説明

シナリオ構築装置

【構成】 シナリオ構築装置12は、特定の業務を共同して行う複数の作業者の行動を示すシナリオを構築するものであり、たとえば、当該業務における事故が発生するに至った過程を示すシナリオを構築する。発話データ取得手段は、複数の作業者のそれぞれから発話内容を含む発話データを取得する。発話データ取得手段によって取得された発話データは、当該発話データを取得した時刻と作業者とに関連付けて、発話データ記憶手段に記憶される。発話データ抽出手段は、発話データ記憶手段に蓄積されている発話データから、事故に関連する発話データを抽出する。リスト表示手段は、抽出された発話データを時系列に従って作業者ごとに区分けしたリストを視覚化して表示する。シナリオ構築手段は、リスト表示手段によって表示されたリストに基づいて、事故が発生するに至った過程を示すシナリオを構築し、シナリオ表示手段は、そのシナリオを視覚化して表示する。
【効果】 複数の作業者が関与する事故の原因を導き出すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シナリオ構築装置に関し、特にたとえば、特定の業務を共同して行う複数の作業者の行動を示すシナリオを構築する、シナリオ構築装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人は、特許文献1において、警告システムを提案している。たとえば、特許文献1では、看護業務の正しい行動手順がシナリオとしてデータベースに予め記録されており、看護業務を遂行する看護師の行動を検出して、その行動とシナリオとから当該看護業務の目的を得ることができるか否かを判断する。そして、看護業務の目標を得られないことが判断されたときに、シナリオ違反のアラームを看護師に与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−34738号[G08B 21/02]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、データベースに記録されたいずれのシナリオにも該当しない看護業務を検出した場合には、その看護業務を遂行する看護師の一連の行動が新しいシナリオとしてデータベースに登録される。しかしながら、このシナリオは、あくまで看護業務における看護師の個人の行動手順を示すものである。このため、看護業務を途中で交替する際の引継ぎが不十分であったりする場合に、医療事故(看護業務の事故)が発生することもあり得るが、特許文献1の技術では、複数の看護師が関与する事故の原因を導き出すことはできない。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、シナリオ構築装置を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、複数の作業者が関与する事故の原因を導き出すことのできる、シナリオ構築装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0008】
第1の発明は、特定の業務を共同して行う複数の作業者の行動を示すシナリオを構築するシナリオ構築装置であって、複数の作業者のそれぞれから発話内容を含む発話データを取得する発話データ取得手段、発話データ取得手段によって取得された発話データを、当該発話データを取得した時刻と作業者とに関連付けて記憶する発話データ記憶手段、ユーザによって入力された検索条件に基づいて発話データ記憶手段を検索して、当該検索条件に該当する発話データを抽出する発話データ抽出手段、抽出手段によって抽出された発話データを時系列に従って作業者ごとに区分けしたリストを視覚化して表示するリスト表示手段、リスト表示手段によって表示されたリストに基づいて、シナリオを構築するシナリオ構築手段、およびシナリオ構築手段によって構築されたシナリオを視覚化して表示するシナリオ表示手段を備える、シナリオ構築装置である。
【0009】
第1の発明では、シナリオ構築装置(12)は、特定の業務を共同して行う複数の作業者の行動を示すシナリオを構築するものであり、たとえば、当該業務の事故が発生するに至った過程を示すシナリオを構築するために用いられる。発話データ取得手段(12,20,96)は、複数の作業者のそれぞれから発話内容を含む発話データを取得する。発話データ取得手段によって取得された発話データは、当該発話データを取得した時刻と作業者とに関連付けて、発話データ記憶手段(30)に記憶される。たとえば、検索条件入力画面(300)では、ユーザによって、事故に関連する発話データを抽出するための検索条件が設定され、発話データ抽出手段(12,610,S5,S15)は、発話データ記憶手段に蓄積されている発話データから、検索条件に該当する発話データを抽出する。リスト表示手段(12,22,612,616,S7,S17)は、抽出された発話データを時系列に従って作業者ごとに区分けしたリストを視覚化して、たとえば、リスト表示画面(200)の表示領域(202)に表示する。シナリオ構築手段(12,614,S25)は、リスト表示手段によって表示されたリストに基づいて、事故が発生するに至った過程を示すシナリオを構築し、シナリオ表示手段(12,22,616,S27)は、そのシナリオをたとえばシナリオ表示画面(500)の表示領域(502)に表示する。
【0010】
第1の発明によれば、事故に関連する発話データを時系列に従って看護師ごとに区分けしリスト化することで、ユーザに対して複数の作業者の行動を分かり易く提示できる。したがって、複数の作業者が関与する事故が発生するに至った過程を示すシナリオを構築して、その事故の原因を導き出すことができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、シナリオ構築手段によって構築されたシナリオを記憶するシナリオ記憶手段をさらに備える。
【0012】
第2の発明では、シナリオ構築手段(12,614,S25)によって構築されたシナリオは、シナリオ記憶手段(38)に記憶される。
【0013】
第3の発明は、第1または2の発明に従属し、発話データ抽出手段は、所定の時間範囲内に取得された発話データを発話データ記憶手段から抽出する第1抽出手段、および所定のキーワードが含まれる発話データを第1抽出手段によって抽出された発話データから抽出する第2抽出手段を含み、リスト表示手段は、第1抽出手段によって抽出された発話データを時系列に従って作業者ごとに区分けしたリストを視覚化して表示する第1リスト表示手段、および第2抽出手段によって抽出された発話データを時系列に従って作業者ごとに区分けしたリストを視覚化して表示する第2リスト表示手段を含む。
【0014】
第3の発明では、第1抽出手段(12,610,S5)は、発話データ記憶手段(30)に蓄積されている発話データから、所定の時間範囲内に取得された発話データを抽出し、第1リスト表示手段(12,22,612,616,S7)は、第1抽出手段によって抽出された発話データを時系列に従って作業者ごとに区分けしたリストを視覚化して、たとえばリスト表示画面(200)の表示領域(202)に表示する。たとえば、ユーザは、第1リスト表示手段によって表示されたリストを参照することによって、看護業務の事故に関連する所定のキーワードを取得することとなり、第2抽出手段(12,610,S15)は、第1抽出手段によって抽出された発話データから、この所定のキーワードが含まれる発話データを抽出する。そして、第2リスト表示手段(12,22,612,616,S17)は、第2抽出手段によって抽出された発話データを時系列に従って作業者ごとに区分けしたリストを視覚化して、たとえばリスト表示画面(200)の表示領域(202)に表示する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、事故に関連する発話データを時系列に従って看護師ごとに区分けしリスト化することで、ユーザに対して複数の作業者の行動を分かり易く提示できるため、複数の作業者が関与する事故が発生するに至った過程を示すシナリオを構築して、その事故の原因を導き出すことができる。
【0016】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1はこの発明のシナリオ構築装置としてのサーバを含む警告システムの構成の一例を示す図解図である。
【図2】図2は図1に示すサーバの電気的な構成を示す図解図である。
【図3】図3は図1に示す看護師用端末の電気的な構成を示す図解図である。
【図4】図4は図1に示す通過センサの設置状況を説明するための図解図である。
【図5】図5は看護師用端末、中継器、および送信機を看護師に装着した様子を示す図解図である。
【図6】図6は図1に示す通過センサの電気的な構成を示す図解図である。
【図7】図7は図1に示す中継器の電気的な構成を示す図解図である。
【図8】図8はシナリオ構築装置で表示されるリスト表示画面の一例を示す図解図である。
【図9】図9はシナリオ構築装置で表示される検索条件入力画面の一例を示す図解図である。
【図10】図10はシナリオ構築装置で表示されるリスト編集画面の一例を示す図解図である。
【図11】図11はシナリオ構築装置で表示されるシナリオ表示画面の一例を示す図解図である。
【図12】図12は図2に示すサーバのメモリマップの一例を示す図解図である。
【図13】図13はシナリオ構築装置のシナリオ構築処理の一部を示すフロー図である。
【図14】図14はシナリオ構築装置のシナリオ構築処理の他の一部であって、図13に後続するフロー図である。
【図15】図15はシナリオ構築装置のシナリオ構築処理のさらに他の一部であって、図14に後続するフロー図である。
【図16】図16は図13の検索条件に該当する発話データの抽出処理の一例を示すフロー図である。
【図17】図17は図15の追加検索条件に該当する発話データの抽出処理の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照して、この発明の一実施例である警告システム10は、たとえば病院に適用され、少なくとも、警告装置およびシナリオ構築装置として機能するサーバ12を含む。このサーバ12は、有線或いは無線による通信回線(ネットワーク)14を介して複数の看護師用端末(以下、単に「端末」という。)16、複数の通過センサ18および複数の中継器20に接続される。端末16は、PDAやPHSのような携帯型の端末であり、看護師毎に割り当てられる。通過センサ18は、赤外線を受光する受光装置であり、入院患者を収容する病棟内の廊下や診察室、手術室、トイレ、階段室、病室および看護師詰所などの各部屋の出入り口などに配置される。中継器20は、PDAや携帯型のコンピュータのような携帯型の装置であり、看護師毎に割り当てられる。
【0019】
図2はサーバ12の具体的な構成を示すブロック図であり、サーバ12には、図1では省略したが、液晶ディスプレイまたはCRT等の表示装置22、マウスおよびキーボード等の入力装置24ならびにモニタ装置26が接続される。
【0020】
モニタ装置26は、たとえば、複数の対物センサ、複数の集音マイク(音センサ)および複数のビデオカメラ(イメージセンサ)などのセンサを含む。図示は省略するが、この実施例では、複数の対物センサは、体温計、血圧計、注射器、点滴注射器(注入器)、血液採取用試験管、検尿コップなどの器具(医療機器など)を格納してある格納箱(格納庫)の取り出し部分(出入り口)、格納箱(格納庫)の鍵やナースコール端末などに設置され、それらの器具等についての使用(取り出し)の有無を検知する。ただし、これらの器具等に、電子タグ情報(RF−ID)やバーコードのような識別情報を付加しておき、タグ情報やバーコードを読み取ることにより、その使用の有無を検出するようにしてもよい。複数の集音マイクは、入院患者を収容する病棟内の廊下および病室(ベッド或いはその近傍)などに設置され、周囲音を集音する。さらに、複数のビデオカメラは、集音マイクと同様に、入院患者を収容する病棟内の廊下および病室(ベッド或いはその近傍)などに設置されるとともに、看護師詰所などにも設置され、主として、看護業務を行う看護師(の行動)を撮影する。
【0021】
また、図2に示すように、サーバ12には、6つのデータベース(DB)が接続される。具体的には、環境情報DB28、発話DB30、用語DB32、キーワードDB34、モニタDB36およびシナリオDB38がサーバ12に接続される。
【0022】
環境情報DB28には、この警告システム10が適用される病院の環境についての情報が記憶される。具体的には、環境情報DB28には、病院内で働く看護師の識別情報(後述する、看護師ID)に対応する看護師名を記述したテーブルデータが記憶されており、後で詳細に説明するように、サーバ12は、環境情報DB28を参照して、看護師IDのラベルが付されている音声データから看護師または看護師名を特定する。また、環境情報DB28には、所定の看護業務に対応付けて、その看護業務を行う場所が記憶されている。
【0023】
発話DB30には、看護士の発話内容を示すデータ(発話データ)が時系列的に蓄積される。後で詳細に説明するように、サーバ12は、その内部のメモリ12aの音声認識用辞書データ634(図12参照)を用いて、看護師が装着している中継器20から送信された音声データを音声認識し、その認識結果を発話DB30に記憶する。たとえば、発話データは、音声データから特定した看護師と音声データを取得したときの時刻とに関連付けて、発話DB30に記憶される。サーバ12は、環境情報DB28を参照することによって、音声データから看護師(発話者)を特定する。また、サーバ12は、その内部の時計回路12cから日付および時間を検出し、音声データを取得したときの時刻を、音声データに付加する。
【0024】
用語DB32には、看護業務に関連する用語を記述した用語辞書が記憶される。各用語には、カテゴリを示すタグが付されており、この実施例では、「看護師名」、「患者名」、「業務分類」、「事故の内容」、「場所」、「薬品名」、「医療機器」などのタグが各用語に付される。一例を挙げると、引き継ぎ、輸血、点滴注射、注射、投薬、問診、検温、CT、検圧、退院指導などの用語には、「業務分類」のタグが付される。また、過剰投与、混注ミス、薬剤混同、患者取り違えなどの用語には、「事故の内容」のタグが付される。病室、トイレ、浴室、洗濯室、廊下、階段室、診察室、手術室、レントゲン室などの用語には、「場所」のタグが付される。
【0025】
キーワードDB34には、検索のために用いる所定の関連キーワードが記憶されており、後で詳細に説明するように、サーバ12は、キーワードDB34を参照して、発話データに関連キーワードが含まれているか否かを判断する。なお、関連キーワードとは、看護業務の事故に直接的に関係するキーワードではないが、「引継ぎ」などのように、時間的に前後する発話データとの関連性を示唆するキーワードである。
【0026】
モニタDB36は、上述した通過センサ18から得られるデータと、上述したモニタ装置26から得られる対物検知データ、音声データおよび映像データとを記録する。通過センサ18から得られるデータには、後述するように、当該通過センサ18の識別情報に、検知した看護師の看護師IDが付加される。したがって、サーバ12は、通過センサ18からのデータに基づいて看護師の位置を知ることができ、延いては、発話データを取得した場所を特定することができる。さらに、モニタ装置26(集音マイク)の出力およびピンマイク96を通して入力される音声に基づいて、看護師が実行しようとする看護業務の内容を特定することができる。さらにまた、モニタ装置26(集音マイク)の出力(音声)を解析したり、モニタ装置26(ビデオカメラ)の撮影映像を解析したりすることにより、病院内に存在する他の者の様子を知ることができ、延いては、看護師(発話者)の対話相手(看護師、患者、医者など)を特定することができる。
【0027】
シナリオDB38は、複数の看護師が関与する医療事故(看護業務の事故)が発生するに至った過程を示すシナリオを記憶するために用いられる。後で詳細に説明するように、このシナリオは、発話DB30に蓄積されている発話データから事故に関連する発話データを抽出し、その発話データを時系列に従って看護師ごとに区分けしたリストに基づいて構築される。
【0028】
さらに、この発明の本旨に直接関係するものではないので、詳しい説明を省略するが、サーバ12には、看護業務の正しい行動手順(警告用シナリオ)が記述されたデータベース(図示せず)が接続される。警告用シナリオの詳細については、本件出願人が先に出願した特願2008−51536号に記載されているので参照されたい。特願2008−51536号にも記載されているように、サーバ12は、看護業務を遂行する看護師の行動を検出して、その行動とシナリオとから当該看護業務の目的を得ることができるか否かを判断する。当該看護業務の目的を得ることができない場合などには、シナリオ違反のアラームを看護師に与える。警告は、たとえば、着目する看護師に割り当てられた端末16に、看護業務を開始すべき旨のメッセージを送信することにより行う。なお、メッセージのような情報が端末16に送信されると、上述したように、音ないし振動またはその両方で当該端末16を装着する看護師にメッセージ(情報)があることが報知される。
【0029】
図3は端末16の電気的な構成を示すブロック図である。図3を参照して、端末16はCPU40を含み、このCPU40には、メモリ42,キースイッチ44,LCDドライバ46,モータドライバ50,無線LAN54およびアンプ56が接続される。また、LCDドライバ46にはLCD48が接続され、モータドライバ50には振動モータ52が接続され、そして、アンプ56にはスピーカ58が接続される。なお、上述したように、端末16としてPHSを用いる場合には、図3に示すような構成において、さらに通話(電話)機能が備えられる。
【0030】
CPU40は、端末16の全体制御を司る。メモリ42は、ROMやRAMを含む。この実施例では、端末16は主として情報提示装置として機能し、ROMには、情報提示のためのプログラム(情報提示プログラム)や情報提示のために必要なデータ(画像データ,音データ)が記憶されている。RAMは、CPU40の記憶領域、作業領域およびバッファ領域として用いられる。
【0031】
なお、この実施例では、情報提示のために必要なプログラムやデータをROMに記憶するようにしてあるが、サーバ12からダウンロードするようにしてもよい。このようにすれば、ROMの使用容量を削減することができる。
【0032】
キースイッチ44は、テンキー、十字キーのようなカーソルキーおよび選択キーなどの各種キーないしボタン(スイッチ)であり、看護師の指示入力に用いられる。LCDドライバ46はLCD48の駆動装置であり、CPU40からの指示に従ってLCD48に画像を表示する。図示は省略するが、LCD48には、看護業務に関するメッセージなどの情報を提示するための画面が表示される。モータドライバ50は、振動モータ52の駆動装置であり、CPU40からの指示に従って振動モータ52を駆動する。たとえば、サーバ12から情報の提示があると、振動モータ52を駆動することにより、端末16を振動させて、その旨をユーザに知らせる。または、スピーカ58から通知音(音声,音楽)を出力して、情報の提示がある旨をユーザに知らせるようにしてもよい。このとき、CPU40からの音データ(音、音声ないし音楽のデータ)は、アナログの音(音声)信号に変換された後、アンプ56で増幅され、スピーカ58から出力される。ただし、振動および音(音楽)の両方で通知するようにしてもよい。
【0033】
無線LAN54は、CPU40の指示に従って、看護師がキースイッチ44を用いて入力した指示入力(コマンド)を、ネットワーク14を介してサーバ12に送信する。詳細な説明は省略するが、サーバ12では、端末16の無線LAN54のMACアドレスを看護師IDに対応づけて管理しているため、通信している端末16の使用者(看護師)をサーバ12側で認識することが可能である。ただし、メモリ42(ROM)に看護師IDを記憶しておき、コマンドとともに看護師IDをサーバ12に送信するようにしてもよい。また、無線LAN54は、サーバ12から送信された情報(画面表示に関する情報)を受信して、CPU40に与える。
【0034】
図4に示すように、通過センサ18は、第1受光モジュール72および第2受光モジュール74を含み、第1受光モジュール72および第2受光モジュール74は、ゲートの上部であり、互いに異なる側面に装着される。また、ゲートの上に載置されるケース180内には、通過センサ18の受光モジュール(72,74)以外のコンポーネント(CPU70,RAM76,無線LAN78:図6参照)が内蔵される。ただし、ゲートは分かり易く示すために図示しただけであり、通常は、看護師詰所、診察室、病室のような部屋の出入り口、廊下と廊下との連結部(十字路、T字路など)、廊下と階段との連結部のような要所に通過センサ18は設置される。また、必要であれば、エレベータのゲートに設置されてもよい。
【0035】
また、図5に示すように、各看護師の頭部には、赤外線信号を発信する送信機110が装着される。たとえば、送信機110は、クリップのような固定器具を用いて、ナースキャップや頭髪に固定される。送信機110が発信する赤外線信号は、たとえば、8ビットの固定のパターン(看護師ID)である。
【0036】
図6は通過センサ18の電気的な構成を示すブロック図である。図6を参照して、通過センサ18はCPU70を含み、CPU70には、第1受光モジュール72、第2受光モジュール74、RAM76および無線LAN78が接続される。各通過センサ18の受光モジュール(72,74等)のそれぞれには、固有の識別情報(受光モジュールID)が割り当てられている。各受光モジュール(72,74等)は、送信機110(図5参照)からの赤外線信号を検出する。ここで、送信機110から送信される赤外線信号は、上述したように、8ビットの固定のパターン(看護師ID)である。たとえば、受光モジュー
ル(72,74)は、看護師IDを受信すると、受信した看護師IDをCPU70に与える。CPU70は、看護師IDを受信した受光モジュール(72,74)の受光モジュールIDを当該看護師IDに付加して、RAM76に記憶(一時記憶)し、その後、無線LAN78およびネットワーク14を介して、サーバ12に送信する。
【0037】
サーバ12では、受光モジュールIDが付加された看護師IDを受信すると、受信した受光モジュールIDに対応する場所を看護師IDが示す看護師の現在位置として検出する。
【0038】
なお、この実施例では、端末16の処理負担の軽減やメモリ42の容量節約のために、サーバ12側で、当該看護師の現在位置を特定するようにしてあるが、通過センサ18がネットワーク14を介して受光モジュールIDと看護師IDとを端末16に送信し、当該端末16が看護師自身の現在位置を特定するようにしてもよい。
【0039】
図7は中継器20の電気的な構成を示すブロック図である。図7を参照して、中継器20はCPU90を含む。CPU90には、メモリ92,エンコーダ94,非接触センサ98,加速度センサ100および無線LAN102が接続される。メモリ92は、ワークメモリないしバッファメモリとして働き、CPU90によって使用される。
【0040】
エンコーダ94には、ピンマイク96が接続される。たとえば、看護師の発話(音声)がピンマイク96を通してエンコーダ94に入力され、エンコーダ94は、ピンマイク96から入力される音声信号をMP3のような圧縮音声データ(以下、単に「音声データ」という。)に変調してCPU90に入力する。このように、音声信号を圧縮変調するのは、メモリ92の使用量を比較的少なくするためであり、また、無線LAN102を介して送信するデータのデータ量を低減するためである。中継器20のCPU90は、ピンマイク96(エンコーダ94)からの音声データをメモリ92に記憶(一時記憶)し、一定時間(たとえば、10秒)毎に、その一定時間分の音声データを、無線LAN102およびネットワーク14を介してサーバ12に送信する。上述したように、サーバ12は、中継器20から送信される音声データを取得し、この音声データを音声認識したテキスト(文字)データ、音声データを取得したときの時間、音声データから特定した看護師名などを、1つの発話データとして発話DB30に記憶する。
【0041】
また、たとえば、看護師は、ピンマイク96を通して、開始するまたは終了した看護業務の内容を音声で入力する。したがって、サーバ12は、音声を解析することにより、看護師が行っている看護業務の内容およびその開始と終了とを知ることができる。
【0042】
ここで、図5を参照して分かるように、端末16,中継器20および赤外線を発信する送信機110は、各作業者(看護師)に装着される。図5に示すように、端末16は、看護師の手首に装着される。図示は省略するが、端末16のLCD48が見えるように、腕時計を装着するように、バンドのような固定器具を用いて装着される。
【0043】
また、中継器20では、ピンマイク96,非接触センサ98および加速度センサ100(100a,100b,100c,100d)以外の回路コンポーネント(図7参照)はボックス200に収容され、ボックス200は看護師の腰部(ベルト部分)に装着される。
【0044】
図5に示すように、ピンマイク96は、看護師の衣服(白衣)の襟元付近に装着される。また、非接触センサ98は、ペン型のケースに収容され、看護師の白衣の胸ポケットに挿すように収納される。ただし、図面では、分かり易く示すために、ペン型のケースを胸ポケットの外部に記載してある。
【0045】
また、看護師の両手(両腕)、胸および腰などには、加速度センサ100が装着される。この実施例では、加速度センサ100aが右腕に装着され、加速度センサ100bが左腕に装着され、加速度センサ100cが胸に装着され、そして、加速度センサ100dが腰に装着される。ただし、図5では、分かり易く示すために、各加速度センサ100を白衣の外部に記載してあるが、各加速度センサ100は、実際には、ゴムバンドのような適
宜の固定器具を用いて、白衣の内部で腕などに固定される。なお、図7では、簡単のため、複数の加速度センサ100a,100b,100c,100dを、加速度センサ100として包括的に示してある(図5参照)。
【0046】
なお、図5においては省略するが、非接触センサ98と加速度センサ100とは接続線を用いてボックス200内のCPU90に電気的に接続され、ピンマイク96は接続線を用いてボックス200内のエンコーダ94に電気的に接続される。ただし、接続線を用いずに、ブルートゥースのような近距離無線によって接続するようにしてもよい。つまり、電気的に接続されればよいのである。
【0047】
また、この実施例で用いるピンマイク96は指向性を有するものである。これは、ピンマイク96を装着する看護師の音声のみを検出するようにするためであり、さらには、患者のプライバシーを守るためでもある。
【0048】
非接触センサ98としては、焦電センサを用いることができ、CPU90は非接触センサ98からの入力に応じてピンマイク96をオン/オフする。この実施例では、非接触センサ98すなわち焦電センサの前で、看護師が手を2回上下させると、その検出信号がCPU90に入力され、これに応じて、CPU90はピンマイク96をオンし、その後、看護師が焦電センサの前で、手を2回上下させると、ピンマイク96をオフする。ただし、CPU90は、看護師の操作によらないで、所定時間(10秒)が経過した場合にもピンマイク96をオフするようにしてある。
【0049】
加速度センサ100は、たとえば、多軸(3軸)の加速度センサであり、サンプリング周波数が200Hzであり、加速度は±3G(Gは重力)まで計測可能である。この中継器20では、加速度センサ100で検出される加速度のデータ(加速度データ)がCPU90に与えられる。なお、加速度センサ100に代えて、ジャイロセンサ、照度センサまたは温度センサなどの他のセンサを用いることもできる。
【0050】
このようなシナリオ構築装置(サーバ12)は、特定の業務を共同して行う複数の作業者の行動を示すシナリオを構築する機能を有しており、たとえば、このシナリオ構築装置を用いて、複数の看護師が関与する看護業務の事故が発生するに至った過程を示すシナリオを構築することによって、その事故の原因を導き出すことができる。ただし、この実施例における「看護業務の事故」とは、事故一歩手前の事例、つまりヒヤリ・ハット事例を含むものである。
【0051】
具体的には、シナリオ構築装置では、処理が開始されると、表示装置22にリスト表示画面200が表示される。ただし、この実施例で示す各画面は一例であって適宜変更可能である。
【0052】
図8に示すように、リスト表示画面200は、表示領域202を含み、この表示領域202の上部には、“検索条件”ボタン204、“検索開始”ボタン206、“強調検索”ボタン208、“追加検索”ボタン210、“選択行を抽出”ボタン212、“ロング表示”ボタン214、ならびに“ロング検出”ボタン216が設けられる。
【0053】
リスト表示画面200では、ユーザ(サーバの管理者等)によって、“検索条件”ボタン204が選択されることで、検索条件入力画面300が表示され、この検索条件入力画面300において、発話データの検索条件が設定される。そして、リスト表示画面200の“検索開始”ボタン206が選択されることで、発話DB26に蓄積された発話データから検索条件に該当する発話データが抽出され、この抽出された発話データを時系列に従って看護師(発話者)ごとに区分けしたリスト(発話データリスト)がリスト表示画面200の表示領域202に表示される。
【0054】
図9に示す検索条件入力画面300は、上述したように、リスト表示画面200の“検索条件”ボタン204が選択されることによって、リスト表示画面200とは別ウィンドウで表示される。
【0055】
図9に示すように、検索条件入力画面300は、検索開始時刻入力領域302a、検索終了時間入力領域302b、発覚時間入力領域302c、発話内容入力領域302d、看護師入力領域302e、人物入力領域302f、業務内容入力領域302g、場所入力領域302h、時間/ページ入力領域302i、時間/行入力領域302jを含み、これらの入力領域302a−jの上部には、“確定”ボタン304、“取り消し”ボタン306、ならびに“初期化”ボタン308が設けられる。
【0056】
開始時刻入力領域302aには、発話データの検索を開始する時刻(検索開始時刻)が入力され、終了時間入力領域302bには、発話データの検索を終了する時刻(検索終了時刻)が入力される。図9に示す例では、2006年4月20日の12時から2006年4月22日の12時までの時間範囲に取得した発話データ(音声データ)が検索されることが示される。
【0057】
発覚時間入力領域302cには、看護業務の事故が発覚した時刻(発覚時刻)が入力される。図9に示す例では、発覚時刻は、2006年4月21日の19時であることが示される。
【0058】
発話内容入力領域302dには、看護業務の事故に関連するキーワード(看護師名、患者名、処置、事故の内容、場所など)が入力される。このキーワードは、発話内容について検索するためのものであり、ユーザがキーボードなどの入力装置28を用いて直接手入力する方法や、予め用語DB32に記憶されている用語をいわゆるプルダウンメニュー方式で選択する方法等が考えられる。図9に示す例では、キーワードは、「K(患者名)」であり、発話内容に「K(患者名)」というキーワードが含まれるデータが検索されることが示される。
【0059】
看護師入力領域302eには、看護師の名称が入力される。たとえば、この看護師とは、発話者を示している。図9に示す例では、看護師の名称は、「看護師A」であり、発話者が「看護師A」である発話データが検索されることが示される。
【0060】
人物入力領域302fには、「登場人物」の名称が入力される。たとえば、この登場人物とは、看護師の対話相手(看護師、患者、医者など)を示しており、上述したように、モニタ装置26(集音マイク)の出力(音声)を解析したり、モニタ装置26(ビデオカメラ)の撮影映像(画像データ,映像データ)を解析したりすることで特定されるものである。図9に示す例では、発話データを取得したときの登場人物が「○○○」であるデータが検索されることが示される。
【0061】
業務内容入力領域302gには、「業務内容」が入力される。たとえば、この「業務内容」は、看護業務(処理)の内容であり、上述したように、モニタ装置26(集音マイク)の出力およびピンマイク96を通して入力される音声を解析したり、モニタ装置26(ビデオカメラ)の撮影映像を解析したり、中継器20からの加速度データを辞書データと比較したりすることで特定されるものである。図9に示す例では、発話データを取得したときの看護師の業務内容が「△△△」であるデータが検索されることが示される。
【0062】
場所入力領域302hには、「場所」が入力される。たとえば、この「場所」は、看護師の位置であり、上述したように、通過センサ18からのデータによって特定されるものである。図9に示す例では、発話データを取得したときの看護師の位置が「□□□」であるデータが検索されることが示される。
【0063】
時間/ページ入力領域302iには、リスト表示画面200の表示領域202に表示する発話データリストの1ページにどれだけの時間範囲の発話データを表示するかが入力され、たとえば、この時間/ページ入力領域302iには、最初(デフォルト)から所定の値(1時間)が入力されている。
【0064】
時間/行入力領域302jには、リスト表示画面200の表示領域202に表示する発話データリストにおける1つの水平行にどれだけの時間範囲の発話データを示すかが入力され、たとえば、この時間/行入力領域302jには、最初(デフォルト)から所定の値(10分)が入力されている。つまり、後で詳細に説明するように、リスト表示画面300の表示領域202には、10分おきの間引きのある発話データのリストが表示されることとなる。
【0065】
検索条件入力画面300では、ユーザは、任意の入力領域302a―302jに情報を入力し、その後、“確定”ボタン304を選択することによって、発話データの検索条件を設定することができる。また、ユーザは、“取り消し”ボタン306を選択することによって、検索条件入力画面300を閉じることができる。さらにまた、ユーザは、“初期化”ボタン308を選択することによって、入力領域302a―302jに入力した情報を初期化することができる。
【0066】
図8に戻って、リスト表示画面200では、全体の把握のために、検索条件入力画面300の時間/行入力領域302jに入力された時間(値)ごと、この実施例では、10分ごとに間引きされた発話データがリストで表示される。このリストでは、各々の水平行と1まとまりの発話データとが対応しており、1まとまりの発話データは、時間表示領域218、発話内容表示領域220、看護師表示領域222、ならびに注目事象表示領域224によって構成される。
【0067】
時間表示領域218には、発話データが取得された時間が表示される。
【0068】
発話内容表示領域220には、発話内容がテキスト(文字)文で表示される。なお、簡単のため、図8においては、発話内容の図示は省略してある。たとえば、検索条件に設定したキーワードが発話内容に含まれる場合には、発話内容を示すテキスト文のキーワードの部分に別色でラインがひかれることとなる。
【0069】
看護師表示領域222には、看護師(発話者)の名称が表示される。
【0070】
注目事象表示領域224には、発話データに対応する注目事象が表示される。なお、注目事象とは、その発話における行為等の説明であり、後で詳細に説明するように、リスト編集画面400(図10参照)などでユーザによって入力されるものである。
【0071】
リスト表示画面200では、ユーザは、“ロング検出”ボタン216を選択することによって、リストの中から間引きのないデータを有する発話データ(水平行)を検出することができる。そして、ユーザは、間引きのないデータを有する発話データを選択して、“ロング表示”ボタン214を選択することによって、その発話データ(水平行)における全ての発話内容を表示するロングデータ画面(図示せず)をリスト表示画面200とは別ウィンドウで表示させることができる。
【0072】
たとえば、ユーザは、このロングデータ画面で間引きのないデータを参照することによって、看護業務の事故に関連するキーワード(看護師名、患者名、処置、事故の内容、場所など)を暗示的な情報として取得することができ、このキーワードが、発話データを検索するための検索条件として用いられることとなる。
【0073】
また、ユーザは、リスト表示画面200の表示領域202に発話データのリストを表示させた後、検索条件入力画面300で検索条件(強調検索条件)を設定し、リスト表示画面200に戻って、“強調検索”ボタン208を選択することによって、表示領域202に表示させている発話データのリストの中から、その検索条件(強調検索条件)に該当する発話データのみを表示領域202に表示させることができる。
【0074】
さらに、ユーザは、リスト表示画面200の表示領域202に発話データのリストを表示させた後、検索条件入力画面300で検索条件(追加検索条件)を再設定し、リスト表示画面200に戻って、“追加検索”ボタン210を選択することによって、表示領域202に表示させていた発話データのリストに、その検索条件(追加検索条件)に該当する発話データを追加することができる。
【0075】
さらにまた、ユーザは、リストの中の看護業務の事故に関連する発話データを選択し、その後、“選択行を抽出”ボタン212を選択することによって、リスト編集画面400をリスト表示画面200とは別ウィンドウで表示させることができる。このリスト編集画面400では、ユーザは、発話データのリストの編集作業を行う。ここでは、ユーザは、発話データの追加や削除を行うとともに、それぞれの発話データの「注目事象」の項目への入力を行う
図10に示すように、リスト編集画面400は、表示領域402を含み、この表示領域402の上部には、“選択行を削除”ボタン404、“シナリオ化”ボタン406、ならびに“シナリオ追加”ボタン408が設けられる。
【0076】
ユーザは、任意の発話データ(水平行)を選択して、“選択行を削除”ボタン404を選択することによって、この発話データをリストから削除することができる。また、ユーザは、“シナリオ追加”ボタン408を選択することによって、空欄の新しい水平行を追加することができ、この新しい水平行にデータを手入力することによって、新しい発話データを追加することができる。さらに、ユーザは、“シナリオ化”ボタン406を選択することによって、表示領域402に表示されている発話データのリストに基づいて、シナリオを作成することができる。
【0077】
また、上述したように、リスト編集画面400では、ユーザは、それぞれの発話データの「注目事象」の項目への入力を行う。「注目事象」は、その発話における行為等の説明であり、後で詳細に説明するように、シナリオは、主としてこの「注目事象」によって構築される。たとえば、「注目事象」は、発話データのリストに基づいて、看護師(発話者)、発話内容、他の看護師の発話などを勘案することによって入力される。なお、「注目事象」がユーザによって入力されていない場合には、対応する注目事象表示領域224が空欄にされる。
【0078】
図11に示すシナリオ表示画面500は、ユーザによって、リスト編集画面400の“シナリオ化”ボタン406が選択されることによって、リスト編集画面400とは別ウィンドウで表示される。ここでは、ユーザは、シナリオの編集(追加や削除)を行うことができる。
【0079】
図11に示すように、シナリオ表示画面500は、表示領域502を含み、この表示領域502の上部には、“保存”ボタン504、“行編集”ボタン506、ならびに“列編集”ボタン508が設けられる。
【0080】
シナリオ表示画面500の表示領域502には、発話データのリストに基づいて構築されたシナリオが表示される。たとえば、シナリオは、リスト編集画面400において入力された発話データの「注目事象」を発話データを取得した時間と看護師とに対応付けたものであり、各々の水平行と発話データを取得した時間とが対応するとともに、各々の垂直列と看護師(発話者)とが対応している。
【0081】
シナリオ表示画面500では、ユーザは、“行編集”ボタン506ないし“列編集”ボタン508を選択することによって、シナリオの水平行ないし垂直列を編集することができる。また、たとえば、同じ(或いは、ほぼ同じ)時刻に取得された発話データや、それぞれ関連性の高い発話データを1つにまとめることもできる。
【0082】
また、ユーザは、“保存”ボタン504を選択することによって、このシナリオをたとえばエクセル(商品名)ファイル、テキストファイル、KEYGRAPH(キーグラフ)などの形式で保存することができる。なお、KEYGRAPH(キーグラフ)とは、主にテキスト解析において、単語の出現頻度と共起関係をもとにグラフを生成して、視覚的に文書のキーワードを把握するための解析手法である。
【0083】
具体的には、サーバ12(のCPU12b)は、図13−図16に示すフロー図に従ってシナリオ構築処理を実行する。なお、図13−図16のフロー図に対応するプログラムは、サーバ12のメモリ12aに記憶されている。
【0084】
ここで、図12は、図2に示したサーバ12のメモリ12aのメモリマップ600の一例を示す図解図である。図12を参照してメモリ12aは、プログラム記憶領域602およびデータ記憶領域604を含む。
【0085】
プログラム記憶領域602には、データ抽出プログラム610、リスト作成プログラム612、シナリオ構築プログラム614、画像表示プログラム616、通信プログラム618、および音声認識プログラム620などが記憶される。データ抽出プログラム610は、検索条件に該当する発話データを抽出するためのプログラムである。リスト作成プログラム612は、抽出された発話データを時系列に従って作業者ごとに区分けしたリストを作成するためのプログラムである。シナリオ構築プログラム614は、発話データのリストに基づいて、シナリオを構築するためのプログラムである。画像表示プログラム616は、GUIデータ634に格納された画像データを、表示装置22に出力するためのプログラムである。通信プログラム618は、端末16、通過センサ18および中継器20との間で通信を行うためのプログラムである。音声認識プログラム620は、音声認識を行うためのプログラムである。このプログラムでは、看護師が装着している中継器20から取得した音声データから特徴を抽出し、この入力音声データの特徴と音声認識用辞書データ636の音声データの特徴とを周知のDPマッチング法や隠れマルコフモデル(HMM)による方法を用いて照合することによって、看護師の発話内容の特定を行う。
【0086】
また、データ記憶領域604には、検索条件バッファ630、発話データバッファ632が設けられると共に、GUIデータ634が記録される。検索条件バッファ630は、検索条件入力画面300で設定された検索条件を一時的に記憶するためのバッファであり、たとえばユーザによって検索画面300に入力されたキーワードのテキスト(文字)データなどを一時的に記憶する。発話データバッファ632は、発話DB30から抽出された発話データを一時的に記憶するためのバッファである。GUIデータ634は、リスト表示画面200、検索条件入力画面300、リスト編集画面400、ならびにシナリオ表示画面500を表示するための画面データなどである。音声認識用辞書データ636は、看護師が装着している中継器20から取得した音声データを音声認識するための辞書データである。
【0087】
さて、図13に示すように、サーバ12はシナリオ構築処理を開始すると、ステップS1で、内部メモリ12cのGUIデータ634から画面データを読み出し、図8に示すようなリスト表示画面200を表示装置22に表示する。
【0088】
次に、ステップS3では、時間範囲の指定を含む検索条件が設定されたか否かを判断する。具体的には、サーバ12は、発話データの検索条件として、検索条件入力画面300の開始時刻入力領域302aと終了時間入力領域302bとに値(時間)が入力されたか否かを判断する。
【0089】
ステップS3で“YES”であれば、つまり、ユーザによって、図9に示すような検索条件入力画面300の開始時刻入力領域302aと終了時間入力領域302bとに値(時間)が入力されて、その後、リスト表示画面200の“検索開始”ボタン206が選択されたとき等は、ステップS5で、発話DB30に蓄積されている発話データから検索条件に該当する発話データを抽出し、続くステップS7で、抽出した発話データのリストをリスト表示画面200の表示領域202に表示する。
【0090】
次に、ステップS9では、間引きのないデータの表示が指定されたか否かを判断する。ステップS9で“YES”であれば、つまり、ユーザによって、“ロング検出”ボタン216が選択されて、間引きのないデータを有する発話データが検出され、さらに、間引きのないデータを有する発話データが選択されて、“ロング表示”ボタン214が選択されたとき等は、ステップS11で、発話データにおける全ての発話内容を表示するロングデータ画面(図示せず)を表示して、ステップS13に進む。一方、ステップS9で“NO”であれば、そのままステップS13に進む。
【0091】
次に、ステップS13では、キーワードの指定を含む検索条件が設定されたか否かを判断する。具体的には、サーバ12は、発話データの検索条件として、検索条件入力画面300の発話内容入力領域302dにキーワードが入力されたか否かを判断する。
【0092】
ステップS13で“YES”であれば、つまり、ユーザによって、検索条件入力画面300の発話内容入力領域302dに看護業務の事故に関連するキーワードが入力され、その後、リスト表示画面200の“検索開始”ボタン206が選択されたとき等は、ステップS15で、検索条件に該当する発話データの抽出処理(図16参照)を開始して、続くステップS17で、ステップS15で抽出した発話データのリストをリスト表示画面200の表示領域202に表示する。
【0093】
続いて、図13に示すステップS19では、現在、リスト表示画面200の表示領域202に表示されている発話データのリストに基づいてシナリオを構築するか否かを判断する。
【0094】
ステップS19で“YES”であれば、つまり、ユーザによって、リストの中の看護業務の事故に関連する発話データが選択されて、その後、“選択行を抽出”ボタン212が選択されたとき等は、ステップS21で、その選択された発話データのリストを、図10に示すようなリスト編集画面400の表示領域402に表示する。
【0095】
続いて、ステップS23では、リストの編集作業が完了したか否かを判断する。ここでは、ユーザは、リスト編集画面400において、発話データの追加や削除を行うとともに、それぞれの発話データの「注目事象」の項目への入力を行う。
【0096】
ステップS23で“YES”であれば、つまり、ユーザによって、リストの編集作業が行われた後、リスト編集画面400の“シナリオ化”ボタン406が選択されたとき等は、ステップS25で、リスト編集画面400の表示領域402に表示されていたリストに基づいてシナリオを構築し、ステップS27で、そのシナリオを図11に示すようなシナリオ表示画面500の表示領域502に表示する。
【0097】
続いて、ステップS29では、シナリオの編集作業が完了したか否かを判断する。ステップS29で“YES”であれば、つまり、ユーザによって、シナリオの編集(追加や削除)作業が行われた後、シナリオ表示画面500の“保存”ボタン504が選択されたとき等は、ステップS31で、シナリオをシナリオDB38に保存して、シナリオ構築処理を終了する。
【0098】
また、ステップS19で“NO”であれば、ステップS33に進み、ステップS33で、強調検索条件が設定されたか否かを判断する。
【0099】
ステップS33で“YES”であれば、つまり、ユーザによって、検索条件入力画面300の発話内容入力領域302dに別のキーワードが入力され、その後、リスト表示画面200の“強調検索”ボタン208が選択されたとき等は、ステップS35で、表示領域202に表示されているリストの中の発話データであって、かつ強調検索条件に該当する発話データのリストを表示領域202に表示して、ステップS19に戻る。
【0100】
また、ステップS33で“NO”であれば、ステップS37に進み、ステップS37で、追加検索条件が設定されたか否かを判断する。
【0101】
ステップS37で“YES”であれば、つまり、ユーザによって、検索条件入力画面300の発話内容入力領域302dに別のキーワードが入力され、その後、リスト表示画面200の“追加検索”ボタン210が選択されたとき等は、ステップS39で、追加検索条件に該当する発話データの抽出処理(図17参照)を開始して、続くステップS41で、ステップS39で抽出した発話データのリストを、表示領域202に表示させていた発話データのリストに追加して、ステップS19に戻る。一方、ステップS33で“NO”であれば、ステップS13に戻って、再度、検索条件を設定して、処理が繰り返される。
【0102】
図16は、図13に示したステップS15の、検索条件に該当する発話データの抽出処理である。図16に示すように、サーバ12は、発話データの抽出処理を開始すると、ステップS51で、発話データを検索する時刻tiを検索開始時刻T1に設定する(ti=T1)。
【0103】
続くステップS53では、時刻tiに取得された発話データ(発話内容)にキーワードが含まれるか否かを判断する。具体的には、サーバ12は、発話DB30に蓄積された発話データの中から、発話データを取得した時間が検索開始時刻T1に一致するデータを取り出して、その発話データ(発話内容)にキーワードが含まれるか否かを判断する。
【0104】
ステップS53で“YES”であれば、つまり、時刻tiに取得された発話データにキーワードが含まれるのであれば、ステップS55で、その発話データをリスト候補に追加して、ステップS57に進む。一方、ステップS53で“NO”であれば、つまり、時刻tiに取得された発話データにキーワードが含まれないのであれば、そのままステップS57に進む。
【0105】
ステップS57では、時刻tiと検索終了時刻T2とが一致するか否かを判断する。ステップS57で“YES”であれば、つまり、ti=T2であれば、ステップS59で、リスト候補に追加されている発話データを抽出して、検索条件に該当する発話データの抽出処理を終了し、ステップS17(図13参照)で、抽出された発話データのリストをリスト表示画面200の表示領域202に表示する。
【0106】
一方、ステップS57で“NO”であれば、ステップS61で、時刻tiをインクリメントして(ti→ti+1)、ステップS53に戻り、繰り返し、時刻ti(時刻ti+1)に取得された発話データにキーワードが含まれるか否かを判断する。
【0107】
図17は、図15に示したステップS39の、追加検索の条件に該当する発話データの抽出処理である。図17に示すように、サーバ12は、発話データの抽出処理を開始すると、ステップS71で、発話データを検索する時刻tiを看護業務の事故の発覚時刻T3に設定する(ti=T3)。ここで、事故の発覚時刻T3を用いるのは、事故のことが言及された噂話などに関しては追求せず、正規の業務において、語られた発話(発話データ)のみを抽出するためである。
【0108】
続くステップS73では、時刻tiに取得された発話データにキーワードが含まれるか否かを判断する。具体的には、サーバ12は、発話DB30に蓄積された発話データの中から、発話データを取得した時間が検索開始時刻T3に一致するデータを取り出して、その発話データ(発話内容)に少なくとも1つのキーワードが含まれるか否かを判断する。
【0109】
ステップS73で“YES”であれば、つまり、時刻tiに取得された発話データに少なくとも1つのキーワードが含まれるのであれば、ステップS75で、そのキーワードが患者名か否かを判断する。具体的には、サーバ12は、用語DB32を参照することによって、検索時刻tiに取得された発話データに含まれるキーワードが患者名か否かを判断する。一方、ステップS73で“NO”であれば、そのままステップS85に進む。
【0110】
ステップS75で“YES”であれば、ステップS83に進み、ステップS83で、その発話データをリスト候補に追加して、ステップS85に進む。一方、ステップS75で“NO”であれば、ステップS77で、そこが引継ぎを行う所定の場所か否かを判断する。具体的には、サーバ12は、モニタDB36を参照することによって、発話データが取得された場所を特定し、その後、環境情報DB28を参照することによって、その発話データが取得された場所が引継ぎを行う所定の場所か否かを判断する。
【0111】
ステップS77で“YES”であれば、ステップS83に進み、ステップS83で、その発話データをリスト候補に追加して、ステップS85に進む。一方、ステップS77で“NO”であれば、ステップS79で、発話データに所定の関連キーワードが含まれるか否かを判断する。具体的には、サーバ12は、キーワードDB34を参照することによって、発話データに関連キーワードが含まれるか否かを判断する。
【0112】
ステップS79で“NO”であれば、そのままステップS85に進む。一方、ステップS79で“YES”であれば、続くステップS81で、時刻tiに取得された発話データを時刻ti+1に取得された発話データと比較し、それらの発話データに関連性があるか否かを判断する。ここでは、サーバ12は、モニタ手段(サーバ12,通過センサ18,中継器20,モニタ装置26)の検出結果を複合的に勘案することによって、時刻tiに取得された発話データと時刻ti+1に取得された発話データとを比較して、それらのデータに同じ場所・人が関与しているか否かを判断する。
【0113】
ステップS81で“YES”であれば、ステップS83に進み、ステップS83で、その発話データをリスト候補に追加して、ステップS85に進む。一方、ステップS81で“NO”であれば、そのままステップS85に進む。
【0114】
ステップS85では、時刻tiと検索開始時刻T1とが一致するか否かを判断する。ステップS85で“YES”であれば、つまり、ti=T1であれば、ステップS87で、リスト候補に追加されている発話データを抽出して、追加検索条件に該当する発話データの抽出処理を終了し、ステップS41(図15参照)で、抽出された発話データのリストを、表示領域202に表示させていた発話データのリストに追加する。
【0115】
一方、ステップS85で“NO”であれば、ステップS89で、時刻tiをデクリメントして(ti→ti−1)、ステップS73に戻り、繰り返し、時刻ti(時刻ti−1)に取得された発話データに少なくとも1つのキーワードが含まれるか否かを判断する。
【0116】
このように、この実施例では、看護業務の事故に関連する発話データを抽出し、その発話データを時系列に従って看護師ごとに区分けしリスト化することで、ユーザに対して事故に関わった複数の看護師の行動を分かり易く提示することができる。したがって、複数の看護師が関与する事故が発生するに至った過程を示すシナリオを構築して、その事故の原因を導き出すことができる。
【0117】
なお、この実施例では、発話内容にキーワードを含まれている発話データを検索すると、実際に発話内容にキーワードが含まれている発話データのみが抽出されたが、これに限定される必要はなく、たとえば、発話内容にキーワードが含まれている発話データの前後の発話データや、同時に同じ場所で行われている発話の発話データをともに抽出するようにしてもよい。この場合には、録音の情况などで発話が分断されている発話データや、対話の相手の発話に続く発話であって発話内容にキーワードが含まれていない発話データなども、抽出することができる。
【符号の説明】
【0118】
10 …警告システム
12 …サーバ
16 …看護師用端末
18 …通過センサ
20 …中継器
22 …表示装置
24 …入力装置
26 …モニタ装置
28,30,32,34,36,38 …データベース
40,70,90 …CPU
42,92 …メモリ
44 …キースイッチ
48 …LCD
52 …振動モータ
54,78,102 …無線LAN
72,74 …受光モジュール
76 …RAM
96 …ピンマイク
98 …非接触センサ
100 …加速度センサ
110 …送信機
200 …リスト表示画面
300 …検索条件入力画面
400 …データ編集画面
500 …シナリオ表示画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の業務を共同して行う複数の作業者の行動を示すシナリオを構築するシナリオ構築装置であって、
前記複数の作業者のそれぞれから発話内容を含む発話データを取得する発話データ取得手段、
前記発話データ取得手段によって取得された発話データを、当該発話データを取得した時刻と作業者とに関連付けて記憶する発話データ記憶手段、
ユーザによって入力された検索条件に基づいて前記発話データ記憶手段を検索して、当該検索条件に該当する発話データを抽出する発話データ抽出手段、
前記抽出手段によって抽出された発話データを時系列に従って作業者ごとに区分けしたリストを視覚化して表示するリスト表示手段、
前記リスト表示手段によって表示されたリストに基づいて、前記シナリオを構築するシナリオ構築手段、および
前記シナリオ構築手段によって構築されたシナリオを視覚化して表示するシナリオ表示手段を備える、シナリオ構築装置。
【請求項2】
前記シナリオ構築手段によって構築されたシナリオを記憶するシナリオ記憶手段をさらに備える、請求項1記載のシナリオ構築装置。
【請求項3】
前記発話データ抽出手段は、
所定の時間範囲内に取得された発話データを前記発話データ記憶手段から抽出する第1抽出手段、および
所定のキーワードが含まれる発話データを前記第1抽出手段によって抽出された発話データから抽出する第2抽出手段を含み、
前記リスト表示手段は、
前記第1抽出手段によって抽出された発話データを時系列に従って作業者ごとに区分けしたリストを視覚化して表示する第1リスト表示手段、および
前記第2抽出手段によって抽出された発話データを時系列に従って作業者ごとに区分けしたリストを視覚化して表示する第2リスト表示手段を含む、請求項1または2記載のシナリオ構築装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−34405(P2011−34405A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180839(P2009−180839)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人情報通信研究機構「民間基盤技術研究促進制度/日常行動・状況理解に基づく知識共有システムの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(393031586)株式会社国際電気通信基礎技術研究所 (905)