説明

シリカ系中空粒子の製造方法およびコア・シェル粒子の製造方法

【課題】効率よくシリカ系被覆膜の形成を行うことができるシリカ系中空粒子の製造方法、およびコア・シェル粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るシリカ系中空粒子の製造方法は、下記工程(A)〜(D)を含む。
(A)炭酸カルシウム粒子と、オキソ酸およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含有する水系媒体を加熱処理する工程、
(B)前記加熱処理後の炭酸カルシウム粒子を洗浄する工程、
(C)下記一般式(1)で表される化合物、ケイ酸およびケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を塩基性触媒の存在下で加水分解縮合して、前記炭酸カルシウム粒子を被覆するシリカ系被覆層を形成して、コア・シェル粒子を得る工程、および、
Si(OR4−d …(1)
(式中、R、Rは独立して1価の有機基を表し、dは0〜3の整数を示す。)
(D)シリカ系被覆層が形成されたコア・シェル粒子から炭酸カルシウムの一部または全部を除去する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ系中空粒子の製造方法およびコア・シェル粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医薬や化粧品、光学分野で使用可能な機能性中空粒子の開発が行われている。機能性中空粒子の中でも、透明性および強度に優れ、かつ屈折率の低いシリカ系被覆層を有する中空粒子が特に注目されている。
【0003】
その製法としては、例えば、エアロゾル法により基本粒子を製造し加熱および乾燥する方法、金属化合物水性ゾルを噴霧および乾燥し焼成する方法、W/O型またはO/W/O型エマルジョンを調製し加熱して水および油を除去する方法等が提案されている。しかしながら、これらの製法により得られた中空粒子はいずれも強度不足であり、またその粒子径分布に広がりをもつ傾向にある。
【0004】
そこで、これらの課題を解決するために、特許文献1では、炭酸カルシウム等の支持体粒子上にケイ酸塩を酸処理により沈積させてシリカ被膜を形成した後、分離、乾燥し、酸で支持体を溶出する製造方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、以下のような製造方法が提案されている。透過型電子顕微鏡法による一次粒子径が20〜200nmの炭酸カルシウムを水系にて調製し、静的光散乱法による粒子径が20〜700nmになるように熟成させる。その後、脱水して含水ケーキの状態とし、該含水ケーキをアルコール中に分散させる。そこに、アンモニア水、水、シリコンアルコキシドを、シリコンアルコキシド/アルコールの体積比を0.002〜0.1、アンモニア水に含有されるアンモニアをシリコンアルコキシド1モルに対して4〜15モル、水をシリコンアルコキシド1モルに対して25〜200モルとなるように添加することにより、シリカでコーティングされた炭酸カルシウムを調製する。その後、アルコールおよび水による洗浄を行い、再び含水ケーキとし、該含水ケーキを水に分散させ、酸を添加して、液の酸濃度を0.1〜3モル/Lとし炭酸カルシウムを溶解させる。これにより、緻密なシリカ殻からなる中空状粒子であって、透過型電子顕微鏡法による一次粒子径が30〜300nm、静的光散乱法による粒子径が30〜800nm、水銀圧入法により測定される細孔分布において2〜20nmの細孔が検出されないことを特徴とするシリカナノ中空粒子を得ることができる。
【0006】
しかしながら、上記従来の製造方法では、シリカ系被覆層を形成する際にどうしても独立したシリカ粒子が生成してしまい、炭酸カルシウム粒子の表面にシリカ系被覆層を形成するよりも独立したシリカ粒子の結晶成長が優先的に進行してしまうため、炭酸カルシウム粒子の表面にシリカ系被覆層を形成させるのに時間を要してしまうといった問題があった。さらには、炭酸カルシウム粒子の表面にシリカ系被覆層がほとんど形成されないといった問題があった。
【特許文献1】特表2000−500113号公報
【特許文献2】特開2006−263550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、効率よくシリカ系被覆膜の形成を行うことができるシリカ系中空粒子の製造方法、およびコア・シェル粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るシリカ系中空粒子の製造方法は、下記工程(A)〜(D)を含む。
(A)炭酸カルシウム粒子と、オキソ酸およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含有する水系媒体を加熱処理する工程、
(B)前記加熱処理後の炭酸カルシウム粒子を洗浄する工程、
(C)下記一般式(1)で表される化合物、ケイ酸およびケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を塩基性触媒の存在下で加水分解縮合して、前記炭酸カルシウム粒子を被覆するシリカ系被覆層を形成して、コア・シェル粒子を得る工程、および、
Si(OR4−d …(1)
(式中、R、Rは独立して1価の有機基を表し、dは0〜3の整数を示す。)
(D)シリカ系被覆層が形成されたコア・シェル粒子から炭酸カルシウムの一部または全部を除去する工程。
【0009】
本発明に係るシリカ系中空粒子の製造方法において、前記オキソ酸およびそれらの塩は、リン酸、アルミン酸、ケイ酸およびそれらの塩であることができる。
【0010】
本発明に係るシリカ系中空粒子の製造方法において、前記工程(A)は、触媒の非存在下で行うことができる。
【0011】
本発明に係るシリカ系中空粒子の製造方法において、前記工程(D)は、限外ろ過法を用いて行うことができる。
【0012】
本発明に係るシリカ系中空粒子の製造方法において、さらに、(E)前記工程(D)で得られたシリカ系中空粒子を水熱処理する工程、を含むことができる。
【0013】
本発明に係るコア・シェル粒子の製造方法は、下記工程(A)〜(C)を含む。
(A)炭酸カルシウム粒子と、オキソ酸およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含有する水系媒体を加熱処理する工程、
(B)前記加熱処理後の炭酸カルシウム粒子を洗浄する工程、および、
(C)下記一般式(1)で表される化合物、ケイ酸およびケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を塩基性触媒の存在下で加水分解縮合して、前記炭酸カルシウム粒子を被覆するシリカ系被覆層を形成する工程。
Si(OR4−d …(1)
(式中、R、Rは独立して1価の有機基を表し、dは0〜3の整数を示す。)
【0014】
本発明に係るコア・シェル粒子の製造方法において、前記オキソ酸およびそれらの塩は、リン酸、アルミン酸、ケイ酸およびそれらの塩であることができる。
【0015】
本発明に係るコア・シェル粒子の製造方法において、前記工程(A)は、触媒の非存在下で行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
上記コア・シェル粒子の製造方法によれば、炭酸カルシウムをリン酸等と反応させて炭酸カルシウム粒子を改質することにより、その表面にシリカ系被覆膜を形成させるための起点を設けることができる。また、炭酸カルシウム粒子を改質せずにその表面にシリカ系被覆膜を形成させると、副生成物として独立シリカ粒子が生成されるが、上記コア・シェル粒子の製造方法によれば、該独立シリカ粒子の生成を抑制することもできる。
【0017】
上記シリカ系中空粒子分散体の製造方法によれば、上記の製造方法により得られたコア・シェル粒子を用いるため、シェルの厚さがほぼ均等な中空粒子を形成することができる。上記製造方法により得られたシリカ系中空粒子分散体は、低屈折率を実現することができるため、例えば、反射防止膜等の用途に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係るコア・シェル粒子の製造方法およびシリカ系中空粒子分散体の製造方法について具体的に説明する。
【0019】
1.コア・シェル粒子の製造方法
本発明の一実施形態に係るコア・シェル粒子の製造方法は、下記工程(A)〜(C)を含む。
(A)炭酸カルシウム粒子と、オキソ酸およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含有する水系媒体を加熱処理する工程、
(B)前記加熱処理後の炭酸カルシウム粒子を洗浄する工程、および、
(C)下記一般式(1)で表される化合物、ケイ酸およびケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を塩基性触媒の存在下で加水分解縮合して、前記炭酸カルシウム粒子を被覆するシリカ系被覆層を形成する工程。
Si(OR4−d …(1)
(式中、R、Rは独立して1価の有機基を表し、dは0〜3の整数を示す。)
以下、本実施形態に係るコア・シェル粒子の製造方法の各工程について説明する。
【0020】
なお、工程(A)〜(C)は、コア・シェル粒子の乾燥工程は設けず、全て溶媒存在下の条件で行うことが望ましい。数十ナノメートルサイズの粒子が乾燥し一旦凝集してしまうと、再分散させることが難しくなる場合があるためである。
【0021】
1.1 工程(A)
工程(A)は、炭酸カルシウム粒子と、オキソ酸およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含有する水系媒体を含有する分散体を加熱する前処理工程である。例えば、炭酸カルシウム粒子をコア粒子として、リン酸水溶液中に分散させ、温度50〜80℃の条件で0.5〜3時間撹拌することにより、炭酸カルシウム粒子の改質を行うことができる。
【0022】
コア粒子としては、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、アルミニウム、鉄等の無機材料を用いることができる。後の工程を考慮すると、酸で分解されやすく、水への溶解性が低く、高分子化合物ではなく、アルカリ〜弱アルカリ性を示す無機材料であることが好ましく、これらの条件を全て満たす炭酸カルシウムであることが特に好ましい。また、炭酸カルシウムは、工業的に汎用されており、安価で入手することができるため製造コストを抑えることができる。
【0023】
炭酸カルシウム粒子の粒子径は、目的とするコア・シェル粒子または中空粒子のサイズによるが、中空粒子の強度を得るためには、動的光散乱法により測定される平均粒子径が5〜300nmであることが好ましく、10〜100nmであることが特に好ましい。
【0024】
本実施形態で用いる水系媒体は、水以外に他の液体を含んでいても特に問題はないが、通常水の含有量が50質量%以上であり、75質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、水のみからなる媒体であることが特に好ましい。
【0025】
オキソ酸としては、リン酸、アルミン酸、ケイ酸、ヨウ素酸、ホウ酸、塩素酸、クロム酸、アンチモン酸等を挙げることができる。この中でも、リン酸、アルミン酸、またはケイ酸と炭酸カルシウムを反応させた場合に、工程(C)において炭酸カルシウム粒子の表面により効率よくシリカ系被覆層を形成することができる。ケイ酸としては、オルトケイ酸、メタケイ酸、メタ二ケイ酸等を挙げることができる。リン酸としては、ペルオキソリン酸、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、亜リン酸、次リン酸、次亜リン酸等を挙げることができる。
【0026】
ここで、オキソ酸としてケイ酸を用いた場合、独立したシリカ粒子の生成を抑制するため、工程(A)は触媒の非存在下で行われることが好ましい。すなわち、一旦独立したシリカ粒子が生成した場合には、ケイ酸は炭酸カルシウム粒子と反応するよりも、独立したシリカ粒子の結晶成長に優先的に寄与してしまうと考えられるためである。
【0027】
1.2 工程(B)
工程(B)は、工程(A)でオキソ酸およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物と反応させた炭酸カルシウム粒子を洗浄する工程である。反応後の炭酸カルシウム粒子を、例えば水で充分に洗浄することにより、未反応のオキソ酸等を除去することができる。ここで、洗浄後の炭酸カルシウム粒子を蒸留水に分散させ、次工程で使用するための分散液を調製しておくとよい。
【0028】
1.3 工程(C)
上記一般式(1)で表される化合物(以下、「化合物1」ともいう。)、ケイ酸およびケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を塩基性触媒の存在下で加水分解縮合して、炭酸カルシウム粒子を被覆するシリカ系被覆層を形成して、コア・シェル粒子を得る工程である。工程(A)において、炭酸カルシウムとリン酸等を反応させて炭酸カルシウム粒子を改質させると、シリカ系被覆層を形成するための起点を設けることができるようになると推察される。これにより、工程(C)において、効率よくシリカ系被覆膜の形成を行うことができる。なお、工程(C)において、上記一般式(1)で表される化合物を用いる場合には有機溶媒中で加水分解縮合を行うことが好ましく、ケイ酸またはケイ酸塩を用いる場合には水系媒体中で加水分解縮合を行うことが好ましい。
【0029】
加水分解縮合における反応温度は0〜100℃、好ましくは20〜80℃、反応時間は30〜1000分間、好ましくは30〜300分間である。
【0030】
1.3.1 化合物1
上記一般式(1)において、R、Rで表される1価の有機基としては、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アリル基、グリシジル基等を挙げることができる。なかでも、Rで表される1価の有機基は、アルキル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0031】
ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜5であり、これらのアルキル基は鎖状でも、分岐していてもよく、さらに水素原子がフッ素原子等に置換されていてもよい。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基等を挙げることができる。アルケニル基としては、例えばビニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、3−ペンテニル基、3−ヘキセニル基を挙げることができる。
【0032】
上記一般式(1)において、d=0の場合には、化合物1はRで表される1価の有機基が存在しない化合物となる。
【0033】
d=0の場合における化合物1の具体例としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシランなどを挙げることができる。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0034】
d=1〜3の場合における化合物1の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリフェノキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリイソプロポキシシラン、n−プロピルトリ−n−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−sec−ブトキシシラン、n−プロピルトリ−tert−ブトキシシラン、n−プロピルトリフェノキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリ−n−プロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリ−n−ブトキシシラン、イソプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、イソプロピルトリ−tert−ブトキシシラン、イソプロピルトリフェノキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、n−ブチルトリイソプロポキシシラン、n−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、n−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、n−ブチルトリフェノキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチルイソトリエトキシシラン、sec−ブチルトリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチルトリイソプロポキシシラン、sec−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、sec−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、sec−ブチルトリフェノキシシラン、tert−ブチルトリメトキシシラン、tert−ブチルトリエトキシシラン、tert−ブチルト−n−プロポキシシラン、tert−ブチルトリイソプロポキシシラン、tert−ブチルトリ−n−ブトキシシラン、tert−ブチルトリ−sec−ブトキシシラン、tert−ブチルトリ−tert−ブトキシシラン、tert−ブチルトリフェノキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシラン、フェニルトリ−tert−ブトキシシラン、フェニルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジ−tert−ブトキシシラン、ジメチルジフェノキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジ−n−プロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジ−n−ブトキシシラン、ジエチルジ−sec−ブトキシシラン、ジエチルジ−tert−ブトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジイソプロポキシシラン、ジ−n−プロピルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−プロピルジ−フェノキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジ−n−プロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジ−n−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−sec−ブトキシシラン、ジイソプロピルジ−tert−ブトキシシラン、ジイソプロピルジフェノキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−フェノキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−sec−ブチルジ−フェノキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジイソプロポキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−n−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−sec−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−tert−ブトキシシラン、ジ−tert−ブチルジ−フェノキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジ−tert−ブトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシランが挙げられる。これらは1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0035】
化合物1として特に好ましい化合物は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等である。これらは1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0036】
1.3.2 触媒
工程(C)において、上記一般式(1)で表される化合物、ケイ酸およびケイ酸塩の加水分解縮合を促進させる点、および加水分解縮合を行う際に炭酸カルシウムが溶解しにくいという点で、加水分解縮合において、塩基性化合物を触媒として使用するのが好ましい。
【0037】
触媒として使用可能な塩基性化合物としては、例えば、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルメタノールアミン、N−エチルメタノールアミン、N−プロピルメタノールアミン、N−ブチルメタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−エチルプロパノールアミン、N−プロピルプロパノールアミン、N−ブチルプロパノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N−プロピルブタノールアミン、N−ブチルブタノールアミン、N,N−ジメチルメタノールアミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジプロピルメタノールアミン、N,N−ジブチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジエチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルプロパノールアミン、N,N−ジブチルプロパノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N,N−ジプロピルブタノールアミン、N,N−ジブチルブタノールアミン、N−メチルジメタノールアミン、N−エチルジメタノールアミン、N−プロピルジメタノールアミン、N−ブチルジメタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−エチルジプロパノールアミン、N−プロピルジプロパノールアミン、N−ブチルジプロパノールアミン、N−メチルジブタノールアミン、N−エチルジブタノールアミン、N−プロピルジブタノールアミン、N−ブチルジブタノールアミン、N−(アミノメチル)メタノールアミン、N−(アミノメチル)エタノールアミン、N−(アミノメチル)プロパノールアミン、N−(アミノメチル)ブタノールアミン、N−(アミノエチル)メタノールアミン、N−(アミノエチル)エタノールアミン、N−(アミノエチル)プロパノールアミン、N−(アミノエチル)ブタノールアミン、N−(アミノプロピル)メタノールアミン、N−(アミノプロピル)エタノールアミン、N−(アミノプロピル)プロパノールアミン、N−(アミノプロピル)ブタノールアミン、N−(アミノブチル)メタノールアミン、N−(アミノブチル)エタノールアミン、N−(アミノブチル)プロパノールアミン、N−(アミノブチル)ブタノールアミン、メトキシメチルアミン、メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、メトキシブチルアミン、エトキシメチルアミン、エトキシエチルアミン、エトキシプロピルアミン、エトキシブチルアミン、プロポキシメチルアミン、プロポキシエチルアミン、プロポキシプロピルアミン、プロポキシブチルアミン、ブトキシメチルアミン、ブトキシエチルアミン、ブトキシプロピルアミン、ブトキシブチルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラプロピルエチレンジアミン、テトラブチルエチレンジアミン、メチルアミノメチルアミン、メチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルアミノブチルアミン、エチルアミノメチルアミン、エチルアミノエチルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノブチルアミン、プロピルアミノメチルアミン、プロピルアミノエチルアミン、プロピルアミノプロピルアミン、プロピルアミノブチルアミン、ブチルアミノメチルアミン、ブチルアミノエチルアミン、ブチルアミノプロピルアミン、ブチルアミノブチルアミン、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モルホリン、メチルモルホリン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができ、アンモニアであるのがより好ましい。
【0038】
塩基性化合物は、下記一般式(2)で表される含窒素化合物(以下、「化合物2」ともいう。)であってもよい。
(XN)Y …(2)
【0039】
上記一般式(2)において、X,X,X,Xは同一または異なり、それぞれ水素原子、炭素数1〜20のアルキル基(好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等)、ヒドロキシアルキル基(好ましくはヒドロキシエチル基等)、アリール基(好ましくはフェニル基等)、アリールアルキル基(好ましくはフェニルメチル基等)を示し、Yはハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など)、1〜4価のアニオン性基(好ましくはヒドロキシ基等)を示し、gは1〜4の整数を示す。
【0040】
化合物2の具体例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−プロピルアンモニウム、水酸化テトラ−iso−プロピルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化テトラ−iso−ブチルアンモニウム、水酸化テトラ−tert−ブチルアンモニウム、水酸化テトラペンチルアンモニウム、水酸化テトラヘキシルアンモニウム、水酸化テトラヘプチルアンモニウム、水酸化テトラオクチルアンモニウム、水酸化テトラノニルアンモニウム、水酸化テトラデシルアンモニウム、水酸化テトラウンデシルアンモニウム、水酸化テトラドデシルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラ−n−プロピルアンモニウム、塩化テトラ−n−プロピルアンモニウム、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、臭化−n−ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化−n−オクタデシルトリメチルアンモニウム、臭化−n−オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化トリデシルメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムハイドロジェンサルフェート、臭化トリブチルメチルアンモニウム、塩化トリオクチルメチルアンモニウム、塩化トリラウリルメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、臭化ベンジルトリエチルアンモニウム、臭化ベンジルトリブチルアンモニウム、臭化フェニルトリメチルアンモニウム、コリン等を好ましい例として挙げることができる。これらのうち特に好ましくは、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラ−n−プロピルアンモニウム、水酸化テトラ−n−ブチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラ−n−プロピルアンモニウム、塩化テトラ−n−プロピルアンモニウムである。化合物2は、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0041】
塩基性化合物の使用量は、シラン化合物中の加水分解性基の総量1モルに対して、通常、0.00001〜20モル、好ましくは0.00005〜10モルである。
【0042】
このようにして得られたコア・シェル粒子のシェル厚は、加水分解縮合の反応時間、反応温度、化合物1等の濃度により制御することができ、ほぼ均等な厚さとすることができる。
【0043】
2.シリカ中空粒子の製造方法
本発明の一実施形態に係るシリカ中空粒子分散体の製造方法は、下記工程(A)〜(D)を含む。
(A)炭酸カルシウム粒子と、オキソ酸およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含有する水系媒体を加熱処理する工程、
(B)前記加熱処理後の炭酸カルシウム粒子を洗浄する工程、
(C)下記一般式(1)で表される化合物、ケイ酸およびケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を塩基性触媒の存在下で加水分解縮合して、前記炭酸カルシウム粒子を被覆するシリカ系被覆層を形成して、コア・シェル粒子を得る工程、および、
Si(OR4−d …(1)
(式中、R、Rは独立して1価の有機基を表し、dは0〜3の整数を示す。)
(D)シリカ系被覆層が形成されたコア・シェル粒子から炭酸カルシウムの一部または全部を除去する工程。
【0044】
すなわち、本発明の一実施形態に係るシリカ中空粒子分散体の製造方法は、上述した工程(A)〜(C)により生成されたコア・シェル粒子を利用するものである。
【0045】
本発明の一実施形態に係るシリカ中空粒子分散体の製造方法は、さらに、
(E)工程(D)で得られたシリカ系中空粒子を水熱処理する工程、
(F)前記水系媒体を疎水性有機溶媒に置換する工程、を含めてもよい。
【0046】
以下、本実施形態に係るシリカ中空粒子の製造方法の各工程について説明するが、工程(A)〜(C)は、上記のコア・シェル粒子を製造するための方法であるから説明を省略する。
【0047】
なお、工程(A)〜(F)は、いずれも乾燥工程は設けず、全て溶媒存在下の条件で行うことが望ましい。数十ナノメートルサイズの粒子が乾燥し一旦凝集してしまうと、再分散させることが難しくなる場合があるからである。
【0048】
2.1 工程(D)
工程(D)は、工程(A)〜(C)により製造されたシリカ系被覆層が形成されたコア・シェル粒子から炭酸カルシウムの一部または全部を除去する工程である。工程(D)においては、酸性化合物を用いて分散体を酸性にして炭酸カルシウムを分散体中に溶出することにより、コア・シェル粒子から炭酸カルシウムの一部または全部を除去するのが好ましい。
【0049】
酸性化合物の具体例としては、無機酸または有機酸を例示することができる。無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等を挙げることができる。無機酸は、1価の酸であることが好ましい。有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、メサコン酸、シトラコン酸、リンゴ酸、マロン酸、グルタル酸の加水分解物、無水マレイン酸の加水分解物、無水フタル酸の加水分解物等を挙げることができる。これらは1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
【0050】
酸性化合物の使用量は、使用した触媒である塩基性化合物の量および種類、処理温度によっても異なるが、炭酸カルシウムの総量1モルに対して、0.1〜50モル、好ましくは0.5〜10モルである。また、上記触媒において塩基性触媒を用いた際には、触媒である塩基性化合物と酸性化合物が反応してしまうので、炭酸カルシウムの総量1モルに対して1〜10モルであることが特に好ましい。炭酸カルシウム酸性化合物の使用量が炭酸カルシウムの総量1モルに対して0.1モル未満であると、炭酸カルシウムを除去できない場合がある。
【0051】
また、工程(D)においては、必要に応じて、上記工程でシリカ系被覆層が形成されたコア・シェル粒子の一部または全部が除去されて生じた炭酸カルシウムを分散体から系外へ除去する工程を含むことができる。炭酸カルシウムを分散体から系外へ除去する方法としては、特に限定されないが、限外ろ過法を適用することが好ましい。
【0052】
具体的には、上記工程(D)で得られたシリカ系中空粒子を、圧力計、流量計、限外ろ過膜、および循環ポンプを接続した容器に入れ、所定温度にて所定の循環流量または線速で分散体を循環しながら限外ろ過膜を用いて溶媒置換する(回分法では、濃縮した後に所定量の水で希釈することにより溶媒置換し、連続法では、濃縮する間に所定量の水で希釈することにより溶媒置換する。)ことにより、固形分濃度が好ましくは1〜50質量%であって、シリカ系中空粒子が水系媒体中に分散された分散体を調製することができる。また、この際に炭酸カルシウムが分散体から系外へと除去される。
【0053】
また、このシリカ系中空粒子の分散体は、工程(D)の後に工程(E)の水熱処理工程を行う場合には、水系媒体であることが好ましく、水分の含有量が75質量%以上であることが特に好ましい。このシリカ系中空粒子の分散体において、水分の含有量を75質量%以上にする方法としては特に制限はないが、シリカ系中空粒子の増粘を防ぐためには、例えば、水と有機溶媒を水に溶媒置換する工程の間、水分の含有量を常に75質量%以上に維持することが好ましい。
【0054】
溶媒置換における温度は、好ましくは40〜80℃である。また、運転時の溶媒の循環流量は、限外ろ過膜での効率的溶媒置換を行い運転時の安全性を確保するためには、限外ろ過膜表面との線速換算で、好ましくは2.0〜4.5m/秒、より好ましくは3.0〜4.0m/秒である。
【0055】
また、この工程で用いられる限外ろ過膜としては、運転時の圧力、温度、用いる有機溶媒による不具合を生じるものでない限り特に制限はないが、温度、圧力、耐溶媒性に優れるセラミック製のものが好ましい。また、限外ろ過膜の孔径は、シリカ系中空粒子の粒子径より小さいものが使われるが、この技術分野において孔径の代用値として用いられる限外ろ過膜の分画分子量として表した場合、好ましくは、3,000〜1,000,000、さらに好ましくは、30,000〜500,000、特に好ましくは100,000〜200,000である。また、限外ろ過膜の形状についても特に制限はないが、高い透過流速と目つまりが低いことより円筒状が好ましい。
【0056】
2.2 工程(E)
工程(E)は、工程(D)で得られたシリカ系中空粒子を水熱処理する工程である。
【0057】
水熱処理としては、具体的には、上記工程(D)で得られた分散体に、必要に応じてアルカリ水溶液を添加して、該分散体を塩基性(好ましくはpH8〜13の範囲)に調節し、加熱処理することができる。このとき、加熱処理温度は50〜350℃の範囲、好ましくは100〜300℃の範囲である。加熱処理に際しては、工程(D)で得られた分散体の濃度をあらかじめ希釈して、あるいは濃縮して処理することができる。加熱することにより、分子間の結合を切ったり結んだりすることが繰り返され、シリカ系被覆層が緻密化された(密度の高い)シリカ系中空粒子を得ることができる。
【0058】
2.3 工程(F)
工程(F)は、水系媒体を疎水性有機溶媒に置換する工程である。
【0059】
2.3.1 疎水性有機溶媒
本実施形態における疎水性有機溶媒とは、水と均一に混合せずに、20℃において水と混合して2層を形成させた時の有機層中の水の含有率が12質量%以下の有機溶媒を意味し、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、ヘキサメチレンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の不飽和アクリルエステル系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジブチルエーテル等のエーテル類等を挙げることができる。これらの中で、ケトン類が好ましく、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンがさらに好ましい。これらの疎水性有機溶媒は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
2.3.2 溶媒置換方法
水系媒体を疎水性有機溶媒に置換するためには、メタノールまたはエタノール等の有機溶媒を介してから行うとよい。水系媒体から疎水性有機溶媒へ直接置換しようとすると、シリカ系中空粒子が凝集してしまうことがあり、一旦凝集すると再分散させることが困難となるからである。水系媒体をメタノール等の有機溶媒に置換する方法としては、特に限定されないが、限外ろ過法を好ましく適用することができる。
【0061】
具体的には、緻密化されたシリカ系中空粒子が分散され、水系媒体を含有する分散体を、圧力計、流量計、限外ろ過膜、および循環ポンプを接続した容器に入れ、所定温度にて所定の循環流量または線速で分散体を循環しながら限外ろ過膜を用いて溶媒置換する(回分法では、濃縮した後に所定量の第1の有機溶媒で希釈することにより溶媒置換し、連続法では、濃縮する間に所定量の第1の有機溶媒で希釈することにより溶媒置換する。)ことにより、固形分濃度が好ましくは20〜50質量%であって、シリカ系中空粒子がメタノール等の有機溶媒に分散された分散体を調製することができる。
【0062】
このシリカ系中空粒子分散体では、水の含有量は5質量%以下が好ましく、さらに好ましくは2質量%以下である。水分量が5質量%を越えると、保管中の増粘することがある。シリカ系中空粒子表面におけるシラノール基の濃度は、3.0×10−5モル/g以下が好ましく、さらに好ましくは2.0×10−5モル/g以下である。シリカ系中空粒子表面におけるシラノール基の濃度が3.0×10−5モル/gを超えると、保管中に分散体が増粘することがある。
【0063】
溶媒置換における温度は、水系媒体の沸点以下であることが好ましく、さらに好ましくは40〜80℃である。また、運転時の溶媒の循環流量は、限外ろ過膜での効率的溶媒置換を行い運転時の安全性を確保するためには、限外ろ過膜表面との線速換算で、好ましくは2.0〜4.5m/秒、より好ましくは3.0〜4.0m/秒である。
【0064】
また、この工程で用いられる限外ろ過膜としては、運転時の圧力、温度、用いる有機溶媒による不具合を生じるものでない限り特に制限はないが、温度、圧力、耐溶媒性に優れるセラミック製のものが好ましい。また、限外ろ過膜の孔径は、シリカ系中空粒子の粒子径より小さいものが使われるが、この技術分野において孔径の代用値として用いられる限外濾過膜の分画分子量として表した場合、好ましくは、3000〜1,000,000、さらに好ましくは、30,000〜500,000、特に好ましくは100,000〜200,000である。また、限外ろ過膜の形状についても特に制限はないが、高い透過流速と目つまりが低いことより円筒状が好ましい。
【0065】
限外ろ過膜を用いて分散体中の水をメタノール等の有機溶媒に置換する際、前述のように、運転方法の相違(例えば、回分法と連続法との相違)によって、濃縮と希釈操作とを分けて行う方法や、濃縮と同時に(濃縮する間に)希釈する方法のいずれであってもよいが、本実施形態に係るシリカ系中空粒子分散体の製造方法では、希釈溶媒量の少ないことから、濃縮と同時に希釈する方法が好ましい。希釈に用いる有機溶媒の量は、分散体中の水1kgに対して1〜10kgであるのが好ましい。
【0066】
次いで、メタノール等の有機溶媒を疎水性有機溶媒へと置換する。メタノール等の有機溶媒を疎水性有機溶媒に置換する方法としては、特に限定されないが、限外ろ過法を好ましく適用することができる。限外ろ過法の具体的な方法は、上記の水系媒体をメタノール等の有機溶媒へ置換する方法と同様である。
【0067】
工程(D)および(F)において、全て限外ろ過法を適用すれば、製造プロセスを簡略化することができ、製造コストを低下することができる。
【0068】
また、第1の溶媒を第2の溶媒に置換する方法として、限外ろ過法のほかに蒸留法を適用することもできる。蒸留法は、第1の溶媒よりも沸点の高い第2の溶媒に置換する場合に適用することができる。蒸留法では、減圧して蒸気圧を下げて行うことが多いが、発泡や液面の乾燥を防ぐため、常圧で行うことが望ましい。
【0069】
2.4 シリカ系中空粒子およびシリカ系中空粒子分散体
本発明の一実施形態に係るシリカ系中空粒子は、上記一般式(1)で表される化合物、ケイ酸およびケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を加水分解縮合して得られた外殻層を有する。そして、本発明の一実施形態に係るシリカ系中空粒子分散体は、上記シリカ系中空粒子分散体の製造方法によって得られたシリカ系中空粒子と、有機溶媒とを含む。ここで、有機溶媒としては、上述したように、疎水性有機溶媒であることが好ましい。
【0070】
本実施形態に係る製造方法によって得られたシリカ系中空粒子分散体に含まれるシリカ系中空粒子の含有量は通常0.1〜50質量%であり、10〜40質量%であるのが好ましい。
【0071】
本実施形態に係る製造方法によって得られたシリカ系中空粒子分散体に含まれるシリカ系中空粒子においては、シリカ系被覆層の平均粒子径は5〜300nmであるのが好ましく、10〜100nmであるのがより好ましい。
【0072】
また、本実施形態に係る製造方法によって得られたシリカ系中空粒子分散体に含まれるシリカ系中空粒子においては、シリカ系被覆層の平均厚さは1nm以上であるのが好ましく、1〜50nmであるのがより好ましい。シリカ系被覆層の平均厚さが50nm以上であると、得られる中空粒子の屈折率が上昇するためである。
【0073】
3.実施例
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
3.1 実施例1
コロイド状炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製)27.6kg(炭酸カルシウム濃度4.8質量%)に10質量%水溶液に調整したリン酸(和光純薬工業(株)製)を2.3kg加え、温度60℃により1時間攪拌を行った。攪拌終了後、蒸留水により粒子を洗浄し、得られた炭酸カルシウム粒子を蒸留水に分散させ、炭酸カルシウム濃度5.8質量%の水ゾルを調整した。得られた水ゾル6.5kgに蒸留水47.7kg、28質量%のアンモニア水溶液(和光純薬工業(株)製)8.0kgを加え攪拌した。この溶液に、メタ珪酸ナトリウム(旭硝子エスアイテック(株)製)を蒸留水に溶解させ、1.5等量以上の陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製)により脱アルカリして得たメタ珪酸液(SiO濃度2.0質量%)25.6kgを滴下し、反応液の温度を80℃に保持して3時間攪拌を行った。攪拌終了後、反応液を室温にし、ここに10質量%の硝酸96.8kgを加え1時間攪拌を行った。
【0075】
上述の工程終了後、メタノール14kgを加え、50℃、循環流量50リットル/分、圧力1kg/cmで限外ろ過膜を用いて濃縮を行い、14kgのろ液を排出する操作を6回繰り返すことで、メタノール分散中空シリカゾルを20kg調整した。6回の平均透過流速は60kg/m/時間、所要時間は6時間であった。
【0076】
得られたメタノール分散中空シリカゾル20kgに、トリメチルメトキシシラン6.1gを加え、60℃で3時間加熱攪拌した。
【0077】
上述の工程終了後、得られた反応液にメチルイソブチルケトン(MIBK)14kgを加え、50℃、循環流量50リットル/分、圧力1kg/cmで限外ろ過膜を用いて濃縮を行い、14kgのろ液を排出する操作を5回繰り返すことで、MIBK分散中空シリカゾルを20kg調整した。5回の平均透過流速は70kg/m/時間、所要時間は4時間であった。透過型電子顕微鏡にて観察したところ平均粒子径が60nm、平均シェル厚が10nmである中空シリカ粒子分散液を得た。
【0078】
3.2 実施例2
コロイド状炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製)46.1kg(炭酸カルシウム濃度4.8質量%)に10質量%水溶液に調整したリン酸三ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を3.9kg加え、温度60℃により1時間攪拌を行った。攪拌終了後、蒸留水により粒子を洗浄し、得られた炭酸カルシウム粒子を蒸留水に分散させ、炭酸カルシウム濃度1.5質量%の水ゾルを調整した。得られた水ゾル25.8kgに蒸留水29.9kg、28質量%のアンモニア水溶液(和光純薬工業(株)製)8.0kgを加え攪拌した。この溶液に、メタ珪酸ナトリウム(旭硝子エスアイテック(株)製)を蒸留水に溶解させ、1.5等量以上の陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製)により脱アルカリして得たメタ珪酸液(SiO濃度2.1質量%)24.8kgを滴下し、反応液の温度を80℃に保持して3時間攪拌を行った。攪拌終了後、反応液を室温にし、ここに10質量%の硝酸96.8kgを加え1時間攪拌を行った。
【0079】
上述の工程終了後、メタノール14kgを加え、50℃、循環流量50リットル/分、圧力1kg/cmで限外ろ過膜を用いて濃縮を行い、14kgのろ液を排出する操作を6回繰り返すことで、メタノール分散中空シリカゾルを20kg調整した。6回の平均透過流速は60kg/m/時間、所要時間は6時間であった。
【0080】
得られたメタノール分散中空シリカゾル20kgに、トリメチルメトキシシラン23.1gを加え、60℃で3時間加熱攪拌した。
【0081】
上述の工程終了後、得られた反応液にメチルイソブチルケトン(MIBK)14kgを加え、50℃、循環流量50リットル/分、圧力1kg/cmで限外ろ過膜を用いて濃縮を行い、14kgの濾液を排出する操作を5回繰り返すことで、MIBK分散中空シリカゾルを20kg調整した。5回の平均透過流速は70kg/m/時間、所要時間は4時間であった。透過型電子顕微鏡にて観察したところ平均粒子径が100nm、平均シェル厚が10nmである中空シリカ粒子分散液を得た。
【0082】
3.3 実施例3
コロイド状炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製)48.8kg(炭酸カルシウム濃度4.8質量%)に10質量%水溶液に調整したリン酸三ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を1.3kg加え、温度60℃により1時間攪拌を行った。攪拌終了後、蒸留水により粒子を洗浄し、得られた炭酸カルシウム粒子を蒸留水に分散させ、炭酸カルシウム濃度1.7質量%の水ゾルを調整した。得られた水ゾル23.4kgに蒸留水31.8kg、28質量%のアンモニア水溶液(和光純薬工業(株)製)8.0kgを加え攪拌した。この溶液に、メタ珪酸ナトリウム(旭硝子エスアイテック(株)製)を蒸留水に溶解させ、1.5等量以上の陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製)により脱アルカリして得たメタ珪酸液(SiO濃度2.1質量%)24.8kgを滴下し、反応液の温度を80℃に保持して3時間攪拌を行った。攪拌終了後、反応液を室温にし、ここに10質量%の硝酸96.8kgを加え1時間攪拌を行った。
【0083】
上述の工程終了後、メタノール14kgを加え、50℃、循環流量50リットル/分、圧力1kg/cmで限外ろ過膜を用いて濃縮を行い、14kgのろ液を排出する操作を6回繰り返すことで、メタノール分散中空シリカゾルを20kg調整した。6回の平均透過流速は60kg/m/時間、所要時間は6時間であった。
【0084】
得られたメタノール分散中空シリカゾル20kgに、トリメチルメトキシシラン23.1gを加え、60℃で3時間加熱攪拌した。
【0085】
上述の工程終了後、得られた反応液にメチルイソブチルケトン(MIBK)14kgを加え、50℃、循環流量50リットル/分、圧力1kg/cmで限外ろ過膜を用いて濃縮を行い、14kgのろ液を排出する操作を5回繰り返すことで、MIBK分散中空シリカゾルを20kg調整した。5回の平均透過流速は70kg/m/時間、所要時間は4時間であった。透過型電子顕微鏡にて観察したところ平均粒子径が100nm、平均シェル厚が10nmである中空シリカ粒子分散液を得た。
【0086】
3.4 実施例4
コロイド状炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製)27.7kg(炭酸カルシウム濃度4.8質量%)に10質量%水溶液に調整したメタ珪酸ナトリウム(旭硝子エスアイテック(株)製)を2.3kg加え、温度60℃により1時間攪拌を行った。攪拌終了後、蒸留水により粒子を洗浄し、得られた炭酸カルシウム粒子を蒸留水に分散させ、炭酸カルシウム濃度5.5質量%の水ゾルを調整した。得られた水ゾル6.9kgに蒸留水47.4kg、28質量%のアンモニア水溶液(和光純薬工業(株)製)8.0kgを加え攪拌した。この溶液に、メタ珪酸ナトリウム(旭硝子エスアイテック(株)製)を蒸留水に溶解させ、1.5等量以上の陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製)により脱アルカリして得たメタ珪酸液(SiO濃度2.0質量%)25.7kgを滴下し、反応液の温度を80℃に保持して3時間攪拌を行った。攪拌終了後、反応液を室温にし、ここに10質量%の硝酸96.8kgを加え1時間攪拌を行った。
【0087】
上述の工程終了後、メタノール14kgを加え、50℃、循環流量50リットル/分、圧力1kg/cmで限外ろ過膜を用いて濃縮を行い、14kgのろ液を排出する操作を6回繰り返すことで、メタノール分散中空シリカゾルを20kg調整した。6回の平均透過流速は60kg/m/時間、所要時間は6時間であった。
【0088】
得られたメタノール分散中空シリカゾル20kgに、トリメチルメトキシシラン23.1gを加え、60℃で3時間加熱攪拌した。
【0089】
上述の工程終了後、得られた反応液にメチルイソブチルケトン(MIBK)14kgを加え、50℃、循環流量50リットル/分、圧力1kg/cmで限外ろ過膜を用いて濃縮を行い、14kgのろ液を排出する操作を5回繰り返すことで、MIBK分散中空シリカゾルを20kg調整した。5回の平均透過流速は70kg/m/時間、所要時間は4時間であった。透過型電子顕微鏡にて観察したところ平均粒子径が100nm、平均シェル厚が10nmである中空シリカ粒子分散液を得た。
【0090】
3.5 実施例5
メタ珪酸ナトリウム(旭硝子エスアイテック(株)製)を蒸留水に溶解させ、1.5等量以上の陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製)により脱アルカリして得たメタ珪酸液(SiO濃度2.0質量%)8.6kgをコロイド状炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製)21.4kg(炭酸カルシウム濃度4.8質量%)に加え、温度60℃により1時間攪拌を行った。攪拌終了後、蒸留水により粒子を洗浄し、得られた炭酸カルシウム粒子を蒸留水に分散させ、炭酸カルシウム濃度6.3質量%の水ゾルを調整した。得られた水ゾル6.1kgに蒸留水48.4kg、28質量%のアンモニア水溶液(和光純薬工業(株)製)8.0kgを加え攪拌した。この溶液に、メタ珪酸ナトリウムを蒸留水に溶解させ、1.5等量以上の陽イオン交換樹脂により脱アルカリして得たメタ珪酸液(SiO濃度2.0質量%)25.7kgを滴下し、反応液の温度を80℃に保持して3時間攪拌を行った。攪拌終了後、反応液を室温にし、ここに10質量%の硝酸96.8kgを加え1時間攪拌を行った。
【0091】
上述の工程終了後、メタノール14kgを加え、50℃、循環流量50リットル/分、圧力1kg/cmで限外ろ過膜を用いて濃縮を行い、14kgのろ液を排出する操作を6回繰り返すことで、メタノール分散中空シリカゾルを20kg調整した。6回の平均透過流速は60kg/m/時間、所要時間は6時間であった。
【0092】
得られたメタノール分散中空シリカゾル20kgに、トリメチルメトキシシラン23.1gを加え、60℃で3時間加熱攪拌した。
【0093】
上述の工程終了後、得られた反応液にメチルイソブチルケトン(MIBK)14kgを加え、50℃、循環流量50リットル/分、圧力1kg/cmで限外ろ過膜を用いて濃縮を行い、14kgのろ液を排出する操作を5回繰り返すことで、MIBK分散中空シリカゾルを20kg調整した。5回の平均透過流速は70kg/m/時間、所要時間は4時間であった。透過型電子顕微鏡にて観察したところ平均粒子径が100nm、平均シェル厚が10nmである中空シリカ粒子分散液を得た。
【0094】
3.6 実施例6
コロイド状炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製)28.0kg(炭酸カルシウム濃度4.8質量%)に12質量%水溶液に調整したアルミン酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を2.0kg加え、温度60℃により1時間攪拌を行った。攪拌終了後、蒸留水により粒子を洗浄し、得られた炭酸カルシウム粒子を蒸留水に分散させ、炭酸カルシウム濃度6.0質量%の水ゾルを調整した。得られた水ゾル6.4kgに蒸留水48.1kg、28質量%のアンモニア水溶液(和光純薬工業(株)製)8.0kgを加え攪拌した。この溶液に、メタ珪酸ナトリウム(旭硝子エスアイテック(株)製)を蒸留水に溶解させ、1.5等量以上の陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製)により脱アルカリして得たメタ珪酸液(SiO濃度2.1質量%)25.7kgを滴下し、反応液の温度を80℃に保持して3時間攪拌を行った。攪拌終了後、反応液を室温にし、ここに10質量%の硝酸96.8kgを加え1時間攪拌を行った。
【0095】
上述の工程終了後、メタノール14kgを加え、50℃、循環流量50リットル/分、圧力1kg/cmで限外ろ過膜を用いて濃縮を行い、14kgのろ液を排出する操作を6回繰り返すことで、メタノール分散中空シリカゾルを20kg調整した。6回の平均透過流速は60kg/m/時間、所要時間は6時間であった。
【0096】
得られたメタノール分散中空シリカゾル20kgに、トリメチルメトキシシラン23.1gを加え、60℃で3時間加熱攪拌した。
【0097】
前述の工程終了後、得られた反応液にメチルイソブチルケトン(MIBK)14kgを加え、50℃、循環流量50リットル/分、圧力1kg/cmで限外ろ過膜を用いて濃縮を行い、14kgのろ液を排出する操作を5回繰り返すことで、MIBK分散中空シリカゾルを20kg調整した。5回の平均透過流速は70kg/m/時間、所要時間は4時間であった。透過型電子顕微鏡にて観察したところ平均粒子径が100nm、平均シェル厚が10nmである中空シリカ粒子分散液を得た。
【0098】
3.7 比較例1
コロイド状炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製)11.1kg(炭酸カルシウム濃度4.8質量%)に蒸留水42.3kg、28質量%のアンモニア水溶液(和光純薬工業(株)製)6.0kgを加え攪拌した。この溶液に、メタ珪酸ナトリウム(旭硝子エスアイテック(株)製)を蒸留水に溶解させ、1.5等量以上の陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製)により脱アルカリして得たメタ珪酸液(SiO濃度2.0質量%)6.6kgを滴下し、反応液の温度を80℃に保持して3時間攪拌を行った。攪拌終了後、反応液を室温にし、ここに10質量%の硝酸72.6kgを加え1時間攪拌を行った。透過型電子顕微鏡にて観察したところ、シェルの形成を確認できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程(A)〜(D)を含む、シリカ系中空粒子の製造方法。
(A)炭酸カルシウム粒子と、オキソ酸およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含有する水系媒体を加熱処理する工程、
(B)前記加熱処理後の炭酸カルシウム粒子を洗浄する工程、
(C)下記一般式(1)で表される化合物、ケイ酸およびケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を塩基性触媒の存在下で加水分解縮合して、前記炭酸カルシウム粒子を被覆するシリカ系被覆層を形成して、コア・シェル粒子を得る工程、および、
Si(OR4−d …(1)
(式中、R、Rは独立して1価の有機基を表し、dは0〜3の整数を示す。)
(D)シリカ系被覆層が形成されたコア・シェル粒子から炭酸カルシウムの一部または全部を除去する工程。
【請求項2】
請求項1において、
前記オキソ酸およびそれらの塩は、リン酸、アルミン酸、ケイ酸およびそれらの塩である、シリカ系中空粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記工程(A)は、触媒の非存在下で行われる、シリカ系中空粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記工程(D)は、限外ろ過法を用いて行われる、シリカ系中空粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、
さらに、(E)前記工程(D)で得られたシリカ系中空粒子を水熱処理する工程、を含む、シリカ系中空粒子の製造方法。
【請求項6】
下記工程(A)〜(C)を含む、コア・シェル粒子の製造方法。
(A)炭酸カルシウム粒子と、オキソ酸およびそれらの塩から選ばれる少なくとも1種の化合物と、を含有する水系媒体を加熱処理する工程、
(B)前記加熱処理後の炭酸カルシウム粒子を洗浄する工程、および、
(C)下記一般式(1)で表される化合物、ケイ酸およびケイ酸塩から選ばれる少なくとも1種の化合物を塩基性触媒の存在下で加水分解縮合して、前記炭酸カルシウム粒子を被覆するシリカ系被覆層を形成する工程。
Si(OR4−d …(1)
(式中、R、Rは独立して1価の有機基を表し、dは0〜3の整数を示す。)
【請求項7】
請求項6において、
前記オキソ酸およびそれらの塩は、リン酸、アルミン酸、ケイ酸およびそれらの塩である、コア・シェル粒子の製造方法。
【請求項8】
請求項6または7において、
前記工程(A)は、触媒の非存在下で行われる、コア・シェル粒子の製造方法。

【公開番号】特開2009−46365(P2009−46365A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−215836(P2007−215836)
【出願日】平成19年8月22日(2007.8.22)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】