説明

ショベル系作業機用バケット

【課題】駆動装置を要せず、もってバケット装置の幅や重量が増大することなく、廉価に製造でき、長期使用が可能となるショベル系作業機用バケットを提供する。
【解決手段】バケットの背面の中央側に間隔を持たせて固着された2枚の標準ブラケット23、24と、標準ブラケット23、24に対してそれぞれ間隔を持たせてバケット背面におけるバケット側面側に固着された2枚の補助ブラケット25、26とを備える。多関節アーム6およびバケットリンク16は、2枚の標準ブラケット23、24間と、一方の標準ブラケット23と一方の補助ブラケット25間と、他方の標準ブラケット24と他方の補助ブラケット26間にそれぞれ挟持されてピン12、19により連結する。これによりアーム11に対するバケット7の左右の取付け位置を変更可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショベル系作業機の多関節アームの先端に回動可能にピン付けされると共に、回動用バケットリンクがピン付けされて取付けられるバケット、すなわち片面が開口され、先端に掘削爪を有するバケットに係り、より詳しくは多関節アームに対する左右の取付け位置を変更可能としたバケットに関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルは走行体上に旋回装置を介して旋回体を設置し、旋回体上にブーム、アームからなる多関節アームを取付け、多関節アームの先端にバケットをバケット回動用油圧シリンダによりアームリンクおよびバケットリンクを介して回動可能に取付けてなる。このような油圧ショベルにより道路や建物の基礎部分等を掘削する場合、例えば地下埋設管等の障害物があると、その真下の部分の掘削ができない。
【0003】
このような不具合を解消するため、特許文献1においては、多関節アームの先端に前記バケット回動用油圧シリンダおよび前記アームリンク、バケットリンクを介して回動可能にガイド枠を取付け、このガイド枠に、油圧シリンダやモータにより左右に移動可能にバケットを取付けたものが提案されている。
【0004】
この特許文献1に記載のようにシリンダ等により多関節アームに対してバケットを左右に偏位可能に取付ければ、埋設物等の障害物が存在する場合、多関節アームに対してバケットを障害物寄りに偏位させることにより、障害物の真下の部分の掘削を行なうことができる。
【0005】
【特許文献1】特開2000−96600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載のバケットの取付け構造によれば、バケットを左右に偏位させることができるから、障害物の真下の部分の掘削は可能となるものの、ガイド枠に対してバケットが左右に偏位するため、偏位した状態では、バケットの幅は、ガイド枠に偏位量を加えた大きなものとなり、狭い掘削現場では操作が困難になるという問題点がある。
【0007】
また、前記偏位構造を実現するためには、バケットを左右に偏位可能に支持し掘削反力に耐えるための剛性の高いガイド枠と、このガイド枠に対してバケットを左右に摺動可能に嵌合するためにバケットの背面に設ける摺動枠と、バケットをガイド枠に沿って摺動させるためのシリンダやモータ等の駆動装置とを必要とするので、この偏位のための装置の規模、重量が大となる上、偏位装置を含めたバケットの価格が高価となるという問題点がある。
【0008】
また、偏位装置を含めたバケットの重量が大となるので、バケットの容量を削減せざるを得なくなるという問題点がある。
【0009】
また、バケットは泥等の混ざった現場で掘削作業を行なうため、摺動部分に土砂が噛み込む上、油圧シリンダ等の駆動装置が、掘削される地盤の中に埋没することもあるため、油圧シリンダ等への土砂の噛み込みによる損傷が生じやすい。これらの理由により、円滑な偏位動作が難しくなると共に、ガイド枠と摺動部分や油圧シリンダ等の駆動装置の寿命が短命になるという問題点がある。また、油圧シリンダ等に供給する作動油のための油圧ホースがバケットに近接させて設けられるため、障害物等により損傷しやすくなるという問題点がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、障害物の真下の部分の掘削が行なえるバケットであって、駆動装置を要せず、もってバケット装置の幅や重量が増大することなく、廉価に製造でき、長期使用が可能となるショベル系作業機用バケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1のショベル系作業機用バケットは、ショベル系作業機の多関節アームの先端に回動可能にピン付けされると共に、前記多関節アームに取付けたバケット回動用油圧シリンダに一端が連結されるバケットリンクの他端がピン付けされて取付けられるショベル系作業機用バケットにおいて、
前記バケットの背面の中央側に間隔を持たせて固着された2枚の標準ブラケットと、
前記標準ブラケットに対してそれぞれ間隔を持たせて前記バケット背面におけるバケット両側面側に固着された2枚の補助ブラケットと、
前記標準ブラケットおよび前記補助ブラケットにそれぞれ設ける多関節アームピン付け用のボスのピン孔を同一軸線上に配置すると共に、前記標準ブラケットおよび前記補助ブラケットにそれぞれ設ける前記バケットリンクピン付け用のボスのピン孔を同一軸線上に配置し、
前記多関節アームおよび前記バケットリンクをバケットに連結するピンは、少なくとも一方の補助ブラケットのピン孔から前記2枚の標準ブラケットのピン孔に挿着しうる長さ以上の長さを有し、
前記多関節アームおよび前記バケットリンクは、前記2枚の標準ブラケット間と、一方の標準ブラケットと一方の補助ブラケット間と、他方の標準ブラケットと他方の補助ブラケット間にそれぞれ挟持されて前記ピンにより連結されることにより、多関節アームおよびバケットリンクに対するバケットの左右の取付け位置を変更可能にした
ことを特徴とする。
【0012】
請求項2のショベル系作業機用バケットは、請求項1に記載のバケットにおいて、
前記補助ブラケットに設けるボスは前記標準ブラケット側にのみ突出する構造を有する
ことを特徴とする。
【0013】
請求項3のショベル系作業機用バケットは、請求項1または2に記載のバケットにおいて、
前記標準ブラケットに設けるボスは対向する標準ブラケットへの突出幅より対向する補助ブラケットへの突出幅を大とした
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、標準ブラケットと補助ブラケットとの間に多関節アームとバケットリンクとを挟持してピン付けすることにより、多関節アームに対してバケットを左右に偏位させることができるから、偏位した側のバケット部分を障害物の下に潜らせて掘削することにより、障害物の真下の部分の掘削が可能となる。
【0015】
本発明によれば、偏位した状態でもバケットの幅は変化せず、狭い掘削現場での操作が困難になるということもない。また、本発明においては、偏位のために補助ブラケットを付設するだけですむため、装置の規模、重量がそれほど大きくならず、偏位装置を含めたバケットの価格も廉価ですむ。
【0016】
また、偏位装置を含めたバケットの重量がそれほど大となることもないため、バケットの容量を削減する必要もなく、能率のよい掘削が可能となる。
【0017】
また、油圧装置をバケットに付設する必要がないため、土砂による摺動部分の損傷や障害物等による油圧ホースの損傷等の問題もなく、偏位装置を含めたバケットの寿命が延命化される。
【0018】
請求項2の発明によれば、バケットの側面側の補助ブラケットに設けるボスを標準ブラケット側、すなわち内側にのみ突出させて設けたので、バケットの側面から突出させるピン等の突出幅が小さくなり、狭い現場での作業が容易となると共に、偏位量を大きくすることができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、バケットの左右の偏位量を大きくとることができ、障害物の真下の作業がよりしやすくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明のバケットを適用する油圧ショベルの一実施の形態を作業状態で示す側面図、図2はその平面図である。この油圧ショベルは、走行体1上に旋回装置2を介して旋回体3を設置し、その旋回体3上に運転室4、油圧パワーユニット5等を搭載すると共に、多関節アーム6の先端にバケット7を取付けて構成される。多関節アーム6は、ブームシリンダ8により旋回体3に起伏可能に取付けたブーム9と、ブーム9の先端にアームシリンダ10により回動可能に取付けたアーム11とからなる。
【0021】
バケット7はピン12によりアーム11の先端に回動可能に取付けられる。13はアーム11の上面に一端をピン14により取付けたバケット回動用油圧シリンダ(以下バケットシリンダ)、15、16はそれぞれアームリンク、バケットリンクであり、アームリンク15はその一端をアーム11にピン17により回動可能に取付け、他端をバケットシリンダ13の先端にバケットリンク16の一端と共にピン18により連結し、バケットリンク16の他端をバケット7にピン19により連結してバケット7を取付けている。
【0022】
20は地面21等より掘削される凹部であり、22は地下に埋設された埋設管等の障害物である。この障害物22を避けて障害物22の真下の部分を掘削するため、バケット7はアーム11に対して右側に偏位させて取付けた例を示す。
【0023】
図3は前記バケット7の背面図、図4はその側面図である。23、24はバケットの背面の中央側に間隔を持たせて固着された標準ブラケット、25、26はそれぞれ標準ブラケット23、24に対してそれぞれ間隔を持たせてバケット7の背面におけるバケット側面側に固着された補助ブラケットである。各標準ブラケット23、24、補助ブラケット25、26にはそれぞれバケットピン付け用のボス27〜30が設けられる。また、各標準ブラケット23、24、補助ブラケット25、26にはそれぞれバケットリンクピン付け用のボス31〜34が設けられる。
【0024】
また、バケットピン付け用のボス27〜30のピン孔27a〜30aは同心(軸線をS1で示す。)上にある。また、バケットリンクピン付け用のボス31〜34のピン孔31a〜34aは同心(軸線をS2で示す。)上にある。また、ボス27〜30の対向するものの間隔aは等しく、ボス31〜34の対向するものの間隔bも等しく形成される。なお本励では前記間隔a=bである。
【0025】
図5はバケット7を偏位させない標準の取付け構造を示している。すなわち、標準ブラケット23、24間にアーム11の端部およびバケットリンク16の端部のボス16aを嵌め、それぞれピン12、19により連結する。この例では、ピン12、19はそれぞれ一方の補助ブラケット25のボス29、33の各ピン孔29a、33aと、標準ブラケット23のボス27、31の各ピン孔27a、31aと、アーム11、バケットリンク16のボス16aの各ピン孔と、標準ブラケット24のボス28、32の各にピン孔28a、32aと、補助ブラケット26のボス30、34の各ピン孔30a、34aとに挿着している。そしてピン12、19の各頭部12a、19aおよび補助ブラケット25の外面に固着した受部39、40にそれぞれ設けたピン孔に抜け止めピン36、37を挿着することにより、ピン12、19を抜け止めして取付けている。
【0026】
図6は図2に示したようにアーム11に対してバケット7を右側に偏位して取付けた状態を示す。この場合は標準ブラケット23と補助ブラケット25との間にアーム11の端部およびバケットリンク16の端部のボス16aを嵌め、それぞれピン12、19により連結する。この場合も前記と同様に、ピン12、19は一方の補助ブラケット25のボス29、33の各ピン孔29a、33aと、アーム11、ボス16aの各ピン孔と、標準ブラケット23のボス27、31の各ピン孔27a、31aと、標準ブラケット24のボス28、32の各ピン孔と、補助ブラケット26のボス30、34の各ピン孔30a、34aとに挿着している。そして図5の場合と同様に、頭部12a、19aおよび補助ブラケット25の外面に固着した受部39、40の各ピン孔に抜け止めピン36、37を挿着することにより、ピン12、19を抜け止めして取付けしている。
【0027】
図2、図6の場合と反対に、バケット7をアーム11の左側に偏位させて取付ける場合は、アーム11とバケットリンク16のボス16aをそれぞれボス28とボス30との間、ボス32とボス34との間に嵌め、前記と同様にピン12、19を挿着する。
【0028】
標準ブラケット23(または24)と補助ブラケット25(または26)との間にアーム11とバケットリンク16のボス16aとを挟持してピン12、19により連結することにより、アーム11に対してバケット7を左右に偏位させることができるから、障害物22の真下の部分の掘削が可能となる。
【0029】
また、本実施の形態の偏位構造においては、バケット7は偏位した状態でもバケットの幅は変化せず、狭い掘削現場での操作が困難になるということもない。また、この偏位構造は、偏位のために補助ブラケット25、26を付設するだけですむため、装置の規模、重量がそれほど大きくならず、偏位装置を含めたバケット7の価格も廉価ですむ。
【0030】
また、補助ブラケット25、26を含めたバケット7の重量がそれほど大となることもないため、バケット7の容量を削減する必要もなく、能率のよい掘削が可能となる。
【0031】
また、前記した特許文献に記載の摺動式偏位装置のように、油圧装置をバケットに付設する必要がないため、土砂による摺動部分の損傷や障害物等による油圧ホースの損傷等の問題もなく、偏位装置を含めたバケットの寿命が延命化される。
【0032】
また、本実施の形態においては、バケット7の側面側の補助ブラケット25,26に設けるボス29、33および30、34を標準ブラケット23、24側、すなわち内側にのみ突出させて設けたので、バケット7の側面から突出させるピン12、19等の突出幅が小さくなり、狭い現場での作業が容易となる。また、補助ブラケット25、26をバケット7の側面側に寄せて設けることができるため、バケット7の偏位量を大きくすることができる。
【0033】
図7は本発明の他の実施の形態を示すバケットの背面図である。この実施の形態においては、標準ブラケット23、24に設けるボス27、31およびボス28、32は対向する標準ブラケット24、23への突出幅c、eより対向する補助ブラケット25、26への突出幅d、fを大(d>c、f>e)としたものである。ピン12、19をそれぞれ挿着するボス間の間隔はa、bで示すようにそれぞれ等しい。この例でもa=bである。
【0034】
このように構成すれば、アーム11に対するバケット7の左右の偏位量を大きくすることができ、障害物22の幅が広い場合にも対応しやすくなる。
【0035】
本発明を実施する場合、アーム11およびバケットリンク16をバケット7に連結するピン12、19は、少なくとも一方の補助ブラケット25または26のピン孔から2枚の標準ブラケット23、24のピン孔に挿着しうる長さ以上の長さであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明のバケットを適用する油圧ショベルの一実施の形態を作業状態で示す側面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本実施の形態のバケットの背面図である。
【図4】本実施の形態のバケットの側面図である。
【図5】本実施の形態のバケットの標準の取付け状態を示す背面図である。
【図6】本実施の形態のバケットの偏位した取付け状態を示す背面図である。
【図7】本発明のバケットの他の実施の形態を示す背面図である。
【符号の説明】
【0037】
1:走行体、2:旋回装置、3:旋回体、4:運転室、5:油圧パワーユニット、6:多関節アーム、7:バケット、8:ブームシリンダ、9:ブーム、10:アームシリンダ、11:アーム、12:ピン、13:バケット回動用油圧シリンダ、15:アームリンク、16:バケットリンク、17、19:ピン、20;掘削された凹部、22:障害物、23、24:標準ブラケット、25、26:補助ブラケット、27〜34:ボス、27a〜34a:ピン孔、36、37:抜け止めピン、39、40:受部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショベル系作業機の多関節アームの先端に回動可能にピン付けされると共に、前記多関節アームに取付けたバケット回動用油圧シリンダに一端が連結されるバケットリンクの他端がピン付けされて取付けられるショベル系作業機用バケットにおいて、
前記バケットの背面の中央側に間隔を持たせて固着された2枚の標準ブラケットと、
前記標準ブラケットに対してそれぞれ間隔を持たせて前記バケット背面におけるバケット両側面側に固着された2枚の補助ブラケットとを備え、
前記標準ブラケットおよび前記補助ブラケットにそれぞれ設ける多関節アームピン付け用のボスのピン孔を同一軸線上に配置すると共に、前記標準ブラケットおよび前記補助ブラケットにそれぞれ設ける前記バケットリンクピン付け用のボスのピン孔を同一軸線上に配置し、
前記多関節アームおよび前記バケットリンクをバケットに連結するピンは、少なくとも一方の補助ブラケットのピン孔から前記2枚の標準ブラケットのピン孔に挿着しうる長さ以上の長さを有し、
前記多関節アームおよび前記バケットリンクは、前記2枚の標準ブラケット間と、一方の標準ブラケットとこれに対面する一方の補助ブラケット間と、他方の標準ブラケットと他方の補助ブラケット間にそれぞれ挟持されて前記ピンにより連結されることにより、多関節アームおよびバケットリンクに対するバケットの左右の取付け位置を変更可能にした
ことを特徴とするショベル系作業機用バケット。
【請求項2】
請求項1に記載のショベル系作業機用バケットにおいて、
前記補助ブラケットに設けるボスは前記標準ブラケット側にのみ突出する構造を有する
ことを特徴とするショベル系作業機用バケット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のショベル系作業機用バケットにおいて、
前記標準ブラケットに設けるボスは対向する標準ブラケットへの突出幅より対向する補助ブラケットへの突出幅を大とした
ことを特徴とするショベル系作業機用バケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−69578(P2008−69578A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250145(P2006−250145)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【出願人】(502285550)吉田工務店株式会社 (1)
【Fターム(参考)】