネート、リグノスルフォネート、リン脂質及びポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0024】
使用してもよいUV安定化剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシ−ベンゾフェノン及びセバシン酸4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0025】
使用してもよい抗酸化剤としては、2,6−ジタートブチル−1−ヒドロキシ−トルエンが挙げられる。
【0026】
本発明による組成物は、固形又は固形/油状の組成物として好ましく製剤化される;斯かる製剤は、水又は炭素数1〜4のアルコールなどの水和性溶媒の水系溶液中に前もって溶解又は乳化されたものとして使用されてもよい;この水系溶液は、重量比で、1〜99%、好ましくは、5〜60%の水和性溶媒を有する。
【0027】
上述の製剤の調製方法は、上述の相乗化合物と、殺虫剤及び/又は害虫成長調節剤とを、シクロデキストリンに同時に複合化することを特徴とする。
【0028】
特に、本発明による方法は、以下のステップを有する。つまり:
(a)適当な溶媒中に、相乗化合物と、殺虫剤及び/又は害虫成長調節剤とを有する溶液又は懸濁液を調製するステップであって、この溶媒は、好ましくは、例えばエタノールや2−プロパノールなどである、ステップと;
(b)水、又は水と水和性有機溶媒との混合物中でシクロデキストリンの溶液を調製するステップであって、このCDの溶解は、加熱(例えば、70〜90℃で30〜90分保持する)により常套的に促進されてもよい、ステップと;
(c)ステップ(a)で得た溶液/懸濁液を、ステップ(b)で得た溶液に添加するステップであって、ステップ(a)の溶液/懸濁液を、例えば、2〜10時間(より好ましくは4〜8時間)かけて、20〜90℃(より好ましくは30〜70℃)で緩徐に好ましく添加する、ステップと;
を有する。
【0029】
活性成分の添加の後、複合化反応は、20〜90℃(好ましくは30〜70℃)で、上述の混合物を攪拌しつつ、12〜36時間(好ましくは18〜24時間)で完了する。
【0030】
相乗化合物と、殺虫剤及び/又は害虫成長調節剤とを有する最終的なCD複合体は、濾過、乾燥又は凍結乾燥などの公知の方法により、上述の反応混合物から回収される。
【0031】
本発明の更なる態様は、上述の製剤を、農業、獣医学的な使用、又は家内害虫を駆除するための殺虫剤として使用することである。殺虫剤及び/又は害虫成長調節剤と、相乗化合物とを、シクロデキストリンで複合化することにより、2つの成分を個々に複合化した混合物と比較して、この組成物の有効性が有意に増加するという驚くべき結果が得られた。本発明により、殺虫剤と相乗化合物との間の相互作用が促進され;本発明者らによる行った比較検討において、この促進効果は、常に50%で以上であり、従って、この効果は、実質的な比率によるものである。
【0032】
上述の活性の促進により、いくつかの工業的に有意な利点を発揮する:例えば、同量の活性物質を使用することにより、より高い活性を有する相乗的な組成物が得られ得る;或いは、公知の組成物と同様の効果を有する殺虫組成物は、より少ない活性物質の量の使用で得られる;より少ない量の活性物質の使用により、製造コストが低減され、製造工程に由来する環境面での影響が低減されるとともに、最終的な組成物において容量/重量が低減され、農薬の空中散布者に対する実用上の利点がさらに向上される。
【0033】
従って、本発明により、公知の製剤よりも低コストで、より効果的な殺虫性を有する製剤が予期せず得られた。
【実施例】
【0034】
(例1)
<本発明による製剤の調製方法及び安定化の測定>
βCD(2g)を有する蒸留水(20mL)を、冷却器及び窒素の導入路を備えた2口フラスコに80℃で導入する。この溶液を、攪拌下、80℃で1時間保持する。その後、上述の相乗化合物と、殺虫剤及び/又は害虫成長調節剤とを、必要な比率で有する96%エタノール溶液(25mL)を、65℃で6時間かけて添加する。この混合物を、攪拌下、70℃で21時間、さらに載置し、その後、その混合物を、攪拌下で室温にまで冷却し、最終的に4時間かけて、デカンテーションを行う。これに含まれる固形分を、濾過して除き、吸引下でこの溶液を乾固する。
【0035】
上述の方法により、以下の製品が調製された:
βCD−フェンバレレートと、PBO(*)との包接化合物(白色の水溶性固形物)
βCD−シペルメスリンと、PBO(*)との包接化合物(白色の水溶性固形物)
(*):このPBOは、88%のPBOと、12%のSOITEMとを有するPB80EC−NFとして市販の組成物を出発物質として使用された。
【0036】
この包接化合物は、23℃で、少なくとも30日間、固形相において安定であった。
【0037】
(例2)
<フェンバレレートに基づく製剤の調製>
例1のように制御して、1.9gのβCDと、0.35gのフェンバレレートと、1.6gのPB80EC−NFとから、製剤を調製した。
【0038】
(例3)
<シペルメスリンに基づく製剤の調製>
例1のように制御して、1.9gのβCDと、0.35gのαシペルメスリンと、1.6gのPB80EC−NFとから、製剤を調製した。
【0039】
(例4)
<致死アッセイ>
非特許文献3の報告に従った致死アッセイにおいて、シペルメスリンに対して、致死量(LD50)の少なくとも7000倍以上の耐性を示すワタアブラムシ(cotton aphid)を使用した。このLD50よりも少ない濃度の活性本体として例3で調製した製剤を使用すると、この虫は、完全に死に至った。なお、同量のシペルメスリンを有する従来の製剤、又はこれと同等量を有するシペルメスリンと、別にカプセル化されたPBOとを有する混合物では、致死率は、常に50%未満、或いは皆無であった。
【0040】
(例5)
<シペルメスリンに基づく製剤の調製>
βCD(50g)を有する75℃の蒸留水(630mL)を、冷却器及び窒素の導入路を備えた2口フラスコに導入した。この溶液を、攪拌下、75℃で1時間保持した。その後、PBO/SOITEM(98/2、13.4g)と、αシペルメスリン(5.4g)とを有する2−プロパノール(790mL)の溶液を、70〜75℃で6時間かけて添加した。この混合物を、攪拌下、75℃で18時間、さらに載置し、その後、その混合物を、攪拌下で90分かけて室温にまで冷却し、最終的にさらに3時間載置した。この溶液を、吸引下で乾固し、乾燥残渣として、シペルメスリンに基づく製剤を得た。
【0041】
8.6%の水と、2%の2−プロパノールを有する斯かる乾燥残渣において、PBO/シペルメスリン比は、GC−FID分析及びH−NMR(DMSO−d6)分析により、2.7〜3であり、βCDの量(重量/重量比)は、約72%であった(H−NMR(DMSO−d6)分析)。
【0042】
(例6)
<ビフェンスリンに基づく製剤の調製>
βCD(2g)を有する75℃の蒸留水(20mL)を、冷却器及び窒素の導入路を備えた2口フラスコに導入した。この溶液を、攪拌下、75℃で1時間保持した。その後、PBO/SOITEM(98/2、0.52g)と、ビフェンスリン(0.22g)とを有する2−プロパノール(25mL)の溶液を、75℃で6時間かけて添加した。この混合物を、攪拌下、75℃で18時間、さらに載置し、その後、その混合物を、攪拌下で2時間かけて室温にまで冷却し、最終的にさらに3時間載置した。この溶液を、吸引下で乾固し、乾燥残渣として、ビフェンスリンに基づく製剤を得た。
【0043】
(例7)
<シフルスリンに基づく製剤の調製>
2gのβCDと、0.53gのPBO/SOITEM(98/2)と、0.22gのβシフルスリンとから出発して、例6に従い製剤を調製した。
【0044】
(例8)
<シハロスリンに基づく製剤の調製>
5gのβCDと、1.33gのPBO/SOITEM(98/2)と、0.58gのλシハロスリンとから出発して、例6に従い製剤を調製した。
【0045】
(例9)
<デルタメスリンに基づく製剤の調製>
5gのβCDと、1.33gのPBO/SOITEM(98/2)と、0.65gのデルタメスリンとから出発して、例6に従い製剤を調製した。
【0046】
(例10)
<フェンバレレートに基づく製剤の調製>
5gのβCDと、1.33gのPBO/SOITEM(98/2)と、0.54gのフェンバレレートとから出発して、例6に従い製剤を調製した。
【0047】
得た乾燥残渣において、PBO/フェンバレレート比は、H−NMR(DMSO−d6)分析により、約4.2であり、βCDの量(重量/重量比)は、約76%であった(H−NMR(DMSO−d6)分析)。
【0048】
(例11)
<シペルメスリンに基づく製剤の調製>
βCD(2g)を有する75℃の蒸留水(20mL)を、冷却器及び窒素の導入路を備えた2口フラスコに導入した。この溶液を、攪拌下、75℃で1時間保持した。その後、PBO/SOITEM(96/4、0.93g)と、αシペルメスリン(0.36g)とを有する2−プロパノール(25mL)の溶液を、70〜75℃で6時間かけて添加した。この混合物を、攪拌下、75℃で18時間、さらに載置し、その後、その混合物を、攪拌下で2時間かけて室温にまで冷却し、最終的にさらに3時間載置した。得た混合物の油相を除去し、重相されていた溶液を、吸引下で乾固し、乾燥残渣として、シペルメスリンに基づく製剤を得た。
【0049】
(例12)
<シペルメスリンに基づく製剤の調製>
βCD(1g)を有する75℃の蒸留水(20mL)を、冷却器及び窒素の導入路を備えた2口フラスコに導入した。この溶液を、攪拌下、75℃で1時間保持した。その後、この溶液を50℃に冷却し、さらに、この温度で、PBO/SOITEM(98/2、0.26g)と、αシペルメスリン(0.11g)とを有する2−プロパノール(25mL)の溶液を、6時間かけて添加した。この混合物を、攪拌下、50℃で18時間、さらに載置し、その後、その混合物を、攪拌下で2時間かけて室温にまで冷却し、最終的にさらに3時間載置した。この固形分(4%)を濾過で除き、包接複合体を有するその溶液を、吸引下で乾固し、乾燥残渣として、シペルメスリンに基づく製剤を得た。
【0050】
斯かる乾燥残渣において、PBO/シペルメスリン比は、H−NMR(DMSO−d6)分析により、約4/1であり、βCDの量(重量/重量比)は、約73%であった(H−NMR(DMSO−d6)分析)。
【0051】
(例13)
<ケトコナゾールに基づく製剤の調製>
2gのβCDと、0.53gのPBO/SOITEM(98/2)と、0.06gのケトコナゾールとから出発して、例6に従い製剤を調製した。
【0052】
(例14)
<シペルメスリンに基づく製剤の調製>
βCD(1g)を有する75℃の蒸留水(20mL)を、冷却器及び窒素の導入路を備えた2口フラスコに導入した。この溶液を、攪拌下、75℃で1時間保持した。その後、この溶液を、50℃に冷却し、その後、この温度で、PBO/SOITEM(98/2、0.26g)と、αシペルメスリン(0.11g)とを有する2−プロパノール(50mL)の溶液を、6時間かけて添加した。この混合物を、攪拌下、50℃でさらに90分保持し、その後、その混合物を、攪拌下で90分かけて室温にまで冷却し、最終的にさらに1時間載置した。これから分離した溶液を、吸引下で乾固し、乾燥残渣として、シペルメスリンに基づく製剤を得た。
【0053】
(例15)
<ピレスラム(Pyrethrum)抽出物に基づく製剤の調製>
βCD(2g)を有する75℃の蒸留水(20mL)を、冷却器及び窒素の導入路を備えた2口フラスコに導入する。この溶液を、攪拌下、75℃で1時間保持する。その後、PBO/SOITEM(98/2、0.53g)と、25w/w%のピレスラム抽出物とを有する2−プロパノール(25mL)の溶液を、70〜75℃で6時間かけて添加した。この混合物を、攪拌下、75℃で18時間、さらに載置し、その後、その混合物を、攪拌下で2時間かけて室温にまで冷却し、最終的にさらに3時間載置した。得た混合物の固形分を、濾過して除き、重相されていた溶液を、吸引下で乾固し、乾燥残渣として、ピレスラム抽出物に基づく製剤を得た。
【0054】
(例16)
<シペルメスリンに基づく製剤の調製>
βCD(5g)を有する75℃の蒸留水(50mL)を、冷却器及び窒素の導入路を備えた2口フラスコに導入する。この溶液を、攪拌下、80℃で1時間保持する。その後、PBO/SOITEM(98/2、2.24g)と、αシペルメスリン(0.91g)とを有する2−プロパノール(63mL)の溶液を、75℃で6時間かけて添加した。この混合物を、攪拌下、75℃で18時間、さらに載置し、その後、その混合物を、攪拌下で2時間かけて室温にまで冷却し、最終的にさらに3時間載置した。得た混合物の油相を、濾過して除き、重相されていた溶液を、吸引下で乾固し、乾燥残渣として、シペルメスリンに基づく製剤を得た。
【0055】
斯かる乾燥残渣において、PBO/シペルメスリン比は、H−NMR(DMSO−d6)分析により、約11であり、βCDの量(重量/重量比)は、約75%であった(H−NMR(DMSO−d6)分析)。
【0056】
(例17)
<シペルメスリンに基づく製剤の調製>
βCD(50g)を有する75℃の蒸留水(500mL)を、冷却器及び窒素の導入路を備えた2口フラスコに導入した。この溶液を、攪拌下、75℃で1時間保持した。その後、PB80EC−NF(42.7g)と、αシペルメスリン(9.15g)とを有する96%エタノール(625mL)の溶液を、70〜75℃で6時間かけて添加した。この混合物を、攪拌下、70℃で18時間、さらに載置し、その後、その混合物を、攪拌下で2時間かけて室温にまで冷却し、最終的にさらに3時間載置した。得た混合物の油相を除去し、重相されていた溶液を、吸引下で乾固し、乾燥残渣として、シペルメスリンに基づく製剤を得た。
【0057】
斯かる乾燥残渣において、PBO/シペルメスリン比は、H−NMR(DMSO−d6)分析により、約2.8であり、βCDの量(重量/重量比)は、約60%であった(H−NMR(DMSO−d6)分析)。
【0058】
(例18)
<致死アッセイ>
タバココナジラミ(Bemisia Tabaci)株(B型の生物型を有するもの)に関して、例4に述べた方法に従い、10mLのAgral90に溶解した例16で調製した製剤を用い、致死アッセイを行った。結果を表1に示す。10mLのAgral90に溶解したαシペルメスリンと、参照としてプラセボ(10mLのAgral90)とで得たデータを示す。全ての試験において、濃度は、活性本体の量として示す。
【0059】
【表1】

【0060】
(例19)
<致死アッセイ>
ワタアブラムシ(Aphis Gossypii)株に関して、例4に述べた方法に従い、10mLのAgral90に溶解した例10で調製した製剤を用い、致死アッセイを行った。結果を表2に示す。10mLのAgral90に溶解したフェンバレレートと、参照としてプラセボ(10mLのAgral90)とで得たデータを示す。全ての試験において、濃度は、活性本体の量として示す。
【0061】
【表2】

【0062】
(例20)
<致死アッセイ>
オオタバコガ(Cotton Bollworm)(Heicoverpa Armigera)株に関して、例4に述べた方法に従い、10mLのAgral90に溶解した例17で調製した製剤を用い、致死アッセイを行った。結果を表3に示す。10mLのAgral90に溶解したαシペルメスリンと、参照として10mLのAgral90に溶解したαシペルメスリン/PBOの混合物(PBO含量は、αシペルメスリンに対して、0.2%である)とで得たデータを示す。全ての試験において、濃度は、活性本体の量として示す。
【0063】
【表3】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)殺虫活性を有する成分及び/又は害虫成長調節活性を有する成分である活性本体と;
(ii)該活性本体の活性を相乗的に促進し得る成分と;
を有する殺虫組成物であって、
成分(i)と、成分(ii)とは、シクロデキストリンで共に複合化されていることを特徴とする殺虫組成物。
【請求項2】
前記シクロデキストリンは、αシクロデキストリン、βシクロデキストリン及びγシクロデキストリン並びにこれらの誘導体から選択されることを特徴とする請求項1に記載の殺虫組成物。
【請求項3】
前記の殺虫活性を有する成分は、ピレスロイド類に属する物質であることを特徴とする請求項1又は2に記載の殺虫組成物。
【請求項4】
前記の殺虫活性を有する成分の、前記シクロデキストリンに対する量は、5〜40%(重量/重量比)であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の殺虫組成物。
【請求項5】
前記の害虫成長調節活性を有する成分の、前記シクロデキストリンに対する量は、0.01〜5%(重量/重量比)であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の殺虫組成物。
【請求項6】
前記の活性本体の活性を相乗的に促進し得る成分は、ピペロニルブトキシド及びセサモールから選択されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の殺虫組成物。
【請求項7】
前記の相乗的に促進し得る成分の、前記シクロデキストリンに対する量は、10〜100%(重量/重量比)であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の殺虫組成物。
【請求項8】
前記の殺虫活性を有する成分の、前記の相乗的に促進し得る成分に対する量は、5〜50%(重量/重量比)であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の殺虫組成物。
【請求項9】
乳化剤、UV安定化剤、抗酸化剤及びその他の添加剤を、0〜30%(重量/重量比)で有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の殺虫組成物。
【請求項10】
固形、若しくは固形/油状組成物での使用に製剤化された請求項1乃至9のいずれか一項に記載の殺虫組成物であって、
水、又は水和性溶媒の水系溶液に溶解又は乳化し得ることを特徴とする殺虫組成物。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の殺虫組成物の調製方法であって、
前記の相乗的に促進し得る成分と、前記の殺虫活性を有する成分及び/又は前記の害虫成長調節活性を有する成分とを、シクロデキストリンに同時に複合化することを特徴とする調製方法。
【請求項12】
(a)適当な溶媒中に、前記の相乗的に促進し得る成分と、前記の前記の殺虫活性を有する成分及び/若しくは前記の害虫成長調節活性を有する成分とを有する溶液又は懸濁液を調製するステップと;
(b)水、又は水と水和性有機溶媒との水系混合物中で、シクロデキストリンの溶液を調製するステップと;
(c)ステップ(a)で得た溶液/懸濁液を、ステップ(b)で得た溶液に添加するステップと;
を有することを特徴とする請求項11に記載の調製方法。
【請求項13】
(i)殺虫活性を有する成分及び/又は害虫成長調節活性を有する成分からなる活性本体と;
(ii)該活性本体の活性を相乗的に促進し得る成分と;
を有する殺虫組成物であって、
成分(i)と、成分(ii)とを、シクロデキストリンで同時に複合化して得られることを特徴とする殺虫組成物。
【請求項14】
農業における殺虫剤、又は家内害虫の駆除への、請求項1乃至11及び13のいずれか一項に記載の殺虫組成物の使用。
【請求項15】
殺虫剤として使用する獣医学的製剤の調製への、請求項1乃至11及び13のいずれか一項に記載の殺虫組成物の使用。

【公表番号】特表2007−509853(P2007−509853A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536100(P2006−536100)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052665
【国際公開番号】WO2005/039287
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(500182839)エンデュラ ソシエタ ペル アチオニ (1)
【氏名又は名称原語表記】ENDURA S.P.A.
【Fターム(参考)】