説明

シャワーヘッド

【課題】弁座構造を簡素化して部品点数を低減し、製造及び組付作業を容易に行うことができ、把持部の耐久性を向上することができるシャワーヘッドを提供する。
【解決手段】シャワーヘッド11を構成するケース12の内部に水の流路16を有する内筒17を挿入固定し、内筒17の先端部に水の流路19を有する通水部材20を接続する。前記内筒17の先端部に開閉弁機構31を装着する。前記内筒17の内部に弁孔32を有する弁座33を一体に成形する。該弁座33に環状溝33aを形成し、該環状溝33aにシール部材40を収容する。前記弁座33に対応するように弁収容筒37を設け、該弁収容筒37に弁体38を収容する。弁体38のシール面を前記シール部材40に接触することによって、弁座33と弁体38のシールを保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉弁を手動操作することによって、放水状態又は止水状態に切り換えることができるシャワーヘッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のシャワーヘッドとして、特許文献1や特許文献2に開示されたものが提案されている。特許文献1のシャワーヘッドは、シャワーヘッド本体の内部に形成された水の流路の途中に、該本体と別体で、かつ弁孔を有する弁座が取り付けられるとともに、前記弁孔を囲むように前記弁座に形成された環状溝にシール部材が接合されている。又、前記シャワーヘッド本体に設けられた弁収容筒内に、前記弁座の弁孔を開閉するバルブが往復動可能に、かつ常にはバネによって閉弁位置に保持されている。さらに、前記シャワーヘッド本体には、前記バルブを手動操作によって開放するための押しボタン及び押し棒が設けられている。
【0003】
特許文献2のシャワーヘッドはシャワーヘッド本体の把持部の内部に温水の流路を形成する内筒を挿入するとともに、内筒に温水を供給したり、温水の供給を停止したりすることができる開閉弁が装着されている。この内筒には、弁押さえが設けられるとともに、該弁押さえに台座が接合され、該台座にシールパッキンが装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002‐51930号公報
【特許文献2】特開2005‐131557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたシャワーへッドは、ヘッド本体の内部全体が冷水や温水の流路となっているので、ヘッド本体の内部の水量が多くなって、シャワーヘッドが重くなるという問題があった。又、冷水や温水によってヘッド本体が直接加熱されたり、冷却されたりすることが繰り返されるので、ヘッド本体の表面にメッキが施こされている場合には、そのメッキにクラックが入ってメッキが剥れる虞れがあった。
【0006】
又、特許文献1に開示されたシャワーヘッドは、ヘッド本体と別に弁座が取り付けられているので、部品点数が多くなって、製造及び組付作業が面倒であるという問題があった。
【0007】
一方、特許文献2に開示されたシャワーヘッドは、内筒の流路内を温水が流れるようになっているので、ヘッド本体の把持部が加熱されることによる問題は生じない。しかし、内筒の途中に、該内筒と別体に形成された台座及び弁押さえが必要になるので、部品点数が増加し、製造及び組付作業が面倒であるという問題があった。
【0008】
本発明の第1の目的は、上記従来の技術に存する問題点を解消して、弁座構造を簡素化して部品点数を低減し、製造及び組付作業を容易に行うことができるシャワーヘッドを提供することにある。
【0009】
本発明の第2の目的は、上記第1の目的に加えて、ヘッド本体の把持部の温度上昇を抑制して、把持部の耐久性を向上することができるシャワーヘッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、シャワーヘッド本体の内側に弁孔を有する弁座を一体に形成するとともに、シャワーヘッド本体に前記弁座に対向する弁体が備えられた開閉弁を装着し、前記弁座に弁孔の外周に位置するように環状溝を形成し、該環状溝に前記弁体に接触される環状のシール部材を収容したことを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記シャワーヘッド本体は、その内部に内筒を有し、該内筒の流路に前記弁孔を有する弁座が形成されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記開閉弁は、押ボタンを押動操作する毎に弁体が開弁位置と閉弁位置との間で交互に切り換えられるように構成されていることを要旨とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3において、前記内筒には弁座の上流側の流路の圧力を逃すためのリリーフバルブが設けられていることを要旨とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記開閉弁はユニット化されていることを要旨とする。
【0013】
(作用)
本発明は、シャワーヘッド本体に弁孔を有する弁座が一体に形成され、該弁座に弁孔の外周に位置するように環状溝が形成され、該環状溝に弁体に接触される環状のシール部材が収容されている。このため、弁座構造を簡素化して部品点数を低減し、製造及び組付作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明によれば、弁座構造を簡素化して部品点数を低減し、製造及び組付作業を容易に行うことができる。
請求項2に記載の発明は、上記の効果に加えて、把持部の温度上昇を抑制して、把持部の耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明のシャワーヘッドの止水状態の中央部縦断面図。
【図2】シャワーヘッドの構成部品の分離断面図。
【図3】開閉弁の閉弁状態の拡大断面図。
【図4】開閉弁の開弁状態の拡大断面図。
【図5】内筒と開閉弁の分離斜視図。
【図6】この発明の別の実施形態を示す中央部縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化したシャワーヘッドの一実施形態を図1〜図5に従って説明する。
図1に示すように、シャワーヘッド11は、例えばABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン共重合)樹脂等の合成樹脂により形成された筒状のケース12を備えている。該ケース12は図2に示す第1ケース片12Aと、第2ケース片12Bとを組み合わせることによって構成されている。前記ケース12の表面にはニッケルクロム等の耐食性に優れ、高級感を出すためのメッキが施されている。
【0017】
前記ケース12内には、水の流路16を有する例えばABS等の合成樹脂製の内筒17が挿入され、前記第2ケース片12Bの内面に図示しないボルトによって固定されている。該内筒17の下端部には、ホース18が接続されている。前記内筒17の開口部には、流路19を有する通水部材20が接続されている。前記ケース12のヘッド部13の開口部には、多数の小孔23を有する散水板24が嵌合されている。前記流路19からの水は、散水板24の小孔23から放出される。前記ホース18からの冷水、温水あるいは冷温混合水は、前記内筒17及び通水部材20を流れるため、それらの温度が前記ケース12及びヘッド部13に直接伝達されないようになっている。
【0018】
次に、前記内筒17内において水の流路16の開閉を行うための開閉弁機構31について説明する。
図1及び図2に示すように、前記内筒17の内部には、弁孔32を有する弁座33が一体に形成されている。前記弁座33と対応するように、前記内筒17の外周壁には、取付孔34が内外に貫通するように形成されている。前記内筒17の外周壁には、前記取付孔34を包囲する取付筒部35が一体に形成されている。
【0019】
図3に示すように、前記取付孔34及び取付筒部35内には弁開閉ユニット30が設けられている。取付孔34にはシールリング36を介して弁開閉ユニット30の弁収容筒37が貫通支持されている。この弁収容筒37は、図5に示す弁開閉ユニット30を取付筒部35の内部に収容した状態で、前記内筒17に設けた一対の挿入孔17aに逆U字状の位置規制ピンPを挿入し、該位置規制ピンPを前記弁収容筒37の外周面に形成されたフランジ部37aに係止することによって、取付筒部35内に固定されている。図3に示すように、前記弁収容筒37には弁体38が前記弁座33に対して接離可能に挿入されている。前記弁体38の外周面に形成された環状溝には、前記弁収容筒37の内周面に接触されるシールリング39が嵌入されている。
【0020】
前記弁座33には、前記弁孔32と同心状に環状溝33aが形成され、該環状溝33aにはシール部材40が嵌入され、該シール部材40のシール面には、図4に示すように円環状のシール突条40aが一体に形成されている。前記弁体38の先端部には、前記弁孔32に挿入されるテーパ部38aが一体に形成され、該テーパ部38aの基端部において弁体38には、前記シール部材40のシール突条40aに対応するシール面38bが形成されている。
【0021】
前記弁体38の基端部には、軸部38cが一体に形成され、該軸部38cにはインナーボタン41が軸方向に摺動可能に嵌合されている。該インナーボタン41と弁体38との間には、コイルばね42が介在され、該コイルばね42によって弁体38が閉弁方向に付勢されている。前記インナーボタン41の外周面には、アウターボタンとしての押ボタン43が固定されている。
【0022】
前記弁収容筒37と前記インナーボタン41との間には、コイルばね44が介在されている。該コイルばね44によって、前記インナーボタン41及び押ボタン43が前記弁収容筒37から離隔する開弁方向に付勢されている。前記弁収容筒37、インナーボタン41及び押ボタン43には、ハートカムを含む周知の保持機構が介在されている。この保持機構の機能については後述する。
【0023】
図1〜図3に示すように、前記内筒17には、前記弁座33の近傍に位置するように、リリーフバルブ51が設けられている。そして、前記開閉弁機構31の上流側の流路16の圧力が過度に上昇した場合に、コイルばね53の弾性力に抗して弁体52が開かれ、その圧力が逃がされてウォーターハンマー及び流路16内の異常な圧力上昇(シャワーヘッド流路内)が防止されるようにしている。
【0024】
次に、前記のように構成されたシャワーヘッド11の作用について説明する。
図1及び図3は前記押ボタン43が押し込まれて、前記保持機構の作用により没入位置に保持されている。この状態においては、インナーボタン41がコイルばね44の付勢力に抗して弁収容筒37の内部に押し込まれ、コイルばね42が圧縮されて、弁体38が閉弁位置に移動され、弁体38のシール面38bが弁座33のシール部材40のシール突条40aに押し付けられ、弁孔32が弁体38によって閉鎖されている。
【0025】
上記放水停止状態において、図1,3に示す前記押ボタン43が若干押し込まれると、前記保持機構の保持機能が解除され、この結果、前記インナーボタン41及び押ボタン43が前記コイルばね44の蓄勢力によって、図3において右方の開弁方向に移動され、前記インナーボタン41及び押ボタン43の移動により弁体38が前記弁座33から離隔される。このようにして、図3に示す弁開閉ユニット30の弁体38が閉弁位置から図4に示す開弁位置に移動される。この結果、温水、冷水あるいは冷温混合水が弁孔32を通して通水部材20の流路19内に流入され、散水板24の多数の小孔23から外部に放出される。
【0026】
上記実施形態のシャワーヘッド11によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態では、前記内筒17に弁孔32を有する弁座33を一体に成形するとともに、該弁座33に形成した環状溝33aにシール部材40を収容した。そして、該シール部材40と弁体38との間においてシールを行うようにした。以上のように、内筒17とは別体の弁座を内筒に組み付ける従来の弁座構造と比較して、部品点数を低減して、製造及び組付作業を容易に行うことができるとともに、弁座構造を頑丈なものにすることができる。
【0027】
(2)上記実施形態では、前記ケース12の内部に内筒17を収容し、ヘッド部13の内部に通水部材20を収容した。このため、流路16,19内の冷温水の温度がケース12及びヘッド部13に直接伝達されるのを防止して、ケース12及びヘッド部13の膨張や収縮を抑制することができ、ケース12及びヘッド部13の表面に施されたメッキが剥離するのを防止することができる。
【0028】
(3)上記実施形態では、前記内筒17にリリーフバルブ51を設けたので、開閉弁機構31の上流側の水圧が異常に上昇した場合に、その圧力を逃すことができる。このため、各部の不調や損傷を防止することができる。
【0029】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図6に示すように、前記内筒17を使用しないシャワーヘッド11のケース12の内部に、該ケース12と一体に弁孔32を有する弁座33を一体に形成し、ケース12に開閉弁機構31を装着してもよい。この実施形態においても、弁座構造を簡素化することができる。
【0030】
・ヘッド部13及び散水板24の構造を、散水モードと、ストレート水モードとの間で切り換えができる構成に変更してもよい。
【符号の説明】
【0031】
16,19…流路、17…内筒、30…弁開閉ユニット、31…開閉弁機構、32…弁孔、33…弁座、33a…環状溝、38,52…弁体、40…シール部材、43…押ボタン、51…リリーフバルブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャワーヘッド本体の内側に弁孔を有する弁座を一体に形成するとともに、シャワーヘッド本体に前記弁座に対向する弁体が備えられた開閉弁を装着し、前記弁座に弁孔の外周に位置するように環状溝を形成し、該環状溝に前記弁体に接触される環状のシール部材を収容したことを特徴とするシャワーヘッド。
【請求項2】
請求項1において、前記シャワーヘッド本体は、その内部に内筒を有し、該内筒の流路に前記弁孔を有する弁座が形成されていることを特徴とするシャワーヘッド。
【請求項3】
請求項2において、前記開閉弁は、押ボタンを押動操作する毎に弁体が開弁位置と閉弁位置との間で交互に切り換えられるように構成されていることを特徴とするシャワーヘッド。
【請求項4】
請求項2又は3において、前記内筒には弁座の上流側の流路の圧力を逃すためのリリーフバルブが設けられていることを特徴とするシャワーヘッド。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記開閉弁はユニット化されていることを特徴とするシャワーヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−224207(P2011−224207A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98065(P2010−98065)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000242378)株式会社ケーブイケー (130)
【Fターム(参考)】