説明

シャックル

【課題】シャックルピンの脱落を完全に防止することができるようにしたシャックルを提供することである。
【解決手段】シャックル本体1の対向一対の軸部3a、3bの一方の軸部3aの端部にねじ孔5を形成し、他方の軸部3bの端部にピン挿通孔6を設ける。ピン挿通孔6の小径孔部6bの内径をねじ孔5の内径より小径とする。ねじ孔5とピン挿通孔6間に渡されるシャックルピン11の先端部にねじ孔5にねじ係合可能なねじ軸12を設け、そのねじ軸12がねじ孔5にねじ係合する状態でピン挿通孔6の小径孔部6bから外側に位置する後端部に頭部13を形成する。ピン挿通孔6の小径孔部6bの外側開口端の周囲部に対する頭部13の当接、および、大径孔部6aの閉塞端面に対するねじ軸12の付け根側の端面12aの当接によってシャックルピン11の脱落を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、安全ネットを張設する場合や、クレーンによって荷物を積み降ろしする場合等に用いられるシャックルに関する。
【背景技術】
【0002】
建設現場等の高所で作業する場合、作業者の安全性を確保するため、安全ネットが張設される。その安全ネットを張設する際には、U字形シャックル本体の対向一対の軸部の端部間に頭部を有するシャックルピンを掛け渡したシャックルが用いられる。
【0003】
ここで、シャックルピンが、対向一対の軸部の端部に形成されたピン孔に挿入され、一方のピン孔から外側に位置するシャックルピンの先端部外周の雄ねじにナットをねじ係合し、そのナットの締め付けによって上記シャックルピンを抜止めする構成であると、ナットの取外しにより、ピン孔からシャックルピンを完全に引き抜くことができるため、上記シャックルピンの取付け、取外しの際に、そのシャックルピンを誤って落下させる危険がある。
【0004】
そのような不都合を解消するため、特許文献1に記載のシャックルにおいては、シャックル本体の対向一対の軸部の端部それぞれにねじ孔を形成し、その一対のねじ孔間に渡されるシャックルピンの先端部外周に雄ねじを設け、その雄ねじを一方のねじ孔にねじ係合して一対の軸部の対向端部間にシャックルピンを渡し、そのシャックルピンがシャックル本体の対向一対の軸部の端部間に形成された開口を開放する開放状態で、そのシャックルピンの雄ねじの端部を一方の軸部に形成されたねじ孔の雌ねじの端部に軸方向で対向させてシャックルピンを抜止めするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3116014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載されたシャックルにおいては、シャックルピンを回転させない限り、そのシャックルピンを取外すことができないが、上記シャックルピンの開放状態で、雄ねじとねじ孔の雌ねじがねじ係合する場合がある。
【0007】
雄ねじとねじ孔の雌ねじが万一ねじ係合すると、シャックルの取り扱い時の振動等でシャックルピンが回転して抜け落ちることがあり、シャックルピンの脱落を完全に防止することができない。
【0008】
また、上記従来のシャックルにおいては、シャックル本体の対向一対の軸部のそれぞれに下孔を形成し、その下孔に対するタッピングによって雌ねじを形成する必要があるため、製作に手間がかかり、コストも高いという不都合がある。
【0009】
この発明の課題は、シャックルピンの脱落を完全に防止することができるようにしたコストの安いシャックルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、この発明においては、U字形屈曲部の両端に対向一対の軸部が連設されたシャックル本体と、そのシャックル本体の対向一対の軸部の端部間に渡されるシャックルピンとからなるシャックルにおいて、前記対向一対の軸部の一方の軸部における端部に、他方の軸部に向く貫通状のねじ孔を形成し、他方の軸部の端部には前記ねじ孔と同軸上に、そのねじ孔の内径より小径のピン挿通孔を設け、前記シャックルピンが前記ピン挿通孔に挿入可能な外径とされ、そのシャックルピンの先端部に前記ねじ孔にねじ係合可能な大径のねじ軸部を形成し、そのねじ軸部を前記ねじ孔にねじ係合した状態で前記ピン挿通孔から外側に位置するシャックルピンの後端部にピン挿通孔に対して挿通不能な大きさの頭部を設けた構成を採用したのである。
【0011】
上記の構成からなるシャックルにおいて、シャックル本体の対向一対の軸部の端部間に形成された開口の閉鎖に際しては、シャックルピンの先端部に形成されたねじ軸部を一方の軸部に形成されたねじ孔にねじ込み、シャックルピンの後端部に設けられた頭部の付け根を他方の軸部に形成されたピン挿通孔の外側開口端の周囲部に当接させる。その当接によって、シャックルピンはねじ込み方向に移動するのが防止されることになり、ねじ込み方向への脱落が防止される。
【0012】
シャックルピンが対向一対の軸部の端部間に形成された開口を閉鎖する状態において、そのシャックルピンを弛める方向に回転し、ねじ孔に対するねじ軸部のねじ係合を解除して軸方向に引くことにより、対向一対の軸部の端部間に形成された開口を開放することができる。
【0013】
上記開口を開放するシャックルピンの開放状態において、先端部に設けられたねじ軸部の付け根側の端面がピン挿通孔の内側開口端の周囲部と軸方向で対向し、上記シャックルピンに引抜き方向の軸力が付加されると、そのねじ軸部の付け根側の端面がピン挿通孔の内側開口端の周囲部に当接し、その当接によってシャックルピンは引抜き方向に移動するのが防止され、抜止め状態とされる。
【0014】
ここで、ピン挿通孔を、大径孔部と小径孔部とからなる段付き孔とし、その段付き孔を大径孔部が対向する軸部側に位置するよう形成し、前記大径孔部の内径をねじ軸部の外径より大径とし、前記小径孔部の内径を前記ねじ軸部の外径より小径でシャックルピンの外径より大径とすると、大径孔部の閉塞端面にねじ軸部の付け根側の端面が当接する位置までシャックルピンを引抜き方向に移動させることができるため、対向一対の軸部の端部間に形成された開口を大きく開放させることができる。
【0015】
また、シャックルピンの径方向からのプレス押し潰しによって頭部を形成することにより、頭部を簡単に形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
上記のように、この発明に係るシャックルにおいては、シャックルピンがシャックル本体の対向一対の軸部の端部間に形成された開口を閉鎖する状態で、シャックルピンの後端部に設けられた頭部の付け根が他方の軸部に形成されたピン挿通孔の外側開口端の周囲部と軸方向で対向し、また、上記開口を開放する状態でねじ軸部の付け根側の端面がピン挿通孔の内側開口端の周囲部と軸方向で対向するため、シャックルピンの脱落を完全に防止することができる。
【0017】
また、シャックル本体の対向一対の軸部の一方にねじ孔を形成し、他方にピン挿通孔を設けたことにより、対向一対の軸部のそれぞれにねじ孔を形成する場合に比較して、製作が容易となり、コストの安いシャックルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明に係るシャックルの実施の形態を示す斜視図
【図2】図1に示すシャックルの一部切欠正面図
【図3】シャックルピンの閉鎖状態を示す一部切欠正面図
【図4】(I)乃至(IV)はシャックルの製造を段階的に示す一部切欠正面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図面に基いて説明する。図1乃至図3に示すように、この発明に係るシャックルは、シャックル本体1と、シャックルピン11とからなる。
【0020】
シャックル本体1は、U字形屈曲部2の両端に対向一対の軸部3a、3bを連設した構成とされている。対向一対の軸部3a、3bの端部には扁平な座板部4a、4bが形成され、一方の座板部4aには対向面に貫通するねじ孔5が設けられ、他方の座板部4bには、上記ねじ孔5と同軸上にピン挿通孔6が形成されている。
【0021】
ピン挿通孔6は、大径孔部6aと小径孔部6bとから成る段付き孔からなり、その大径孔部6aが一方の座板部4aと対向するようにして形成されている。この大径孔部6aの内径はねじ孔5の谷の径より大径とされ、一方、小径孔部6bはねじ孔5の内径より小径とされている。
【0022】
シャックルピン11は、上記小径孔部6bの内側に微少な間隙をおいて挿入可能な外径の丸軸からなり、そのシャックルピン11の先端部に大径のねじ軸12が形成され、そのねじ軸12がシャックル本体1の上記ねじ孔5に対してねじ係合可能とされている。
【0023】
図4(I)および(II)に示すように、シャックルピン11は、シャックル本体1の一方の軸部3aに形成されたねじ孔5の一側方から、そのねじ孔5およびピン挿通孔6に挿入されて、ねじ孔5にねじ軸12がねじ係合される。図4(III)に示すように、ねじ軸12の全体がねじ孔5にねじ係合された状態において、ピン挿通孔6から外側に位置するシャックルピン11の端部がプレスによる径方向への押し潰しによって扁平な頭部13が形成される。また、扁平な頭部13には対向一対の平面に貫通する工具係合孔14が形成される。
【0024】
ここで、頭部13は、ピン挿通孔6の小径孔部6bに対して挿通不能な大きさとされている。
【0025】
実施の形態で示すシャックルは上記の構造からなり、図3は、シャックルピン11のねじ軸12をシャックル本体1の一方の軸部3aに形成されたねじ孔5にねじ係合した状態を示し、シャックル本体1の対向一対の軸部3a、3bの対向部間に形成された開口7はシャックルピン11によって閉鎖状態とされている。
【0026】
開口7を閉鎖するシャックルピン11の閉鎖状態において、シャックルピン11の頭部13は、ピン挿通孔6における小径孔部6bの外側開口端の周囲部と軸方向で対向し、その対向によってシャックルピン11は図3の左方向に移動するのが防止される。
【0027】
図3に示すように、シャックルピン11が対向一対の軸部3a、3bの端部間に形成された開口7を閉鎖する状態において、そのシャックルピン11を弛める方向に回転し、ねじ孔5に対するねじ軸12のねじ係合を解除して軸方向に引くことにより、対向一対の軸部3a、3bの端部間に形成された開口7を開放することができる。
【0028】
図2および図4(IV)は、開口7を開放した状態を示し、そのシャックルピン11の開放状態において、先端部に設けられたねじ軸12の付け根側の端面が大径孔部6aの閉塞端面と軸方向で対向し、上記シャックルピン11に図2の矢印で示す方向の軸力が付加されると、ねじ軸12の付け根側の端面12aが大径孔部6aの閉塞端面に当接する。その当接によってシャックルピン11は抜止めされる。
【0029】
このように、シャックルピン11がシャックル本体1の対向一対の軸部3a、3bの端部間に形成された開口7を閉鎖する状態で、シャックルピン11の後端部に設けられた頭部13の付け根が他方の軸部3bに形成されたピン挿通孔6の小径孔部6bの外側開口端の周囲部と軸方向で対向し、また、上記開口7を開放する状態でねじ軸12の付け根側の端面12aが大径孔部6aの閉塞端面と軸方向で対向するため、シャックルの使用の際にシャックルピン11が脱落することがなく、シャックルを安全に使用することができる。
【0030】
実施の形態においては、ピン挿通孔6を段付き孔としたが、ねじ孔5の内径より小径でシャックルピン11の外径より大径のストレート孔としてもよい。
【符号の説明】
【0031】
2 屈曲部
3a 軸部
3b 軸部
5 ねじ孔
6 ピン挿通孔
6a 大径孔部
6b 小径孔部
11 シャックルピン
12 ねじ軸
13 頭部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字形屈曲部の両端に対向一対の軸部が連設されたシャックル本体と、そのシャックル本体の対向一対の軸部の端部間に渡されるシャックルピンとからなるシャックルにおいて、
前記対向一対の軸部の一方の軸部における端部に、他方の軸部に向く貫通状のねじ孔を形成し、他方の軸部の端部には前記ねじ孔と同軸上に、そのねじ孔の内径より小径のピン挿通孔を設け、前記シャックルピンが前記ピン挿通孔に挿入可能な外径とされ、そのシャックルピンの先端部に前記ねじ孔にねじ係合可能な大径のねじ軸部を形成し、そのねじ軸部を前記ねじ孔にねじ係合した状態で前記ピン挿通孔から外側に位置するシャックルピンの後端部にピン挿通孔に対して挿通不能な大きさの頭部を設けたことを特徴とするシャックル。
【請求項2】
前記ピン挿通孔が、大径孔部と小径孔部とからなる段付き孔とされ、その段付き孔を大径孔部が対向する軸部側に位置するよう形成し、前記大径孔部の内径をねじ軸部の外径より大径とし、前記小径孔部の内径を前記ねじ軸部の外径より小径でシャックルピンの外径より大径とした請求項1に記載のシャックル。
【請求項3】
前記頭部が、シャックルピンの径方向からのプレス押し潰しによる請求項1又は2に記載のシャックル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−80517(P2011−80517A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232469(P2009−232469)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000208101)大洋製器工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】