説明

ショベル機械用バケットのツース部材固定装置

【課題】ロック部材が容易に挿入でき、脱落することを防止するショベル機械用バケットのツース部材固定装置を提供する。
【解決手段】ショベル機械用バケットのツース部材固定装置1は、アダプタ部材2の係合凸部5のロック用貫通孔6a内に内装される駒部材7が、弾性樹脂材料からなる駒部材本体9と、駒部材本体9に一体的に埋設された単一の板ばね部材10とから構成され、板ばね部材10は、ロック部材8に対向する面に設けられた湾曲部11と、湾曲部11の両端から駒部材本体9の内側に傾斜して定着される定着部12とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベル機械用バケットのツース部材固定装置に係り、特に、ロック用貫通孔と係合凸部とを有するアダプタ部材と、ロック用貫通孔と、係合凸部と連通する係合凹部とを有してアダプタ部材に着脱自在に取付けられるツース部材と、係合凸部のロック用貫通孔内に内装される駒部材と、連通されたロック用貫通孔に挿入されてツース部材をアダプタ部材に固定するロック部材と、を備えたショベル機械用バケットのツース部材固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に、ショベル機械用バケット本体を示す。ショベル機械用バケット本体100の縁部130には複数個のアダプタ部材102がショベル機械用バケット本体100に溶接により固定されている。そして、このアダプタ部材102の先端部には、ツース部材103がそれぞれアダプタ部材102に着脱自在に取付けられている。
【0003】
図7に、従来のショベル機械用バケットのツース部材固定装置を示す。ショベル機械用バケットのツース部材固定装置110は、ロック用貫通孔106bと係合凸部105とを有するアダプタ部材102と、ロック用貫通孔106aと、係合凸部105と連通する係合凹部104とを有してアダプタ部材102に着脱自在に取付けられるツース部材103と、係合凸部105のロック用貫通孔6b内に内装される駒部材107と、連通されたロック用貫通孔6a,6bに挿入されるロック部材108とから構成される。アダプタ部材102の係合凸部105と、ツース部材103の係合凹部104とを連通させ、駒部材107を内装させた後に、ロック部材108を打設して挿入することにより、ツース部材103がアダプタ部材102に固定される。
【0004】
図8に、従来のショベル機械用バケットのツース部材固定装置のうちの駒部材107を示す。駒部材本体131には、3個のローラ132a,132b,132cが埋設されている。これらのローラ132は円柱状に形成され、ローラ132の軸方向に直交する方向に沿った略1/3の部分は、駒部材本体131の上面から外部に露出している。ローラ132の軸芯位置には貫通孔133が設けられ、その内部には駒部材本体131を構成している弾性樹脂材料が入り込んでいる。この貫通孔133内に弾性樹脂材料を入り込ませて固化させ、ローラ132の外周面と弾性樹脂材とが密着して固化することにより、駒部材本体131とローラ132とが一体化する。これにより、ロック部材108が打設する際に、駒部材107は、ローラ132によりロック部材108との摩擦抵抗を低減させ、弾性樹脂材料の復元力によりローラ132の位置を保持する。
【0005】
一方、特許文献1には、ショベル機械用バケットのツース部材固定装置が開示されている。ここでは、駒部材は弾性樹脂材料からなる駒部材本体と上記駒部材本体にその一部を露出した状態で埋設・一体化された単一の板ばね部材とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3149552号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のショベル機械用バケットのツース部材固定装置では、弾性樹脂材からなる駒部材本体とローラとが密着して一体化されていても、ロック部材を打ち込む際に、ローラが駒部材本体から剥がれ落ちる虞があった。これは、ローラが弾性樹脂材に十分に定着されていないため押し込まれるロック部材により傾いてしまい、ローラが駒部材本体から剥がれる方向に応力が作用することによる。
【0008】
このため、従来のショベル機械用バケットのツース部材固定装置では、ロック部材を押し込むのに過大な衝撃力で打ち込まなければならず、弾性樹脂材の劣化を促進し、ツース部材が落下する原因となっていた。
【0009】
本願の目的は、かかる課題を解決し、ロック部材が容易に挿入でき、脱落することを防止するショベル機械用バケットのツース部材固定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係るショベル機械用バケットのツース部材固定装置は、ロック用貫通孔と係合凸部とを有するアダプタ部材と、ロック用貫通孔と、係合凸部と連通する係合凹部とを有してアダプタ部材に着脱自在に取付けられるツース部材と、係合凸部のロック用貫通孔内に内装される駒部材と、連通されたロック用貫通孔に挿入されてツース部材をアダプタ部材に固定するロック部材と、を備えたショベル機械用バケットのツース部材固定装置において、駒部材は、弾性樹脂材料からなる駒部材本体と、駒部材本体に一体的に埋設された単一の板ばね部材とから構成され、板ばね部材は、ロック部材に対向する面に設けられた湾曲部と、湾曲部の両端から駒部材本体の内側に傾斜して定着される定着部とから構成されることを特徴とする。
【0011】
上記構成により、ショベル機械用バケットのツース部材固定装置は、駒部材が、ロック部材との摩擦抵抗を低減する湾曲部と、湾曲部の両端から駒部材本体の弾性樹脂材料に定着される定着部とを有し、この定着部を駒部材本体の内側に傾斜して定着することで弾性樹脂材料と一体となる。この湾曲部と定着部の組合せにより、ロック部材を滑らかに挿入することができる。
【0012】
また、ショベル機械用バケットのツース部材固定装置は、板ばね部材の湾曲部が、曲線状の波型であり、定着部と連続する部分は曲線を描いて移行することが好ましい。これにより、ロック部材との摩擦抵抗を低減すると共に、湾曲部と定着部の連続点における応力集中を避けることができる。
【0013】
また、ショベル機械用バケットのツース部材固定装置は、駒部材本体の板ばね部材の湾曲部と反対側には、複数の筒状の孔が板ばね部材の湾曲部に向かって設けられていることが好ましい。これにより、駒部材本体の弾性樹脂材料が圧縮された場合に弾性樹脂材料の逃げを確保することができる。
【0014】
さらに、ショベル機械用バケットのツース部材固定装置は、ロック部材において板ばね部材の湾曲部に対向する面には、湾曲部の曲線状の波型に適合する波型の突起部が設けられることが好ましい。これにより、ロック部材と板ばね部材の湾曲部とを噛み合わせ、ロック部材の脱落を防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明に係るショベル機械用バケットのツース部材固定装置によれば、ロック部材が容易に挿入でき、脱落することを防止するショベル機械用バケットのツース部材固定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るショベル機械用バケットのツース部材固定装置の1つの実施形態の概略構成を示す断面図である。
【図2】駒部材を拡大して示した断面図である。
【図3】駒部材の全体を拡大して示す斜視図である。
【図4】ロック部材の形状を示す断面図である。
【図5】ロック部材が押し込まれた場合の駒部材の動作を示す説明図である。
【図6】ショベル機械用バケット本体を示す斜視図である。
【図7】従来のショベル機械用バケットのツース部材固定装置を示す斜視図である。
【図8】従来のショベル機械用バケットのツース部材固定装置のうちの駒部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、図面を用いて本発明に係るショベル機械用バケットのツース部材固定装置の実施形態につき、詳細に説明する。図1に、本発明に係るショベル機械用バケットのツース部材固定装置の1つの実施形態の概略構成を示す。ショベル機械用バケットのツース部材固定装置1は、アダプタ部材2とツース部材3とから構成され、ツース部材3はアダプタ部材2に着脱自在に取付けられる。
【0018】
アダプタ部材2は、係合凸部5及びロック用貫通孔6aを有する。一方、ツース部材3は、係合凹部4及びロック用貫通孔6bを有する。アダプタ部材2のロック用貫通孔6aとツース部材3のロック用貫通孔6bとは、アダプタ部材2の係合凸部5をツース部材3の係合凹部4に差し込んだ際に連通するような位置関係にある。駒部材7は、ロック用貫通孔6aに面するツース部材3の係合凹部4に予め配置される。そして、ロック部材8は、連通されたロック用貫通孔6a,6bに挿入され、ツース部材3をアダプタ部材2に固定する。
【0019】
図2に駒部材7の全体を斜視図で示す。また、図3(a)に、図2のA−A断面図を示し、図3(b)に図2のB−B断面を示す。駒部材7は、弾性樹脂材料からなる駒部材本体9と、駒部材本体9に一体的に埋設された単一の板ばね部材10とから構成される。また、板ばね部材10は、ロック部材8に対向する面に設けられた湾曲部11と、湾曲部11の両端から駒部材本体9の内側に傾斜して定着される定着部12とから構成される。すなわち、図3(a)及び図3(b)に示すように、駒部材本体9は、ロック部材8と接触する面に曲線状の波型をした駒部材突出部15を有する。また、駒部材本体9の板ばね部材10の湾曲部11と反対側は、図3(b)に示すように先端部が丸くなっている。そして、本実施形態では、3個の筒状の緩衝孔13が板ばね部材10の湾曲部11に向かって設けられている。
【0020】
図4に、ロック部材8の断面を示す。ロック部材8は、板ばね部材10の湾曲部11に対向する面に波型のロック部材突出部14が設けられる。このロック部材突出部14は、湾曲部11の曲線状の駒部材突出部15に適合する。すなわち、図1に示すように、ロック部材8のロック部材突出部14と、板ばね部材10の湾曲部11の駒部材突出部15とが相互に噛み合うことで、ロック部材8が抜け落ちることが防止できる。また、ロック部材8は、その左右にロック部材8の進入を容易にさせるためのロック部材傾斜部17を有する。さらに、ロック部材8は、ロック部材突出部14と反対側にアーチ状に窪むロック部材湾曲部16を有する。
【0021】
図5に、ロック部材8がロック用貫通孔6a,6b内に押し込まれた場合の駒部材7の動作を示す。図5中にXY座標を示す。ロック部材8は、図5中の矢印の方向へ進入し、ロック部材8のロック部材傾斜部17が板ばね部材10の湾曲部11と接触する。ロック部材8は、押し込まれる力により、駒部材7に対して応力(F)を発生させる。この応力(F)は、X方向成分であるFxと、Y方向成分であるFyに分解できる。
【0022】
ロック部材8の進入により生じる応力成分Fyに対し、駒部材7は、弾性樹脂材料からなる駒部材本体9がY軸の下方へ弾性変形する。このとき、緩衝孔13周りの駒部材本体9の弾性樹脂材料が圧縮されて緩衝孔13の空隙内に逃げる。これにより、駒部材本体9のY方向への弾性変形が促進される。この駒部材本体9のY方向への弾性変形は、駒部材本体9の上面が板ばね部材10の湾曲部11により覆われているため、全体的な弾性変形となり板ばね部材10には部分的な応力集中は発生しない。ロック部材8のロック部材突出部14が通過すると、弾性樹脂材料の復元力により駒部材突出部15はY軸の上方へと戻る。
【0023】
ロック部材8の進入により生じる応力成分Fxに対しては、主として2個の定着部12a,12bにより抵抗される。そして、定着部12a,12bの側面の弾性樹脂材料からなる駒部材本体9が弾性変形する。この定着部12a,12bの側面の駒部材本体9の復元力がロック部材8を進入方向に滑らす力となる。また、定着部12a,12bは相互に板ばね部材10の湾曲部11により連結されているため、板ばね部材10には部分的な応力集中は発生しない。
【0024】
そして、ロック部材8のロック部材傾斜部17が板ばね部材10の湾曲部11と点接触することで摩擦抵抗が減少し、ロック部材8は図中の矢印の方向に容易に進入することができる。ロック部材8は、板ばね部材10との最初の接触点を越えるとその後はロック部材突出部14と駒部材突出部15との波型の曲面が相互に噛み合うことで挿入が完了する。
【0025】
また、駒部材7の板ばね部材10は、曲線状の波型である湾曲部11の形状の特性を生かして定着部12に曲線を描いて連続させることで、湾曲部11と定着部12との接合点に生じる応力集中を低減する。これにより、応力集中により生じる板ばね部材10と弾性樹脂材料との剥離が防止できる。
【0026】
本発明に係る駒部材7の板ばね部材10は、ロック部材8の進入により生じる応力成分Fx及びFyに対して効率的に駒部材本体9に伝達して駒部材本体9に弾性変形を生じさせ、駒部材本体9の復元力によりロック部材8の進入を容易にする。曲線状の波型である湾曲部11の形状の特性を生かして定着部12に曲線を描いて連続させることで、板ばね部材10に生じる応力集中を低減する。そして、ロック部材8の押し込みによる駒部材7の安定性を高めさせロック部材8を容易に挿入することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 ショベル機械用バケットのツース部材固定装置、2,102 アダプタ部材、3,103 ツース部材、4,104 係合凹部、5,105 係合凸部、6a,6b,106a,106b ロック用貫通孔、7,107 駒部材、8,108 ロック部材、9,131 駒部材本体、10 板ばね部材、11 湾曲部、12 定着部、13 緩衝孔、14 ロック部材突出部、15 駒部材突出部、16 ロック部材湾曲部、17 ロック部材傾斜部、100 ショベル機械用バケット本体、130 縁部、132 ローラ、133 貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロック用貫通孔と係合凸部とを有するアダプタ部材と、ロック用貫通孔と、係合凸部と連通する係合凹部とを有してアダプタ部材に着脱自在に取付けられるツース部材と、係合凸部のロック用貫通孔内に内装される駒部材と、連通されたロック用貫通孔に挿入されてツース部材をアダプタ部材に固定するロック部材と、を備えたショベル機械用バケットのツース部材固定装置において、
駒部材は、弾性樹脂材料からなる駒部材本体と、駒部材本体に一体的に埋設された単一の板ばね部材とから構成され、板ばね部材は、ロック部材に対向する面に設けられた湾曲部と、湾曲部の両端から駒部材本体の内側に傾斜して定着される定着部とから構成されることを特徴とするショベル機械用バケットのツース部材固定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のショベル機械用バケットのツース部材固定装置であって、板ばね部材の湾曲部は、曲線状の波型であり、定着部と連続する部分は曲線を描いて移行することを特徴とするショベル機械用バケットのツース部材固定装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のショベル機械用バケットのツース部材固定装置であって、駒部材本体の板ばね部材の湾曲部と反対側には、複数の筒状の孔が板ばね部材の湾曲部に向かって設けられていることを特徴とするショベル機械用バケットのツース部材固定装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のショベル機械用バケットのツース部材固定装置であって、ロック部材において板ばね部材の湾曲部に対向する面には、湾曲部の曲線状の波型に適合する波型の突起部が設けられることを特徴とするショベル機械用バケットのツース部材固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−42976(P2011−42976A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191693(P2009−191693)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(592152392)株式会社ヒートパーツ (2)
【Fターム(参考)】