説明

シランにより変性したエラストマー組成物

本発明は、不飽和シランを用いた反応によるエラストマーの変性と、生成した変性エラストマーと、変性エラストマー組成物を成形および硬化することによって生産した物品とに関する。また本発明は、充填エラストマー組成物におけるカップリング剤としての不飽和シランの使用にも関する。本発明の方法において、前記シランは式:
R”-CH=CH-C(O)X-Y-SiRR’(3−a) (I)または
R”-C≡C-C(O)X-Y-SiRR’(3−a) (II)
(式中、Rは加水分解性基を表し;R’は1〜6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し;aは1〜3を含めた範囲内の値を有し;Yは結合-C(O)X-とSi原子とを隔てている少なくとも1つの炭素原子を含む二価の有機スペーサー結合を表し、XはSまたはOから選択され、;かつR”は水素、または-CH=CH-または-C≡C-結合に関して電子求引性効果を有する基を表す)。本発明は、フリーラジカル開始剤の存在下でジエンエラストマーと効率的に反応することができるシランを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不飽和シランを用いた反応によるエラストマーの変性、生成した変性エラストマー、ならびに変性エラストマー組成物を成形および硬化することによって生産した物品に関する。本発明はまた、充填エラストマー組成物におけるカップリング剤としての不飽和シランの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第01/49781号および米国特許出願公開第2004/0249048号明細書は、ジエンエラストマー、補強性白色充填剤、カップリング剤および熱誘発性ラジカル開始剤を含むタイヤの製造に有用な硫黄加硫性ゴム組成物を記載している。該カップリング剤は、少なくとも1つの活性化二重結合を有するアルコキシシラン、具体的にはトリメトキシシリルプロピルメタクリレートである。
【0003】
国際公開第01/49782号および米国特許出願公開第2003/0065104号明細書は、ジエンエラストマー、補強剤およびカップリング剤を含むゴム組成物を記載している。該カップリング剤は、γ位にカルボニル基を有するα,β-不飽和カルボン酸のエステル官能基を含む。具体的には、アクリルアミド官能性シラン、例えばフマルアミド酸エステルおよびマレアミド酸エステルが記載されている。
【0004】
欧州特許出願公開第2309705号明細書は、ポリイソプレンゴムまたは他のジエン系ゴムへ有機ペルオキシドおよびヒドロキシルTEMPO(すなわち、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカル)を反応させ、該ポリイソプレンゴム上へ該ヒドロキシルTEMPOをグラフトし、次いでそれに対して、例えばトリメトキシシリル基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることを記載している。
【0005】
欧州特許出願公開第1818186号明細書は、極性基含有モノマーを用いて液状の天然ゴムラテックスをグラフト重合することならびに得られた生成物を凝固および乾燥させることを記載している。
【0006】
米国特許第5661200号明細書は、非ジエン系αオレフィンポリマー、グラフト化化合物、フリーラジカル発生剤、ガラスおよび少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む組成物を記載している。
【0007】
国際公開第01/49783号および米国特許出願公開第2003/0144403号明細書は、ジエンエラストマーおよび白色補強性充填剤を含む組成物におけるカップリングシステムとしての、活性化エチレン性二重結合を含む官能化オルガノシランのラジカル開始剤と一緒の使用を記載している。具体的には、アクリルアミド官能性シラン、例えばフマルアミド酸エステルおよびマレアミド酸エステルが記載されている。
【0008】
特開2008-184545号公報は、ケイ酸を含む充填剤、シランカップリング剤およびビスマレイミド化合物を含むゴム組成物を記載している。
【0009】
国際公開第02/22728号および米国特許第7238740号明細書は、イソプレンエラストマー、補強性無機充填剤およびカップリング剤としてのシトラコンイミド-アルコキシシランをベースとするエラストマー組成物を記載している。
国際公開第01/49781号に記載されている方法は、ラジカル開始剤の存在を必要とする。特開2008-184545号公報および国際公開第02/22728号に記載されている特定のシランは、おそらくはコストおよび/または安定性の問題から市販されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第01/49781号
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0249048号明細書
【特許文献3】国際公開第01/49782号
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0065104号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第2309705号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第1818186号明細書
【特許文献7】米国特許第5661200号明細書
【特許文献8】国際公開第01/49783号
【特許文献9】米国特許出願公開第2003/0144403号明細書
【特許文献10】特開2008-184545号公報
【特許文献11】国際公開第02/22728号
【特許文献12】米国特許第7238740号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
合理的なコストの活性化シランを用い且つ適切な熱安定性でジエンエラストマーを変性する方法を提供することが望ましい。
【0012】
また、フリーラジカル開始剤の存在下でジエンエラストマーとより効率的に反応することができるシランを提供することも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ケイ素に結合した少なくとも1つの加水分解性基を有するオレフィン性不飽和シランとの反応によってジエンエラストマーを変性する本発明の方法において、前記シランは式:
R”-CH=CH-C(O)X-Y-SiRR’(3−a)(I)または
R”-C≡C-C(O)X-Y-SiRR’(3−a)(II)
(式中、Rは加水分解性基を表し;R’は1〜6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し;aは1〜3を含めた範囲内の値を有し;Yは結合-C(O)X-とSi原子とを隔てている少なくとも1つの炭素原子を含む二価の有機スペーサー結合を表し、XはSまたはOから選択され;および、R”は水素、または-CH=CH-もしくは-C≡C-結合に関して電子求引性効果を有する基を表す)を有する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
電子求引性部分は、反応中心から電子を引き離す化学基である。電子求引性部分R”は一般的には、Michael B. Smith and Jerry March; March’s Advanced Organic Chemistry, 5th edition, John Wiley & Sons, New York 2001,15-58 章(1062ページ)でジエノフィルについて列挙されている基のいずれかとすることができる。部分R”は、特にC(=O)R部分、C(=O)OR部分、OC(=O)R部分、C(=O)Ar部分(式中、Arはアリールを表し、Rは炭化水素部分を表す)とすることができる。またR”はC(=O)-NH-R部分とすることもできる。R”は電子供与性基、例えばアルコール基、アミノ基、または-CH=CH-もしくは-C≡C-結合に対してさらに立体障害を生成するメチルなどの末端アルキル基とすることはできない。
【0015】
任意選択的に、Yは例えば硫黄(S)、酸素(O)または窒素(N)などのヘテロ原子をさらに含むことができる。一態様において、Xは好ましくはOである。
【0016】
本発明の変性ジエンエラストマーは、グラフト化反応の間にエラストマーおよびシランと混合する充填剤と、後に変性ジエンエラストマーが適用される基材との両方に対して、改善した接着性を提供することができる。充填剤に対する改善した接着性は、コンパウンディングの間に充填剤に良好な分散をもたらす。変性ジエンエラストマーが適用される基材としては、変性ジエンエラストマーから作られる最終物品、例えばタイヤの構造に組み込まれる金属のコードおよび織物ならびに有機ポリマーのコードおよび織物が挙げられる。該基材に対する改善した接着性は、改善した機械的および摩耗特性を有する最終物品をもたらす。
【0017】
ジエンエラストマーというのは、室温、混合温度または使用温度にて弾性特性を有し、ジエンモノマーから重合できるポリマーを意味する。典型的には、ジエンエラストマーは、C=C結合に隣接するアルファ炭素上に水素原子を有する少なくとも1つのエン(炭素-炭素二重結合、C=C)を含むポリマーである。ジエンエラストマーは天然ゴムなどの天然ポリマーとすることができ、または少なくとも一部分においてジエン由来の合成ポリマーとすることができる。
【0018】
本発明の変性ジエンエラストマーを
式R”-CH(P)-CH-C(O)X-Y-SiRR’(3−a)および/または
式R”-CH-CH(P)-C(O)X-Y-SiRR’(3−a)および/または
式R”-C(P)=CH-C(O)X-Y-SiRR’(3−a)および/または
式R”-CH=C(P)-C(O)X-Y-SiRR’(3−a)
(式中、Pはジエンエラストマーポリマー残基を表し、Y、X、R、R’、R”およびaは上で定義する)の基でグラフトする。
【0019】
本発明はまた、補強性充填剤を含むジエンエラストマー組成物用のカップリング剤としての式:
R”-CH=CH-C(O)X-Y-SiRR’(3−a) (I)または
R”-C≡C-C(O)X-Y-SiRR’(3−a) (II)
(式中、R、R’、a、Y、XおよびR”は上で定義する)を有するシランの使用も含む。
【0020】
ジエンエラストマー組成物は、充填剤、具体的にはシリカまたはカーボンブラックなどの補強性充填剤を一般的に含む成形ゴム物品へと硬化する。ゴム組成物は、適切なミキサー中で生産し、通常は2つの連続的な調製段階:110〜190℃の最高温度(Tmax)以下の高温での熱機械的な混合または混練の第一段階(時に“非生産”段階と呼ばれる)、それに続く典型的には110℃未満の温度での機械的混合であってその間に加硫剤が組み込まれる第二段階(時に“生産”段階と呼ばれる)、を用いて生産する。熱機械的混練段階の間に、充填剤およびゴムを1以上の工程で一緒に混合する。
【0021】
省エネルギーの‘環境にやさしい’タイヤ、具体的には大型車両用のイソプレンポリマータイヤなどの幾つかの用途では、国際公開第2006125534号、国際公開第2006125533号および国際公開第2006125532号の特許に開示されているようなシリカとカップリング剤との組み合わせを使用してカーボンブラック充填剤を置き換えることが有用である。ゴム組成物を生産する場合、硬度特性、引張弾性率特性および粘弾性特性などの物理的特性が良好である硬化ゴム生産物を生産すると同時に、ゴム組成物は簡単に加工可能であって低い混合エネルギーを必要とすることが望ましい。ヒドロキシル基を含むシリカなどの充填剤を有機エラストマー組成物中へ混合することは困難なことがある。種々のカップリング剤が用いられて、ヒドロキシル含有充填剤のゴム組成物中への分散を改善している。
【0022】
本発明の不飽和シランが熱機械的混練段階に存在する場合、本発明の不飽和シランは、ジエンエラストマーと反応して変性ジエンエラストマーを形成することができ、ジエンエラストマーへ充填剤を結合するカップリング剤として作用することもできる。本発明の不飽和シランは、ジエンエラストマーと反応してグラフトジエンを形成する。生成したグラフトジエンエラストマーは、基材、例えばタイヤのようなゴム物品において補強材として用いられる補強コードおよび補強繊維に対して改善した接着性を有する。
【0023】
下記式:
R”-CH=CH-C(O)X-Y-SiRR’(3−a) (I)または
R”-C≡C-C(O)X-Y-SiRR’(3−a) (II)
の不飽和シランの-SiRR’(3−a)基中の各加水分解性基Rは、同一または異なっていてもよく、好ましくはアルコキシ基であるが、アシルオキシ基などの他の加水分解性基、例えばアセトキシ基、ケトオキシム基、アミノ基、アミド基、アミノキシ基またはアルケニルオキシ基も用いることができる。Rがアルコキシ基を含む場合、各Rはまた一般的に1〜6個の炭素原子の直線状もしくは分枝状のアルキル鎖、またはエチレングリコールポリマー鎖を含む。しかしながら、もっとも好ましくは、各Rがメトキシ基またはエトキシ基である。シラン(I)または(II)中のaの値は、例えば3とすることができ、例えばシランがトリメトキシシランまたはトリエトキシシランであって、アルコキシシラン由来の反応部位を用いて硬化が行われる場合、最大数の架橋部位を与えることができる。しかしながら、各アルコキシ基は加水分解されるときに揮発性有機アルコールを生成し、シラン(I)または(II)中のaの値は、2であるかまたは1ですらあって加工、架橋もしくは加硫の間または硬化もしくは粗製ゴムコンパウンドの寿命の間に放出される揮発性有機物質を最小限にすることが好まれる場合がある。R’基は、存在するならば、好ましくはメチル基、エチル基またはフェニル基である。Si原子上の別の置換基は、次の特許文献、国際公開第2004/078813号、国際公開第2005/007066号、米国特許出願公開第20090036701号明細書、独国特許出願公開第10223073号明細書および欧州特許出願公開第1683801号明細書または米国特許出願公開第20060161015号明細書に基づくことができる。
【0024】
不飽和シランは、部分的に加水分解してシロキサン結合を含むオリゴマーへ縮合することができる。大部分の最終用途について、該オリゴマーは、不飽和シランモノマー単位あたりSiに結合した少なくとも1つの加水分解性基を依然として含み、表面ヒドロキシル基を有する充填剤で不飽和シランのカップリングを増強するのが好ましい。
【0025】
下記式:
R”-CH=CH-C(O)X-Y-SiRR’(3−a) (I)または
R”-C≡C-C(O)X-Y-SiRR’(3−a) (II)
の不飽和シランにおいて、スペーサー結合Yは一般には少なくとも1つの炭素原子を含む二価の有機基、例えば、メチレン、エチレンもしくはプロピレンなどのアルキレン基またはアリーレン基とすることができる。しかしながら、上述したように、YはまたS、OおよびNなどのヘテロ原子を含んでもよい。R”基が水素を表しYがアルキレン結合である場合、不飽和シラン(I)中の部分R”-CH=CH-C(O)X-Y-はアクリルオキシアルキル基である。我々はアクリルオキシアルキルシランが他の不飽和シラン、例えばメタクリルオキシアルキルシランよりもさらに容易にジエンエラストマーに対しグラフトすることを見出した。
【0026】
好ましいアクリルオキシアルキルシランの例は、γ-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ-アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、α-アクリルオキシメチルトリメトキシシラン、α-アクリルオキシメチルメチルジメトキシシラン、α-アクリルオキシメチルジメチルメトキシシラン、α-アクリルオキシメチルトリエトキシシラン、α-アクリルオキシメチルメチルジエトキシシラン、α-アクリルオキシメチルジメチルエトキシシランである。γ-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランは、米国特許第3179612号明細書に記載された方法によってアリルアクリレートおよびトリメトキシシランから調製することができる。同様に、γ-アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシランおよびγ-アクリルオキシプロピルジメチルメトキシシランは、アリルアクリレートおよびそれぞれトリエトキシシラン、メチルジメトキシシランまたはジメチルメトキシシランから調製することができる。アクリルオキシメチルトリメトキシシランまたはアクリルオキシメチルトリエトキシシランは、米国特許第3179612号明細書に記載された方法によってアクリル酸およびクロロメチルトリメトキシシランまたはクロロメチルトリエトキシシランから調製することができる。
【0027】
他の構造体は、国際公開第19980280307号に沿ってサートマー(Sartomer)によって生成されジ、トリ、テトラ、ペンタおよびヘキサ官能性モノマーとして記載されているような、(1)少なくとも1つの一級もしくは二級アミンを含む官能性シラン、またはメルカプト官能性シラン、例えばメルカプトプロピルトリエトキシシランと(2)少なくとも2つのアクリレート官能基を含む有機部分との反応生成物をベースとする。一組の例として、欧州特許第450624号明細書、米国特許第5532398号明細書および欧州特許第451709号明細書に記載されるようにメルカプトプロピルアルコキシシランまたはメチルアミノプロピルアルコキシシランまたはフェニルアミノプロピルアルコキシシランと共にペンタエリスリトール-テトラアクリレートを用いて、以下の構造体を調製することができる。
【化1】

【0028】
上記式(PA1〜PA4)中、Aは、SまたはNR(式中RはH、アリール基、アルキル基であってもよく、あるいはRが他のアルキルシランであってもよい)から選択する。AとSiとの間のスペーサーは、メチルからウンデシルまで変化することができる。PA1〜PA4の各々は、実質的に純粋な形態で、すなわち、おおよそ100%のPA1、PA2、PA3もしくはPA4の形態で提供することができ、または主成分としてPA1、PA2、PA3もしくはPA4の少なくとも1つおよび副産物としての他のものを含む混合物で提供することができる。
【0029】
PA構造体を含むゴムコンパウンドの加工および寿命の間のアルコール放出を減少させるため、トリアルコキシシランの代わりにモノまたはジアルコキシシランを用いることができる。
加工および寿命の間の有毒メタノール放出を減少させるため、メトキシシランよりもエトキシシランが好まれる。
【0030】
上述するように、不飽和シラン(I)または(II)中の基R”は、水素、または-CH=CH-もしくは-C≡C-結合に関して電子求引性効果を有する基とすることができる。本発明に適切なそのような電子求引性基の1つは、式-C(O)X-Y-SiRR’(3−a)のものである。あるいは電子求引性基R”を-C(O)OHまたは-C(O)XR(Rはアルキル基である)の形態のものとすることができる。
【0031】
電子求引性基が-C(O)X-Y-SiRaR’(3−a) である場合、従って結果として得られる不飽和シラン(シラン(III))は、以下の形態:
RaR’(3−a)Si-Y-X(O)C-CH=CH-C(O)X-Y-SiRaR’(3−a)、または
RaR’(3−a)Si-Y-X(O)C-C≡C-C(O)X-Y-SiRaR’(3−a)
とすることができる。
【0032】
従って、この例では、不飽和シラン(III)は、ビス(トリアルコキシシリルアルキル)フマレート(トランス異性体)および/またはビス(トリアルコキシシリルアルキル)マレエート(シス異性体)を含むことができる。その例はビス-(γ-トリメトキシシリルプロピル)フマレートおよびビス-(γ-トリメトキシシリルプロピル)マレエートである。それらの調製は米国特許第3179612号明細書に記載されている。
【0033】
電子求引性基R”が-C(O)OHまたは-C(O)XR(Rはアルキル基である)の形態である場合、不飽和シランは、モノ(トリアルコキシシリルアルキル)フマレートおよび/またはモノ(トリアルコキシシリルアルキル)マレエートとすることができ、またはアルキルモノフマレートおよび/もしくはアルキルモノマレエートのトリアルコキシシリルアルキルエステルとすることができる。
【0034】
また不飽和シランはRR’(3−a)Si-Y-X(O)C-C≡C-C(O)X-Y-SiRR’(3−a)の形態のものとすることもでき、その例はビス-(γ-トリメトキシシリルプロピル)-2-ブチネジオエートである。あるいは下記式のビス-シラン:
RaR’(3−a)Si-Y-X(O)C-CH=CH-C(O)X-Y-SiRaR’(3−a)、または
RaR’(3−a)Si-Y-X(O)C-C≡C-C(O)X-Y-SiRaR’(3−a)が、例えば分子の各側で異なっているY、Rおよび/またはR’を有する非対称であってもよい。
【0035】
一般に、不飽和酸のシリルアルキルエステルである不飽和シランの全ては、不飽和酸、例えばアクリル酸、マレイン酸、フマル酸、プロピン酸またはブチン二酸から、対応するカルボキシレートと対応するクロロアルキルアルコキシシランとの反応によって調製することができる。第一の工程において、カルボン酸のアルカリ塩は、例えば米国特許第4946977号明細書に記載されるようなアルコール中でのカルボン酸とアルカリアルコキシドとの反応と、または例えば国際公開第2005/103061号に記載されるようなカルボン酸と塩基性水溶液との反応および共沸蒸留による水の連続的な除去とのどちらかによって形成する。カルボン酸のトリアルキルアンモニウム塩は、米国特許第3258477号明細書または米国特許第3179612号明細書に記載されるように遊離カルボン酸とトリアルキルアミン、好ましくはトリブチルアミンまたはトリエチルアミンとの直接反応によって形成することができる。第二の工程において、次いでカルボキシレートは、副産物としてのアルカリクロリドまたはトリアルキルアンモニウムクロリドの形成下、求核置換反応を経てクロロアルキルアルコキシシランと反応する。この反応は、水なしの条件下またはベンゼン、トルエン、キシレンもしくは類似の芳香族溶媒およびメタノール、エタノールもしくは他のアルコール型溶媒などの溶媒中で、クロロアルキルアルコキシシランを用いて行うことができる。30〜180℃の範囲内、好ましくは100〜160℃の範囲内の反応温度を有することが好ましい。この置換反応を促進する目的で、種々の種類の相転移触媒を用いることができる。好ましい相転移触媒は次のものである:テトラブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、アリコート(Aliquat、登録商標)336(Cognis GmbH)もしくは類似の第四級アンモニウム塩(例えば米国特許第4946977号明細書で用いられているような)、トリブチルホスホニウムクロリド(例えば米国特許第6841694号明細書で用いられているような)、グアニジウム塩(例えば欧州特許出願公開第0900801号明細書で用いられているような)または1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU、例えば国際公開第2005/103061号で用いられている)のような環状不飽和アミン。必要であれば、調製および/または精製の工程を通して次の重合阻害剤を用いることができる:ハイドロキノン、メトキシフェノールおよび2,6-ジ-t-ブチル4-メチルフェノール、フェノチアジン、p-ニトロソフェノールなどのフェノール化合物、例えばN,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミンなどのアミン型化合物、または上述の硫黄含有化合物であるが、上で引用する特許文献に限定されない。
【0036】
チオカルボキシレート-C(=O)-S-化合物の形成のための調製方法は、例えば国際公開第2004/078813号、国際公開第2005/007066号および米国特許出願公開第20090036701号明細書においてブロック化メルカプトシランの調製の形態で広範に記載されている。しかしながら、カルボニル基に隣接する炭素-炭素二重結合を含むα.β-不飽和カルボニルを含む化合物のゴムコンパウンディングプロセスにおける利用は、チオエステルのカルボニル基に対し該不飽和α.β-がコンパウンディングプロセスの間または保管の間に望ましくない重合能力を有するため、例えば欧州特許出願公開第0958298号明細書、欧州特許出願公開第1270581号明細書、米国特許出願公開第20020055564号明細書または国際公開第03/091314号において明確に除外されている。しかしながら、本願において、電子求引性基に隣接する不飽和基の“望まれない”高い反応性が重要側面である。従って、このようなシランを調製する方法をそれら特許文献中に見出すことができる。
【0037】
PA型の構造体およびそれらの混合物は、バッチプロセスまたは連続プロセスを用いて、B. C. Ranu and S. Banerjee, Tetrahedron Letters, 48巻, 1版, 141〜143ページ(2007)により記載されるように、下記反応経路で官能性シラン(メルカプトまたはアミノ)と少なくとも2つのアクリレート部分を含む有機分子とのマイケル付加反応を経て得ることができる;以下の反応経路は一組の例であり、提示した出発物質および得られる構造物に限定されない。シランがメルカプト官能性シランである場合は、触媒を用いて反応性を増強してもよい。
【化2】

【0038】
有利には、それらの構造体は連続プロセスを用いて調製するであろう。構造体の多分散性を減少させるために、連続プロセスを小さなチューブ内で行うべきであり、理想的にはマイクロリアクターまたはマイクロチャネルを用いることができる。
【0039】
不飽和シランのブレンド、例えばγ-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランとアクリルオキシメチルトリメトキシシランもしくはアクリルオキシプロピルトリエトキシシランとのブレンド、またはγ-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび/もしくはアクリルオキシメチルトリメトキシシランとアクリルオキシメチルメチルジメトキシシラン、アクリルオキシメチルジメチルメトキシシラン、γ-アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシランもしくはγ-アクリルオキシプロピルジメチルメトキシシランなどの1もしくは2つのSi-アルコキシ基を含むアクリルオキシシランとのブレンドを用いてもよい。
【0040】
あるいは不飽和シランを担体上、例えばカーボンブラック、シリカ、カルシウムカーボネート、ワックスまたはポリマー上に担持することができる。これは、プラント内での材料の取り扱いにとって有用であり得るし、またシランの安定性/ゴムとの適合性を改善することをもたらすことができる。
【0041】
ジエンエラストマーは、天然ゴムとすることができる。我々は、本発明の不飽和シランが天然ゴムへ容易にグラフトし、また硬化性充填天然ゴム組成物において効果的なカップリング剤としても作用することを見出した。
【0042】
あるいはジエンエラストマーを、ジエンモノマー(共役かまたは共役でない2つの二重炭素-炭素結合を有するモノマー)のホモポリマーまたはコポリマーである合成ポリマーとすることができる。好ましくはエラストマーが“本質的に不飽和な”ジエンエラストマー、すなわち少なくとも部分的には共役ジエンモノマーから生じ、15モル%よりも多いジエン由来の構成要素または単位(共役ジエン)の含有量を有するジエンエラストマーである。より好ましくは、50モル%よりも多いジエン由来の単位(共役ジエン)の含有量を有する“高度に不飽和な”ジエンエラストマーである。低い(15モル%未満)ジエン由来の単位の含有量を有する“本質的に不飽和な”ジエンとして記載することができるブチルゴム、ジエンのコポリマーおよびエチレン-プロピレンジエンモノマー(EPDM)型のαオレフィンのエラストマーなどのジエンエラストマーは、好ましくない。
【0043】
ジエンエラストマーは、例えば以下のものとすることができる:
(a)4〜12個の炭素原子を有する共役ジエンモノマーの重合によって得られる任意のホモポリマー;
(b)互いに共役した1種以上のジエンのまたは8〜20個の炭素原子を有する1種以上のビニル芳香族化合物との共重合によって得られる任意のコポリマー;
(c)例えば、エチレンまたはプロピレンと前述の種類の非共役ジエンモノマー、具体的には1,4-ヘキサジエン、エチリデンノルボルネンまたはジシクロペンタジエンなどとから得られるエラストマーなどの、エチレンまたは3〜6個の炭素原子を有する[α]-オレフィンと6〜12個の炭素原子を有する非共役ジエンモノマーとの共重合によって得られる三元共重合体;
(d)イソブテンとイソプレンとのコポリマー(ブチルゴム)、およびこの種類の型のコポリマーがハロゲン化、具体的には塩素化または臭素化されたもの。
【0044】
適切な共役ジエンは、具体的には、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、例えば2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジエチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-3-イソプロピル-1,3-ブタジエンなどの2,3-ジ(C-Cアルキル)-1,3-ブタジエン類、アリール-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよび2,4-ヘキサジエンなどである。適切なビニル芳香族化合物は、例えば、スチレン、オルト-、メタ-およびパラ-メチルスチレン、市販の“ビニルトルエン”混合物、パラ-tert.-ブチルスチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ビニルメジチレン、ジビニルベンゼンならびにビニルナフタレンである。
【0045】
コポリマーは、99重量%〜20重量%のジエン単位および1重量%〜80重量%のビニル芳香族単位を含むことができる。エラストマーは用いられる重合条件、具体的には変性剤および/もしくはランダム化剤の存在下または非存在下ならびに用いられる変性剤および/もしくはランダム化剤の量、の関数である任意のミクロ構造を有することができる。エラストマーは、例えばブロックエラストマー、統計エラストマー、連続エラストマーまたはミクロ連続エラストマーとすることができ、分散媒中または溶液中で調製することができる;カップリング剤および/もしくは星型化剤または官能化剤を用いて、エラストマーをカップリングおよび/もしくは星型化または選択的に官能化することができる。好ましいブロックコポリマーの例はスチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)ブロックコポリマーおよびスチレン-エチレン/ブタジエン-スチレン(SEBS)ブロックコポリマーである。
【0046】
ポリブタジエン類、具体的には4%〜80%の1,2-単位含有量を有するものまたは80%を超えるシス-1,4含有量を有するもの、ポリイソプレン、ブタジエン-スチレンコポリマー、具体的には5重量%〜50重量%、より具体的には20重量%〜40重量%のスチレン含有量、ブタジエン部分の1,2-結合含有量4%〜65%およびトランス-1,4結合含有量20%〜80%を有するもの、ブタジエン-イソプレンコポリマー、具体的には5重量%〜90重量%のイソプレン含有量を有するものが好ましい。ブタジエン-スチレン-イソプレンコポリマーの場合、具体的にはスチレン含有量5重量%〜50重量%、より具体的には10重量%〜40重量%、イソプレン含有量15重量%〜60重量%、より具体的には20重量%〜50重量%、ブタジエン含有量5重量%〜50重量%、より具体的には20重量%〜40重量%、ブタジエン部分の1,2-単位含有量4%〜85%、ブタジエン部分のトランス-1,4単位含有量6%〜80%、イソプレン部分の1,2-単位と3,4-単位との合計含有量5%〜70%およびイソプレン部分のトランス-1,4単位含有量10%〜50%であるものが適切である。
【0047】
エラストマーは、アルコキシシラン末端ジエンポリマーとすることができ、またはジエンとスズカップリング溶液重合を経て調製したアルコキシ含有分子とのコポリマーとすることができる。
【0048】
ジエンエラストマー中に遊離基を発生させることのできる化合物は、好ましくは有機ペルオキシドであるが、アゾ化合物などの他のフリーラジカル開始剤も用いることができる。好ましくは、フリーラジカル開始剤の分解により形成した該ラジカルが酸素に基づく遊離基である。ヒドロペルオキシド、カルボン酸ペルオキシエステル、ペルオキシケタール、ジアルキルペルオキシドおよびジアシルペルオキシド、ケトンペルオキシド、ジアリールペルオキシド、アリールアルキルペルオキシド、ペルオキシジカーボネート、ペルオキシ酸、アシルアルキルスルホニルペルオキシドおよびモノペルオキシジカーボネートを使用するのがより好ましい。好ましいペルオキシドの例としては、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナン、ベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、ブチル4,4-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレラート、ジ-tert-アミルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-ブチル-ペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、tert-ブチルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルオクトエート、メチルエチルケトンペルオキシド、tert-ブチル-α-クミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ペルオキシベンゾエート)ヘキシン-3、1,3-または1,4-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルアセテートおよびtert-ブチルペルベンゾエートが挙げられる。アゾ化合物の例は、アゾビスイソブチロニトリルおよびジメチルアゾジイソブチラートである。上記ラジカル開始剤は、単独でまたはこれらの少なくとも2つを組み合わせて用いることができる。
【0049】
エラストマー、不飽和シランおよび遊離基を発生させることのできる化合物を、80℃以上の温度、より好ましくは90℃〜200℃、もっとも好ましくは120℃〜180℃の温度まで且つフリーラジカル開始剤を分解するのに充分に高い温度で一緒に加熱するのが好ましい。好ましくは、ペルオキシドまたはジエンポリマー中に遊離基を発生させることのできる他の化合物は、80〜200℃、好ましくは120〜180℃の分解温度を有する。エラストマー、シランおよびラジカル発生剤は、純粋に機械的な混合により混合することができ、必要に応じてその後に分離した加熱工程を行うことができるが、好ましくはエラストマーを加熱する間に機械的加工に供するように混合および加熱を一緒に実施する。
【0050】
ジエンエラストマー中に遊離基を生じることのできる化合物は、一般にグラフト化反応の間にエラストマーを基準として少なくとも0.01重量%の量で存在し、5または10%までの量で存在することができる。有機ペルオキシドは、例えば、グラフト化反応の間にジエンエラストマーを基準として0.01〜2重量%で存在するのが好ましい。もっとも好ましくは、有機ペルオキシドは0.01%〜0.5%で存在する。
【0051】
充填ゴム組成物を調製する場合、エラストマーおよび不飽和シランを反応させて、次いで充填剤と混合することができるが、エラストマーと不飽和シランとの反応の間に充填剤が存在しているのが好ましい。エラストマー、シラン、充填剤および該ラジカル開始剤を同じミキサーへ充填し、例えば熱機械的混練によって、加熱しながら混合することができる。あるいは充填剤を不飽和シランで前処理して、次いでエラストマーおよび該ラジカル開始剤と、好ましくは加熱下で、混合することができる。ジエンエラストマーおよび充填剤の熱機械的混練の間に不飽和シランおよびラジカル発生剤が存在する場合、不飽和シランは、エラストマーと反応して変性ジエンエラストマーを形成し、また充填剤をエラストマーへ結合するカップリング剤としても作用する。
【0052】
充填剤は、好ましくは補強性充填剤である。補強性充填剤の例は、シリカ、ケイ酸、カーボンブラック、またはアルミナ三水和物もしくは酸化水酸化アルミニウムなどのアルミニウム型の鉱物酸化物、またはアルミノケイ酸塩などのケイ酸塩、またはこれら異なる充填剤の混合物である。
【0053】
本発明の不飽和シランの使用は、ヒドロキシル基を含む充填剤を含む硬化性エラストマー組成物において、具体的にはゴム組成物の加工に必要とする混合エネルギーを減少させることおよびゴム組成物を硬化することによって形成した生産物の性能特性を改善することにおいて、特に有利である。ヒドロキシル含有充填剤は、例えば無機充填剤、具体的には白色タイヤ組成物で用いられるようなシリカもしくはケイ酸充填剤などの補強性充填剤、またはアルミナ三水和物もしくは酸化水酸化アルミニウムなどのアルミニウム型の鉱物酸化物などの金属酸化物、またはオルトケイ酸テトラエチルなどのアルコキシシランで前処理したカーボンブラック、またはアルミノケイ酸塩もしくは粘土などのケイ酸塩、またはセルロースもしくはスターチ、またはこれらの異なる充填剤の混合物とすることができる。
【0054】
例えば補強性充填剤は、ゴムコンパウンディング用途に一般に用いられる任意のケイ質充填剤とすることができ、該ケイ質充填剤としては発熱性または沈殿性のケイ質顔料またはアルミノケイ酸塩が挙げられる。沈殿性シリカは、例えば可溶性ケイ酸塩(例えばケイ酸ナトリウム)の酸性化によって得られたものが好ましい。沈殿性シリカは、窒素ガスを用いて測定した場合、約20〜約600m2/g、より通常は約40または50〜約300m2/gのBET表面積を有するのが好ましい。表面積を測定するBET法はJournal of the American Chemical Society, 60巻, 304ページ(1930)に記載されている。また典型的には、シリカはASTM D2414で記載される通りに測定して約100〜約350cm3/100g、より通常は約150〜約300cm3/100gのジブチルフタレート(DBP)値を有することによって特徴付けることもできる。シリカと、もし使用するならばアルミナまたはアルミノケイ酸塩とは、約100〜約220m2/gのCTAB表面積(ASTM D3849)を有するのが好ましい。CTAB表面積は、pH9でセチルトリメチルアンモニウムブロミドによって評価した外部表面積である。その方法はASTM D 3849に記載されている。
【0055】
Rhodiaから例えばゼオシル(Zeosil、登録商標)1165MP、1115MPもしくはHRS 1200MP、200MPプレミアム、80GRの名称で商業的に入手可能なシリカ;またはハイ-シル(Hi-Sil)商標の下でハイ-シル(登録商標)EZ150G、210、243などの名称でPPG Industriesから入手可能な同等のシリカ;Degussa AGから例えばVN3、ウルトラシル(Ultrasil、登録商標)7000およびウルトラシル(登録商標)7005の名称で入手可能なシリカ、Huberから商業的に入手可能な例えばフーバーシル(Hubersil、登録商標)8745およびフーバーシル(登録商標)8715の名称を有するシリカなどの種々の商業的に入手可能なシリカを本発明のエラストマー組成物での使用に考えることができる。処理した沈殿性シリカ、例えば欧州特許出願公開第735088号明細書に記載されるアルミニウムドープしたシリカを用いることができる。
【0056】
本発明のエラストマー組成物にアルミナを用いる場合、例えば該アルミナは、天然の酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムの制御沈殿によって調製した合成の酸化アルミニウム(Al)とすることができる。補強性アルミナは、30〜400m2/g、より好ましくは60〜250m2/gのBET表面積と、最大でも500nmに等しい、より好ましくは最大でも200nmに等しい平均粒度とを有するのが好ましい。そのような補強性アルミナの例は、Baiekowskiが提供しているアルミナA125、CR125、D65CRまたはAldrich Chemical Companyから入手可能な中性、酸性もしくは塩基性のAlである。中性のアルミナが好ましい。
【0057】
本発明のエラストマー組成物に使用できるアルミノケイ酸塩の例は、Tolsa S.A., Toledo, Spainからパンシル(PANSIL、登録商標)として入手可能な天然アルミノケイ酸塩セピオライト(Sepiolite)およびDegussa GmbHから入手可能な合成アルミノケイ酸塩シルテグ(SILTEG、登録商標)である。
【0058】
ヒドロキシル含有充填剤は、選択的にタルク、二水酸化マグネシウムもしくは炭酸カルシウム、またはセルロースファイバーもしくはスターチなどの天然の有機充填剤とすることができる。補強性充填剤および非補強性充填剤の混合物のように、無機充填剤および有機充填剤の混合物を用いてもよい。
【0059】
充填剤は、付加的にまたは選択的に、その表面にヒドロキシル基を有さない充填剤、例えばカーボンブラックなどの補強性充填剤および/または炭酸カルシウムなどの非補強性充填剤を含むことができる。
【0060】
ジエンエラストマーと不飽和シラン(I)または(II)との反応は、任意の適切な装置を用いてバッチプロセスまたは連続プロセスとして実施することができる。
【0061】
連続加工は、シングルスクリューまたはツインスクリューの押出機などの押出機で達成することができる。押出機は、機械的作業、つまり押出機、例えばツインスクリュー押出機を通り抜けている材料を練るまたは混ぜ合わせるように構成するのが好ましい。適切な押出機の一例は、Coperion Werner PfeidenerからZSKの商標で販売されているものである。押出機が、押出し金型の直前に真空ポートを含み、未反応シランを除去するのが好ましい。ジエンエラストマー、不飽和シランおよびフリーラジカル開始剤の押出機または他の連続するリアクター内における100℃より上での滞留時間は、一般的には0.5分以上、好ましくは1分以上であり、最大15分までとすることができる。より好ましくは、滞留時間が1〜5分である。
【0062】
バッチプロセスは、例えばバンバリーミキサーまたはローラーブレードを備えたブラベンダープラストグラフ(Brabender Plastograph、商標)350Sミキサーなどの内部ミキサー内で実施することができる。ロールミルなどの外部ミキサーをバッチ加工または連続加工のどちらかに用いることができる。バッチプロセスでは、エラストマー、不飽和シランおよびフリーラジカル開始剤を、一般的に100℃を超える温度で1分間以上一緒に混合し、最大20分まで混合することができるが、高温での混合の時間は一般的には2〜10分である。
【0063】
エラストマー組成物は、高温での機械的または熱機械的な混合または混練(“非生産”段階)と、それに続く低温、典型的には110℃未満、例えば40℃〜100℃での機械的な混合(“生産”段階)であってその間に架橋および加硫システムが組み込まれる第二段階とからなる、通常の2つの連続的な調製段階を用いて生産するのが好ましい。
【0064】
非生産段階の間、不飽和シラン、ジエンエラストマー、充填剤および該ラジカル発生剤を一緒に混合する。110℃〜190℃の最高温度、好ましくは130℃〜180℃に到達するまで、1以上の工程において機械的または熱機械的な混練を行う。補強性無機充填剤の見かけ密度が低い場合(一般的にはシリカの場合)、ゴム中の充填剤の分散をより改善するために充填剤の導入を2以上の部分に分けることが有利となり得る。非生産段階における混合の合計持続時間は、好ましくは2〜10分間である。
【0065】
本発明の不飽和シランを用いた反応によって生成した変性エラストマーを含む組成物は、種々のメカニズムによって硬化することができる。変性エラストマー用の硬化剤は、硫黄加硫剤などの通常のゴム硬化剤とすることができる。あるいは変性エラストマーをペルオキシドなどのラジカル開始剤によって硬化することができる。あるいは変性エラストマーを潜在的にはシラノール縮合触媒の存在下で、水分に暴露することによって硬化することができる。エラストマー上にグラフトした加水分解性シラン基は、互いに反応してエラストマーを架橋することができ、および/または極性表面、充填剤もしくは極性分子とさらに反応することもできる。
【0066】
多くの用途について、通常の硫黄加硫剤による硬化が好ましい。適切な硫黄加硫剤の例としては、例えば、元素状硫黄(遊離硫黄)または硫黄供与性加硫剤、例えばアミノジスルフィド、ポリマー性ポリスルフィドもしくは硫黄オレフィン付加物が挙げられ、通常はこれらを最終的な生産的ゴム組成物混合工程で加える。好ましくは、大部分の場合において、硫黄加硫剤が元素状硫黄である。硫黄加硫剤は、エラストマーを基準として約0.4〜約8重量%、好ましくは1.5〜約3重量%、具体的には2〜2.5重量%の量で用いる。
【0067】
一般的には促進剤を用いて、加硫に必要とする時間および/または温度を調節し、加硫エラストマー組成物の特性を改善する。一態様では、単独の促進剤システム、すなわち一次促進剤を用いることができる。通常かつ好ましくは、一次促進剤は、エラストマーを基準として約0.5〜約4重量%、好ましくは約0.8〜約1.5重量%の合計量で用いる。別の態様では、加硫物を活性化しその特性を改善するために一次促進剤と二次促進剤との組み合わせを用いてもよく、二次促進剤は約0.05〜約3%のより少ない量で用いる。標準的な加工温度に影響されないが普通の加硫温度にて充分な硬化を生じる遅延作動式の促進剤を用いてもよい。加硫遅延剤、例えば無水フタル酸、安息香酸またはシクロヘキシルチオフタルイミドを用いることもできる。本発明に用いることができる適切な種類の促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオウレア、チアゾール、例えばメルカプトベンゾチアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメート、チオカーボネートおよびキサンテートである。好ましくは、一次促進剤がスルフェンアミドである。二次促進剤を用いる場合、二次促進剤が好ましくはグアニジン、ジチオカルバメートまたはチウラム化合物である。
【0068】
硫黄硬化システムを用いる場合、タイヤまたはタイヤトレッドなどのゴム製品の加硫すなわち硬化を、既知の方法で、好ましくは130℃〜200℃の温度、加圧下で、充分な長時間にて実施する。加硫に必要とする時間は、例えば5〜90分の間を変動してもよい。
【0069】
好ましい一手法では、ジエンエラストマー、不飽和シランおよびジエンエラストマー中に遊離基を発生させることのできる化合物、ならびに場合により充填剤を、内部ミキサーまたは押出機内で100℃より上にて一緒に混合する。
【0070】
例として、第一の(非生産)段階を単独の熱機械的工程で達成して、その第一段階の間に補強性充填剤、不飽和シラン、該ラジカル発生剤およびエラストマーを適切なミキサー、例えば通常の内部ミキサーまたは押出機などの中で混合し、次いで第二段階で、例えば1〜2分の混練の後、加硫システムを除く任意の補助的な被覆剤または加工剤およびその他種々の添加剤をミキサーへ導入する。該組成物に補助的な熱機械的処理を受けさせる目的で、具体的にはエラストマーマトリックス中での補強性有機充填剤の分散をより改善する目的で、混合物が落下した後および温度を好ましくは100℃未満に中間冷却した後に、この内部ミキサー内で熱機械的作業の第二工程を加えてもよい。この非生産段階における混練の全持続時間は、好ましくは2〜10分である。
【0071】
このようにして得た混合物の冷却の後、次いで加硫システムを低温にて、典型的にはオープンミルなどの外部ミキサーに、あるいは内部ミキサー(バンバリー型)に組み込む。次いで混合物全体を数分間、例えば2〜10分間混合する(生産段階)。
【0072】
硬化性ゴム組成物は、不飽和シラン以外のカップリング剤、例えばトリアルコキシ、ジアルコキシまたはモノアルコキシシランカップリング剤、具体的にはスルフィドシランもしくはメルカプトシラン、またはアルキル基に1〜20個の炭素原子を有しアルコキシ基に1〜6個の炭素原子を有するアゾシラン、アクリルアミドシラン、ブロック化メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシランもしくはアルケニルシランを含むことができる。好ましいカップリング剤の例としては、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファンもしくはビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルファンなどの米国特許第5684171号明細書に記載されるようなビス(トリアルコキシシリルプロピル)ジスルファンもしくはテトラスルファン、またはビス(メチルジエトキシシリルプロピル)テトラスルファンもしくはビス(メチルジエトキシシリルプロピル)ジスルファンなどのビス(ジアルコキシメチルシリルプロピル)ジスルファンもしくはテトラスルファン、またはビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)テトラスルファンもしくはビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)ジスルファンなどのビス(ジメチルエトキシシリルプロピル)オリゴスルファン、または米国特許第6774255号明細書に記載されるようなビス(ジメチルヒドロキシシリルプロピル)ポリスルファン、または国際公開第2007/061550号に記載されるようなジメチルヒドロキシシリルプロピルジメチルアルコキシシリルプロピルオリゴスルファン、またはトリエトキシシリルプロピルメルカプトシランなどのメルカプトシランが挙げられる。そのようなカップリング剤は充填剤の有機エラストマーへの結合を促進し、よって充填エラストマーの物理的特性を増強する。充填剤をカップリング剤で前処理してもよく、または本発明のエラストマー、充填剤および不飽和シランを含むミキサーにカップリング剤を加えてもよい。我々は、このようなカップリング剤と併用しての本発明の不飽和シラン(I)または(II)の使用が、エラストマー組成物の加工に必要とする混合エネルギーを減少させることができること、および該不飽和シランを用いずにカップリング剤を含む組成物と比較して、エラストマー組成物を硬化することによって形成する生産物の性能特性を改善できることを見出した。
【0073】
硬化性ゴム組成物は、不飽和シラン以外に被覆剤、例えばトリアルコキシ、ジアルコキシもしくはモノアルコキシシラン被覆剤、具体的にはn-オクチルトリエトキシシランもしくは1-ヘキサデシルトリエトキシシラン、またはヘキサメチルジシラザン、またはヒドロキシル末端ポリジメチルシロキサンもしくはヒドロキシル末端ポリフェニルメチルシロキサンなどのポリシロキサン被覆剤、または直線状ポリ官能性シラン、またはケイ素樹脂を含むことができる。あるいは被覆剤を、アリール-アルコキシシランもしくはアリール-ヒドロキシシラン、テトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシラン、またはポリエチレングリコールなどのポリエーテルポリオール、トリアルカノールアミンなどのアミンとすることができる。充填剤は被覆剤で前処理することができ、または本発明のエラストマー、充填剤、該ラジカル発生剤および不飽和シランを含むミキサーへカップリング剤を加えることができる。我々は、そのような被覆剤と併用しての本発明の不飽和シラン(I)または(II)の使用が、エラストマー組成物の加工に必要とする混合エネルギーを減少させることができること、および該不飽和シランを用いずに被覆剤を含む組成物と比較して、エラストマー組成物を硬化することによって形成する生産物の性能特性を改善できることを見出した。
【0074】
エラストマー組成物は、加工剤などの種々の通常用いられる添加材料、例えばオイル、粘着付与樹脂を含む樹脂、シリカ、および可塑剤、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、酸化防止剤およびオゾン劣化防止剤、熱安定化剤、UV安定化剤、染料、顔料、増量剤およびしゃく解剤と混ぜ合わせることができる。
【0075】
粘着付与樹脂を使用する場合、粘着付与樹脂の典型的な量は、エラストマーを基準として約0.5〜約10重量%、好ましくは1〜5重量%を含む。加工助剤の典型的な量は、エラストマーを基準として約1〜約50重量%を含む。該加工助剤としては、例えば芳香族系、ナフテン系および/またはパラフィン系プロセスオイルが挙げられる。
【0076】
酸化防止剤の典型的な量は、エラストマーを基準として約1〜約5重量%を含む。代表的な酸化防止剤は、例えば、Flexsysから“サントフレックス(Santoflex)6-PPD”(商標)として販売されているN-1,3-ジメチルブチル-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン、ジフェニル-p-フェニレンジアミンおよびその他のもの、例えばThe Vanderbilt Rubber Handbook(1978)344〜346ページに記載されているものとすることができる。またオゾン劣化防止剤の典型的な量は、エラストマーを基準として約1〜約5重量%を含む。
【0077】
脂肪酸を使用する場合、該脂肪酸としてはステアリン酸またはステアリン酸亜鉛が挙げられ、その典型的な量は、エラストマーを基準として約0.1〜約3重量%を含む。酸化亜鉛の典型的な量は、エラストマーを基準として約0〜約5重量%、あるいは0.1〜5重量%を含む。
【0078】
ワックスの典型的な量は、エラストマーを基準として約1〜約5重量%を含む。マイクロクリスタリンワックスおよび/またはクリスタリンワックスを用いることができる。
【0079】
しゃく解剤の典型的な量は、エラストマーを基準として約0.1〜約1重量%を含む。典型的なしゃく解剤は、例えばペンタクロロチオフェノールまたはジベンズアミドジフェニルジスルフィドとすることができる。
【0080】
加硫システムなどの硬化剤を含む変性エラストマー組成物は、物品へ成形および硬化される。エラストマー組成物は、タイヤ(ビード、アペックス、サイドウォール、インナーライナー、トレッドまたはカーカスなどのタイヤの任意の部分を含む)を生産するのに用いることができる。あるいはエラストマー組成物を、任意の他の工業用ゴム製品、例えばブリッジサスペンション構成部品、ホース、ベルト、靴底、耐震振動器、およびダンプニング構成部品を生産するのに用いることができる。エラストマー組成物は、コードなどの補強構成部品、例えばポリエステル、ナイロン、レーヨンまたはセルロースコードなどの有機ポリマーコード、またはスチールコード、または織物層、または金属シートもしくは有機シートと接触して硬化することができる。
【0081】
乗用車タイヤの場合は、好ましい出発ジエンエラストマーが、例えばスチレンブタジエンゴム(SBR)、例えばエマルジョン中で調製したSBR(“ESBR”)もしくは溶液中で調製したSBR(“SSBR”)、またはSBR/BR、SBR/NR(もしくはSBR/IR)、あるいはBR/NR(もしくはBR/IR)、またはSIBR(イソプレン-ブタジエン-スチレンコポリマー)、IBR(イソプレン-ブタジエンコポリマー)、またはそれらのブレンド(混合物)である。SBRエラストマーの場合は、具体的にはスチレン含有量20重量%〜30重量%、ブタジエン部分のビニル結合含有量15%〜65%およびトランス-1,4結合含有量15%〜75%を有するSBRが好ましい。そのようなSBRコポリマー、好ましくはSSBRを、場合により、好ましくは90%より多いシス-1,4結合を有するポリブタジエン(BR)との混合物に用いる。
【0082】
大型車両用タイヤの場合、エラストマーが具体的にはイソプレンエラストマー;つまりイソプレンホモポリマーまたはコポリマー、言い換えると、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、種々のイソプレンコポリマーまたはこれらエラストマーの混合物からなる群より選択されるジエンエラストマーである。国際公開第2010005525号および国際公開第2010003007号に記載されるように、イソプレンポリマーは、細胞培地中で利用可能な炭素をイソプレンに変換し、次いで回収して合成ゴムへと重合する培養液中で生成することができる。イソプレンコポリマーのうち、具体的にはイソブテン-イソプレンコポリマー(ブチルゴム-IIR)、イソプレン-スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン-ブタジエンコポリマー(BIR)またはイソプレン-ブタジエン-スチレンコポリマー(SBIR)について言えるであろう。このイソプレンエラストマーは好ましくは天然ゴムまたは合成シス-1,4ポリイソプレンであり;これらの合成ポリイソプレンのうち、好ましくは90%より多い、より好ましくはさらに98%より多いシス-1,4結合含有量(モル%)を有するポリイソプレンが用いられる。そのような大型車両用タイヤについて、エラストマーは、全体的にまたは部分的に、他の高度に不飽和なエラストマー、例えばSBRまたはBRエラストマーなどで構成することができる。
【0083】
エラストマー組成物がタイヤのサイドウォール用である場合、エラストマーは、例えば単独でまたは1種以上の高度に不飽和なジエンエラストマーの混合物として用いることができる少なくとも1種の本質的に飽和なジエンエラストマー、具体的には少なくとも1種のEPDMコポリマーを含むことができる。
【0084】
加硫システムを含む変性エラストマー組成物は、ゴムの物理的または機械的特性を測定するために、具体的には実験室的特徴付けのために、例えばゴムの薄スラブ(2〜3mmの厚さ)または薄板の形態に例えば圧延してもよく、あるいは所望の寸法への切断または組み立ての後、押出してタイヤ用の半仕上げ製品、具体的にはトレッド、カーカス補強材のパイル、サイドウォール、ラジアルカーカス補強材のパイル、ビードもしくはチェーファー、インナーチューブもしくはチューブレスタイヤ用エアライトインターナルラバーとして直接的に用いられるゴム型出し構成部品を形成してもよい。
【0085】
硫黄加硫システムによる硬化に代わるものとして、変性エラストマー組成物をペルオキシドにより硬化してもよい。適切なペルオキシドとしては、上に列挙したものが挙げられる。その例としてはジ(tert-ブチル)ペルオキシド;t-ブチルクミルペルオキシド;ジクミルペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド;1,1’-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン;2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン;α,α’-ジ(t-ブチルペルオキシ)-m/p-ジイソプロピルベンゼン;およびn-ブチル-4,4’-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレラートである。
【0086】
本発明は、フリーラジカル開始剤、例えばグラフト化反応を助けるペルオキシドの存在下でジエンポリマーへグラフトするための特定のファミリーの活性化不飽和官能性シランの使用に関する。加硫は、いわゆる“生産”段階の間にペルオキシドを使用しても行うことができる。ペルオキシドを活性化するために、ゴムを加硫するのに熱またはUV放射を用いることができる。ペルオキシドの熱活性化は、例えば100℃〜200℃の温度にて1〜90分間、好ましくは5〜20分間を含む時間での方法が好ましい。
【0087】
硫黄およびペルオキシド硬化に代わる第二のものは、得られたグラフトポリマーのアルコキシシラン基の使用である。シラノール縮合触媒の存在下での水分への曝露によってグラフトエラストマーを架橋する場合、任意の適切な縮合触媒を用いることができる。これらの触媒としては、プロトン酸、ルイス酸、有機および無機塩基、遷移金属化合物、金属塩ならびに有機金属複合体が挙げられる。
【0088】
好ましい触媒としては、有機スズ化合物、具体的には有機スズ塩そして特にはジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジメチルスズジブチレート、ジブチルスズジメトキシド、ジブチルスズジアセテート、ジメチルスズビスネオデカノエート、ジブチルスズジベンゾエート、ジメチルスズジネオデコノエートまたはジブチルスズジオクトエートなどのジ有機スズジカルボキシレート化合物が挙げられる。別の有機スズ触媒としては、トリエチルスズタータレート、スズオクトエート、スズオレエート、スズナフテート、ブチルスズトリ-2-エチルヘキソエート、スズブチレート、カルボメトキシフェニルスズトリスベレートおよびイソブチルスズトリセロエートが挙げられる。あるいは、鉛、アンチモン、鉄、カドミウム、バリウム、マグネシウム、亜鉛、クロミウム、コバルト、ニッケル、アルミニウム、ガリウムまたはゲルマニウムなどの他の金属の有機化合物、具体的にはカルボキシレートを用いることができる。
【0089】
あるいは縮合触媒をチタン、ジルコニウムおよびハフニウムから選択される遷移金属の化合物、例えばチタンアルコキシド、別名一般式Ti[OR]のチタン酸エステルとして知られるものおよび/またはジルコン酸エステルZr[OR](式中、各Rは、同一または異なってもよく1〜10個の炭素原子を含み直線状または分枝状であってもよい一価の一級、二級または三級の脂肪族炭化水素基を表す)とすることができる。Rの好ましい例としては、イソプロピル、三級ブチルおよび2,4-ジメチル-3-ペンチルなどの分枝状二級アルキル基が挙げられる。あるいはチタン酸塩が、アセチルアセトンまたはメチルもしくはエチルアセトアセテートなどの任意の適切なキレート剤でキレートされていてもよく、例えばジイソプロピルビス(アセチルアセトニル)チタネートまたはジイソプロピルビス(エチルアセトアセチル)チタネートであり得る。
【0090】
あるいは縮合触媒をプロトン酸触媒またはルイス酸触媒とすることができる。適切なプロトン酸触媒の例としては、酢酸などのカルボン酸およびスルホン酸、具体的にはドデシルベンゼンスルホン酸などのアリールスルホン酸が挙げられる。“ルイス酸”は、電子対を受け入れて共有結合を形成するであろう任意の物質、例えば、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素モノエチルアミン複合体、三フッ化ホウ素メタノール複合体、三酢酸ホウ素、金属アルコキシド(例えば、Al(OEt)、Al(OiPr))、NaF、FeCl、AlCl、ZnCl、ZnBrまたは式MRの触媒(式中MはB、Al、Ga、InまたはTlであり;各Rは独立して同一または異なっており6〜14個の炭素原子を有する一価の芳香族炭化水素ラジカルを表し、該一価の芳香族炭化水素ラジカルは、好ましくは少なくとも1つの-CF、-NOもしくは-CNなどの電子求引性の元素もしくは基を有するか、または少なくとも2つのハロゲン原子で置換されており;Xはハロゲン原子であり;fは1、2または3であり;gが0、1または2であり;ただしf+g=3である)である。そのような触媒の一例はB(C)である。
【0091】
塩基性触媒の例は、アミン、またはテトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの四級アンモニウム化合物、またはアミノシランである。ラウリルアミンなどのアミン触媒は、単独で用いることができ、またはスズカルボキシレートもしくは有機スズカルボキシレートなどの他の触媒と併用して用いることもできる。
【0092】
シラン縮合触媒は、典型的には変性ジエンエラストマーを基準として0.005〜1.0重量%で用いる。例えば、ジ有機スズジカルボキシレートは、エラストマーを基準として好ましくは0.01〜0.1重量%で用いる。
【0093】
変性ジエンエラストマーを水分への曝露によって硬化する場合、変性エラストマーを物品へ成形し、続いて水分によって架橋するのが好ましい。好ましい一手法では、グラフトポリマーを架橋するのに用いられる水中にシラノール縮合触媒を溶解することができる。例えば、グラフトポリオレフィンから成形した物品を、酢酸などのカルボン酸触媒を含む水またはジ有機スズカルボキシレートを含む水によって硬化することができる。
【0094】
選択的にまたは付加的に、変性エラストマーを物品へ成形する前に、シラノール縮合触媒を変性エラストマーへ組み込むことができる。成形した物品は、続いて水分により架橋することができる。グラフト化反応の前、最中または後に、触媒をジエンエラストマーと混合することができる。
【0095】
硫黄による加硫などの他の硬化手段に加えて、シラノール縮合触媒を用いることができる。この場合、シラノール縮合触媒は、上述の好ましい加硫プロセスの“非生産”段階または生産段階のどちらかで組み込むことができる。
【0096】
グラフトエラストマーのアルコキシシラン基を用いて硬化を行う場合、硬化エラストマー物品を形成するときに、シランおよび触媒を一緒に水分へ曝露することまたはシラン変性エラストマーと触媒との組成物を所望の物品への最終成形する前に水分へ曝露することを避けるように注意を払うべきである。
【0097】
本発明の変性ジエンエラストマーは、グラフト化反応の間にエラストマーおよびシランと混合する充填剤と、後に変性ジエンエラストマーが適用される基材との両方に対して、改善した接着性を有する。充填剤に対する改善した接着性は、コンパウンディングの間に充填剤に良好な分散をもたらす。変性ジエンエラストマーが適用される基材としては、変性ジエンエラストマーから作られる最終物品、例えばタイヤの構造に組み込まれる金属のコードおよび織物ならびに有機ポリマーのコードおよび織物が挙げられる。該基材に対する改善した接着性は、改善した機械的および摩耗特性を有する最終物品をもたらす。変性エラストマーをタイヤトレッドの製造に用いる場合、改善した機械的特性が、低減した転がり抵抗、良好なトレッド摩耗および改善したウエットスキッド性能などの改善したタイヤ特性を与えることができる。
【0098】
本発明を以下の実施例によって説明する(実施例中、割合およびパーセンテージは重量による)。
【実施例】
【0099】
[実施例1]
実施例1ならびに比較例C1およびC2のゴム製品を、下に記載する成分を用いて、下に記載する手順に従って調製した。ゴム100部あたりの割合(phr)で表現した量を表1に記載する。
・NR SVR 10,CV60 − 天然ゴムの標準ベトナムゴム、純度等級10、一定粘性(CV) 60m.u.(ムーニー単位)
・シリカ − Rhodiaから入手したゼオシル(登録商標)1165MP
・シラン1 − γ-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン
・シラン2 − ビニルトリメトキシシラン
・ACST − ステアリン酸
・ZnO − 酸化亜鉛
・6PPD − N-1,3-ジメチルブチル-N-フェニル-パラ-フェニレンジアミン(“サントフレックス(登録商標)6-PPD”)
・S − 元素状硫黄
・CBS − N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(Flexsysから入手した“サントキュア(Santocure、登録商標)CBS”)
・TMQ − 重合した2,2,4-トリメチル-1,2-ヒドロキノリン
・ルペロックス(Luperox、登録商標)230XL40 − CaCO上に担持されたn-ブチル-4,4’-ジ(tert-ブチルペルオキシ)バレラート(Arkemaから入手)
・ルペロックス(登録商標)A75,75% −CaCO上に担持されたベンゾイルペルオキシド(Arkemaから入手)
・N330、N234−ASTM D1765に準拠した通常のカーボンブラック
【0100】
比較例C1では、ビニルトリメトキシシランに適合するラジカル開始剤の存在下で、γ-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランを等モル量のビニルトリメトキシシランで置き換えた。
【0101】
比較例C2は、カーボンブラック充填剤を用いたタイヤトレッド用の標準的な天然ゴム配合である。
【0102】
【表1】

【0103】
第一の非生産段階の間、バンバリーミキサー中での熱機械的混練を用いて、ペルオキシドの存在下で天然ゴムとシランとの反応を実施した。手順は、種々の成分の添加の時間を表示する表2に示す通りであった。混合の終わりでの温度は、ミキサーからゴムを放出した後にゴム内部で測定した。
【0104】
【表2】

【0105】
実施例1のミキサー内で到達した最高温度は130℃であった。比較例C1の最高温度は160℃であった。
【0106】
第二の非生産段階の間、第一の非生産段階から得たプレミックスに充填剤を加えた。バンバリーミキサー中での熱機械的混練を用いて混合を実施した。手順は、種々の成分の添加の時間およびその時間での混合物の推定温度を表示する表3に示す通りであった。
【0107】
比較例C2は、表3に記載するプロセスに従って単独の非生産段階で実施し、ステアリン酸およびZnOと同じタイミングで6PPDを導入した。
【0108】
【表3】

【0109】
このようにして生成した変性天然ゴム組成物を約70℃の温度にて2ロールミルでロール練りし、そのロール練りの間に硬化剤を加えた(生産段階)。生産段階の混合手順を表4に示す。
【0110】
【表4】

【0111】
生産した変性ゴムシートを次のように試験した。試験結果を以下の表5に示す。
【0112】
レオメーター測定は、標準ISO 3417:1991(F)に準拠して振動チャンバーレオメーター(すなわち、高度プラスチックアナライザー)を用いて160℃にて行った。経時的なレオメータートルクの変化は、組成物の硬化の経過を加硫反応の結果として説明する。この測定値を、標準ISO 3417:1991(F)に準拠して処理した。デシニュートンメートル(dNm)で測定した最小および最大トルク値をそれぞれMLおよびMHと表示し、α%硬化(例えば5%)での時間は最小トルク値と最大トルク値の間の差のα%(例えば5%)の転化を達成するのに必要な時間である。最小トルク値と最大トルク値の間の差もMH-MLと表し、測定する。同一条件下で、160℃でのゴム組成物のスコーチング時間を、トルクの最小値を超えて2単位のトルクの増加を得るのに必要な時間(分)(‘2dNmスコーチSでの時間’)として決定する。
【0113】
ISO標準ISO37:1994(F)に準拠し、引張試験片ISO37−タイプ2を用いて、引張試験を行った。10%、100%および250%または300%の伸びでの公称応力(すなわち見かけの応力、MPa)である10%伸び(M10)、100%伸び(M100)および伸び(M250またはM300)を測定する。破断応力(MPa)も測定する。破断時伸び(%)は標準ISO37に準拠して測定した。高い値の破断時伸びが好ましい。好ましくは、破断時伸びが少なくとも300%である。これらすべての引張測定を、ISO標準ISO471に準拠して通常の温度および相対湿度の条件下で行う。M300のM100に対する比率はゴム組成物から作られるタイヤのトレッド耐摩耗性と相関し、M300/M100比率の増加は良好なトレッド耐摩耗性の可能性を示す。
【0114】
ASTM標準D5992-96に準拠してビスコアナライザー(Metravib VA4000)で動的特性を測定した。
− ひずみ掃引:加硫した組成物のサンプル(厚さ2.5mmおよび断面40mm2)を55℃の温度管理下で10Hzの周波数の交互の単純正弦波せん断応力に供した応答を記録する。0.1〜50%の変形の振幅でスキャニングを行い、損失係数tan dの最大実測値を記録し、その値をtanδ6%と表す。tanδ6%値はタイヤの転がり抵抗とよく相関しており、より低減した転がり抵抗はより低いtanδ6%となり、タイヤ性能はより良好となるであろう。G’0は、挙動が応力に対して直線的であるときに非常に低いひずみで測定した弾性率である。G’maxは50%ひずみでの弾性率である。0.1〜50%の第一ひずみ掃引(G’0)の後の動的特性を記録し、次いで50%〜0.1%の第二ひずみ掃引も記録する。第一ひずみ掃引での弾性率と低ひずみへの戻り(return)の後の弾性率(G’0 return)の間の差をΔG’0と表し、これは応力下でのタイヤのハンドリング安定性とよく相関している。第二ひずみ掃引後のG’0 returnとG’maxの間の差をΔG’returnと表す。tanδ6%、第二ひずみ掃引値は、第二ひずみ掃引の間の最大の損失係数tan(δ)に対応している。tanδ6%とtanδ6%、第二ひずみ掃引の両方の減少は、ゴム組成物から製造したタイヤの転がり抵抗の低減とよく相関している。
− 温度掃引:加硫した組成物のサンプル(厚さ2.5mm、高さ14mmおよび長さ4.0mm)を1.25マイクロメートル(ミクロン)の制御変位下で10Hzの周波数の交互の単純正弦波せん断応力に供した応答。サンプルを室温におき、5℃/分の速度で−100℃まで冷却する。次いで温度を20分間−100℃に安定させて、サンプルが平衡温度状態となるのを可能にする。次いで温度を5℃/分の速度で100℃まで上昇させる。損失係数および剛性は弾性率およびtan(δ)を与える。tanδmaxおよび/または0℃での値(tanδ0℃)はウエットスキッド性能に関連する。tanδmaxおよび0℃でのtan(δ)の値(tanδ0℃)における増加は、改善したウエットスキッド性能を示す。
【0115】
ASTM D2240-02bに準拠してショアーA硬度を測定した。
【0116】
【表5】

【0117】
通常のカーボンブラック配合である比較例C2、および比較例C1と比べて、実施例1のひずみ掃引の結果はTanδ6%、第二ひずみ掃引での減少を示している。これは、対応するゴム組成物から作ったタイヤの転がり抵抗の低減と関連する。
【0118】
実施例1の温度掃引の間のtanδmax値の結果は比較例C2と比べて増加しており、実施例1のゴム組成物から作ったタイヤの改善したウエットスキッド性能を意味している。
【0119】
実施例1の物理的特性、例えばM300/M100比率は比較例C1およびC2と比べて増加しており、良好なトレッド耐摩耗性を意味している。
【0120】
実施例1は比較例C1と比べて増加したモジュラスM300を示した。これと先の全ての結果に基づくと、ビニルトリメトキシシランよりもγ-アクリルオキシ官能性シランがペルオキシドの存在下でより容易に天然ゴムにグラフトし且つ良好なシリカ分散も提供することが明らかである。
【0121】
[実施例2]
実施例1に記載した成分を表6に記載した量で用いて、以下に示す手順に従って、実施例2および比較例C3のゴム製品を調製した。
【0122】
シラン3は、過剰エタノールの存在下でγ-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランからメトキシのエトキシへの直接交換により作った不飽和シランである。得られた組成物は、γ-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(3.4%)、γ-アクリルオキシプロピルエトキシジメトキシシラン(39.8%)、γ-アクリルオキシプロピルメトキシジエトキシシラン(48.25%)およびγ-アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン(5.95%)の混合物からなっていた。この組成は、FID検出器を備えたGCによって決定した。残りの成分は、これらの種のポリ縮合物(<3%)およびγ-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン由来の不純物(<0.5%)からなっていた。
【0123】
表6に示す配合を用いて、ペルオキシドおよびシリカ充填剤の存在下で、天然ゴムをシラン3混合物と反応させた。
【0124】
【表6】

【0125】
バンバリーミキサー中での熱機械的混練を用いて、単独の非生産段階の間に天然ゴム、充填剤、ペルオキシドおよびシランのコンパウンディングを実施した。その手順は、種々の成分の添加の時間およびその時間での混合物の推定温度を表示する表7に示す通りであった。混合の終わりの温度は、ゴムをミキサーから放出した後にゴム内部で測定した。
【0126】
【表7】

【0127】
このようにして生成した変性天然ゴム組成物を約70℃の温度にて2ロールミルでロール練りし、その間に硬化剤を用いたロール練りを行った(生産段階)。この後段の生産段階に用いた混合手順は表4に示す。
【0128】
生産した変性ゴムシートを実施例1で記載する通りに試験した。実施例2および比較例C3の試験結果を表8に示す。
【0129】
【表8】

【0130】
比較例C3と比べて、実施例2は、同様の摩耗性能と対応している同様の引張性能を示している。
【0131】
実施例2は、比較例C3と比べてより低いTanδ6%、第二ひずみ掃引および温度掃引試験からのより高いtanδmax値を示している。これら後者の所見は、タイヤトレッドの改善した転がり抵抗およびウエットスキッド性能に対応している。
【0132】
実施例2は、比較例C3と比べて破断時引張応力の低減なしに同様のレベルのM300/M100およびM100を示しており、等価な摩耗性能を意味している。従って、アクリルオキシ官能性シランとペルオキシドとの正しい組み合わせを用いて、我々はゴムの性能のバランスを最適化することができた。
【0133】
[実施例3]
実施例2の手順に従って、以下の表9に示す配合に従って変性ゴム組成物を調製した。表9の成分は実施例1で提示する通りである。
【0134】
また、比較例も実施した。比較例C5は、実施例2のシラン混合物(シラン3)の代わりにγ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(シラン4)を用いて行った。比較例4のシランの量は同じモル含有量のシランを有する実施例3を基準にした。比較例C4は、カーボンブラックでシリカを置き換えて含み、典型的な工業基準コンパウンドを表している。
【0135】
【表9】

【0136】
生産した変性ゴムシートを実施例1に記載する通りに試験した。その試験結果を表10に示す。
【0137】
【表10】

【0138】
実施例3は、比較例C4および比較例C5と比べて、タイヤトレッドのより低い転がり抵抗に対応する、より低いTanδ6%、第二ひずみ掃引試験値を示していた。
【0139】
実施例3は、比較例C4およびC5と比べて、タイヤトレッドのより高いウエットスキッド性能に対応する、温度掃引試験からのより高いtanδmaxを示していた。
【0140】
実施例3は、比較例C4およびC5と比べて、タイヤトレッドの良好な摩耗性能に対応する、より高いM300/M100を示していた。
【0141】
比較例C5に対して実施例3で得た結果は、γ-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランがγ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランよりも容易に天然ゴムにグラフトすることを示した。実施例3の物理的特性を比較例C5と比較して示されるように、γ-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランの別の利益は良好なシリカ分散である。シリカと天然ゴムポリマーとのカップリングはγ-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランを用いて非常に良好である。
【0142】
[実施例4]
実施例2の手順に従って、以下の表11に示す配合に従って変性ゴム組成物を調製した。表11中の成分は実施例1で提示する通りである。
【0143】
また、比較例も実施した。比較例C7はアクリルアミドプロピルメチルジエトキシシラン(シラン5)を用いて行い、実施例4はアクリロプロピルトリエトキシシラン(シラン3)を用いて行った。比較例7のシランの量は同じモル含有量のシランを有する実施例4を基準とした。比較例C6は、カーボンブラックでシリカを置き換えて含み、典型的な工業基準コンパウンドを表している。
【0144】
【表11】

【0145】
生産した変性ゴムシートを実施例1に記載する通りに試験した。この試験結果を表12に示す。


【0146】
【表12】

【0147】
実施例4は予想通り、比較例C6と比べて、タイヤトレッドのより低減した転がり抵抗に対応する、より低いTanδ6%、第二ひずみ掃引試験値を示していた。
【0148】
比較例C7と比べて、実施例4は、タイヤトレッドの良好な摩耗性能に対応する、良好なM300/M100をもたらす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエンエラストマー中に遊離基を発生させることのできる化合物の存在下で、ケイ素に結合した少なくとも1つの加水分解性基を有するオレフィン性不飽和シランを用いた反応によってジエンエラストマーを変性する方法であって、
前記シランが式:
R”-CH=CH-C(O)X-Y-SiRR’(3−a) (I)または
R”-C≡C-C(O)X-Y-SiRR’ (3−a) (II)
(式中、Rは加水分解性基を表し;R’は1〜6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し;aは1〜3を含めた範囲内の値を有し;Yは結合-C(O)X-とSi原子とを隔てている少なくとも1つの炭素原子を含む二価の有機スペーサー結合を表し;R”は水素、または-CH=CH-もしくは-C≡C-結合に関して電子求引性効果を有する基を表し;XはSおよびOから選択される)
を有することを特徴とする前記方法。
【請求項2】
不飽和シラン(I)または(II)の各R基がアルコキシ基であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
不飽和シラン(I)または(II)が部分的に加水分解してオリゴマーへ縮合していることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
不飽和シラン(I)がγ-アクリルオキシプロピルトリメトキシシランおよび/またはγ-アクリルオキシプロピルトリエトキシシランを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
不飽和シラン(I)がアクリルオキシメチルトリメトキシシランおよび/またはアクリルオキシメチルトリエトキシシランを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記シランが、二級アミノ官能性アルコキシシランまたはメルカプト-プロピル-アルコキシシランと少なくとも2つのアクリルオキシ基を含む多官能性有機部分とを混合することにより得られることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記シランが、ペンタエリスリトールテトラアクリレートとN-メチル-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス-(トリエトキシシリルプロピル)アミンまたはメルカプトプロピルトリエトキシシランとを1:1〜1:3.5(アクリレート:シラン)のモル比で混合することにより得られることを特徴とする、請求項6項に記載の方法。
【請求項8】
前記シランがトリメチロールプロパントリアクリレートとN-メチル-アミノプロピルトリエトキシシランまたはN-フェニル-アミノプロピルトリエトキシシランまたはメルカプトプロピルトリエトキシシランとを1:1〜1:2.5のモル比で混合することにより得られることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ジエンエラストマーがイソプレン系ゴム、好ましくは天然ゴムを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ジエンエラストマーがジエンモノマーのホモポリマーまたはコポリマーである合成ポリマーであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
不飽和シラン(I)または(II)が、反応の間、ジエンエラストマーを基準として0.5〜15.0重量%存在することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
該ポリマー中に遊離基を発生させることのできる化合物が有機ペルオキシドであって、グラフト化反応の間に該ポリマーを基準として0.01〜2重量%存在することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ジエンエラストマーと不飽和シラン(I)または(II)とが90℃〜200℃、好ましくは120℃〜180℃の温度で反応することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ジエンエラストマーと不飽和シラン(I)または(II)との反応の間に充填剤が存在し、それによって不飽和シラン(I)または(II)が充填剤とジエンエラストマーとの間のカップリング剤として作用することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
充填剤がシリカであることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の方法によって調製した充填エラストマー組成物を成形および硬化することを特徴とする、ゴム物品の生産方法。
【請求項17】
充填エラストマー組成物を硫黄、硫黄化合物またはペルオキシドによって硬化することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
充填エラストマー組成物をシラノール縮合触媒の存在下で水分に曝露して硬化することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
Yが1つ以上のヘテロ原子を含むおよび/またはXがOである、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
ジエンエラストマー中に遊離基部位を発生させることのできる化合物の存在下で、補強性充填剤を含むジエンエラストマー組成物用のカップリング剤としての式:
R”-CH=CH-C(O)X-Y-SiRaR’(3−a) (I)または
R”-C≡C-C(O)X-Y-SiRaR’ (3−a) (II)
(式中、Rは加水分解性基を表し;R’は1〜6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し;aは1〜3を含めた範囲内の値を有し;Yは結合-C(O)X-とSi原子とを隔てている少なくとも1つの炭素原子を含む二価の有機スペーサー結合を表し;R”は水素、または-CH=CH-もしくは-C≡C-結合に関して電子求引性効果を有する基を表し;XはSおよびOから選択される)
を有するシランの使用。
【請求項21】
タイヤもしくはその任意の部分または工業用のゴム製品、ベルトもしくはホースの生産における、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法によって生成した変性ジエンエラストマー組成物の使用。
【請求項22】
Yが1つ以上のヘテロ原子を含むおよび/またはXがOである、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
ジエンエラストマー、ケイ素に結合した少なくとも1つの加水分解性基を有するオレフィン性不飽和シラン、およびジエンエラストマー中に遊離基部位を発生させることのできる化合物から得た硬化性ジエンエラストマー組成物であって、
前記シランが式:
R”-CH=CH-C(O)X-Y-SiRaR’(3−a) (I)または
R”-C≡C-C(O)X-Y-SiRaR’ (3−a) (II)
(式中、Rは加水分解性基を表し;R’は1〜6個の炭素原子を有するヒドロカルビル基を表し;aは1〜3を含めた範囲内の値を有し;Yは結合-C(O)X-とSi原子とを隔てている少なくとも1つの炭素原子を含む二価の有機スペーサー結合を表し;R”は水素、または-CH=CH-もしくは-C≡C-結合に関して電子求引性効果を有する基を表し;XはSおよびOから選択される)
を有することを特徴とする前記組成物。
【請求項24】
Yが1つ以上のヘテロ原子を含むおよび/またはXがOである、請求項23に記載の硬化性ジエンエラストマー。

【公表番号】特表2012−525460(P2012−525460A)
【公表日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507738(P2012−507738)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【国際出願番号】PCT/EP2010/055757
【国際公開番号】WO2010/125124
【国際公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(590001418)ダウ コーニング コーポレーション (166)
【氏名又は名称原語表記】DOW CORNING CORPORATION
【Fターム(参考)】