説明

シャトルコック用ベース本体及びそれに用いる発泡成形体の製造方法

【課題】アイオノマー樹脂と化学発泡剤の混練に際して、混練機にアイオノマー樹脂を付着させることなく架橋発泡性樹脂組成物を製造し、当該架橋発泡性樹脂組成物からなる発泡性、外観および白度に優れ、さらには異臭を生じないシャトルコック用ベース本体を提供する。
【解決手段】 略半球状のベース本体の上面に、複数本の羽根が環状に植設されてスカート部が形成されるシャトルコック用のベース本体であって、前記ベース本体が、アイオノマー樹脂100重量部に対して、(1)化学発泡剤である4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド0.1〜20重量部、(2)ポリオレフィンワックス0.1〜20重量部を配合した架橋発泡性樹脂組成物からなることを特徴とするシャトルコック用ベース本体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバドミントン競技用のシャトルコックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バドミントン競技用のシャトルコックは、一般に、天然の水鳥や陸鳥の羽根をスカート状に編組したもの、あるいは、合成樹脂材料を水鳥や陸鳥の羽根の空気力学特性に似せて成形したものからなるシャトル部に、皮革や合成皮革で包まれた天然コルクや、PVC、ポリウレタン等の発泡体からなるベース本体を取りつけて構成される。
【0003】
シャトルコックに要求される性能には、飛行の安定性、特に飛行距離や飛行の軌跡の一定性などがあり、これを満たすものとして、特に水鳥の羽根と天然コルクから作られたシャトルコックが最良とされ、公式試合を含め広く使用されている。しかしながら、ベース本体が天然コルクで作られたシャトルコックは、天然素材であるがゆえに、重量のばらつきが大きく、品質も安定していないために、高品質な天然コルクは高価にならざるを得なかった。さらに、天然コルクを使用したシャトルコックでは、天然コルクの耐久性不足を補うと同時に、ベース本体の外表面を白色とするために合成皮革で被覆する必要があった。
【0004】
一方、アイオノマー樹脂を主成分とする架橋発泡成形体は、硬度が高く、耐衝撃性、耐寒性、耐薬品性に優れており、さらに衝撃等のエネルギー吸収効率も高いなどの優れた特性を兼ね備えていることから、スポーツ用品、建材、浮揚材、履物、防眩材、自動車部品、雑貨等の多様な用途への使用が期待されている。
【0005】
シャトルコックのベース本体用の発泡樹脂として、アイオノマーを使用することで、製品物性が均質で、従来の天然コルクを使用したシャトルコックと同じ飛行特性、打球性を保持したまま、耐久性と品質の一定性が向上し、合成皮革の被服を必要としないシャトルコックが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、アイオノマーをベース本体に使用したシャトルコックは、耐久性、耐衝撃性に優れているものの、アイオノマーと化学発泡剤等の溶融混練方法に制約があり、容易に製造することができない問題がある。
【0006】
従来、ポリオレフィン系樹脂等の発泡体を製造する際には、一般的にミキシングロール、カレンダーロール、バンバリーミキサー、ニーダー等の混練機が使用されている。一方、アイオノマーを化学発泡剤等と混練する際に、前記の混練機を使用すると、アイオノマーの特徴である金属接着性の高さのために、アイオノマーが混練機に粘着してしまい、均一な混練が極めて困難となる。
【0007】
また、化学発泡剤として知られているアゾジカルボンアミドおよびジニトロソペンタメチレンテトラミンは、これらの分解温度を下げるために尿素系発泡助剤および亜鉛系化合物を併用配合するのが一般的である。しかしながら、尿素系発泡助剤はアイオノマーの金属への粘着性を助長させてしまい、また、亜鉛系化合物はアイオノマーに配合されることで、化学発泡剤の分解温度を下げる効果を著しく低下させてしまう問題がある。
【0008】
アイオノマーの生産性向上手法として、アイオノマーに、化学発泡剤、脂肪酸アミド及び任意に化学架橋剤を配合する際に、単軸又は二軸スクリューを有する押出機により溶融混練しながら、ダイヘッドより混練物を吐出、成形し、架橋発泡用の成形体を得る方法が開示されている(特許文献2参照)。この手法では、脂肪酸アミドを併用配合することにより、押出機での成形性が向上し、均一に混練された架橋発泡体が得られるが、前記のミキシングロール等による混練は困難であった。また、アイオノマー樹脂の好適な混練を達成するために、アイオノマー樹脂と発泡剤の混練の際にアクリル系高分子滑剤を併用する方法も提案されている(特許文献3参照)。
【0009】
しかしながら、特許文献2に例示される化学発泡剤アゾジカルボンアミド及びステアリン酸アミドを配合した系は、発泡成形品が黄色を呈するために、白色及び淡色成形品用途への適用に際しては、顔料等を多量に追添加するか、あるいは白色の隠蔽層にて被覆する必要があり、製造コストの増大や発泡成形品の物性への影響が懸念される。特に、シャトルコックのベース本体は、通常白色であることが必要であることから、これらの化学発泡剤を使用したアイオノマー発泡成形体を適用することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−195861号公報
【特許文献2】特許第3669468号公報
【特許文献3】特開2008−37962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、アイオノマー樹脂と化学発泡剤の混練に際して、混練機にアイオノマーを付着させることなく架橋発泡性樹脂組成物を製造し、当該架橋発泡性樹脂組成物からなる発泡性、外観および白度に優れ、さらには異臭を生じないシャトルコック用ベース本体ならびにシャトルコック用ベース本体に用いる発泡成形体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、アイオノマー樹脂に化学発泡剤である4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドとポリオレフィンワックスを併用配合することによって、混練機による加工成形性に優れ、且つ外観および白度に優れ、異臭を生じない架橋発泡成形体からなるシャトルコック用ベース本体を容易に得られることを見出し本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は、次のような態様のシャトルコック用ベース本体ならびにシャトルコック用ベース本体に用いる発泡成形体の製造方法を提供する。
<1>略半球状のベース本体の上面に、複数本の羽根が環状に植設されてスカート部が形成されるシャトルコック用のベース本体であって、前記ベース本体が、アイオノマー樹脂100重量部に対して、(1)化学発泡剤である4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド0.1〜20重量部、(2)ポリオレフィンワックス0.1〜20重量部を配合した架橋発泡性樹脂組成物からなることを特徴とするシャトルコック用ベース本体。
<2>ポリオレフィンワックスがポリエチレンワックスであることを特徴とする上記<1>に記載のシャトルコック用ベース本体。
<3>さらに、化学架橋剤0.1〜5重量部を配合した架橋発泡性樹脂組成物からなることを特徴とする上記<1>又は<2>に記載のシャトルコック用ベース本体。
<4>シャトルコック用ベース本体に用いる発泡成形体の製造方法であって、アイオノマー樹脂100重量部に対して、(1)化学発泡剤である4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド0.1〜20重量部、(2)ポリオレフィンワックス0.1〜20重量部を配合してなる樹脂組成物を、ミキシングロール、カレンダーロール、バンバリーミキサー、ニーダー及び押出機からなる群より選択される混練機を使用して、化学発泡剤の分解温度以下で溶融混練し、該溶融混練物を金型中で加熱して発泡成形することを特徴とする発泡成形体の製造方法。
<5>ポリオレフィンワックスがポリエチレンワックスであることを特徴とする上記<4>に記載の製造方法。
<6>さらに、化学架橋剤0.1〜5重量部を配合した架橋発泡性樹脂組成物からなることを特徴とする上記<4>又は<5>に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の架橋発泡性樹脂組成物からなるシャトルコック用ベース本体は、異臭を生じることがなく、かつ白度に優れ、気泡が均一で外観が良好であることから、白色顔料や消臭剤を添加することなくシャトルコックに用いることができる。また、本発明の架橋発泡性樹脂組成物の製造に際しては、ポリオレフィン樹脂等の発泡成形体組成物の混練に一般的に使用される混練機を転用した場合にも、アイオノマー特有の粘着による混練不良なく、さらに原料の混練機への付着もなく製造可能であることから、アイオノマー架橋発泡成形体を効率よく、安価に製造することができる。さらに、発泡助剤、亜鉛系化合物を併用配合する必要がなく、経済的に極めて有利である。かくして得られるアイオノマー架橋組成物は、シャトルコック用ベース本体に好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のシャトルコック用ベース本体に羽根を装着したシャトルコックの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明において使用されるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー樹脂は、エチレンと不飽和カルボン酸を主成分とする共重合体であるが、エチレンと不飽和カルボン酸のみで構成されていてもよく、又はその他の共重合成分を共重合した多元共重合体であってもよい。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸などを例示でき、とくにアクリル酸もしくはメタクリル酸が好ましい。また、その他の共重合成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチルなどの不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル、一酸化炭素などを例示できる。
【0017】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体における重合組成は、目的とする発泡体の性状によって異なるが、一般には不飽和カルボン酸が、0.5〜15モル%、好ましくは1〜8モル%である。またその他の共重合成分は、一般には15モル%以下、好ましくは10モル%以下の割合で共重合されていてもよい。このようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、好ましくは高圧ラジカル共重合によって得ることができる。
【0018】
エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマー樹脂は、このようなエチレン・不飽和カルボン酸共重合体を、常法によりイオン化することによって得ることができる。イオン化に使用することができるエチレン・不飽和カルボン酸共重合体は、例えば、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR)が、0.1〜1000g/10分が好ましく、より好ましくは0.5〜300g/10分のものである。
【0019】
アイオノマー樹脂における金属イオンとしてはリチウム、ナトリウム、カリウムなどの1価金属、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、銅、鉛、ニッケル、コバルト、アルミニウムなどの多価金属を例示することができる。これら金属イオンによる中和度は、一般には10%以上、好ましくは15〜80%である。
【0020】
アイオノマー樹脂としては、成形加工性、発泡体の物性等を考慮すると、メルトフローレートが0.5〜50g/10分、好ましくは5〜20g/10分のものを使用するのが好ましい。使用するアイオノマーは2種以上をブレンドして使用してもよい。
【0021】
本発明に用いられる化学発泡剤は、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(以下、OBSHということがある)が好適に使用される。OBSHを使用することにより、発泡助剤、亜鉛系化合物を併用配合することなく発泡成形体を得ることができる。本発明における化学発泡剤の配合量は、アイオノマー100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部、より好ましくは1〜5重量部である。化学発泡剤の配合量が前記範囲内であれば、成形体の発泡性が良好で気泡が均一でありシャトルコックとしての打球感や飛行安定性が良好なシャトルコック用ベース本体を得ることができる。また、本発明で用いられる架橋発泡性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の化学発泡剤を併用してもよい。
【0022】
本発明に用いられるポリオレフィンワックスは、例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチル−1−ペンテン等のオレフィン類をチーグラー触媒やメタロセン触媒等の触媒を用いて単独重合または共重合したものを挙げることができる。中でも、エチレン単独重合体またはエチレンと他のオレフィンとの共重合体などのエチレン構成単位を主成分とするポリエチレンワックスを使用することが好ましい。ポリオレフィンワックスの数平均分子量は1000〜5000であることが好ましく、さらに好ましくは2000〜3000である。ポリオレフィンワックスのDSC法による融点は80〜140℃が好ましく、さらに好ましくは90〜120℃である。ポリオレフィンワックスの配合量は、目的とする発泡体の性状によっても異なるが、アイオノマー100重量部に対して、0.1〜20重量部であり、好ましくは0.1〜10重量部、最も好ましくは0.5〜5重量部である。前記範囲のポリオレフィンワックスを用いれば、汎用混練機を用いた場合にもアイオノマー特有の粘着がなく、アイオノマーと化学発泡剤の混練状態が非常に良好となり、異臭がなく、白度に優れ、気泡が均一で外観が良好なシャトルコック用ベース本体を得ることができる。本発明においては、ポリオレフィンワックスを用いることで、本発明の架橋発泡性樹脂組成物の練和後に、混練機のロール等へアイオノマー樹脂が粘着せずに良好な練和が可能となることはもとより、ポリオレフィンワックス自体がロール等へ付着残存しないことから、練和後にロール等の清掃を行わずに次バッチの樹脂組成物の練和を繰り返し行うことが可能となり作業性に非常に優れており、その工業的価値は多大である。
【0023】
本発明に用いられる化学架橋剤には、有機過酸化物架橋剤を好ましく使用することができる。有機過酸化物架橋剤としては、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(2−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルペルオキシド、1,1’−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどを例示することができ、その1種又は2種以上を用いて架橋することができる。化学架橋剤の配合量は、アイオノマー100重量部に対して、0.1〜5重量部、好ましくは0.1〜2重量部が好ましい。また、架橋を放射線架橋(電子線架橋)により行う場合には、化学架橋剤を配合しなくてもよい。
【0024】
また、本発明におけるシャトルコック用ベース本体には、上記のようなアイオノマー、化学発泡剤、ポリオレフィンワックスなどの他に、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル等の熱可塑性樹脂、エチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、ポリブタジエン、スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物等のゴム状弾性体などの他の重合体を配合してもよい。
【0025】
さらにまた、酸化防止剤、耐候安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、発泡助剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、難撚剤、無機充填剤等の添加剤を配合してもよい。上記無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、ゼオライト、カーボンブラック、ガラス繊維等を例示できる。
【0026】
架橋発泡性樹脂組成物の混練においては、従来の発泡体の混練方法を採用することが可能であり、使用する混練機としては、ミキシングロール、カレンダーロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどが挙げられる。アイオノマー架橋発泡体原料の混練においては、本発明の化学発泡剤とポリオレフィンワックスを配合することにより、溶融混練物が接触する部位、例えばニーディングディスクやミキシングロールやその他ロール等へのアイオノマーの粘着が抑制できることから、一般的にポリオレフィン系樹脂等の発泡体を製造する際に使用されている、ミキシングロール、カレンダーロール、バンバリーミキサーまたはニーダーを好適に使用することができる。これらの混練機から選択される1種の混練機のみで未発泡成形体を製造してもよいし、ニーダーにより予備混練した後に、さらにミキシングロールで混練及び未発泡成形体を製造する等の2種以上の混練装置を使用してもよい。
【0027】
未発泡成形体の製造は、上記のアイオノマー樹脂、化学発泡剤、ポリオレフィンワックス等とその他配合剤を、上記の混練機等により溶融混練し、実質的に未発泡の未発泡成形体を成形する。溶融混練温度としては、アイオノマー樹脂、化学発泡剤、ポリオレフィンワックス、化学架橋剤などの種類により異なるが、アイオノマー樹脂の融点以上で、化学発泡剤の分解温度以下で、また化学架橋剤が実質的に分解しない温度以下であることが好ましく、より好ましくは100〜140℃、最も好ましくは100〜120℃である。また、未発泡成形体の形状としては、塊状、シート状、棒状、ペレット状等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0028】
次に、未発泡成形体を密閉金型中に充填し加圧した状態で、化学発泡剤及び化学架橋剤の分解温度以上に加熱して架橋反応および発泡剤分解を進めた後、直ちに除圧、膨張させて所望の発泡成形体とすればよい。または、未発泡成形体を密閉金型中に充填し加圧した状態で、加熱して架橋反応のみを進めた後、常温常圧まで冷却、再度金型中で常圧加熱して発泡剤分解を進めてもよい。密閉金型内での架橋発泡条件としては、化学架橋剤などの種類によって異なるが、好ましくは140〜180℃であり、より好ましくは150〜170℃である。
また、架橋を電子線により行う場合には、未発泡成形体を電子線照射装置に導入して電子線を照射し架橋反応を進めた後、加熱炉またはコンベヤー炉内において発泡させればよい。
【0029】
本発明に用いられる架橋発泡性樹脂組成物は、発泡助剤や亜鉛系化合物を添加しなくとも良好な発泡成形体を製造可能であるが、本発明の効果を損なわない範囲であれば発泡助剤や亜鉛系化合物を添加してもよい。
【0030】
本発明のシャトルコック用ベース本体は、上記の方法により製造した発泡成形体をシャトルコック用ベース本体形状に切削等の公知の方法により加工成形することで得ることができるが、上記の未発泡成形体を充填する金型内形状をシャトルコック用ベース本体形状として発泡成形体を製造することでも得ることができる。
【0031】
本発明の架橋発泡性樹脂組成物からなるシャトルコック用ベース本体は、異臭がなく、白度に優れ、気泡が均一であることから、汎用シャトルコックのベース本体として適用可能である。さらに、JIS Z8807(固体比重測定方法)に準じて測定した発泡成形体の密度を0.167〜0.203g/cmとすることにより、天然コルク製のベース本体を使用したシャトルコックと同様な弾力性を付与することができ、天然コルクと同様な打球感と飛行性を有するシャトルコックを得ることができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1
アイオノマー樹脂(商品名「ハイミラン1702」、エチレン・メタクリル酸共重合体の亜鉛中和品、MFR14g/10分、密度0.950g/cm、三井・デュポンポリケミカル社製)100重量部、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド系化学発泡剤(商品名「ネオセルボンUM−65」、永和化成工業社製)3.6重量部、酸化ポリエチレンワックス(「セルペーストLS」、永和化成工業社製)1.0重量部、軽質炭酸カルシウム10重量部、ジクミルパーオキサイド(以下、DCPと称すことがある、商品名「パークミルD」、日油社製)1.0重量部を100℃のミキシングロールにて、約15分間練和した。この際、ミキシングロールへのアイオノマー樹脂の粘着は全く認められなかった。160℃に加熱されたプレス内金型(110×110×20mm)に、上記練和物を充填し、160℃で20分間加圧下で加熱し、高温熱時、除圧して、発泡成形体を取り出した。得られた発泡成形体の評価結果を表1に示した。得られた発泡成形体の白度はシャトルコック用ベース本体に好適な明らかな白さを呈していた。
また、前記のミキシングロールでの練和後には、ミキシングロールへのポリエチレンワックスの付着はなく、ミキシングロールを清掃せずに新しい材料を使用して上記条件での練和を繰り返し行うことが可能であり、連続練和を3回繰り返した後にもポリエチレンワックスの付着およびアイオノマー樹脂の粘着はなく練和可能であった。
【0034】
実施例2
実施例1において、ネオセルボンUM−65を3.3重量部に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。実施例1と同じくミキシングロールへのアイオノマー樹脂の粘着は全く認められなかった。得られた発泡成形体の白度はシャトルコック用ベース本体に好適な明らかな白さを呈していた。また、実施例1と同様に連続練和を3回繰り返した後にもポリエチレンワックスの付着およびアイオノマー樹脂の粘着はなく練和可能であった。
【0035】
実施例3
実施例1において、ネオセルボンUM−65を2.8重量部に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。実施例1と同じくアイオノマー樹脂のミキシングロールへの粘着は全く認められなかった。得られた発泡成形体の白度はシャトルコック用ベース本体に好適な明らかな白さを呈していた。また、実施例1と同様に連続練和を3回繰り返した後にもポリエチレンワックスの付着およびアイオノマー樹脂の粘着はなく練和可能であった。
【0036】
実施例4
実施例1において、ネオセルボンUM−65を2.5重量部、セルペーストLSを4.0重量部に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。実施例1と同じくミキシングロールへのアイオノマー樹脂の粘着は全く認められなかった。得られた発泡成形体の白度はシャトルコック用ベース本体に好適な明らかな白さを呈していた。また、実施例1と同様に連続練和を3回繰り返した後にもポリエチレンワックスの付着およびアイオノマー樹脂の粘着はなく練和可能であった。
【0037】
実施例5
実施例1において、ハイミラン1702の代わりにアイオノマー樹脂(商品名「ハイミラン1605」、エチレン・メタクリル酸共重合体のナトリウム中和品、MFR2.8g/10分、密度0.940g/cm、三井・デュポンポリケミカル社製)100重量部を用い、ネオセルボンUM−65を2.3重量部に変えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。実施例1と同じくミキシングロールへのアイオノマー樹脂の粘着は全く認められなかった。得られた発泡成形体の白度はシャトルコック用ベース本体に好適な明らかな白さを呈していた。また、実施例1と同様に連続練和を3回繰り返した後にもポリエチレンワックスの付着およびアイオノマー樹脂の粘着はなく練和可能であった。
【0038】
実施例1〜5で得られた発泡成形体をシャトルコックのベース本体形状に加工し、水鳥の羽根を装着しシャトルコックを作製した。このシャトルコックを用いて上級のバドミントンプレイヤーによる打撃試験を行ったところ、打球感は良好であり、試合形式で試験を行ったところ、10セット以上でもベース本体の亀裂や欠けも発生せず、耐衝撃性、耐久性に優れていた。中でも、発泡成形体の密度が0.167〜0.203g/cmの範囲であった実施例2、3のシャトルコックにおいては、天然コルクと同様の打球感が得られた。
【0039】
比較例1
実施例1において、ネオセルボンUM−65の代わりにビニホールAC#3(アゾジカルボンアミド系発泡剤、永和化成工業社製)4.0重量部を用い、セルペーストLSを2.0重量部とし、酸化亜鉛2.0重量部、ステアリン酸亜鉛1.0重量部を加えた以外は、実施例1と同様にして発泡成形体を得た。実施例1と同じくアイオノマー樹脂のミキシングロールへの粘着は全く認められなかったが、発泡成形体は明らかに黄色に着色しており、白色顔料等の添加無しにはシャトルコックのベース本体への適用は困難であった。
【0040】
比較例2
実施例1において、ネオセルボンUM−65の代わりにセルラーD(ジニトロソペンタメチレンテトラミン系発泡剤、永和化成工業社製)4.0重量部を用い、セルペーストLSを2.0重量部とし、尿素系発泡助剤(商品名「セルペースト101」、永和化成工業社製)4.0重量部を加えた以外は実施例1と同様にして100℃のミキシングロールにて練和しようとしたが、尿素系発泡助剤を投入した途端に混和物とロールの粘着性が増大し、加工が困難となった。
【0041】
比較例3
実施例1において、ネオセルボンUM−65の代わりにビニホールAC#3(アゾジカルボンアミド系発泡剤、永和化成工業社製)4.0重量部を用い、セルペーストLSの代わりにステアリン酸アミド2.0重量部、ステアリン酸亜鉛4.0重量部を加えた以外は実施例1と同様にして100℃のミキシングロールにて練和しようとしたが、混和物とロールの粘着性が増大してロールに粘着してしまい加工することができなかった。
【0042】
比較例4
実施例1において、ネオセルボンUM−65を3.3重量部とし、セルペーストLSの代わりにアクリル系高分子滑剤(商品名:メタブレンL−1000、三菱レイヨン社製)7.0重量部を用いた以外は実施例1と同様にして発泡成形体を得た。実施例1と同じくミキシングロールへのアイオノマー樹脂の粘着は認められなかった。しかしながら、実施例1〜5とは異なり、練和時にアクリル系高分子滑剤が接触したロール表面全体にアクリル系高分子滑剤が付着していたため、練和終了時にミキシングロールに付着したアクリル系高分子滑剤をへら等で削り落とす作業が必要であり、ミキシングロールを清掃せずに連続練和することはできなかった。
【0043】
【表1】

【符号の説明】
【0044】
1 シャトルコック
2 ベース本体
3 羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略半球状のベース本体の上面に、複数本の羽根が環状に植設されてスカート部が形成されるシャトルコック用のベース本体であって、前記ベース本体が、アイオノマー樹脂100重量部に対して、(1)化学発泡剤である4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド0.1〜20重量部、(2)ポリオレフィンワックス0.1〜20重量部を配合した架橋発泡性樹脂組成物からなることを特徴とするシャトルコック用ベース本体。
【請求項2】
ポリオレフィンワックスがポリエチレンワックスであることを特徴とする請求項1に記載のシャトルコック用ベース本体。
【請求項3】
さらに、化学架橋剤0.1〜5重量部を配合した架橋発泡性樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載のシャトルコック用ベース本体。
【請求項4】
シャトルコック用ベース本体に用いる発泡成形体の製造方法であって、アイオノマー樹脂100重量部に対して、(1)化学発泡剤である4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド0.1〜20重量部、(2)ポリオレフィンワックス0.1〜20重量部を配合してなる樹脂組成物を、ミキシングロール、カレンダーロール、バンバリーミキサー、ニーダー及び押出機からなる群より選択される混練機を使用して、化学発泡剤の分解温度以下で溶融混練し、該溶融混練物を金型中で加熱して発泡成形することを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項5】
ポリオレフィンワックスがポリエチレンワックスであることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
さらに、化学架橋剤0.1〜5重量部を配合した架橋発泡性樹脂組成物からなることを特徴とする請求項4又は5に記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−90876(P2012−90876A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242261(P2010−242261)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【出願人】(000120847)永和化成工業株式会社 (12)