説明

シリアル食品及びシリアル補助食品

【課題】過剰に摂取したとしても胃や腸に負担を与えることが少ないが、少ない摂食量で満腹感が得られるシリアル食品を提供することである。
【解決手段】局方崩壊試験法第一液又は局方崩壊試験法第二液及び水において膨潤可能な水溶性多糖類からなる膨潤成分と、該膨潤成分の膨潤を制御する膨潤抑制成分と、が含まれたことを特徴とするシリアル食品である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とうもろこし等の穀物類を加工したものを主原料とし、主として朝食として、そのまま食され、又は牛乳などとともに食されているシリアル食品、及びシリアル食品に混合させてシリアル食品とともに食されるシリアル補助食品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、我が国において肥満(BMI値で25以上)人口が増加しており、肥満が原因となる生活習慣病が急増している。高齢化社会に伴って、特にメタボリックシンドロームと呼ばれる疾患群は、寝たきり患者を増加させ、看護者をより必要とし、ひいては社会保障費の増大を招いており、我が国における大きな社会問題となりつつある。また、肥満を防止することが、糖尿病や高脂血症、高血圧の改善になることが科学的に証明されているので、肥満防止のためのダイエット食品が期待されている。
【0003】
このような観点から、シリアル食品は、比較的食物繊維(不溶性食物繊維)が多く含まれており、手軽に摂食することが可能な健康食品として期待されている。シリアル食品は、牛乳などと混ぜて簡単に摂食することができるので、従来から朝食用として食されている。従来のシリアル食品とは、一般にとうもろこし、小麦、米、大麦、ライ麦等の穀物類を圧扁、成型、膨張、焙焼などにより加工したものを主原料とし、必要に応じて野菜、果実、ナッツなどが加えられ、主に朝食用として、牛乳などを加えて食されるものをいう。シリアル食品の代表的なものとして、とうもろこしを原料としてフレーク状に加工されたコーンフレークがあるが、近年、米国やヨーロッパなどでは、ミューズリー、パフ、グラノーラ、やクランチなど多様な形態・成分のシリアルが食されている。一方、上述のようにシリアル食品は、とうもろこしなど穀物類が含まれているが、近年、穀物類を含ませずに、ペクチンなど増粘多糖類などをフレーク状に加工したものがあり(特許文献1参照)、これをシリアル食品と混ぜて、シリアル食品と一緒に食するシリアル補助食品として利用することが考えられている。以上のようにシリアル食品は、果実などが配合されているので、ビタミン類など栄養素をバランス良く摂取することができる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−14336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のシリアル食品は、カロリーが1g当たり3.5kcal以上で米やパンなどと同様にカロリーが高く、手軽に食することが可能であるため、多く摂食してしまう場合があり、特に満腹感を得るまで食すると、かなりの量のカロリーを摂取するになる。これは、肥満などが社会問題となっている現在社会においては、重要な問題である。また、シリアル食品は、粗製の穀物類を一部原料としており、見掛け上健康訴求をしているが、必ずしもカロリーが低いものではない。特に粗製の穀物類は、食味が悪いので、その含有量を増やすことが難しく、また食べやすくするためにナッツなどを加えているので、さらにカロリーが高くなっている場合がある。
【0006】
一方、満腹感を得るために、局方崩壊試験法第一液又は局方崩壊試験法第二液及び水において膨潤可能な水溶性多糖類をフレーク状に形成することが考えられるが、このように局方崩壊試験法第一液又は局方崩壊試験法第二液及び水において膨潤可能な水溶性多糖類であるコンニャクマンナン(グルコマンナン)などは、天然物由来の多糖類であるので、その分子量や純度により、吸水膨潤度合いのバラツキが大きく、膨潤度合いをコントロールすることが困難である。また、このような水溶性多糖類を多量に入れると、加工性が悪くなり、また食感にべとつきが出るという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、過剰に摂取したとしても胃や腸に負担を与えることが少ないが、少ない摂食量で満腹感が得られ、食感や食味が整えられたシリアル食品及びシリアル補助食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成するため、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、局方崩壊試験法第一液又は局方崩壊試験法第二液及び水において膨潤可能な水溶性多糖類からなる膨潤成分と、該膨潤成分の膨潤を制御する膨潤抑制成分と、を含ませることによって、過剰に摂取したとしても胃や腸の負担を与えることが少ないが、少ない摂食量で満腹感が得られることを見出した。すなわち、局方崩壊試験法第一液又は局方崩壊試験法第二液及び水において膨潤可能な水溶性多糖類からなる膨潤成分と、該膨潤成分の膨潤を制御する膨潤抑制成分と、が含まれたことを特徴とするシリアル食品及びシリアル補助食品である。本発明において、シリアル食品とは、前記膨潤成分、膨潤抑制成分、及びとうもろこし等の穀物類を加工したものなどを主原料とし、主として朝食として、そのまま食され、又は牛乳などとともに食されるものをいい、シリアル補助食品とは、従来のシリアル食品のように穀物類を加工したものが含まれていないが、シリアル食品と同様の形状に加工され、シリアル食品に混合させてシリアル食品とともに摂食されるものをいう。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明によれば、過剰に摂取したとしても胃や腸に負担を与えることが少ないが、少ない摂食量で満腹感が得られ、食感や食味が整えられたシリアル食品及びシリアル補助食品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明に係るシリアル食品及びシリアル補助食品において、前記膨潤成分は、生体内温度において吸水膨潤しながら溶解して保水し、粘性を発現する水溶性多糖類であることが好ましく、例えばサイリュームシードガム、コンニャクマンナン(グルコマンナン)、キサンタンガム、タマリンドガム、セルロース誘導体、タラガム及びグアーガムなどのうち少なくとも1以上がある。また、前記膨潤抑制成分は、生体内温度以上で溶解するが、生体内温度では溶解せず限られた吸水しか行なわない成分であることが好ましく、ゲル化することによって、膨潤剤の膨潤を抑制するように構成されていることが好ましく、そのようなゲル化剤としては、寒天、カラギナン、ファーセレラン、ジェランガム、アルギン酸及びアルギン酸塩などのうち少なくとも1以上がある。また、本発明において、膨潤抑制剤は、膨潤剤の膨潤を150倍以内に制御、好ましくは80倍以内に制御するように調整されていることが好ましい。
【0011】
これら膨潤成分と膨潤抑制成分の配合比は、95:5〜10:90であることが好ましく、90:10〜30:70であることがより好ましい。本発明に係るシリアル食品は、膨潤成分と膨潤抑制成分を粉末状態で水に加えて、加熱・加圧しながら混練することによって製造される。例えば、エクストルーダーなどによって加熱・加圧状態で混練することによって製造することができる。この場合、成型時にダマにならず、生体内で吸水して膨潤し易くするように発泡体として成型することが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るシリアル食品及びシリアル補助食品には、ノーカロリー又は低カロリーの糖質が含まれていることが好ましく、糖質は、膨潤成分と膨潤抑制成分の混練時に加えるか、成型品にコーティングすることによって含ませることができる。このように糖質を含ませることによって、よりクリスピー性に富んだ食感を得ることができる。添加される糖質として、例えば、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マンニトール、マルチトール、還元乳糖及びパラチニットなどの糖アルコール、フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、乳果オリゴ糖及びキシロオリゴ糖などのオリゴ糖、並びにイヌリン、アラビアガム及びアラビノガラクタンなどの多糖類などがある。
【0013】
本発明に係るシリアル食品は、生体内で吸水して膨潤させるものであるが、水や牛乳など液体に添加し、又は加熱したスープやお茶などに添加することによって事前に膨潤させた後に喫食しても良い。加熱したものに添加する場合は、耐熱性を有する原料を用いる必要がある。
【0014】
本発明に係るシリアル食品は、とうもろこしなどの穀物類を原料とする通常のシリアル食品に、本発明に係るシリアル補助食品を成形後乾燥された状態で混合されたものであっても良い。また、本発明に係るシリアル食品において、穀物類の含有量は、60%以下であることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明に係るシリアル食品は、低カロリーであることが好ましいが、吸水して膨潤すると単位グラム当たりのカロリーが低くなるので、単位グラム当たりのカロリーは、高くても良い。例えば、1g当たり3kcalのシリアル食品が20倍吸水すると、1g当たり0.15kcalとなるので、単位グラム当たりのカロリーが高くても、総摂取カロリーを少なく満腹感を得ることができる。
【0016】
本発明に係るシリアル食品は、少量の摂取で満腹感を得ることができるが、たんぱく質、ビタミンやミネラルなどが不足なりがちとなるので、本発明に係るシリアル食品の加工時にこれら栄養素をバランス良く添加することが好ましい。
【実施例1】
【0017】
実施例1の原料として、寒天粉末(伊那食品工業製、S−7)12重量部、グアーガム粉末(伊那食品工業製、GR−10)46重量部、オート麦粉末(Popowich Milling Corp.製、ORGANIC QUICK ROLLED DATS)27重量部、及びトレハロース粉末(株式会社林原商事製、トレハ)15重量部を用意した。これら原料をエクストルーダー((株)日本製鋼所製、TEX−32F)を用いて連続的に3/10倍量の水とともに供給して加熱加圧処理を行なった。エクストルーダーのスクリューの構成は、ストレート形を基本とし、先端付近にニーディングスクリュー、パイナップル・エレメントを組んだ。処理条件は、加熱温度を120℃、加圧圧力を60kg/cm、スクリュー回転数を460rpmとした。エクストルーダーによって加熱・混練された原料は、ストランドダイスにより成型加工され、カッターにより10mm径に切断されることによって、実施例1に係る発泡粒状のシリアル食品を得た。
【0018】
この実施例1に係るシリアル食品を粗粉砕し、その粉砕したシリアル食品1gを50ccの日局崩壊試験法第一液(胃液)及び日局崩壊試験法第二液(腸液)それぞれに分散させ、体内温度である37℃で2時間放置したところ、胃液に分散させたシリアル食品は、17倍に膨潤し、腸液に分散させたシリアル食品は、15倍に膨潤した。比較例として市販のシリアル食品(日本ケロッグ社製、日清シスコ社製)を用意し、同様に試験を行なったところ、胃液に分散させたものは、5倍しか膨潤せず、腸液に分散させたものは、6倍しか膨潤しなかった。
【実施例2】
【0019】
次に、実施例2の原料として、寒天粉末(伊那食品工業製、S−7)15重量部、グルコマンナン粉末(伊那食品工業製、イナゲルマンナン100A)13重量部、カラギナン粉末(伊那食品工業製、イナゲルE−150)14重量部、キサンタンガム粉末(伊那食品工業製、イナゲルV−10)1重量部、ローカストビーンガム粉末(伊那食品工業製、イナゲルL−80)1重量部、サイリュームシードガム粉末(伊那食品工業製、イナゲルA−400)30重量部、オート麦粉末(Popowich Milling Corp.製、ORGANIC QUICK ROLLED DATS)16重量部、及びトレハロース粉末(株式会社林原商事製、トレハ)10重量部を用意した。これら原料をエクストルーダー((株)日本製鋼所製、TEX−32F)を用いて連続的に3/10倍量の水とともに供給して加熱加圧処理を行なった。エクストルーダーのスクリューの構成は、実施例1と同じにした。処理条件は、処理例1として加熱温度を120℃、加圧圧力を40kg/cm、スクリュー回転数を460rpmとし、処理例2として加熱温度を80℃、加圧圧力を40kg/cm、スクリュー回転数を460rpmとした。エクストルーダーによって加熱・混練された原料は、それぞれストランドダイスにより成型加工され、カッターにより10mm径に切断されることによって、実施例2に係る発泡粒状のシリアル食品を得た。
【0020】
この実施例2に係るシリアル食品を粗粉砕し、その粉砕したシリアル食品1gを50ccの胃液及び腸液それぞれに分散させ、体内温度である37℃で2時間放置した。胃液に分散させた処理例1のシリアル食品は、30倍に膨潤し、腸液に分散させた処理例1のシリアル食品は、26倍に膨潤した。また、胃液に分散させた処理例2のシリアル食品は、35倍に膨潤し、腸液に分散させた処理例1のシリアル食品は、27倍に膨潤した。このように加熱温度を上げることによって膨潤を抑制することができることが分かった。また、実施例2に係るシリアル食品は、クリスピー性に富んだ食感を有する。
【実施例3】
【0021】
次に、実施例3の原料として、寒天粉末(伊那食品工業製、S−7)30重量部、グルコマンナン粉末(伊那食品工業製、イナゲルマンナン100A)8重量部、カラギナン粉末(伊那食品工業製、イナゲルE−150)10重量部、キサンタンガム粉末(伊那食品工業製、イナゲルV−10)1重量部、ローカストビーンガム粉末(伊那食品工業製、イナゲルL−80)1重量部、サイリュームシードガム粉末(伊那食品工業製、イナゲルA−400)24重量部、オート麦粉末(Popowich Milling Corp.製、ORGANIC QUICK ROLLED DATS)6重量部、及びエリスリトール粉末(セレスター社製、Eridex16952)20重量部を用意した。これら原料をエクストルーダー((株)日本製鋼所製、TEX−32F)を用いて連続的に3/10倍量の水とともに供給して加熱加圧処理を行なった。エクストルーダーのスクリューの構成は、実施例1と同じにした。処理条件は、加熱温度を80℃、加圧圧力を30kg/cm、スクリュー回転数を460rpmとした。エクストルーダーによって加熱・混練された原料は、それぞれストランドダイスにより成型加工され、カッターにより10mm径に切断されることによって、実施例3に係る発泡粒状のシリアル食品を得た。
【0022】
この実施例3に係るシリアル食品を粗粉砕し、その粉砕したシリアル食品1gを50ccの水、胃液及び腸液それぞれに分散させ、体内温度である37℃で放置し、水に分散されたものは、5分後、10分後、20分後、30分後及び60分後の膨潤率(倍)を測定し、胃液及び腸液に分散されたものは、30分後、60分後、120分後、180分後、240分後及び300分後の膨潤率(倍)を測定した。膨潤率は、ガラス綿を用いてろ過したときのろ液の量(g)を測定し、数1に当てはめることによって計算した。また、比較として市販のシリアル(日本ケロッグ社製、日清シスコ社製)についても、同様に膨潤率を測定した。これらの結果を図1乃至3に示す。
【0023】
【数1】

【0024】
図2及び3に示すように、胃液に分散させたシリアル食品は、18倍に膨潤し、腸液に分散させたシリアル食品は、17倍に膨潤した。また、実施例3に係るシリアル食品は、クリスピー性に富んだ食感を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るシリアル食品の実施例3を水に分散させた場合の膨潤率と時間の関係を示すグラフである。
【図2】本発明に係るシリアル食品の実施例3を胃液に分散させた場合の膨潤率と時間の関係を示すグラフである。
【図3】本発明に係るシリアル食品の実施例3を腸液に分散させた場合の膨潤率と時間の関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局方崩壊試験法第一液又は局方崩壊試験法第二液及び水において膨潤可能な水溶性多糖類からなる膨潤成分と、該膨潤成分の膨潤を制御する膨潤抑制成分と、が含まれたことを特徴とするシリアル食品。
【請求項2】
前記膨潤成分と前記膨潤抑制成分の配合比は、95:5〜10:90であることを特徴とする請求項1記載のシリアル食品。
【請求項3】
穀物類の割合が60%以下であることを特徴とする請求項1又は2記載のシリアル食品。
【請求項4】
局方崩壊試験法第一液又は局方崩壊試験法第二液及び水において膨潤可能な水溶性多糖類からなる膨潤成分と、該膨潤成分の膨潤を制御する膨潤抑制成分と、が含まれたことを特徴とするシリアル補助食品。
【請求項5】
前記膨潤成分と前記膨潤抑制成分の配合比は、95:5〜10:90であることを特徴とする請求項1記載のシリアル補助食品。
【請求項6】
請求項4又は5記載のシリアル補助食品が成形後乾燥された状態で混合されていることを特徴とするシリアル食品。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−53929(P2007−53929A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240789(P2005−240789)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000118615)伊那食品工業株式会社 (95)
【Fターム(参考)】