説明

シューズ

【課題】 足を取り囲む軟質アッパー1を有するシューズにおいて、歩行サイクルを損なわないために必要な足の動作の自由度を制限せずに、足に容易に快適かつ迅速に固定する。
【解決手段】 軟質アッパー1の甲区域上に配置された閉鎖パネル10、およびシューズの踵部分に配置されたレバー機構50を備える。レバー機構50は、シューズを足に固定するためにレバー機構50を作動させるときに、閉鎖パネル10が軟質アッパー1の甲区域に対して外側から引き寄せられるように閉鎖パネル10に接続されている。レバー機構50はレバーを備え、上方に回動すると、ケーブル40を介して閉鎖パネル10の外後方および内後方に延在する側方領域12を後方に引っ張り、閉鎖パネル10を甲区域に引き寄せて、シューズを足にしっかりと固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足を取り囲む軟質アッパーを備えたシューズ、特にスポーツシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シューズを足にしっかりと固定するために、靴ひもが用いられている。靴ひもは、安く、交換が容易であり、怪我をさせる虞がないのでスポーツシューズにとって特に好ましい。しかしながら、靴ひもには、ひもを結ぶのが比較的複雑であり、したがって時間がかかるという大きな欠点がある。さらに、靴ひもを結ぶ度に、足にとってシューズがゆる過ぎたり、きつ過ぎたりしないか注意しなければならない。したがって、アスリートが、試合の短い休憩中、例えば、バスケットボールにおけるいわゆる「タイム・アウト」中、短時間だけシューズを脱いで足を完全にリラックスさせたいときに、普通の靴ひもではそうすることはできない。何故ならば、試合が再開したときに、靴ひもを結ぶのに時間がかかり過ぎるからである。
【0003】
それゆえ、例えば、ベルクロ(Velcro:登録商標)およびマジックテープ(登録商標)等の名称で市販されている面ファスナーおよび足の甲上に亘って存在する全ての種類のバックル等のような靴ひもに代わる別の手段がいくつか従来技術より知られている。しかしながら、シューズを足に速くともしっかりと固定させるという目的は達成されていない。面ファスナーによる接続は、簡単かつ迅速に操作できるが、短時間で摩滅してしまい、ゆる過ぎもせずきつ過ぎもしないようにシューズを締め付け、安定した接続のために対応する表面を正確に整合させるために、靴ひもの場合と同様に多大な注意を払う必要がある。締付け動作が元々決まっているバックルは操作がもっと簡単である。しかしながら、多くのシューズ、特に、スポーツシューズにとって、バックルは除外される。何故ならば、バックルは、硬く、足の甲の上に露出して配置されているために、他のアスリートに怪我をさせる虞が大きいからである。この理由のために、例えば、バスケットボールにおいて頻繁に起こる体の接触の点から見て、バスケットシューズに硬いバックルを備えることはあり得ない。
【0004】
さらに、多くの異なる締付け構造がスキーブーツから知られている。例えば、特許文献1には、踵から膝に向いたスキーブーツの軸に沿ってほぼふくらはぎに相当する高さに2つのレバーが互いに入り込んで配置されているシステムが開示されている。これらのレバーは、二本のケーブルを締め付ける働きをする。上側のケーブルは、ふくらはぎの区域で、前方と後方のプラスチックシェルを互いに引き寄せ、それによって、スキーブーツを閉じ、一方で、第2のケーブルは、スキーブーツの内部に設けられた押圧部材を足の方向に引き寄せて、ブーツの内側での足の相対運動を防ぐ。
【0005】
この構造は、スキーではなく、ウォーキングやランニングに用いられる一般のシューズに転用できない。これは、一般のシューズは、スキーブーツとは異なり、歩行サイクル中に何度も行われる足の各部の互いに対する運動が妨げられないように、例えば、皮革や柔軟な合成材料から製造された軟質アッパーから構成されているからである。硬質の外側シェルを備えたスキーブーツとは対照的に、軟質アッパーを持つシューズのための締付けシステムでは、これらの足の運動を考慮しなければならない。
【特許文献1】米国特許第4677768号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、歩行サイクルを損なわないために必要な足の動作の自由度を制限せずに、足に容易に快適かつ迅速に固定することのできる軟質アッパーを備えたシューズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、足を取り囲む軟質アッパーと、軟質アッパーの甲区域に配置された閉鎖パネルと、シューズの踵部分に配置された締付け部材とを備えたシューズ、特に、スポーツシューズであって、締付け部材が、締付け部材の操作により、軟質アッパーの甲区域に対して外側から閉鎖パネルを引き寄せて、シューズを足に固定するように、閉鎖パネルに接続されているシューズにより解決される。
【0008】
シューズの踵部分に配置された締付け部材により、シューズを足に固定する単純な操作が可能となり、一方で、本発明による閉鎖パネルは引寄せ動作を接触圧力に変換する。この接触圧力は、甲区域に広く作用し、一般的なひもできつく締められたシューズの場合のように、確実であるが、局部的に柔軟性をもってシューズを足に固定する。閉鎖パネルは、本発明によれば、軟質アッパーの甲区域に対して外側から引き寄せられる。シューズが足に固定されたときでも、アッパーの軟質材料を圧縮したり伸張させたりして足の個々の部分がまだ相対的に運動することができる。さらに、圧力を分散させることによっても、アッパー材料が早まってへたれることがなくなる。従来技術の閉塞システムとは対照的に、本発明によるシューズのアッパーに作用する引張強さは大きくない。
【0009】
締付け部材を一旦個々の足に合うように調節すると、本発明によるシューズは、単純な作用により、すなわち、締付け部材の操作により、しっかりと固定することができる。したがって、本発明のシューズは、例えば、試合の短い休憩中に足をリラックスさせたり、マッサージするために、極短時間で脱いだり履いたりすることができる。
【0010】
閉鎖パネルは、軟質アッパーの甲区域を三次元的に取り囲むことが好ましく、ここで、閉鎖パネルは、外後部側および/または内後部側に突出し、閉鎖パネルを締付け部材に接続するように機能する側部領域を備えることが好ましい。閉鎖パネルの好ましい形状により圧力が生じ、この圧力は側部領域に分散され、それによって、足の甲の敏感な組織に局部的な圧点が生じなくなる。さらに、三次元的な取囲みにより、シューズが足に特にしっかりと固定される。これらの側部領域は、閉鎖パネル自体とは異なる材料、特に、過剰な力の下でわずかに屈曲できるわずかに弾性の材料から製造されていてもよい。
【0011】
閉鎖パネルは、アッパーに向いた側に、履き心地を改善するための発泡層を備えていることが好ましい。
【0012】
本発明のシューズは、閉鎖パネルを軟質アッパーの甲区域に対して引き寄せるように締付け部材を操作したときに、外後方および/または内後方に突出した閉鎖パネルの側部領域がその中をスライドできるように構成されている外側および/または内側受入部材を備えることが好ましい。受入部材は、アッパーの後部を下から取り囲むことが好ましい。それゆえ、受入部材は、足の甲区域の外側に配置された閉鎖パネルの対応部分を形成し、それによって、締付け部材を操作したときに、足が全ての側からシューズにしっかりと確実に取り囲まれる。さらに、受入部材により、足のソールとの接触が改善される。
【0013】
閉鎖パネルが、好ましい実施の形態におけるように、外前方および/または内前方に延在する側部領域を備え、この側部領域がアッパーの足前方部分の下側および/またはシューズのソールに取り付けられている場合、シューズ構造全体がさらに安定になる。側部領域を、シューズのトウ・キャップだけに取り付けることも、トウ・キャップに加えて上述したように取り付けることも考えられる。それゆえ、締付け部材により与えられる張力は、踵領域から始まり、足前方領域にまで分散され、したがって、固定されたシューズの接触圧力を足全体に確実に均一に分散させられる。
【0014】
締付け部材は、引張部材により閉鎖パネルに接続されていることが好ましく、この引張部材は、締付け部材から閉鎖パネルまで延在する少なくとも1本の外装ケーブルとして設けられることが好ましい。その結果、締付け部材の操作が容易になる。これは、外装ケーブルを使用することにより、引張動作が踵から甲区域上に配置された閉鎖パネルに伝達されるときの摩擦力が減少するからである。外装ケーブル以外に、様々な他の引張部材、例えば、単純なコードおよびテープ並びに微細な連結チェーンや一般の連結要素を用いてもよい。
【0015】
好ましくは、少なくとも1本のケーブルが、シューズの両側(すなわち、外側(lateral side)と内側(medial side))において、締付け部材から閉鎖パネルまで延在する。ある実施の形態において、ケーブルは、少なくとも一部がシューズの内底の下に延在する。それゆえ、なお一層の引張負荷が閉鎖パネルに加えられる。これと同時に、ケーブルが側方に延び過ぎることがなくなり、したがって、怪我の虞が減少する。しかしながら、ケーブルをシューズの外部だけに沿って案内することも考えられる。
【0016】
調節のために、アッパーの甲区域上への閉鎖パネルの配置を適応させるように、引張部材を異なる位置で閉鎖パネルに留め付けられることが好ましい。これにより、1つのシューズのサイズで、シューズを個々に異なる足の寸法に調節するために、締付け部材の操作により、引張動作の程度を変更することができる。
【0017】
締付け部材は、引張部材が取り付けられ、締付けのために上方に回動できるか、または引張部材が対応して案内される場合には、締付けのために下方に回動できるレバーを持つレバー機構を備えることが好ましい。これらの実施の形態により、シューズの着用者がほとんど注意を払わないでよいほど、締付け部材の操作が特に容易になる。
【0018】
引張部材を調節部材によりレバーに取り付けることが好ましい。調節部材により、レバーの動きにより生じる引張動作の量を調節することができる。したがって、閉鎖パネルでの引張部材の上述した異なる留付け位置に加えて、調節のためのオプションがさらに与えられる。例えば、レバーにある調節部材により微細な調節ができ、一方で、異なる留付け位置では大まかな調節ができる。
【0019】
調節部材は、特に好ましい実施の形態において、レバーの凹部内で動かすことができ、引張部材を受容するスライド、およびその操作によりレバーの内側でスライドを移動させる、レバーに取り付けられた調節用ネジを備えている。調節用ネジは、レバーの位置に関係なく調節が行えるようにレバーに配置されていることが好ましい。これにより、解放された状態だけではなく、レバーが上方に回動されて所定位置にあるときも、張力を調節することができる。
【0020】
したがって、シューズの着用者は、閉じる前に大まかな調節を行い、その後、締付けのためにレバーを上方に回動し、最後に、調節用ネジにより、個々の要求に必要な張力の量を正確に規定してもよい。シューズを脱ぐために、レバーを下方に回動したときに、以前に規定した調節は固定されたままである。したがって、レバーを再度回動してシューズを締め付けたときに、シューズは足に前と同じようにうまくフィットして調節された状態となる。しかしながら、レバーを操作する前に、調節用ネジにより完全な調節を同様に行ってもよい。
【0021】
シューズの踵部分は、レバー機構を収容するための凹部を少なくとも1つ備えていることが好ましい。それゆえ、レバー機構は全くまたはわずかしか突出しないので、怪我の虞が減る。好ましくは、レバーは、例えば、高く跳んだ後の着地のときのような、強い衝撃が生じた場合、意図せずに解放されないように、踵部分の凹部内に上方に回動された位置で係止される。
【0022】
レバーは踵部分に取外可能に取り付けられていることが好ましい。これにより、手入れ目的のため、または洗浄目的のため、もしくは、足をシューズに入れやすくするようにシューズの開口部のサイズを最大にするために、シューズからレバーを完全に分離することができる。このことは、例えば、着用するときにシューズを特に大きく広げなければならないほど非常に高い甲を持つ人にとって重要であろう。
【0023】
本発明によるシューズのさらなる改良は、他の独立請求項の主題である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下の詳細な説明において、本発明の現在好ましい実施の形態を、図面を参照してさらに詳しく説明する。
【0025】
以下において、本発明の現在好ましい実施の形態を、バスケットシューズを参照して説明する。しかしながら、本発明は、軟質アッパーを備えた他の種類のシューズ、例えば、ランニングシューズや一般のストリートシューズとして実施できることも理解されよう。
【0026】
図1は、本発明の現在好ましい実施の形態の分解図を示している。閉鎖パネル10が、合成メッシュ材料または皮革などの一般的な可撓性材料から製造されたアッパー1の上に配置される。閉鎖パネル10は、アッパー1の甲区域2の外側に配置される。しっかりと確実に接触させるために、甲区域2にわずかなへこみを設けてもよい(図1参照)。さらに、図1および2は、バスケットシューズの典型的な部材、すなわち、本底30、ヒール・ウェッジ31、ミッドソール32およびトウ・キャップ33を示している。
【0027】
閉鎖パネル10は、好ましくは三次元的に湾曲したX形(図1参照)であり、したがって、外後方、内後方、外前方、および内前方にそれぞれ延在する、突出部または延長部11,12を備えている。前方に延在する閉鎖パネル10の突出部11は、アッパー1の下部に取り付けられているか、またはシューズの本底30を下側から取り囲む。この場合、前方に延在する外側と内側の突出部11は、互いに連結されていてもよい。後方に延在する2つの突出部12は、引張動作(図2の矢印参照)を閉鎖パネル10に伝達するように働く。この引張動作は、以下に説明されているように、踵にあるレバー機構50から始まり、外装ケーブル40を介して突出部12に伝達される。
【0028】
この引張動作により、甲区域2にある閉鎖パネル10がシューズのアッパー1およびその下に配置された足(図示せず)に対して引き寄せられ、それによって、シューズが足に締め付けられる。アッパー1は可撓性であるので、足はまだ、この実施の形態により締め付けられたシューズの内部でまだ移動できる。このことは、歩行サイクルを妨げないためにも必要であり、さらに、足の甲の敏感な組織が炎症を起こさなくなる。
【0029】
引張動作の量が、締め付けられたシューズが足にどれだけきつくフィットとしているかを決定する。したがって、ケーブル用の収容部13が後方に延在する突出部12の異なる位置に配置されており、この収容部13は凹部またはどのような種類の鳩目として設けられていてもよい。ケーブル40の2つの前端41を異なる収容部13内に取り付けることにより、足の個々様々なサイズおよび甲の高さにシューズを調節することができる。特に、閉鎖パネル10の外側と内側での接触を異ならせるために、シューズの内側で、外側とは異なる収容部13内にケーブル40を取り付けることも可能である。内側と外側の引張動作は、各々の側に別々のケーブル(以下を参照)を設けることにより、独立して調節することができる。
【0030】
最後に、閉鎖パネル10は、一般のシューズの舌皮に似た、アッパー1の甲区域2において上方に延在する別の延長部15を備えることが好ましい。延長部15、並びに閉鎖パネル10の他の部分に、シューズの内部の通気をよくするために、開口部16を設けてもよい。アッパー1に別の開口部(図示せず)を設けてもよく、必要であれば、その開口部は、開口部16と重なっていてもよい。開口部16のサイズと数は、シューズの使用分野による。
【0031】
閉鎖パネル10は、ナイロン繊維上に配置された、例えば、Pebax(登録商標)の名称で販売されているプラスチック材料などの2つの異なる材料の組合せから製造されることが好ましい。これにより、一方では、アッパー1上に必要な接触圧力が生じたときに、十分な安定性が確保され、他方では、足の甲の敏感な組織に局部的な圧点が生じなくなる。他のプラスチック材料または皮革を使用することも考えられる。
【0032】
開示した閉鎖パネル10に加えて、他の一般的な閉塞要素をアッパー1上に配置してもよい。図1および2は、バスケットシューズの上方に延在するアッパーの最上部を閉じる面ファスナー留め具接続60を示している。最後に、閉鎖パネル10および/またはアッパー1の少なくとも一部を、別の材料層(図示せず)によりさらに被覆してもよい。
【0033】
図3は、ケーブル40を締め付けるためのレバー機構50の第1の好ましい実施の形態の詳細図を示す。
【0034】
レバー52は、このレバー機構に対応する形状を持つ踵部分3の凹部4内に軸51により回動可能に懸架されている。したがって、レバー機構は、たとえあったとしても、踵部分3からわずかしか突出しない。スライド53は、レバー52の溝の内部にスライド可能に配置されている。ケーブル40は、スライド53の周りに案内される。レバー52内に懸架された操作用頭部55を上端に持つ調節用ネジ54が、スライド53を貫通して延在している。操作用頭部55を回転させると、スライド53の位置がレバー52内で移動し、それによって、レバー52を上方に回動したときに(図2および3において曲がった矢印を参照)、ケーブル40の張力動作の程度が変わる。
【0035】
閉鎖パネル10はケーブル40の端部41に取り付けられており、したがって、操作用頭部55は、シューズを足に固定するために、閉鎖パネル10のアッパー1に対する圧力を調節することができる。好ましい実施の形態において、調節用ネジ54はメートル・ネジから構成される。しかしながら、閉鎖パネル10の接触圧力を特に微細に調整することが望ましい場合には、細目ネジを使用することも考えられる。
【0036】
各々の端部41が突出部12に取り付けられている1本のケーブル40の代わりに、内側と外側(図示せず)のための別々のケーブルを設けることも可能である。この場合、2つの独立した調節機構をレバー機構に配置して、内側と外側の引張動作を独立して調節することができるようにする。
【0037】
図4の平面図および側面図は、少し変更したレバー52を示している。図3においては、操作用頭部55はレバー52の湾曲した端部に配置されているが、図4の実施の形態においては、操作用頭部55自体がレバー52の最頂端を形成している。しかしながら、両方の実施の形態において、操作用頭部55はレバー52の位置には関係なく回転させることができる。したがって、着用者は、レバー52が上方に回動されて所定の位置にあるとき、すなわち、締付け位置にあるときにも、接触圧力を調節できるであろう。操作を容易にするために、操作用頭部55にギザギザ(図3参照)または溝(図4参照)が設けてある。
【0038】
レバー52は、上方に回動したとき、踵部分3の凹部4内にロックされる。この目的のために、踵部分3の対応するラッチ要素(図示せず)と相互作用する、小さなラッチ突出部または凹部56が、図3の実施の形態ではレバー52の端部に、図4の実施の形態では操作用頭部55の最頂端に配置されている。
【0039】
特に好ましい実施の形態において、レバー52は、踵部分とは完全に分離することができる。この目的のために、軸51は、例えば、踵部分3(図示せず)の凹部4中に取外可能に取り付けられていてもよい。これにより、ケーブル40を完全に解放することができ、それによって、シューズの入口となる開口部を拡大することができる。何故ならば、閉鎖パネル10を甲区域2から大きく移動させられるからである。したがって、特に高い甲または他の解剖学的特性を持つ着用者でも、より容易にシューズを着脱できる。
【0040】
レバー機構50および踵部分3にある凹部4は、高い機械的負荷に永久的に耐えられる高安定材料から製造されていることが好ましい。凹部4は射出成形により形成されたプラスチック材料から製造されていることが好ましく、一方で、レバー52の部材にはアルミニウムなどの軽金属が用いられることが好ましく、この場合、ダイカストにより所望の形状が形成される。軸51または調節用ネジ54などの、特定の負荷にさらされる小さな部品はスチールから製造されていることが好ましい。スライド53は、レバー52の内側でスライドするための凹部と同様に、調節を特に容易にすることができるように、摩擦減少材料、例えば、テフロン(登録商標)の名称で販売されている材料により被覆してもよい。
【0041】
図5から7は、シューズ内の外装ケーブル40の配置を示している。図5の平面図から分かるように、内部にケーブル40が配置された、摩擦を減少するための外装45が、最初に側部から(図5の平面図および図6の断面図参照)、踵部分3においては、ミッドソール32の下(図7の断面図参照)に延在している。
【0042】
その結果、外装45が、より広い区域に亘り、シューズの外側と内側の厚さを増すことがなくなる。さらに、ケーブル40は、踵部分3の方向において、レバー機構50による締付け操作のために、正確な位置にもってこられる。図6は、さらに、ケーブルの外装45を、上方に延在する、ミッドソール32および/またはヒール・ウェッジ31および/または本底30の材料により外側を被覆してもよいことを示している。滑らかな操作のために、ケーブル40、並びに外装45の内面を摩擦減少材料、例えば、「テフロン」の名称で販売されている材料により被覆することが好ましい。
【0043】
さらに、図6および7の断面図は、図1の分解図からも分かる受入部材90を示している。この部材は、内側と外側の領域91に凹部92を備え、その形状は、閉鎖パネル10の後方に向いた突出部12に対応している(図1および2参照)。レバー機構50を操作したときに、突出部12は凹部92中に案内される。凹部92は、突出部12のスライド運動が土や埃により損なわれないように、受入部材90の側部91の内部に配置することが好ましい。受入部材90の下に配置されたヒール・ウェッジ31は、受入部材90の側部領域91に対応する側部領域の形状を有していてもよい(図1および2参照)。なお、ケーブル40は受入部材90の内部から(図1および2参照)、開口部(図示せず)を通って受入部材90の外部(図6および7参照)に導かれている。
【0044】
受入部材90は、図6および7に示した別体の外装45の代わりに、一体に設けられたケーブル用導管(図示せず)を備えていてもよい。これにより、受入部材90の製造はより複雑になるが、シューズの組立ては容易になる。前記断面図は、受入部材90はアッパー1の後方部分を取り囲み、それによって、足(図示せず)の後方部分を下から取り囲むことを示している。それゆえ、この要素は、閉鎖パネル10の動きに関して一種の突当りを与える。閉鎖パネル10および受入部材90は、一緒に、アッパー1を取り囲み、アッパーを足に固定する。
【0045】
閉鎖パネル10と同様に、受入部材90は、一方では、十分に安定であるために、他方では、アッパー1を通じての足への圧力が局部的とならないようにするために、2つの材料、例えば、軟質ポリウレタン(PU)および硬質PUから製造することが好ましい。
【0046】
図8および9は、図3に示したレバー機構50を一部変更した第2の好ましい実施の形態の詳細図を示す。
【0047】
レバー52は、ここでも、このレバー機構に対応する形状を持つ踵部分3の凹部4内に軸51により回動可能に懸架されている。軸51は、異なる高さに形成された複数の軸受け部を持つ支持部材58によりロックされた状態で支持されている。軸51の軸受け部への取付けは、いわゆるスナップ嵌めにより行われる。レバー52は、ケーブル40を巻きつけるための別の軸57も備えている。ケーブル40の軸57への巻きつけは、図9に示すような様式であっても、ケーブル40をレバーに取り付けられるのであれば、他の様式で巻きつけられていてもよい。また、図8および9には、軸57を用いたケーブル40の取付けを示しているが、レバー52の回動操作により、ケーブル40を通じて引張動作を閉鎖パネル10に伝えられる様式であれば、他のどのような取付け手段によってケーブル40がレバー52に取り付けられていてもよい。
【0048】
この実施の形態においても、レバー52を上方に回動させることにより(図8における曲がった矢印を参照)、ケーブル40を介して、閉鎖パネル10を締め付けることができる。ケーブル40の張力は、軸51を異なる高さの軸受け部に支持させることにより変えることができる。例えば、最下端の軸受け部に軸51を支持させたときに張力が最も小さくなり、したがって、閉鎖パネル10がシューズの甲区域に周りにゆるく締め付けられ、最上端の軸受け部に軸51を支持させたときに張力が最も大きくなり、したがって、甲区域の周りの締付けがきつくなる。また、調節用ネジ、操作用頭部およびスライドを必要とせずに、レバー機構50の構造を単純にしたことにより、製造と組立てが容易になり、転じて、コストが安くなるであろう。
【0049】
軸51は支持部材58から簡単に取り外すことができるので(図9参照)、上述したように、シューズを履く際に開口部を大きく広げる際に都合よい。
【0050】
支持部材58は、凹部4と一体に形成されていても、別に形成されていてもよい。この支持部材58は、上述したように、スナップ嵌めによりその軸受け部に軸51を受容できるように可撓性材料から製造されていることが好ましい。支持部材58が凹部4と一体成形される場合には、前述したように、プラスチック材料から形成される。軸51および軸57は共に、特定の負荷にさらされる部材であるので、スチールから製造されていることが好ましい。
【0051】
さらに、本発明の第3の実施の形態において、第1の実施の形態に記載した調節用ネジ、スライドおよび操作用頭部を備えたレバーと、第2の実施の形態に記載した高さの異なる複数の軸受け部を持つ支持部材とを組み合わせることも考えられる。この実施の形態においては、軸受け部の高さを選択することにより、大まかな張力の調節を行い、操作用頭部を操作し調節用ネジを回転させてスライドの位置を変えることにより、張力を微調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の好ましい実施の形態によるシューズの分解図
【図2】レバーが上方に回動されている途中の位置に示されている図1の実施の形態の側面図
【図3】レバー機構の第1の実施の形態の詳細図
【図4】レバーの別の実施の形態の平面図と側面図
【図5】好ましい実施の形態におけるケーブルの配置を示す概略図
【図6】図5の線分I−Iに沿った断面図
【図7】図5の線分II−IIに沿った断面図
【図8】レバー機構の第2の実施の形態の詳細図
【図9】図8のレバー機構のレバーを取り外した状態を示す概略図
【符号の説明】
【0053】
1 アッパー
10 閉鎖パネル
30 本底
32 ミッドソール
40 ケーブル
45 外装
50 レバー機構
51,57 軸
52 レバー
53 スライド
54 調節用ネジ
55 操作用頭部
58 支持部材
70 中底
90 受入部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足を取り囲む軟質アッパーを有するシューズにおいて、
前記軟質アッパーの甲区域上に配置された閉鎖パネルと、
前記シューズの踵部分に配置された締付け部材であって、前記シューズを足に固定するために該締付け部材を作動させると、前記閉鎖パネルが前記軟質アッパーの甲区域に対して外側から引き寄せられるように該閉鎖パネルに接続されている締付け部材と、
を備えてなり、
前記閉鎖パネルに引張動作を伝達するために、前記締付け部材から前記閉鎖パネルまで延在し、該閉鎖パネルに前端が取り付けられる少なくとも1本の外装ケーブルからなる引張部材により、前記締付け部材が前記閉鎖パネルに接続されており、
前記少なくとも1本のケーブルが、前記シューズの踵部分において該シューズのミッドソールの下に延在し、かつ、該閉鎖パネルの異なる位置に取り付けることができることを特徴とするシューズ。
【請求項2】
前記閉鎖パネルが前記軟質アッパーの甲区域を三次元的に取り囲んでいることを特徴とする請求項1記載のシューズ。
【請求項3】
前記閉鎖パネルが、該閉鎖パネルを前記締付け部材に接続するための、外後方および/または内後方に延在する側部領域を備えていることを特徴とする請求項2記載のシューズ。
【請求項4】
外側および/または内側の受入部材をさらに備え、前記軟質アッパーの甲区域に対して前記閉鎖パネルを引き寄せるように前記締付け部材を操作したときに、外後方および/または内後方に延在した前記閉鎖パネルの側部領域が前記受入部材中にスライドできることを特徴とする請求項3記載のシューズ。
【請求項5】
前記受入部材が前記アッパーの後方部分を下から取り囲むことを特徴とする請求項4記載のシューズ。
【請求項6】
前記閉鎖パネルが、前記アッパーの足前方の下側部分および/または前記シューズのソールに取り付けられた、外前方および/または内前方に延在する側部領域を備えていることを特徴とする請求項2から5いずれか1項記載のシューズ。
【請求項7】
前記閉鎖パネルが通気用開口部を少なくとも1つ備えていることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載のシューズ。
【請求項8】
前記閉鎖パネルが、前記アッパーに向いた側に発泡層を備えていることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載のシューズ。
【請求項9】
前記少なくとも1本のケーブルが、前記シューズの両側において、前記締付け部材から前記閉鎖パネルまで延在することを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載のシューズ。
【請求項10】
前記締付け部材がレバー機構から構成されることを特徴とする請求項1から9いずれか1項記載のシューズ。
【請求項11】
前記レバー機構が、引張部材が取り付けられた、締付けのために上方または下方に回動可能なレバーを備えていることを特徴とする請求項10記載のシューズ。
【請求項12】
前記引張部材が、前記レバーの回動により生じる該引張部材の引張の量を調節できる調節部材を介して該レバーに取り付けられていることを特徴とする請求項11記載のシューズ。
【請求項13】
前記調節部材が、
前記引張部材を受容するための前記レバーの凹部内で移動可能なスライド、および
前記レバーに取り付けられた調節用ネジ、
を備え、前記調節用ネジの操作により、前記スライドが前記レバーの内側で移動することを特徴とする請求項12記載のシューズ。
【請求項14】
前記調節用ネジが、前記レバーの位置に関係なく調節可能であるように該レバーに配置されていることを特徴とする請求項13記載のシューズ。
【請求項15】
前記調節用ネジを回転させるための操作用頭部が前記レバーの上端に配置されていることを特徴とする請求項13または14記載のシューズ。
【請求項16】
前記レバーが、回動のための軸および前記引張部材の取付け手段を備え、
前記レバー機構が、前記軸を支持するための高さの異なる複数の軸受け部を持つ支持部材を備え、
前記軸を支持させる前記軸受け部の選択により、前記引張部材の引張の量が調節されることを特徴とする請求項11記載のシューズ。
【請求項17】
前記取付け手段が、前記引張部材を巻きつけるための軸であることを特徴とする請求項16記載のシューズ。
【請求項18】
前記支持部材が、前記軸を前記軸受け部にスナップ嵌めできるように可撓性部材から製造されていることを特徴とする請求項16または17記載のシューズ。
【請求項19】
前記踵部分が、前記レバー機構を収容するための凹部を少なくとも1つ備えていることを特徴とする請求項11から18いずれか1項記載のシューズ。
【請求項20】
前記レバーが、前記踵部分の前記凹部内に上方に回動された位置で係止されていることを特徴とする請求項19記載のシューズ。
【請求項21】
前記レバーおよび/または前記凹部が、前記レバーを前記シューズの前記凹部中に係止するための突起および/または凹部を備えていることを特徴とする請求項20記載のシューズ。
【請求項22】
前記レバーが前記踵部分に取外可能に取り付けられていることを特徴とする請求項11から21いずれか1項記載のシューズ。
【請求項23】
足を取り囲む軟質アッパーを有するシューズにおいて、
前記軟質アッパーの甲区域上に配置された閉鎖パネルと、
前記シューズの踵部分に配置された締付け部材であって、前記シューズを足に固定するために該締付け部材を作動させると、前記閉鎖パネルが前記軟質アッパーの甲区域に対して外側から引き寄せられるように該閉鎖パネルに接続されている締付け部材と、
を備えてなり、
前記締付け部材が、前記閉鎖パネルに引張動作を伝達するために、前記締付け部材から前記閉鎖パネルまで延在する少なくとも1本の外装ケーブルからなる引張部材により前記閉鎖パネルに接続されており、前記少なくとも1本のケーブルが、前記シューズの踵部分において該シューズのミッドソールの下に延在することを特徴とするシューズ。
【請求項24】
前記引張部材は、一端が前記締付け部材に取り付けられ、他端が前記閉鎖パネルに取り付けられていることを特徴とする請求項23記載のシューズ。
【請求項25】
前記引張部材が、該閉鎖パネルに異なる位置で固定できることを特徴とする請求項23または24記載のシューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−55196(P2008−55196A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272230(P2007−272230)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【分割の表示】特願2003−394085(P2003−394085)の分割
【原出願日】平成15年11月25日(2003.11.25)
【出願人】(503052173)アディダス インターナショナル マーケティング ベー ヴェー (23)
【氏名又は名称原語表記】adidas International Marketing B.V.
【Fターム(参考)】