説明

シリカ多孔質体およびその製造方法、並びにその利用

【課題】本発明は、従来よりも磨砕強度が向上したシリカ多孔質体およびその製造方法、並びにその利用を提供する。
【解決手段】ケイ酸カルシウムを酸処理し、これにより得られた固形分を分離回収し、該固形分を、pH4〜13にて水熱処理する。これにより、BET比表面積が5m/g〜100m/gであり、かつ、ハローの回折ピークの半価幅が5.70°〜8.20°であるシリカ多孔質体を製造することができる。該シリカ多孔質体は、上記BET比表面積およびハローの回折ピークの半価幅を有するため、磨砕強度が従来のシリカ多孔質体よりも向上している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ多孔質体およびその製造方法、並びにその利用に関するものであって、特に、磨砕強度が向上したシリカ多孔質体およびその製造方法、並びにその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリカ多孔質体は、板状、繊維状、球状など、様々な形状のものが合成可能である。例えば、シリカを含有した板状結晶は、種々のフィラーとして広く応用されている無機板状物質である。シリカを含有した板状結晶としては、具体的には、例えば、特許文献1には、タルクとケイフッ化アルカリもしくはフッ化アルカリの混合物を加熱処理して得られる合成膨潤性フッ素雲母の層間イオンをイオン交換して得られる合成フッ素雲母よりなり、機械的強度及び耐熱性に優れたマイカシートが開示されている。また、特許文献2には、資源量の多い結晶性シリカから固相法で製造されたフッ素雲母が開示されている。具体的には、(a)結晶性シリカ1モルと、(b)フッ化ナトリウム、フッ化カリウム及びフッ化バリウムの中から選ばれる金属フッ化物0.25〜0.75モルと、(c)フッ化リチウム0.2〜0.4モルと、(d)マグネシウム化合物及び遷移金属化合物の中から選ばれる金属化合物0.4〜0.6モルから成る混合物を加熱反応させて製造されたフッ素雲母が開示されている。さらに、水熱合成によって得られる層状ケイ酸塩として、特許文献3には、ケイ酸化合物の水溶液を、100〜150℃で水熱反応させて製造されたアイラアイト型層状ケイ酸塩が開示されている。
【0003】
このようなシリカ多孔質体は、比表面積が大きく、耐熱性に優れ、化学的に安定で、シラノール基を多数保有している。そのため、シリカ多孔質体は、フィラー、触媒担体、タンパク質やVOCガスなどの吸着剤、吸臭剤、濾過助剤など、幅広い用途に用いられている。
【0004】
ところで、シリカ多孔質体としては、一般的にはシリカゲルがよく知られているが、それ以外にも、シリカ多孔質体は、ケイ酸カルシウムを酸処理または炭酸化処理することにより製造できる。このようにケイ酸カルシウムを酸処理または炭酸化処理して製造されたシリカ多孔質は、例えば、特許文献4〜7に開示されている。
【0005】
具体的には、特許文献4には、シリカ原料と石灰原料をCa/Siモル比で0.2〜1.2の範囲で混合し、オ−トクレ−ブを使用して水溶液中で水熱反応させ、次いでこのけい酸カルシウムを炭酸化処理し、更に酸性溶液中で処理して製造された耐酸性けい酸カルシウム濾過助剤が開示されている。
【0006】
特許文献5には、シリカ原料と石灰原料とを、Siに対するCaのモル比が0.5〜1.4の範囲になる割合で混合し、水の存在下、70〜190℃の温度において水熱反応させ、次いで生成したケイ酸カルシウムスラリーに酸を加えてpH7未満に調整して沈殿を形成させたのち、固形分を分取し、乾燥して製造された耐酸性ろ過助剤が開示されている。
【0007】
特許文献6には、シリカ原料と石灰原料とを、CaO/SiO2モル比0.3〜1.2の割合で含有する水性スラリーを、70〜190℃の温度で加熱処理して水熱反応を行い、ケイ酸カルシウムを生成させ、次いでこのスラリーに30〜100℃の温度において所定量の酸を加えて処理したのち、固形分を分離回収し、乾燥することにより製造された耐酸性ケイ酸質系濾過助剤が開示されている。
【0008】
特許文献7には、珪酸カルシウム結晶の一次粒子及び/又は二次粒子に、水の存在下、炭酸化して得られる炭酸カルシウム及び非晶質シリカの混合物から両者の物性の差を利用して炭酸カルシウムを分離して製造された非晶質シリカが開示されている。
【0009】
さらに、シリカ多孔質体については、上記ケイ酸カルシウムを原料とする製造方法以外の製造方法で製造されたシリカ多孔質体も知られている。例えば、特許文献8には、シリカ粉体に塩基性の第四アンモニウム化合物の水溶液を添加して成形し、成形体を1300〜1450℃の温度で焼成して製造されたシリカ多孔体が開示されている。
【0010】
また、特許文献9および10には、有機珪素化合物から多孔質シリカ系粒子を製造する方法が開示されている。具体的には、特許文献9に開示される方法では、まず、有機珪素化合物の層と水の層とからなる二層分離液を調合し、次いで該有機珪素化合物層と該水層が完全に混合しない程度に撹拌しながら、前記水層中に有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤を添加して、該混合水溶液中で前記有機珪素化合物を部分加水分解および/または加水分解してシリカ系粒子前駆体を調製する。続いて、前記シリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液にアルミン酸ナトリウムを添加して、粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を調製する。その後、前記シリカ系粒子を洗浄して乾燥することにより、多孔質シリカ系粒子が製造できることが開示されている。
【0011】
また、特許文献10に開示される方法では、まず、有機珪素化合物の層と水の層とからなる二層分離液を調合し、次いで該有機珪素化合物層と該水層が完全に混合しない程度に撹拌しながら、前記水層中に有機溶媒、アルカリおよび界面活性剤を添加して、該混合水溶液中で前記有機珪素化合物を部分加水分解および/または加水分解してシリカ系粒子前駆体を調製する。続いて、前記シリカ系粒子前駆体を含む混合水溶液に珪酸アルカリを添加して、粒子内部に空孔部または空隙部を有するシリカ系粒子を調製する。その後、前記シリカ系粒子を洗浄して乾燥することにより、多孔質シリカ系粒子が製造できることが開示されている。
【特許文献1】特開平5−262514号公報(平成5(1993)年10月12日公開)
【特許文献2】特開平10−53408号公報(平成10(1998)年2月24日公開)
【特許文献3】特開平9−227116号公報(平成9(1997)年9月2日公開)
【特許文献4】特開平8−245215号公報(平成8(1996)年9月24日公開)
【特許文献5】特開平10−192700号公報(平成10(1998)年7月28日公開)
【特許文献6】特開平10−323559号公報(平成10(1998)年12月8日公開)
【特許文献7】特開平7−242409号公報(平成7(1995)年9月19日公開)
【特許文献8】特開2000−211979号公報(平成12(2000)年8月2日公開)
【特許文献9】特開2006−176343号公報(平成18(2006)年7月6日公開)
【特許文献10】特開2007−84396号公報(平成19(2007)年4月5日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
このように、シリカ多孔質体は、様々な製造方法により製造することができるが、シリカ多孔質体の磨砕強度の向上を図るための技術は、これまで開発されていない。ところが、シリカ多孔質体の用途によっては、シリカ多孔質体に磨砕強度が求められる。具体的には、例えば、シリカ多孔質体を化粧品用途に用いる場合、特許文献4〜7においてシリカ多孔質体の原料となるケイ酸カルシウム多孔質体が有する程度の磨砕強度が必要とされる。これに対して、特許文献1〜10に開示されるようなシリカ多孔質体の磨砕強度は、ケイ酸カルシウム多孔質体の磨砕強度よりも格段に低い。また、ケイ酸カルシウム多孔質体は、化粧品用途にも適用しうる磨砕強度を有するが、pHが12くらいと非常に高い。そのため、化粧品のような用途には用いることができない。
【0013】
そのため、化粧品用途のように、高い磨砕強度が求められる用途に用いることが可能なシリカ多孔質体の開発が求められている。
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、従来よりも磨砕強度が向上したシリカ多孔質体およびその製造方法、並びにその利用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ケイ酸カルシウムを酸処理し、脱カルシウムしたシリカ多孔質体を、さらに、水酸化ナトリウムや水ガラス等のアルカリを用い、水熱処理することにより、シリカ多孔質体の磨砕強度を向上させることが可能であることを独自に見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、以下の産業上有用な発明を包含する。
【0016】
(1)ケイ酸カルシウムを酸処理し、これにより得られた固形分を分離回収し、該固形分を、pH4〜13にて水熱処理することを特徴とするシリカ多孔質体の製造方法。
【0017】
(2)上記水熱処理は、水酸化ナトリウム、水ガラス、水酸化カリウム、およびアルミン酸ナトリウムからなる群より選択されるアルカリを用いて行うことを特徴とする(1)に記載のシリカ多孔質体の製造方法。
【0018】
(3)上記水熱処理は、20℃〜200℃で行うことを特徴とする(1)または(2)に記載のシリカ多孔質体の製造方法。
【0019】
(4)上記水熱処理は、0.5時間〜72時間行うことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のシリカ多孔質体の製造方法。
【0020】
(5)上記酸処理は、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、マレイン酸、乳酸、酸性陽イオン交換剤、およびガス状二酸化炭素からなる群より選択される酸性物質を用いて行うことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のシリカ多孔質体の製造方法。
【0021】
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載のシリカ多孔質体の製造方法を用いて製造されたことを特徴とするシリカ多孔質体。
【0022】
(7)BET比表面積は5m/g〜100m/gであり、かつ、ハローの回折ピークの半価幅は5.70°〜8.20°であることを特徴とするシリカ多孔質体。
【0023】
(8)(6)または(7)に記載のシリカ多孔質体を含有することを特徴とする組成物。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかるシリカ多孔質体は、以上のように、BET比表面積は5m/g〜100m/gであり、かつ、ハローの回折ピークの半価幅は5.70°〜8.20°であるため、磨砕によっても、シリカ原子の3次元的網目構造が保持される。それゆえ、本発明にかかるシリカ多孔質体は、磨砕強度が高いという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明にかかる一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
<I.シリカ多孔質体およびそれを含有する組成物>
本発明にかかるシリカ多孔質体は、従来のシリカ多孔質体と比較して、磨砕強度が向上したシリカ多孔質体であり、ハローの回折ピークの半価幅およびBET比表面積によって特定される。
【0027】
本明細書において、「半価幅」とは、回折したX線強度が回折角に対して示す曲線(回折強度曲線)のピーク強度の1/2の強度における回折強度曲線の幅を指し、2θで表わされる。また、「ハローの回折ピークの半価幅」とは、シリカ多孔質体のような非晶質体やガラス特有の2θが23°付近に見られる非干渉性散乱による連続的なハローの半価幅が意図される。上記半価幅は、粉末X線回折法により測定することができる。
【0028】
上記非干渉性散乱による連続的なハローの回折ピークの強度は、シリカ多孔質体におけるシリカ原子の3次元的網目構造の相違によって異なるものである。例えば、シリカ多孔質体の3次元的網目構造の中に、網目構造を切断するようなイオン(例えば、ナトリウムイオン)が挿入されると、上記ハローの回折ピークはブロードなピークとなる。
【0029】
また、本発明にかかるシリカ多孔質体は、後述するように、ケイ酸カルシウムを原料として製造されるが、原料に用いるケイ酸カルシウムの形態によっても、得られるシリカ多孔質体のハローの回折ピークの強度は異なる。
【0030】
このように、ハローの回折ピークの半価幅は、シリカ多孔質体の3次元的網目構造に影響されるパラメータである。このハローの回折ピークの半価幅が小さいシリカ多孔質体ほど、磨砕強度は高い傾向がある。具体的には、本発明にかかるシリカ多孔質体のハローの回折ピークの半価幅は、5.70°〜8.20°であり、好ましくは、6.00°〜7.90°である。
【0031】
一方、「BET比表面積」とは、BET法により算出した比表面積を指す。BET法は、単分子層吸着理論であるLangmuir理論を多分子層吸着に拡張した、比表面積の計算方法として最も有名な理論である。BET比表面積は、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。このBET比表面積が小さいシリカ多孔質体ほど、磨砕強度は高い傾向がある。具体的には、本発明にかかるシリカ多孔質体のBET比表面積は、5m/g〜100m/gであり、好ましくは、10m/g〜80m/gである。
【0032】
本発明にかかるシリカ多孔質体は、上記ハローの回折ピークの半価幅およびBET比表面積を有するため、磨砕によって、シリカ原子の3次元的網目構造が大きく破壊されることがない。それゆえ、従来にはない高い磨砕強度を有することができる。本発明にかかるシリカ多孔質体の磨砕強度は、後述の実施例に記載するように、瑪瑙乳鉢を用い、0.005gの試料を95gの乳棒の自重で30回転磨砕する前後の結晶構造を走査型電子顕微鏡(SEM)の像を比較することにより評価することができる。
【0033】
本発明にかかるシリカ多孔質体の形状は特に限定されるものではない。具体的には、例えば、板状、繊維状、球状等が挙げられる。また、本願発明のシリカ多孔質体の大きさについても特に限定されるものではない。具体的には、例えば、シリカ多孔質体の形状が球状の場合、その粒子サイズは、10μm〜200μm程度であることが好ましく、かさ密度は、0.05〜0.3程度であることが好ましい。このようなシリカ多孔質体は、後述する本発明にかかるシリカ多孔質体の製造方法を用いて、好適に製造することができる。
【0034】
本発明にかかるシリカ多孔質体は、以上のように、高い磨砕強度を有する。そのため、従来、シリカ多孔質体は種々のフィラーとして用いられてきたが、本発明にかかるシリカ多孔質体は、従来よりも広い用途のフィラーとして利用できる。また、本発明にかかるシリカ多孔質体は、化学的安定性に優れているため、化学的安定性を必要とする用途への利用も可能である。さらに、本発明にかかるシリカ多孔質体は、BET比表面積を自由にコントロールできるため、従来なしえなかった用途を含め、広範な用途に利用可能な機能性材料となりうる。加えて、本発明にかかるシリカ多孔質体は、シラノール基を多数保有している。そのため、親水性や疎水性を付与するための官能基を容易に付加することができる。それゆえ、従来なしえなかった用途を含め、広範な用途に利用可能な機能性材料となりうる。
【0035】
本発明にかかるシリカ多孔質体は、上記特性を有するため、シリカ多孔質体において磨砕強度が求められる用途に好適に用いることができる。具体的には、例えば、保温塗料や断熱塗料のフィラーとして球状シリカ多孔質体もしくは板状シリカ多孔質体を用いる場合、従来のシリカ多孔質体では、磨砕強度が低いため、塗料と該球状シリカ多孔質体もしくは板状シリカ多孔質体を混合するときに、攪拌混合の段階で崩壊し、保温塗料や断熱塗料としての効果が損なわれるという問題がある。しかし、本発明にかかるシリカ多孔質体によれば、磨砕強度が向上しているため、攪拌混合の段階で崩壊し、保温塗料や断熱塗料としての効果が損なわれることがない。
【0036】
また、別の例として、ろ過助剤として板状シリカ多孔質体や球状シリカ多孔質体を用いる場合、従来のシリカ多孔質体は、圧密によって崩壊するため、ろ過助剤としての効果が損なわれるという問題がある。しかし、本発明にかかるシリカ多孔質体によれば、磨砕強度が向上しているため、圧密によって崩壊されないため、ろ過助剤としての効果が損なわれることがない。
【0037】
さらに別の例として、繊維状シリカ多孔質体をプラスチックの補強フィラーとして用いる場合、従来のシリカ多孔質体は、磨砕強度が低いため、プツプツと切れて補強効果が損なわれるという問題がある。しかし、本発明にかかるシリカ多孔質体によれば、磨砕強度が向上しているため、補強効果が損なわれることがない。
【0038】
このように、本発明にかかるシリカ多孔質体は磨砕強度が向上しているため、様々な用途に好適に用いることができる。上記用途は、上記例示したものに限定されるものではない。具体的には、医療分野、食品分野、農薬分野、化粧品分野、環境分野などの産業分野に広く用いることができる。より具体的には、触媒担体、タンパクやその他の吸着剤、吸臭剤、濾過助剤、光拡散シ−ト、インクジェット記録用シ−ト、化粧品、トナ−、感光材料、顔料、太陽電池用基板、液晶表示装置、染料熱転写シ−ト、耐熱樹脂、紫外線遮断材、ガス検出素子等に用いることができる。
【0039】
本発明にかかるシリカ多孔質体を上述したような用途に用いる場合、本発明にかかるシリカ多孔質体を単独で用いてもよいし、本発明にかかるシリカ多孔質体と他の成分とを組み合わせて用いてもよい。つまり、本発明にかかるシリカ多孔質体を含有する組成物として用いてもよい。したがって、本発明には、本発明にかかるシリカ多孔質体を含有する組成物(以下、単に「本発明にかかる組成物」ともいう)も含まれる。以下、本発明にかかる組成物の一実施形態について説明する。
【0040】
本発明にかかる組成物は、本発明にかかるシリカ多孔質体を含有していればよく、その他の構成は特に限定されるものではない。具体的には、本発明にかかる組成物において、本発明にかかるシリカ多孔質体の含有量は特に限定されるものではなく、該組成物の用途に応じて、適宜設定すればよい。また、本発明にかかる組成物に含有されるシリカ多孔質体の形状も特に限定されず、例えば、球状、繊維状、および板状等のあらゆる形状のシリカ多孔質体のうち、いずれか1つの形状のシリカ多孔質体を単独で含有していてもよいし、複数の形状のシリカ多孔質体を組み合わせて含有していてもよい。
【0041】
さらに、本発明にかかる組成物に含有される、シリカ多孔質体以外の成分についても特に限定されず、該成分は、固体、液体、および気体の従来公知のいかなる物質であってもよい。また、これらの物質は、単独で含有されてもよいし、複数の物質が組み合わせて含有されていてもよい。
【0042】
本発明にかかる組成物の用途は、特に限定されるものではなく、本発明にかかるシリカ多孔質体の特性を用いるあらゆる用途に用いることができる。具体的には、触媒担体、タンパクやその他の吸着剤、吸臭剤、濾過助剤、光拡散シ−ト、インクジェット記録用シ−ト、化粧品、トナ−、感光材料、顔料、太陽電池用基板、液晶表示装置、染料熱転写シ−ト、耐熱樹脂、紫外線遮断材、ガス検出素子等に用いることができる。
【0043】
以下、本発明にかかる組成物の一実施形態として、化粧品組成物について、より具体的に説明する。
【0044】
本実施形態にかかる化粧品組成物は、無機フィラーとして本発明にかかるシリカ多孔質体を含有するものである。該シリカ多孔質体の含有量は特に限定されないが、具体的には、化粧品組成物の全重量に対して0.1重量%〜40重量%であることが好ましく、3重量%〜15重量%であることがより好ましく、3重量%〜8重量%であることがさらに好ましい。
【0045】
また、本実施形態にかかる化粧品組成物に含有されるシリカ多孔質体の形状は特に限定されるものではなく、球状、繊維状、板状などいかなる形状であってもよい。本実施形態にかかる化粧品組成物は、これら形状のシリカ多孔質体を単独で含有していてもよいし、異なる形状のシリカ多孔質体を組み合わせて含有していてもよい。なかでも、板状シリカ多孔質体を含有することが好ましい。
【0046】
上記構成によれば、他の材料と攪拌混合する段階で上記板状シリカ多孔質体が崩壊することがない。そのため、例えば、上記化粧品組成物を肌に塗った際、該板状シリカ多孔質体が肌の皺の間に入り込むことがなく、肌に透明感とスベスベ感とを与えることができる。
【0047】
本実施形態にかかる化粧品組成物は、本発明にかかるシリカ多孔質体以外に、化粧品として、また、生理学的に許容される成分、すなわち、皮膚に適合性のある、即ち、身体および顔の皮膚の如何なる部分にも適合性のある成分を含有する。該成分は、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、精製水、オイル、ワックス、脂肪酸、脂肪酸アルコール、脂肪酸エステル、界面活性剤、吸湿剤、増粘剤、抗酸化剤、粘度安定化剤、キレート剤、緩衝剤、防腐剤、低級アルコールなどを挙げることができる。
【0048】
上記オイルとしては、水素化植物性油、ヒマシ油、綿実油、オリーブ油、椰子脂、ホホバ油、およびアボカド油等を挙げることができる。上記ワックスとしては、蜜蝋、鯨蝋、カルナウバ、カンデリラ、モンタン、セレシン、液体パラフィン、およびラノリン等を挙げることができる。上記脂肪酸としては、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、およびオレイン酸等を挙げることができる。上記脂肪酸アルコールとしては、セチルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、パンテノール、ラノリンアルコール、ステアリルアルコール、およびヘキサデカノール等を挙げることができる。上記脂肪酸エステルとしては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、およびステアリン酸ブチル等を挙げることができる。
【0049】
上記界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウム、硫酸セチルナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸塩、およびN−アシルグルタミン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤;ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライドおよびステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤;アルキルアミノエチルグリシンヒドロクロライドおよびレシチン等の陽性界面活性剤;モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸ソルビタン、スクロース脂肪酸エステル、モノステアリン酸プロピレングリコール、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノパルミチン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ポリオキシエチレンココナッツ脂肪酸モノエタノールアニリド、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンヒマシ油、およびポリオキシエチレンラノリン等の非イオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0050】
上記吸湿剤としては、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、およびプロピレングリコールを挙げることができる。上記低級アルコールとしては、エタノール、およびイソプロパノールを挙げることができる。上記増粘剤としては、アルギン酸ナトリウム、カゼイン酸ナトリウム、ゼラチン寒天、キサンタンゴム、澱粉、セルロースエーテル(例えば、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポリビニールピロリドン、ポリビニールアルコール、ポリエチレングリコールおよびカルボキシメチルセルロースナトリウム等を挙げることができる。
【0051】
上記抗酸化剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびクエン酸等を挙げることができる。上記キレート剤としては、エデト酸二ナトリウム、およびエタンヒドロキシ二リン酸を挙げることができる。上記緩衝剤としては、クエン酸、クエン酸ナトリウム、硼酸、およびリン酸水素二ナトリウムを挙げることができる。上記防腐剤としては、メチルパラヒドロキシベンアート、エチルパラヒドロキシベンゾアート、ジヒドロ酢酸、サリチル酸、およびベンゾ酸を挙げることができる。
【0052】
本実施形態にかかる化粧品組成物は、さらに、必要に応じて、美白剤、保湿剤、抗炎症剤、抗バクテリア剤、抗真菌剤、ビタミン、紫外線遮断剤、抗生剤、ニキビ防止剤、香水、染料等を含有していてもよい。
【0053】
本実施形態にかかる化粧品組成物は、上記構成を有するため、薬液保持、保湿、発汗防止等といった従来のシリカ多孔質体が有する効果と、スベスベ感やシットリ感を付与するといった従来のマイカのような板状体が有する効果とを奏することができる。
【0054】
より詳しく説明すると、従来の化粧品組成物として、シリカ多孔質体を含有する組成物が知られている。このような化粧品組成物では、シリカ多孔質体として、球状シリカゲルおよびシリカゲルの破砕物が用いられている。シリカゲルは、該化粧品組成物において、薬液保持、保湿、発汗防止などの目的で使用されている。しかし、球状シリカゲルは、滑りすぎるなどという問題がある。一方、シリカゲルの破砕物は、ザラザラ感があるといった問題がある。
【0055】
また、従来の化粧品組成物では、シリカゲルの他に、マイカなどの板状体がフィラーとして併用されている。該化粧品組成物において、マイカはスベスベ感やシットリ感を与えるために用いられている。このマイカは、比表面積が小さく、シリカゲルのようなシリカ多孔質体がもつ機能は有しない。また、マイカはシリカ、アルミナやマグネシウムを主成分とする層状鉱物で、層間のずれを有する。そのため、透明感はない。また、結晶鉱物であるため、官能基を付加させにくい。
【0056】
これに対し、本実施形態にかかる化粧品組成物は、本発明にかかるシリカ多孔質体のうち、板状シリカ多孔質体を含む構成とすることができる。該板状シリカ多孔質体は、ケイ酸カルシウムからカルシウムを除去したものである。そのため、上述したように、無数のシラノ−ル基を保持している。その結果、該板状シリカ多孔質体は、簡単に表面改質することができる。また、該板状シリカ多孔質体は、単一の結晶からカルシウムを除去したものである。そのため、ガラス板と同程度の透光性がある。その結果、若い肌のシットリ感と透明感とを表現することができる。加えて、該板状シリカ多孔質体は、上述したように、表面改質を容易に行えるため、荒れた肌に対しても、様々な色を表現することができる。
【0057】
さらに、上記板状シリカ多孔質体は、多孔質であるため、薬液保持、保湿、発汗防止といった従来のシリカゲルが有する機能を有する。
【0058】
したがって、本実施形態にかかる化粧品組成物の構成によれば、薬液保持、保湿、発汗防止等といった機能に加えて、スベスベ感、シットリ感、および透明感等を付与するといった機能を併せ持つ化粧品組成物を実現することができる。
【0059】
<II.シリカ多孔質体の製造方法>
本発明にかかるシリカ多孔質体の製造方法は、ケイ酸カルシウムを酸処理し、これにより得られた固形分を分離回収する工程(以下、「脱カルシウム工程」ともいう)と、該固形分を、pH4〜13にて水熱処理する工程(以下、「水熱処理工程」ともいう)とを含んでいればよい。また、本発明にかかるシリカ多孔質体の製造方法は、上記ケイ酸カルシウムを製造する工程(以下、「ケイ酸カルシウム製造工程」ともいう)、および/または、上記水熱処理後に、シリカ多孔質体を分離回収し、洗浄および乾燥する工程(以下、「洗浄・乾燥工程」ともいう)を含んでいてもよい。
【0060】
以下、ケイ酸カルシウム製造工程、脱カルシウム工程、水熱処理工程、および洗浄・乾燥工程について、詳細に説明する。
【0061】
(A)ケイ酸カルシウム製造工程
ケイ酸カルシウム工程では、ケイ酸カルシウムを製造する。具体的には、まず、粉末のケイ酸原料と粉末の石灰原料とを、それぞれSiO2およびCaOに換算したときのモル比が所定の比となるように、混合する。続いて、該混合物を、水または水酸化アルカリ水溶液の中で水熱反応を行わせて、ケイ酸カルシウム含有スラリーを調製する。
【0062】
上記ケイ酸原料は、特に限定されるものではないが、例えば、水ガラス、石英、ケイ砂、非晶質ケイ酸、ホワイトカーボン、ナトリウム長石、カリ長石、ガラス、陶石、シラス、フライアッシュ、スラグ、およびパーライトなどのケイ酸含有物質を挙げることができる。これらのケイ酸原料は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
上記石灰原料もまた、特に限定されるものではないが、例えば、生石灰(酸化カルシウム)、および消石灰(水酸化カルシウム)などを用いることができる。これらの石灰原料は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
また、上記ケイ酸原料および石灰原料の粉末の粒子径は特に限定されるものではなく、スラリー中の分散性、水熱反応性、経済性、および分散したケイ酸カルシウムの形状安定性(例えば、(薄)板状化、繊維状化、および球状化)を考慮して設定すればよい。具体的には、平均粒子径が0.01μm〜50μmであることが好ましく、0.1μm〜20μmであることがより好ましく、0.1μm〜10μmであることがさらに好ましい。
【0065】
上記ケイ酸原料と石灰原料との混合割合は、特に限定されるものではなく、製造するケイ酸カルシウムの形状(例えば、(薄)板状、繊維状、および球状)、および経済性等を考慮して適宜設定すればよい。具体的には、ケイ酸原料および石灰原料をそれぞれSiO2およびCaOに換算したときのモル比(CaO/SiO2モル比)が0.2〜3.0となるように混合することが好ましい。上記範囲内であれば、未反応のケイ酸原料を少量にすることができるため、経済的に所望のケイ酸カルシウムを製造することができる。
【0066】
また、上記ケイ酸カルシウム製造工程において、薄板状ケイ酸カルシウムを製造する場合、上記混合物に、さらに、薄板状ケイ酸カルシウムの種結晶を添加することが好ましい。上記種結晶としては、あらかじめ粉末のケイ酸原料と粉末の石灰原料とを水または水酸化アルカリ水溶液中で水熱反応させて得られる反応混合物の中から、繊維状ケイ酸カルシウムおよび二次粒子凝集体のような夾雑物を除き、純粋な薄板状ケイ酸カルシウム結晶として回収したものが用いられる。
【0067】
上記種結晶の添加量は、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、上記ケイ酸原料のSiO2換算質量と上記石灰原料のCaO換算質量との合計量に基づき、0.002質量%〜5質量%の割合で添加さればよい。上記種結晶の大きさは特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、長径0.5μm〜50μm、厚さ0.05μm〜2μm、長径と厚さのアスペクト比0.25〜1000のものを用いることができる。上記種結晶の大きさを適宜変更することにより、得られる薄板状ケイ酸カルシウムの長さを0.5μm〜50μmの範囲で調節することができる。
【0068】
上記ケイ酸カルシウム製造工程において、上記水熱反応は、上記の条件で混合した粉末のケイ酸原料および粉末の石灰原料の混合物を、水または水酸化アルカリ水溶液中に分散させて行う。上記水酸化アルカリ水溶液は、特に限定されるものではないが、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのようなアルカリ金属水酸化物を水に溶解して調製したものを好適に用いることができる。また、これらのアルカリ金属水酸化物は、単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
また、上記水酸化アルカリ水溶液の濃度は、特に限定されるものではなく、生成するケイ酸カルシウムの結晶形態を所望に変化させたり、水熱反応を促進させたりするアルカリ添加効果が十分に得られるように設定すればよい。具体的には、0.01M〜1.0Mであることが好ましい。上記範囲をはずれる条件とすることも可能であるが、上記範囲よりも低濃度では、上記アルカリ添加効果が十分に得られないことがある。一方、上記範囲よりも高濃度としても、アルカリ添加効果の向上は小さい。
【0070】
上記ケイ酸原料と石灰原料を含む水または水酸化アルカリ水溶液スラリーの濃度は、特に限定されるものではなく、水熱反応性および体積効率などを考慮して、適宜設定すればよい。具体的には、上記ケイ酸原料と石灰原料との合計量に対し、水性溶媒を5〜50倍質量の割合で含むスラリーとすることが好ましい。
【0071】
上記水熱反応の反応条件(例えば、反応温度、反応時間および反応圧力)は、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、オートクレーブ中において、70℃〜250℃の温度の範囲で行うことができる。上記温度範囲内であれば、効率的に水熱反応を行うことができる。なお、上記温度範囲からはずれる温度条件であっても、水熱反応を行うことは可能であるが、例えば、70℃未満で水熱反応を行うと、反応速度が遅いため、反応に長時間を要する。一方、250℃を超える温度で水熱反応を行うと、自生圧力が高くなりすぎるため、装置面などにおいて経済的に不利になる。
【0072】
反応時間は、特に限定されるものではなく、スラリー濃度、原料の種類や粒度、反応温度などに応じて、適宜設定すればよい。通常は0.5時間〜24時間程度で十分である。
【0073】
上記水熱反応は、自生圧力下で進行するが、必要に応じて、加圧してもよい。また、上記水熱反応中に、反応速度を高めるために、必要に応じて撹拌を行ってもよい。
【0074】
(B)脱カルシウム工程
脱カルシウム工程では、ケイ酸カルシウムを酸処理し、これにより得られた固形分を分離回収する。上記ケイ酸カルシウムとしては、上記ケイ酸カルシウム製造工程で製造したケイ酸カルシウムを好適に用いることができるが、本発明はこれに限定されない。すなわち、上記ケイ酸カルシウム製造工程によらず、製造または入手されたケイ酸カルシウムを用いることができる。
【0075】
上記脱カルシウム工程では、酸性物質を用いて、ケイ酸カルシウムから、酸化カルシウムを除去する。このとき、ケイ酸カルシウムの形態を変化させることなく、酸化カルシウムを除去することが好ましい。
【0076】
上記酸性物質は特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、および炭酸のような無機酸;ギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、マレイン酸、乳酸、酸性陽イオン交換剤のような有機酸;およびガス状二酸化炭素等を挙げることができる。また、これらの酸性物質は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、上記無機酸は硝酸アンモニウムのような塩の形で用いることもできる。
【0077】
上記酸性物質のうち、例えば、塩酸、硝酸またはそれらの混合物を用いる場合、これらの酸性物質は、電離度が大きく、急激にpHを降下させる。そのため、pHが急激に降下しないように希釈した酸水溶液を徐々に添加することが好ましい。このように添加することにより、ケイ酸カルシウムの形態を変化させることなく、酸化カルシウムを除去することができる。また、ケイ酸カルシウムの結晶化度が大きい場合は、上記酸処理を室温(25℃)〜100℃の範囲で行うことが好ましい。これにより、より効率よく、ケイ酸カルシウムから酸化カルシウムを除去することができる。
【0078】
一方、酢酸や炭酸などのように電離度が小さい酸性物質を用いる場合、高濃度で直接ケイ酸カルシウムを処理しても、酸化カルシウムの除去は徐々に進行し、ケイ酸カルシウムの形態が維持されたまま、酸化カルシウムを除去することができる。また、電離度が小さい酸性物質を用いる場合、上記酸処理を室温(25℃)〜100℃の範囲に加熱して行うことが好ましい。これにより、該酸性物質の電離度が大きくなり、酸化カルシウムの除去が促進される。
【0079】
また、上記脱カルシウム工程において、上記酸処理の処理時間は特に限定されるものではなく、上記ケイ酸カルシウムの結晶化度、使用する酸の種類、濃度、処理条件などに応じて、設定すべきものである。一般的には、上記処理時間は、10分間〜24時間の範囲とすればよい。
【0080】
上記脱カルシウム工程では、上記の酸処理後、固形分を固液分離する。上記固形分を固液分離する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよい。なお、上記固形分は、従来のシリカ多孔質体である。つまり、本発明にかかるシリカ多孔質体とは異なり、磨砕強度の低いシリカ多孔質体である。
【0081】
(C)水熱処理工程
水熱処理工程では、上記脱カルシウム工程で得られた固形分(換言すれば、従来の磨砕強度が低いシリカ多孔質体)を、pH4〜13にて水熱処理する。具体的には、上記固形分をpH4〜13の水溶液中で水熱処理を行う。上記水熱処理は、pH4〜13で行えばよいが、pH6〜12で行うことが好ましく、pH9〜12で行うことがより好ましい。これにより、上記固形分のBET比表面積およびハローの回折ピークの半価幅を所望に低下させることができる。
【0082】
具体的には、上記固形分のハローの回折ピークの半価幅を1としたときに、上記水熱処理後に得られるシリカ多孔質体のハローの回折ピークの半価幅は、0.68〜0.99であることが好ましい。なお、本明細書において、上記水熱処理工程前の固形分(従来のシリカ多孔質体)のハローの回折ピークの半価幅を1としたときの、上記水熱処理後のシリカ多孔質体(本発明にかかるシリカ多孔質体)のハローの回折ピークの半価幅を、「半価幅比」ともいう。
【0083】
上記水溶液は、上記水熱処理を行うpHに応じて、適宜選択すればよい。例えば、水や、アルカリ水溶液を用いることができる。また、水やアルカリ水溶液に分散させた後、塩酸等の酸性物質で酸性のpHに調整して、上記水熱処理を行ってもよい。なかでも、上記水溶液としては、アルカリ水溶液を用いることが好ましい。上記アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水ガラス、水酸化カリウム、またはアルミン酸ナトリウムを用いることが好ましく、水酸化ナトリウムまたは水ガラスを用いることがより好ましく、水ガラスを用いることが特に好ましい。なお、水ガラスは水酸化ナトリウムにシリカを溶解させたものである。
【0084】
上記水熱処理を、水酸化ナトリウム水溶液中で行う場合、pHを高くすると、上記固形分であるシリカ多孔質体が溶解して消失する可能性がある。したがって、水酸化ナトリウム水溶液中で水熱処理を行う場合に、pHを12以上にするときには水熱処理時間を短時間にすることが好ましい。
【0085】
また、上記水熱処理を、水ガラス中で行う場合、水ガラスを多量に添加したり(pHが高くなる)、SiO/NaOモル比の高い水ガラスを多量に添加したり、高温で長時間ス熱処理を行ったりすると、水ガラスから多量のシリカが析出し、シリカ多孔質体の表面に微細なシリカ粒子が付着して表面がザラザラになると同時に、固液分離が困難になる傾向がある。そのため、これらの現象が起こらない条件で、水熱処理を行うことが好ましい。
【0086】
このように、上記水熱処理工程では、水熱処理に用いる水溶液の種類およびpHに応じて、処理時間、処理温度等を調節することが好ましい。具体的には、上記水熱処理の処理時間は、0.5時間〜72時間とすることが好ましく、1時間〜48時間とすることがより好ましく、1時間〜12時間とすることがさらに好ましい。また、処理温度は、室温(25℃)〜200℃とすることが好ましく、60℃〜180℃とすることがより好ましく、80℃〜150℃とすることがさらに好ましい。このような処理温度および処理時間で上記水熱処理を行えば、BET比表面積が5m/g〜100m/gであり、ハローの回折ピークの半価幅が5.7°〜8.2°であるシリカ多孔質体を得ることができる。
【0087】
また、上記水熱処理工程は、自生圧力下で行えばよいが、必要に応じて、加圧してもよい。
【0088】
(D)洗浄・乾燥工程
洗浄・乾燥工程では、上記水熱処理工程において得られたシリカ多孔質体を固液分離し、該シリカ多孔質体を洗浄後、乾燥させる。上記洗浄・乾燥工程において、シリカ多孔質体を固液分離する方法、洗浄方法、洗浄条件、乾燥方法、乾燥条件等は、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いればよい。
【0089】
上記工程を含む本発明にかかるシリカ多孔質体の製造方法によれば、上述した、本発明にかかるシリカ多孔質体を効率よく製造することができる。
【0090】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0091】
本発明について、実施例および比較例、並びに図1〜図8に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行うことができる。なお、以下の実施例および比較例における磨砕による形態変化、BET比表面積、およびX線回折によるハローの半価幅は、次のようにして評価した。
【0092】
〔磨砕による形態変化〕
瑪瑙乳鉢を用い、約0.005gの試料を95gの乳棒の自重で30回転磨砕した。その後、試料の形態変化(磨砕状態)を、SEMを用いて観察した。
【0093】
〔BET比表面積〕
BET比表面積測定装置を用い、250℃で十分に加熱脱気した試料について、窒素ガスを吸着させる多点法により比表面積を求めた。
【0094】
〔X線回折によるハローの半価幅〕
粉末X線回折法によって、非晶質体やガラス特有の2θが23°付近に見られる非干渉性散乱による連続的なハローの回折ピ−ク強度を測定した。次に、ハローの回折ピ−ク強度が半分の位置にあたる回折ピーク強度の幅、すなわち、ハローの半価幅(角度の単位で表示)を算出した。
【0095】
〔実施例1〕
CaO/SiOモル比が1.80の条件で、水熱反応を行い、板状ケイ酸カルシウム(CS11)を合成した。こうして得られた板状ケイ酸カルシウム(CS11)の結晶を走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」ともいう)にて観察した結果を図1(a)〜(c)に示す。なお、図1(a)〜(c)は、それぞれ、倍率、視野が異なるものである。
【0096】
次に、上記板状ケイ酸カルシウムを酸処理した後、このスラリーをろ過・洗浄し、乾燥することにより板状シリカ多孔質体(PS11)を得た。こうして得られた板状シリカ多孔質体の結晶をSEMにより観察した結果を図2(a)〜(c)に示す。なお、図2(a)〜(c)は、それぞれ、倍率、視野が異なるものである。また、板状シリカ多孔質体(PS11)の特性は、BET比表面積が160m/g、半価幅が8.00°であった。
【0097】
次に、板状シリカ多孔質体(PS11)1gを100mlの蒸留水に分散させて、0.25M水酸化ナトリウム水溶液を用いて、pH12に調整した。その後、オートクレーブに入れて140℃で2時間処理した後、このスラリーをろ過・洗浄し、乾燥することにより、板状シリカ多孔質体(PS3)を得た。
【0098】
こうして得られた板状シリカ多孔質体(PS3)を磨砕したのち、磨砕による形態変化をSEMにて観察した。その結果を図3(a)〜(c)に示す。なお、図3(a)〜(c)は、それぞれ、倍率、視野が異なるものである。図3(a)〜(c)に示すように、板状シリカ多孔質体(PS3)は、磨砕後もある程度板状の形態を維持していた。このことから、板状シリカ多孔質体(PS3)は、磨砕強度が向上していることが確認できた。
【0099】
この板状シリカ多孔質体(PS3)の特性は、BET比表面積が64m/g、半価幅が7.43゜であり、板状シリカ多孔質体(PS11)との半価幅の比は0.93であった。
【0100】
〔実施例2〕
実施例1で得た板状シリカ多孔質体(PS11)1gを100mlの蒸留水に分散させて、水ガラス(SiO/NaOモル比5;溶液濃度10%)を用いてpH11に調整した。その後、オートクレーブに入れて180℃で8時間処理した後、このスラリーをろ過・洗浄し、乾燥することにより板状シリカ多孔質体(PS1)を得た。こうして得られた板状シリカ多孔質体(PS1)を磨砕したのち、磨砕による形態変化をSEMにて観察したところ、磨砕強度が向上していることが確認できた。
【0101】
この板状シリカ多孔質体(PS1)の特性は、BET比表面積が28m/g、半価幅が6.00゜であり、板状シリカ多孔質体(PS11)との半価幅の比は0.75であった。
【0102】
〔実施例3〕
実施例1で得た板状シリカ多孔質体(PS11)1gを100mlの蒸留水に分散させて、水ガラス(SiO/NaOモル比3.4;溶液濃度20%)を用いてpH11に調整した。その後、オートクレーブに入れて140℃で8時間処理した後、このスラリーをろ過・洗浄し、乾燥することにより板状シリカ多孔質体(PS8)を得た。こうして得られた板状シリカ多孔質体(PS8)を磨砕したのち、磨砕による形態変化をSEMにて観察した。その結果を図4(a)〜(c)に示す。なお、図4(a)〜(c)は、それぞれ、倍率、視野が異なるものである。図4(a)〜(c)に示すように、板状シリカ多孔質体(PS8)は、磨砕後もある程度板状の形態を維持していた。このことから、磨砕強度が向上していることが確認できた。
【0103】
この板状シリカ多孔質体(PS8)の特性は、BET比表面積が12m/g、半価幅が7.14゜であり、板状シリカ多孔質体(PS11)との半価幅の比は0.89であった。
【0104】
〔実施例4〕
実施例1で得た板状シリカ多孔質体(PS11)1gを100mlの蒸留水に分散させて、水ガラス(SiO/NaOモル比3.4;溶液濃度20%)を用いてpH11.4に調整した。その後、オートクレーブに入れて140℃で8時間処理した後、このスラリーをろ過・洗浄し、乾燥することにより板状シリカ多孔質体(PS2)を得た。こうして得られた板状シリカ多孔質体(PS2)を磨砕したのち、磨砕による形態変化をSEMにて観察したところ、磨砕強度が向上していることが確認できた。
【0105】
この板状シリカ多孔質体(PS2)の特性は、BET比表面積が17m/g、半価幅が6.57゜であり、板状シリカ多孔質体(PS11)との半価幅の比は0.82であった。
【0106】
〔実施例5〕
実施例1で得た板状シリカ多孔質体(PS11)1gを100mlの蒸留水に分散させて、水ガラス(SiO/NaOモル比3.4;溶液濃度20%)を用いてpH11に調整した。その後、オートクレーブに入れて95℃で4時間処理した後、このスラリーをろ過・洗浄し、乾燥することにより板状シリカ多孔質体(PS16)を得た。こうして得られた板状シリカ多孔質体(PS16)を磨砕したのち、磨砕による形態変化をSEMにて観察した。その結果を図5(a)〜(c)に示す。なお、図5(a)〜(c)は、それぞれ、倍率、視野が異なるものである。図5(a)〜(c)に示すように、板状シリカ多孔質体(PS16)は、磨砕後もある程度板状の形態を維持していた。このことから、磨砕強度が向上していることが確認できた。
【0107】
この板状シリカ多孔質体(PS16)の特性は、BET比表面積が42m/g、半価幅が7.71゜であり、板状シリカ多孔質体(PS11)との半価幅の比は0.96であった。
【0108】
〔実施例6〕
実施例1で得た板状シリカ多孔質体(PS11)1gを100mlの蒸留水に分散させて、水ガラス(SiO/NaOモル比3.4;溶液濃度20%)を用いてpH11.3に調整した。その後、オートクレーブに入れて60℃で8時間処理した後、このスラリーをろ過・洗浄し、乾燥することにより板状シリカ多孔質体(PS18)を得た。こうして得られた板状シリカ多孔質体(PS18)を磨砕したのち、磨砕による形態変化をSEMにて観察した。その結果を図6(a)〜(c)に示す。なお、図6(a)〜(c)は、それぞれ、倍率、視野が異なるものである。図6(a)〜(c)に示すように、板状シリカ多孔質体(PS18)は、磨砕後もある程度板状の形態を維持していた。このことから、磨砕強度が向上していることが確認できた。
【0109】
この板状シリカ多孔質体(PS18)の特性は、BET比表面積が11m/g、半価幅が7.86゜であり、板状シリカ多孔質体(PS11)との半価幅の比は0.98であった。
【0110】
〔実施例7〕
実施例1で得た板状シリカ多孔質体(PS11)1gを100mlの蒸留水に分散させた。そのときのpHは6であった。次に、該分散液をオートクレーブに入れて140℃で48時間処理した後、このスラリーをろ過・洗浄し、乾燥することにより板状シリカ多孔質体(PS4)を得た。こうして得られた板状シリカ多孔質体(PS4)を磨砕したのち、磨砕による形態変化をSEMにて観察したところ、磨砕強度が向上していることが確認できた。
【0111】
この板状シリカ多孔質体(PS4)の特性は、BET比表面積が49m/g、半価幅が6.86゜であり、板状シリカ多孔質体(PS11)との半価幅の比は0.86であった。
【0112】
〔実施例8〕
CaO/SiOモル比が1.50の条件で、水熱反応を行い、繊維状ケイ酸カルシウム(CS10)を合成した。続いて、繊維状ケイ酸カルシウム(CS10)を酸処理した後、このスラリーをろ過・洗浄し、乾燥することにより繊維状シリカ多孔質体(PS5)を得た。この繊維状シリカ多孔質体(PS5)の特性は、BET比表面積が440m/g、半価幅が8.14゜であった。
【0113】
次に、繊維状シリカ多孔質体(PS5)1gを100mlの蒸留水に分散させて、水ガラス(SiO/NaOモル比3.4;溶液濃度20%)を用いてpH11に調整した。その後、オートクレーブに入れて140℃で8時間処理した後、このスラリーをろ過・洗浄し、乾燥することにより繊維状シリカ多孔質体(PS6)を得た。こうして得られた繊維状シリカ多孔質体(PS6)を磨砕したのち、磨砕による形態変化をSEMにて観察したところ、磨砕強度が向上していることが確認できた。
【0114】
この繊維状シリカ多孔質体(PS6)の特性は、BET比表面積が39m/g、半価幅が6.86゜であり、繊維状シリカ多孔質体(PS6)との半価幅の比は0.84であった。
【0115】
〔実施例9〕
CaO/SiOモル比が0.60の条件で、水熱反応を行い、球状ケイ酸カルシウム(CS12)を合成した。続いて、球状ケイ酸カルシウム(CS12)を酸処理した後、このスラリーをろ過・洗浄し、乾燥することにより球状シリカ多孔質体(PS7)を得た。この球状シリカ多孔質体(PS7)の特性は、BET比表面積が420m/g、半価幅が8.71゜であった。
【0116】
次に、球状シリカ多孔質体(PS7)1gを100mlの蒸留水に分散させて、水ガラス(SiO/NaOモル比3.4;溶液濃度20%)を用いてpH11に調整した。その後、オートクレーブに入れて140℃で8時間処理した後、このスラリーをろ過・洗浄し、乾燥することにより球状シリカ多孔質二次粒子凝集体(PS9)を得た。こうして得られた球状シリカ多孔質体(PS9)を磨砕したのち、磨砕による形態変化をSEMにて観察したところ、磨砕強度が向上していることが確認できた。
【0117】
この球状シリカ多孔質二次粒子凝集体(PS9)の特性は、BET比表面積が59m/g、半価幅が6.29゜であり、球状シリカ多孔質体(PS9)との半価幅の比は0.72であった。
【0118】
ここで、実施例1〜9について考察する。
【0119】
板状シリカ多孔質体(PS11)、繊維状シリカ多孔質体(PS5)、および球状シリカ多孔質体(PS7)は、ケイ酸カルシウムから酸処理によってカルシウムが除去されたシリカ多孔質体である。これらシリカ多孔質体は、シリカ分子4面体同士の結合が十分ではなく、シリカ分子4面体同士が結合していない欠陥が多数存在する。そのため、高い比表面積を有する。
【0120】
実施例1に示すように、板状シリカ多孔質体(PS11)を水酸化ナトリウム水溶液中で水熱処理したときにシリカ多孔質体の磨砕強度が向上したのは、シリカの三次元網目構造の再配列によりある程度規則性のある三次元網目構造となり、シリカ多孔質体がある程度溶解することによって大きくなった細孔(換言すれば、上記シリカ分子4面体同士が結合していない欠陥)を塞いだためであると考えられる。
【0121】
また、実施例2〜6、および8〜9に示すように、板状シリカ多孔質体(PS11)、繊維状シリカ多孔質体(PS6)、および球状シリカ多孔質体(PS9)を水ガラス水溶液中で水熱処理したときに、各シリカ多孔質体の磨砕強度が向上したのは、水ガラス中のシリカが析出し、シリカ多孔質体の溶解を極力抑制した状態で、析出したシリカがシリカ多孔質体の細孔(換言すれば、上記シリカ分子4面体同士が結合していない欠陥)を塞ぐと同時に、上記同様にシリカの三次元網目構造の再配列によりある程度規則性のある三次元網目構造となったためであると考えられる。
【0122】
さらに、実施例7に示すように、板状シリカ多孔質体(PS11)を水に分散させて水熱処理したときに、シリカ多孔質体の磨砕強度が向上したのは、水熱処理することによってシリカ分子4面体にゆるみが生じ、最も安定な状態をとろうという作用により、上記欠陥部分が修復されると同時に、水熱処理によって遊離した少量のシリカ分子が欠陥部分を修復したためと考えられる。この場合、実施例1〜6の場合と比較して、シリカ多孔質体が安定しているため、高温・長時間の水熱処理が必要であった。
【0123】
〔参考例1〕
製造例1で得られた板状ケイ酸カルシウム(CS11)を磨砕し、磨砕による形態変化をSEMにより観察した。その結果を、図7(a)〜(c)に示す。なお、図7(a)〜(c)は、それぞれ、倍率、視野が異なるものである。図7(a)〜(c)に示されるように、板状ケイ酸カルシウム(CS11)は、磨砕によっては、板状の形態が、完全には破砕されないことが分かった。
【0124】
〔比較例1〕
CaO/SiOモル比が1.80で水熱合成した板状ケイ酸カルシウムを酸処理した後、このスラリーをろ過・洗浄し、乾燥することにより板状シリカ多孔質体(PS11)を得た。こうして得られた板状シリカ多孔質体(PS18)を磨砕したのち、磨砕による形態変化をSEMにて観察した。その結果を図8(a)〜(c)に示す。なお、図8(a)〜(c)は、それぞれ、倍率、視野が異なるものである。図8(a)〜(c)に示されるように、板状ケイ酸カルシウム(CS11)は、磨砕によって、板状の形態が、ほぼ完全に破砕されていた。
【0125】
この板状シリカ多孔質体(PS11)の特性は、BET比表面積が160m/g、半価幅が8.00゜であった。
【0126】
〔比較例2〕
実施例8で製造した繊維状シリカ多孔質体(PS5)を磨砕したのち、磨砕による形態変化をSEMにて観察したところ、磨砕によって、繊維状の形態が、ほぼ完全に破砕されていた。
【0127】
この繊維状シリカ多孔質体(PS5)の特性は、BET比表面積が440m/g、半価幅が8.14゜であった。
【0128】
〔比較例3〕
実施例9で製造した球状シリカ多孔質体(PS7)を磨砕したのち、磨砕による形態変化をSEMにて観察したところ、磨砕によって、球状の形態が、ほぼ完全に破砕されていた。
【0129】
この球状シリカ多孔質二次粒子凝集体(PS7)の特性は、BET比表面積が420m/g、半価幅が8.71゜であった。
【0130】
〔比較例4〕
和光純薬から購入した乾燥用シリカゲルについて、その特性を調べたところ、BET比表面積が390m/g、半価幅が8.71°であった。
【0131】
〔比較例5〕
水ガラスと硫酸とを反応させてシリカと硫酸ナトリウムに分離し、その後、硫酸ナトリウムを水洗除去してシリカゲルを得た。該シリカゲルの特性は、BET比表面積は、約600m/gであった。また、水ガラスと硫酸との反応をpH条件(酸性〜アルカリ性)を変化させて行うことにより、BET比表面積は約200m/g〜1000m/gまで変化した。
【0132】
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明は、触媒担体、タンパクやその他の吸着剤、吸臭剤、濾過助剤、光拡散シ−ト、インクジェット記録用シ−ト、化粧品、トナ−、感光材料、顔料、太陽電池用基板、液晶表示装置、染料熱転写シ−ト、耐熱樹脂、紫外線遮断材、ガス検出素子、各種のフィラ−など巾広い用途を有する。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】図1(a)〜(c)は、実施例1における板状ケイ酸カルシウム(CS11)の結晶を走査型顕微鏡で観察したSEM像を示す図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、実施例1における板状シリカ多孔質体(PS11)の結晶を走査型顕微鏡で観察したSEM像を示す図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、実施例1にかかる板状シリカ多孔質体(PS3)の磨砕後の結晶状態を走査型顕微鏡で観察したSEM像を示す図である。
【図4】図4(a)〜(c)は、実施例3にかかる板状シリカ多孔質体(PS8)の磨砕後の結晶状態を走査型顕微鏡で観察したSEM像を示す図である。
【図5】図5(a)〜(c)は、実施例5にかかる板状シリカ多孔質体(PS16)の磨砕後の結晶状態を走査型顕微鏡で観察したSEM像を示す図である。
【図6】図6(a)〜(c)は、実施例6にかかる板状シリカ多孔質体(PS18)の磨砕後の結晶状態を走査型顕微鏡で観察したSEM像を示す図である。
【図7】図7(a)〜(c)は、参考例1にかかる板状ケイ酸カルシウム(CS11)の磨砕後の結晶状態を走査型顕微鏡で観察したSEM像を示す図である。
【図8】図8(a)〜(c)は、比較例1にかかる板状シリカ多孔質体(PS11)の磨砕後の結晶状態を走査型顕微鏡で観察したSEM像を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ酸カルシウムを酸処理し、これにより得られた固形分を分離回収し、
該固形分を、pH4〜13にて水熱処理することを特徴とするシリカ多孔質体の製造方法。
【請求項2】
上記水熱処理は、水酸化ナトリウム、水ガラス、水酸化カリウム、およびアルミン酸ナトリウムからなる群より選択されるアルカリを用いて行うことを特徴とする請求項1に記載のシリカ多孔質体の製造方法。
【請求項3】
上記水熱処理は、20℃〜200℃で行うことを特徴とする請求項1または2に記載のシリカ多孔質体の製造方法。
【請求項4】
上記水熱処理は、0.5時間〜72時間行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリカ多孔質体の製造方法。
【請求項5】
上記酸処理は、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、マレイン酸、乳酸、酸性陽イオン交換剤、およびガス状二酸化炭素からなる群より選択される酸性物質を用いて行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリカ多孔質体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれ1項に記載のシリカ多孔質体の製造方法を用いて製造されたことを特徴とするシリカ多孔質体。
【請求項7】
BET比表面積は5m/g〜100m/gであり、かつ、
ハローの回折ピークの半価幅は5.70°〜8.20°であることを特徴とするシリカ多孔質体。
【請求項8】
請求項6または7に記載のシリカ多孔質体を含有することを特徴とする組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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