説明

シャワータワー

【課題】施工が容易で、しかも、必要最小限の配管スペースで済むため、浴室やシャワー室を最大限に有効利用することができるとともに、設置位置も自由に選択できるシャワータワーを提供する。
【解決手段】室内壁に沿って、あるいは、室内に立設されるベース部材と、断面略コ字形あるいは断面略U字形に形成され、ベース部材によってコ字あるいはU字の開口部が閉じられるように組み合わされて、ベース部材との間に給水・給湯配管の配管スペースを形成するカバー部材とを備え、ベース部材は、カバー部材の取付面にベース部材の長手方向に平行な2条の嵌合凹溝または嵌合突条が形成され、カバー部材は、ベース部材の取付面方向への押圧によってベース部材の嵌合凹溝または嵌合突条に嵌合してカバー部材をベース部材の所望位置への固定状態とする嵌合突条または嵌合凹溝が、カバー部材の開口部近傍の両側壁面に沿って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室やシャワー室内に設けられ、シャワーノズルへの給水・給湯配管を浴室やシャワー室内側から隠蔽するように設けられるシャワータワーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシャワータワーは、図8に示すように、浴室やシャワー室の壁面100のコーナー部に固定したボルト受け金具200に固定ボルト210の一端を固定した状態で、タワー本体部材300を固定ボルト210の先端部がねじ挿通孔から外部に臨むように配置したのち、タワー本体部材300の両端縁が壁面100に圧接されるまで蝶ナット220を固定ボルト210の先端部にねじ込み、その後、蝶ナット部分が隠れるようにカバー400を取り付けることによって浴室あるいはシャワー室の壁面に沿って給水・給湯配管の配管スペースを形成するようになっている。
【0003】
しかし、上記のシャワータワーの場合、固定ボルト210の取り付け、蝶ナット220のねじ込み、カバー400の取り付けなど、作業が煩雑で施工性が悪い。また、中央にボルトが通っているために、配管の通路に制約があり、配管スペースを大きく取る必要がある。したがって、浴室やシャワー室内が狭くなるという問題がある。
また、昨今は、浴室内でいろいろな入浴スタイルが要求され、シャワータワーもその要求に応じていろいろな位置に設置する必要があるが、上記シャワータワーの場合、浴室やシャワー室のコーナー部にしか設置することができない。
【0004】
【特許文献1】特開平7−304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて、施工が容易で、しかも、必要最小限の配管スペースで済むため、浴室やシャワー室を最大限に有効利用することができるとともに、設置位置も自由に選択できるシャワータワーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明にかかるシャワータワーは、室内壁に沿って、あるいは、室内に立設されるベース部材と、断面略コ字形あるいは断面略U字形に形成され、ベース部材によってコ字あるいはU字の開口部が閉じられるように組み合わされて、ベース部材との間に給水・給湯配管の配管スペースを形成するカバー部材とを備え、前記ベース部材は、前記カバー部材の取付面にベース部材の長手方向に平行な2条の嵌合凹溝または嵌合突条が形成され、前記カバー部材は、ベース部材の前記取付面方向への押圧によってベース部材の嵌合凹溝または嵌合突条に嵌合してカバー部材をベース部材の所望位置への固定状態とする嵌合突条または嵌合凹溝が、カバー部材の開口部近傍の両側壁面に沿って形成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかるシャワータワーは、以上のように、室内壁に沿って、あるいは、室内にベース部材を立設し、このベース部材方向にカバー部材を押圧するだけで、ベース部材に設けられた嵌合凹溝または嵌合突条にカバー部材に設けられた嵌合突条または嵌合凹溝に嵌合し、カバー部材がベース部材に固定され、ベース部材とカバー部材との間に給水・給湯配管の配管スペースを形成することができる。したがって、シャワータワーの取付作業が容易である。
【0008】
しかも、ベース部材を室内壁に沿って、あるいは、室内に立設できるので、シャワータワーの設置場所を自由に選ぶことができる。
また、カバー部材の嵌合突条または嵌合凹溝がカバー部材の開口部近傍の両側壁面に沿って形成されているので、ベース部材とカバー部材との間に形成される空間内に障害となるものがない。したがって、シャワータワーの設置スペースも必要最小限のコンパクトなものにでき、浴室やシャワー室内空間を有効に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図3は、本発明にかかるシャワータワーの第1の実施の形態をあらわしている。
【0010】
図1〜図3に示すように、このシャワータワーAは、ベース部材1aと、上部カバー部材2aと、下部カバー部材2bとを備え、シャワー室3aに設置されている。
すなわち、ベース部材1aは、シャワー室3aの洗い場床面31から天井面32までの高さと略同じ長さをしたアルミニウムの押出成形品であって、幅方向中央に、断面略コ字形の樋状をした本体部11が設けられている。この本体部11は、その側壁11aの高さが後述するスタッド34のシャワー室壁面方向の厚みと略同じになっているとともに、本体部11の両側壁11aから外側にそれぞれ鍔部11bが張り出している。
【0011】
この鍔部11bの先端には、後述するスタッドへの嵌合部11cが本体部11の溝の底側に向かって延出している。嵌合部11cは先端が本体部11方向に鉤状に折れ曲がっている。
鍔部11bの中間部には、嵌合凹溝11eを備えた延出片11dが本体部11とは逆方向に突設されている。
【0012】
上部カバー部材2aは、平板状をした表面部21と、この表面部21の両側縁から対面するように延出する2つの側面部22とを有する断面略コ字形をしたアルミニウムの押出成形品である部材本体20と、ステンレス鋼製の化粧板26とを備えている。
部材本体20は、表面部21の両端縁に沿って外壁面に略コ字形をしたスライド嵌合溝23が形成されている。化粧板26は、その両端縁がパッキン25を介在させた状態でスライド嵌合溝23にスライド嵌合されている。
【0013】
また、上部カバー部材2aの開口部近傍の両側面部22内側には、各側壁部22に沿って嵌合突条27aを備えた延出片27が設けられている。
上部カバー部材2aの表面部21および化粧板26の後述する給水・給湯配管Pの水栓5を臨む部分には、水栓5の一部である操作軸51が挿通可能な孔28が穿設されている。
【0014】
下部カバー部材2bは、上部カバー部材2aと同じ断面形状をしていて、上部カバー部材2aと床面31との間でベース部材1aに固定されるようになっている。
【0015】
つぎに、このシャワータワーAの組立方法を詳しく説明する。
まず、シャワー室3aの壁面パネル33を支える2本のスタッド34を本体部11の幅分の間隔を開けて防水パン6の所定位置に立設させ、ベース部材1aの両側の嵌合部11cを、間にパッキン36を介在させた状態で隣接する樹脂被覆鋼板製の壁パネル33の嵌合部33aとともに、スタッド34の嵌合溝34a内に嵌合させ、ベース部材1aを立設状態にする。
【0016】
続いて、給水・給湯配管Pをベース部材1aに沿って配管し、固定金具29によって給水・給湯配管Pをベース部材1aに固定する。
そして、図2に示すように、上部カバー部材2aを表面部21および化粧板26に穿設された孔28に所定の水栓5の操作軸51が臨むように配置し、ベース部材1a方向に押圧し、嵌合凹溝11eと嵌合突部27aとを嵌合させて上部カバー部材2aをシャワー室床面31との間に図3に示すように、下部カバー部材2bの固定スペースを残した状態でベース部材1aに固定する。
【0017】
下部カバー部材2bを上部カバー部材2aと同様にして図1に示すようにベース部材1aに固定する。
そして、孔28からシャワー室3a側に突出した操作軸51に操作ハンドル52を取り付ける。
【0018】
また、この実施の形態では、シャワータワーA内に配管された給水・給湯配管Pは、図1に示すように、ハンドシャワー72に接続され、ミストノズルカバー73内を通り、ミストノズル73aに接続されるとともに、シャワー室3aの天井面に固定されたリングシャワー74に接続される。
【0019】
このシャワータワーAは、以上のように、壁パネル支持用のスタッド34を用いて壁面にそって立設するようになっているので、ベース部材1aの設置作業が容易で、シャワータワーの設置場所を自由に選ぶことができる。また、シャワータワーの取付作業が容易である。
しかも、上部カバー部材2aおよび下部カバー部材2bがその嵌合突部27aを嵌合凹溝11eに嵌合させるだけでベース部材1aに固定できるので、組立作業も短時間で容易に行える。
【0020】
また、シャワータワーA内には、固定ボルト等の障害物がないので、シャワータワーAの設置スペースも必要最小限のコンパクトなものにでき、シャワー室内空間を有効に利用することができる。
さらに、カバー部材が上部カバー部材2aおよび下部カバー部材2bに別れているので、図3に示すように、下部カバー部材2bのみをベース部材1aから取り外して、給水・給湯配管Pの点検等を容易に行うことができる。
【0021】
図4〜図7は、本発明にかかるシャワータワーの第2の実施の形態をあらわしている。
図4および図5に示すように、このシャワータワーBは、浴室3bの洗い場37と浴槽38との間に設置され、図5および図6に示すように、ベース部材1bと、上記シャワータワーAと同様の上部カバー部材2aおよび下部カバー部材2bとを備えている。
【0022】
ベース部材1bは、図6に示すように、ベース本体部12aと、ベース本体部12aの両側縁から対面するように延出する2つの側面部12bとを有する樋状をした部材本体12と、ステンレス鋼製の化粧板13とを備えている。
部材本体12は、アルミニウムの押出成形品であって、ベース本体部12aに内側に向かって凸となった2条の固定ねじ受け部12cが設けられるとともに、ベース本体部12aの短手方向両端縁に沿って外壁面に略コ字形をしたスライド嵌合溝12dが形成されている。
【0023】
そして、化粧板13がその両端縁をスライド嵌合溝12dにスライド嵌合させることによって部材本体12のベース本体部12aの外面を覆っている。
また、ベース本体部12aには、図示していないが、後述するミストノズル装着孔とミスト配管の水栓の操作軸が挿通される孔とが穿設されている。
【0024】
部材本体12の両側面部12b内側には、嵌合凹部14が設けられている。
図6中、91は、浴槽側と洗い場側を仕切るガラスやアクリル樹脂等の透明ボード、92は、シャワータワーBの側面に固定され、透明ボード91の端部をクランプして透明ボード92を支持する透明ボード91の支持金具である。なお、支持金具92は、図示していないが、浴室の壁側にも設けられている。
【0025】
つぎに、このシャワータワーBの組立方法を詳しく説明する。
このシャワータワーBは、まず、ベース部材1bを、浴槽38の洗い場側の框中央部に添うように配置し、ベース部材1bの下端を図示していないが、ボルトによって防水パンに固定し、ベース部材1bの状態を天井に固定する。
【0026】
続いて、給水・給湯配管Pをベース部材1aに沿って配管し、浴槽側のミストノズルをミストノズル装着孔から浴槽側に臨ませるとともに、水栓の操作軸を孔から浴槽側に突出させ、操作軸に浴槽側の操作ハンドルを取り付ける。また、固定金具29によって給水・給湯配管Pをベース部材1bに固定する。
そして、上記シャワータワーAと同様にして、ベース部材1aに上部カバー部材2aおよび下部カバー部材2bを固定するとともに、上記シャワータワーAと同様にシャワータワーB内に配管された給水・給湯配管Pは、図5に示すように、ミストノズルカバー73内を通り、ミストノズル73aに接続されるとともに、浴室3bの天井面に固定されたリングシャワー74に接続される。なお、この実施の形態では、シャワータワーAにハンドシャワーは接続されていない。
【0027】
このシャワータワーBは、上記のシャワータワーAと同様の作用効果に加えて、上記実施の形態においては、ベース部材1bを浴槽38側に向け、上部カバー部材2aおよび下部カバー部材2bを浴槽洗い場37側に向けるとともに、ベース部材1b側にもミストノズル(図示せず)を設けるようにしたので、洗い場37側でシャワーを浴びたり、ミストノズル73aからのミストの噴射によって洗い場37側をミストサウナにしたりするだけでなく、図7に示すように、ベース部材1b側のミストノズルからのミストの噴射によって浴槽38の框等に使用者Mが座った状態でミストサウナを楽しむこともできる。
【0028】
本発明にかかるシャワータワーは、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記実施の形態では、リングシャワーとハンドシャワーの2種類が設けられていたが、いずれか一方だけでも構わない。
上記実施の形態では、カバー部材が上下に分割されていたが、上下に分割しなくても構わない。
【0029】
上記第2の実施の形態では、浴槽側と洗い場側の両側にミストが噴射できるようになっているが、いずれか一方に噴射できるようにしても構わないし、ミスト装置は設けなくても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明にかかるシャワータワーの第1の実施の形態の使用状態をあらわす斜視図である。
【図2】図1のX−X線断面図である。
【図3】図1のシャワータワーの下部ガバー部材を取り除いた状態の斜視図である。
【図4】本発明にかかるシャワータワーの第2の実施の形態の使用状態をあらわす斜視図である。
【図5】図4のY−Y線断面図である。
【図6】図4のZ−Z線断面図である。
【図7】図4のシャワータワーを用いたシャワー装置の使用状態を模式的に示す図である。
【図8】従来のシャワータワーの断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1a,1b ベース部材
2a 上部カバー部材
2b 下部カバー部材
P 給水・給湯配管
11e,14 嵌合凹溝
27a 嵌合突条
A,B シャワータワー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内壁に沿って、あるいは、室内に立設されるベース部材と、
断面略コ字形あるいは断面略U字形に形成され、ベース部材によってコ字あるいはU字の開口部が閉じられるように組み合わされて、ベース部材との間にシャワー配管の配管スペースを形成するカバー部材とを備え、
前記ベース部材は、前記カバー部材の取付面にベース部材の長手方向に平行な2条の嵌合凹溝または嵌合突条が形成され、
前記カバー部材は、ベース部材の前記取付面方向への押圧によってベース部材の嵌合凹溝または嵌合突条に嵌合してカバー部材をベース部材の所望位置への固定状態とする嵌合突条または嵌合凹溝が、カバー部材の開口部近傍の両側壁面に沿って形成されていることを特徴とするシャワータワー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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