説明

シューズキーパー

【課題】靴の形状に合わせて種々の形状に自由自在に形状に変えることができ、しかもその形状を保持でき、使用しないときには折り畳むことが可能であり、携帯時や保管に好適な、シューズキーパーを得ることである。
【解決手段】熱可塑性樹脂成形体からなり、90度折り曲げ後の戻り角度が30度以下であることを特徴とするシューズキーパーに関する。更には、熱可塑性樹脂成形体がエチレン系重合体であるシューズキーパーに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴の形状に合わせて種々の形状に自由自在に変形可能で、靴の形状を維持でき、使用しないときには折り畳むことが可能な、形状保持性を有するシューズキーパーに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ブーツ等の長い筒状部を有する靴は、靴販売店頭での展示時あるいは保管時は、筒状部の形状を保持するために、靴の内側に紙で作製した筒状のシューズキーパーが挿入されている。紙で作成したシューズキーパーは形状保持性が劣ることから、靴の形に合わせた合成樹脂フィルム又はシートからなる筒体の中に除湿剤や乾燥剤と保形用詰め物を収容したシューズキーパー(例えば、特許文献1参照)、あるいは中空縦長の樹脂製の筒部に、脱臭・防湿および保湿作用を呈する物質を収容した収容体を挿入したシューズキーパー(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
しかしながら、いずれのシューズキーパーも、合成樹脂からなる筒状部材のみでは靴の形状を保持することが困難なことから、筒状部材に、保形用詰め物を必要としている。また、筒状部材は、ブーツの内径に合わせて作製されているので、シューズキーパーを太さの異なるブーツへ転用することは一般に困難である。
また、いずれのシューズキーパーも筒状であり、しかも保形用の詰め物を必要とすることから、携帯するには不便であり、靴から取り出して保管する場合も嵩張る等の欠点を有している。
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3035841号公報
【特許文献2】特開2006−198055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、靴の形状に合わせて自在に形状に変えることができ、しかもその形状を保持でき、使用しないときには折り畳むことができる携帯時や保管に好適な、シューズキーパーを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、熱可塑性樹脂成形体からなり、90度折り曲げ後の戻り角度が30度以下であることを特徴とするシューズキーパーを提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のシューズキーパーは、形状保持性に優れ、靴の大きさや形状に合わせて容易に変形でき、使用しないときには、折り畳むことができるので、携帯あるいは保管に適するという特徴を有している。また、必要に応じて、シューズキーパー自体に消臭剤等を含ませて、各種機能を付与したり、シューズキーパーを筒状や袋状に変形させてその筒状部や袋状部の内部に消臭剤等を入れて消臭機能等を付与することもできる。更には、本発明のシューズキーパーは熱可塑性樹脂製であるので、軽量で持ち運びが可能であり、不要になった場合は安全に焼却が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<熱可塑性樹脂成形体>
本発明のシューズキーパーを構成する熱可塑性樹脂成形体は、熱可塑性樹脂成形体を折り曲げて変形させた場合に、90度折り曲げ後の戻り角度が30度以下、好ましくは20度以下、更に好ましくは10度以下である。このような範囲の熱可塑性樹脂成形体からなるシューズキーパーは、塑性変形性及び形状保持性が好ましいものとなる。ここで、90度折り曲げ後の戻り角度とは、23℃において、熱可塑性樹脂成形体を図1(a)のように90度折り曲げてから5分間放置したときの図1(b)で示す戻り角度θをいい、戻り角度が小さいほど形状保持性が良好であるといえる。戻り角度が30度を超える熱可塑性樹脂成形体は靴の形状に合わせて変形した場合にその形状を保持できない虞がある。
【0008】
本発明に係る熱可塑性樹脂成形体は、好ましくは、曲げ応力(ATMS D790)が、400kg/cm以上、更に好ましくは470〜1000kg/cmの範囲にある。曲げ応力が400kg/cm以上であれば得られる熱可塑性樹脂成形体が外からある程度の力が加わっても容易に変形せず、一方、1000kg/cmを超える熱可塑性樹脂成形体は変形するために大きな外力が必要となり、手で容易に靴の形状に合わせることが困難となる虞がある。
【0009】
本発明に係る熱可塑性樹脂成形体は、フィラメント、ストランド或いはテープ等の線状体、フィルム、シート、或いは、線状体を織ったり編んだネット状物等の面状体であってもよい。本発明に係る熱可塑性樹脂成形体は、たとえば面状体の場合は表と裏が異なる熱可塑性樹脂からなっていてもよく、線状体の場合は異なる熱可塑性樹脂が線状体の表面に露出していてもよい。また、面状体と線状体とを接合して組み合わせたものであってもよい。例えば表面側あるいは片面を低融点の熱可塑性樹脂で構成し、内部あるいは他の片面を高融点の熱可塑性樹脂で構成した熱可塑性樹脂成形体は、熱によって表面あるいは片面を溶融することにより、90度折り曲げ後の戻り角度を維持した状態で熱可塑性樹脂成形体同士、あるいはフィルム等の他の材料と複合することが容易である。
【0010】
<熱可塑性樹脂>
本発明に係る熱可塑性樹脂成形体の原料となる熱可塑性樹脂としては、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、あるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、ポリオレフィンが好ましく、特にエチレン単独重合体又はエチレン・α−オレフィン共重合体のエチレン系重合体が焼却しても有害なガスが発生せず、形状保持性を付与するための延伸成形性に優れるので特に好ましい。
【0011】
エチレン系重合体としては、密度が945kg/m以上、好ましくは955〜970kg/m、とくに好ましくは960〜970kg/m、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)に基づく分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))が5〜15、好ましくは6〜14、炭素数3〜6のα−オレフィン含量が2重量%未満、好ましくは0.05〜1.5重量%の重合体が好ましい。すなわち原料素材の成形加工性の点から、エチレン単独重合体よりエチレン・α−オレフィン共重合体の使用が好ましい。このようなエチレン単独重合体又はエチレン・α−オレフィン共重合体としては、また、190℃、2160g荷重に基づくメルトフローレートが0.1〜1.0g/10分、とくに0.2〜0.5g/10分の範囲にある重合体が延伸性に優れ、得られる熱可塑性樹脂成形体の強度が優れるので好ましい。さらに上記共重合体としては、重合構成成分であるα−オレフィンとしてはプロピレンが好ましい。かかる高密度で適当な分子量分布を有するエチレン単独重合体又はエチレン・α−オレフィン共重合体を使用することにより、塑性変形性、形状保持性が優れた熱可塑性樹脂成形体を容易に得ることができる。
【0012】
本発明に係る熱可塑性樹脂には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常、熱可塑性樹脂に添加される各種添加剤を配合することができる。各種添加剤としては、例えば、耐熱安定剤、加工助剤、着色顔料、帯電防止剤、無機充填剤、抗菌剤、乾燥剤、防虫剤、防カビ剤、難燃剤、消臭剤或いは脱臭剤などを例示することができる。
抗菌剤としては種々公知のものを用いることができ、銀系抗菌剤等を用いることができる。銀系抗菌剤としては、銀担持ゼオライト(アルミノケイ酸塩)、銀担持アパタイト(リン酸カルシウム)などが挙げられる。また、酸化亜鉛、酸化銅などを有効成分とするもの、酸化アルミニウムや酸化カルシウムなどと酸化亜鉛または酸化銅との固溶体、あるいは酸化亜鉛の微粒子や酸化チタンなどが挙げられる。
【0013】
<熱可塑性樹脂成形体の製造方法>
本発明に係わる熱可塑性樹脂成形体は、種々公知の方法、例えば、特開平7−238417号公報あるいは特開2005−35148号公報に挙げられる方法により得ることができる。
例えば、押出し成形機を用いて、熱可塑性樹脂を溶融して、押出し機の先端に設置したダイからから所望の形状の溶融物を押出した後、溶融押出し物を、一旦冷却した後、次いで、熱をかけて融点未満の温度で延伸することにより製造し得る。延伸温度は、塑性変形性及び形状保持性が発現できる程度に延伸するのに適した温度を、使用する熱可塑性樹脂により適宜選択し、通常は使用する熱可塑性樹脂の融点より低い温度で行う。
例えば、熱可塑性樹脂としてエチレン系重合体を用いる場合は、延伸温度を100℃、好ましくは85〜100℃の範囲にするとよい。延伸倍率は原糸の性状や延伸温度によっても若干異なるが、塑性変形性が発現できる範囲で選択され、通常は降伏点以上破断点以下となるような範囲であって、2〜30倍、好ましくは7〜15倍程度である。延伸倍率が不足すると、90度曲げ後の戻り角度が30度以下の熱可塑性樹脂成形体が得られない虞があり、更には塑性変形性及び形状保持性を満足すべき熱可塑性樹脂成形体が得られない虞がある。
【0014】
<シューズキーパー>
本発明のシューズキーパーは、90度折り曲げ後の戻り角度が30度以下、好ましくは20度以下、更に好ましくは10度以下である。ここで、90度折り曲げ後の戻り角度とは、23℃において、シューズキーパーをシート状にしたものを図1(a)のように90度折り曲げてから5分間放置したとき横から見た断面が図1(b)で示す戻り角度θをいい、戻り角度が小さいほど形状保持性が良好であるといえる。戻り角度が30度を超えるシューズキーパーは靴の形状に合わせて変形した場合にその形状を保持できない虞がある。
本発明のシューズキーパーは、内部と表面、あるいは両表面(表と裏)を異なる熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂成形体からなっても良い。
本発明のシューズキーパーは、前記熱可塑性樹脂成形体からなる。熱可塑性樹脂成形体が線状体である場合は、線状体を単独または他の線状体と一緒に編んだり織ったりしたネット状あるいは織布等の面状体にしてもよい。また、シューズキーパーが90度折り曲げ後の戻り角度が30度以下である限り、他の繊維と混織したものであってもよい。また、あるいは、90度折り曲げ後の戻り角度が30度以下である限り、線状体と他の基材、例えば、フィルムもしくは織布、不織布等の繊維状物と貼り合わせたものであってもよい。本発明のシューズキーパーは、線状体の熱可塑性樹脂成形体からなるシート等の面状体である場合は、面状体をカットして、靴の内部に挿入できる大きさの筒状に成形して、あるいは面状体をそのまま丸めて筒状にして用いることもできる。また、シューズキーパーを筒状体に成形して、これを2つ用意し、それらを上下にして嵌め込んだ形にしても良い。
【0015】
できあがった筒状にしたシューズキーパーは、筒状にして使用する際に、当該筒状の内部に、市販の乾燥剤、防臭剤、脱臭剤および抗菌剤等を詰めて使用することができ、適宜乾燥剤等を取り出して取り替えたり、乾燥剤等を取り出してシューズキーパーを折り畳んで保管することができる。
また、本発明のシューズキーパーは、外側に編み物や織物のカバーを設けても良い。たとえば、シューズキーパーとして熱可塑性樹脂成形体を成形した物を、筒状に縫った布製やニット製のカバーに差し込んでも良い。
【0016】
本発明のシューズキーパーは、形状保持性に優れ、手で容易に変形できる。したがって、シューズキーパーとして使用するときには、手で好みに合わせて形状を作り、使用しないときには手で折り畳むことができる。したがって、携帯あるいは保管に適している。また熱可塑性樹脂成形体に抗菌剤等を含有させてせても良いし、筒状に変形させた後に筒状の内部に消臭剤等を入れることもできる。更には、本発明のシューズキーパーは熱可塑性樹脂製であるので、軽量で持ち運びが可能であり、ハサミ等で簡単に切断可能であり、不要になった場合は安全に焼却が可能である。
【実施例】
【0017】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例における物性値等は、以下の方法により測定した。
【0018】
<実施例1>
プロピレン含量1.2重量%、密度958kg/m、メルトフローレート0.35g/10分(ASTM D1238、190℃、2160g荷重)、分子量分布(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)による分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn))が12のエチレン系重合体(エチレン・プロピレン共重合体)を原料に用いた。
このエチレン・プロピレン共重合体を、溶融紡糸装置を用い、成形温度(シリンダー及びダイ)290℃で溶融紡糸し、引き続き95℃に保たれた水槽(延伸槽)及び140℃に保たれた電熱オーブン(アニール槽)を通して巻き取り13倍に延伸し、繊度が3000デニールの線状体を得た。この線状体は、23℃で90度折り曲げ後5分間保持した後の戻り角度は12度で、曲げ強度が493kg/cmであった。
このようにして得られた線状体を、編んで縦30cm、横40cmのシート状物を得た。このシート状物の23℃での90度折り曲げ後5分間保持した後の戻り角度は12度であった。このシート状物を、手で丸めて筒状に変形させてロングブーツの筒状部に挿入した。シューズキーパーを挿入したロングブーツは筒状部が地面に倒れることなく地面に立ったままの形状を留めた。また、ロングブーツから取り出したシューズキーパーは、手で容易に四つ折りに畳むことができ、さらに四つ折りに畳んだシューズキーパーは、手で容易にシート状に広げ、元の、筒状に変形することができた。
【0019】
<実施例2>
実施例1で用いたエチレン系重合体に、抗菌剤ノバロンAG1100を添加した以外は実施例1と同様にして線状体を得、得られた線状体を編んで縦30cm、横40cmのシート状物からなるシューズキーパーを作製した。線状体及びシート状物の23℃で90度折り曲げ後5分間保持した後の戻り角度は12度、線状体の曲げ強度は493kg/cmであった。得られたシート状物を手で四つ折りに折り畳んで、携帯用の袋の中に入れて別の場所に持って行き、履いていたブーツを脱いだ後、手でシート状に広げた後、丸めて筒状にしてブーツの中に挿入した。シューズキーパーを挿入したブーツは筒状部が地面に倒れることなく地面に立ったままの形状を留めた。用いたシューズキーパーは臭いを吸収するため嫌な臭いがせず、抗菌剤が含まれているので1ヶ月間平均気温25度で放置してもカビ等が発生しなかった。更にシューズキーパーは、軽量で携帯する際に嵩張らなかった。
【0020】
<実施例3>
実施例1で得た線状体を編んで筒状にしてシューズキーパーを作製した。得られたシューズキーパーをブーツ入れ、ブーツの足首に当たる部分を手で押して折り曲げ、本来のブーツの形に合わせて形作った。得られたシューズキーパーを天地方向になるように(筒状を開くように)ハサミで切断して平らなシート状にした。シューズキーパーの天地方向とは垂直になる方向に23℃において90度折り曲げ後5分間保持した後の戻り角度は12度であった。
【0021】
<実施例4>
実施例1で得た線状体を1cm間隔で平行に並べ、接着剤を塗布したポリエチレンフィルムで挟んだ積層体を得た。当該積層体を、線状体を垂直に横切るように90度折り曲げて、23℃での90度折り曲げ後5分間保持した後の戻り角度を測定したところ14度であった。この積層体を、線状体が筒状の円周方向と垂直方向に交わる方向になるように(線状体がシューズキーパーの天地方向になるように)してシューズキーパーを作成した。これを線状体がシューズキーパーの天地方向になるように筒状に丸めてブーツに挿入した。シューズキーパーが、ブーツの筒状上部からはみだしたため、はみだした部分をハサミで切断し、これを火で燃やした。シューズキーパーはハサミで簡単に切断可能であり、且つ、燃やしても有害なガスが発生しなかった。
シューズキーパーを挿入したブーツは筒状部が地面に倒れることなく地面に立ったままの形状を留め、更に、軽量で携帯する際に嵩張らなかった。
【0022】
<比較例1>
高密度ポリエチレン(極限粘度[η]が2.5dl/g、メルトフローレート0.50)を用い、原糸を5倍に延伸した以外は実施例1と同様にして、線状体を得た。得られた線状体は、23℃での90度折り曲げ後5分間保持した後の戻り角度が80度であった。これを用いて実施例1と同様にしてシューズキーパーを作成した。得られたシューズキーパーの23℃での90度折り曲げ後5分間保持した後の戻り角度が80度であった。
得られたシューズキーパーを丸めてブーツの中に入れたところ、ブーツの筒状部分は形状保持することができず、倒れてしまった。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】90度折り曲げ後の戻り角度を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂成形体からなり、90度折り曲げ後の戻り角度が30度以下であることを特徴とするシューズキーパー。
【請求項2】
熱可塑性樹脂成形体が線状体からなる請求項1記載のシューズキーパー。
【請求項3】
線状体が熱可塑性樹脂シート、編み物又は織物と複合されてなる請求項2記載のシューズキーパー。
【請求項4】
熱可塑性樹脂成形体がエチレン系重合体を含む請求項1〜3の何れかに記載のシューズキーパー。

【図1】
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【公開番号】特開2009−95352(P2009−95352A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266435(P2007−266435)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】