シミュレーション装置、シミュレーション方法、及びシミュレーションシステム
【課題】
複数の動物から構成される牧場等の経営に関するシミュレーションが可能なシミュレーション装置を提供すること。
【解決手段】
複数の動物が存在する所定の動物群内における、分娩の経験がある経産動物の数、分娩の経験のない非経産動物の数の、所定の期間における変動を算定するシミュレーション装置であって、非経産動物変化数算定手段と、初妊動物変化数算定手段と、経産動物変化数算定手段と、出生動物数算定手段と、期末非経産動物数算定手段とを備えることを特徴とするシミュレーション装置に関する。
複数の動物から構成される牧場等の経営に関するシミュレーションが可能なシミュレーション装置を提供すること。
【解決手段】
複数の動物が存在する所定の動物群内における、分娩の経験がある経産動物の数、分娩の経験のない非経産動物の数の、所定の期間における変動を算定するシミュレーション装置であって、非経産動物変化数算定手段と、初妊動物変化数算定手段と、経産動物変化数算定手段と、出生動物数算定手段と、期末非経産動物数算定手段とを備えることを特徴とするシミュレーション装置に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の動物から構成される牧場等の経営に関するシミュレーションが可能なシミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、酪農経営のシミュレーション分析が試みられている。通常は、牛の頭数や個体の乳量(乳牛生産性、乳牛1頭あたりの乳量能力)に基づき試算されることが一般的であり、このような分析を行なう際には乳牛の泌乳力が重視されている。個体の乳量が高い場合は、乳牛の泌乳力が直接的に売上高のアップに寄与することから、泌乳力を用いた分析が広く用いられている。特に、生産現場にて飼料を与える際においても泌乳力の向上を目標にした設計が重んじられ、金融機関への融資の申請においても泌乳力に基づいた経営計画やシミュレーション分析が適用されている。
【0003】
このため、酪農経営者による飼養管理の優先順位は自然と泌乳力向上が一番におかれていた。しかし、乳牛が持つ本来の生理的機能には、泌乳のほかに繁殖、自己成長、免疫などがあり、これらの事項は十分に考慮されていなかった。特に繁殖については、分娩され出生した雌子牛が、出生後に妊娠して子牛を分娩するまで、2年ほどの期間がかかるため、これらの期間の経過を考慮する必要がある。
【0004】
このような中、牛群を管理する手法の一つとして、乳牛の栄養診断処理、牛群の健康管理、及び、繁殖管理処理をコンピュータにより経時的に行なうために、乳牛の乳成分データを基に演算処理し、演算処理されたデータにもとづいて摂取栄養を解析し、解析されたデータにもとづいてプログラム処理して乳牛の栄養診断処理を行なう乳牛の管理システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、その他、ミルクパイプラインのミルクタップ側に被識別部を設け、かつ搾乳ユニットのディストリビュータ側に、被識別部を検出して牛床を識別する識別部と、識別データ及び搾乳データを記憶する記憶部を有する制御ユニットを設けるとともに、データを受信して記憶する送受信ユニットを備える搾乳管理システムが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−194273号公報
【特許文献2】特開2001−45898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2はいずれも乳牛の管理をするものではあるが、牧場経営全体を管理するものではなく、将来にわたる牧場の成長を予測し、牧場を経営するうえでの目標を達成するための指針を提示できるといったものではない。本発明は、乳牛等の畜産動物の繁殖機能に基づき動物群評価及び牧場の経営評価を可能とするもので、畜産動物の飼養期間(時間の流れ)を考慮して、畜産動物の出生、育成、妊娠、初産のプロセスを経営シミュレーションに組み込み、動物群の繁殖力と供用力を見出して、将来にわたる牧場の成長の潜在性を計数化、指標化するためのシミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、複数の動物が存在する所定の動物群内における、分娩の経験がある経産動物の数、分娩の経験がなく妊娠もしていない非経産動物の数、および初めての妊娠をしている初妊動物の数についての所定の期間における変動を算定するシミュレーション装置であって、前記所定の期間における期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに該動物群における分娩間隔を記憶する記憶手段と、記憶手段により記憶された期首の非経産動物の数をもとに、前記所定の期間内に妊娠を経て初めての分娩を行なう第1の初産動物の数、前記所定の期間内に初妊動物となる期末の初妊動物の数、および前記所定の期間内に変化しない第1の非経産動物の数を算定する非経産動物変化数算定手段と、記憶手段により記憶された期首の初妊動物の数をもとに、前記所定の期間内に初めての分娩を行なう第2の初産動物の数を算定する初妊動物変化数算定手段と、記憶手段により記憶された期首の経産動物の数、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数および初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数をもとに、期末の経産動物の数を算定する経産動物変化数算定手段と、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数、初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数、ならびに記憶手段により記憶された期首の経産動物の数および分娩間隔をもとに、前記所定の期間内に産まれうる出生動物の数を算定する出生動物数算定手段と、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の非経産動物の数、および出生動物数算定手段により算定された出生動物の数をもとに、前記所定の期間における期末の非経産動物の数を算定する期末非経産動物数算定手段とを備えることを特徴とするシミュレーション装置に関する。
【0008】
本発明によれば、前記所定の期間における期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに該動物群における分娩間隔をもとに、期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、期末の初妊動物の数の算定が可能となり、動物群の繁殖機能を考慮した動物群評価が可能となる。
【0009】
本発明では、記憶手段は、前記所定の期間内に期首の非経産動物が初妊動物になる割合である初妊動物率、前記所定の期間内に非経産動物が妊娠を経て初産動物になる割合である第1の初産動物率、および前記所定の期間内に期首の初妊動物が初産動物になる割合である第2の初産動物率とをさらに記憶し、非経産動物変化数算定手段は、記憶手段により記憶された初妊動物率および期首の非経産動物の数をもとに、期末の初妊動物の数を算定し、かつ記憶手段により記憶された第1の初産動物率および期首の非経産動物の数をもとに、第1の初産動物の数を算定し、初妊動物変化数算定手段は、記憶手段により記憶された第2の初産動物率および期首の初妊動物の数をもとに、第2の初産動物の数を算定することが好ましい。
【0010】
ここでは、それぞれの動物群に固有の特性である、初妊動物率、第1の初産動物率および第2の初産動物率が考慮されることとなる。すなわち、期末の初妊動物の数は初妊動物率および期首の非経産動物の数をもとに算定され、第1の初産動物の数は第1の初産動物率および期首の非経産動物の数をもとに算定され、さらに第2の初産動物の数は、第2の初産動物率および期首の初妊動物の数をもとに算定される。したがって、それぞれの動物群に固有の特性を考慮した動物群評価が可能となり、より現実の牧場等の経営に近い経営シミュレーションが可能となる。
【0011】
本発明では、記憶手段は、経産動物のうち搾乳が可能な動物の割合である搾乳動物率をさらに記憶し、上記シミュレーション装置は、さらに、記憶手段により記憶された期首の経産動物の数、経産動物変化数算定手段により算定された期末の経産動物の数および搾乳動物率をもとに、搾乳が可能な搾乳動物の数を算定する搾乳動物数算定手段と、搾乳動物数算定手段により算定された搾乳動物の数をもとに、前記所定の期間内において出荷が可能な乳量を算定する乳量算定手段とを備えることが好ましい。
【0012】
このような構成とすることで、期首の経産動物の数、期末の経産動物の数および搾乳動物率をもとに、搾乳が可能な搾乳動物の数が算定され、さらに搾乳動物の数をもとに、所定の期間内において出荷が可能な乳量が算定されるので、乳牛の繁殖機能を考慮した牛群評価をもとに、牛群の乳量の供用力を評価することが可能となり、より現実の牧場等の経営に近い経営シミュレーションが可能となる。
【0013】
本発明では、上記シミュレーション装置は、さらに、前記所定の期間の整数倍であるシミュレーション期間についての利用者からの入力を受け付ける入力受付手段と、記憶手段に記憶された期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数、および期首の初妊動物の数を、それぞれ、経産動物変化数算定手段により算定された期末の経産動物の数、期末非経産動物数算定手段により算定された期末の非経産動物の数、および非経産動物変化数算定手段により算定された期末の初妊動物の数で更新する更新手段とを備え、更新された期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数、および期首の初妊動物の数をもととした、非経産動物変化数算定手段、初妊動物変化数算定手段、経産動物変化数算定手段、出生動物数算定手段および期末非経産動物数算定手段による算定、および更新手段による更新を、前記整数に対応する回数繰り返すことにより、シミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、および期末の初妊動物の数を算定することが好ましい。
【0014】
このように構成することで、利用者が入力したシミュレーション期間(例えば、所定の期間が1年であり、シミュレーション期間が10年)をもとに、期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、および期末の初妊動物の数の算定をシミュレーション期間の年数だけ繰り返すことにより、シミュレーション期間後における経産動物の数、非経産動物の数および期末の初妊動物の数を算定することが可能となる。したがって、利用者が入力した所望の期間が経過した後の動物群を評価することができ、長期にわたる牧場等の成長の潜在性を計数化、指標化することが可能となる。
【0015】
本発明では、前記分娩間隔は、仮に設定された仮分娩間隔であって、上記シミュレーション装置は、さらに、利用者の入力に従って、シミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、または期末の初妊動物の数についての目標数を受け付ける目標数受付手段と、仮分娩間隔をもとに、非経産動物変化数算定手段、初妊動物変化数算定手段、経産動物変化数算定手段、出生動物数算定手段および期末非経産動物数算定手段による算定、および更新手段による更新を、前記整数に対応する回数繰り返すことにより、シミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、および期末の初妊動物の数を算定する仮算定手段と、仮算定手段により算定されたシミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、または期末の初妊動物の数が、目標数受付手段により受け付けられた目標数に達しているかについて判定する目標達成可否判定手段と、目標達成可否判定手段により目標数に達していないと判定された場合は、より短く設定された仮分娩間隔を新たに設定し、目標数に達していると判定された場合は、より長く設定された仮分娩間隔を新たに設定する仮分娩間隔設定手段と、仮分娩間隔設定手段により設定された新たな仮分娩間隔をもとに、仮算定手段によりシミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、および期末の初妊動物の数を算定し、仮分娩間隔が目標達成可否判定手段により目標数に達していると判定される最長の分娩間隔に達するまで仮分娩間隔設定手段による設定、仮算定手段による算定、目標達成可否判定手段による判定を繰り返し、目標数を達成するための最適な分娩間隔を特定する最適分娩間隔特定手段とを備えることが好ましい。
【0016】
このような構成することで、目標数を達成するために最適な分娩間隔が特定されるため、利用者に対し、さらに有効な牧場経営の指標を提供することが可能となる。
【0017】
本発明はさらに、複数の動物が存在する所定の動物群内における、分娩の経験がある経産動物の数、分娩の経験がなく妊娠もしていない非経産動物の数、および初めての妊娠をしている初妊動物の数についての所定の期間における変動をコンピュータ装置に算定させるシミュレーション方法であって、前記所定の期間における期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに該動物群における経産動物の分娩間隔を記憶領域に記憶させるステップと、記憶領域に記憶された期首の非経産動物の数をもとに、前記所定の期間内に妊娠を経て初めての分娩を行なう第1の初産動物の数、前記所定の期間内に初妊動物となる期末の初妊動物の数、および前記所定の期間内に変化しない第1の非経産動物の数を算定させるステップと、記憶領域に記憶された期首の初妊動物の数をもとに、前記所定の期間内に初めての分娩を行なう第2の初産動物の数を算定させるステップと、記憶領域に記憶された期首の経産動物の数、算定された第1の初産動物の数および算定された第2の初産動物の数をもとに、期末の経産動物の数を算定させるステップと、算定された第1の初産動物の数、算定された第2の初産動物の数、ならびに記憶領域に記憶された期首の経産動物の数および分娩間隔をもとに、前記所定の期間内に産まれうる出生動物の数を算定させるステップと、算定された第1の非経産動物の数、および算定された出生動物の数をもとに、前記所定の期間における期末の非経産動物の数を算定させるステップとから構成されることを特徴とするシミュレーション方法に関する。
【0018】
本発明はさらに、複数の動物が存在する所定の動物群内における、分娩の経験がある経産動物の数、分娩の経験がなく妊娠もしていない非経産動物の数、および初めての妊娠をしている初妊動物の数についての所定の期間における変動を算定するサーバ装置と、通信ネットワークを介して前記サーバ装置と通信が可能な端末装置とを備えるシミュレーションシステムであって、端末装置が、利用者の入力に従って、前記所定の期間における期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに該動物群における分娩間隔の入力を受け付ける入力受付手段と、入力受付手段により受け付けられた期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに分娩間隔をサーバ装置に送信する情報送信手段とを備え、サーバ装置が、端末装置から送信された期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに分娩間隔を受信する情報受信手段と、情報受信手段により受信された期首の非経産動物の数をもとに、前記所定の期間内に妊娠を経て初めての分娩を行なう第1の初産動物の数、前記所定の期間内に初妊動物となる期末の初妊動物の数、および前記所定の期間内に変化しない第1の非経産動物の数を算定する非経産動物変化数算定手段と、情報受信手段により受信された期首の初妊動物の数をもとに、前記所定の期間内に初めての分娩を行なう第2の初産動物の数を算定する初妊動物変化数算定手段と、情報受信手段により受信された期首の経産動物の数、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数および初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数をもとに、期末の経産動物の数を算定する経産動物変化数算定手段と、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数、初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数、ならびに情報受信手段により受信された期首の経産動物の数および分娩間隔をもとに、前記所定の期間内に産まれうる出生動物の数を算定する出生動物数算定手段と、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の非経産動物の数、および出生動物数算定手段により算定された出生動物の数をもとに、前記所定の期間における期末の非経産動物の数を算定する期末非経産動物数算定手段とを備えることを特徴とするシミュレーションシステムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態にかかるシミュレーションシステムの構成を表すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる牛群の飼養動態プロセスを表す図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる変化率テーブルを表す図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる牛群評価テーブルを表す図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる単価テーブルを表す図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかる経営評価テーブルを表す図である。
【図7】本発明の実施の形態にかかる牛群の評価処理についてのフローチャートの一例である。
【図8】本発明の実施の形態にかかる最適分娩間隔の評価処理についてのフローチャートの一例である。
【図9】本発明の実施の形態にかかる目標達成可否判定処理を表わすフローチャートの一例である。
【図10】本発明の実施の形態にかかる端末の表示画面の変化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施の形態にかかるシミュレーションシステムの構成を表すブロック図である。シミュレーション装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、ハードディスク・ドライブ(HDD)13、通信インターフェイス14からなり、それぞれ内部バスにより接続されている。
【0021】
CPU11はHDD13に格納されたプログラムを実行し、シミュレーション装置1の制御を行なう。RAM12はCPU11のワークエリアである。HDD13は、プログラムやデータを保存するための記憶領域である。CPU11は、シミュレーション装置1の制御に必要なデータをRAM12から読み出して処理を行なう。
【0022】
通信インターフェイス14は有線により通信ネットワーク15に接続されており、他の端末16との通信が可能である。また、通信インターフェイス14は、アンテナを有する通信ユニットを介して、無線による通信を行なうことも可能である。例えば、端末16にて、牧場経営者や牧場経営者への融資を検討している金融機関がインターネット上で所定のウェブサイトへアクセスし、ID及びパスワードを入力する。シミュレーション装置1では、通信インターフェイス14を介してID及びパスワードを受信し、ログインが可能であるかどうかの認証を行なう。HDD13に設定された利用者データベースに記憶されたID及びパスワードが一致している場合は、ログインが可能となり、端末16にてシミュレーションシステムを利用することが可能となる。
【0023】
シミュレーションシステムへのログインが行なわれると、利用者は端末16に設置されたキーボード等の入力装置へ、所定のデータ、例えば、初期の経産牛の数、初期の育成子牛の数、分娩間隔等に関する情報を入力することが可能である。端末16の入力装置から入力された入力情報は通信インターフェイス14を介してRAM12に格納され、CPU11は入力情報をもとに各種の算定処理を実行する。算定処理の実行が終了すると、通信インターフェイス14を介して、算定の結果が端末16に送信される。端末16にて算定の結果を受信すると、端末16の表示装置にシミュレーションの結果が表示される。
【0024】
次に、本発明の実施の形態にかかるシミュレーションシステムにおける、シミュレーションを行なう動物群の飼養動態について説明する。図2は、本発明の実施の形態にかかる動物群の飼養動態プロセスの一例を表す図である。この実施の形態において、動物群は牧場で飼養されている牛群であり、牛群には育成子牛21、初妊牛22、経産牛23、初産牛24および搾乳牛25が含まれる。育成子牛21は、出生してから最初に受胎するまでの雌子牛を指す。なお、この実施の形態では、雄子牛は出生して間もなく販売される。育成子牛21は、出生してから13〜15か月経過すると、初めての種付けが行なわれる。種付けが成功し受胎した育成子牛21は、初めての妊娠をしている牛である初妊牛22となる。初妊牛22は受胎から10か月程度経過すると分娩を行ない、初妊牛22から、初めての分娩を行なった牛である初産牛24となる。なお、初産牛24は、分娩の経験がある牛である経産牛23に含まれる概念である。
【0025】
初産牛24を含む経産牛23は、分娩後ほぼ2か月経過すると、次の種付けが行なわれる。種付けが成功し受胎した経産牛23は、受胎から10か月程度経過すると次の分娩を行なう。分娩間隔26は、分娩と次の分娩の間の日数であり、経産牛ごとに異なるものであるが、本発明では牧場ごとの平均の日数を指すものとして取り扱う。なお、分娩間隔26は、牧場の経営方針により変わってくるものであり、牧場ごとに異なる値である。分娩を行なった経産牛23は、人間の飲用が可能な生乳を泌乳するため、搾乳が行なわれる。搾乳は、分娩の数日後から乾乳するまで行なわれる。乾乳とは、経産牛23を次の分娩に備えさせるために、次の分娩予定日の約60日前から、搾乳を止めることである。搾乳される経産牛23は、搾乳牛25にも分類される。
【0026】
経産牛23は、数回の分娩を行なうことができ、分娩後から乾乳まで搾乳牛25として生乳生産に寄与するが、分娩回数を重ねるもしくは単に月齢を重ねることにより、泌乳量が減少する。泌乳量が一定量よりも少なくなるなどの条件に合致した牛は、廃用される。なお、廃用もしくは事故などによる死亡は、その他の育成子牛21や初妊牛22などにも起こりうることであり、このような牛は牛群から除かれる。
【0027】
また、牛群の牛は販売することも可能である。これとは反対に、育成子牛などを外部から購入する場合もあり、この場合は購入した牛は対応する育成子牛21、初妊牛22や経産牛23などに参入させることとなる。
【0028】
図3は、本発明の実施の形態にかかる変化率テーブルの一例を表す図である。変化率テーブル40は、シミュレーション装置1のHDD13に格納されており、シミュレーションの開始にともないRAM12に読み出される。変化率テーブル40には、分娩間隔に関するパラメータ41、搾乳牛率42、育成子牛(期首)からの変化率43、初妊牛(期首)からの変化率44、初産牛(当期)の変化率45、初妊牛(当期)の変化率46、経産牛の変化率47、出生率48、雄子牛変化率49、雌子牛変化率50を含む項目が設定されている。これらの確率は、過去の統計をもとに予め設定したり、牧場の経営方針に応じて利用者が任意に設定することも可能である。なお、当期とは、これから算定処理を行なう期(所定の期間)を指す。
【0029】
分娩間隔に関するパラメータ41は、分娩間隔41aおよび分娩間隔係数41bを含む情報である。分娩間隔41aは、利用者によって入力された分娩間隔が設定される。分娩間隔係数41bは、一つの期(1年)の日数である365を分娩間隔41aで割った値である。経産牛1頭は分娩間隔ごとに1回の分娩を行なうため、分娩間隔係数41bは一つの期における経産牛1頭が行なう分娩の回数とみなすことができる。したがって、期首における経産牛数に分娩間隔係数41bを掛けることにより、当期において経産牛群が行なう分娩の回数を算定することができる。
【0030】
搾乳牛率42は、経産牛に占める搾乳牛の比率を表す数値であり、過去の統計をもとに予め設定されるものであるが、分娩間隔に応じて変動させることも可能である。搾乳牛数は経産牛数に搾乳牛率42を掛けることで算定される。搾乳牛数は、後述するように生乳生産量を算定するために用いられる。
【0031】
育成子牛(期首)からの変化率43には、期首に育成子牛である牛が当期において、変化する確率が設定されている。育成子牛→初妊→初産牛率43aは、期首に育成子牛である牛が当期に初妊を経て初産を行なって初産牛となる確率である。育成子牛→初妊牛率43bは、当期に初妊牛になる確率であり、育成子牛→育成子牛率43cは、期末まで育成子牛のままである確率である。初妊牛(育成→)販売率43dは、当期に初妊となってから販売し、期末には牛群に残らない牛となる確率である。廃用・死亡(育成(期首))率43eは、当期に廃用もしくは死亡したため、期末に牛群に残らない牛となる確率である。なお、育成子牛→初妊→初産牛率43a、育成子牛→初妊牛率43b、育成子牛→育成子牛率43c、初妊牛(育成→)販売率43d、廃用・死亡(育成(期首))率43eの合計は1に等しくなる。
【0032】
初妊牛(期首)からの変化率44は、期首に初妊牛である牛が当期においてそれぞれの牛に変化する確率が設定された項目であり、当期に初産を行なう初産牛となる確率である初妊牛→初産牛率44a、当期に廃用もしくは死亡したため期末に牛群に残らない牛となる確率である廃用・死亡(初妊牛(期首))率44bが含まれる。初妊牛→初産牛率44a、廃用・死亡(初妊牛(期首))率44bの合計は1に等しくなる。
【0033】
初産牛(当期)の変化率45には、当期に初産牛となった牛が期末までに変化する確率が設定されている。当期に初産牛となった牛とは、期首に育成子牛であって当期に初妊を経て初産を行なって初産牛となった牛、期首に初妊牛であって当期に初産を行なって初産牛となった牛を含む概念である。したがって、育成子牛(期首)から初産牛となった牛数、および初妊牛(期首)から初産牛となった牛数の合計に初産牛(当期)の変化率45を乗ずることで、当期に初産牛となった牛の期末までの変化が算定される。初産牛(当期)の変化率45には、当期に廃用もしくは死亡する確率である廃用・死亡(初産牛)率45a、および期末に経産牛に参入する確率である初産牛参入率45bが含まれる。廃用・死亡(初産牛)率45a、初産牛参入率45bの合計は1に等しくなる。
【0034】
初妊牛(当期)の変化率46は、当期に育成子牛(期首)から初妊牛となった牛が期末までに変化する確率が設定されており、当期に廃用もしくは死亡する確率である廃用・死亡(初妊牛(育成→))率46a、および期末まで初妊牛として残る確率である初妊牛(期末)率46bが含まれる。廃用・死亡(初妊牛(育成→))率46a、および初妊牛(期末)率46bの合計は1に等しくなる。
【0035】
経産牛の変化率47は、期首に経産牛であった牛が期末までに変化する確率が設定されており、当期に販売される経産牛の確率である経産牛販売率47a、当期に死亡する経産牛の確率である経産牛死亡率47b、および期末まで牛群に残る経産牛の確率である経産牛(期末)率47cが含まれる。経産牛販売率47a、経産牛死亡率47b、経産牛(期末)率47cの合計は1に等しくなる。
【0036】
次に、分娩及び出生に関する変化率について説明する。出生率48は、当期に出生するそれぞれの子牛の確率を設定したものであり、当期に出生する子牛の数は、当期に分娩を行なう牛数に等しいとして算定される。したがって、経産牛のうち当期に分娩を行なう牛数、および当期に分娩を行なった初産牛数の合計に出生率48を乗ずることで、当期に出生する子牛の数が算定される。なお、初産牛数は、育成子牛(期首)から初産牛となった牛数および初妊牛(期首)から初産牛となった牛数の合計である。出生率48には、雄子牛が生まれる確率である雄子牛出生率48a、雌子牛が生まれる確率である雌子牛出生率48b、および死産となる確率である子牛死産率48cが含まれる。雄子牛出生率48a、雌子牛出生率48b、子牛死産率48cの合計は1に等しくなる。
【0037】
雄子牛変化率49は、当期に出生した雄子牛の数が、販売等により変化する確率を表すものである。本実施の形態において、出生した雄子牛は、その種類に応じた単価で販売される。雄子牛変化率49には、乳用雄として出生し販売される確率である乳用雄販売率49a、和牛として出生し販売される確率である和牛販売率49bおよびF1牛として出生し販売される確率であるF1牛販売率49cが含まれる。乳用雄販売率49a、和牛販売率49b、F1牛販売率49cの合計は1に等しくなる。
【0038】
雌子牛変化率50は、当期に出生した雌子牛の数が、販売等により変化する確率を表すものである。本実施の形態において、雌子牛は13〜15か月で受胎させるまで育成子牛として飼育される。雌子牛変化率50は、育成子牛として飼育される確率である育成子牛飼育率50a、および廃用もしくは死亡する確率である廃用・死亡(育成(出生))率50bが含まれる。育成子牛飼育率50a、廃用・死亡(育成(出生))率50bの合計は1に等しくなる。
【0039】
次に、牛群評価テーブルについて説明する。図4は、本発明の実施の形態にかかる牛群評価テーブルの一例を表す図である。牛群評価テーブル60は、シミュレーション装置1のRAM12に設けられ、利用者によって入力された初期牛数(初期育成子牛数、初期初妊牛数および初期経産牛数を含む)、および後述する牛群評価処理の結果が記憶される。牛群評価テーブル60には、期首牛数61、育成子牛(期首)からの変化牛数62、初妊牛(期首)からの変化牛数63、初産牛(当期)の変化牛数64、初妊牛(当期)の変化牛数65、経産牛の変化牛数66、出生牛数67、出生雄牛数68、出生雌牛数69、期末牛数70、および搾乳牛数71を含む項目が記憶される。
【0040】
本発明の実施の形態において、育成子牛数、初妊牛数や経産牛数などの牛数は、母集団の牛数に対し、変化率テーブル40に設定された変化率を掛けることにより算定される。そのため、算定された牛数は小数を含む値になる場合がある。この場合は以下のように端数処理が行われる。すでに述べたように、育成子牛(期首)からの変化率43、初妊牛(期首)からの変化率44等に含まれる各変化率は、いずれもその合計が1になる。この場合は、同じ母集団から算定された各牛数の小数部分を切り下げ、切り下げた各牛数の合計と母集団の数とを比較し、各牛数の合計が母集団の数と等しくなるように各牛数の小数部分が大きいものから順に切り上げる。なお、小数部分が等しい場合は、各牛数の値が大きいものから順に切り上げる。
【0041】
例えば、母集団の数である育成子牛(期首)数61aが「140」であり、育成子牛→初妊→初産牛率43a、育成子牛→初妊牛率43b、育成子牛→育成子牛率43c、初妊牛(育成→)販売率43d、廃用・死亡(育成(期首))率43eを育成子牛(期首)数61aに乗ずることで得られる値が、それぞれ、「17.8」、「87.7」、「19.2」、「12.2」、「3.2」である場合、その合計が「140」となるように小数部分が大きい「17.8」、「87.7」が切り上げられて、「18」、「88」となり、その他は「19」、「12」、「3」と小数点以下が切り下げられる。また、設定された変化率が分娩間隔に関するパラメータ41または搾乳牛率42である場合は、小数点以下は切り下げる。
【0042】
続いて、牛群評価テーブル60に含まれる情報について詳しく説明する。まず、期首牛数61は、当期における算定処理のもととなる、期首のそれぞれの牛の数が記憶された項目であり、期首における育成子牛の数である育成子牛(期首)数61a、期首における初妊牛の数である初妊牛(期首)数61bおよび期首における経産牛の数である経産牛(期首)数61cが含まれる。これら期首牛数61は、当期が第1期であれば、利用者によって入力された初期牛数、すなわち初期育成子牛数が育成子牛(期首)数61aとして記憶され、同様に、初期初妊牛数が初妊牛(期首)数61bとして、初期経産牛数が経産牛(期首)数61cとして、それぞれ記憶される。当期が第2期以降であれば、前の期における期末牛数70のそれぞれの値が記憶される。
【0043】
育成子牛(期首)からの変化牛数62は、育成子牛(期首)数61aに対して、変化率テーブル40における育成子牛(期首)からの変化率43で設定されたそれぞれの確率を乗じて算定される項目である。まず、育成子牛→初妊→初産牛数62aは、育成子牛(期首)61aに育成子牛→初妊→初産牛率43aを乗じて算定される。例えば第1期において、育成子牛→初妊→初産牛数62aは、育成子牛(期首)61aである「140」に、育成子牛→初妊→初産牛率43aである「0.13」をかけ、端数処理された「18」として算定される。以下同様に、育成子牛→初妊牛数62bは育成子牛→初妊牛率43bを、育成子牛→育成子牛数62cは育成子牛→育成子牛率43cを、初妊牛(育成→)販売数62dは初妊牛(育成→)販売率43dを、廃用・死亡(育成(期首))数62eは廃用・死亡(育成(期首))率43eを、それぞれ育成子牛(期首)数61aに掛けることで算定される牛数である。
【0044】
初妊牛(期首)からの変化牛数63は、初妊牛(期首)数61bに対して変化率テーブル40における初妊牛(期首)からの変化率44で設定されたそれぞれの確率を乗じて算定される項目である。それぞれ、初妊牛→初産牛数63aは初妊牛→初産牛率44aを、廃用・死亡(初妊牛(期首))数63bは廃用・死亡(初妊牛(期首))率44bを、初妊牛(期首)数61bにそれぞれ乗じて算定される。
【0045】
初産牛(当期)の変化牛数64は、当期に初産牛となった牛が期末までに変化した牛数が算定される項目である。当期に初産牛となった牛数は、育成子牛→初妊→初産牛数62aおよび初妊牛→初産牛数63aの合計である。この合計に変化率テーブル40の初産牛(当期)の変化率45に設定されたそれぞれの確率を乗ずることで、初産牛(当期)の変化牛数64が算定される。廃用・死亡(初産牛)数64aは廃用・死亡(初産牛)率45aを、初産牛参入数64bは初産牛参入率45bを、それぞれ乗ずることにより算定される。例えば第1期において、育成子牛→初妊→初産牛数62aである「18」および初妊牛→初産牛数63aである「76」の合計である「94」に初産牛参入率45b「0.95」を乗じて端数処理された「89」が、初産牛参入数64bとなる。
【0046】
初妊牛(当期)の変化牛数65は、当期に初妊牛となった牛が期末までに変化した牛数が算定される項目である。初妊牛(当期)の変化牛数65は、育成子牛→初妊牛数62bに初妊牛(当期)の変化率46の各確率を乗じて算定される。廃用・死亡(初妊牛(育成→))数65aは廃用・死亡(初妊牛(育成→))率46aを、初妊牛(期末)数65bは育成子牛→初妊牛数62bに初妊牛(期末)率46bを乗じることで算定される。
【0047】
経産牛の変化牛数66は、当期に経産牛である牛が期末までに変化する牛数として算定される。ここで、当期に経産牛である牛とは、期首に経産牛である牛に、当期に初産牛となった牛を合計したものである。まず、経産牛(期首)数61cに初産牛参入数64bを加算した経産牛全群数66aが算定される。この経産牛全群数66aに経産牛の変化率47の各確率を掛けることで、経産牛の変化牛数66が算定される。それぞれ、経産牛販売数66bは経産牛販売率47aを、経産牛死亡数66cは経産牛死亡率47bを、および経産牛(期末)数66dは経産牛(期末)率47cを、経産牛全群数66aに乗じることで算定される。
【0048】
次に、出生牛数67について説明する。本実施の形態において、出生牛数67の各牛数の合計は、当期において分娩を行なう全牛数に等しいとして算定される。すなわち、経産牛のうち当期に分娩を行なう牛数、育成子牛→初妊→初産牛数62aおよび初妊牛→初産牛数63aの合計である。ここで、経産牛であって当期に分娩を行なう牛数は、経産牛(期首)数61cに分娩間隔係数41bを乗じた値を小数点第1位で四捨五入することにより算定される。続いて、分娩頭数(調整)67aが、経産牛のうち当期に分娩を行なう牛数、育成子牛→初妊→初産牛数62aおよび初妊牛→初産牛数63aの合計として算定される。分娩頭数(調整)67aを出生牛数67の各牛数の合計とみなし、これに出生率48に設定された各確率を乗じて、それぞれの牛数が算定される。すなわち、雄子牛出生数67bは雄子牛出生率48a、雌子牛出生数67cは雌子牛出生率48b、子牛死産数67dは子牛死産率48cを、それぞれ分娩頭数(調整)67aに乗じることで算定される。
【0049】
出生雄牛数68は、雄子牛出生数67bに、雄子牛変化率49に設定された各確率を乗じて算定される。すなわち、乳用雄販売数68aは乳用雄販売率49a、和牛販売数68bは和牛販売率49b、F1牛販売数68cはF1牛販売率49cをそれぞれ乗じて算定される。また、出生雌牛数69は、変化率テーブル40の雌子牛変化率50の各確率、すなわち育成子牛飼育数69aは育成子牛飼育率50aを、廃用・死亡(育成(出生))数69bは廃用・死亡(育成(出生))率50bを、雌子牛出生数67cに乗じて算定される。
【0050】
次に、期末牛数70について説明する。期末牛数70には、育成子牛(期末)数70a、初妊牛(期末)数70bおよび経産牛(期末)数70cを含む情報が記憶される。育成子牛(期末)数70aは、当期に育成子牛のままであった育成子牛→育成子牛数62cおよび当期に出生し飼育された育成子牛飼育数69aの合計である。初妊牛(期末)数70bは初妊牛(期末)数65bに等しく、経産牛(期末)数70cは経産牛(期末)数66dに等しい。
【0051】
また、牛群評価テーブル60には、搾乳牛数71も含まれる。搾乳牛数71は、経産牛数に搾乳牛率42を乗じて算定される。ただし、牛群評価テーブル70における搾乳牛数71の項目は、後述する経営評価処理において、年間生乳生産量を算定するために用いられるため、まず経産牛(期首)数61cに搾乳牛率42を乗じた搾乳牛(期首)数71a、および経産牛(期末)数70cに搾乳牛率を乗じた搾乳牛(期末)数71bが、それぞれ算定される。続いて、搾乳牛(期首)数71aと搾乳牛(期末)数71bの平均である生乳生産牛数71cが算定され、後述する経営評価処理における算定に用いられる。なお、生乳生産牛数71cは年間生乳生産量を算定するための平均値に過ぎないため、端数処理は行なわれない。
【0052】
次に、本発明の実施の形態における、経営評価処理において用いられる数値について、図5及び図6を用いて詳細に説明する。図5は、本発明の実施の形態にかかる単価テーブルを表す図である。図6は、本発明の実施の形態にかかる経営評価テーブルを表す図である。
【0053】
単価テーブル80は、シミュレーション装置1のHDD13に格納されており、シミュレーションの開始にともないRAM12に読み出される。単価テーブル80には、生乳生産単価81および個体単価82を含む項目が格納されている。生乳生産単価81は、搾乳牛1頭当たりの年間生乳生産量(単位:kg/頭)である個体乳量81a、および生乳1kgの単価(単位:円/kg)である乳価81bを含む項目である。個体単価82は、各種類の牛1頭を販売した時の単価(単位:円/頭)であって、乳用雄単価82a、和牛雄単価82b、F1雄単価82c、初妊牛単価82dおよび経産牛単価82eを含む項目である。
【0054】
経営評価テーブル90は、経営評価処理において算定された数値が記憶されるテーブルであり、RAM12に設けられる。経営評価テーブル90は、生乳生産金額91、個体販売金額92および売上高93を含む項目が記憶される。生乳生産金額91および個体販売金額92は、単価テーブル80で設定された単価および牛群評価テーブル60に記憶された牛数をもとに算定される。
【0055】
生乳生産金額91は、生乳生産量91aおよび生乳販売金額91bを含む項目である。生乳生産量91aは、当期に生産される生乳の合計量であり、生乳生産牛数71cに個体乳量81aを乗じた値として算定される。生乳販売金額91bは、生乳生産量91aに乳価81bを乗じて算定されたものであり、当期における生乳による販売金額の総額を表す。なお、図6において、生乳販売金額91bは単位を千円として表示されている。
【0056】
個体販売金額92は、当期に販売した各種類の牛の販売金額の合計が記憶された項目である。乳用雄販売92aは乳用雄販売数68aに乳用雄単価82aを、和牛雄販売92bは和牛販売数68bに和牛雄単価82bを、F1雄販売92cはF1牛販売数68cにF1雄単価82cを、初妊牛販売92dは初妊牛(育成→)販売数62dに初妊牛単価82dを、経産牛販売92eは経産牛販売数66bに経産牛単価82eを、それぞれ乗じることで算定される。個体販売合計92fは、乳用雄販売92aから経産牛販売92eまでの値の合計である。なお、図6において、個体販売金額92に含まれる金額は全て単位を千円として表示されている。
【0057】
売上高93は、当期における総売上高に相当し、生乳販売金額91bおよび個体販売合計92fの合計として算定される。図6において、売上高93は単位を千円として表示されている。
【0058】
次に、本実施の形態にかかる、牛群の評価処理について説明する。図7は、本発明の実施の形態にかかる牛群の評価処理についてのフローチャートの一例を表す図である。まず、端末16がシミュレーション装置1へのログインが行なわれると、利用者は端末16の入力装置を通じ、シミュレーションを行なうために必要な初期値の入力を行なう。シミュレーション装置1は通信インターフェイス14を介して、この入力を受け付ける(ステップS1)。受け付けられた初期値は、RAM12に格納される。
【0059】
この実施の形態において、初期値は、シミュレーションを行なう期間であるシミュレーション期間(例えば5年)、シミュレーション期間の開始時におけるそれぞれの牛群に含まれる牛の頭数である初期牛数(初期育成子牛数、初期初妊牛数、初期経産牛数)、および分娩間隔などが含まれる。シミュレーション期間は、1年を単位として入力され、1以上の整数が入力可能である(ここでは、n>1であるn年が入力されたものとする)。シミュレーション期間は1年ごとに第1期から第n期に分割され、第1期から順に牛群評価処理が行われる。初期牛数は、シミュレーション期間の開始時における育成子牛21、初妊牛22および経産牛23の数を含み、それぞれ0以上の整数値で入力される。
【0060】
ステップS1において初期値の入力が受け付けられると、CPU11は、RAM12に設けられた牛群評価テーブル60において、期首牛数61を記憶する(ステップS2)。ここでは、第1期の算定を行なうものとし、初期牛数が期首牛数61として記憶される。
【0061】
続いて、CPU11は、当期における育成子牛21から変化した牛の数を算定する(ステップS3)。ステップS3は、牛群評価テーブル60における育成子牛(期首)からの変化牛数62に含まれる項目を算定する処理である。前述したように、育成子牛(期首)からの変化牛数62は、育成子牛(期首)数61aに育成子牛(期首)からの変化率43を乗じて算定される。
【0062】
次に、当期における初妊牛22から変化した牛の数が算定される(ステップS4)。ステップS4は、牛群評価テーブル60における初妊牛(期首)からの変化牛数63に含まれる項目を算定する処理である。初妊牛(期首)からの変化牛数63は、初妊牛(期首)数61bに初妊牛(期首)からの変化率44を乗じて算定される。続いて、当期に初産牛となった牛から変化した牛の数、および当期に初妊牛となった牛から変化した牛の数が算定される(ステップS5)。当期に初妊牛となった牛から変化した牛の数、および当期に初産牛となった牛から変化した牛の数とは、それぞれ牛群評価テーブル60における初産牛(当期)の変化牛数64、および初妊牛(当期)の変化牛数65に相当し、これらがステップS5において算定される。
【0063】
次に、当期における経産牛23の数が算定される(ステップS6)。ステップS6は、牛群評価テーブル60における経産牛の変化牛数66に含まれる項目を算定する処理である。ステップS6までが終了すると、それまでのステップで算定された育成子牛(期首)からの変化牛数62、初妊牛(期首)からの変化牛数63および経産牛の変化牛数66の算定結果をもとに、当期に出生する牛の数が算定される(ステップS7)。当期に出生する牛の数とは、牛群評価テーブル60における出生牛数67、出生雄牛数68および出生雌牛数69を含む概念である。
【0064】
続いて、CPU11は、牛群評価テーブル60に記憶された算定結果をもとに、期末における牛群の牛数を算定する(ステップS8)。ここで算定されるのは期末牛数70および搾乳牛数71である。
【0065】
ステップS8が終了すると、CPU11は、経営評価処理を行なう(ステップS9)。経営評価処理は、牛群評価テーブル60に記憶された当期の各牛数、およびRAM12に読み出された単価テーブル80に設定された販売単価にもとづいて行なわれる算定処理である。ステップS8において算定された数値は、当期の販売金額として、RAM12に設けられた経営評価テーブル90に記憶される。
【0066】
ステップS9までが終了すると、終了条件を満たすか否かが判定される(ステップS10)。つまり、第n期の算定が終了したか否かが判定される。上記の説明では、n>1であるn年のシミュレーション期間に対し、第1期の算定を行なっているため、ステップS10においてNoとなり、ステップS2に戻る。この場合、ステップS2以降では第2期の算定を始めることになるため、ステップS2において、第2期の期首牛数61として第1期の期末牛数70がそれぞれ設定され、ステップS3〜S10の処理が行なわれる。同様の処理により、第n期までの算定が繰り返され、第n期までの処理が終了すると、終了条件を満たすと判定され(ステップS10においてYes)、算定結果が端末16に送信される(ステップS11)。端末16が算定結果を受信し、端末16の表示画面に算定結果が表示されると、利用者は表示された算定結果をもとに様々な牛群評価が可能となる。
【0067】
なお、算定結果をもとに、利用者が算定条件の変更を希望する場合は、利用者はその旨を端末16に入力するように構成しても良い。変更可能な算定条件は、初期値に含まれるシミュレーション期間、初期牛数および分娩間隔が挙げられるが、これらのほか、経産牛の販売率などを変更可能としてもよい。入力された算定条件の変更に関する情報は端末装置16からシミュレーション装置1に送信され、シミュレーション装置1のCPU11がこれを受け付けると、初期値そのほかの算定条件が再設定され、牛群評価処理が再度行われる。
【0068】
また、上記の説明では、n年間における牛群変動をシミュレーションするため、ステップS10において、第n期の算定が終了したか否かを判定した。しかし、本実施の形態を応用することにより、所定の目標値を設定し、目標値を上回るために必要な年数をシミュレーションすることも可能である。この場合、ステップS1において、初期値として初期牛数および分娩間隔の入力は受け付けるが、シミュレーション期間は受け付けず、代わりに経産牛数、生乳生産量または売上高などの目標値の入力を受け付ける。受け付けた初期値をもとに牛群評価処理を行ない、算定された値が目標値を上回ったか否かをステップ10で判定し、目標値を上回るまで算定処理を繰り返すことにより、必要な年数を算定することができる。なおこの場合、算定処理が膨大な回数になるのを回避するため、繰り返し処理の上限を設定しておくことが好ましい。
【0069】
次に、最適分娩間隔の評価処理について説明する。この処理は、初期値(初期育成子牛数、初期初妊牛数および初期経産牛数を含む初期牛数ならびにシミュレーション期間を含む)に加えて、シミュレーション期間(例えば、n年)後の目標値である目標牛数として育成子牛数、初妊牛数または経産牛数の入力を受け付け、n年後において目標牛数を上回るための最長の分娩間隔を、牧場等の経営に最適な分娩間隔である最適分娩間隔として特定するものである。なお、最適分娩間隔は、目標牛数をn年後に上回ることが可能な最長の分娩間隔として算定されるため、n−1年後には目標牛数に達せずn年後に初めて目標牛数を上回ることが可能な最長の分娩間隔として算定されることとなる。
【0070】
牛は分娩間隔に従って分娩を行なうため、同じn年間で比較した場合、分娩間隔が短いほど出生牛数67が増加する。出生牛数67が増加すると、これに応じて次期以降における育成子牛数、初妊牛数および経産牛数が増加する。したがって、牛群を拡大するためには分娩間隔が短い方がよい。しかし、分娩間隔を短く管理するためには多大な労力やコストが必要である。本発明によって、設定された目標牛数をn年後に上回ることが可能な最長の分娩間隔を最適分娩間隔として特定し、利用者に提示することで、利用者は分娩間隔を管理した場合の利益とコストを判断することが可能となり、牧場等の経営判断を行なう際の指標とすることができる。
【0071】
本発明における最適分娩間隔の特定は、350日から480日までの範囲でのみ処理が行なわれる。350日は、牛が分娩を行なってから次に受胎可能になるまでの期間および妊娠期間の合計であり、生理学的に取りうる最短の分娩間隔である。また、480日は、搾乳可能な最長期間の日数および乾乳期間として取りうる最長期間の日数の合計であり、すなわち分娩間隔として取りうる最長の日数である。このため、最適分娩間隔の特定処理を350日から480日の範囲の外まで行なっても、牧場等の経営指標として有用なものになり得ず、シミュレーション装置1の負荷増大にもつながるため、350日から480日までの範囲に限定して最適分娩間隔の特定処理が行なわれる。
【0072】
最適分娩間隔の特定処理は、まず最適分娩間隔が350日から480日の範囲に含まれるか否かが判定される。続いて、最適分娩間隔が含まれる範囲の上限値および下限値を設定し、その中間値を仮分娩間隔として算定する。算定された仮分娩間隔および初期値(初期牛数およびシミュレーション期間を含む)を用いて牛群評価処理によりシミュレーション期間後の各牛数を算定し、算定された牛数が目標牛数を上回るか否かの判定が行なわれる。
【0073】
続いて、最適分娩間隔の評価処理の具体的な手順について、図8および図9を用いて説明する。図8は、本発明の最適分娩間隔の評価処理についてのフローチャートの一例である。図9は、本発明の実施の形態にかかる目標達成可否判定処理を表わすフローチャートの一例である。なお、ここでは目標値として経産牛数が所定の値に設定されたとする。
【0074】
まず、利用者は端末16の入力装置を通じ、シミュレーションを行なうために必要な初期値および目標値の入力を行ない、シミュレーション装置1は通信インターフェイス14を介してこの入力情報を受け付ける(ステップS21)。受け付けられた初期値および目標値は、RAM12に格納される。
【0075】
次に、CPU11は、仮分娩間隔を350日と設定し、仮分娩間隔、およびステップS21で受け付けた初期値を用いて、経産牛数の算定を行なう(ステップS22)。経産牛の算定は、図7のステップS2〜S10の処理にもとづいて行なわれる(ステップS8の経営評価処理は行なわなくても良い)。続いて、仮分娩間隔で算定された経産牛数が目標値の経産牛数よりも少ないか否かの判定を行なう(ステップS23)。ここで、仮分娩間隔を理論上の最短日数である350日としているので、算定された経産牛数が目標値の経産牛数よりも多いと判定された場合(ステップS23においてNo)、目標値の経産牛数は入力された初期値で達成可能であると判定されたことを意味する。
【0076】
仮分娩間隔で算定された経産牛数が目標値の経産牛数よりも多いと判定された場合は、続いて最適分娩間隔の算定が行なわれる(ステップS24)。最適分娩間隔の算定処理については、図9を用いて後に詳述する。最適分娩間隔の算定が行なわれると、CPU11は、通信インターフェイス14を介し、端末16に算定結果を送信する(ステップS25)。
【0077】
なお、ステップS23において、仮分娩間隔で算定された経産牛数が目標値の経産牛数よりも小さいと判定された場合(ステップS23においてYes)、分娩間隔を理論上の最短日数である350日に設定してもなお目標値に達成しないこととなるため、分娩間隔の算定を行なわず、代わりに目標値の経産牛数に達成することが可能な最短年数を算定する処理が行なわれる(ステップS26)。最短年数の算定は、図7のステップS2〜S10が利用され、ステップS10において算定された経産牛数が目標値の経産牛数を上回ると判定されるまで算定処理が繰り返される。算定された経産牛数が目標値の経産牛数を初めて上回った期が、ステップS26における目標値の経産牛数に達成することが可能な最短年数として算定される。
【0078】
続いて、図9を用いて、ステップS24の最適分娩間隔算定処理について詳細に説明する。まず、CPU11は、仮分娩間隔を480日と設定し、RAM12に格納された初期値とともに、図7のステップS2〜S10の処理により経産牛数を算定する(ステップS41)。続いて、算定された経産牛数が、目標値の経産牛数以上であるか否かの判定を行なう(ステップS42)。
【0079】
分娩間隔を480として算定された経産牛数が目標値の経産牛数以上であった場合(ステップS42におけるYes)、最長の分娩間隔である480日であっても、目標値を達成できてしまうことになる。この場合は、最適分娩間隔が480日であると特定し(ステップS43)、最適分娩間隔の算定処理を終了する。このように構成することで、有用でない指標の算定処理を省略することができるため、CPU11の負荷を軽減することが可能となる。なお、この場合、ステップS25において、最適分娩間隔が480日であることが端末16に送信される。
【0080】
ステップS42において算定された経産牛数が目標値の経産牛数よりも小さいと判定されると(ステップS42においてNo)、最適分娩間隔が含まれる可能性のある範囲の上限値および下限値が設定される(ステップS44)。ここでは、最適分娩間隔は350日から480日の範囲に含まれるため、上限値は480日、下限値は350日に設定される。続いて上限値と下限値の中間値が算定される(ステップS45)。ここで、中間値とは、上限値と下限値の平均であるが、値が小数を含む場合は小数部分を切り捨てた値である。
【0081】
続いて、仮分娩間隔を中間値に設定し、図7のステップS2〜S10の処理により経産牛数の算定を行なう(ステップS46)。続いて、ステップS46で算定された経産牛数が目標値の経産牛数と等しいか否かの判定を行なう(ステップS47)。ここで算定された経産牛数が目標値の経産牛数と等しい場合は、最適分娩間隔は中間値であるとして算定される(ステップS48)。
【0082】
ステップS46で算定された経産牛数と目標値の経産牛数が等しくないと判定された場合(ステップS47においてNo)、ステップS46で算定された経産牛数が目標値の経産牛数よりも大きいか否かの判定を行なう(ステップS49)。経産牛数が目標値の経産牛数よりも大きいと判定されれば(ステップS49においてYes)、最適分娩間隔は中間値と上限値の間に含まれることになるので、この中間値が新たな下限値として再設定される(ステップS50)。すなわち、最適分娩間隔が特定されるまで、ステップS45〜S50までの処理は繰り返されることになるが、今回の処理がm回である場合に、m+1回目の処理における上限値はm回目と同じ上限値が用いられ、m回目の中間値がm+1回目の下限値として用いられる。算定された牛数が目標牛数を上回った場合、分娩間隔が、この仮分娩間隔より長い場合でも目標牛数を上回ることが可能であるので、最適分娩間隔は仮分娩間隔と上限値の間の値をとることになる。したがって、ステップS50において、この中間値を新たな下限値として再設定し、ステップS45〜S52までの処理が再度行なわれることになる。
【0083】
ステップS49において、ステップS46で算定された経産牛数が目標値の経産牛数よりも小さいと判定されれば、中間値が新たな上限値として再設定される(ステップS51)。同様に、今回の処理がm回である場合に、m+1回目の処理における下限値はm回目と同じ下限値が用いられ、m回目の中間値がm+1回目の上限値として用いられる。同様に、算定された牛数が目標牛数を下回った場合、分娩間隔が仮分娩間隔よりも短くなければ目標牛数を達成できないため、最適分娩間隔は仮分娩間隔と下限値の間の値をとることになる。したがって、ステップS50において、この中間値を新たな上限値として再設定し、ステップS45〜S52までの処理が再度行なわれることになる。
【0084】
続いて、新たに設定された最適分娩間隔が含まれる範囲が、さらに限定される必要があるか否かを判定するため、新たに設定された上限値および下限値を用い、上限値が下限値+1と等しいか否かの判定を行なう(ステップS52)。等しくなければ(ステップS52においてNo)、最適分娩間隔が含まれる範囲をさらに限定する必要があるので、ステップS45に戻る。新たに設定された上限値が下限値+1と等しければ(ステップS52においてYes)、最適分娩間隔は整数値として算定されるため、これ以上の限定を行なう必要がなく処理が終了することになる。この場合、下限値を最適分娩間隔とすれば、経産牛数が目標値の経産牛数を上回るので、最適分娩間隔として下限値の値が算定され(ステップS53)、最適分娩間隔算定処理は終了する。最適分娩間隔算定処理が終了すると、図8におけるステップS25に戻る。
【0085】
最適分娩間隔の特定は、シミュレーション期間であるn年の経過後に目標牛数の達成が可能である分娩間隔のうち、最長の日数を特定するものであり、ステップS41〜S53の処理を実行することで、n−1年の経過後には目標牛数の達成ができないが、n年の経過後に目標牛数の達成が可能な分娩間隔を特定することが可能となる。仮分娩間隔として、最適分娩間隔が含まれる可能性のある範囲の上限値と下限値の中間値が用いられ、ステップS45〜S52の処理を繰り返して、中間値が算定結果に応じて変化する(目標牛数に達していない場合は、より短い仮分娩間隔を新たに設定し、目標牛数に達している場合は、より長い仮分娩間隔を新たに設定する)ことで、最適分娩間隔が含まれる可能性のある範囲が限定され、最終的に最適分娩間隔が特定されることになる。このような処理を経ることでステップS2〜S10の処理の回数は数回程度で済むことになり、シミュレーション装置1の処理負荷の軽減にもつながる。
【0086】
なお、上記の実施の形態では目標値として育成子牛数、初妊牛数または経産牛数としたが、目標値として生乳生産量が設定されても良い。この場合、生乳生産量は経産牛数から算定されるため、目標生乳生産量から目標経産牛数を逆算し、目標経産牛数に達するように最適分娩間隔を算定すればよい。また、上記の実施の形態では、初期牛数と目標牛数を入力し、各変化率の値を固定の値として、最適な分娩間隔を求めることとしたが、初期牛数、目標牛数、特定の分娩間隔を利用者が入力し、最適な変化率(例えば、各牛の販売率等)を算定するような構成とすることも可能である。この場合、図8、図9について説明したのと同様の方法で、最適な変化率の算定が行なわれる。
【0087】
図10は、本発明の実施の形態にかかる端末16の表示画面の変化を表す図である。この実施の形態では、利用者が端末16からシミュレーション装置1に対してログインすると、シミュレーション装置1から端末16に情報が送信され、図10(a)のように「売上高を試算」と「分娩間隔を試算」の二つのシミュレーション方法を選択する画面が、端末16の表示画面160に表示される。
【0088】
利用者が「売上高を試算」を選択入力すると、その入力は端末16からシミュレーション装置1に送信され、受信したシミュレーション装置1は、初期値を入力させるための画面情報を端末16に送信し、端末16はこの情報を受信して図10(b)のように表示画面160に表示する。ここで、利用者が初期値を入力し、入力ボタンを選択すると、入力された初期値は端末16からシミュレーション装置1に送信される。シミュレーション装置1は、受信した初期値をもとに図7のステップS2〜S10までの牛群評価処理を行ない、ステップS10において算定結果を端末16に送信する。
【0089】
端末16は、図10(c)のようにして、受信した算定結果を表示画面160に表示する。算定結果には、シミュレーション期間における売上高の推移を表したグラフ161、およびシミュレーション期間における売上高や各牛群の推移を表したテーブル162が表示される。利用者は表示画面160に表示されたグラフ161やテーブル162をもとに、牧場の経営評価を行なう。
【0090】
なお、算定条件を変更し、再度シミュレーションを行なうことを利用者が希望する場合は、利用者は「条件を変更」ボタン163を選択入力することにより、算定条件の変更が可能である。ここで、変更可能な算定条件は初期値だけに限定されず、図10(d)のように、初妊牛や経産牛等の販売率を変更可能としてもよい。算定条件の変更に関する情報が端末16に入力されると、入力された情報はシミュレーション装置1に送信され、受信したシミュレーション装置1は変更された算定条件をもとに牛群評価処理を行なう。変更された算定条件をもとに得られた算定結果は、再び端末16に送信され、図10(c)のように端末16の表示画面160に表示される。
【0091】
利用者が「分娩間隔を試算」を選択入力すると、その入力は端末16からシミュレーション装置1に送信され、受信したシミュレーション装置1は、初期値および目標値を入力させるための画面情報を端末16に送信し、端末16はこの情報を受信して図10(e)のように表示画面160に表示する。ここで、利用者が初期値および目標値を入力し、入力ボタンを選択すると、入力された初期値および目標値は端末16からシミュレーション装置1に送信される。シミュレーション装置1は、受信した初期値および目標値をもとに、図8および図9の最適分娩間隔評価処理を行ない、ステップS25において算定結果を端末16に送信する。
【0092】
端末16は、図10(f)のようにして、受信した算定結果を表示画面160に表示する。算定結果には、最適分娩間隔の算定結果164のほか、シミュレーション期間における売上高の推移を表したグラフ161、シミュレーション期間における売上高や牛群の推移を表したテーブル162が表示される。利用者は表示画面160に表示された算定結果をもとに、牧場の経営評価を行なう。
【0093】
なお、算定条件を変更し、再度シミュレーションを行なうことを利用者が希望する場合は、利用者は「条件を変更」ボタン165を選択入力することにより、算定条件の変更が可能である。ここで、変更可能な算定条件は初期値だけに限定されず、図10(g)のように、初妊牛や経産牛等の販売率を変更可能としてもよい。算定条件の変更に関する情報が端末16に入力されると、シミュレーション装置1は変更された算定条件をもとに最適分娩間隔評価処理を行なう。変更された算定条件をもとに得られた算定結果は、図10(f)のように端末16の表示画面160に表示される。
【0094】
なお、上記の実施の形態に加えて、それぞれの分類の牛の購入または販売を適宜設定できる構成としても良い。どの分類の牛の購入または販売を重視するかは、牧場の経営方針に大きく左右される。牧場の経営方針は、頭数の規模拡大を重視する方針、頭数の規模を一定にし、若い牛を購入して老齢の牛を販売することにより牛の回転を早める方針、肉用牛として販売することを重視する方針など、様々な方針を取ることができる。したがって、代表的な経営方針に沿うような変化率テーブル40をそれぞれ予め設定しておき、利用者に選択させるようにしても良い。さらに、利用者による変化率テーブル40の設定値の一部変更を可能にしてもよい。
【0095】
上記の実施の形態では、経営評価処理について、売上高を算定する構成としたが、売上高でなく利益を算定するように構成しても良い。この場合、各分類の牛の飼料費・購入費、牛舎などの施設の建設費・維持費、および労務費などの原価を設定した原価テーブルを設定しておき、これをもとに利益を算定する構成とすることができる。
【0096】
上記の実施の形態では、牛群について説明したが、他の動物に応用することも可能である。他の動物に応用する場合は、変化率テーブルおよび単価テーブルの設定値を適切な値に変更すればよい。例えば妊娠期間が5か月程度の動物(山羊など)では、初妊牛に関する変化率、および分娩間隔を変更し、さらに一つの期を半年にするなどの設定変更により、本発明を応用することができる。さらに、一回の分娩で多数の子を産むことが通常である動物の場合(例えば、豚など)は、一回に分娩する子の数の平均値に分娩動物数を掛けた数に、変化率テーブルの出生率を掛けることで、出生数を算定する構成とすればよい。
【符号の説明】
【0097】
1 シミュレーション装置
11 CPU
12 RAM
13 HDD
14 通信インターフェイス
15 通信ネットワーク
16 端末
40 変化率テーブル
60 牛群評価テーブル
80 単価テーブル
90 経営評価テーブル
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の動物から構成される牧場等の経営に関するシミュレーションが可能なシミュレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、酪農経営のシミュレーション分析が試みられている。通常は、牛の頭数や個体の乳量(乳牛生産性、乳牛1頭あたりの乳量能力)に基づき試算されることが一般的であり、このような分析を行なう際には乳牛の泌乳力が重視されている。個体の乳量が高い場合は、乳牛の泌乳力が直接的に売上高のアップに寄与することから、泌乳力を用いた分析が広く用いられている。特に、生産現場にて飼料を与える際においても泌乳力の向上を目標にした設計が重んじられ、金融機関への融資の申請においても泌乳力に基づいた経営計画やシミュレーション分析が適用されている。
【0003】
このため、酪農経営者による飼養管理の優先順位は自然と泌乳力向上が一番におかれていた。しかし、乳牛が持つ本来の生理的機能には、泌乳のほかに繁殖、自己成長、免疫などがあり、これらの事項は十分に考慮されていなかった。特に繁殖については、分娩され出生した雌子牛が、出生後に妊娠して子牛を分娩するまで、2年ほどの期間がかかるため、これらの期間の経過を考慮する必要がある。
【0004】
このような中、牛群を管理する手法の一つとして、乳牛の栄養診断処理、牛群の健康管理、及び、繁殖管理処理をコンピュータにより経時的に行なうために、乳牛の乳成分データを基に演算処理し、演算処理されたデータにもとづいて摂取栄養を解析し、解析されたデータにもとづいてプログラム処理して乳牛の栄養診断処理を行なう乳牛の管理システムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、その他、ミルクパイプラインのミルクタップ側に被識別部を設け、かつ搾乳ユニットのディストリビュータ側に、被識別部を検出して牛床を識別する識別部と、識別データ及び搾乳データを記憶する記憶部を有する制御ユニットを設けるとともに、データを受信して記憶する送受信ユニットを備える搾乳管理システムが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−194273号公報
【特許文献2】特開2001−45898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2はいずれも乳牛の管理をするものではあるが、牧場経営全体を管理するものではなく、将来にわたる牧場の成長を予測し、牧場を経営するうえでの目標を達成するための指針を提示できるといったものではない。本発明は、乳牛等の畜産動物の繁殖機能に基づき動物群評価及び牧場の経営評価を可能とするもので、畜産動物の飼養期間(時間の流れ)を考慮して、畜産動物の出生、育成、妊娠、初産のプロセスを経営シミュレーションに組み込み、動物群の繁殖力と供用力を見出して、将来にわたる牧場の成長の潜在性を計数化、指標化するためのシミュレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、複数の動物が存在する所定の動物群内における、分娩の経験がある経産動物の数、分娩の経験がなく妊娠もしていない非経産動物の数、および初めての妊娠をしている初妊動物の数についての所定の期間における変動を算定するシミュレーション装置であって、前記所定の期間における期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに該動物群における分娩間隔を記憶する記憶手段と、記憶手段により記憶された期首の非経産動物の数をもとに、前記所定の期間内に妊娠を経て初めての分娩を行なう第1の初産動物の数、前記所定の期間内に初妊動物となる期末の初妊動物の数、および前記所定の期間内に変化しない第1の非経産動物の数を算定する非経産動物変化数算定手段と、記憶手段により記憶された期首の初妊動物の数をもとに、前記所定の期間内に初めての分娩を行なう第2の初産動物の数を算定する初妊動物変化数算定手段と、記憶手段により記憶された期首の経産動物の数、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数および初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数をもとに、期末の経産動物の数を算定する経産動物変化数算定手段と、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数、初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数、ならびに記憶手段により記憶された期首の経産動物の数および分娩間隔をもとに、前記所定の期間内に産まれうる出生動物の数を算定する出生動物数算定手段と、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の非経産動物の数、および出生動物数算定手段により算定された出生動物の数をもとに、前記所定の期間における期末の非経産動物の数を算定する期末非経産動物数算定手段とを備えることを特徴とするシミュレーション装置に関する。
【0008】
本発明によれば、前記所定の期間における期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに該動物群における分娩間隔をもとに、期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、期末の初妊動物の数の算定が可能となり、動物群の繁殖機能を考慮した動物群評価が可能となる。
【0009】
本発明では、記憶手段は、前記所定の期間内に期首の非経産動物が初妊動物になる割合である初妊動物率、前記所定の期間内に非経産動物が妊娠を経て初産動物になる割合である第1の初産動物率、および前記所定の期間内に期首の初妊動物が初産動物になる割合である第2の初産動物率とをさらに記憶し、非経産動物変化数算定手段は、記憶手段により記憶された初妊動物率および期首の非経産動物の数をもとに、期末の初妊動物の数を算定し、かつ記憶手段により記憶された第1の初産動物率および期首の非経産動物の数をもとに、第1の初産動物の数を算定し、初妊動物変化数算定手段は、記憶手段により記憶された第2の初産動物率および期首の初妊動物の数をもとに、第2の初産動物の数を算定することが好ましい。
【0010】
ここでは、それぞれの動物群に固有の特性である、初妊動物率、第1の初産動物率および第2の初産動物率が考慮されることとなる。すなわち、期末の初妊動物の数は初妊動物率および期首の非経産動物の数をもとに算定され、第1の初産動物の数は第1の初産動物率および期首の非経産動物の数をもとに算定され、さらに第2の初産動物の数は、第2の初産動物率および期首の初妊動物の数をもとに算定される。したがって、それぞれの動物群に固有の特性を考慮した動物群評価が可能となり、より現実の牧場等の経営に近い経営シミュレーションが可能となる。
【0011】
本発明では、記憶手段は、経産動物のうち搾乳が可能な動物の割合である搾乳動物率をさらに記憶し、上記シミュレーション装置は、さらに、記憶手段により記憶された期首の経産動物の数、経産動物変化数算定手段により算定された期末の経産動物の数および搾乳動物率をもとに、搾乳が可能な搾乳動物の数を算定する搾乳動物数算定手段と、搾乳動物数算定手段により算定された搾乳動物の数をもとに、前記所定の期間内において出荷が可能な乳量を算定する乳量算定手段とを備えることが好ましい。
【0012】
このような構成とすることで、期首の経産動物の数、期末の経産動物の数および搾乳動物率をもとに、搾乳が可能な搾乳動物の数が算定され、さらに搾乳動物の数をもとに、所定の期間内において出荷が可能な乳量が算定されるので、乳牛の繁殖機能を考慮した牛群評価をもとに、牛群の乳量の供用力を評価することが可能となり、より現実の牧場等の経営に近い経営シミュレーションが可能となる。
【0013】
本発明では、上記シミュレーション装置は、さらに、前記所定の期間の整数倍であるシミュレーション期間についての利用者からの入力を受け付ける入力受付手段と、記憶手段に記憶された期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数、および期首の初妊動物の数を、それぞれ、経産動物変化数算定手段により算定された期末の経産動物の数、期末非経産動物数算定手段により算定された期末の非経産動物の数、および非経産動物変化数算定手段により算定された期末の初妊動物の数で更新する更新手段とを備え、更新された期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数、および期首の初妊動物の数をもととした、非経産動物変化数算定手段、初妊動物変化数算定手段、経産動物変化数算定手段、出生動物数算定手段および期末非経産動物数算定手段による算定、および更新手段による更新を、前記整数に対応する回数繰り返すことにより、シミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、および期末の初妊動物の数を算定することが好ましい。
【0014】
このように構成することで、利用者が入力したシミュレーション期間(例えば、所定の期間が1年であり、シミュレーション期間が10年)をもとに、期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、および期末の初妊動物の数の算定をシミュレーション期間の年数だけ繰り返すことにより、シミュレーション期間後における経産動物の数、非経産動物の数および期末の初妊動物の数を算定することが可能となる。したがって、利用者が入力した所望の期間が経過した後の動物群を評価することができ、長期にわたる牧場等の成長の潜在性を計数化、指標化することが可能となる。
【0015】
本発明では、前記分娩間隔は、仮に設定された仮分娩間隔であって、上記シミュレーション装置は、さらに、利用者の入力に従って、シミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、または期末の初妊動物の数についての目標数を受け付ける目標数受付手段と、仮分娩間隔をもとに、非経産動物変化数算定手段、初妊動物変化数算定手段、経産動物変化数算定手段、出生動物数算定手段および期末非経産動物数算定手段による算定、および更新手段による更新を、前記整数に対応する回数繰り返すことにより、シミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、および期末の初妊動物の数を算定する仮算定手段と、仮算定手段により算定されたシミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、または期末の初妊動物の数が、目標数受付手段により受け付けられた目標数に達しているかについて判定する目標達成可否判定手段と、目標達成可否判定手段により目標数に達していないと判定された場合は、より短く設定された仮分娩間隔を新たに設定し、目標数に達していると判定された場合は、より長く設定された仮分娩間隔を新たに設定する仮分娩間隔設定手段と、仮分娩間隔設定手段により設定された新たな仮分娩間隔をもとに、仮算定手段によりシミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、および期末の初妊動物の数を算定し、仮分娩間隔が目標達成可否判定手段により目標数に達していると判定される最長の分娩間隔に達するまで仮分娩間隔設定手段による設定、仮算定手段による算定、目標達成可否判定手段による判定を繰り返し、目標数を達成するための最適な分娩間隔を特定する最適分娩間隔特定手段とを備えることが好ましい。
【0016】
このような構成することで、目標数を達成するために最適な分娩間隔が特定されるため、利用者に対し、さらに有効な牧場経営の指標を提供することが可能となる。
【0017】
本発明はさらに、複数の動物が存在する所定の動物群内における、分娩の経験がある経産動物の数、分娩の経験がなく妊娠もしていない非経産動物の数、および初めての妊娠をしている初妊動物の数についての所定の期間における変動をコンピュータ装置に算定させるシミュレーション方法であって、前記所定の期間における期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに該動物群における経産動物の分娩間隔を記憶領域に記憶させるステップと、記憶領域に記憶された期首の非経産動物の数をもとに、前記所定の期間内に妊娠を経て初めての分娩を行なう第1の初産動物の数、前記所定の期間内に初妊動物となる期末の初妊動物の数、および前記所定の期間内に変化しない第1の非経産動物の数を算定させるステップと、記憶領域に記憶された期首の初妊動物の数をもとに、前記所定の期間内に初めての分娩を行なう第2の初産動物の数を算定させるステップと、記憶領域に記憶された期首の経産動物の数、算定された第1の初産動物の数および算定された第2の初産動物の数をもとに、期末の経産動物の数を算定させるステップと、算定された第1の初産動物の数、算定された第2の初産動物の数、ならびに記憶領域に記憶された期首の経産動物の数および分娩間隔をもとに、前記所定の期間内に産まれうる出生動物の数を算定させるステップと、算定された第1の非経産動物の数、および算定された出生動物の数をもとに、前記所定の期間における期末の非経産動物の数を算定させるステップとから構成されることを特徴とするシミュレーション方法に関する。
【0018】
本発明はさらに、複数の動物が存在する所定の動物群内における、分娩の経験がある経産動物の数、分娩の経験がなく妊娠もしていない非経産動物の数、および初めての妊娠をしている初妊動物の数についての所定の期間における変動を算定するサーバ装置と、通信ネットワークを介して前記サーバ装置と通信が可能な端末装置とを備えるシミュレーションシステムであって、端末装置が、利用者の入力に従って、前記所定の期間における期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに該動物群における分娩間隔の入力を受け付ける入力受付手段と、入力受付手段により受け付けられた期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに分娩間隔をサーバ装置に送信する情報送信手段とを備え、サーバ装置が、端末装置から送信された期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに分娩間隔を受信する情報受信手段と、情報受信手段により受信された期首の非経産動物の数をもとに、前記所定の期間内に妊娠を経て初めての分娩を行なう第1の初産動物の数、前記所定の期間内に初妊動物となる期末の初妊動物の数、および前記所定の期間内に変化しない第1の非経産動物の数を算定する非経産動物変化数算定手段と、情報受信手段により受信された期首の初妊動物の数をもとに、前記所定の期間内に初めての分娩を行なう第2の初産動物の数を算定する初妊動物変化数算定手段と、情報受信手段により受信された期首の経産動物の数、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数および初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数をもとに、期末の経産動物の数を算定する経産動物変化数算定手段と、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数、初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数、ならびに情報受信手段により受信された期首の経産動物の数および分娩間隔をもとに、前記所定の期間内に産まれうる出生動物の数を算定する出生動物数算定手段と、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の非経産動物の数、および出生動物数算定手段により算定された出生動物の数をもとに、前記所定の期間における期末の非経産動物の数を算定する期末非経産動物数算定手段とを備えることを特徴とするシミュレーションシステムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態にかかるシミュレーションシステムの構成を表すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる牛群の飼養動態プロセスを表す図である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる変化率テーブルを表す図である。
【図4】本発明の実施の形態にかかる牛群評価テーブルを表す図である。
【図5】本発明の実施の形態にかかる単価テーブルを表す図である。
【図6】本発明の実施の形態にかかる経営評価テーブルを表す図である。
【図7】本発明の実施の形態にかかる牛群の評価処理についてのフローチャートの一例である。
【図8】本発明の実施の形態にかかる最適分娩間隔の評価処理についてのフローチャートの一例である。
【図9】本発明の実施の形態にかかる目標達成可否判定処理を表わすフローチャートの一例である。
【図10】本発明の実施の形態にかかる端末の表示画面の変化を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の実施の形態にかかるシミュレーションシステムの構成を表すブロック図である。シミュレーション装置1は、CPU(Central Processing Unit)11、RAM(Random Access Memory)12、ハードディスク・ドライブ(HDD)13、通信インターフェイス14からなり、それぞれ内部バスにより接続されている。
【0021】
CPU11はHDD13に格納されたプログラムを実行し、シミュレーション装置1の制御を行なう。RAM12はCPU11のワークエリアである。HDD13は、プログラムやデータを保存するための記憶領域である。CPU11は、シミュレーション装置1の制御に必要なデータをRAM12から読み出して処理を行なう。
【0022】
通信インターフェイス14は有線により通信ネットワーク15に接続されており、他の端末16との通信が可能である。また、通信インターフェイス14は、アンテナを有する通信ユニットを介して、無線による通信を行なうことも可能である。例えば、端末16にて、牧場経営者や牧場経営者への融資を検討している金融機関がインターネット上で所定のウェブサイトへアクセスし、ID及びパスワードを入力する。シミュレーション装置1では、通信インターフェイス14を介してID及びパスワードを受信し、ログインが可能であるかどうかの認証を行なう。HDD13に設定された利用者データベースに記憶されたID及びパスワードが一致している場合は、ログインが可能となり、端末16にてシミュレーションシステムを利用することが可能となる。
【0023】
シミュレーションシステムへのログインが行なわれると、利用者は端末16に設置されたキーボード等の入力装置へ、所定のデータ、例えば、初期の経産牛の数、初期の育成子牛の数、分娩間隔等に関する情報を入力することが可能である。端末16の入力装置から入力された入力情報は通信インターフェイス14を介してRAM12に格納され、CPU11は入力情報をもとに各種の算定処理を実行する。算定処理の実行が終了すると、通信インターフェイス14を介して、算定の結果が端末16に送信される。端末16にて算定の結果を受信すると、端末16の表示装置にシミュレーションの結果が表示される。
【0024】
次に、本発明の実施の形態にかかるシミュレーションシステムにおける、シミュレーションを行なう動物群の飼養動態について説明する。図2は、本発明の実施の形態にかかる動物群の飼養動態プロセスの一例を表す図である。この実施の形態において、動物群は牧場で飼養されている牛群であり、牛群には育成子牛21、初妊牛22、経産牛23、初産牛24および搾乳牛25が含まれる。育成子牛21は、出生してから最初に受胎するまでの雌子牛を指す。なお、この実施の形態では、雄子牛は出生して間もなく販売される。育成子牛21は、出生してから13〜15か月経過すると、初めての種付けが行なわれる。種付けが成功し受胎した育成子牛21は、初めての妊娠をしている牛である初妊牛22となる。初妊牛22は受胎から10か月程度経過すると分娩を行ない、初妊牛22から、初めての分娩を行なった牛である初産牛24となる。なお、初産牛24は、分娩の経験がある牛である経産牛23に含まれる概念である。
【0025】
初産牛24を含む経産牛23は、分娩後ほぼ2か月経過すると、次の種付けが行なわれる。種付けが成功し受胎した経産牛23は、受胎から10か月程度経過すると次の分娩を行なう。分娩間隔26は、分娩と次の分娩の間の日数であり、経産牛ごとに異なるものであるが、本発明では牧場ごとの平均の日数を指すものとして取り扱う。なお、分娩間隔26は、牧場の経営方針により変わってくるものであり、牧場ごとに異なる値である。分娩を行なった経産牛23は、人間の飲用が可能な生乳を泌乳するため、搾乳が行なわれる。搾乳は、分娩の数日後から乾乳するまで行なわれる。乾乳とは、経産牛23を次の分娩に備えさせるために、次の分娩予定日の約60日前から、搾乳を止めることである。搾乳される経産牛23は、搾乳牛25にも分類される。
【0026】
経産牛23は、数回の分娩を行なうことができ、分娩後から乾乳まで搾乳牛25として生乳生産に寄与するが、分娩回数を重ねるもしくは単に月齢を重ねることにより、泌乳量が減少する。泌乳量が一定量よりも少なくなるなどの条件に合致した牛は、廃用される。なお、廃用もしくは事故などによる死亡は、その他の育成子牛21や初妊牛22などにも起こりうることであり、このような牛は牛群から除かれる。
【0027】
また、牛群の牛は販売することも可能である。これとは反対に、育成子牛などを外部から購入する場合もあり、この場合は購入した牛は対応する育成子牛21、初妊牛22や経産牛23などに参入させることとなる。
【0028】
図3は、本発明の実施の形態にかかる変化率テーブルの一例を表す図である。変化率テーブル40は、シミュレーション装置1のHDD13に格納されており、シミュレーションの開始にともないRAM12に読み出される。変化率テーブル40には、分娩間隔に関するパラメータ41、搾乳牛率42、育成子牛(期首)からの変化率43、初妊牛(期首)からの変化率44、初産牛(当期)の変化率45、初妊牛(当期)の変化率46、経産牛の変化率47、出生率48、雄子牛変化率49、雌子牛変化率50を含む項目が設定されている。これらの確率は、過去の統計をもとに予め設定したり、牧場の経営方針に応じて利用者が任意に設定することも可能である。なお、当期とは、これから算定処理を行なう期(所定の期間)を指す。
【0029】
分娩間隔に関するパラメータ41は、分娩間隔41aおよび分娩間隔係数41bを含む情報である。分娩間隔41aは、利用者によって入力された分娩間隔が設定される。分娩間隔係数41bは、一つの期(1年)の日数である365を分娩間隔41aで割った値である。経産牛1頭は分娩間隔ごとに1回の分娩を行なうため、分娩間隔係数41bは一つの期における経産牛1頭が行なう分娩の回数とみなすことができる。したがって、期首における経産牛数に分娩間隔係数41bを掛けることにより、当期において経産牛群が行なう分娩の回数を算定することができる。
【0030】
搾乳牛率42は、経産牛に占める搾乳牛の比率を表す数値であり、過去の統計をもとに予め設定されるものであるが、分娩間隔に応じて変動させることも可能である。搾乳牛数は経産牛数に搾乳牛率42を掛けることで算定される。搾乳牛数は、後述するように生乳生産量を算定するために用いられる。
【0031】
育成子牛(期首)からの変化率43には、期首に育成子牛である牛が当期において、変化する確率が設定されている。育成子牛→初妊→初産牛率43aは、期首に育成子牛である牛が当期に初妊を経て初産を行なって初産牛となる確率である。育成子牛→初妊牛率43bは、当期に初妊牛になる確率であり、育成子牛→育成子牛率43cは、期末まで育成子牛のままである確率である。初妊牛(育成→)販売率43dは、当期に初妊となってから販売し、期末には牛群に残らない牛となる確率である。廃用・死亡(育成(期首))率43eは、当期に廃用もしくは死亡したため、期末に牛群に残らない牛となる確率である。なお、育成子牛→初妊→初産牛率43a、育成子牛→初妊牛率43b、育成子牛→育成子牛率43c、初妊牛(育成→)販売率43d、廃用・死亡(育成(期首))率43eの合計は1に等しくなる。
【0032】
初妊牛(期首)からの変化率44は、期首に初妊牛である牛が当期においてそれぞれの牛に変化する確率が設定された項目であり、当期に初産を行なう初産牛となる確率である初妊牛→初産牛率44a、当期に廃用もしくは死亡したため期末に牛群に残らない牛となる確率である廃用・死亡(初妊牛(期首))率44bが含まれる。初妊牛→初産牛率44a、廃用・死亡(初妊牛(期首))率44bの合計は1に等しくなる。
【0033】
初産牛(当期)の変化率45には、当期に初産牛となった牛が期末までに変化する確率が設定されている。当期に初産牛となった牛とは、期首に育成子牛であって当期に初妊を経て初産を行なって初産牛となった牛、期首に初妊牛であって当期に初産を行なって初産牛となった牛を含む概念である。したがって、育成子牛(期首)から初産牛となった牛数、および初妊牛(期首)から初産牛となった牛数の合計に初産牛(当期)の変化率45を乗ずることで、当期に初産牛となった牛の期末までの変化が算定される。初産牛(当期)の変化率45には、当期に廃用もしくは死亡する確率である廃用・死亡(初産牛)率45a、および期末に経産牛に参入する確率である初産牛参入率45bが含まれる。廃用・死亡(初産牛)率45a、初産牛参入率45bの合計は1に等しくなる。
【0034】
初妊牛(当期)の変化率46は、当期に育成子牛(期首)から初妊牛となった牛が期末までに変化する確率が設定されており、当期に廃用もしくは死亡する確率である廃用・死亡(初妊牛(育成→))率46a、および期末まで初妊牛として残る確率である初妊牛(期末)率46bが含まれる。廃用・死亡(初妊牛(育成→))率46a、および初妊牛(期末)率46bの合計は1に等しくなる。
【0035】
経産牛の変化率47は、期首に経産牛であった牛が期末までに変化する確率が設定されており、当期に販売される経産牛の確率である経産牛販売率47a、当期に死亡する経産牛の確率である経産牛死亡率47b、および期末まで牛群に残る経産牛の確率である経産牛(期末)率47cが含まれる。経産牛販売率47a、経産牛死亡率47b、経産牛(期末)率47cの合計は1に等しくなる。
【0036】
次に、分娩及び出生に関する変化率について説明する。出生率48は、当期に出生するそれぞれの子牛の確率を設定したものであり、当期に出生する子牛の数は、当期に分娩を行なう牛数に等しいとして算定される。したがって、経産牛のうち当期に分娩を行なう牛数、および当期に分娩を行なった初産牛数の合計に出生率48を乗ずることで、当期に出生する子牛の数が算定される。なお、初産牛数は、育成子牛(期首)から初産牛となった牛数および初妊牛(期首)から初産牛となった牛数の合計である。出生率48には、雄子牛が生まれる確率である雄子牛出生率48a、雌子牛が生まれる確率である雌子牛出生率48b、および死産となる確率である子牛死産率48cが含まれる。雄子牛出生率48a、雌子牛出生率48b、子牛死産率48cの合計は1に等しくなる。
【0037】
雄子牛変化率49は、当期に出生した雄子牛の数が、販売等により変化する確率を表すものである。本実施の形態において、出生した雄子牛は、その種類に応じた単価で販売される。雄子牛変化率49には、乳用雄として出生し販売される確率である乳用雄販売率49a、和牛として出生し販売される確率である和牛販売率49bおよびF1牛として出生し販売される確率であるF1牛販売率49cが含まれる。乳用雄販売率49a、和牛販売率49b、F1牛販売率49cの合計は1に等しくなる。
【0038】
雌子牛変化率50は、当期に出生した雌子牛の数が、販売等により変化する確率を表すものである。本実施の形態において、雌子牛は13〜15か月で受胎させるまで育成子牛として飼育される。雌子牛変化率50は、育成子牛として飼育される確率である育成子牛飼育率50a、および廃用もしくは死亡する確率である廃用・死亡(育成(出生))率50bが含まれる。育成子牛飼育率50a、廃用・死亡(育成(出生))率50bの合計は1に等しくなる。
【0039】
次に、牛群評価テーブルについて説明する。図4は、本発明の実施の形態にかかる牛群評価テーブルの一例を表す図である。牛群評価テーブル60は、シミュレーション装置1のRAM12に設けられ、利用者によって入力された初期牛数(初期育成子牛数、初期初妊牛数および初期経産牛数を含む)、および後述する牛群評価処理の結果が記憶される。牛群評価テーブル60には、期首牛数61、育成子牛(期首)からの変化牛数62、初妊牛(期首)からの変化牛数63、初産牛(当期)の変化牛数64、初妊牛(当期)の変化牛数65、経産牛の変化牛数66、出生牛数67、出生雄牛数68、出生雌牛数69、期末牛数70、および搾乳牛数71を含む項目が記憶される。
【0040】
本発明の実施の形態において、育成子牛数、初妊牛数や経産牛数などの牛数は、母集団の牛数に対し、変化率テーブル40に設定された変化率を掛けることにより算定される。そのため、算定された牛数は小数を含む値になる場合がある。この場合は以下のように端数処理が行われる。すでに述べたように、育成子牛(期首)からの変化率43、初妊牛(期首)からの変化率44等に含まれる各変化率は、いずれもその合計が1になる。この場合は、同じ母集団から算定された各牛数の小数部分を切り下げ、切り下げた各牛数の合計と母集団の数とを比較し、各牛数の合計が母集団の数と等しくなるように各牛数の小数部分が大きいものから順に切り上げる。なお、小数部分が等しい場合は、各牛数の値が大きいものから順に切り上げる。
【0041】
例えば、母集団の数である育成子牛(期首)数61aが「140」であり、育成子牛→初妊→初産牛率43a、育成子牛→初妊牛率43b、育成子牛→育成子牛率43c、初妊牛(育成→)販売率43d、廃用・死亡(育成(期首))率43eを育成子牛(期首)数61aに乗ずることで得られる値が、それぞれ、「17.8」、「87.7」、「19.2」、「12.2」、「3.2」である場合、その合計が「140」となるように小数部分が大きい「17.8」、「87.7」が切り上げられて、「18」、「88」となり、その他は「19」、「12」、「3」と小数点以下が切り下げられる。また、設定された変化率が分娩間隔に関するパラメータ41または搾乳牛率42である場合は、小数点以下は切り下げる。
【0042】
続いて、牛群評価テーブル60に含まれる情報について詳しく説明する。まず、期首牛数61は、当期における算定処理のもととなる、期首のそれぞれの牛の数が記憶された項目であり、期首における育成子牛の数である育成子牛(期首)数61a、期首における初妊牛の数である初妊牛(期首)数61bおよび期首における経産牛の数である経産牛(期首)数61cが含まれる。これら期首牛数61は、当期が第1期であれば、利用者によって入力された初期牛数、すなわち初期育成子牛数が育成子牛(期首)数61aとして記憶され、同様に、初期初妊牛数が初妊牛(期首)数61bとして、初期経産牛数が経産牛(期首)数61cとして、それぞれ記憶される。当期が第2期以降であれば、前の期における期末牛数70のそれぞれの値が記憶される。
【0043】
育成子牛(期首)からの変化牛数62は、育成子牛(期首)数61aに対して、変化率テーブル40における育成子牛(期首)からの変化率43で設定されたそれぞれの確率を乗じて算定される項目である。まず、育成子牛→初妊→初産牛数62aは、育成子牛(期首)61aに育成子牛→初妊→初産牛率43aを乗じて算定される。例えば第1期において、育成子牛→初妊→初産牛数62aは、育成子牛(期首)61aである「140」に、育成子牛→初妊→初産牛率43aである「0.13」をかけ、端数処理された「18」として算定される。以下同様に、育成子牛→初妊牛数62bは育成子牛→初妊牛率43bを、育成子牛→育成子牛数62cは育成子牛→育成子牛率43cを、初妊牛(育成→)販売数62dは初妊牛(育成→)販売率43dを、廃用・死亡(育成(期首))数62eは廃用・死亡(育成(期首))率43eを、それぞれ育成子牛(期首)数61aに掛けることで算定される牛数である。
【0044】
初妊牛(期首)からの変化牛数63は、初妊牛(期首)数61bに対して変化率テーブル40における初妊牛(期首)からの変化率44で設定されたそれぞれの確率を乗じて算定される項目である。それぞれ、初妊牛→初産牛数63aは初妊牛→初産牛率44aを、廃用・死亡(初妊牛(期首))数63bは廃用・死亡(初妊牛(期首))率44bを、初妊牛(期首)数61bにそれぞれ乗じて算定される。
【0045】
初産牛(当期)の変化牛数64は、当期に初産牛となった牛が期末までに変化した牛数が算定される項目である。当期に初産牛となった牛数は、育成子牛→初妊→初産牛数62aおよび初妊牛→初産牛数63aの合計である。この合計に変化率テーブル40の初産牛(当期)の変化率45に設定されたそれぞれの確率を乗ずることで、初産牛(当期)の変化牛数64が算定される。廃用・死亡(初産牛)数64aは廃用・死亡(初産牛)率45aを、初産牛参入数64bは初産牛参入率45bを、それぞれ乗ずることにより算定される。例えば第1期において、育成子牛→初妊→初産牛数62aである「18」および初妊牛→初産牛数63aである「76」の合計である「94」に初産牛参入率45b「0.95」を乗じて端数処理された「89」が、初産牛参入数64bとなる。
【0046】
初妊牛(当期)の変化牛数65は、当期に初妊牛となった牛が期末までに変化した牛数が算定される項目である。初妊牛(当期)の変化牛数65は、育成子牛→初妊牛数62bに初妊牛(当期)の変化率46の各確率を乗じて算定される。廃用・死亡(初妊牛(育成→))数65aは廃用・死亡(初妊牛(育成→))率46aを、初妊牛(期末)数65bは育成子牛→初妊牛数62bに初妊牛(期末)率46bを乗じることで算定される。
【0047】
経産牛の変化牛数66は、当期に経産牛である牛が期末までに変化する牛数として算定される。ここで、当期に経産牛である牛とは、期首に経産牛である牛に、当期に初産牛となった牛を合計したものである。まず、経産牛(期首)数61cに初産牛参入数64bを加算した経産牛全群数66aが算定される。この経産牛全群数66aに経産牛の変化率47の各確率を掛けることで、経産牛の変化牛数66が算定される。それぞれ、経産牛販売数66bは経産牛販売率47aを、経産牛死亡数66cは経産牛死亡率47bを、および経産牛(期末)数66dは経産牛(期末)率47cを、経産牛全群数66aに乗じることで算定される。
【0048】
次に、出生牛数67について説明する。本実施の形態において、出生牛数67の各牛数の合計は、当期において分娩を行なう全牛数に等しいとして算定される。すなわち、経産牛のうち当期に分娩を行なう牛数、育成子牛→初妊→初産牛数62aおよび初妊牛→初産牛数63aの合計である。ここで、経産牛であって当期に分娩を行なう牛数は、経産牛(期首)数61cに分娩間隔係数41bを乗じた値を小数点第1位で四捨五入することにより算定される。続いて、分娩頭数(調整)67aが、経産牛のうち当期に分娩を行なう牛数、育成子牛→初妊→初産牛数62aおよび初妊牛→初産牛数63aの合計として算定される。分娩頭数(調整)67aを出生牛数67の各牛数の合計とみなし、これに出生率48に設定された各確率を乗じて、それぞれの牛数が算定される。すなわち、雄子牛出生数67bは雄子牛出生率48a、雌子牛出生数67cは雌子牛出生率48b、子牛死産数67dは子牛死産率48cを、それぞれ分娩頭数(調整)67aに乗じることで算定される。
【0049】
出生雄牛数68は、雄子牛出生数67bに、雄子牛変化率49に設定された各確率を乗じて算定される。すなわち、乳用雄販売数68aは乳用雄販売率49a、和牛販売数68bは和牛販売率49b、F1牛販売数68cはF1牛販売率49cをそれぞれ乗じて算定される。また、出生雌牛数69は、変化率テーブル40の雌子牛変化率50の各確率、すなわち育成子牛飼育数69aは育成子牛飼育率50aを、廃用・死亡(育成(出生))数69bは廃用・死亡(育成(出生))率50bを、雌子牛出生数67cに乗じて算定される。
【0050】
次に、期末牛数70について説明する。期末牛数70には、育成子牛(期末)数70a、初妊牛(期末)数70bおよび経産牛(期末)数70cを含む情報が記憶される。育成子牛(期末)数70aは、当期に育成子牛のままであった育成子牛→育成子牛数62cおよび当期に出生し飼育された育成子牛飼育数69aの合計である。初妊牛(期末)数70bは初妊牛(期末)数65bに等しく、経産牛(期末)数70cは経産牛(期末)数66dに等しい。
【0051】
また、牛群評価テーブル60には、搾乳牛数71も含まれる。搾乳牛数71は、経産牛数に搾乳牛率42を乗じて算定される。ただし、牛群評価テーブル70における搾乳牛数71の項目は、後述する経営評価処理において、年間生乳生産量を算定するために用いられるため、まず経産牛(期首)数61cに搾乳牛率42を乗じた搾乳牛(期首)数71a、および経産牛(期末)数70cに搾乳牛率を乗じた搾乳牛(期末)数71bが、それぞれ算定される。続いて、搾乳牛(期首)数71aと搾乳牛(期末)数71bの平均である生乳生産牛数71cが算定され、後述する経営評価処理における算定に用いられる。なお、生乳生産牛数71cは年間生乳生産量を算定するための平均値に過ぎないため、端数処理は行なわれない。
【0052】
次に、本発明の実施の形態における、経営評価処理において用いられる数値について、図5及び図6を用いて詳細に説明する。図5は、本発明の実施の形態にかかる単価テーブルを表す図である。図6は、本発明の実施の形態にかかる経営評価テーブルを表す図である。
【0053】
単価テーブル80は、シミュレーション装置1のHDD13に格納されており、シミュレーションの開始にともないRAM12に読み出される。単価テーブル80には、生乳生産単価81および個体単価82を含む項目が格納されている。生乳生産単価81は、搾乳牛1頭当たりの年間生乳生産量(単位:kg/頭)である個体乳量81a、および生乳1kgの単価(単位:円/kg)である乳価81bを含む項目である。個体単価82は、各種類の牛1頭を販売した時の単価(単位:円/頭)であって、乳用雄単価82a、和牛雄単価82b、F1雄単価82c、初妊牛単価82dおよび経産牛単価82eを含む項目である。
【0054】
経営評価テーブル90は、経営評価処理において算定された数値が記憶されるテーブルであり、RAM12に設けられる。経営評価テーブル90は、生乳生産金額91、個体販売金額92および売上高93を含む項目が記憶される。生乳生産金額91および個体販売金額92は、単価テーブル80で設定された単価および牛群評価テーブル60に記憶された牛数をもとに算定される。
【0055】
生乳生産金額91は、生乳生産量91aおよび生乳販売金額91bを含む項目である。生乳生産量91aは、当期に生産される生乳の合計量であり、生乳生産牛数71cに個体乳量81aを乗じた値として算定される。生乳販売金額91bは、生乳生産量91aに乳価81bを乗じて算定されたものであり、当期における生乳による販売金額の総額を表す。なお、図6において、生乳販売金額91bは単位を千円として表示されている。
【0056】
個体販売金額92は、当期に販売した各種類の牛の販売金額の合計が記憶された項目である。乳用雄販売92aは乳用雄販売数68aに乳用雄単価82aを、和牛雄販売92bは和牛販売数68bに和牛雄単価82bを、F1雄販売92cはF1牛販売数68cにF1雄単価82cを、初妊牛販売92dは初妊牛(育成→)販売数62dに初妊牛単価82dを、経産牛販売92eは経産牛販売数66bに経産牛単価82eを、それぞれ乗じることで算定される。個体販売合計92fは、乳用雄販売92aから経産牛販売92eまでの値の合計である。なお、図6において、個体販売金額92に含まれる金額は全て単位を千円として表示されている。
【0057】
売上高93は、当期における総売上高に相当し、生乳販売金額91bおよび個体販売合計92fの合計として算定される。図6において、売上高93は単位を千円として表示されている。
【0058】
次に、本実施の形態にかかる、牛群の評価処理について説明する。図7は、本発明の実施の形態にかかる牛群の評価処理についてのフローチャートの一例を表す図である。まず、端末16がシミュレーション装置1へのログインが行なわれると、利用者は端末16の入力装置を通じ、シミュレーションを行なうために必要な初期値の入力を行なう。シミュレーション装置1は通信インターフェイス14を介して、この入力を受け付ける(ステップS1)。受け付けられた初期値は、RAM12に格納される。
【0059】
この実施の形態において、初期値は、シミュレーションを行なう期間であるシミュレーション期間(例えば5年)、シミュレーション期間の開始時におけるそれぞれの牛群に含まれる牛の頭数である初期牛数(初期育成子牛数、初期初妊牛数、初期経産牛数)、および分娩間隔などが含まれる。シミュレーション期間は、1年を単位として入力され、1以上の整数が入力可能である(ここでは、n>1であるn年が入力されたものとする)。シミュレーション期間は1年ごとに第1期から第n期に分割され、第1期から順に牛群評価処理が行われる。初期牛数は、シミュレーション期間の開始時における育成子牛21、初妊牛22および経産牛23の数を含み、それぞれ0以上の整数値で入力される。
【0060】
ステップS1において初期値の入力が受け付けられると、CPU11は、RAM12に設けられた牛群評価テーブル60において、期首牛数61を記憶する(ステップS2)。ここでは、第1期の算定を行なうものとし、初期牛数が期首牛数61として記憶される。
【0061】
続いて、CPU11は、当期における育成子牛21から変化した牛の数を算定する(ステップS3)。ステップS3は、牛群評価テーブル60における育成子牛(期首)からの変化牛数62に含まれる項目を算定する処理である。前述したように、育成子牛(期首)からの変化牛数62は、育成子牛(期首)数61aに育成子牛(期首)からの変化率43を乗じて算定される。
【0062】
次に、当期における初妊牛22から変化した牛の数が算定される(ステップS4)。ステップS4は、牛群評価テーブル60における初妊牛(期首)からの変化牛数63に含まれる項目を算定する処理である。初妊牛(期首)からの変化牛数63は、初妊牛(期首)数61bに初妊牛(期首)からの変化率44を乗じて算定される。続いて、当期に初産牛となった牛から変化した牛の数、および当期に初妊牛となった牛から変化した牛の数が算定される(ステップS5)。当期に初妊牛となった牛から変化した牛の数、および当期に初産牛となった牛から変化した牛の数とは、それぞれ牛群評価テーブル60における初産牛(当期)の変化牛数64、および初妊牛(当期)の変化牛数65に相当し、これらがステップS5において算定される。
【0063】
次に、当期における経産牛23の数が算定される(ステップS6)。ステップS6は、牛群評価テーブル60における経産牛の変化牛数66に含まれる項目を算定する処理である。ステップS6までが終了すると、それまでのステップで算定された育成子牛(期首)からの変化牛数62、初妊牛(期首)からの変化牛数63および経産牛の変化牛数66の算定結果をもとに、当期に出生する牛の数が算定される(ステップS7)。当期に出生する牛の数とは、牛群評価テーブル60における出生牛数67、出生雄牛数68および出生雌牛数69を含む概念である。
【0064】
続いて、CPU11は、牛群評価テーブル60に記憶された算定結果をもとに、期末における牛群の牛数を算定する(ステップS8)。ここで算定されるのは期末牛数70および搾乳牛数71である。
【0065】
ステップS8が終了すると、CPU11は、経営評価処理を行なう(ステップS9)。経営評価処理は、牛群評価テーブル60に記憶された当期の各牛数、およびRAM12に読み出された単価テーブル80に設定された販売単価にもとづいて行なわれる算定処理である。ステップS8において算定された数値は、当期の販売金額として、RAM12に設けられた経営評価テーブル90に記憶される。
【0066】
ステップS9までが終了すると、終了条件を満たすか否かが判定される(ステップS10)。つまり、第n期の算定が終了したか否かが判定される。上記の説明では、n>1であるn年のシミュレーション期間に対し、第1期の算定を行なっているため、ステップS10においてNoとなり、ステップS2に戻る。この場合、ステップS2以降では第2期の算定を始めることになるため、ステップS2において、第2期の期首牛数61として第1期の期末牛数70がそれぞれ設定され、ステップS3〜S10の処理が行なわれる。同様の処理により、第n期までの算定が繰り返され、第n期までの処理が終了すると、終了条件を満たすと判定され(ステップS10においてYes)、算定結果が端末16に送信される(ステップS11)。端末16が算定結果を受信し、端末16の表示画面に算定結果が表示されると、利用者は表示された算定結果をもとに様々な牛群評価が可能となる。
【0067】
なお、算定結果をもとに、利用者が算定条件の変更を希望する場合は、利用者はその旨を端末16に入力するように構成しても良い。変更可能な算定条件は、初期値に含まれるシミュレーション期間、初期牛数および分娩間隔が挙げられるが、これらのほか、経産牛の販売率などを変更可能としてもよい。入力された算定条件の変更に関する情報は端末装置16からシミュレーション装置1に送信され、シミュレーション装置1のCPU11がこれを受け付けると、初期値そのほかの算定条件が再設定され、牛群評価処理が再度行われる。
【0068】
また、上記の説明では、n年間における牛群変動をシミュレーションするため、ステップS10において、第n期の算定が終了したか否かを判定した。しかし、本実施の形態を応用することにより、所定の目標値を設定し、目標値を上回るために必要な年数をシミュレーションすることも可能である。この場合、ステップS1において、初期値として初期牛数および分娩間隔の入力は受け付けるが、シミュレーション期間は受け付けず、代わりに経産牛数、生乳生産量または売上高などの目標値の入力を受け付ける。受け付けた初期値をもとに牛群評価処理を行ない、算定された値が目標値を上回ったか否かをステップ10で判定し、目標値を上回るまで算定処理を繰り返すことにより、必要な年数を算定することができる。なおこの場合、算定処理が膨大な回数になるのを回避するため、繰り返し処理の上限を設定しておくことが好ましい。
【0069】
次に、最適分娩間隔の評価処理について説明する。この処理は、初期値(初期育成子牛数、初期初妊牛数および初期経産牛数を含む初期牛数ならびにシミュレーション期間を含む)に加えて、シミュレーション期間(例えば、n年)後の目標値である目標牛数として育成子牛数、初妊牛数または経産牛数の入力を受け付け、n年後において目標牛数を上回るための最長の分娩間隔を、牧場等の経営に最適な分娩間隔である最適分娩間隔として特定するものである。なお、最適分娩間隔は、目標牛数をn年後に上回ることが可能な最長の分娩間隔として算定されるため、n−1年後には目標牛数に達せずn年後に初めて目標牛数を上回ることが可能な最長の分娩間隔として算定されることとなる。
【0070】
牛は分娩間隔に従って分娩を行なうため、同じn年間で比較した場合、分娩間隔が短いほど出生牛数67が増加する。出生牛数67が増加すると、これに応じて次期以降における育成子牛数、初妊牛数および経産牛数が増加する。したがって、牛群を拡大するためには分娩間隔が短い方がよい。しかし、分娩間隔を短く管理するためには多大な労力やコストが必要である。本発明によって、設定された目標牛数をn年後に上回ることが可能な最長の分娩間隔を最適分娩間隔として特定し、利用者に提示することで、利用者は分娩間隔を管理した場合の利益とコストを判断することが可能となり、牧場等の経営判断を行なう際の指標とすることができる。
【0071】
本発明における最適分娩間隔の特定は、350日から480日までの範囲でのみ処理が行なわれる。350日は、牛が分娩を行なってから次に受胎可能になるまでの期間および妊娠期間の合計であり、生理学的に取りうる最短の分娩間隔である。また、480日は、搾乳可能な最長期間の日数および乾乳期間として取りうる最長期間の日数の合計であり、すなわち分娩間隔として取りうる最長の日数である。このため、最適分娩間隔の特定処理を350日から480日の範囲の外まで行なっても、牧場等の経営指標として有用なものになり得ず、シミュレーション装置1の負荷増大にもつながるため、350日から480日までの範囲に限定して最適分娩間隔の特定処理が行なわれる。
【0072】
最適分娩間隔の特定処理は、まず最適分娩間隔が350日から480日の範囲に含まれるか否かが判定される。続いて、最適分娩間隔が含まれる範囲の上限値および下限値を設定し、その中間値を仮分娩間隔として算定する。算定された仮分娩間隔および初期値(初期牛数およびシミュレーション期間を含む)を用いて牛群評価処理によりシミュレーション期間後の各牛数を算定し、算定された牛数が目標牛数を上回るか否かの判定が行なわれる。
【0073】
続いて、最適分娩間隔の評価処理の具体的な手順について、図8および図9を用いて説明する。図8は、本発明の最適分娩間隔の評価処理についてのフローチャートの一例である。図9は、本発明の実施の形態にかかる目標達成可否判定処理を表わすフローチャートの一例である。なお、ここでは目標値として経産牛数が所定の値に設定されたとする。
【0074】
まず、利用者は端末16の入力装置を通じ、シミュレーションを行なうために必要な初期値および目標値の入力を行ない、シミュレーション装置1は通信インターフェイス14を介してこの入力情報を受け付ける(ステップS21)。受け付けられた初期値および目標値は、RAM12に格納される。
【0075】
次に、CPU11は、仮分娩間隔を350日と設定し、仮分娩間隔、およびステップS21で受け付けた初期値を用いて、経産牛数の算定を行なう(ステップS22)。経産牛の算定は、図7のステップS2〜S10の処理にもとづいて行なわれる(ステップS8の経営評価処理は行なわなくても良い)。続いて、仮分娩間隔で算定された経産牛数が目標値の経産牛数よりも少ないか否かの判定を行なう(ステップS23)。ここで、仮分娩間隔を理論上の最短日数である350日としているので、算定された経産牛数が目標値の経産牛数よりも多いと判定された場合(ステップS23においてNo)、目標値の経産牛数は入力された初期値で達成可能であると判定されたことを意味する。
【0076】
仮分娩間隔で算定された経産牛数が目標値の経産牛数よりも多いと判定された場合は、続いて最適分娩間隔の算定が行なわれる(ステップS24)。最適分娩間隔の算定処理については、図9を用いて後に詳述する。最適分娩間隔の算定が行なわれると、CPU11は、通信インターフェイス14を介し、端末16に算定結果を送信する(ステップS25)。
【0077】
なお、ステップS23において、仮分娩間隔で算定された経産牛数が目標値の経産牛数よりも小さいと判定された場合(ステップS23においてYes)、分娩間隔を理論上の最短日数である350日に設定してもなお目標値に達成しないこととなるため、分娩間隔の算定を行なわず、代わりに目標値の経産牛数に達成することが可能な最短年数を算定する処理が行なわれる(ステップS26)。最短年数の算定は、図7のステップS2〜S10が利用され、ステップS10において算定された経産牛数が目標値の経産牛数を上回ると判定されるまで算定処理が繰り返される。算定された経産牛数が目標値の経産牛数を初めて上回った期が、ステップS26における目標値の経産牛数に達成することが可能な最短年数として算定される。
【0078】
続いて、図9を用いて、ステップS24の最適分娩間隔算定処理について詳細に説明する。まず、CPU11は、仮分娩間隔を480日と設定し、RAM12に格納された初期値とともに、図7のステップS2〜S10の処理により経産牛数を算定する(ステップS41)。続いて、算定された経産牛数が、目標値の経産牛数以上であるか否かの判定を行なう(ステップS42)。
【0079】
分娩間隔を480として算定された経産牛数が目標値の経産牛数以上であった場合(ステップS42におけるYes)、最長の分娩間隔である480日であっても、目標値を達成できてしまうことになる。この場合は、最適分娩間隔が480日であると特定し(ステップS43)、最適分娩間隔の算定処理を終了する。このように構成することで、有用でない指標の算定処理を省略することができるため、CPU11の負荷を軽減することが可能となる。なお、この場合、ステップS25において、最適分娩間隔が480日であることが端末16に送信される。
【0080】
ステップS42において算定された経産牛数が目標値の経産牛数よりも小さいと判定されると(ステップS42においてNo)、最適分娩間隔が含まれる可能性のある範囲の上限値および下限値が設定される(ステップS44)。ここでは、最適分娩間隔は350日から480日の範囲に含まれるため、上限値は480日、下限値は350日に設定される。続いて上限値と下限値の中間値が算定される(ステップS45)。ここで、中間値とは、上限値と下限値の平均であるが、値が小数を含む場合は小数部分を切り捨てた値である。
【0081】
続いて、仮分娩間隔を中間値に設定し、図7のステップS2〜S10の処理により経産牛数の算定を行なう(ステップS46)。続いて、ステップS46で算定された経産牛数が目標値の経産牛数と等しいか否かの判定を行なう(ステップS47)。ここで算定された経産牛数が目標値の経産牛数と等しい場合は、最適分娩間隔は中間値であるとして算定される(ステップS48)。
【0082】
ステップS46で算定された経産牛数と目標値の経産牛数が等しくないと判定された場合(ステップS47においてNo)、ステップS46で算定された経産牛数が目標値の経産牛数よりも大きいか否かの判定を行なう(ステップS49)。経産牛数が目標値の経産牛数よりも大きいと判定されれば(ステップS49においてYes)、最適分娩間隔は中間値と上限値の間に含まれることになるので、この中間値が新たな下限値として再設定される(ステップS50)。すなわち、最適分娩間隔が特定されるまで、ステップS45〜S50までの処理は繰り返されることになるが、今回の処理がm回である場合に、m+1回目の処理における上限値はm回目と同じ上限値が用いられ、m回目の中間値がm+1回目の下限値として用いられる。算定された牛数が目標牛数を上回った場合、分娩間隔が、この仮分娩間隔より長い場合でも目標牛数を上回ることが可能であるので、最適分娩間隔は仮分娩間隔と上限値の間の値をとることになる。したがって、ステップS50において、この中間値を新たな下限値として再設定し、ステップS45〜S52までの処理が再度行なわれることになる。
【0083】
ステップS49において、ステップS46で算定された経産牛数が目標値の経産牛数よりも小さいと判定されれば、中間値が新たな上限値として再設定される(ステップS51)。同様に、今回の処理がm回である場合に、m+1回目の処理における下限値はm回目と同じ下限値が用いられ、m回目の中間値がm+1回目の上限値として用いられる。同様に、算定された牛数が目標牛数を下回った場合、分娩間隔が仮分娩間隔よりも短くなければ目標牛数を達成できないため、最適分娩間隔は仮分娩間隔と下限値の間の値をとることになる。したがって、ステップS50において、この中間値を新たな上限値として再設定し、ステップS45〜S52までの処理が再度行なわれることになる。
【0084】
続いて、新たに設定された最適分娩間隔が含まれる範囲が、さらに限定される必要があるか否かを判定するため、新たに設定された上限値および下限値を用い、上限値が下限値+1と等しいか否かの判定を行なう(ステップS52)。等しくなければ(ステップS52においてNo)、最適分娩間隔が含まれる範囲をさらに限定する必要があるので、ステップS45に戻る。新たに設定された上限値が下限値+1と等しければ(ステップS52においてYes)、最適分娩間隔は整数値として算定されるため、これ以上の限定を行なう必要がなく処理が終了することになる。この場合、下限値を最適分娩間隔とすれば、経産牛数が目標値の経産牛数を上回るので、最適分娩間隔として下限値の値が算定され(ステップS53)、最適分娩間隔算定処理は終了する。最適分娩間隔算定処理が終了すると、図8におけるステップS25に戻る。
【0085】
最適分娩間隔の特定は、シミュレーション期間であるn年の経過後に目標牛数の達成が可能である分娩間隔のうち、最長の日数を特定するものであり、ステップS41〜S53の処理を実行することで、n−1年の経過後には目標牛数の達成ができないが、n年の経過後に目標牛数の達成が可能な分娩間隔を特定することが可能となる。仮分娩間隔として、最適分娩間隔が含まれる可能性のある範囲の上限値と下限値の中間値が用いられ、ステップS45〜S52の処理を繰り返して、中間値が算定結果に応じて変化する(目標牛数に達していない場合は、より短い仮分娩間隔を新たに設定し、目標牛数に達している場合は、より長い仮分娩間隔を新たに設定する)ことで、最適分娩間隔が含まれる可能性のある範囲が限定され、最終的に最適分娩間隔が特定されることになる。このような処理を経ることでステップS2〜S10の処理の回数は数回程度で済むことになり、シミュレーション装置1の処理負荷の軽減にもつながる。
【0086】
なお、上記の実施の形態では目標値として育成子牛数、初妊牛数または経産牛数としたが、目標値として生乳生産量が設定されても良い。この場合、生乳生産量は経産牛数から算定されるため、目標生乳生産量から目標経産牛数を逆算し、目標経産牛数に達するように最適分娩間隔を算定すればよい。また、上記の実施の形態では、初期牛数と目標牛数を入力し、各変化率の値を固定の値として、最適な分娩間隔を求めることとしたが、初期牛数、目標牛数、特定の分娩間隔を利用者が入力し、最適な変化率(例えば、各牛の販売率等)を算定するような構成とすることも可能である。この場合、図8、図9について説明したのと同様の方法で、最適な変化率の算定が行なわれる。
【0087】
図10は、本発明の実施の形態にかかる端末16の表示画面の変化を表す図である。この実施の形態では、利用者が端末16からシミュレーション装置1に対してログインすると、シミュレーション装置1から端末16に情報が送信され、図10(a)のように「売上高を試算」と「分娩間隔を試算」の二つのシミュレーション方法を選択する画面が、端末16の表示画面160に表示される。
【0088】
利用者が「売上高を試算」を選択入力すると、その入力は端末16からシミュレーション装置1に送信され、受信したシミュレーション装置1は、初期値を入力させるための画面情報を端末16に送信し、端末16はこの情報を受信して図10(b)のように表示画面160に表示する。ここで、利用者が初期値を入力し、入力ボタンを選択すると、入力された初期値は端末16からシミュレーション装置1に送信される。シミュレーション装置1は、受信した初期値をもとに図7のステップS2〜S10までの牛群評価処理を行ない、ステップS10において算定結果を端末16に送信する。
【0089】
端末16は、図10(c)のようにして、受信した算定結果を表示画面160に表示する。算定結果には、シミュレーション期間における売上高の推移を表したグラフ161、およびシミュレーション期間における売上高や各牛群の推移を表したテーブル162が表示される。利用者は表示画面160に表示されたグラフ161やテーブル162をもとに、牧場の経営評価を行なう。
【0090】
なお、算定条件を変更し、再度シミュレーションを行なうことを利用者が希望する場合は、利用者は「条件を変更」ボタン163を選択入力することにより、算定条件の変更が可能である。ここで、変更可能な算定条件は初期値だけに限定されず、図10(d)のように、初妊牛や経産牛等の販売率を変更可能としてもよい。算定条件の変更に関する情報が端末16に入力されると、入力された情報はシミュレーション装置1に送信され、受信したシミュレーション装置1は変更された算定条件をもとに牛群評価処理を行なう。変更された算定条件をもとに得られた算定結果は、再び端末16に送信され、図10(c)のように端末16の表示画面160に表示される。
【0091】
利用者が「分娩間隔を試算」を選択入力すると、その入力は端末16からシミュレーション装置1に送信され、受信したシミュレーション装置1は、初期値および目標値を入力させるための画面情報を端末16に送信し、端末16はこの情報を受信して図10(e)のように表示画面160に表示する。ここで、利用者が初期値および目標値を入力し、入力ボタンを選択すると、入力された初期値および目標値は端末16からシミュレーション装置1に送信される。シミュレーション装置1は、受信した初期値および目標値をもとに、図8および図9の最適分娩間隔評価処理を行ない、ステップS25において算定結果を端末16に送信する。
【0092】
端末16は、図10(f)のようにして、受信した算定結果を表示画面160に表示する。算定結果には、最適分娩間隔の算定結果164のほか、シミュレーション期間における売上高の推移を表したグラフ161、シミュレーション期間における売上高や牛群の推移を表したテーブル162が表示される。利用者は表示画面160に表示された算定結果をもとに、牧場の経営評価を行なう。
【0093】
なお、算定条件を変更し、再度シミュレーションを行なうことを利用者が希望する場合は、利用者は「条件を変更」ボタン165を選択入力することにより、算定条件の変更が可能である。ここで、変更可能な算定条件は初期値だけに限定されず、図10(g)のように、初妊牛や経産牛等の販売率を変更可能としてもよい。算定条件の変更に関する情報が端末16に入力されると、シミュレーション装置1は変更された算定条件をもとに最適分娩間隔評価処理を行なう。変更された算定条件をもとに得られた算定結果は、図10(f)のように端末16の表示画面160に表示される。
【0094】
なお、上記の実施の形態に加えて、それぞれの分類の牛の購入または販売を適宜設定できる構成としても良い。どの分類の牛の購入または販売を重視するかは、牧場の経営方針に大きく左右される。牧場の経営方針は、頭数の規模拡大を重視する方針、頭数の規模を一定にし、若い牛を購入して老齢の牛を販売することにより牛の回転を早める方針、肉用牛として販売することを重視する方針など、様々な方針を取ることができる。したがって、代表的な経営方針に沿うような変化率テーブル40をそれぞれ予め設定しておき、利用者に選択させるようにしても良い。さらに、利用者による変化率テーブル40の設定値の一部変更を可能にしてもよい。
【0095】
上記の実施の形態では、経営評価処理について、売上高を算定する構成としたが、売上高でなく利益を算定するように構成しても良い。この場合、各分類の牛の飼料費・購入費、牛舎などの施設の建設費・維持費、および労務費などの原価を設定した原価テーブルを設定しておき、これをもとに利益を算定する構成とすることができる。
【0096】
上記の実施の形態では、牛群について説明したが、他の動物に応用することも可能である。他の動物に応用する場合は、変化率テーブルおよび単価テーブルの設定値を適切な値に変更すればよい。例えば妊娠期間が5か月程度の動物(山羊など)では、初妊牛に関する変化率、および分娩間隔を変更し、さらに一つの期を半年にするなどの設定変更により、本発明を応用することができる。さらに、一回の分娩で多数の子を産むことが通常である動物の場合(例えば、豚など)は、一回に分娩する子の数の平均値に分娩動物数を掛けた数に、変化率テーブルの出生率を掛けることで、出生数を算定する構成とすればよい。
【符号の説明】
【0097】
1 シミュレーション装置
11 CPU
12 RAM
13 HDD
14 通信インターフェイス
15 通信ネットワーク
16 端末
40 変化率テーブル
60 牛群評価テーブル
80 単価テーブル
90 経営評価テーブル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の動物が存在する所定の動物群内における、分娩の経験がある経産動物の数、分娩の経験がなく妊娠もしていない非経産動物の数、および初めての妊娠をしている初妊動物の数についての所定の期間における変動を算定するシミュレーション装置であって、
前記所定の期間における期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに該動物群における分娩間隔を記憶する記憶手段と、
記憶手段により記憶された期首の非経産動物の数をもとに、前記所定の期間内に妊娠を経て初めての分娩を行なう第1の初産動物の数、前記所定の期間内に初妊動物となる期末の初妊動物の数、および前記所定の期間内に変化しない第1の非経産動物の数を算定する非経産動物変化数算定手段と、
記憶手段により記憶された期首の初妊動物の数をもとに、前記所定の期間内に初めての分娩を行なう第2の初産動物の数を算定する初妊動物変化数算定手段と、
記憶手段により記憶された期首の経産動物の数、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数および初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数をもとに、期末の経産動物の数を算定する経産動物変化数算定手段と、
非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数、初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数、ならびに記憶手段により記憶された期首の経産動物の数および分娩間隔をもとに、前記所定の期間内に産まれうる出生動物の数を算定する出生動物数算定手段と、
非経産動物変化数算定手段により算定された第1の非経産動物の数、および出生動物数算定手段により算定された出生動物の数をもとに、前記所定の期間における期末の非経産動物の数を算定する期末非経産動物数算定手段と
を備えることを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項2】
記憶手段が、前記所定の期間内に期首の非経産動物が初妊動物になる割合である初妊動物率、前記所定の期間内に非経産動物が妊娠を経て初産動物になる割合である第1の初産動物率、および前記所定の期間内に期首の初妊動物が初産動物になる割合である第2の初産動物率とをさらに記憶し、
非経産動物変化数算定手段が、記憶手段により記憶された初妊動物率および期首の非経産動物の数をもとに期末の初妊動物の数を算定し、かつ記憶手段により記憶された第1の初産動物率および期首の非経産動物の数をもとに第1の初産動物の数を算定し、
初妊動物変化数算定手段が、記憶手段により記憶された第2の初産動物率および期首の初妊動物の数をもとに、第2の初産動物の数を算定する
ことを特徴とする請求項1記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
記憶手段が、経産動物のうち搾乳が可能な動物の割合である搾乳動物率をさらに記憶し、
シミュレーション装置が、さらに、
記憶手段により記憶された期首の経産動物の数、経産動物変化数算定手段により算定された期末の経産動物の数および搾乳動物率をもとに、搾乳が可能な搾乳動物の数を算定する搾乳動物数算定手段と、
搾乳動物数算定手段により算定された、搾乳動物の数をもとに、前記所定の期間内において出荷が可能な乳量を算定する乳量算定手段と
を備えることを特徴とする請求項1または2記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
シミュレーション装置が、さらに、
前記所定の期間の整数倍であるシミュレーション期間についての利用者からの入力を受け付ける入力受付手段と、
記憶手段に記憶された期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数、および期首の初妊動物の数を、それぞれ、経産動物変化数算定手段により算定された期末の経産動物の数、期末非経産動物数算定手段により算定された期末の非経産動物の数、および非経産動物変化数算定手段により算定された期末の初妊動物の数で更新する更新手段とを備え、
更新された期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数、および期首の初妊動物の数をもととした、非経産動物変化数算定手段、初妊動物変化数算定手段、経産動物変化数算定手段、出生動物数算定手段および期末非経産動物数算定手段による算定、および更新手段による更新を、前記整数に対応する回数繰り返すことにより、シミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、および期末の初妊動物の数を算定する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記分娩間隔が、仮に設定された仮分娩間隔であって、
シミュレーション装置が、さらに、
利用者の入力に従って、シミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、または期末の初妊動物の数についての目標数を受け付ける目標数受付手段と、
仮分娩間隔をもとに、非経産動物変化数算定手段、初妊動物変化数算定手段、経産動物変化数算定手段、出生動物数算定手段および期末非経産動物数算定手段による算定、ならびに更新手段による更新を、前記整数に対応する回数繰り返すことにより、シミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、および期末の初妊動物の数を算定する仮算定手段と、
仮算定手段により算定されたシミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、または期末の初妊動物の数が、目標数受付手段により受け付けられた目標数に達しているかについて判定する目標達成可否判定手段と、
目標達成可否判定手段により目標数に達していないと判定された場合は、より短く設定された仮分娩間隔を新たに設定し、目標数に達していると判定された場合は、より長く設定された仮分娩間隔を新たに設定する仮分娩間隔設定手段と、
仮分娩間隔設定手段により設定された新たな仮分娩間隔をもとに、仮算定手段によりシミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、および期末の初妊動物の数を算定し、仮分娩間隔が目標達成可否判定手段により目標数に達していると判定される最長の分娩間隔に達するまで仮分娩間隔設定手段による設定、仮算定手段による算定、目標達成可否判定手段による判定を繰り返し、目標数を達成するための最適な分娩間隔を特定する最適分娩間隔特定手段と
を備えることを特徴とする請求項4記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
複数の動物が存在する所定の動物群内における、分娩の経験がある経産動物の数、分娩の経験がなく妊娠もしていない非経産動物の数、および初めての妊娠をしている初妊動物の数についての所定の期間における変動をコンピュータ装置に算定させるシミュレーション方法であって、
前記所定の期間における期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに該動物群における経産動物の分娩間隔を記憶領域に記憶させるステップと、
記憶領域に記憶された期首の非経産動物の数をもとに、前記所定の期間内に妊娠を経て初めての分娩を行なう第1の初産動物の数、前記所定の期間内に初妊動物となる期末の初妊動物の数、および前記所定の期間内に変化しない第1の非経産動物の数を算定させるステップと、
記憶領域に記憶された期首の初妊動物の数をもとに、前記所定の期間内に初めての分娩を行なう第2の初産動物の数を算定させるステップと、
記憶領域に記憶された期首の経産動物の数、算定された第1の初産動物の数および算定された第2の初産動物の数をもとに、期末の経産動物の数を算定させるステップと、
算定された第1の初産動物の数、算定された第2の初産動物の数、ならびに記憶領域に記憶された期首の経産動物の数および分娩間隔をもとに、前記所定の期間内に産まれうる出生動物の数を算定させるステップと、
算定された第1の非経産動物の数、および算定された出生動物の数をもとに、前記所定の期間における期末の非経産動物の数を算定させるステップと
から構成されることを特徴とするシミュレーション方法。
【請求項7】
複数の動物が存在する所定の動物群内における、分娩の経験がある経産動物の数、分娩の経験がなく妊娠もしていない非経産動物の数、および初めての妊娠をしている初妊動物の数についての所定の期間における変動を算定するサーバ装置と、通信ネットワークを介して前記サーバ装置と通信が可能な端末装置とを備えるシミュレーションシステムであって、
端末装置が、
利用者の入力に従って、前記所定の期間における期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに該動物群における分娩間隔の入力を受け付ける入力受付手段と、
入力受付手段により受け付けられた期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに分娩間隔をサーバ装置に送信する情報送信手段とを備え、
サーバ装置が、
端末装置から送信された期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに分娩間隔を受信する情報受信手段と、
情報受信手段により受信された期首の非経産動物の数をもとに、前記所定の期間内に妊娠を経て初めての分娩を行なう第1の初産動物の数、前記所定の期間内に初妊動物となる期末の初妊動物の数、および前記所定の期間内に変化しない第1の非経産動物の数を算定する非経産動物変化数算定手段と、
情報受信手段により受信された期首の初妊動物の数をもとに、前記所定の期間内に初めての分娩を行なう第2の初産動物の数を算定する初妊動物変化数算定手段と、
情報受信手段により受信された期首の経産動物の数、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数および初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数をもとに、期末の経産動物の数を算定する経産動物変化数算定手段と、
非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数、初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数、ならびに情報受信手段により受信された期首の経産動物の数および分娩間隔をもとに、前記所定の期間内に産まれうる出生動物の数を算定する出生動物数算定手段と、
非経産動物変化数算定手段により算定された第1の非経産動物の数、および出生動物数算定手段により算定された出生動物の数をもとに、前記所定の期間における期末の非経産動物の数を算定する期末非経産動物数算定手段と
を備えることを特徴とするシミュレーションシステム。
【請求項1】
複数の動物が存在する所定の動物群内における、分娩の経験がある経産動物の数、分娩の経験がなく妊娠もしていない非経産動物の数、および初めての妊娠をしている初妊動物の数についての所定の期間における変動を算定するシミュレーション装置であって、
前記所定の期間における期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに該動物群における分娩間隔を記憶する記憶手段と、
記憶手段により記憶された期首の非経産動物の数をもとに、前記所定の期間内に妊娠を経て初めての分娩を行なう第1の初産動物の数、前記所定の期間内に初妊動物となる期末の初妊動物の数、および前記所定の期間内に変化しない第1の非経産動物の数を算定する非経産動物変化数算定手段と、
記憶手段により記憶された期首の初妊動物の数をもとに、前記所定の期間内に初めての分娩を行なう第2の初産動物の数を算定する初妊動物変化数算定手段と、
記憶手段により記憶された期首の経産動物の数、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数および初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数をもとに、期末の経産動物の数を算定する経産動物変化数算定手段と、
非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数、初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数、ならびに記憶手段により記憶された期首の経産動物の数および分娩間隔をもとに、前記所定の期間内に産まれうる出生動物の数を算定する出生動物数算定手段と、
非経産動物変化数算定手段により算定された第1の非経産動物の数、および出生動物数算定手段により算定された出生動物の数をもとに、前記所定の期間における期末の非経産動物の数を算定する期末非経産動物数算定手段と
を備えることを特徴とするシミュレーション装置。
【請求項2】
記憶手段が、前記所定の期間内に期首の非経産動物が初妊動物になる割合である初妊動物率、前記所定の期間内に非経産動物が妊娠を経て初産動物になる割合である第1の初産動物率、および前記所定の期間内に期首の初妊動物が初産動物になる割合である第2の初産動物率とをさらに記憶し、
非経産動物変化数算定手段が、記憶手段により記憶された初妊動物率および期首の非経産動物の数をもとに期末の初妊動物の数を算定し、かつ記憶手段により記憶された第1の初産動物率および期首の非経産動物の数をもとに第1の初産動物の数を算定し、
初妊動物変化数算定手段が、記憶手段により記憶された第2の初産動物率および期首の初妊動物の数をもとに、第2の初産動物の数を算定する
ことを特徴とする請求項1記載のシミュレーション装置。
【請求項3】
記憶手段が、経産動物のうち搾乳が可能な動物の割合である搾乳動物率をさらに記憶し、
シミュレーション装置が、さらに、
記憶手段により記憶された期首の経産動物の数、経産動物変化数算定手段により算定された期末の経産動物の数および搾乳動物率をもとに、搾乳が可能な搾乳動物の数を算定する搾乳動物数算定手段と、
搾乳動物数算定手段により算定された、搾乳動物の数をもとに、前記所定の期間内において出荷が可能な乳量を算定する乳量算定手段と
を備えることを特徴とする請求項1または2記載のシミュレーション装置。
【請求項4】
シミュレーション装置が、さらに、
前記所定の期間の整数倍であるシミュレーション期間についての利用者からの入力を受け付ける入力受付手段と、
記憶手段に記憶された期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数、および期首の初妊動物の数を、それぞれ、経産動物変化数算定手段により算定された期末の経産動物の数、期末非経産動物数算定手段により算定された期末の非経産動物の数、および非経産動物変化数算定手段により算定された期末の初妊動物の数で更新する更新手段とを備え、
更新された期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数、および期首の初妊動物の数をもととした、非経産動物変化数算定手段、初妊動物変化数算定手段、経産動物変化数算定手段、出生動物数算定手段および期末非経産動物数算定手段による算定、および更新手段による更新を、前記整数に対応する回数繰り返すことにより、シミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、および期末の初妊動物の数を算定する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のシミュレーション装置。
【請求項5】
前記分娩間隔が、仮に設定された仮分娩間隔であって、
シミュレーション装置が、さらに、
利用者の入力に従って、シミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、または期末の初妊動物の数についての目標数を受け付ける目標数受付手段と、
仮分娩間隔をもとに、非経産動物変化数算定手段、初妊動物変化数算定手段、経産動物変化数算定手段、出生動物数算定手段および期末非経産動物数算定手段による算定、ならびに更新手段による更新を、前記整数に対応する回数繰り返すことにより、シミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、および期末の初妊動物の数を算定する仮算定手段と、
仮算定手段により算定されたシミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、または期末の初妊動物の数が、目標数受付手段により受け付けられた目標数に達しているかについて判定する目標達成可否判定手段と、
目標達成可否判定手段により目標数に達していないと判定された場合は、より短く設定された仮分娩間隔を新たに設定し、目標数に達していると判定された場合は、より長く設定された仮分娩間隔を新たに設定する仮分娩間隔設定手段と、
仮分娩間隔設定手段により設定された新たな仮分娩間隔をもとに、仮算定手段によりシミュレーション期間後における期末の経産動物の数、期末の非経産動物の数、および期末の初妊動物の数を算定し、仮分娩間隔が目標達成可否判定手段により目標数に達していると判定される最長の分娩間隔に達するまで仮分娩間隔設定手段による設定、仮算定手段による算定、目標達成可否判定手段による判定を繰り返し、目標数を達成するための最適な分娩間隔を特定する最適分娩間隔特定手段と
を備えることを特徴とする請求項4記載のシミュレーション装置。
【請求項6】
複数の動物が存在する所定の動物群内における、分娩の経験がある経産動物の数、分娩の経験がなく妊娠もしていない非経産動物の数、および初めての妊娠をしている初妊動物の数についての所定の期間における変動をコンピュータ装置に算定させるシミュレーション方法であって、
前記所定の期間における期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに該動物群における経産動物の分娩間隔を記憶領域に記憶させるステップと、
記憶領域に記憶された期首の非経産動物の数をもとに、前記所定の期間内に妊娠を経て初めての分娩を行なう第1の初産動物の数、前記所定の期間内に初妊動物となる期末の初妊動物の数、および前記所定の期間内に変化しない第1の非経産動物の数を算定させるステップと、
記憶領域に記憶された期首の初妊動物の数をもとに、前記所定の期間内に初めての分娩を行なう第2の初産動物の数を算定させるステップと、
記憶領域に記憶された期首の経産動物の数、算定された第1の初産動物の数および算定された第2の初産動物の数をもとに、期末の経産動物の数を算定させるステップと、
算定された第1の初産動物の数、算定された第2の初産動物の数、ならびに記憶領域に記憶された期首の経産動物の数および分娩間隔をもとに、前記所定の期間内に産まれうる出生動物の数を算定させるステップと、
算定された第1の非経産動物の数、および算定された出生動物の数をもとに、前記所定の期間における期末の非経産動物の数を算定させるステップと
から構成されることを特徴とするシミュレーション方法。
【請求項7】
複数の動物が存在する所定の動物群内における、分娩の経験がある経産動物の数、分娩の経験がなく妊娠もしていない非経産動物の数、および初めての妊娠をしている初妊動物の数についての所定の期間における変動を算定するサーバ装置と、通信ネットワークを介して前記サーバ装置と通信が可能な端末装置とを備えるシミュレーションシステムであって、
端末装置が、
利用者の入力に従って、前記所定の期間における期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに該動物群における分娩間隔の入力を受け付ける入力受付手段と、
入力受付手段により受け付けられた期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに分娩間隔をサーバ装置に送信する情報送信手段とを備え、
サーバ装置が、
端末装置から送信された期首の経産動物の数、期首の非経産動物の数および期首の初妊動物の数、ならびに分娩間隔を受信する情報受信手段と、
情報受信手段により受信された期首の非経産動物の数をもとに、前記所定の期間内に妊娠を経て初めての分娩を行なう第1の初産動物の数、前記所定の期間内に初妊動物となる期末の初妊動物の数、および前記所定の期間内に変化しない第1の非経産動物の数を算定する非経産動物変化数算定手段と、
情報受信手段により受信された期首の初妊動物の数をもとに、前記所定の期間内に初めての分娩を行なう第2の初産動物の数を算定する初妊動物変化数算定手段と、
情報受信手段により受信された期首の経産動物の数、非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数および初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数をもとに、期末の経産動物の数を算定する経産動物変化数算定手段と、
非経産動物変化数算定手段により算定された第1の初産動物の数、初妊動物変化数算定手段により算定された第2の初産動物の数、ならびに情報受信手段により受信された期首の経産動物の数および分娩間隔をもとに、前記所定の期間内に産まれうる出生動物の数を算定する出生動物数算定手段と、
非経産動物変化数算定手段により算定された第1の非経産動物の数、および出生動物数算定手段により算定された出生動物の数をもとに、前記所定の期間における期末の非経産動物の数を算定する期末非経産動物数算定手段と
を備えることを特徴とするシミュレーションシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−81572(P2011−81572A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232854(P2009−232854)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(592172574)明治飼糧株式会社 (15)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(592172574)明治飼糧株式会社 (15)
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