説明

シャツのずり上がり防止用の補助具

【課題】身体運動に伴うシャツのずり上がりを防止する補助具を提供し、身体運動を行っても、シャツがずり上がらず、見栄えを維持しつつ、着用者の着用感にも配慮したものを実現する。
【解決手段】ずり上がり防止用補助具9を係止させる場所を前身頃端裾4、5と前身頃脇線裾6、7にすることにより、ずり上がり防止の効果を生ずる場所を前身頃2に止めることと、ずり上がり防止用補助具9の一方の端に複数個のボタン穴を穿設することにより、着用者の体型にあったずり上がり防止用の補助具の長さを選択することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャツのずり上がり防止に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シャツを着用して、しばらく経つと、知らぬ間にズボン等に収納されたシャツの下部裾部分がずり上がり、シャツの身頃部全般にたるみが生じ、極めて不体裁になることがよくあるが、これは身体各部の規則的もしくは不規則的な運動、例えば、ラジオ体操等で、上体を屈伸する等により、ズボンに収納されたシャツの下部裾部分がずり上がってしまうからである。
【0003】
そして、このずり上がりを防止するために、後身頃の生地を予め長めにとり、股下を通して、前身頃の裾に係止するという方法が採られてきた、これによると、シャツの下部裾部分は後身頃から、股下を通して前身頃に渡した生地により、ずり上がりが防止される。
【0004】
しかし、この方法によると、シャツの身頃部分には、たるみは生じないので、見栄えは改善されるが、逆に、シャツの上方への力を抑止するため、窮屈感等の不利益を被ることになってしまう、本来、シャツのずり上がりが発生するのは、規則的もしくは不規則的な身体運動により生じるわけであり、後身頃の生地を予め長めにとり、股部を通して前身頃の裾に縫着ないし係止することから、身体運動により生じたシャツ上方へずり上げる力は、股部を通した後身頃の生地により、押さえることはできるが、逆に、身体運動の自由な動きに制約を加えることになってしまい着用感を著しく低下させる。
【0005】
そこで、身体運動により生じた筋肉の自由な動きに制約を加えずに、なおかつ、シャツの身頃部分のたるみがでない、すなわち、着用感を維持しながら、見映えのよいシャツのずり上がり防止具の提供が望まれている。
【0006】
尚、この種のシャツの裾のずり上がり防止に関連する先行技術文献情報としては下記の特許文献1や特許文献2などがある。
【特許文献1】実公平2−22302号公報
【特許文献2】実公昭53−113707号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に示されている如き既提案のシャツの裾のずり上がり防止は、生地を予め長めに裁断し、着用時に大股内側を通るずり上がりループ1対を前後に掛け渡し、もしくは、後身頃の裾と前身頃の裾とを伸縮性のある平ゴム紐等で接続させ、シャツの身頃のだぶつきを防止したものがあるが、身体運動によって生じるシャツをずり上げる力が防止されても、身体活動全般に対する制約がなお生じ、着用感の維持・向上には及ばない。
【0008】
より具体的に述べると、特許文献1で提案されているシャツの裾のずり上がり防止は、シャツの身生地を利用して生地を予め長めに裁断し、着用時に大股内側を通るずり上がりループを前後に掛け渡したものである、すなわち、それぞれ上前身端、下前身端の裾に後身頃から左右一対取り付けた構造を成し、その左右一対のずり上がり止めループをそれぞれ股下に通すことによりシャツの裾のずり上がりを防止するようになっているが、このような構造のずり上がり防止では、確かに、身体運動により生じるシャツの裾部をずり上げる力に対し、股部にかかる負担が分散されるという効果を期待できても、なお、シャツと該ずり上がり止めループが一体型のため、着用者に合せた該ループの長さが確保されず、着用感の維持・向上に関して、十分とはいえない。
【0009】
また、特許文献2で提案されているシャツの身頃のずり上がり防止用の補助具は、特許文献1に比べて、分離型なので、着用者に合せた該補助具の長さが確保され、優位性は認められるがそもそも、身体運動により生じた筋肉の自由な動きにより生じるシャツの身頃のずり上がりは、その力の発生に対する抑制により、シャツのずり上がりを防止するため、該ずり上がり防止用の補助具が通過する股下に対しては、シャツの身頃が上方に引っ張られる力が、股下にかかることになり、窮屈感を感じながら着用するという可能性が高い。そして、該特許文献2で主張されている該ずり上がり防止用の補助具が、平ゴム紐であっても、平ゴムの伸縮によりシャツの裾部をずり上げる力に対し、緩衝材的な機能を期待できても、なお、着用感の維持・向上に関して、不十分といえ、また、係止位置が後身端なので、着用前に該平ゴム紐を取付けなければならず、また取り外しもシャツを脱いだ後でなければならず、係止に手間がかかるのみならず、シャツを脱ぐにあたっても、手間がかかる虞がある。
【0010】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、身体運動により生じた筋肉の自由な動きに対する制約を軽減し得るシャツの身頃のずり上がり防止用の補助具を提供することによって、着用感の低減を抑えつつ、見映えのよいシャツ着用を実現することを目的としている。
【0011】
具体的には、補助具の係止位置を変更することにより、シャツの身頃のずり上がりを防止し、尚且つ、着用者の着用感の低減を抑える。すなわち、前身端と後身頃とを接続することによるシャツ全般のずり上がりを防止せずに、シャツのずり上がりにより、一番見映えの悪い部分のみを該ずり上がり防止の対象にすることにより、着用者の着用感の低減を抑えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、一般に市販されているシャツの上前身端と下前身端の裾、脇線裾に帯状の布帛生地を係止、すなわち、上前身端裾に係止した帯状の布帛生地を略U字状に折り曲げ、左足付け根部を通し、上前身頃の脇線の裾に係止する、他方、下前身端裾に係止した帯状の布帛生地を略U字状に折り曲げ、右足付け根部を通し、下前身頃の脇線の裾に係止することを特徴とするものである。
【0013】
而して、このように構成されたシャツの裾のずり上がり防止用の補助具は、各前身端と脇とを帯状の布帛生地でもって接続されるものであり、その目的とするところは、身体運動に伴う前身頃と脇のずり上がりを防止するものであり、後身頃については、ずり上がり防止効果は直接には及ばない。
【0014】
なぜなら、身体各部の規則的もしくは不規則的な運動に基づく、シャツの裾部のずり上がりから生じる身頃のたるみによる不体裁は、一般的に後身頃部分よりも、前身頃部分の方が気になるものであり、自由な身体運動を制約するシャツのずり上がり防止用の補助具は、一般的に見映えを気にする前身頃部分に設置し、後身頃部分には設置の必要性は少ないと考える。
【0015】
また、シャツの裾部のずり上がりを防止するため、両足付け根にそれぞれ通し、前身端裾と脇線裾に係止するずり上がり防止用の補助具は、身体運動によりシャツの裾がずり上がることを防止するため、両足付け根にかかる力が後身頃部分に該防止具を係止しないことにより、軽減することができ、着用感の低減を阻止することができる。
【0016】
以上のことにより、シャツの前身頃部分には、ずり上がりによるシャツの身頃部分のたるみは生じないが、後身頃には、ずり上がりによるシャツの身頃部分のたるみは生じる、このことは、後身頃部分は身体運動により生じた筋肉の自由な動きを制約しない結果であり、着用感を低減させないためのものである。
【0017】
そして、このシャツのずり上がり防止用の補助具の両端の一方は、ボタン穴を一個穿設し、他方は、複数個穿設することにより、紐状の布帛生地製の補助具の長さを変更することが可能となり着用者に合せた適正な紐状のずり上がり防止用補助具の長さを維持できることになる。
【0018】
また、本発明は、シャツのずり上がり防止用の補助具を係止するにあたり、予め、シャツの前身端、脇線の表生地側の裾にボタンを縫着するが、該ボタンを縫着するにあたって、着用者の体型にあった位置にボタンを縫着することが可能であり、前項と相まって、着用者の着用感を考慮することができる。
【0019】
さらに、本発明はシャツに、ずり上がり防止用の補助具の両端のボタン穴を上前端裾と脇線裾に縫着されたボタンに係止するが、後身頃の裾に係止することよりも容易であり、シャツを着用した後での当該補助具の取り外しが可能である。
【0020】
そして、市販のどんなシャツでも、本発明のずり上がり防止用の補助具を使用できる点で汎用性があり、市販のシャツの上前身端、下前身端及び脇線の各裾に着用者がボタンを縫着するだけで、該ずり上がり防止用補助具を係止でき、ボタンを縫着するにあたって、着用者の体型にあった裾の位置にボタンを縫着することができる。
【0021】
このように構成されたずり上がり防止用の補助具は、着用者の着用感の維持とシャツ着用の見栄えの維持という両方の目的を達成するため、シャツの見栄えの維持にあたっては、一般的に着用者が気になる前身頃部分に限定し、比較的気にならない後身頃部分については、補助具を係止せず、身体運動への制約を軽減させ、なおかつ、シャツの裾部のずり上がりを防止するため、両足付け根にかかる負担も、前身頃だけになり、負荷が軽減されることにより、着用者の着用感にも配慮できる。
【0022】
さらに、シャツの前身端裾と脇線裾とに予めボタンを縫着し、その縫着されたボタンに当該補助具の両端のボタン穴を係止し、係止にあたっては、着用者の体型に合せたボタン穴に係止すること、そして、シャツの前身端裾と脇線裾とに縫着されるボタンの縫着位置は、着用者の体型にあった位置に縫着することによって、着用者の着用感を考慮できる。
【発明の効果】
【0023】
上記した本発明のずり上がり防止用の補助具によれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0024】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、前身端裾と脇線裾に係止されたずり上がり防止用の補助具により、身体運動に伴う前身頃の裾のずり上がりの防止を図ることができ、なおかつ、ずり上がり防止に伴う、着用感の低減を当該補助具の使用範囲を前身頃に限定することから、着用者の着用感をも配慮できる。
【0025】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、該補助具の両方の端にボタン穴を穿設し、さらにその内の一方に、ボタン穴を複数個穿設することにより、着用者に合せたずり上がり防止用補助具の長さを変更することができ、自らの体型に合った該補助具の長さを決定することができるので、より一層着用者の着用感を考慮する機能をずり上がり防止用の補助具に付与することができる。
【0026】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、着用者がシャツ着用後であっても、容易に、ずり上がり防止用の補助具を取付け、取外しができ、着用シーンに応じた該補助具の利用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0028】
図1〜図5は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0029】
本形態例においては、図1に示す如きシャツの上前身端裾4のボタン8に布帛生地製のシャツのずり上がり防止用補助具9の一端のボタン穴10を係止し、当該防止用補助具を略U字状に折り曲げ、図4に示す如く足の付け根部14を通し、シャツの上前身頃脇線裾6のボタン8に当該防止用補助具9の他端のボタン穴11を係止することにより構成している。
【0030】
この布帛生地製のシャツのずり上がり防止用補助具9の詳細について図2を参照しつつ以下説明すると帯状の長方形の形状からなり、布帛生地の補強のため、補強芯を貼付したものであり、一端にボタン穴10を穿設し、他端には、複数のボタン穴11、12、13を穿設することにより構成されている。
【0031】
そして、これらボタン穴11,12,13は、ずり上がり防止用補助具9の長さを調整するものであり、ボタン穴を穿設するに際しては、ボタン穴にかかる力を考慮して、生地裂き防止のため、ボタン穴とボタン穴の間隔を1cm以上あけることが望ましい。
【0032】
また、該ずり上がり防止用補助具9は、図1に示す如く、シャツの上前身端裾4及び、上前身頃脇線裾6に取り付けたボタン8に係止するものであるが、ボタン8は上前身端裾4及び上前身頃脇線裾6にそれぞれ着用者が取り付けてもらうように構成し、予めシャツに該ボタン8を取り付けてあるものではなく、着用者の体型に合せた位置でボタン8の取り付けが可能となる。
【0033】
更に、本形態例においては、図3に示す如く2本のずり上がり防止用補助具9により構成され、該ずり上がり防止用補助具9が略U字形に折り曲げ、それぞれのずり上がり防止用補助具9の両端のボタン穴10ないし11、12、13をシャツの前身端裾4、5及び前身頃脇線裾6、7に取り付けたボタン8に係止することにより構成される。
【0034】
そして、このように構成されたずり上がり防止用補助具9は図4に示す如く、ずり上がり防止用補助具9の一方の端のボタン穴10を上前身端裾4に縫着されたボタン8に係止し、該ずり上がり防止用補助具9を略U字状に折り曲げ、足付け根部14を通し、上前身頃脇線裾6に縫着されたボタン8に、該ずり上がり防止用補助具9の他方の端にあるボタン穴11ないし13を係止することにより使用する。
【0035】
この際、ずり上がり防止用補助具9の各端は後身頃3の裾には係止しておらず、シャツのずり上がり防止機能をシャツの前身頃2のみに限定するものであり、このように構成することにより、後身頃3すなわち、背中部の自由な筋肉の動きに制限を加えることなしに、前身頃2のシャツのずり上がりを防止することとなる。
【0036】
そして、このように構成されたずり上がり防止用補助具9は、一方の端にボタン穴11、12、13を穿設することにより、該ずり上がり防止用補助具自体の長さを調節することが可能となり、着用者の体型に合せた該ずり上がり防止用補助具の長さが実現されることになり、着用者の着用感にも配慮したものとなる。
【0037】
次いで、このように構成されたずり上がり防止用補助具9を、シャツ1に装着するにあたっては、図5に示す如く、上前身端裾4及び下前身端裾5に縫着されたボタン8に2本のずり上がり防止用補助具9の一方の端のボタン穴10をそれぞれ係止し、該ずり上がり防止用補助具9を略U字状に折り曲げ、それぞれの足の付け根部14を通し、上前身端裾4に縫着されたボタン8に係止したずり上がり防止用補助具9の他方の端にあるボタン穴11、12、13のいずれかを上前身頃脇線裾6に縫着されたボタン8に係止し、同様に、下前身端裾5に縫着されたボタン8に係止したずり上がり防止用補助具9の他方の端にあるボタン穴11、12、13のいずれかを下前身頃脇線裾7に縫着されたボタン8に係止することにより構成されれば良い。
【0038】
この際、本形態例においては、前述のとおり、ずり上がり防止用補助具9は、一方の端にボタン穴11、12、13を穿設することにより、該ずり上がり防止用補助具自体の長さを調節することが可能となり、着用者の体型に合せた該ずり上がり防止用補助具の長さが実現され、着用者の着用感を考慮したものとなる。
【0039】
このようにすれば、前身頃2においては、ずり上がり防止用補助具9により、規則的、不規則的な身体運動によっても、シャツのずり上がりを防止することができ、シャツ着用の見映えを維持し、なおかつ、後身頃3においては、該ずり上がり防止用補助具9を後身頃3の裾に係止させないことにより、身体運動に伴う背中部の筋肉の動きに制約を加えることがなくなり、着用感が考慮されることになる。
【0040】
また、本発明はずり上がり防止用補助具9の係止位置が前身端裾4、5と前身頃脇線裾6、7とであり、両者ともシャツを着用しながらの該補助具9の係止が可能であり、着用者の着脱が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す正面図である。
【図2】図1のずり上がり防止用補助具の一例を示す正面図である。
【図3】図2のずり上がり防止用補助具をシャツに取り付けた状態を示す正面図である。
【図4】図1のずり上がり防止用補助具の使用方法を示す側面図である。
【図5】図4のずり上がり防止用補助具の使用方法を示す正面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 シャツ
2 前身頃
3 後身頃
4 上前身端裾
5 下前身端裾
6 上前身頃脇線裾
7 下前身頃脇線裾
8 ボタン
9 ずり上がり防止用補助具
10 ボタン穴
11 ボタン穴
12 ボタン穴
13 ボタン穴
14 足の付け根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャツのずり上がりを防止する帯状の補助具であって、該補助具が接続するシャツの裾の位置を前身端裾と脇線裾とし、身体運動による前身頃及び脇線の生地が上方へ引っ張られても、該帯状の補助具が、その引張りに抵抗し、前身頃及び脇線のだぶつきが抑えられることを特徴とするシャツのずり上がり防止の補助具。
【請求項2】
シャツのずり上がりを防止する帯状の補助具であって、その両端に、各裾に係止するためのボタン穴を穿設し、その内の一端にボタン穴を複数個穿設することを特徴とする請求項1に記載のシャツのずり上がり防止用の補助具。
【請求項3】
ずり上がり防止機能を有する帯状の生地であって、シャツを着用した後での取付、取り外しが容易なことを特徴とする請求項1に記載のシャツのずり上がり防止用の補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−95837(P2010−95837A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289255(P2008−289255)
【出願日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(597008533)フレックスジャパン株式会社 (5)